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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  ブレインデッド 《ネタバレ》 スプラッターってのは演出じゃなく細工で怖がらせるわけで映画としては二流だよな、と思っていた私。でも「いかにして人体を破損していくか」という唯一のテーマの元に様々なアイデアを盛り込み、億劫がらずにせっせと陳列している本作のゾンビ退治、最初のうちはヤレヤレと見ていたが、まだやってるまだやってると見つめているうちに呆れると言うより感動してしまった。基本は大雑把に二つ、『分解』と『突き抜け』であろう。『分解』パターンでは顔の上顎部がちぎれて蹴り回され床をツーツー滑っているのが印象深い。首で切れるより上顎と下顎で分離されるほうが理に適っていそうだ。「ばらばら」がもちろん『分解』の究極形だが、人体の部分がこんもり山になっているキッチンのシーンなぞ感動させる。予想を越える量が感動の質に変換するのだ。ジューサーによる撹拌や芝刈り機によるミンチ化も『分解』の一種、主人公が血糊でツルツル滑って死体の頭を踏み潰しつつ逃げるといった活用も工夫を感じる。顔の皮膚がすっぽり脱げてしまうのも『分解』に分類しておこう。剥がれた顔の皮膚を接着剤で貼り付けるというのもあった。『突き抜け』は『分解』に比べると地味であるが、ひと手間かけることによって味わいが出てくる。首の裏側から手を突き入れられて口から出てくるなどというのが基本のパターンだが、その死体を電球に引っ掛け顔が内側から照らされるようにするというひと手間でだいぶ印象が良くなる。顔面を二つに割って悪魔の赤ん坊が顔を出すのは『分解』と『突き抜け』両方を兼ねたパターンだろう(ゾンビ同士の間に邪悪な赤ん坊が生まれるってのはいかにも西洋。東洋の幽霊はこの世に残してきた赤ん坊に乳を与えるために出没したりするのだから何という違いであろうか)。しかし問題はなぜ「こういったこと」が面白いのだろう、ということだ(少なくとも面白がる人がある程度いるから商品として成立している)。実際に向かい合って食事している人から膿が垂れてスープに広がったりしてたら、たぶんあまり楽しくない。何で笑って見てられるんだろう。食事をさせると傷口からドロドロしたものが漏れ出てきてしまうおかしさは何なんだろう。昔の人が美女の死体が腐っていく変容図をまじめに描いた精神と、どこかで細~くつながっている気がしないでもない。これ時代が57年と監督が生まれる以前に設定されてい(以下字数制限のため割愛)[映画館(字幕)] 9点(2011-08-24 09:52:48)

2.  フィオリーレ/花月の伝説 《ネタバレ》 ナポレオンの時代から現代まで続く、金と恋に翻弄される愚行の歴史の総括、と言うか。ある一族の物語を、現代を織り込みながら、寓話的に展開していく。紫の花の咲き乱れる中を、犯人を絶対見つけてと狂い走る娘、おまえを幸せにするから、言う兄ともつれつつ進んでいくと舗装道路に出て現代に戻り、次の19世紀の物語に続いていく、といったような趣向の展開。復讐が縦糸になっている。次は、墓場から戦争の時代(『サン・ロレンツォ』の時代ね)へ移る。試験官にちびちびと祖先のことでいびられたりして、縦の歴史の確認。レジスタンスへの共鳴はあっても、手をあらためられると、ばれてしまう。本人は黙秘してレジスタンスと連帯したつもりになっても、手が・自分の身体が裏切ってしまう。俺が助けたことを忘れるなよ。けっきょく金の力で「誇りある死」を奪われてしまったわけで、一族の影の歴史の宿命というか。そして最後に現代の少年と娘。老人の述懐を聴いて、笑い出す息子と涙する娘、というふうに分離がしだいに表われてきてラストに至る。悪と善の流れはまだ受け継がれている、いう結末。こういう寓話的な世界を描くと、この兄弟の語り口はとても良かったんだけど、今どうしてるの。[映画館(字幕)] 8点(2011-02-11 10:12:09)

3.  フォレスト・ガンプ/一期一会 この主人公は単に無垢なアメリカってだけじゃなく、意志を持たない、というか、何者にもなろうとしない、ってところがポイント。アメリカ映画の主人公って、無垢な人物が何かに向かって突き進むのが好きだったのだが、彼の場合はどちらかというと逃げるために走っている。無垢かもしれないが、その名前にはアメリカの原罪が刻印されている。なにかアメリカの変化を感じた作品だった。目的に向かって突っ走らない生き方に憧れを感じ出しているのか(でもその後のアメリカを見ると、変わらなかったんだけどね)。映画としては前半の密度の高さが圧倒的。逃げることによって、アメリカ現代史に立ち会い続けてしまう主人公。プレスリーからウォーターゲイトまで。逃げの走りを、周囲が思想にしてしまう。後ろにぞろぞろ、「あ、とまったぞ、何か言うぞ」って。SFXの使い方も、この頃はだいぶ幅が出てきて内実を得た。そういう意味でも記念碑的な作品。[映画館(字幕)] 8点(2010-06-28 11:58:08)

4.  プレタポルテ 配役の贅沢さだけで、お祭り的な楽しみがある。そしてこの人の場合「お祭り的」ってこと自体が狙い目なので、大事なんだよね。つまり主役級の人たちに全員脇役をやらせている映画とも言えるわけで、アルトマンの人生観が見えてくる気がする。「すべての人は主役である」とはよく言われるけど、この人は「すべての人は脇役でもある」って言いたいんじゃないか。するとなんか、肩の力が抜けるというか、周囲に構えないで生きていけそうな気がする。主役のつもりでファッションモデルのように気取って歩いても、ほら足元には犬のクソ。虚飾を剥ぐ、などという大層なものではなく、人の世のおかしみ。マストロヤンニは、ホント、こういう役やるといいですな。ヒョコヒョコした忍び足やらせると絶品っていう名優も珍しい。[映画館(字幕)] 8点(2010-02-22 11:57:10)

5.  [Focus]/フォーカス(1996) 《ネタバレ》 浅野忠信っていいな、と思ったのがこの映画だった。強引なテレビ局の取材に押され、「えー」とか照れ笑い浮かべつつ、ストレスがたまっていくオタク青年の役。このテレビのディレクターやった白井晃がまた傑作で、強引かつ傲慢、口ばかり達者で他人を素材としてしか見られなくなっている人種を、誇張のようなリアリズムのようなきわどい線で怪演。ドラマとしては、そのオタク青年がキレ、がらっと変わるところが見せ場で、まあ落語の「らくだ」とか、そう珍しい企みではないのだけれど、ここでカメラマンの存在がだんだん怖くなってくるところがこの映画のポイントだ。カメラマンはこのクルーの中心にいるんだけど、加害者にも被害者にもならず、中立的な安全地帯を確保し、ただただ見続けているの。いや、中立を装いつつ、常に加害者の側に立ってんだな。もちろんそれは我々視聴者のことでもあって、けっして当人は傷つかない。実体験よりテレビ映像のほうに、より本物らしさを感じるようになった我々の、内なる加害者をあぶり出す。画面を経由しないと生々しくならない世界って、かなり不気味だ。[映画館(邦画)] 8点(2009-04-09 12:09:33)(良:2票)

