みんなのシネマレビュー
なんのかんのさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

◆検索ウィンドウ◆

◆ログイン◆
メールアドレス
パスワード

◆ログイン登録関連◆
●ログインID登録画面
●パスワード変更画面

◆ヘルプ◆
●ヘルプ(FAQ)

◆通常ランキング◆
●平均点ベストランキング
●平均点ワーストランキング
●投稿数ランキング
●マニアックランキング

◆各種ページ◆
●TOPページ
●映画大辞典メニュー
●アカデミー賞メニュー
●新作レビュー一覧
●公開予定作品一覧
●新規 作品要望一覧照会
●変更 作品要望一覧照会
●人物要望一覧照会
●同一人物要望一覧照会
●関連作品要望一覧照会
●カスタマイズ画面
●レビュワー名簿
●お気に入り画面
Google

Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 2336
性別

投稿関連 表示切替メニュー
レビュー表示レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示作品用コメント関連表示人物用コメント関連表示あらすじ関連表示
コメントなし】/【コメント有り】
統計メニュー
製作国別レビュー統計年代別レビュー統計
要望関連 表示切替メニュー
作品新規登録 / 変更 要望表示人物新規登録 / 変更 要望表示
要望済関連 表示切替メニュー
作品新規登録 要望済表示人物新規登録 要望済表示
予約関連 表示切替メニュー
予約データ 表示

【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12
投稿日付順12
変更日付順12

21.  豚が飛ぶとき 一応アメリカ映画なんだけど、ドイツで撮っている。カメラはロビー・ミューラー。くすんだ色調、とりわけ幽霊のいるシーンでのがいい。夕方の散歩、長回しの移動、ぼんやりと幽霊たちがたたずむ、二重写しという初歩の技術の美しさ。サイレントを観るようなアンティークな哀感。主人公の夢と犬の夢で始まるあたりも、サイレント的だったし。椅子の引越しシーン、窓の外を運ばれる椅子に少女が横向きにつかまっている図。話の根本は典型的な「現実復帰もの」。幽霊の助力で、過去から現在へ。失われたもの・過去のものを描くときに気合いが入る、ってこの頃の映画の傾向だった。幽霊ってのは「失われたものが、でも何らかの形で存在していてほしい」って願いが生むものなんだな。この幽霊、復讐したいとか呪いたいとか、そういう感じじゃないの。娘を心配してる「想い」が主。それが哀感につながっている。[映画館(字幕)] 7点(2010-11-24 10:15:25)

22.  フリントストーン/モダン石器時代 よく知らないんだけど、昔のコミックかなんかが元になってるのか。50~60年代のタッチがありますな、髪形なんかにも。家族とか友情とか、それの扱い方・扱う手つきが昔っぽい。その手つきを懐かしんでる、ってところがある。現代のものを一つ一つ石器時代に置き換える、というのが笑いのポイントなのだが、もひとつオッというアイデアはなかった。エリザベス・テイラーは馬鹿な役をやっていて、自分をコケにできるところがハリウッド女優の偉いところだ。というか、こういう役やると箔が付く風土でもあるのかもしれない。うらやましい。ロージー・オドネルはこうやって見ると、別にブスではないな。自然保護メッセージとか近代文明批判がないのが良い。[映画館(字幕)] 5点(2010-09-08 09:55:11)

23.  ブロンクス物語/愛につつまれた街 《ネタバレ》 勝手に、もっと神経質っぽいものを想像してたんだけど、アタタカイのね。なにしろ「心から笑ってない笑顔」をやらせると天下一品の俳優だから、サイコパス系の映画でも作るのかと思ってた。つまりそういうふうに見られることがやで、「本当は僕ってほのぼのした人なんだよ」とアピールしたかったのかも知れない、泣いた赤鬼みたいに。映像のリズムと音楽をシンクロさせて楽しんだりしている。ヤクザもんとカタギとの、二人の「父」のもとで育つ少年の話。別に「悪」と「善」という分けかたではない。ソニーも少年をヤクザもんに育てようとしているのではなく、彼なりの「教育」で筋を通している。ここらへんカタギもんのデ・ニーロに一目置いているわけ。ほんとのチンピラと付き合おうとすると忠告するし。「好かれることと怖れられることとどちらかを選べというなら、怖れられるほうを選ぶ。持続するから」と。実の父のほうは「才能を無駄にするな」という。こういう環境の中で息子を育てるのは大変なことなんだ、と思う一方、どんな環境でもその地ならではの教育があるってこと。黒人ガールとの恋愛は、イマイチ不燃焼。ニガーと言ってしまったあと、もうワンクッション和解との間にほしい。とはいえ、教育を巡る映画として秀逸。[映画館(字幕)] 7点(2010-08-24 09:53:24)(良:1票)

