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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12
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1.  博士の愛した数式 素数好きなもので、この原作は大好きだったんだが、映画には向いてなかった。でも映画で生きそうなところもあったのに使ってない。制限時間が80分ってのなんかすごく映画的に使える気がするが、あまり興味を示さない。2日目の訪問をナレーションで済ませてしまうもったいなさ。終盤の次第に時間が短くなっていくサスペンスも省かれた。周囲を牧歌的な風景にして、「癒し」の話にしてしまった。この監督は素数にドキドキした経験がないのではないか(たとえば最近ではおととし2011年が素数年だった、次は2017年だ、2040年から2052年までは素数の暗黒時代だが、2080年代には4回素数がめぐる、というようなことにドキドキするかしないか、ってこと。素数とは違うが今世紀最大のドキドキは2の11乗の2048年)。タイガースの試合を観にいくのを、周囲の牧歌的風景に合わせてリトルリーグに変更したのは、手間を省いたってことでもあるんだろう。それでも「友だちとしてきたんです」のところではホロッとしてしまった。[DVD(邦画)] 6点(2013-11-04 09:25:57)

2.  パッチギ! オックスの失神騒動で始まって、ひょうひょうと変身していくオダギリジョーなど、当時の風俗回顧的楽しみがあった。「かわいそうな被害者」としてマイノリティを描くまい、という意志が感じられ、彼らは“なんじゃこらっ”と踏ん張っている。しかしこれも別の「型」になってしまってはいなかったか。キムラ緑子の、特別な見せ場を与えられていない存在感のほうが印象深かった。鴨川がイムジン河となり、争う二派がなにやら祭りをやっているようなニギワイを見せる乱闘の場。看護婦・真木よう子の跳び蹴りがよい。あとギャグとして好きなのは、ラジオ局でディレクターが上司をつまみ出し、血を流しながら戻ってきて「話はついた」とニコニコ笑ってるとこ。[DVD(邦画)] 6点(2013-09-23 09:51:03)

3.  春が来れば 日本で公開される韓国映画は都市部のが多く(単に私がそういうのしか見てなかったのかもしれないが)、これは炭坑の町、韓国の田舎の空気を味わえたのが一番の味。眼病が流行ってるの。あれは炭坑ゆえの地域病なのか。といって公害告発には進まない。最後に主人公の音楽講師も眼帯をして、町に溶け込んだことを示す。世話焼きの母親もいい。あくまで比重は主人公の大人であり、生徒は脇。親の理解を取り付けるときにふさわしいのは「威風堂々」。あの曲のように至って正攻法のドラマで、その正攻法ぶりが心地よかった。(今思い出したが最近の『昼間から呑む』ってのも地方色を味わえる韓国映画だった)[DVD(字幕)] 6点(2013-09-20 10:20:53)

4.  春との旅 どうも仲代達矢が漁をしていた海の男に見えない。いまでは地方でも老人がああいうインテリめいた眼鏡をかけていても自然なのかも知れないし、しゃべり方なんかも一生懸命第一次産業従事者めいた語り口をしてはいるんだけど、カップ酒よりもコーヒーが似合ってしまう。当人は初めてコーヒーを飲むと言っても、実はいつも書斎でコーヒーを飲んでいそう。リア王になるべき人が老漁師のふりをしてるみたい。まして足を引きずって歩くと、映画史的に『炎上』でのインテリ学生を思い起こしてしまう。この主人公の設定が面白いのは「甘えたじいさん」を、どことなく肯定的に捉えているところだ。孫のお荷物になりたくないと家を飛び出した主人公は、一見「毅然として」いるようでいて、実は親族に甘えられると思っているその「可愛げ」がポイントだろう。「毅然」が苦手な私としては、このじいさんの甘えぶりが頼もしかった。孫に心配かけて本人はいつもモリモリ食ってる。でも仲代だと、本質が「毅然として」いて、それに「甘え」のメッキが掛けられているように見えてしまう。これに出た役者でなら、大滝秀治のほうが良かったんじゃないか。全体、良作ではあるが、なにかNHKが祝日にでも放送する単発ドラマ的な「コクの薄い良作感」が漂う。[DVD(邦画)] 6点(2011-09-10 10:17:17)