6.  プライベート・ライアン 《ネタバレ》 冒頭、ノルマディ上陸作戦のシーンは文句なしである。戦争映画というより戦場映画とでも言うか。勝ち戦を描いていながらなんら勇壮さがなく、ただ恐怖とヒステリーが支配している狂乱の場としての戦場を描き切った。水上の騒音と水中の静寂の対比は『ジョーズ』のときと同じだが、ここでは恐怖は水上の音のほうにある。自分の片腕を探している兵や、戦友を引きずって逃げていたら上半身だけだったとか、エピソードが詰まっている。で主ストーリーの、軍作戦としての美談に狩り出される話になっていく。一人の命は地球より重い、ということの正しさと矛盾とがせりあう。兵の母親にしてみれば、どんなにきたない“美談”にもすがりつきたいという切実さがあるわけで、ここらへんの設定が緊張を生んでいた。これでライアンがつまらない男だったほうがドラマとしては正しいように思うんだが、これが好青年で、するとけっきょくこの“美談”を肯定する話になってしまってるようで、アレレ? となった。そういう映画だったのか。ここらへんがハテナである。[映画館(字幕)] 8点(2009-01-15 12:10:53)

7.  ブレア・ウィッチ・プロジェクト 禁欲の徹底が成功だと思う。こういう試みは多くの人が考えただろうが、つい伏線めいたものを作りたくなったりするもんだ。そこをじっと我慢した。死体が一つも出てこないホラー、内臓みたいなものは出たけど。作品の性質上、当然音楽がないのもありがたい。だいたいホラーでは音楽が邪魔になることが多い。本作では、テントを包み込んでくる音、足音、子どもの笑い声に、耳を澄ませられる(ただ本当なら真暗になるべき場面で、日本だと消防法で劇場内がうすら明るく、また字幕も白く光って明るく出てくるのが難点だった)。そしてやっぱり家ってのが怖い。家は巣であり、他者の領域であり、この森がこっちを他者としつつあるとこで、ヌッと王宮のように出てくる。家が出ただけで、ああ怖いな、と思ったもん。とにかく作者たちがなにものかに似せて作っていないところが一番いい。[映画館(字幕)] 8点(2008-10-18 12:10:40)(良:3票)

8.  ふたり(1991) 《ネタバレ》 オバケをスンナリ受け入れて、日常の中に組み込んじゃっている何気ない会話のトーンがいい。比較される高い基準であった姉だけど、見守ってくれると心強い。差を見るより加算していこうという人生の見方。「あたしは終わったことばっかりだけど、あんたは始まることばっかり」。家族が一人一人減っていって、最後は一人で斜面を上がっていくの。でもそれが正しいことだと納得させられる。よく雨が降るんだけど、幽霊の舞台装置じゃなく、かえって慈雨と言うか成長を促す恵みの雨なんだ。あとは赤のイメージか。赤い花、赤い糸。ストーリーの構えがハッキリしすぎちゃって道筋がわかってるぶん、ちょっとダラダラした印象があるんだけど、徐々に姉の影が薄れていくそのダウンビートに身をゆだねるのが観客の義務か。タイガースとピンクレディと緋牡丹お竜との長回し。[映画館(邦画)] 7点(2013-08-08 09:02:38)

9.  プリティ・リーグ 《ネタバレ》 姉妹で急ぎ足になる帰り道のとことか、スカウトが妹の肩の筋肉に触って「いけるかも」と思う変化とか、走りながら列車にカバンをホイホイ投げ入れていくとことか、至って職人的な腕を持った監督で、もう「女性監督」という肩書きで売りにする時代じゃないな、と思わせた映画。当時のニュースで彼女らを紹介していったシーン、マーラのとこでロングになるのが傑作。クソガキを登場させるつなぎ方とかね。テーマは「戦争と女性の社会進出」のお話で、男がいない時代のつなぎとしての・二流の・副次的な・キワモノとしての女性野球。ミニスカートをはかされ、屈辱的とまではいかないまでも、オアソビ的な設定。これに対してヒロインたちはマッスグに反発するんじゃなく、「よーし、それならその中でやってやろうじゃないか」となる女性ならではのしたたかさが見どころ。適度に男の顔も立てながら(ライフの写真)、自分たちのほうへ引きずり込んでいってしまう。酔いどれ監督も次第に生き生きしてくる、というわけ。ワンシーンだけど、実力はあってもどうにもならない黒人女性への目配りも欠かさないところに膨らみがある。後半旦那の帰還あたりから、ちょっと甘くなったか。今の日本なら女子サッカーを念頭に置いて観ることが出来そうだ。[映画館(字幕)] 7点(2012-01-25 10:09:46)

