みんなのシネマレビュー |
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1. 引っ越し大名! 《ネタバレ》 国替えをテーマにした時代劇というのは珍しいと思うし、「超高速!参勤交代」と原作・脚本が同じ人というのもうなずける。もちろん話自体も面白い。しかしどうもメリハリが悪く、けっこうシリアスな題材をコメディタッチで描いている作品だと思うのだが、コメディ要素が少し強すぎて全体的に軽すぎる印象で、見やすい娯楽時代劇としてはそれでいいのだが、もうちょっと重さがあっても良かったのではと思う。それでも主人公が国替えの準備のために奮闘している前半は興味深く見たし、主人公が本当に大切なものならすべて書き記すことが出来るだろうというシーンは言われてみればその通りかもとも思って印象にも残るし、人を減らすためにリストラを慣行するシーンも少しやるせなさがある。しかし、後半は急ぎ過ぎた感があり、主人公が国替えに同行することが出来ないヒロインと結婚するのはかなり唐突に感じるし、西村雅彦演じる悪役も途中にチャンバラを入れるために出した登場人物という感じで、少し無理やり感がある。それに終盤も急ぎ過ぎな感じがして慌ただしい印象で、もうちょっとじっくりと描いても良かったのではと思ってしまう。(いきなり時代が飛んでしまったのはビックリ。)全体的に見て二時間以内にまとめるのは無理があったような感じがして、せめて二部作くらいならと思わないでもないが、そうもいかないのだろう。今年初めに見た「ジョゼと虎と魚たち」がすごく良かった犬童一心監督だが、やはり作家性の強い監督ではなく、職人監督として仕事を卒なくこなす監督なのだと思う。(犬童監督の映画をいちばん最初に見たのは「タッチ」だったのだが、もし「ジョゼと虎と魚たち」を最初に見ていたら一発屋監督の印象が強くなっていたかも。)ちなみに、ユニコーンの主題歌は本作の雰囲気にとてもよく合っていた。[DVD(邦画)] 6点(2021-09-04 23:28:27) 2. 人斬り 《ネタバレ》 かなり以前から見たいと思っていたが、DVD等が出ておらず、なかなか見る機会に恵まれなかった映画の一つなのでようやく見れたことがまず嬉しい。幕末の「人斬り以蔵」として有名な岡田以蔵を主人公に、彼と武市半平太や、坂本竜馬、田中新兵衛らの関係を描いているが、橋本忍の脚本はやはりしっかりとしていて、武市の命令で次々に暗殺を遂行した以蔵が、結局は使い捨てにされてしまうという悲劇性がよく描かれていて見ごたえがある映画で、素直に面白かった。(見たいと思いながらも五社英雄監督ということで不安にも思っていたが、今まで見た五社監督の映画の中ではいちばん面白い映画だと思う。)勝新主演映画を見るのが久しぶりなのだが、演じる以蔵は豪快な存在感があり、座頭市とはまた違う勝新の魅力を感じることができる。仕事に参加させてもらえなかった以蔵が一日かけて長距離を走るシーンは映像的にとても美しく、異様な迫力があり、印象に残るし、勝新は「薄桜記」の冒頭とかでも走っているが、どこか「決闘高田馬場」のバンツマをほうふつとさせるものがある。武市役の仲代達矢はギラギラした存在感で、武市のこれでもかというような非情さをうまく演じていて、メインキャストの役では久しぶりに見る気がするのだが、あらためて名優だと感じた。この二人に対して竜馬を演じる裕次郎は勝新との共演がみどころとなるが、やはりというかなんというか違和感があり、裕次郎には時代劇は似合わないなあと思う。そして忘れてはいけない三島由紀夫演じる田中新兵衛。三島由紀夫を俳優として見るのは「からっ風野郎」以来、二度目なのだが、本作でも演技はかたい。しかし、独特の存在感とオーラを放っていて、その演技のかたさも新兵衛に不思議とマッチしているし、なかなか味があり、良かった。本業が俳優ではないながら、この役は三島由紀夫の俳優としての代表作になるのではないだろうか。本作は三島事件の一年数か月前に公開されているが、濡れ衣を着せられた新兵衛が切腹するシーンはその後の三島由紀夫の運命を予言しているかのようで驚かされた。[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-08-15 18:38:52) 3. ひとり狼 《ネタバレ》 村上元三がなかなか映画化の許可を出さなかった原作を雷蔵主演で映画化した股旅時代劇。