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プロフィール |
コメント数 |
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性別 |
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自己紹介 |
現在の技術で作られた映画を観る目線で過去の映画を見下すようなことは邪道と思っている。できるだけ製作当時の目線で鑑賞するよう心掛けている。 |
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1. 野火(2014)
太平洋戦争末期のレイテ島を舞台に、日本兵の悲惨な実態・戦闘の激しさを通じて戦場の狂気を浮き彫りにした作品。ドキュメンタリー映像では迫り切れない戦争の実相に、文字通り肉迫。戦争映画で肉体の損壊をモロに見せる演出には懐疑的な考えで、奇しくもこの映画公開年に他作品のレビューで否定的な意見を記述した。だが、題材によってはそれもありかなと思うようになった。本作の場合、全体の流れからみるとグロテスクな映像という印象があまりなく、肯定的に受け止めた。
時折映る山々や雲の流れ・海流等、自然の息遣いが一層悲惨な状況を引き立たせる。暗闇の中で一転、サーチライトから始まる戦闘シーンは凄惨極まりない。戦争とはこういうものだと思う。ケイトウの花と人肉の対比は残酷な現実を映す。
惜しいかなリリー・フランキー以外の俳優陣は素人っぽさが目立つ。小声での会話は、極限状態における飢えや栄養不足、士気低下を背景にした表現だと思うが、リアルさにこだわり過ぎの印象で、あまり効果的な演出とは思わない。
何年か前に親類の年寄りから聞いた逸話を思い出す。戦争当時、関東地方のある都市でアメリカ軍の空襲に遭い、そばにいた人の上半身が吹っ飛んだという話だった。[CS・衛星(邦画)] 5点(2020-03-08 18:52:48)《改行有》
2. 野いちご
老教授の栄典をめぐる1日を90分余に凝縮して描き、生と死、老い、家族観など人生の機微を散りばめた珠玉の一遍。
人との関わりを避け仕事に集中して生きてきたが、功成り名遂げても心の空洞を抱える老教授。老人の虚無感や孤独感・死への恐れといった内面が表現される。
冒頭の夢のシークエンスはドイツ表現主義を彷彿させるもので、絵画的構図が秀逸。詩的・哲学的でシュールな画づくりは主人公の心理を巧みに視覚化しており、針のない時計は特に印象的で、“死”のイメージを怖いほど漂わせる。
回想シーンは、現在の姿で過去と向き合うことにより、孤独感や後悔の念が滲み出ている。道中における若者たちの生の実感と老人の孤独感の対比も見事。
3人の若者との交流や息子夫婦との対話、心が通じ合った家政婦とのやり取りなど(ガソリンスタンド店主の感謝も重要)を通じて主人公の心理は徐々に解きほぐされる。最後に寝床でみせる表情は孤独や死の恐れからの解放を示すもので、前夜の夢(不安)と対照的な安堵があった。
主人公の内面の変化を通して人生の価値を感じさせる作品。[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-10-16 13:47:05)(良:2票) 《改行有》
3. 野菊の如き君なりき(1955)
「野菊の墓」とせず、「・・・如き君なりき」と題名をつけたセンスの良さ。また、楕円形のフレームを使用した撮影は、古いアルバムをめくるような画面作りで郷愁を駆り立て、叙情性豊かな名作となった。今では考えられないことだが、「次郎物語」というテレビドラマを観て育ったせいか、映画に描かれた時代背景(家父長制等による「家」の重み)は認識できる。回想画面における笠智衆の静謐な語り(短歌の朗読)は、遠い日の物悲しい記憶を美しいまでに描写している。[地上波(邦画)] 9点(2015-09-13 13:39:54)(良:1票)
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