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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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21.  ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録 創造するということ自体がホラーなんだ。関わる人間が作品に取り込まれていってしまう。未知の領域に入り、得体の知れないものが膨らんでくる。そして現実が映画の中に吸い取られていってしまう。コッポラはカーツに、マーチン・シーンはウィラードに、限りなく近づいていく。ドロドロになってるマーチンのシーンなぞ、映画の場面を越えてもろにベトナム戦争がダブってくる。本物の虎(一週間エサやってないんだ)をけしかけられたフレデリック・フォレスト。実際のゲリラ討滅に帰っていってしまうヘリコプター。デブデブになって撮影現場にやってくるマーロン・ブランド。収拾のつけようがなくなっていくエンディング。M・ブランドをデニス・ホッパーと対決させようか、いやいやそれこそどうしようもなくなってしまう、などと、何とか結論めいた方向を探るも、作品自体がそれを拒んでしまう(たぶん物語としてだけなら、ウィラードがカーツを殺して新しい王になる、ってのが一番納まりがいいように思うが、その納まりのよさを作品自体が承認してくれないんだ)。つまりこれは小説なら「未完」となって初めて落ち着く作品だったのだな。ときどき映画では、本来未完となるべき、とめどなく膨らんで収拾がつかなくなってしまう怪作が誕生し、ガンスの『ナポレオン』とかシュトロハイムの『愚なる妻』とか、不気味に映画史の中で輝いている。『地獄の黙示録』もそれに連なる赤色巨星となった一本なんだろう。没になったフランス植民地シーンに興味をそそられたが、それは後に完全版によって目にすることが出来た。コッポラが何度も何度も「俺の金で作ってる」って言うのは、あの国ではプロデューサーの力が強いんでしょうな。面白いのはこの『ハート・オブ・ダークネス』という映画、監督が妻を退屈させないぐらいのつもりで始めさせたのが、だんだんと夫の狂気を記録する姿勢に腰が入ってきてしまうところ。こっそり録音までして。まったくフィルムというやつは、関わる全員を狂わせていく。[映画館(字幕)] 7点(2012-03-16 10:13:55)

22.  花嫁のパパ(1991) いちおう同時代の物語としてリメイクしてるんだろうが、自国がこうであった家庭を懐かしむ姿勢が切実に感じられ、現代から目をそらし、必死に過去へ過去へと向いている当時のアメリカの痛々しさを一番に感じた。ミキサーを贈られて専業主婦になるつもりはないわ、なんて設定もあるんだけど、取って付けたよう。娘が婚約したと言ったあと、少女時代の娘が同じセリフを繰り返すとこなんかはいい。しかしだんだんコメディとしての基盤が不確かになっていって、人情ものでいくのかと思っていると、プールにはまったり、牢屋に入れられたりドタバタめいて、ふらふらしてる。落ち着けない。マッケンジー君のダメぶりは、「テレビのお尋ね者コーナーで見たことがある」ってタイプじゃないんだけど。パッヘルベルのカノン流れる結婚式に、ちゃんと太ったデンマークの叔母さんが来てるのは正しい。弟もガールフレンドと踊り、世代の流れを見せておく。[映画館(字幕)] 6点(2012-03-09 10:03:52)

23.  パトリオット・ゲーム 《ネタバレ》 トーンが一貫してくれない。いっそ弟を殺されたハネあがりテロリストとその情人の偏執的復讐に絞ってくれればいいのに、北アフリカの訓練基地が出てきたりすると、困る。国際政治ものでいくのなら、このテロリストがやってることは組織として馬鹿馬鹿しすぎる。オリジナルな怖さとしては偵察衛星画面か。衛星が回ってくる時間になると隠れるなんてのにリアリティ。遠くの戦場を同時中継で眺める気味の悪さ。これは後にビン・ラディン殺害のとき現実に味わうことになったわけだ。[映画館(字幕)] 5点(2012-02-26 12:12:06)