10.  冬物語 《ネタバレ》 若い娘に振り回されることに快感を感じる監督であった。あの髪結いの亭主とか、ヒロインがシャルルとの再会を祈らされるロイック君とか。ヒロインが一度きりの人生を満足に送るために、男どもはひたすら奉仕させられる。そういう状況を作ることに、この監督は熱心になってる。彼にとっての男女関係の基本。奉仕して裏切られる屈折した快感、裏切らせることであがめてるの。このシャルル君、不在だから輝く対象になったので、これからどうなるのかを見せないところが、ずるいと言えばずるく、優しいと言えば優しい。演劇による啓示。現実は演劇になり、おとぎ話のように再会する。再会のシーンでこちらの娘に対応するように、向こうに女友だちドラがいて、これが『緑の光線』の人なんだな、あの人はまだ不幸を背負ってるようだ。[映画館(字幕)] 7点(2012-01-03 10:53:59)(良:1票)

11.  不法侵入 普通は無邪気な笑顔ってのはロビン・ウィリアムズみたいにいい人を演じるときの看板なんだけど、このレイ・リオッタは無邪気な笑顔を見せて怖がらせる。なんつうんだろ、口の中央だけで笑うような感じ。必要以上に表情が澄んでいってしまう。純粋の怖さ、純愛の怖さ、一途の怖さ。この時代、純愛を描くとすると、まるでそれしかないようにサイコ人間のクレイジーな物語になってしまうんだな、ってところが一番怖かった。理想の女性への献身と、邪悪な世界への暴力。正義は己れだけにあるんだ、って義務感の裏打ちがある。ほどほどならいいんだけど、それがドン・キホーテ的な滑稽止まりならいいんだけど、やがてそれをも乗り越えると恐怖映画になってしまう。ストーリーとしてはカードが使えなくなるあたりの鈍い怖さ。この世のシステムがそっくりヤツの側にあるんだ、ってあたり。「健全な社会」ってあくまで夫婦が単位で、独身者はそれを脅かす存在なんだなあ。最後に忍び込んで料理を作っているのも怖いけど、独身者は人に料理を提供するのが夢なんだよなあ。[映画館(字幕)] 7点(2011-12-12 10:23:10)(良:1票)

12.  プロヴァンス物語/マルセルの夏 モノローグの多用でサイレント的な味を出す部分あり。父への尊敬が人としての愛着へ変わっていくある夏の休暇でありました。オジサンの前で情けない父さんが、しかし大きな鳥を撃ち落とす。父さんの獲物を両手で掲げて崖上に立つ少年の晴れ晴れとしたロングカット。『生れてはみたけれど』の苦みとはまたちょっと違う。大人は嘘をつくってことを受け入れて(あるいは妥協して)成長していく、ってあたりは似通っているか。仙人になって暮らせるほど自然は甘くない。猛禽類のイメージ。鷲やミミズク。獲物を下げて神父とも和解する父を、受け入れていく。父親との関係の中での成長史。音楽ウラジミール・コスマ、いかにも「映画音楽」って感じだが、堂々としていて合っている。[映画館(字幕)] 7点(2011-09-26 09:51:59)

13.  フィラデルフィア 裁判が始まるまでの前半のほうが、面白味があった。ポイントになる部分をわざととばして、奇妙なリズムを作っていた。説明部分を思い切ってカットする。病気を告げられるとことか、解雇を言い渡されるとことか。今まで被差別者としてのみ登場を強いられてきた黒人が、偏見を持って登場できるまでになったのは喜ばしい。彼の偏見が消えていく過程が図書館のエピソードだけってのは少し弱いが、でもあのシーンはいい。バスケット場での召喚状渡しの場の不思議なキレのよさ。ふしだらな生活が病気を招いた、自業自得ではないか、という論理に、偏見・差別が集約されていく。輸血での感染は気の毒、という選別が起こっている。ただ裁判劇としては評決への盛り上げに欠けていた。ポイントがずれないように、あえてそうしたのかも知れないけど。[映画館(字幕)] 7点(2010-12-23 09:49:54)

