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1. 北京ヴァイオリン
《ネタバレ》 市場経済と社会主義の融合を試みる現代中国にしか生み出すことのできない力強い傑作。文革を経験し、物質的豊かさの大切さと虚しさの両方を知っている陳監督だからこそ、資本主義社会に生まれ育った私たちには想像できないテーマを、説得力たっぷりに描けた。物語の終盤、少年に突きつけられた選択肢は「音楽か父親か」ではなく、「チアン先生かユイ先生か」である。資本主義に侵食されて腐敗した音楽界に愛想を尽かし、仙人のように暮らしているチアン先生。一方、資本主義化に成功し、天才音楽家ブリーダーとして音楽界を牛耳るユイ先生。この才能ある二人の音楽教師は、現代中国に混在する「伝統」と「現代」の象徴だ。少年が迫られた選択は、そのまま現代中国人に突きつけられる、生き方に対する問いである。「音楽」という、普遍の感動をテーマに、この重い命題を描いた手腕は見事。[DVD(字幕)] 8点(2004-01-05 03:36:47)
2. ヘアスプレー(1988)
《ネタバレ》 まず第一に、60年代ダンスシーンが総体的に好き。ファッション、ダンスステップ、音楽、すべてが好き。そんな大のお気に入りを舞台に、女子高生同士の小競り合いから人種問題をめぐっての一大論争に発展していくというストーリーが乗っかる。こりゃ知的だ。というか、ダンスという題材のおかげで、政治色の強いメッセージがちっともくどくならない。だから抵抗なく映画自体を楽しめる。(「(敵をののしって)ホワイトのクズよ、せいぜいイエローのちょっと上よ」には大爆笑。問題発言であるはずなのだが、基本的に脚本がいいので、見事なブラックユーモアに昇華している。)ジョン・ウォーターズはホンモノのインテリだ。変態のレッテルを貼られまくっているけど、そもそも変態とは知的高等遊戯であるわけで、したがってホンモノの変態ウォーターズはホンモノのインテリなのである。10点(2003-11-29 15:44:22)(良:1票)
3. ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
《ネタバレ》 極上のキャストと音楽に紡ぎだされる、美しい「運命の赤い糸」物語。全体を通してすごく哲学的なのだが、堅苦しくないのは、作り手が知的でセンスがいいからだろう。最初から最後まで否応ナシに惹き付けられる。見所は、『饗宴』のアリストファネスを引用した「愛の起源」の物語。現代の多様な愛の形を考えると、とても説得力のある仮説に思える。同タイトルの曲も最高に美しい。(音楽担当のスティーブン・トラスクという人物のセンスと才能には感服した。主演・監督のジョン・キャメロン・ミッチェルほどには注目されていないという印象なのが不思議だ。)前半に比べ、ストーリー後半(ラスト含む)が曖昧なのが惜しいといえば惜しいが、そこは、ヘドウィグとトミー、イツハクの三者間の関係に対し、一通り以上の解釈を可能にしたということだろう。いずれにせよ文句なしに満点! 10点(2003-11-29 02:18:50)(良:1票)
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