24.  バットマン リターンズ 《ネタバレ》 サーカス団に動物園、クリストファー・ウォーケンの丸顔マークに、アヒルの乗り物、ゴシック調と言うにはケバケバしい。ある種のクレイジーな童夢のイメージでは統一されている。かえってもっと支離滅裂にイメージのおもむくままに走れば、傑作になったかもしれない。ペンギンとキャット・ウーマンの来歴が興味深い。けっこうドロリとした湿っぽい怨念のようなものを含んでいて、日本の怪談に近いような存在。親探しとかね。とりわけペンギンのイメージは生きていた。ラストの葬列の脇を勤めるところまで。猫のほうも孤独な秘書の怨念。Hello there が Hell here になって。自分で縫い合わせて衣装作ってる。雪ってのも童夢の背景っぽいところがある。バットマンが活躍したという印象がほとんどないのは、脇が多すぎたせいか。コミックの映画化でスターにこういう脇役をやらせて重みをつける、ってのは『スーパーマン』のM・ブランドがハシリだったかなあ。すっかり定着したが、多けりゃいいってもんじゃなく、監督が仕切りきれなくなるほどは、いらない。[映画館(字幕)] 6点(2012-02-22 10:04:49)

25.  走れメロス 日本のアニメは地中海が好きだ。単にあの青は出しやすいだけなのか、それとも日本人は心の深いところで、湿度の低めな晴れ渡った爽やかさに憧れを持っているのか。この話の面白さは、見せしめとしての実験を思いつくまでの、王の猜疑心の純度の高さね。救助や妨害がないように見張りをつけさせる徹底ぶり。なんだっけ、信頼するのは弱いからだ、だっけ。囚人が、俺なら逃げるから、と断わるあたりもいい。ジイサンと娘は邪魔だった。たどり着くとこはもっと劇的に盛り上げられそうなのに、地味。まあ公会堂の頂が照り映えている。朽ちた石像で始まって、それに戻る段取り。人の動きは粗かったが、髪が風になびいたりはする。[映画館(邦画)] 5点(2012-02-17 10:29:06)

26.  ハウスシッター/結婚願望 《ネタバレ》 「日本ではコケる二大コメディアンの初共演」といった宣伝コピーを見た記憶があるのだが、しかしそこまで自虐的な宣伝するだろうか、夢だったのかもしれん。観たら面白かった。詐欺師もののバリエーション。失恋したての男S・マーチンの家に、勝手に妻としてG・ホーンが上がりこんでしまう。女が周囲に振りまいていく嘘がどんどん二人の関係を固めていってしまうあたりが見どころ。男はその場しのぎで嘘に付き合ったり、あるいは計略を立てて嘘を利用しようとしたりもするんだけど、けっきょくその嘘をより真実めかしていってしまう。嘘に嘘を重ねていくスリルと爽快さが一人歩きしてしまう。話の都合で生み出した架空の恋仇ブーマー氏が次第にリアルな存在感を持ってきたり、社長の戦友まで捏造していくことになる。二人で編み出す架空の来歴が、次第に細部まで生き生きしてくるあたりの勢いが見事。意味深な「暗い秘密」が誕生したり、急遽マウイに旅行したことになったりと、どんどん過去がドラマチックに華やいでくるおかしみ。一番笑ったのは男デービスが彼自身の知らない感動のエピソードの再現を要請されて、何らかの感涙的なストーリーを背景にした気分で「アイルランドの子守歌」を万感込めて歌うシーン。このおかしさはかなりのものだった。こういう話の場合女はどこかかわいくなければならない。彼女本質的な詐欺師だったわけではなく、よく解釈すれば退屈な日常をよりドラマチックに盛り立ててやろうと思いやってしまう性質の女なわけ。本来の男の恋人となんとか取り持ってやろうとするんだけど、彼女自身男に魅かれてしまっており、ここらへんからは彼女のいじらしさの見せ場。ささいなことだけど、中華料理を買ってくるシーンがある。中華料理は二人で捏造した「恋愛時代」のエピソードに登場した小道具で、二人の嘘が真実になっていくところをさりげなく見せている丁寧な場面。こういった丁寧さが、後味の良さにつながっている。だが映画はコケた。[映画館(字幕)] 8点(2012-02-06 10:24:32)