24.  フォー・ウェディング 《ネタバレ》 原題は「4つの結婚式と1つの葬式」と、せっかく興味を引くようになってるんだけど。とにかく労働の匂いが全然しないのに、リアリティが出るのはイギリスの風土のすごさ。「ハレ」の場の話だけで、一本の映画が成立しちゃう。人間関係の描きかた、とりわけ前半のうまさはじっくり堪能。仲間うちのいい感じに満ちた。だから下手すると退嬰的になってしまう話なんだが、どこか溺れていない・距離を保っているのが、英国映画の紳士ぶりなとこ。ラストの稲妻の一閃は、恋を語るのか、不安を語るのか。面白かったんだけど、ヒロインのアンディ・マクダウェルって、あんまり喜劇向きじゃないのよね。どこか神経症的なところがあって。あるいはイギリス人から見たアメリカ女性って、こういう感じなのだろうか。ずっと黒を着てたフィオナは、オレンジを着、ラストでとんでもない人と結ばれる。こういうギャグ、日本じゃできない(単にやろうとしないだけか)のが悲しい。[映画館(字幕)] 7点(2010-08-18 09:52:59)

25.  フォレスト・ガンプ/一期一会 この主人公は単に無垢なアメリカってだけじゃなく、意志を持たない、というか、何者にもなろうとしない、ってところがポイント。アメリカ映画の主人公って、無垢な人物が何かに向かって突き進むのが好きだったのだが、彼の場合はどちらかというと逃げるために走っている。無垢かもしれないが、その名前にはアメリカの原罪が刻印されている。なにかアメリカの変化を感じた作品だった。目的に向かって突っ走らない生き方に憧れを感じ出しているのか(でもその後のアメリカを見ると、変わらなかったんだけどね)。映画としては前半の密度の高さが圧倒的。逃げることによって、アメリカ現代史に立ち会い続けてしまう主人公。プレスリーからウォーターゲイトまで。逃げの走りを、周囲が思想にしてしまう。後ろにぞろぞろ、「あ、とまったぞ、何か言うぞ」って。SFXの使い方も、この頃はだいぶ幅が出てきて内実を得た。そういう意味でも記念碑的な作品。[映画館(字幕)] 8点(2010-06-28 11:58:08)

26.  フランケンシュタイン(1994) 《ネタバレ》 ケネス・ブラナーって、舞台は知らないが、映画では役者としても演出者としても、あんまり才を感じないなあ。一人浮いてた。トム・ハルスやロバート・デ・ニーロはちゃんと映画の俳優だなあと思った。音楽を延々と垂れ流すのも困ったもので、なにかしばらく間違って予告編を見せられてるんじゃないかと思ったもん。カットとカットのつながりがそんな感じなんだ、尻が座ってないってのか。まあ18世紀末の実験室はこんなものかという面白味はありましたが。原作尊重ということで、主人公が博士なのか怪物なのか揺れてたみたい。やはりこの話の面白さは、怪物が怪物にされていく過程にあるわけで、博士の科学論などは脇に回してもよかったんじゃないか。つまりフランケンシュタイン博士が出しゃばりすぎた。「フレンド」を求める孤独こそ中心に来るべきだった。と、ここらへんはこちらの好みに引き寄せた愚痴だが、セットの大階段をあまり生かせなかったのは明らかに監督の罪。醜くなったものが自殺しちゃうってのは、一般人にとって都合が良すぎる展開だなあ。改めて思ったのは、怪物に名前がないのは大事なポイント。まだ名付けられない新しいものってのは、すべて怪物視される可能性があるんだ。[映画館(字幕)] 6点(2010-05-29 11:56:16)

27.  ファザー・ファッカー 《ネタバレ》 すごく神話になりそうな話で、しかも父親の象徴的な誇張なんかがあるために、抽象的な世界になってしまいかねないところを、桃井かおりがリアリティを与えている。ただ現状を受け入れるだけの母、「なんだかわかんなくなっちゃった」とか言うような。父はまっとうな家庭を求める、冷蔵庫という祭壇を持ち込み、肘掛け椅子の玉座を置く。「あらねばならぬ」家庭を外側にがっちり作り上げようとしたときに、内側では最も「反家庭」的なことが起きてしまう。外でふしだらをしないための「おしおき」。こういう屈折は日本家庭の病理としていいところを突いているのだが、もっとリアリズムで押したほうが効果が出たテーマかも知れない、難しいところ。荒戸源次郎だから清順の影響が濃く見え、水槽が割れて金魚が流れ出し屋台崩しに至るあたりは『陽炎座』を思い出す。いくつかのシーンは幻想として美しいが、それがテーマとうまく噛みあってこないように、私には感じられた。ケーキのおうちに雪が降る。やがて切り刻まれてしまうごちそう。廊下をゆく市電てのは、よく私も夢に見るので嬉しかった。[映画館(邦画)] 6点(2010-04-01 11:57:01)

