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コメント数 170
性別 男性
年齢 43歳
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1.  ハンニバル・ライジング 《ネタバレ》 ハンニバル・レクターは、復讐とカニバリズムと死体の偏愛がごっちゃになっていて役柄が全然見えてこないし、そのため彼を追う刑事の存在も非常に曖昧、なのでこの映画の主筋の弱さは明白であり、しかもその主筋にやたらと関わるオリエンタリズムは日本人でなくても失笑モノの錯誤振り(要するに日本刀が使いたいだけ。でもその単純な欲望が意外と好きだったりする)。但し、ハンニバルを引き取り、武士道精神のようなものを彼に教えつつ、次第に危うい関係になっていくレディ・ムラサメことコン・リーは捨てがたい。コン・リーはハンニバルを守る為に体を張る。それは意識されたものではなくてほとんど反射的に行われる行為であり、異常性格や過去のトラウマでぐちゃぐちゃになったハンニバル以上に、「ヒロシマ」という言葉が出るくらいで後は写真でしかその過去が語られないレディ・ムラサメは映画的な存在と言っていいし、それ以上の特別な何かになろうとしていない、つまり役柄に徹している。矛盾するようだが、この映画はハンニバル・レクター的なものが薄まれば、いい映画になっていたかもしれない。[映画館(字幕)] 6点(2007-04-29 02:26:48)

2.  ハラキリ(1919) かなりレアな映画であることは間違いない。しかし激しくアレな映画でもある。や、別にストーリーは変ではないし、荒唐無稽なジャパニーズエキゾチズム(なんだそりゃ)もそこまで大げさではない。「サムライ、ハラキリ、ゲイシャ、ニホンジンミナキチガイネ!」みたいな西洋のバカバカしい視点を想像していたが、むしろ江戸時代の日本人の精神性をフリッツ・ラングがそれなりに表現しようとしている雰囲気があることに驚いた。坊主=エロの図式とか、いったい誰が教えたんだろうか。ラングはおそらく日本が好きなんだろう。そしてヨシワラはもっと好きなんだろう(メトロポリスを見よ(笑))。アレな映画と書いてしまったが、それは日本人として無意識に感じてしまう違和感を映画の文脈の中に混合してしまったからかもしれない。もっと純粋に、フリッツ・ラングの飽くなき好奇心にアンテナを当てていれば、「ドクトルマブゼ」とか「スピオーネ」で感じた興奮を味わえたのかもしれない。反省。でも、やっぱり変でしょ。 だから、やっぱ10点。[映画館(字幕)] 10点(2005-10-20 14:43:29)

3.  パリところどころ 「ヌーヴェルバーグところどころ」と言ってもいいこの映画。オムニバス形式で、パリの人間模様を色々な視点から眺めるというのが表面にあるが、その中身はやはりヌーヴェルバーグの勝利宣言めいている。時代の寵児となったゴダールを始めとして、6人の監督が短編の中でやりたいことをやりまくり、怖いもの知らずの雰囲気が作品を包む。要はどの作品も凄くトンがってる。その中で圧倒的な出来だと思ったのは、ジャン・ルーシュという人の「北駅」という作品。わずか15分程度の小品ながら人間の(男と女の)本質に迫る、ワンシーン・ワンショットで撮られたこの作品は、「10ミニッツオールダー」のヴィクトル・エリセの傑作と同様に短編という制限がまったく枷になっていないどころか、その短い時間の一秒一秒が更なる強度をもち、息苦しいほどに映画のエッセンスが詰め込まれている。こういう映画をこそ、スタイリッシュな映画というのだろう。些細な事が次第に重大な意味を持ってくるようになる過程、そしてそんな出来事すらパリでは一風景として切り取られてしまうような無常感がたまらない。ゴダール、ロメールなどの作品もそれなりに面白いが、ジャン・ルーシュのこの作品は「パリところどころ」においては別格だろう。この人、2004年に交通事故で亡くなったらしい。[DVD(字幕)] 8点(2005-06-20 01:51:28)

4.  初恋のきた道 「アジアンビューティー」ことチャン・ツィイーです。ヨーロッパが嫉妬する黒髪です。その彼女を世界に知らしめた出世作がこれ。チャン・イーモウがまるで彼女を「発見」したかのように、カメラは彼女を追っていきます。多少のバランスの崩れは無視。ファインダーに捉えられた未来のアジアンビューティーは完全無欠の田舎娘を演じきり、目がくらむほどの極彩色の風景に溶け込んでました。俗っぽい審美眼は置いとくとして、純愛映画に欠かせない、古き良き時代の設計は完璧だったと思います。ただ、映画としてはつまらんですね。まったく映画に無駄がないから。チャン・ツィイーの魅力もノスタルジックな田舎も全部計算されてる感じがします。だから想像のつく魅力でしかないんです。ゴダールの映画におけるアンナ・カリーナを見るとドキッとする瞬間が何度もありますが、これは計算できるものではないと思います。最近観たものだと「子猫をお願い」のペ・ドゥナにもそういう瞬間がありました。この映画はチャン・ツィイーを愛玩化することで、カメラの先にある意外性を排除している気がします。ただ一ヶ所だけ、料理を作っているシーンではチャン・イーモウの愛玩から解放されているように思いました。「紅いコーリャン」のコン・リーも、やっぱり料理を作るシーンがいいんです。蒸したギョーザを手で触るシーンがこの映画の白眉ですね。[CS・衛星(字幕)] 6点(2005-04-21 07:45:12)