雷蔵の股旅ものはあまり見た記憶がないが、こういうアウトローな役柄を演じていてもピッタリとハマっているし、カッコいい。それに雷蔵念願の企画だけあって、本作の雷蔵がそうとうこの役に入れ込んでいるのが分かり、その演技は素晴らしいの一言で、この前見た「眠狂四郎 女地獄」と同じく雷蔵にとって晩年の主演作だが、本作はその雷蔵晩年の代表作とも言っていいのではないかと思う。映画としても見ごたえじゅうぶんで長門勇演じる渡世人(これがいい味出してる。)の回想形式でストーリーが展開していくという構成がいいし、主人公 伊三蔵の渡世人としての悲しみや孤独がうまく描かれていてドラマ性も高く、作り手の良い映画を作ろうという意気込みがよく感じられる傑作である。前半で渡世人の作法を細かく描いていたのも新鮮だった。(ほかに今まで見た時代劇では市川崑監督の「股旅」くらいしか思い浮かばない。)印象に残るのはやはり伊三蔵が自分の息子と話すシーン、実子を前に父親と名乗ることのできない伊三蔵の辛さには思わず感情移入せざるを得ない。それにラスト、伊三蔵が息子にいう「見ろ!人間の屑のすることを。」というセリフがなんとも切なく、心に残る。[DVD(邦画)] 8点(2014-08-08 00:04:31)(良:1票) 4. 緋牡丹博徒 仁義通します 《ネタバレ》 「緋牡丹博徒」シリーズ最終作。一作目から脚本に参加していた鈴木則文監督が参加しておらず、今回の監督である齋藤武市監督も外部からのシリーズ初参加ということで、いささか不安な面はあったが、ラスト作らしい盛り上がりを見せていて面白く、そんな不安は一気に吹き飛んだ。これまでもこのシリーズにお竜の周辺にいる登場人物のひとりとして何度か登場し、「鉄火場列伝」ではとくに印象に残る役回りを演じていた待田京介が今回もお竜の仲間のヤクザ役と思わせておいて、敵側のヤクザに寝返るというのは捻った展開で面白かったし、クライマックスの殴り込みも異常なほどに盛り上がっていて見ごたえじゅうぶん。(若山富三郎演じる熊寅が殴り込みに参加するのってこれが初めてのような気がする。)その中でお竜を殺そうとした待田京介の刃が一転して自分の仲間に向けられるあたりは分かっていてもグッとくるものがあるし、ここらへんがこの後の実録ヤクザ映画とは違い、まさに任侠映画らしいところ。片岡千恵蔵(時代劇以外で見るのは初めてなので、初めて登場したときは一瞬、誰だか分からなかったが。)はラストシーンでさすがの貫ろくでお竜をねぎらう。このシーンがお竜とそれを演じた藤純子へのねぎらいのように見えるのはおそらくそう見えるよう意図的に演出しているのかもしれない。最初のほうの菅原文太と松方弘樹の会話は見ていてつい「仁義なき戦い」の一幕のように思えたが、「仁義なき戦い」のシリーズはこの翌年の開始。偶然かもしれないが、なにやら藤純子の引退とともに勧善懲悪の任侠映画も終焉を迎えてしまったように感じられるのが少し興味深い。これでこのシリーズすべて見終わったわけだが、どの作品も水準が高く、娯楽性にも富んでいて面白いシリーズだったと思うし、富司純子としてしか馴染みのなかった藤純子の魅力に改めて気づかされたシリーズでもあった。そんな藤純子とお竜さんに心からありがとうと言いたい。[DVD(邦画)] 8点(2013-04-24 14:59:19) 5. 緋牡丹博徒 お命戴きます 《ネタバレ》 シリーズ第7作。今回は冒頭にいつもの主題歌が流れないので、このシリーズとしてはちょっと異色なオープニングだ。前作「お竜参上」に引き続いて加藤泰監督が登板しているが、さすがに3本目ともなると平凡な印象で、どちらかといえばオーソドックスな仕上がり。公害問題を絡めているのは実際に公害が社会問題化していた時代背景を取り入れた結果だと思う。同じ年に東宝も公害問題をテーマにしたゴジラ映画「ゴジラ対ヘドラ」を製作しているが、本作は公害問題はあくまで背景にすぎず、シリーズ作品として見た場合、さしたる違和感もないのだが、なにか中途半端に当時の社会問題を取り入れてしまった感があり、そこがちょっと残念。先にも書いたように加藤監督のほかの2本と比べて平凡な出来ではあるのだが、殺された鶴田浩二の遺体を目の前に組の者たちが泣き崩れるシーンの長回しや、そのシーンの最後で突然始まるお竜の独白のシーンは加藤監督らしいこだわりが見え、印象に残る。お竜が陸軍大臣と会うシーンは、陸軍大臣のキャラクターがテンション高くて思わず笑ってしまった。クライマックスの立ち回りの場所が鶴田浩二の初七日法要の場というのもある意味強烈だが、喪服姿で啖呵を切り、立ち回りを演じるお竜のかっこいいこと。やはりこのシリーズを見るたびに思うが、お竜というのは藤純子いちばんのはまり役で、彼女以外のお竜は考えられない。鶴田浩二の幼い息子との交流はもう少しドラマを持たせたほうが良かった気がするが、それでも二人が抱き合うシーンはとても感動的でまさに名場面と言っていいくらい。たとえ凡作であっても印象に残るシーンやセリフがあるだけで見て良かったと思えるから映画というのは不思議だ。好きなシリーズなので次回が最後の作品になるのがちょっと惜しい気がする。[DVD(邦画)] 7点(2013-04-16 14:28:21) 6. 緋牡丹博徒 お竜参上 《ネタバレ》 シリーズ第6作。今回は「花札勝負」を手がけた加藤泰監督が再登板し、ストーリー的にも「花札勝負」の続編的内容となっているが、なんといっても加藤監督の映像美学が冴えまくる映画になっていて、全篇にわたって美しい映像が多く、中でも雪の降り積もる橋の上でのお竜(藤純子)と青山(菅原文太)のシーンはこれでもかというくらいに美しく、もはやこれは任侠映画を超えて芸術的な感じさえするし、このシーンだけでこの映画が只者ではないことが伝わってくる。ほかには、お竜が探し求めていた娘・君子と再会するシーンも普通ならカットを割ってしまうであろうところを長回しで捉えており、あざとさがなく逆に印象的な名場面となっていて、いずれにせよ最近の映画にはない質の高さを感じることができる。君子と島の銀次との恋もスパイスとして効いている。「一宿一飯」では凄みのある悪役として登場しながら、ラストの殴り込みでいいところもなくあっという間に倒された菅原文太が今回はお竜の味方となる流れ者を演じているが、その描き方もよく、ラストシーンも印象的だ。山下耕作監督の一作目の美しさも印象に残っているが、今回はそれ以上に美しさという点では秀でていて、映画としての質の高さも相まってシリーズ最高傑作との呼び声が高いというのも納得できる完成度の高い作品で、もちろん個人的にも今まで見たこのシリーズの中ではいちばんの傑作だと思う。あえて難を言えば熊虎(若山富三郎)の登場が唐突で、しかもその登場にややムリヤリ感があることぐらいだろうか。[DVD(邦画)] 8点(2013-04-11 18:29:26)(良:1票) 7. 緋牡丹博徒 鉄火場列伝 《ネタバレ》 久しぶりにこのシリーズ見たけどやっぱり面白い。相変わらず藤純子演じるお竜は強さと優しさを兼ね備えていて、美しく、それでいてかっこいいし、やはりこの役は藤純子だからこそここまで魅力的なのだとあらためて思うし、この「緋牡丹博徒」がシリーズとして続いた理由の一つもそこにあるのではないかと思う。さらに今回でいえば待田京介がなんといってもよく、今までこのシリーズを含め何度か見た俳優だが、あまり意識して見ていなかったせいか、ここまでかっこよく、そして印象に残るというのははじめてかもしれない。鶴田浩二と血のつながりのない幼い娘のエピソードはこの前見た「関の弥太ッぺ」を彷彿とさせている(探していた女が死んでいたと分かるシーンは「関の弥太ッぺ」と全く同じような印象。)が、両方とも同じ山下耕作監督だけに意識してるのかもしれない。でもこの親子のエピソードもやっぱり泣ける。とくに、鶴田浩二が死ぬ間際のシーンは、鶴田浩二の演技も相まってか、思わず涙が出そうになった。ヤクザ映画というと血なまぐさいリアルな決闘をつい思い浮かべるのだが、この映画での最後のお竜と天津敏の決闘シーンはまさに華麗に舞うようなという言葉がピッタリの演出で、非常に美しかった。中盤に突如として登場した丹波哲郎が最後にいいとこ持っていったり、阿波踊りをクライマックスに持ってくるなど、終盤は大盛り上がり。それでいてどこか切なさを感じさせているエンディングが山下監督らしいところだ。