14.  豚が飛ぶとき 一応アメリカ映画なんだけど、ドイツで撮っている。カメラはロビー・ミューラー。くすんだ色調、とりわけ幽霊のいるシーンでのがいい。夕方の散歩、長回しの移動、ぼんやりと幽霊たちがたたずむ、二重写しという初歩の技術の美しさ。サイレントを観るようなアンティークな哀感。主人公の夢と犬の夢で始まるあたりも、サイレント的だったし。椅子の引越しシーン、窓の外を運ばれる椅子に少女が横向きにつかまっている図。話の根本は典型的な「現実復帰もの」。幽霊の助力で、過去から現在へ。失われたもの・過去のものを描くときに気合いが入る、ってこの頃の映画の傾向だった。幽霊ってのは「失われたものが、でも何らかの形で存在していてほしい」って願いが生むものなんだな。この幽霊、復讐したいとか呪いたいとか、そういう感じじゃないの。娘を心配してる「想い」が主。それが哀感につながっている。[映画館(字幕)] 7点(2010-11-24 10:15:25)

15.  ブロンクス物語/愛につつまれた街 《ネタバレ》 勝手に、もっと神経質っぽいものを想像してたんだけど、アタタカイのね。なにしろ「心から笑ってない笑顔」をやらせると天下一品の俳優だから、サイコパス系の映画でも作るのかと思ってた。つまりそういうふうに見られることがやで、「本当は僕ってほのぼのした人なんだよ」とアピールしたかったのかも知れない、泣いた赤鬼みたいに。映像のリズムと音楽をシンクロさせて楽しんだりしている。ヤクザもんとカタギとの、二人の「父」のもとで育つ少年の話。別に「悪」と「善」という分けかたではない。ソニーも少年をヤクザもんに育てようとしているのではなく、彼なりの「教育」で筋を通している。ここらへんカタギもんのデ・ニーロに一目置いているわけ。ほんとのチンピラと付き合おうとすると忠告するし。「好かれることと怖れられることとどちらかを選べというなら、怖れられるほうを選ぶ。持続するから」と。実の父のほうは「才能を無駄にするな」という。こういう環境の中で息子を育てるのは大変なことなんだ、と思う一方、どんな環境でもその地ならではの教育があるってこと。黒人ガールとの恋愛は、イマイチ不燃焼。ニガーと言ってしまったあと、もうワンクッション和解との間にほしい。とはいえ、教育を巡る映画として秀逸。[映画館(字幕)] 7点(2010-08-24 09:53:24)(良:1票)

16.  フォー・ウェディング 《ネタバレ》 原題は「4つの結婚式と1つの葬式」と、せっかく興味を引くようになってるんだけど。とにかく労働の匂いが全然しないのに、リアリティが出るのはイギリスの風土のすごさ。「ハレ」の場の話だけで、一本の映画が成立しちゃう。人間関係の描きかた、とりわけ前半のうまさはじっくり堪能。仲間うちのいい感じに満ちた。だから下手すると退嬰的になってしまう話なんだが、どこか溺れていない・距離を保っているのが、英国映画の紳士ぶりなとこ。ラストの稲妻の一閃は、恋を語るのか、不安を語るのか。面白かったんだけど、ヒロインのアンディ・マクダウェルって、あんまり喜劇向きじゃないのよね。どこか神経症的なところがあって。あるいはイギリス人から見たアメリカ女性って、こういう感じなのだろうか。ずっと黒を着てたフィオナは、オレンジを着、ラストでとんでもない人と結ばれる。こういうギャグ、日本じゃできない(単にやろうとしないだけか)のが悲しい。[映画館(字幕)] 7点(2010-08-18 09:52:59)