5.  ハート・ロッカー 普段は不必要に爆弾が爆発するアメリカ映画で、「爆発させない」人を描いている。とにかくずっとピリピリしていて、物語を語るというより、そのピリピリした日常を追体験する映画として優れていた。なぜイラクにアメリカ兵がいることになったのか、とか、爆弾を仕込む側の言い分にはまったく触れてないが、兵士の視線に徹して戦争を見る立場を取った以上、それでいいと思う。イラク戦争はベトナムの反復やってる、と思いがちだったが、いろいろ違いはあるのだな。装備は進歩した。ほとんど宇宙服にまで膨らんだ。それだけ土地の空気からは隔絶されてもいるのだろう。暑さにしても、あっちのジャングルの湿度とこっちの砂漠の湿度の違いは、体感で大きく違うだろうし、そこから来る不安の質も変わってくる。ジャングルのどこにベトコンが潜んでいるか分からない不安に対して、こちらは都市で周囲から無表情に見守られ続ける不安がある。ときにカメラで撮られている。見られ続けていることの居心地の悪い不安、どんな厚手の防護服でも防げない視線にさらされること、これがイラクのアメリカ人の立場なんだ。いいとこばっか描いてるな、とは思うが、少なくとも戦争の大義を主張してはいない。そんなもの探しても見つからないだろうが。[DVD(字幕)] 7点(2011-06-16 12:15:08)

6.  パラノーマル・アクティビティ 《ネタバレ》 この手の主観映像ものも、ちょっと飽きが来るかと思っていたが、けっこうまだ楽しめてしまった。どうも映画の楽しさの核に触れている気がする。主観映像ではあるが、カメラが第三者として夫婦の間に割り込んでいるようにもなっていて、そこに新手の面白味が感じられた。こうやって夫婦でカメラを交替しながら撮影し合っていると、普段より喋ることになる。ほとんど喋り合っている。この第三者としてのカメラを意識して、微妙に演じ合う感じになる。そこで夜や留守の時の沈黙がひときわ浮き上がり、カメラの記録係としての役割が生きてくる。この設定が悪くない。早回ししていた時間表示が普通のテンポになると、さあ来るぞとドキドキする。やってることはたわいなくても、神妙に耳を澄まし目を凝らした。ケイティはカメラを憎悪していても、旦那が一人で階段を下りようとしているときなんかけっこう撮影を手伝っていて、そこらへんはもうちょっと自然な段取りがほしいような気もするが(ほかにも不自然なとこはいっぱいあるけど)、そうさかんに「映さないでよ」と言っていたカメラに自ら近づいてくるというラストは、それなりに落としどころとして正しい。ああそうか、旦那にはカメラ・妻には悪魔、という二つのノリウツリの話でもあるわけか。まだまだこの手の手法は開拓できそうだ。[DVD(字幕)] 7点(2010-09-07 09:37:45)(良:1票)

7.  母なる証明 《ネタバレ》 母の周囲は克明に描かれる、それ以外は曖昧渾沌。その曖昧渾沌に対して母は挑戦し、ある種の充実に包まれる。探偵の興奮、忍び込みの冒険、発見と推理、この充実の果てにたどり着いた野が映画の冒頭シーンだ。この映画驚かすところは多々あるが(被害者の奇妙な姿勢、不意の鼻血、話の思わぬ展開…)、この冒頭はかなりびっくりした。普通の実写シーンの背後に音楽が聞こえてきて、それに合わせて踊り出す、ってのは、ミュージカル映画でダンスに入る瞬間のスリルそのもので、日常から非日常へのジャンプするあの興奮がこう使われ得るとは思わなかった。ミュージカルでは平凡な日常から、たとえば恋を歌い上げる非日常へとジャンプするわけだが、ここでは探偵の充実した時間から、非日常へジャンプした空虚を描いていたと後で分かる。母と子と立場が逆転してしまい、あの充実が抜け落ちていく、「しっかりしなきゃ」という心構えが必要なくなってしまう。そして罪の重さだけがのしかかってくる。あのラスト(併走する車から撮影し続けたのか)、本当に達成できるのかどうか定かでない忘却へ向かって、非日常を疾走するダンスで締められると、なんか物語としてはスッキリできなくとも、映画としてはきれいに決まったな、と得心させられてしまった。被害者を街から丸見えの場所に置いたんだよ、と悪友が推理するあたり、そういう方向(社会の悪意)に話が収斂していくのかと思ったのだが、そうでもなかったみたい。あの夜景のカットはかなりゾクゾクしたんだけど。[DVD(字幕)] 7点(2010-07-30 10:14:41)

8.  ハッピーフライト(2008) この監督には岡本喜八に近いリズム感があって(とりわけ初期の『ひみつの花園』や『アドレナリンドライブ』)、後継者を期待してるんだけど、今回はあんまり弾んでなかった。そのかわり伊丹十三の「世の中のものごとの構造への興味」的な面白さがあった。つまり職場としての飛行機とはどんなものか、という興味。今まで映画で飛行機が出てくると、たいていパニックの舞台としてで、そうでない普段の飛行の裏側にも面白いドラマがあるんじゃないか、とスーパーの裏側を探査する興味と同じように見てみる。その姿勢でラストまでやった方が良かったんじゃないか。乗客には気づかれないように、次々と起こるトラブルをいかに関係者が処理していったか、そして何事もなかったようにホノルルに到着するまでの映画にしたほうが、面白かったんじゃないかな。それだとドラマとして盛り上がらないのではと心配し、つい中途半端に小パニックを入れたために、映画そのものが小さく縮んでしまった、そんな気がする。コックピットのいろんな操作や飛び交う用語、飛行機に詳しい人が見れば、いちいち面白いのかもしれないなあ、とは思った。[DVD(邦画)] 6点(2009-09-29 12:07:07)

9.  バンク・ジョブ 《ネタバレ》 せっせとトンネル掘ってるまでは新鮮味なく既視感いっぱいだったが、無線が傍受されるあたりから面白くなる。ドラマ全体が活発に動き出す。警察のほうの救急車を使った罠も、ちょっとしたしくじりによって助かったり、などのくすぐりも楽しい。ごちゃごちゃもつれあった全体像が、だんだん整理されていき、立場上の善悪ではなく、別の倫理によって善玉と悪玉が左右にきれいに分かれていく。マフィアとコソ泥、法律の上では同類でも映画の世界では違うのだ。警察側も左右に分離し、善玉悪玉が再編成されていく。ここらへんの駅のシーンに向けた展開が醍醐味だった。ただしもっとカラッとしたトーンで押し切ってほしかったのに、後半いささか陰惨さが強まるのが、マフィアがらみだから仕方がないとしても、じめつく。[DVD(字幕)] 6点(2009-08-17 11:56:15)(良:1票)

10.  パコと魔法の絵本 前作前々作では、テクニックと物語とがお互いを引き立て合って成功していたが、今回はテクニックが物語を圧倒し、監督独自の世界ではあるものの、私にはつらかった。テクニックに走っても成功している映画はある、洗練の問題だろう。誰が演じてるんだか分からないメイクってことでは『ディック・トレイシー』なんて映画もあって、あれもテクニックが物語を凌駕した作品だったけど、コミックの原色を生かした世界はとても魅力的だった。こっちは、コミックでなくCGアニメ的な原色の世界を実写(プラスCG)で作り上げてみせたかったのだろうが、やたらウツロなはしゃぎがうるさく、疲れた。もちろん作者の側には「意図的にそのウツロを狙ったのだよ」という決めのセリフがあるわけで、それを言われちゃもう好みの問題でどうしようもない。でもせっかく役者を揃えながらCGで塗りつぶしてしまうのは、なんとももったいない。土屋アンナが「『かわいく』って書いてあるんだよ」と台本振りかざして照れ隠しに怒鳴るところ、などいくつか、俳優が輝く場があることはある。[DVD(邦画)] 5点(2009-07-16 09:10:43)(良:2票)

11.  パキスタン・ゾンビ 《ネタバレ》 これ、ゾンビじゃないみたいだけど、まあいいか(なんか公害問題を絡めてたよう)。興味としてはイスラム圏のホラーってのはなんか違うのか、ってとこだったが、これがまるでおんなじ。月に雲がかかり、軽薄な都会の若者たちが森のなかを逃げ惑い、最後はドラキュラよろしく杭を打ってとどめを刺す。ホラーは文化圏に関わりなく世界を一つにした。キリスト教圏ホラーのあの手この手をそのままコピーできてしまう。十字架が出るべきところが「アラーは偉大なり」のお守りペンダントになるだけが違い。怖い人がブルカ(女性が顔を隠すあれ)をかぶっているのが、あちらならではの趣向だった。それとトゲトゲのついた鉄球を振り回すのが、全然根拠はないけど、古代インダス文明発祥地の伝統の誇りを感じさせた、関係ないか。怖がりたい気持ちや、その怖がる趣向は、どんな文化圏でも共有できるのだ。それは嬉しいことでもあり、しかし画一化という点では寂しくもある。もっととんでもない地獄ってのを人類は想像できないのだろうか。音楽が、ラ、ミッドレミードシラ、ミッドレミー…とタランティーノ好みの70年代風安っぽさが満ちた曲で、気がつくと風呂のなかで口笛吹いてたりした。[DVD(字幕)] 5点(2009-06-15 12:02:45)(良:1票)

12.  ハプニング 《ネタバレ》 人々が立ち止まっている光景ってのが好きで、なにか異変が起こりかけてる雰囲気がいい。一つの拳銃が次々と渡りながら、自殺が伝播していくとこもよろしい。何かが殺しに襲ってくるのではなく自殺が伝染していく、ってアイデアはいいのだから、そこをもっと詰めてもらいたかったんだけど、けっきょく危険は外部から描かれるばかりで、もったいなかった。自分がどうかなっちゃうんじゃないか、という不安、自分の体調に過敏になっている描写があれば、もっと新鮮な緊迫感が描けたのに、風や変人といった外部にばかりサスペンスが託されてしまう。あと映画のせいではないけど、DVDのパッケージでかなり見せどころがバラされちゃってて、知らずに見てたらけっこう効いたのになあ、と思う自殺も多々あった。テレビが「当局による防衛線が張られました」と言ってたけど、そういうものが無効になる事態の恐怖を狙ってたんじゃなかったのか。“当局の防衛線”って具体的に何なんだ? それと主人公が植物原因説を採る根拠が薄弱なので、木や草がざわめいても「こちらも本気で怖がっていいのだろうか、後で引っ繰り返される仕掛けがあるかもしれないから中途半端に怖がっておこう」と用心した気分で見ることになり、もひとつのめり込めない。でも「いったい何が起きてるの?」って不安は、アメリカのトラウマになってるんだなあ、とは思った。ヒッチコックの『鳥』の、シナリオにあって最終的には使われなかったネタに、車のルーフの引っ掻き傷ってモチーフがあるんだけど、それをイタダいたのかな、あそこ。[DVD(吹替)] 6点(2009-06-04 12:05:09)(良:1票)

13.  パラノイドパーク 《ネタバレ》 美少年がシャワー浴びたり着替えたりしているのを、舐めるように観察している監督に付き合わされた映画という気がしないでもないが、いちおう表向きのテーマとしては、しだいにヤバい感じが迫ってくる少年の心理スケッチってとこか。おどおどした気分と、そこから脱出したい願望のようなものが、絡まり合って並存している。ヤバい感じを迫るのは、桜金造似の東洋系刑事だったり、テレビの黒人アナウンサーだったりするのは偶然だろうか。イラク戦争の実感がピンと来ないという白人少年の周囲を、有色人種がゆっくりと固めていく。スケボーの上下にうねる画面と、静かに滑るような水平の移動撮影が対比的に登場する。うねる画面のときにのみ少年らは生き生きとし、学校の廊下をゆっくり移動で捉えたシーンは『エレファント』の惨劇につながっていくようなおぞましさがある。そして実際、大がかりな水平移動である貨車で惨劇が起こるわけだ。音楽が、ラジオをザッピングしているような変な使用法で、事件のときにはベートーヴェンの第九、モールを移動しているときはフェリーニの「魂のジュリエッタ」、ガールフレンドと喧嘩別れするときは、彼女の声が消えて「アマルコルド」が流れ出す。この全然合わなさが狙いなのか、分からない。フェリーニの時代の牧歌的な悪童と対比してるって感じでもなさそうだし。[DVD(字幕)] 6点(2009-05-26 12:08:15)

14.  はつ恋(2000) 《ネタバレ》 田中麗奈は『夕凪の街 桜の国』でも、親の過去を探ってたが、そういえば昔っからそういうことやってる娘だった。こっちは母親。この映画の真の主役は母の原田美枝子の方で、病気と真摯に対峙し、泰然と死の準備を進めていく芯のある女性。それだけなら、まあ原田なら似合った役どころで特別印象に残らなかっただろうけど、初恋の人真田が病床のベッドに訪れたとき、スッピンの顔を恥じらい、枕で隠すとこが白眉。毅然とした外面のなかに潜んでいた柔らかい内面が、一瞬姿を現わすとこがよかった。あくまでこれは中年の物語、その過去の青春を現在の青春が探検するために、奥ゆきが出た。[映画館(邦画)] 6点(2008-10-02 12:10:52)

15.  パーフェクト ストーム 《ネタバレ》 実話に基づいてって言っていながら、生き残りがいなかった船の話が描かれてる。ヘンなの。あんまり感情移入ができないから、ただデキゴトとして眺めるしかなく、でも嵐だもんだから映像も吹き降りでよく見えない。現代のエイハブたらんとして人を死に誘い込むというほどの皮肉な視点もなく、なんとなくゴクローサンという映画だった。自然災害映画ってのは、このころ竜巻とか噴火とか流行ったけど、まず面白くなかったな。人為的な事故だとビル火事でさえ面白いのに。ドラマというものは、原因に人間がいないといけないのだろうか。ところどころ、広い海における心細さを感じさせるあたりは、ちょっと良かった。[映画館(字幕)] 5点(2008-09-22 12:09:11)

16.  犯人に告ぐ 《ネタバレ》 警察内部のドロドロが織り込まれるのにもちょっと飽きてきて、それも新しい切り口があるのならいいけど、定型の俗物ぶり。まあそのせいで主人公が、時代劇で言えば素浪人のニヒルな風貌を帯びることにはなるが、こっちも定型っぽい。ともかく犯罪も捜査もマスメディア抜きでは成り立ち得ない時代になりつつある、ってなリアリティはあった。無数の誰かに見てもらうことが前提で悪心も起これば、その無数の誰かを引き込ませられなければ捜査も難しくなる時代。各警察署は見てくれのいい刑事をメディア用に雇わねばならなくなる。テレビが警察を超えた権力者になりつつあるな、と思わせたところが、この映画の手柄だ。ある日、警察が掌紋を採取しにまわって来たら、私なんか悪いことしてなくてもつい逃げちゃって、容疑濃厚のリストに入れられちゃう、絶対。[DVD(邦画)] 6点(2008-09-18 12:13:48)