[DVD(邦画)] 8点(2013-04-04 14:07:09)(良:1票) 8. ひばりの森の石松 《ネタバレ》 沢島忠監督の作品はあまり見ているわけではないが、「股旅三人やくざ」、とくに錦之助が主演した第三話の喜劇的面白さが印象に残っている監督で、この映画も実に明るい作風で、これぞ明朗時代劇という感じ。森繁久弥の印象が強く、見る前は少し不安だった石松役の主演の美空ひばりも本当にハマリ役で、何本か男役で出演した映画があるみたいだが、違和感が最初から最後まで全くなく、見事に演じきっている。唐突に夢の中で始まる竜宮城レビューのシーンも美空ひばりが東映の監督の中でも特に信頼していたという沢島監督の演出がうまいのか、彼女にあまり興味のない自分でも楽しく見ることができた。終盤のボウリングのシーンも通常の時代劇では絶対にあり得ないようなシーンだが、純粋に見ていて楽しい。(ああだこうだ考えながら見る映画ではない。)後半の盲目の姫(片岡千恵蔵の娘が演じてる。)とのやりとりには思わずほろりとさせられる。最近見た東映の映画と言えば去年ぐらいからヤクザ映画が中心だった気がして、それ以前の東映時代劇を見るのがかなり久しぶりな気がするが、見終わって本当に心の底から楽しかったと思える映画だった。[CS・衛星(邦画)] 8点(2012-11-16 22:33:14) 9. びっくり武士道 《ネタバレ》 野村芳太郎監督は松竹でのコント55号の映画シリーズも手がけていて、これもそのうちの一本なのだが、原作は松田優作主演の時代劇「ひとごろし」と同じ。「ひとごろし」は松田優作の喜劇俳優としての側面がよく出た映画だったが、本作は主演がコント55号ということもあって「ひとごろし」よりもコメディー色の強い映画になっているが物語自体は「ひとごろし」と同じく、犬が嫌いで甘党で臆病な侍である双子六兵衛(萩本欽一)が上意討ちを買って出て、力では到底かなわない武芸の達人である仁藤(坂上二郎)を奇想天外な作戦で追い詰めるというもので、テーマやメッセージ的にも「ひとごろし」と同じなので普通に時代劇としても楽しめる。ただ、仁藤に対して六兵衛が「この男はひとごろしだ。」と周囲に吹聴して回り、驚いた宿屋や茶屋があわてて店を閉める展開が「ひとごろし」以上にコミカルに描かれ、かなり漫画的になっている印象。「ひとごろし」を見た時には思わなかったことだが、ひとごろしという噂だけで上意討ちの相手を追い詰めるのはどうなのとか他人の噂をすぐ信じてしまうのはどうなんだろうと思えてくる。だからだんだん仁藤のほうが哀れに思えてくる。コント55号の映画を見るのはこれが初めてだが、原作があるためか思ったよりは真面目な映画だった。(おそらく一連のシリーズでは本作は異色作かも。)しかし先に見たせいか「ひとごろし」のほうが面白かった。ただ、終わり方は本作のほうが良い。いろいろ書いたが、見ていて退屈はしなかったので、また機会があれば野村監督のコント55号映画は見てみたい。[DVD(邦画)] 6点(2012-08-29 22:35:44) 10. 必死剣 鳥刺し 《ネタバレ》 藤沢周平の「隠し剣」シリーズの一篇を映画化した平山秀幸監督の時代劇。山田洋次監督以外の藤沢周平原作映画を見るのは初めてだったが、かなり本格的な時代劇でなかなか面白かった。打ち首覚悟で藩主(村上淳)の側室(関めぐみ)を斬殺したトヨエツ演じる主人公・兼見の処分がなぜ軽かったのかという点は最後まで興味を引くし、この主人公の生き様とでも言おうか、それを描いたドラマとしてもよく出来ていると思う。この兼見と吉川晃司演じる別家との対決、およびその後の大人数を相手にした決闘シーンがすごい迫力で、最近はCG処理されることの多い流血シーンを血糊で撮影したりしていてかなり気合が入っていてこれぞ本物の時代劇という感じがした。そして最後に兼見が繰り出す必死剣 鳥刺し。先ほども書いたように最初、側室を殺めた時点から死を覚悟しているような兼見だが、この技はまさにそんな兼見の執念がにじみ出ていて本当にすごかったし、兼見を利用するだけしておいて側室同様に道理に反することをし、結局は鳥刺しによって命を落とした家老・津田(岸部一徳)や最初に兼見に殺された側室の最期は兼見とは対照的でなんとも皮肉めいている見事な結末だった。最後のシーンが来るはずのない兼見を待ち続ける里尾(池脇千鶴)というのも余韻を残すうまいラストシーンだった。ただ中盤あたりに兼見と里尾の濡れ場があったのは余計だったかな。それに岸部一徳を時代劇で見るとたいがい悪役なので意外性に乏しく、側室役の関めぐみもわかりやすすぎる悪女でちょっと残念。とはいえ、トヨエツを時代劇の主役で見るのは初めてかもしれないが、静かな抑えた演技で味のある演技をしていてとても良かった。それにかなり久しぶりに見た平山監督の映画だったが、また平山監督の映画に興味がわくにじゅうぶんな出来だったと思う。[DVD(邦画)] 7点(2012-07-06 23:28:32)(良:3票) 11. びっくり五十三次 《ネタバレ》 野村芳太郎監督初期の美空ひばりもの。タイトルから「次郎長三国志」のような時代劇を連想するが、確かに森の石松や清水次郎長は登場するものの、大半は宿の中で話が展開し、タイトルと内容があっていない気がする。野村監督の時代劇は初めて見たが、あくまで美空ひばりや高田浩吉のアイドル映画と言う感じである。中村玉緒が出ているが、大映でデビューしたんじゃないんだなというのが意外だった。飯田蝶子と左卜全のコンビぶりは「若大将」シリーズでもお馴染みなので見ていてなにか安心感がある。ラストの映画館の場内放送を模した演出がユニーク。DVDに収録されているフィルムの保存状態があまりよくなかったのが少し不満だが、実際、リバイバルの映画館で昔の映画を見るとこんな感じなのかなと思う。[DVD(邦画)] 5点(2012-04-06 00:30:44) 12. 一人息子 《ネタバレ》 小津安二郎監督のトーキー映画第1作。戦前の小津監督の映画には喜劇色の強いものや、外国映画を意識した作風の映画が多いように思うのだが、初のトーキー作品となった本作では、「東京物語」に代表されるような親子の物語で、笑いのシーンはほぼ皆無で、シリアスな作風となっている。しかし、本作も間違いなく小津監督らしい映画となっていて、息子の東京での生活の厳しさや、その現実を見た母親の切なさを丁寧に、それもこの親子の絆を優しくあたたかく描いており、戦前のこの頃から小津監督はこういう親子のシリアスなドラマも描ける監督だったんだなあと感じた。焼却炉の煙突を見ながらの親子の会話、そしてその夜の口論はなんだか息子の立場になって考えた場合にすごく身につまされるものがあってつい息子に感情移入してしまう部分もあった。馬に蹴られた近所の子供のために息子がとった行動を見た母親が息子にかける言葉がああ、この母親は息子がどんな暮らしをしていても、自慢の息子には変わりないのだなと感じさせていて感動的だった。しかし、やはりこの映画が描いているのは理想と現実は違うということで、帰京した母親が「息子も偉くなって」と周囲に語るものの、一人になるとしょんぼりとしているラストシーンはこの母親の心情というものがすごく理解でき、侘しい気持ちになるのだけども、その前のシーンで東京で息子が今度母親が来るときにはこんな侘しい姿は見せないぞと奮起する姿を描いていて、そこに希望を感じさせているのがいい。「東京物語」だともっと親子関係はシビアに描かれるのだが、まさしくこれはその原型といったところ。主演の飯田蝶子は晩年に演じた若大将シリーズでの主人公の祖母役が大好きなのだが、この映画では息子を時に厳しく、そして優しく見守る母親を演じていて若大将シリーズとは全く違う一面も見せているのだが、その演技が非常に素晴らしく、間違いなくこの映画は彼女の代表作と言っていいだろう。もちろん息子を演じた日守新一も素晴らしい。ところで、親子が映画館で外国のトーキー映画を見るシーンで「これがトーキーってやつですよ。」というセリフを息子に言わせているのは、初めてトーキー映画を撮ったことが嬉しくてたまらないという小津監督の素直な喜びが感じられるシーンではないだろうか。[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-11-24 02:21:44) 13. ひばり・チエミ・いづみ 三人よれば 美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみ共演の三人娘シリーズ第4作。美空ひばりの東映での契約が終わったことにより久々に作られた三人の共演作とあってか、回想シーンでシリーズ過去作の映像を使っていたりして同窓会的な雰囲気がただよっている。