28.  プリシラ(1994) 女装愛好者って、女装すること自体よりもそれに対する周囲の反応のほうに生きがいを持っているのではないか。そういう形で社会と関係を持っている人たち。だから都会の他人たちの中で、無礼な視線を浴びているときに一番生き生きとしているはず。そういう彼らを砂漠の中に持っていったところに本作の趣向がある、と思ったんだけどちょっと違うかな。見るのは互いだけ。たしかにハレバレとはするけれども、これが女装者にとっての解放とは思えない。異端たらんとしても異端になれない。異端ではなくもともと正統だったのに異端に追いやられたアボリジニと交歓する、ただこの対照はちょっと安易に感じられた。やはり最後は「家族」になるのか。ゲイってのは、家族の否定に立つものだと思ってたのだが。テレンス・スタンプはちゃんと踊っていない。[映画館(字幕)] 6点(2010-03-12 11:55:59)

29.  プレタポルテ 配役の贅沢さだけで、お祭り的な楽しみがある。そしてこの人の場合「お祭り的」ってこと自体が狙い目なので、大事なんだよね。つまり主役級の人たちに全員脇役をやらせている映画とも言えるわけで、アルトマンの人生観が見えてくる気がする。「すべての人は主役である」とはよく言われるけど、この人は「すべての人は脇役でもある」って言いたいんじゃないか。するとなんか、肩の力が抜けるというか、周囲に構えないで生きていけそうな気がする。主役のつもりでファッションモデルのように気取って歩いても、ほら足元には犬のクソ。虚飾を剥ぐ、などという大層なものではなく、人の世のおかしみ。マストロヤンニは、ホント、こういう役やるといいですな。ヒョコヒョコした忍び足やらせると絶品っていう名優も珍しい。[映画館(字幕)] 8点(2010-02-22 11:57:10)

30.  不滅の恋/ベートーヴェン 《ネタバレ》 楽聖映画ってジャンルが昔はあったが、これはそれよりも、どちらかというとミステリー映画だった。「彼の不滅の恋人とは、音楽の女神のことだった」なんてなるんじゃないかと心配してたら、ちゃんと答えがあるのがいい。誤解のポイントに説明があって、一応推理ものとしてずるくない。16番の弦楽四重奏曲の楽譜に書き込まれていた言葉も使われていたりする(ただしそのときバックに流れていたのは13番)。馬車のぬかるみって伏線もあって(クロイツェル)、それらの解答が第九を背景に出てくる仕掛け。「月光」をピアノの蓋に共鳴させて耳当てて弾いているとこ、作曲家が聴覚を失っていく痛ましさが、彼の孤独とともに出ていた。甥への溺愛に自分の少年時代が重なる、この溺愛もまあ、伏線ってことになるんだけど。[映画館(字幕)] 6点(2010-01-29 11:58:27)

31.  フロム・ダスク・ティル・ドーン 《ネタバレ》 好意的に見れば「一本で二本楽しめる」で、前半は逃走もの。タランティーノのすぐ人を殺しちゃう弟が気味悪くおかしい。で悩める牧師の車をかっさらってメキシコへと走る、とここまでは普通の映画の範疇。牧師ってとこに伏線があったんだけど、見てて分かるわけがない。メキシコの怪しい酒場が後半の舞台で、ダンサーが蛇女に変わっちゃうところでノケぞる。きっとこれは夢だったってことで元の話に戻るんだよね、とはかなく思い続けている間も、スクリーンでは吸血鬼との戦いは続き、どうもこの時間経過からみて本気らしいぞ、と認めざるを得ず、そうかこういう「えっ!?」という瞬間がタランティーノは好きだったんだっけなあ、と遅れて気がつくのであった。ドンチャン騒ぎとしては『ブレインデッド』に劣る。[映画館(字幕)] 6点(2009-07-29 11:56:30)

