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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. 蛇イチゴ 大谷直子がいい。亭主の失業知って荒れてると、娘に「どうしてそんなにイキイキしてるの」と言われる。家族は登場人物でありながら、互いの批評家にもなって、反射し合う。対角線を引き合う多角形。義父が倒れて風呂掃除に没頭するワーッって感じもリアル。忙しかったから気づかなかったのよ、って。ああいう逃避行動、そう罪のない似たことならやってません? 家族それぞれのドラマがラストに至って急に兄妹にズームアップする。いや、本当はずっとそうだったのかもしれないけど、私にとっては終盤からだった。いい加減な兄と真面目過ぎる妹、合わないきょうだい、そういうカップルが次作につながったか。[DVD(邦画)] 6点(2013-11-18 12:23:04) 2. ペルシャ猫を誰も知らない 《ネタバレ》 観てたら「アングラ」なんて死語がつい出てきた。『新宿泥棒日記』の時代を思い出させる現在のテヘラン。地下に潜る若者たちは政治的抵抗運動をしているわけではない。ただ歌いたいだけ。ロンドンでコンサートを開きたい、終わったら帰ってくるつもり。あの時代の東京も実はそうだった。やがてそのエネルギーが政治運動(に見えるもの)に移っていったが、中心にあったのはこのテヘランと同じ衝動だったはずだ。そのうごめくテヘランのアングラ事情が実に魅力的。ニュース映像からは伝わってこないナマナマしさが溢れている。流れる歌の数々、子ども向けのはシャンソン風だし、多くはロック、野外での演奏もよかった(男たちの民族的な踊りが入ってくる瞬間のときめき)。そしてラップ、かつて『クロッシング・ザ・ブリッジ』というドキュメンタリー映画でトルコのラップを聞いたことがあるけど、あそこらへん中近東のラップは迫力がある。アメリカの黒人のものだったうめきが、今では全世界の言語になっている。この世界の普遍性への憧れが一つのモチーフ。海賊版DVDで取調べを受けているシーンが傑作。ちゃんと映りませんよ、汚れはスポンジで拭いてるし、などといかに粗悪かということで、密売の害がないと当局に訴えている。現在の体制下でDVDは普遍への窓でもあるんだ。そしてヒロインはカフカを読んでいた。愚かな大統領の下で閉塞を強いられているテヘランの人たちも、カフカを読んでいる(本当にカフカを読む人がアハマディネジャドを支持することは不可能だ)。世界の普遍へ憧れている。彼らの熱望が伝わってくる。ここには絶望を凌駕する熱望があった。だからこの話の閉じ方が不満。現状の厳しさは分かるが、もっと開かれた結末は用意できなかったのだろうか。[DVD(字幕)] 6点(2012-02-23 10:27:45) 3. ベンジャミン・バトン/数奇な人生 《ネタバレ》 最初の盲目の時計師の逆回りの時計なんてとこはワクワクしたのだが、そういった寓話性は本編に入ると薄れてしまい、せっかくの“逆向き人生”って設定があんまり生きてない。チョコチョコやたら入る現代の病床シーンが、テレビで映画見てるときのCMのように邪魔で、作品をエピソードごとに区切ってしまい、さらに“逆の流れ”を感じさせないようにしている。並列的になってしまうのだ。メイクの技術は立派だが、変化が非線形的というか、カチッカチッと切り替わるので、別人の人生の一場面を歴史順に見ているような気分にさせる。“晩年”の哀切さでやっと設定が生きたが、遅すぎた。つまり、観てるほうが頭の中で「これ逆向きの人生なんだよ」と絶えず注釈を入れてないとうっかり忘れてしまう設定なんで、なんか落ち着けないのだ。定型外の人生によって現代史を語らせるってのは『フォレスト・ガンプ』を思わせるが、あれほど同時代史が関わっているわけでもなく、かえって“逆向き人生”の趣向が薄められた気がする。この監督と意識したのは、ラストのひたひたと寄せる水で『セブン』も水だったなあ、と思い出した程度。[DVD(字幕)] 6点(2009-11-11 11:59:21) 4. ヘアスプレー(2007) メタボメタボとヒステリックに叫ばれている中、でぶでぶした女の子がどこ吹く風とコロコロ踊ってるのを見るのは愉快である。でぶの人はだいたい主人公のドジで愉快な友人役と決まっていたものを、それを中心に持ってきただけで新鮮。そして60年代風音楽がカラフルに展開していく。キャスティングの妙。だってクリストファー・ウォーケンとジョン・トラボルタが仲良く夫婦愛を歌って踊るんだぜ。ミシェル・ファイファーの根性まがり女も楽しい。ただ、この作品ならこの曲と記憶されるような決定的ナンバーなり、ユニークな振り付けなりがないのがちょっと寂しい。デモのシーンなど、ここは大事なところだから真面目に演出しました、って感じだったが、ああいう場面こそ、もっとミュージカル的に盛り上げて、それでメッセージが濃く伝わるのではないか。とはいえラストのコンテスト会場シーンはたっぷりで満足。あの姿のトラボルタにダンスのキレを期待するのは酷だな。[DVD(字幕)] 7点(2008-07-24 10:45:01)(良:1票) 5. 変身(2002) カフカの小説にはサイレント映画の影響がある、などという論考もあって“汽車の到着”で始まりサイレント映画的に展開していく冒頭シーンを見て、これはいいかもしれんぞ、などと期待したが、どうも変身後はいわゆる文芸映画の枠に収まってしまった。舞台版の映画化と後で知ったが、さもありなん。繰り返される窓枠や額縁のイメージなんか、もっと映画的に膨らませられそうなのにもったいない。二度目の女中の演技はなかなか良かったが、肝心の家族の演技が舞台的。もっとも、ソ連後のロシアでカフカが映画化されるってこと自体には興味が湧く。[映画館(字幕)] 6点(2007-12-09 12:18:11) 6. 変態村 《ネタバレ》 う~む、撮影は美しい。屋外はブリューゲルの如く、屋内はフェルメールの如く、格調高く迫っている。でもやってることは、ほれ、なにしろ変態村だから、なんて言うか…、とてもヘン。自分のことを、宿の亭主がしだいに妻と思い込み出していると気づく主人公(男)の不安、殺されるかもしれない、いうホラーではなく、愛されるかもしれない、いうホラーなの。亭主が「さあ人生をやり直そう」なんてしみじみ語りかけてくるんだもん。この登場しないグロリアという妻は、女だったのかなあ男だったのかなあ。どうも男色村らしいんだけど、だとすると、ちょうど映画開始後1時間めのところで意味ありげにチラッと出てきた赤かっぱの子どもたちを産んだのは誰なんだ? あれは幻想?[DVD(字幕)] 6点(2007-08-19 12:15:43)
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