この三人の共演作を見るのがまだ2本目なのでそれでちょっとどうかなあとも思ったが、そこはあまり気にせずに楽しめた。「大当り三色娘」でもそうだったが、三人とも明るくのびのびと演じていて見ていてとても楽しい。映画の半分くらいは歌のシーンなのだが、三人が劇場にレビューを見に行くシーンで、その舞台に立っているのがこの映画で主役を演じている三人だったりするのがユニーク。このシーンは三人のエンターティナーとしての力量を存分に見ることができ、すごいなと再認識させられる。この三人の中では江利チエミの明るくて元気でコミカルなキャラクターが好きなのだが、この映画を見る限りでは本人が実生活では決してしあわせとは言えない人生をおくり、若くしてさびしい死に方(それも三人の中ではいちばん早くに。)をしたという現実が信じられない。三人の中では唯一リアルタイムでは全く知らない人なのだが。三人の相手役の中では岡田真澄の怪しいキャラが際立っていて、いい味を出している。宝田明は「大当り三色娘」でもひばりの恋人役だったよなあと思いながら見ていた。[CS・衛星(邦画)] 5点(2011-09-04 14:01:13) 14. 緋牡丹博徒 二代目襲名 《ネタバレ》 シリーズ4作目。今回は原作が存在するためか、これまでの3本とややストーリーの趣が異なっており、音楽担当も主題歌を手がけた渡辺岳夫から木下忠司に変更されているのだが、ほとんど違和感もなく楽しめた。おじ(嵐寛寿郎)の遺言により、国の鉄道事業を請け負ったお竜(藤純子)が川船頭たちと対立するという筋立てだが、川船から鉄道への移り変わりをテロップで説明するというのは、このシリーズでは珍しいような気がする。小沢茂弘監督の映画はこれで初めて見たが、やはり東映時代劇をやっていた監督らしく、娯楽映画としての見せ方を心得ていて飽きさせない。ラストの決闘シーンも見ていてかなり盛り上がることができた。それに今回もお竜はカッコよく、藤純子は個人的にはどちらかと言えば富司純子と改名してからのほうがいいと思っているのだが、このシリーズをずっと見ていると若い頃の彼女もいいなあと思えてきて、思わずこのシリーズの次回作が早く見たいなと感じるようになった。3度目の登場となる高倉健も相変わらず渋い。あえて難を言うならば長門裕之を前半で退場させてしまったのはなんかもったいないし、若山富三郎演じる熊虎が登場しないのは少し残念な気もするが、まあそれでもおもしろかったんだからいいか。残念といえば行きつけのレンタル屋に1作目からこの4作目までしか置いてないのも残念だ。このシリーズ機会があれば残り全部見てみたい。[DVD(邦画)] 7点(2011-08-10 02:24:54) 15. 緋牡丹博徒 花札勝負 《ネタバレ》 シリーズ第3作。加藤泰監督の任侠映画はこれで初めて見るけど、冒頭の汽車にはねられそうになった盲目の少女をお竜が助けるシーンからこの監督らしいクローズアップが効果的に使われており、雨や雪なども1作目の山下耕作監督が作り出す映像美とはまた違う美しさがあって印象的だ。お竜の母性は前作でも描かれていたが、今回は目が治った少女に「お母さんは自分よりキレイだった。」といって励ますシーンが叙情的に描かれており、お竜の母性が前作よりも深みをもって描かれているのがいい。シリーズ2度目の登場となる高倉健が雪の中で見せる哀愁(この人には本当に雪景色がよく似合う。)も加藤監督ならではと思える映像美と相まっていて素晴らしかった。1作目以来の登場となるおたかを演じる清川虹子もいいが、なんといっても清川虹子とともに抜群の存在感を見せつけるアラカンが印象的で、老いてはいても親分としての凄みと貫ろくをじゅうぶんに感じることができる演技を見せている。熊虎親分が啖呵を切るシーンも、このシリーズではコメディーリリーフ的な存在なだけにいつもの若山富三郎の凄みを利かせた演技とは少し違う印象を受ける。全体としては1作目よりは多少劣るかもしれないが、加藤監督の格調高い演出が利いていて、シリーズの中でも評価の高い作品というのがうなずける映画になっていると思う。面白かった。[DVD(邦画)] 8点(2011-08-04 01:30:28) 16. 緋牡丹博徒 一宿一飯 《ネタバレ》 シリーズ第2作。