32.  フィオナの海 伝説・言い伝えなどを話の中に織り込みつつ、映画全体がラストへ向け、しだいに伝説・昔話の中に溶けていく、アザラシや海鳥を媒介にして。ケルト音楽も伝説っぽいし。そもそも弟の揺り籠が流されていくところからリアリティは薄いのであって(だって海で暮らす人があんな波打ち際に置いておくとは思えない)、そこらへんからもう半ばオハナシの世界にはいっている。じいさんばあさんと子どもってのも昔話の準備だし。つまりとうさんかあさんは近代化のほうへ向いてしまうのね、じいさんばあさんに子どもが昔の島へ戻っていく、伝説ともども封じられに。おそらくアイルランドという土地ならではの風土が生きているのだろう。アザラシの映像の使い方がうまく、変に擬人化させるのでなく、アザラシのまま意味を持たせるのに成功している。[映画館(字幕)] 6点(2009-07-26 09:15:15)

33.  ファイナル・プロジェクト 《ネタバレ》 クールで泰然自若としたアクションスターの系譜もあるが、ジャッキー・チェンは、オロオロしながらコトを為していくキートンやロイドの喜劇の系譜の人で、水中カンフーなどどうしたってキレがなくなるのを、逆手にとってギャグにしてしまうのが偉い。サメはじっとしていると襲わない、というネタで、闘っていた二人がサメが近寄ってくるとそのままジッと停止するおかしさ。あるいは血の匂いを出さないために、傷を受けた指を口にくわえる、その合い間には酸素ボンベの口を取り合ったりと無駄がない。ほかにも、タケウマをしたままのケリを何度かやって、はずした後も長いつもりでケリを空振りする、とか。このころは年齢的にアクションは厳しくなってきているのに、それをカバーしようという工夫が随所に見られて、けっこう感動的だった。白装束白マントの悪漢どもがスキーで追いかけてくるあたり、ああ悪漢とはやはりこうでなくちゃならない、と懐かしい興奮が胸に満ちたものだった。[映画館(字幕)] 7点(2009-06-10 12:07:38)(良:2票)

34.  [Focus]/フォーカス(1996) 《ネタバレ》 浅野忠信っていいな、と思ったのがこの映画だった。強引なテレビ局の取材に押され、「えー」とか照れ笑い浮かべつつ、ストレスがたまっていくオタク青年の役。このテレビのディレクターやった白井晃がまた傑作で、強引かつ傲慢、口ばかり達者で他人を素材としてしか見られなくなっている人種を、誇張のようなリアリズムのようなきわどい線で怪演。ドラマとしては、そのオタク青年がキレ、がらっと変わるところが見せ場で、まあ落語の「らくだ」とか、そう珍しい企みではないのだけれど、ここでカメラマンの存在がだんだん怖くなってくるところがこの映画のポイントだ。カメラマンはこのクルーの中心にいるんだけど、加害者にも被害者にもならず、中立的な安全地帯を確保し、ただただ見続けているの。いや、中立を装いつつ、常に加害者の側に立ってんだな。もちろんそれは我々視聴者のことでもあって、けっして当人は傷つかない。実体験よりテレビ映像のほうに、より本物らしさを感じるようになった我々の、内なる加害者をあぶり出す。画面を経由しないと生々しくならない世界って、かなり不気味だ。[映画館(邦画)] 8点(2009-04-09 12:09:33)(良:2票)

35.  フェイク A・パチーノが貫禄のボス役かと思ったら、うだつの上がらぬ中堅どころってのがミソで、人情家ゆえにも一つ伸し上がれないチンピラに毛の生えた程度のマフィア。動物番組を見、クリスマスには部下に金をやり、でもそれを借り、大親分へのカードをドキドキしながら選び、料理をする。ゴッドファーザーのパロディになってしまいそうなところだが、そこはさすがパチーノ、ちゃんとリアリティある人物として造形できていて面白かった。潜入捜査官も憎めなくなっちゃうわけ。J・デップは、子の父としては失敗したが、やくざの息子としては合格してしまったわけだ。自分の家族から、やくざのファミリーへ、しだいにアイデンティティが移っていってしまう。仮面がしだいに本物の皮膚になってしまうような気味の悪さ、ここらへんにだけ絞って100分に納めれば、もっと良かっただろうけど、悪い映画ではない。[映画館(字幕)] 6点(2009-04-04 11:58:44)(良:1票)

36.  ブレーキ・ダウン 荒野で高速道路を走っていると、自分が「誰でもいい一人」になってしまう怖さがあるわけだ。そういうものは、たとえば都会の群衆の中でもっぱら感じられるものと思われがちだが、そこは田舎のほうが怖い。都会では全員が無名同士になるが、田舎ではガッチリ組まれたチームの中に無名のよそ者として入っていくことになるわけだから。というわけで前半はへんにリアルでけっこう怖かった。通り過ぎた車が向こうでターンしてこちらを見てる感じ。食堂での田舎の人たちの無関心、無表情。このまま不安感が持続する田舎の迷宮に入っていくって展開だとハリウッド映画にならないから、直接的暴力が襲ってきてレベルが一つ落ちる。でも上映時間90分ちょっとという手ごろ感が好ましい。[映画館(字幕)] 7点(2009-02-24 12:13:48)(良:2票)