17.  ファイナル・プロジェクト 《ネタバレ》 クールで泰然自若としたアクションスターの系譜もあるが、ジャッキー・チェンは、オロオロしながらコトを為していくキートンやロイドの喜劇の系譜の人で、水中カンフーなどどうしたってキレがなくなるのを、逆手にとってギャグにしてしまうのが偉い。サメはじっとしていると襲わない、というネタで、闘っていた二人がサメが近寄ってくるとそのままジッと停止するおかしさ。あるいは血の匂いを出さないために、傷を受けた指を口にくわえる、その合い間には酸素ボンベの口を取り合ったりと無駄がない。ほかにも、タケウマをしたままのケリを何度かやって、はずした後も長いつもりでケリを空振りする、とか。このころは年齢的にアクションは厳しくなってきているのに、それをカバーしようという工夫が随所に見られて、けっこう感動的だった。白装束白マントの悪漢どもがスキーで追いかけてくるあたり、ああ悪漢とはやはりこうでなくちゃならない、と懐かしい興奮が胸に満ちたものだった。[映画館(字幕)] 7点(2009-06-10 12:07:38)(良:2票)

18.  ブレーキ・ダウン 荒野で高速道路を走っていると、自分が「誰でもいい一人」になってしまう怖さがあるわけだ。そういうものは、たとえば都会の群衆の中でもっぱら感じられるものと思われがちだが、そこは田舎のほうが怖い。都会では全員が無名同士になるが、田舎ではガッチリ組まれたチームの中に無名のよそ者として入っていくことになるわけだから。というわけで前半はへんにリアルでけっこう怖かった。通り過ぎた車が向こうでターンしてこちらを見てる感じ。食堂での田舎の人たちの無関心、無表情。このまま不安感が持続する田舎の迷宮に入っていくって展開だとハリウッド映画にならないから、直接的暴力が襲ってきてレベルが一つ落ちる。でも上映時間90分ちょっとという手ごろ感が好ましい。[映画館(字幕)] 7点(2009-02-24 12:13:48)(良:2票)

19.  ブラス! 《ネタバレ》 ブラスバンドの響きに乗って光の列が歩いてくるが、それは真鍮の輝きではなく、炭鉱夫のライト、という冒頭にこの映画のすべてが集約されている。灰色の世界と金ぴかでりりしい制服との対比。タイトルのpとfが赤になっているのも洒落てる。生きるということは惨めなことが多いが、でも音楽は誇りとなり得るし、そういう人生を鼓舞してくれる、って。芸術絶対派のダニーも肺を冒されていて、生きることに身を削られているわけだ。ちょっと後半荒っぽいのが残念だが、「威風堂々」でのダニーの顔は実に見事で、ここに誇りのテーマが凝縮していた。労働者の生活をドキュメント的に描くのはもうイギリス映画のオハコで、一見強硬派でありつつ借金に追われ、スト破りの側に投票するダニーのせがれなんかいい。泣かせどころは、やっぱり病院の見舞いに庭でダニーボーイをやるところ、ヘルメットライトが生きている。[映画館(字幕)] 7点(2009-02-09 12:13:58)

20.  プリティ・ウーマン 男が冷徹な企業買収家ってところがミソ。何も生産しない職業同士なわけ。相手に心を動かしてはいけない仕事をしている者同士が出会って…、という設定がいちおうカンドコロ。人は善くなっていくことが出来る・改善することが可能だ、というシンプルな肯定の精神が底にある。ポロの試合のときの屈辱のシーンなんかうまい。屈辱と同時に自己嫌悪でもあるわけで。支配人やエレベーターボーイなんかの「いい人」の配置ぶりもちゃんとしている。そうは言ってもあのエドワード君はどうも好きになれないけど。もっと違った改心のありようはなかったのか、と思うが思いつかない。設定の限界か。[映画館(字幕)] 6点(2014-01-22 09:44:46)

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