コミカルなシーンやキャラクターを増やすなど前回よりも娯楽性が増していて、今回も面白かった。脚本も書いている(今回は野上龍雄との共同。)鈴木則文監督の映画はこれが初めて見たのだけれど、前回の山下耕作監督の演出との違いも見ていて面白いし、それにお竜を演じる藤純子が前回よりも美しく感じるのは、やはり鈴木監督が自分で脚本も書いているからというのもあるのかもしれない。鶴田浩二はあまり東映の映画では見てないけど、なんかこう、粋なかっこよさを感じる。ドラマとしては前回に比べてやや物足りない感があるものの、それでも笠松(天津敏)に騙され、犯されたことを悔いて死のうと考えている菊池(村井国夫)の妻をお竜が説得する場面や、西村晃と白木マリの夫婦の絆が感動的だった。でも最後、鶴田浩二が射殺されるのはなんか強引に感じるし、笠松組のナンバー2みたいな菅原文太の最期もえらいあっさりとしているのがちょっとなあ。この二つ、とくに鶴田浩二扮する風間周太郎とお竜の別れはもっと別な形のほうが良かったんではないか。たとえ殺されるのであってももっとドラマチックな何かがほしかった。面白かったのは確かだけど、個人的にはお竜のキャラも含めて前回のほうが好きかなあ。[DVD(邦画)] 7点(2011-07-27 02:33:36) 17. 緋牡丹博徒 《ネタバレ》 藤純子主演の任侠映画シリーズ第1作。藤純子の主演映画を見るのはこれが初めてで当然このシリーズを見るのも初めてという状況だったんだけど面白かった。藤純子(富司純子)といえば大林宣彦監督の「ふたり」の美加と千鶴子の母親役の印象が強く、若い頃の東映での出演作で印象に残っているものが少なかった(まあ、あまり見ていないというのもあるんだが。)のだが、この映画の藤純子は美しく、そしてかっこよくてもうこの映画一本見ただけで藤純子がなぜ当時人気があったか分かるし、もちろん今、見ても純粋にいいと思える。山下耕作監督は花を使った演出がうまいからと本作の監督に抜擢されたそうだけど、お竜が一度は堅気になろうとしたが、父親を殺されたことで再びヤクザの世界に戻る決心をするその心情を、牡丹の色が白から赤に変わることで表現する演出をはじめ、ところどころに牡丹の花のショットを挟むことによって血生臭いヤクザ映画に美しさを与えている。お竜が財布を水の中に捨てるシーンも彼女の悲しみをよく表現したシーンだろう。「私は男になった。」と口では言っていても女は女。そんなお竜のつらさがしっかりと描けているからこそ、主人公であるお竜=矢野竜子という女性を描いた人間ドラマとしても深みのあるものになっている。それに片桐(高倉健)と加倉井(大木実)の関係にもドラマ性を持たせるなどただの勧善懲悪ものではない深さを感じさせているのが良い。脇のキャラもよく、山本燐一扮するフグ新とか、おたか(清川虹子)の息子である吉太郎(山城新伍・・・だったんだ。)など印象に残る脇役が多かった。普段凄みを利かせた役柄の多い印象の若山富三郎がお笑い担当でコミカルな演技をしているのはかなり意外な感じがする。[DVD(邦画)] 8点(2011-07-21 15:43:22)(良:1票) 18. 非情都市 《ネタバレ》 特ダネを必死に追い求める三橋達也演じる新聞記者を描いた鈴木英夫監督の映画。三橋達也演じる主人公が記事のためなら危険を冒してでもものにする、たとえやばいネタであっても記事のためなら何でもするというようなはみ出した男で、こういう新聞記者は実際にいそうで妙にリアルだなあと思っていたら、井手雅人の脚本は実在した新聞記者の手記をもとにしているとのことで納得。こういう一つのことに執着し、周りをよく見ない人物というのは三橋達也にはうってつけで、記事のために恋人(司葉子)にも平気でスパイをさせたりするようなダメ男を見事に演じていて、やっぱり三橋達也にはこういうだらしない男が似合うと改めて感じた。鈴木監督の演出もシャープで、冒頭の主人公と刑事のトイレでのやりとりや、水道から流れる水までもクールな感じがして印象に残る。最後の最後、事件の犯人を匿ったことがばれて逮捕されても、まだ諦めておらず、新聞社を首になったことも信じられない様子の主人公には呆れてしまうが、三橋達也が演じていると、まあしょうがないかとも思えてしまうのが不思議。まあ、同情や共感は出来ないけど。