27.  パリ、夜は眠らない。 《ネタバレ》 ライヴのフェリーニと言うか、現代ニューヨークのサテリコンと言うか。熟し切った腐臭みたいのが好きな人には、いい。そう、パリじゃなくてニューヨークの黒人街。自分たちで「パリ」と呼んでいる。ファッションショーでもダンスでもない「ボール」っていう、あれは何なんだ、ゲイ・コンテストっていうのか、それを巡るドキュメント。別に芸を見せるのではなく、ただゲイとしてのコンテスト。スクールボーイってのは、しゃがんで教科書広げたりするの。あれは笑った。ここで名声を得て有名になるんだ、ということで社会の縮図にもなってる(その有名ってのは一般の社会までの広がりを持って指すのか、それともゲイ社会の内部での話なのか)。ハウスとしてのファミリー的要素もあるようで、まあ日本の企業なんかもファミリーだしな。市民社会から完全に縁が切れた場所、表の白人社会となんとか折り合いをつけようというんではなく、裏側に閉じ籠もることで充足しようとしている。その閉じた腐臭がたまらない。美少女ヴィーナスなんか徹底的に被愛玩物として・人形として生きようと割り切っている。だからラストで殺されちゃうんだけど。「主婦だって旦那と寝て新しい洗濯機買ってもらってるじゃない」。[映画館(字幕)] 6点(2012-01-16 10:18:31)

28.  ハイヒール(1991) 《ネタバレ》 ちょっとした人物の絡みが、どんどん人の関係を広げていってしまう横滑りの感覚が面白い。手話通訳の女性が容疑者として三人目に並んで座ってたり。一番のギャグは手話通訳で犯罪自白を表現するとこね。グレートマザーに敗北し、吸収されていく娘の話ととればいいのか。なにやってもかなわない。自分の罪まで吸い取られていってしまう、って。母が見てると思うと緊張して笑ったりしてしまう(ニュースの時)、なんてのもあった。でもそう決めちゃうと、その向こうで監督が「わーい、引っかかった引っかかった」って笑ってるような気もして落ち着かない。もう一ひねりあるようなオレンジ色の世界。とりわけブルーを背景にしていると、あの色は不気味なんです。オカマの歌に合わせて客たちが身振りをするとこなんかも実にヘン。キャスティングにビビ・アンデルソンの名が出てたが、どこにいたんだ。まさか判事の老母? 『秋のソナタ』への言及もあったなあ。母と娘の葛藤の映画ということで。[映画館(字幕)] 7点(2012-01-13 10:31:48)

29.  二十日鼠と人間(1992) 《ネタバレ》 映画の評価に原作の力が入ってくるのはある程度仕方なく、原作がいいとやっぱいい。少なくとも原作を殺してない、ってだけで評価していい。スタインベックの映画化では『怒りの葡萄』『エデンの東』の二大名作があるけど、話としてはこれが好き。なんか山本周五郎の「さぶ」思い出したりして。登場するみなが夢や憧れを持ちながら孤独に沈んでいて、自分の孤独な夢を守るために互いに傷つけ合ってしまう。ここで行われる殺しには、憎しみはない。老犬を殺させるキャンディ、仔犬を殺してしまうレニー、女を殺してしまうのも、鼠の死骸の延長上で、そしてリンチの前に友を殺してしまうジョージ。レニーと生きることを許さない社会、自分の中のレニー的なものを分離させないと生活していけない社会、そのやりきれなさ。アメリカ南部って心の傷がよく似合う。レニーが一度仔犬を連れてきたふりしてジョージをからかうあたり、あとになって思い出すとしみじみしちゃう。常にジョージの顔色をうかがっていたレニーに向こう(夢の家の方角)を向かせ、二人の視線が互いでなく、はるかかなたで重なるラスト。[映画館(字幕)] 7点(2011-12-28 12:15:52)(良:2票)

30.  ハネムーン・イン・ベガス 《ネタバレ》 ニコラス・ケイジのコメディってけっこういいんだ。あの人の困惑顔ってサイレント時代のコメディにも通じたものを持っている。優柔不断の男が勇気を出す、って設定がそうなんだな。スカイダイバーたちの間での彼のおどおどした表情が傑作。パラシュートの引くひもの順番を黄色・赤、黄色・赤と心に刻み込もうとしていると、間際になって「それは逆だ」と言われて、さらに「ジョークジョーク」といなされる。おいおい、最初に言ったほうがジョークなの、今の逆だって言ったのがジョークなの、とパニックになっている間にもみなはどんどん降下していってしまう、なんてギャグが一番好き。あとは敵役を憎めなく設定することも大事。亡妻の想い出を引きずりつつ、ハワイの観光めぐりをするJ・カーン、作戦とは言えけなげである。ま、これはポーカーでカモに一度勝たせる手口と同じようなものなんだけど。プレスリーナンバーが背景に使われている面白味は、もひとつピンと来ない世代でした、私。[映画館(字幕)] 7点(2011-12-08 10:11:15)

31.  伴奏者 フランス映画はヴィシー政権のおかげで陰影のある時代を持つことが出来た。このヒロイン、伴奏者として「何かを選ぶことを放棄した人生」を選んだわけ。ヴィシー政権を背景にすると、そのうつろさがよく似合う。邦画だったら、尽くしぬく芸道ものになりそうな設定を、そうはならない。歌手のほうは少しの卑屈さもなく堂々とこの時代をうまく渡り歩いていく。ヴィシーフランスの下からロンドンへ、さらにアメリカへと、そのつどうまくジャンプしていく。踏み台にされる夫。顔のシーンの多い映画でしたね。私にとってはフランス映画の苦手な部分が凝縮されたような作品でした。オペラ歌手とその伴奏者の話なのに、音楽の基本テーマはベートーベンの第1弦楽四重奏の第2楽章。初期の四重奏が映画に使われるのは珍しい。[映画館(字幕)] 5点(2011-10-29 12:29:16)

32.  ハモンハモン 登場するすべての男女に愛の線を引くことが出来る。しかもみな自分の愛のみを基準に行動するから、秩序から渾沌へと導かれていく。スペインである。ファーストシーン、なんだろうこれ、教会の釣鐘のタマかなあ、ひびが入ってるなあ、などと思ってたら、牛のタマであった。これは後に巨大なパンツのたて看板と対になって(この監督の次回作は『ゴールデン・ボール』って嘘みたい)。最初は肝っ玉母さんと溺愛ママの対比で、なんか「もう分かった」って話かと思っていたら、だんだんヘンになってくる。情熱の国。S・サンドレッリの、自分の仕掛けに溺れていってしまうあたりが分かりやすい軸となって、あとはみなヘン。A・ガリエナは女の家の親分。娘三人に娼婦たちも雇って、轢かれたペットの豚を丸焼きにして食べちゃうたくましさ。情熱の国だが、乾ききっている。ハムで戦う男。ゆっくりとやってくる羊の群れ。リアリズムに撤するとかえってヘンテコリンになっていく風土なの。[映画館(字幕)] 7点(2011-10-23 12:10:31)(良:1票)

33.  ハード・プレイ カタギの暮らしを出来そうもない連中って、どうして映画の中だと魅力的なのだろう。それでいてサギの専門家にもなれないところでちゃんと道徳的帳尻を合わせている。ほとんど表には出てこないけど「白人と黒人の正しい出会い」いうようなテーマが映画の底に潜んでいて、それが感じ良い。ふわふわと生きている男たち、ちゃんと働けといってる女だって、「Qで始まる食べ物は」とか馬鹿なこと一心に記憶してクイズで一旗揚げようとしている。何も生産しない人ばかりがいて球を突いているだけ、それでも人生は人生。ウツロを抱えたまま友情でくくっていくあたりが味わい。偉いのはバスケシーンを出来るだけ役者本人にやらせていることで、シュートもカットで切らない。全然画面の弾みが違う。[映画館(字幕)] 6点(2011-07-01 10:27:06)

34.  バッフィ/ザ・バンパイア・キラー 最初のうち、エスカレーターを真上から見下ろしたシーンなんか「もしかすると拾い物かも」と思ったんだけど、だんだん緊張は薄らぎ、駄目でしたね。ホラーコメディって、どこか逃げ腰になってるとこありません? 心底怖がらせるのが難しいもんだから、くすぐり笑いに逃げてしまっているというか。怖がらせるのって失敗すると笑いと紙一重なもんだから、「いや実は最初っから笑わせるつもりだったのだよ」と、ズルしてる感じがある。怖がらせるのが難しい時代になったってことはあるでしょう。本当に守らねばならないものってのが不確かになって、つまり本作だと、バンパイア集団と釣り合わされるものが、高校のダンスパーティになってしまうわけね。そこがコメディなんだよ、と製作者側には言い分があろうが、本気で「怖さ」に挑戦してほしいな。作品を選ばずどんな映画にも登場してくるドナルド・サザーランドの盲目的映画愛を見習ってほしい。[映画館(字幕)] 5点(2011-06-19 10:37:56)

35.  春にして君を想う 《ネタバレ》 荒涼とした風景が見もの。かえってああいう風景の中での生活をリアルに見せてくれたほうが、ファンタジックになったかもしれない(と思うのは、そこで暮らしていないせいかも)。かつての村が生き生きしてた時代の場に、味わいがあった。セリフのない冒頭。犬の埋葬はラストの伏線であった。埋葬で始まり埋葬で終わる仕掛け。ジープでのホームからの脱走、ふっと消滅してから幻想が入り込んでくるのか。労働者を逮捕できない警察のエピソードは、あれは不法出稼ぎ外国人労働者かなんかなのか。死んだステラの脇を流れる砂が美しい。風土と幻想性が互いに相殺してしまっているような気がした。風土そのものの幻想性をもっと掘り起こせたのでは。[映画館(字幕)] 6点(2011-03-03 09:28:16)

36.  パーフェクト・ワールド 少年に銃を拾わせ自分に狙いをつけよと言うブッチ、ラストの伏線でもあるが、少年にとって不意に「父」のようなものが目覚ましく現われた瞬間でもあって、ここから逃げ出す早朝の感じなんかいい。伏線と言えば、動き出した車の前でブレーキをかけるまで動かないのもそうだ。そういうふうにシナリオを組み立ててるんなら、「あそこ」でピッと決めて終わりにしちゃえばいいのに、なんかこの人の映画はいつもちょっと長い。そのあと原での向かい合いが続く。退屈はしないんだけど、なんか着地後に演技してる感じ。ローラ・ダーンは必要あったのか。[映画館(字幕)] 6点(2011-02-18 13:24:17)

37.  バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト アタマで家庭人(父)としての主人公を見せてから、自分の世界に引き入れていく。捜査の最中に真剣に話し込む野球賭博の場なんかリアリティ。そういうドキュメント的な面白さでいくのかと思っていると、後半で突然遠藤周作的なテーマに転調する。そこのつながりに滑らかさが感じられないのは、監督がその落差をこそ見せたかったのか、それとも宗教と無縁のこちらのせいなのか。それほどイタリア系にとってはカトリックってのが根深いものではあるのだろう。次第に賭博にはまっていく経過はよく分かる。次は勝つ、という気分。テレビつけるとスリーランホームラン打ったところで、ヨシッ、と思って見続けると、それは11-0が11-3になったところだった、なんての。別に賭けてなくても、そういうときの気分って分かるな。無免許運転娘の場もねっとりしてて リアル。刑事のやくざな日常のリアリティに対してカトリック信仰の葛藤のリアリティがもひとつ迫ってこないのは、ほんと、演出のせいか宗教鈍感症のこちらのせいか、あるいはやくざ刑事に似合い過ぎてるハーヴェイ・カイテルのせいか、分からない。[映画館(字幕)] 6点(2010-09-27 09:55:42)《改行有》

38.  パルプ・フィクション 三すくみの好きな監督だが、これにもあり、またこの映画そのものも、支え合っている三つのストーリーの三すくみ状態と言えなくもない。人間の面白さへの興味よりも、人の世の面白さへの興味が、こういう形式を作らせるのだろうか。面白いことはとても面白いが、材料を十分に見せられて、チャッチャツと料理を簡単に済ませられた気分もある。話の突発性はやはり楽しく、こうなるとこれからの展開はどうなるんだ、ってなスリルがしばしば訪れる。ユマ・サーマンにカウ・ガールと言い、トラボルタに踊らせた。あとクリストファー・ウォーケンをベトナム帰りにしてたっけ。旧作への挨拶を忘れない律儀さというよりも、単にユーモアと取るべきだろう。フェイド・アウトにもとぼけた味がある。そういった笑いのなかに、負け犬の最後の復讐というか、男意気のドラマがあって芯になっている。[映画館(字幕)] 7点(2010-07-26 10:05:22)

39.  パリ空港の人々 《ネタバレ》 空港に閉じ込められた彼らこそ国籍から自由になり、外の世界の人々こそ国によって監禁されている、ってなところにまで踏み込むのかと思っていたが、そこはシャンソンの国、アンゲロプロスの国境とは違う。でもラスト、身分証も金も持たず「他国」に踏み出していく勇気に希望がある。テーブルの上で予告された小さなパリから、やがて本物のパリの夜景に展開するとこがまあ見せ場なのだが、このパリは何なのだろう、郷愁か。だとするとやはり閉じ込められていた彼らが「不幸」だったということになる。そうじゃなく、あの夜景は幻想の故郷と見てそれへの訣別ととればいいんだな。外に出た彼の前には無機的な自動車道路が広がっていて…。[映画館(字幕)] 6点(2010-06-17 12:00:34)

40.  800 TWO LAP RUNNERS スポーツと青春。登場するのはモーツァルト型とサリエリ型。この「悩まない」モーツァルトのほうの青春が生き生きしていてよろしい。サリエリが「あいつ尊敬してんだ、何にも考えないで本能だけで生きてるだろ」と、海岸で妹と遊んでいるモーツァルトを遠くに見ながら言う。サリエリを捉えるときに、ロングでゆっくりとしたクレーン移動が好んで使われ、とりわけグランドで脚の悪い少女との場は美しい。ハードル女史と屋上での待ち合わせ、背後に巨大な飛行船のようにゆっくりと国立競技場が浮遊してくる移動もいい。スポーツ選手にはスポーツ選手としての固まった人生コースがあり、その中で走らされているという窮屈感があるのだ。そのコースから外に出ることの恐怖は、ときに死を招いたりもするぐらいなんだな。スポーツものにしては珍しく曇天を選んで撮っている。たまたまかも知れないが、意図したのなら立派な選択。走ると空が大きくなる、と言っていたが、それが晴れ渡った空とは限らないわけだ。ラストは実際にワンカットで800を走らせていた。たしか市川監督の『東京オリンピック』でも、800をワンカットで撮っていたと記憶しているが、違ったかな。[映画館(邦画)] 6点(2010-03-17 12:02:21)

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