5.  パッチギ! もっと話題になってもいいかなと思うぐらい話をあまり聞きませんが、これは間違いなくいい映画だと思います。暴力が友情の手段となり得た時代を井筒監督が自分もその世界に入り込むようにして作ったんだろうから、つまらないはずはないです。だってあの人なら当時の話を面白おかしく何日でもしゃべりそうじゃないですか!登場人物がみんな魅力的なのは井筒監督のノスタルジックな愛情ゆえです。ただ、やっぱり政治的な面の説教はつまんないです。が、それがいいんです。だってあの高校生たちが高尚な民族問題語るより青臭い理想論ぶら下げてる方が全然本当でしょう。この人はその理想論に地で乗っかる熱い漢(おとこ)魂を全面的に信じているということです。だ・か・ら・こ・そ、ダウンタウンの松っちゃんも書いてましたが彼なりの「答え」を見たかった。これはかなり残念。なんか、いざ答えに向かう時に限って急に都合がよくなるんですよ(笑)。例えば「GO」でもそうでしたが、死んだ奴が全然「生きて」こないんです。キモの部分がビックリするぐらい形式的で事務的なんですね。まるで在日問題そのもののように。でも、それはこの映画では問題でないんでしょう。そもそもそちら側に突っ込んでいって苦悩する井筒監督って一体誰?って感じですし。テーマはあくまでパッチギ!ということなんです。お前らワシの頭突きで目ェ覚ませと。余計なお世話?いやいや、これは必見です。井筒監督は本当に純粋なガキなんだな(もちろんこれは褒め言葉です)と思いました。[映画館(字幕)] 8点(2005-03-07 12:44:37)(良:2票)

6.  春の惑い 二大巨頭のチェン・カイコーとチャン・イーモウが中心となって作り上げた「『黄色い大地』な映画」は最近では影を潜め、二人は現在エンタメ路線に転向(?)し、映画が業界として向かうべき欲求(=金儲け)に正直であろうとしている中、同じ第5世代の監督が珠玉の作品を現代中国の映画作家に向けて作った。とにかく静かな映画だ。音だけでない。人が、自然が、暗闇が、戦後の傷跡が全て静かなのだ。そしてこの静かさは今にも消えてしまいそうな危うさでもある。例えばチャイナドレス。主人公である女性はまさにチャイナドレスを着るために生まれたんではないかというぐらい、よく似合う。ところが、チャイナドレスというのはあの形から考えてもエロスの欲動が潜んでいると自分で勝手に思ってるのだが(だって・・・エロいよね?)、この人が着ると、それはタナトスへの指向となってしまう。そうさせているのはこの女性の演技はもちろんのこと、この映画の最も重要な要素である光の力だろう。指す光、漏れる光、揺らめく光・・・光ってこんなに沢山の種類があったのかと思わせる。その張本人は夜だ。この映画では夜に物語が動く。相当に広い屋敷の中でわずかな光がこぼれている。この光の強弱が感情の振幅になって観る者を惑わせる。物語は非常に単純だ。しかし古城の春の訪れをこんな形で伝えてくれた監督の力量は凄い。また中盤、大河に浮く小船の上で登場人物たちが「美しき青きドナウ」の中国版を合唱するシーンが個人的には大好き。リーピンビンの映像に酔うしかない。[映画館(字幕)] 9点(2005-02-14 13:28:09)

7.  パルプ・フィクション 個人的にはもっとも愛着のある映画だから客観的評価は不可能。一体何度見たことか。徹底したチープさもここまでくればある意味芸術。サミュエルLジャクソンが、「Hmm, tasty burger!」って言ってむしゃぶりつくバーガーは、マジでうまそうだ。おそらく生粋のjunk food junkieであろうタランティーノだからこそジャンクフードをうまそうに食べる角度とか構図を撮れるんだろうなあ。ユマ・サーマンとジョン・トラボルタがデートしたレストランでの食事もホント高カロリー低栄養って感じで、「ナマ焼け」って何だよ(笑)とは思うんだけど、この辺もアメリカ人の偏食度合いがよく出ている(ような気がする)。食べ物だけでも十分に語れるこの映画は、どうでもいいことやタイトルのようにチープな話の集合となっている。「どうでもいいこと」を見る目は人それぞれ全く違うけどタランティーノからはそこに愛を感じさせるぐらいだから、タランティーノの映画を語るとつい顔がほころぶし声もうわずってしまう。しかも冒頭のエゼキエルがどうとかっていう話、千葉真一の映画がアメリカで配給されたときに配給側が勝手につけた序文の引用なんだって!?降参です。ちなみにこの映画はビデオで見たほうがいいかもしれない。スクリーンで見たとき妙に照れくさかったんで。10点(2004-12-10 13:02:05)(良:1票)

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