全体的にもう少しサスペンスとしての緊張感が欲しかったような気がしないでもないが、なかなか面白い映画だった。[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-05-28 14:38:58) 19. 冷飯とおさんとちゃん 《ネタバレ》 田坂具隆監督が「ちいさこべ」に続いて山本周五郎の原作を錦之助主演で映画化したもので、なんと今回は短編小説3篇をオムニバス形式で映画化し、その三人の主人公を錦之助が演じるという異色作。錦之助は今井正監督の「武士道残酷物語」でも主人公七人を見事に演じ分けていたが、やはりこの映画でもそれぞれキャラクターの違う三人を見事に演じ分けていて素晴らしく、また、田坂監督の演出も三話とも違うカラーが出ていてさすがにうまいと感じる。最初の「冷飯」。冒頭の主人公がくず屋(浜村純)とぶつかるシーンからどこかユーモアがあり、全体的に明るい雰囲気の話で、後味がよく、この話がいちばん楽しめた。中でも三男を演じる小沢昭一はやはりしゃべっているだけで笑いを誘う。それに母親役の木暮実千代も印象的だ。次の「おさん」は「冷飯」と比べると暗い感じがどうしてもしてしまうし、主人公に感情移入しづらいという点もある。現在と過去を交錯させて主人公の一人語りでストーリーを進行させるという構成もちょっと複雑なのだが、この話がこの三話の中で完成度が最も高いように感じた。この話で主人公の妻を演じるのが三田佳子。イメージ的にあまり好きではない女優だが、この話の彼女は素晴らしく、中でもラスト死んだ後に幽霊となって主人公の前に現れ、主人公と語り合う中で自らの心情を語るシーンが感動的だった。最後の「ちゃん」は、タイトルだけだとなんか「子連れ狼」を連想してしまいそうだが、いかにも山本周五郎原作らしい家族の話で、ありがちなんだけど泣ける。ここでは既に書かれている方もおられるが、森光子。この人も苦手なのだが、ラストの主人公とのやりとりはなかなか良かった。話は少しシリアスだが、三木のり平演じる泥棒の仕草などは見ていて笑える。そしてなにより家族の温かさがよく描かれていて見た後とても幸福な気持ちになれるのがいい。個人的にはさっき書いたように「冷飯」がいちばん楽しめたが、それでも三話ともとても丁寧に作られている佳作だと思う。余談だけどこの映画の公開と同時期に東宝で黒澤明監督の「赤ひげ」が公開されているんだけど、意識したのかどうかは知らないがこの映画でも「赤ひげ」と同じ佐藤勝が音楽を担当しているのが面白い。それにしても映画のタイトルが律儀でシンプルだなあ。[CS・衛星(邦画)] 8点(2010-04-05 16:18:59) 20. ひみつのアッコちゃん 海だ!おばけだ!!夏まつり 《ネタバレ》 「ひみつのアッコちゃん」第2期シリーズ劇場版第2作。夏休みに友達とおじいちゃんの所に来たアッコ。そこでおじいちゃんから白いイルカについて聞かされ、大将たちが捕まえに行ってしまうという話。前作はアッコたちの住む町内が舞台だったのに対して今回はサブタイトルにもあるようにいかにも夏休み公開作らしく海とイルカの伝説が伝わる島が舞台となっていて、ラストもアッコたちが祭りで踊るシーンで締めくくられている。でも話としては前作のほうが面白かった気がするなあ。おじいちゃんの声を演じているのが宮内幸平なのだが、東映のアニメでこの人の声を聞くのはかなり久しぶりで、違うアニメだが、思わず彼が演じる亀仙人が懐かしくなってしまった。終盤でアッコが変身する白い竜を見て体色や姿が違うのに神龍を思い浮かべてしまったのはもちろん東映のアニメだからというのもあるが、これも一因かも。チカちゃんを演じる山本圭子はなにかテンションが「サザエさん」の花沢さんそのままのような感じだが、もともとコミカルな役のイメージが強く、やはりこういう役を演じているとコミカルさがほかのキャラよりもあり、見ていてつい笑ってしまう。それだけに「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」の吉乃役は初めて見た時にはかなり意外に感じた。[CS・衛星(邦画)] 5点(2010-03-27 12:38:50)
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