17.  ハンニバル(2001) 《ネタバレ》 アメリカには、中世コンプレックスってのがあるみたい。開拓という神話の時代からすぐ近代になっちゃって、活力はあるけど、歴史によどみというか深みがない。カトリックから逃げ出したものの末裔としての、カトリックコンプレックスでもあろう。残酷だけど高貴な中世のカトリックの闇を体現するレクター博士に、もてあそばれることの屈折した快感。これらはひっくるめてヨーロッパコンプレックスだ。舞台はフィレンツェ、BGMはゴールドベルク変奏曲となれば、屈伏も極まる。ジャンカルロ・ジャンニーニに久しぶりに会えたのに、あっさり殺されちゃうのが寂しかった。[映画館(字幕)] 6点(2008-08-20 11:08:11)

18.  バスを待ちながら 《ネタバレ》 ボリス・ヴィアンの小説「北京の秋」のアタマを思わせる出だし、またブニュエルの『皆殺しの天使』もヒントになってるようで、あちらはシュールレアリズムがごく自然に日常につながっている。通過地点であるバス停が、巣となって住処に変わっていくファンタジー。前半は、アメリカにもロシアにも頼らずに自力でバスを動かそうっていう政治的メッセージが感じられるが、しだいに純粋なファンタジー性が濃くなる。いちおう夢落ちなのだが、その夢を皆が共通に見てるってとこが大事で、生理現象としての夢と希望としての夢とが重なっている。強欲な缶詰男は夢に参加できなかったし。どうでもいいことだけど、あちら方面の映画の主人公って日本人から見るとすごくニヤケて見えるんだよな(子どもの時「怪傑ゾロ」のガイ・ウィリアムスを見てそう感じたのが最初)。文化によっていい男の基準が違うよい例だろう。[映画館(字幕)] 7点(2008-07-02 12:16:26)

19.  バーバー 《ネタバレ》 日常からの脱出をもくろむ小市民の悲喜劇。半分近くインチキかもしれぬと疑いつつも、ドライクリーニング話に投資してしまうまでの閉塞感がある。事件を起こした後も、犯罪が露見することをさして恐れていない。今と変われればそれでいいと思っているのに、常に疑いはよそへそれ、彼は床屋に取り残されてしまう。弁護士に俺が殺したと言っても、取り合ってくれない。もう自分の床屋からの脱出はあきらめ、娘のピアニストの夢に賭けるのだが、彼女には才能がなかった。まあ、幻滅のつるべ打ち。日常ってこんなにも手強いものだったのか。ところがひょんな逮捕によって、やっと床屋以外の場所へ旅立てることになる。床屋の椅子のような電気椅子。いままで客が座っていた場所にやっと自分が腰を下ろせた、という皮肉な安堵感、ここらへんがコーエンの味ですか。ベートーベンのピアノソナタの緩徐楽章が、彼が求めてやまなかった慰安の世界を暗示する。[映画館(字幕)] 7点(2008-06-29 12:15:05)(良:3票)

20.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 おとぎ話と現実とがぶつかりあうのかと思っていたら、歴史をおとぎ話に呑み込ませてしまったような映画だった。悪役の大尉が歴史上のファシストを再現するというより、童話の憎々しい継父の造形で、幻想と現実とが対立するというより並行している感じ。別にそれでもいいんだけど、フランコがまだ生存中に作られた『ミツバチのささやき』より緊張に欠けるのは仕方なく、こうして内戦の歴史の記憶が過去の物語になっていくのだろう。興味深かったのは、生まれてくる息子への大尉の思い込みの強さ。もう妊娠中から男の子と決めている。男から男へという父権の強さが、カトリックの国ではいまでも重苦しいということか。そう思うとアルモドバルの女性映画の見方にも、また新たな視点が加わってくる。話の終わらせかたも、同じスペイン映画の『汚れなき悪戯』をちょっと思い出させ、やはりカトリック的なものを感じた。実はこの映画で一番感動したのは、手のひらに目玉のある化け物の登場で、江戸時代の百鬼夜行図にも、両方の手のひらに目があるのっぺらぼうがいる。そっくり。バケモンの想像力において世界は一つだなあ、と感動した。[DVD(字幕)] 7点(2008-06-17 12:18:36)(良:3票)

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