37.  ブラス! 《ネタバレ》 ブラスバンドの響きに乗って光の列が歩いてくるが、それは真鍮の輝きではなく、炭鉱夫のライト、という冒頭にこの映画のすべてが集約されている。灰色の世界と金ぴかでりりしい制服との対比。タイトルのpとfが赤になっているのも洒落てる。生きるということは惨めなことが多いが、でも音楽は誇りとなり得るし、そういう人生を鼓舞してくれる、って。芸術絶対派のダニーも肺を冒されていて、生きることに身を削られているわけだ。ちょっと後半荒っぽいのが残念だが、「威風堂々」でのダニーの顔は実に見事で、ここに誇りのテーマが凝縮していた。労働者の生活をドキュメント的に描くのはもうイギリス映画のオハコで、一見強硬派でありつつ借金に追われ、スト破りの側に投票するダニーのせがれなんかいい。泣かせどころは、やっぱり病院の見舞いに庭でダニーボーイをやるところ、ヘルメットライトが生きている。[映画館(字幕)] 7点(2009-02-09 12:13:58)

38.  プライベート・ライアン 《ネタバレ》 冒頭、ノルマディ上陸作戦のシーンは文句なしである。戦争映画というより戦場映画とでも言うか。勝ち戦を描いていながらなんら勇壮さがなく、ただ恐怖とヒステリーが支配している狂乱の場としての戦場を描き切った。水上の騒音と水中の静寂の対比は『ジョーズ』のときと同じだが、ここでは恐怖は水上の音のほうにある。自分の片腕を探している兵や、戦友を引きずって逃げていたら上半身だけだったとか、エピソードが詰まっている。で主ストーリーの、軍作戦としての美談に狩り出される話になっていく。一人の命は地球より重い、ということの正しさと矛盾とがせりあう。兵の母親にしてみれば、どんなにきたない“美談”にもすがりつきたいという切実さがあるわけで、ここらへんの設定が緊張を生んでいた。これでライアンがつまらない男だったほうがドラマとしては正しいように思うんだが、これが好青年で、するとけっきょくこの“美談”を肯定する話になってしまってるようで、アレレ? となった。そういう映画だったのか。ここらへんがハテナである。[映画館(字幕)] 8点(2009-01-15 12:10:53)

39.  ブレア・ウィッチ・プロジェクト 禁欲の徹底が成功だと思う。こういう試みは多くの人が考えただろうが、つい伏線めいたものを作りたくなったりするもんだ。そこをじっと我慢した。死体が一つも出てこないホラー、内臓みたいなものは出たけど。作品の性質上、当然音楽がないのもありがたい。だいたいホラーでは音楽が邪魔になることが多い。本作では、テントを包み込んでくる音、足音、子どもの笑い声に、耳を澄ませられる(ただ本当なら真暗になるべき場面で、日本だと消防法で劇場内がうすら明るく、また字幕も白く光って明るく出てくるのが難点だった)。そしてやっぱり家ってのが怖い。家は巣であり、他者の領域であり、この森がこっちを他者としつつあるとこで、ヌッと王宮のように出てくる。家が出ただけで、ああ怖いな、と思ったもん。とにかく作者たちがなにものかに似せて作っていないところが一番いい。[映画館(字幕)] 8点(2008-10-18 12:10:40)(良:3票)

40.  深い河 松村禎三の映画音楽って好きだった。黒木和雄と熊井啓の専属みたいな感じだったが、とりわけこの映画の場合、同じ遠藤周作原作によるオペラ「沈黙」を作った後の仕事だったので、気合いも入っていたのではないか。この人の映画音楽にはいくつかの似たパターンがあり、ずっと変奏をやってるみたいなところがある。熊井監督の『朝やけの詩』あたりで確認でき、黒木監督の『TOMORROW 明日』で一つの達成に至る、ゆったりとうねる感じの6拍子もの。本作では秋吉久美子がガンジス川で沐浴するヤマ場で、やはり6拍子の曲想がうねり、宗教的な気分を盛り立てるのに役立っていた。映像の記憶は薄く、秋吉久美子はまだ大学生役をやるのか、と思ったことと、三船敏郎体調悪そうだなあ、と思ったことを覚えている。たしかこれが三船の遺作。[映画館(邦画)] 6点(2008-03-31 12:21:57)

全部

Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS