みんなのシネマレビュー |
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1. プリンセス トヨトミ 原作が「こてこての大阪」を回避するためにあえて登場させなかった「新世界」をこの作品は頻繁に映し出す。さらに「たこやき」と「串カツ」と「大阪のおばちゃん」を登場させる。いかにも東京の人が描く大阪だ。イロモノとしての大阪。大阪人はイロモノ扱いをけしてはねつける事はない。むしろ進んで受け入れるだろう。しかし大阪人気質が描かれてこそ成立する物語をいかにもテレビのバラエティ番組向けこてこて大阪の絵ヅラだけで歪んだ大阪人気質を見せられても物語は上滑りするだけだ。そして「大阪全停止」。原作にはない設定なのだが、これによってお話自体に無理が生じている。にもかかわらずなぜ「大阪全停止」を入れたか。それは明らかに綾瀬はるかを走らせるためだ。もっと言うとチチを揺らせるためだ。何かを見せるために物語を犠牲にする、その心意気は買う。が、その何かが何かってことが問題。胸を見せることになんら問題はない(もっと見せてくれ)。その見せ方だ。あのスローモーション。あれは「こてこて大阪」同様に綾瀬はるかの胸をイロモノ扱いしている。なんて失礼なやつなんだ。許せん。この作品は視聴率を取るのに必死なテレビと同じ手法で作られている。ちなみに原作は泣いた。[映画館(邦画)] 2点(2011-11-24 14:44:44)(良:4票) 2. 復讐は俺に任せろ 《ネタバレ》 ある男が拳銃自殺をする。その場所からある場所に電話する。そしてまたそこから次の所に電話する。重要な三つの舞台と主要人物があっという間に提示される。しかも三つ目の部屋の屋内構造をしっかりと見せることがクライマックスをスムーズに見せることになる。そして最初の自殺現場に戻りいよいよ主人公の登場。この完璧な流れに唸る。幸せを絵に描いたようなある意味型にはまった家族が強烈な一撃にて崩壊する様は衝撃的。リー・マーヴィンのサディスティックな一面を見せたエピソードがグロリア・グレアムへのコーヒーにつながり、欲望のままに生きる女でありながらどこか憎めないシンプルな思考の情婦グレアムが女ゆえの、またシンプルな思考ゆえの、目には目を、コーヒーにはコーヒーを!となる流れの説得力も素晴らしい。唐突に孤独のヒーローの元に集まった義兄とその友人たちがカードゲームをする様はジョン・フォードの西部劇のよう。その後に合流する同僚と上司。しかしフォードっぽいのはこの一瞬だけ。サービスみたいなもんか。とにかく西部劇ではなく犯罪映画なのだと言う様に仲間たちの存在は消え去る。そして犯罪映画に相応しい銃撃戦をクライマックスに。傑作です。[DVD(字幕)] 7点(2011-09-05 18:17:02) 3. ブローン・アウェイ/復讐の序曲 《ネタバレ》 爆発の火薬量はさすがのハリウッドなんだけどそのゴージャスな画はとくに映画に貢献しておらず、むしろ爆発しないシーンの思わせぶり演出が見所の作品となっている。母娘が家に帰ってきてドア開けたり冷蔵庫開けたり電気つけたりオーブンつけたりあああやめてくれえええ!ってなった。ドキドキが長いので体に悪い。そのカメラワークを駆使した思わせぶり演出も後半の浜辺シーンあたりになってくると辟易とまではいかないまでも見せ方が子供だましのように思えてくるから映画作りは難しい。影あるヒーローとぶっ飛んだ敵キャラというのも凄くいいんだけど、これも思わせぶり演出と同じでそれぞれがしつこい。このへんの塩梅を求める映画でもないかもしれないけど。[CS・衛星(字幕)] 6点(2011-06-22 15:04:39)(良:1票) 4. ファイナル・カウントダウン 過去に戻ることによって現代(当時の)のアメリカ合衆国が誇る兵器がいかに進歩しいかに最強であるかをわかりやすく見せた映画。しかも比べる相手はF6Fヘルキャットではなく同時代対決でも大人と子供ぐらいの差があった日本のゼロ戦。にしてもF-14トムキャット。見せる見せる。で、魅せる魅せる。マニアにはたまらんでしょうね。マニアでなくてもかっこいいなって思うもん。はっきり言ってその過去が真珠湾攻撃直前であることはこの映画にとって然程重要ではない。トムキャットの勇姿とその勇姿を通してアメリカの威厳を見せることができればOKの映画なんだと思う。カーク・ダグラスはまさにその威厳を見せるためのベストキャスティング。このとき64歳。ちなみに今年(2011年)のアカデミー賞でプレゼンターとして登場したとか。スゲー。[DVD(字幕)] 5点(2011-06-16 16:11:00) 5. ファンタスティック Mr.FOX 《ネタバレ》 妻には足を洗うと約束するものの数年後に泥棒稼業に逆戻り。擬人化されているのでここはMr.FOXが悪いと思ってしまうのだが、野生動物の本能なのだと言われるとたしかに彼らはキツネ、泥棒という行為を責めるほうがおかしいのだと思い直す。そしてキツネであることを思い知らすかのように食事シーンでは誰もが凶暴な顔で貪り食う。と思ってたらここに出てくる人間たちはキツネを言語のわかる動物という設定で対決してゆく。もうその行動は相手を動物として見ていない。設定がむちゃくちゃというかテキトーというか。しかしそのテキトーさを許容するのがアニメーション。この作品はアニメーションであることの恩恵を最大限に活かして作られている。ストップモーションアニメなのだが動かないMr.FOXをそのまま回転させて背景を流してゆく逃亡シーンのまるで手を抜いたかのような部分もアニメーションならではで、このふざけた横移動シーンだけでも実に楽しい。父の尊厳と家族の再生の物語であり父を超える息子の成長物語でもあるといういかにもアメリカ映画的なテーマを直球で見せられてもアニメーションは許容する。[映画館(字幕)] 7点(2011-05-30 15:30:00) 6. フォー・ルームス タランティーノの声がけで集まった当時の若手監督たちによるオムニバスコメディ。案内役のベルボーイがどのお話にも登場すること以上にジェニファー・ビールスが2話と4話に登場するなどの工夫で1本の長編映画としても楽しめるようになっている。 ■「ルーム321:お客様は魔女」女性監督らしい下ネタ満載なのはいいが、個性豊かな魔女軍団の見せ場なしなのがもったいない。盛り上がらずにオチもなし。ただ下ネタがあるだけ。撮影はロドリゴ・ガルシア。 ■「ルーム404:間違えられた男」目の前に椅子に縛り付けられている美女がいる。そこから始まるのがまずいい。ずっと縛られた状態で話が進むのだがホテルの部屋という限定された空間でのお話にとってもこれ以上ないシチュエーションといえる。けっこう楽しめた。監督は当時のジェニファー・ビールスの旦那。 ■「ルーム309:かわいい無法者」ロドリゲスだ(笑)。ホテルの一室の子守でここまでハチャメチャなものを作っちゃうなんて、さすがだ。子供たちの大活躍はロドリゲスの初期短編『BEDHEAD』を彷彿。全てが過剰なロドリゲス。短編だから、コメディだから、その過剰が活きてくる。 ■「ペントハウス:ハリウッドから来た男」「とり」としては物足りないが「しめ」としてはまずまずか。もうオチにつきる。というかオチのためにダラダラと無駄話が続くお話。タランティーノらしいといえばらしいのかもしれないけど、作品のほとんどが無駄話と説明というのはちとキツイぞ。 ◆<総評>こういうカタチのオムニバスは監督それぞれの個性を楽しめるからけっこう好き。それぞれをホテルの一室での話にした構成もいいと思う。低予算も足かせになりにくいし。その中でその設定を活かしきったのが2話と3話。全4篇で右往左往するベルボーイのお話を4話できっちりと閉めているのもうまい。 [DVD(字幕)] 6点(2011-05-27 15:55:32)《改行有》 7. フリーズ・ミー 《ネタバレ》 性的に虐げられ人生を狂わせてゆく石井作品お馴染みのヒロインではあるけれど、女は名美ではなく、そして名美を想う村木も不在。そこに男と女の哀しいドラマはない。これは名美的な悲惨な境遇の女を軸に繰り広げられるコメディと言ってもいいかもしれない。『ヌードの夜』ではサスペンスフルに機能した死体遺棄が、ここではひたすらブラックユーモアであり、このブラックユーモアとして存在する死体たちこそが映画の主役でもある。もちろんコメディといっても笑えるという意味ではない。レイプ描写は生々しいわ、暴力は凄まじいわで到底笑えない。しかしこの三人の男たちのどこかぶっとんだ怖さもやはりコメディなのだ。ナイスバディな井上晴美が薄倖には見えないというのもこの映画を名美の物語から遠ざけているところなんだけどもちろん確信犯のはず。そのかわり石井ワールドにある昭和的なるものが平成的になっちゃったって感じ(?)に若干の物足りなさを感じる。[DVD(字幕)] 6点(2011-05-09 15:26:06) 8. ブレインストーム 《ネタバレ》 他人の五感を体感できる装置の発明にまつわる科学者と会社とのありがちな対立のドラマに一度は崩壊した夫婦関係が再生されてゆく大人のラブストーリーが絡んでゆくのだが、そこから偶発的に起こった「死」によって全く新たな展開を見せてゆくことになる。映画はこの新たな展開を重点的に描こうとする。対立のドラマとラブストーリーはその後も活かされ、この新たな展開の駒として盛り上げてゆくのだが、ここは逆でしょ。新たな展開、つまり「死の体験」という魅力的な展開によって前者を盛り上げていかないと。科学者の遺志を継ぐための行動なのか単に「死の体験」をしたいのかよくわからん状態で「死の体験」が一人歩きしていってる。まあ、見せたかったのはその体験映像だってのは分かるんだけど。で、その映像は監督がこれまで特撮スタッフとして係わってきた映画を想起こそすれ、映像自体に感動はなかった。でも想起すること自体が一種の感動ではあったと思う。[DVD(字幕)] 5点(2011-04-28 14:12:39) 9. ブンミおじさんの森 《ネタバレ》 なんの変哲もない森が夜になると全く違う森になる。ブンミおじさんはその「夜の森」を知っているから何が出てこようと驚かない。猿の精霊だろうが幽霊だろうが。その驚かないリアクションが妙に可笑しい。行方不明の息子が猿になってるんですぜ。まるでコントだ。見てるこっちはその着ぐるみ猿にどう対処すればいいのか。『トロピカル・マラディ』の夜の森に浮かび上がる虎とは大違いのほのぼのとした異世界の人たちが描き出される。我々ですら戸惑うこの世界、輪廻転生の考え方がないキリスト教圏での驚きはもっと凄いのかもしれない。驚きといえば最後の展開。日常という退屈な時間が映され続けたかと思ったら、いきなり非日常の出現。そのまま非日常は現代のタイの日常の中に溶け込んでゆく。異世界が世界の中にあるように、日常の中に神秘がある。感慨深く心地良く、それでいて驚きに満ちた映画であった。[映画館(字幕)] 7点(2011-04-26 14:47:00)(良:1票) 10. フェリーニのローマ フェリーニらしいといえば間違いなくフェリーニらしいんだけど、こっちのフェリーニはあまり好きじゃない。こっちというのは、ケバい方のフェリーニ。まあ後期の方。このケバさが「生」とか「活力」を表現してもいるのだろうってことがこの作品でよくわかった。過去から現代へと移りゆくごとにそのケバさが薄れていき、同時に憂いを帯びてゆくから。まあそれはそれ。とにかくのれなかった。劇なのか劇中劇なのかよくわからん冒頭のシーザーから既に躓いた。世界史に疎いってのも影響してるかも。あと、おそらくテレビ画面で見る映画じゃない。←負け惜しみ[DVD(字幕)] 4点(2011-04-12 16:01:00) 11. プルーフ・オブ・ライフ その国の政治情勢やら誘拐された男の会社の内容とか夫婦の過去とかがいろいろと語られてゆく。そのあまりに多い情報をできるだけ停滞させずに語った手腕はなかなかのものだったのだが、このたっぷりの情報で満たされた前提がその後にいまひとつ活かされていない。夫婦の物語であるならばその前フリも必要かもしれないが、メインは交渉人であり、しかも交渉するに留まらず戦争映画さながらのアクションをクライマックスに持って来てるもんだから、一層前フリの無用感が増す。いくらロマンスコメディの女王がいるとはいえその無理矢理な三角関係もいらんだろ。この内容をちゃんと一本の映画にしてみせたというだけで拍手したいという気持ちもあるのだが、もういかにもいろんな人の意向を与したハリウッド作品という感じが痛々しい。[DVD(字幕)] 5点(2011-04-06 14:36:15) 12. フレンジー 《ネタバレ》 主人公を信じる唯一の女がほんまもんの殺人鬼の部屋に誘われるままに入ってゆく。閉じられた扉。その殺人鬼の変態的な強姦殺人をすでに見ている観客は想像し愕然とするしかない。そしてその想像が間違っていないことを確信させるかのようなカメラワーク。音の無い空間を浮遊しながら現場から離れてゆく。徐々に街の音が入り、カメラが外に出た途端に広がる喧騒。その瞬間に感じる開放感はやはり建物内が狂気の世界であることを逆説的に決定付けている。映画のヒロインかと思ったらここで消えちゃうなんて『サイコ』じゃないか。そういえばこの殺人鬼、お母さんを嬉しそうに紹介してたな。不気味な料理を出す警部の奥さんの名推理ぶりが往年の探偵ものを彷彿させて楽しい。[DVD(字幕)] 7点(2010-12-17 16:51:58)(良:2票) 13. フロム・ヘル 実在の事件であり1888年のロンドンと場所も確定されているにもかかわらず、どこか現実には存在しない場所のように感じるのは、その舞台背景の元がグラフィックノベルだからなのでしょうか。読んでないのでよくわからんのですが、どちらにしても独特のおどろおどろしい雰囲気がいいです。今まで何してたんだかのヒューズ兄弟の久々の新作『ザ・ウォーカー』にしてもその物語と人物を活かす為の舞台づくりが実にうまい。舞台の完成がそのまま映画の完成とも言えるその刺激的な世界観の構築はやはりヒューズ兄弟ならではなのかもしれません。史実をからませながらのフィクションは私自身大好きなパターンで、その史実がちゃんとこの独特の世界に馴染んでる、あるいは馴染むものしか出していないのもいいです。ところどころ、とくに結末あたりはおどろおどろしさよりもマンガチックさが勝ってるのが残念。娯楽映画としてのバランスを考えたらこんなもんかもしれんが。[DVD(字幕)] 6点(2010-12-15 15:06:38) 14. ファザー、サン 『マザー、サン』と同じ監督が作ったものとは思えない。父と息子のドラマ。しっかりとした物語映画。だけど見終えてみると本当に物語があったのかどうか疑わしく思えたり。けっきょく全体の流れより場面場面が印象に残るというところでは『マザー、サン』と同じなんだ。息子の元カノが綺麗で、ソクーロフは女優も綺麗に撮れる人なんだと確信する。ガラスを隔てることで世界が歪む。そのソクーロフ的な世界からなんとか逃れようとするかのように窓の隙間に顔を寄せる女と男がこれまたソクーロフらしからぬ短いカットで映し出される。舞台はいったいいつのどこなのか。こんなにも映画らしい街並みがあるなんて。屋根からの景色は延々と海。路面電車が走る風景の美しさはムルナウの『サンライズ』をも超えている。もうそれだけでじゅうぶんだ。[映画館(字幕)] 8点(2010-11-10 13:39:30) 15. ブラック・サンデー 《ネタバレ》 イスラエルとパレスチナの関係を簡単に説明しているがその説明があきれるくらい単純化されてて、かえって天晴れというか、娯楽に徹した映画なのだなと。シリアスにテロリストとイスラエルのエージェントの戦いが描かれるんだけど、思想だとか政治的背景はほとんど無視。そのぶん目的のテロ行為へと準備を整えてゆくテロリストたちとそれを阻止すべく行動するエージェントの攻防に見るサスペンスを単純に楽しむことができる。加えて街中の銃撃戦、ヘリと飛行船の空中バトル、スタジアムに大接近する飛行船と大観衆のパニック描写等々見所満載の娯楽作。テロリスト側の男女のドラマが若干冗長か。[DVD(字幕)] 6点(2010-10-18 17:22:30)(良:1票) 16. ブレイキング・ニュース その映画の中で何かを延々とやり続けているというのはジョニー・トー映画の特徴でもあろうかと思うんだけど、その延々となされているものが銃撃戦であればそりゃもう興奮するしかない。と思ったら興奮はさほど感じない。あれだけ至近距離であれだけ銃弾の雨あられの中堂々と歩いてる、で当たらないってのもあるかもしれないけど、無表情、あるいは表情がとらえきれない距離で見せる長い市街戦シーンは単なるシーンを越えてそれ自体が映画になってるというか、もう銃撃戦そのものがドラマというか。ビル内での攻防の見せ方も実に工夫が凝らしてあって分割映像の部分はかなりうまいと思った。途中から唐突に謎の二人組が登場するのだが、こっちのリーダーとあっちのリーダーが最後に見せてくれる男の美学は間違いなくメルヴィルから受け継いだものであってなかなかにしびれさせてくれるのだが、そうなると実は映画のストーリー上のメインとなってる警察側の社会風刺的且つ安易な意表突きドラマなんぞは無駄以外のなにものでもないと思うのだが。[DVD(字幕)] 6点(2010-07-14 11:32:07) 17. ブレーキ・ダウン 《ネタバレ》 主人公のわき見運転によって危うく事故りかける。その些細なミスが不条理なまでの恐怖の発端のように映される。スピルバーグ『激突!』である。スタンドでの会話、先で回転して止まるトラック。主人公夫婦とともに我々も不安でたまらない。しかしその後夫婦に訪れる恐怖の源は冒頭のわき見運転ではないことが判明する。中盤あたりでほぼ真相がはっきりとする。薄気味の悪い不安感が廃されてしまう。実にもったいない。映画史に残る傑作になり得たかもしれないのに自ら拒んでしまった。ところがここからもけしてつまらなくはならない。むしろカート・ラッセルには不似合いだった普通のおっさんが、いよっ!待ってました!と声をあげたくなるような本来のカート・ラッセルの顔になり、その後のほぼお決まりの、それでいて見応えのあるアクションを堪能できる。前半の不条理を痛快に撃破するカート・ラッセル。実に気持ちのいいアクション映画だった。そして冒頭で見せていた夫婦の関係はもちろんより強固となって一件落着。シンプルなオチが心地良い。[DVD(字幕)] 7点(2010-05-18 14:26:16)(良:1票) 18. PLASTIC CITY プラスティック・シティ 舞台となる街の無国籍なごちゃまぜ感がいい雰囲気を出していて、オダギリジョーがまたその雰囲気にうまく溶け込んでいていいなと思って見てたんだけど、雰囲気がいいだけでいまひとつノレなかった。妙に浮いたシーンがあって、それは決闘シーンというか、チャンバラシーンなわけなんだけど、それまでの空気を一切排除した独特の世界観でこのチャンバラシーンを描いていて、「他から浮く」ということ自体はすごく好みな展開ではあるんだけど、それが魅力的な「浮き」じゃなく、それどころか「夢」と誤解されかねないヘンテコなシーンとなってしまっている。記憶が定かでないんだけど、スローモーション使ってなかったっけ。そのせいもあると思うんだけど。あと、後半になってくるとシーンごとがぶつ切りで、ストーリーというより「詩」っぽくなってきて、それも悪くないんだけど、最初からストーリーに拘らない寓話性を露呈させるか、もしくは反対に後半の寓話性をもっと色濃くして前半をおもいっきり置いてきぼりにするかしてくれたほうが個人的にはノレたような気がする。[DVD(字幕)] 5点(2010-01-20 15:46:31) 19. ブギーナイツ 長回しから始まるアルトマン風オープニングがなかなかにきまっててカッコイイ。なにげに豪華なキャストが豪華ぶらずにいるのもアルトマンの映画を彷彿させる。主人公がごくごく普通の人間でありながら特別な何かを持っているというのがポール・トーマス・アンダーソン的だと思えるのは『マグノリア』を先に見ているせいか。その特別な才能ゆえに成功し成功したがゆえに挫折するあのクイズ王にこの作品の主人公と通じるものを感じた。一人の青年を主人公にしたドラマはその挫折感と共に重々しくなっていき、映画の勢いまでもが削がれてゆく。ちょいと退屈。そこでドラマは外に飛び出した青年の代わりに豪華キャストのその他大勢を映し出すのだが、このあたりの怒涛の展開は見応えあり。この見応えも前半にちょこっと映されるだけのときにしっかりと皆が個性を見せていたから。脚本がそうなっているのだろう。次に撮ったのが『マグノリア』であるのも頷ける。お見事。[DVD(字幕)] 6点(2009-12-10 16:50:33) 20. フィクサー(2007) 《ネタバレ》 冒頭の数十分は何が起きているのかよく分からず、分からないままに明るくなりつつある夜明けの空をバックに美しい馬が登場し男前の主人公が車から降りて馬に近づくと車が爆発という実に謎めいたシーンが映し出され、ここで唐突に過去シーンへと変わる。この冒頭シーンが再登場するのは映画が終わりに近づこうとしている頃であって、結果から言っちゃうとここから主人公はようやく戦うことを決心するというか、せざるを得なくなるわけで、かと言ってここから映画が始まるわけではもちろんなく、この後あっという間に終わってしまうわけである。要するに映画の大半で主人公はどっちつかずの曖昧な立場にいる。曖昧な立場でいる様々な理由がこの映画のほとんどを飾る。金とモラル、組織の中の一人であることと一人の人間であること、そして父親であることの間で揺れる主人公。たしかにそれらの葛藤はじゅうぶんにドラマとなる。だけど退屈なのだ。冒頭の爆発シーンのせいでいらぬ期待を抱いてしまっているせいだ。あれが無ければこの主人公の決断にいたる過程を楽しめたのではないだろうか。殺し屋登場の乾いた恐怖感はもっと増していただろうし、何よりも謎を共有する主人公にもっと共感できたであろう。脚本家ギルロイ、脚本に溺れる。そんな感想を持った。ティルダ・スウィントンが光っていた。[映画館(字幕)] 6点(2009-11-09 17:08:16)(良:1票)
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