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1. マザー!(2017)
《ネタバレ》 不条理な世界を「赦し」「与える」ためにマザー(ジェニファー)を痛めつける作品【7点】
私はジェニファーのつるんとしたおでこが大好き。それだけで+5点は大げさか...
まず作品冒頭の燃えさかる炎の中で涙を流す女性と作中の妻(ジェニファー)と最後に再生された女性は全部
別人です。この点は最低でも押さえておきたい。
この作品は一般的には「旧約聖書」「創世記」の暗喩であると評されており作品内容もそれに準じてはいるもの
の、作品としてはそういう事に全く無知な私でも理解できますし難解でも無いと思いました。
冒頭の燃えさかる炎のあとにクリスタルのような物をセットするとボロボロの家が綺麗に再生されベッドの上で
妻が目覚めるわけです。その時妻は左手でベッドの横を探します。でおもむろに「ベイビー?」とつぶやきます。
このまま作品が進み夫に出会うと「ベイビー」が夫の意味だと分かりますが、たぶんこの時妻は「ベイビー」が
子どもなのか夫なのか妻自身も分かってなかったと思います。たぶんそこは前世の記憶の欠片のような物があった
のでは?と勝手に想像してます。その後家の中を確かめるように見て回るのですが、それが初めて目にするような
表情をしてましたし、ドアを開けて外の景色を眺める顔も見慣れた景色を見るような顔ではありませんでした、
そして夫(ハビエル・バルデム)とのファーストコンタクト時の驚き方はかなり唐突でそこで初めて彼女のマザー
としてのスイッチが入ったと思いました。
あくまでも描かれているのは神(夫)の勝手な振る舞いの提供者に落とし込まれるマザー(妻)の受難の物語です。
とか書きますと大げさですが終始パロディなんです。茶化しまくってるんです。
奇才ダーレン・アロノフスキーの本心は知りませんが終始「ケッ!」ってつばを吐き捨てるような表情を一見優しい
筈の夫がしているのです。人の家でsexを始める夫婦、何度注意されても洗面台に乗って揺らして壊すカップル、部屋
に入るなと注意されても直ぐに入るカップル、家の物をどんどん壊して持ち去ろうとする卑しい人々、赤子の血肉を貪
り食い散らかすおぞましい人々を赦し、受難を事もなげに妻に強要する夫には「ケッ!」といった視線が無ければ私の
ような凡人には描けないと思いました。他にも「便所に流される心臓のようなもの」とか「床の割れ目と血」とか
「特殊部隊による銃撃戦」とかパロディでなきゃなんなの?って普通は思います。アメリカで観客が不快な思いした
理由は全てこれでしょう。
夫(神)は終始身勝手な赦しを施し続け妻(マザー)は赤子を産み落とし、その赤子は強欲で暴力的な罪深き人類に
貪られ怒りの頂点に達した妻(マザー)と共に家(地上)は業火に包まれ滅び、そして焼けた妻から取り出した新しい
クリスタルによって家(地上)が再生を繰り返す。夫は常に同じなのにマザーは毎回違うというジェンダーバイアス的
風刺まで含めてパロディになってると思いました。だって夫は妻が焼け死んでもクリスタルさえ取り出せばバナナマン
日村のような顔して満面の笑みで喜んでるんですから。
悪評も多いですが個人的には良作だと思いました。ジェニファーのおでこポイント高めです。[インターネット(吹替)] 7点(2022-05-30 10:55:37)《改行有》
2. 街の上で
《ネタバレ》 2時間を超える長編でありながら意外と退屈せずに見ていられた 8点
主人公青(若葉竜也)とその周辺で紡がれるいとおかしな日常の様々。
この作品のテーマは冒頭の冬子(古川琴音)が「誰も見ることはないけど、確かにここに存在してる」と語る。
それぞれの人と人生がくだらない事で悩んだり下世話な詮索をしたりどーでも良い時間を浪費したり、小さな幸せや
享楽を楽しんだり、理不尽な思いに酒を煽ったりみーんな知らないんだよ。でも確かにそこに生は存在し、無機物であ
るはずの建物も生き物のように姿を変えつつも刹那にそこに存在してる。奥深いテーマでありながら、割と単純に話
は進んでゆき、一方的な恋話なを始める警察官や、軽薄な男のカップルや、バーのマスターと常連等をエッセンスに
終盤のコントへ布石を打ってあったのは面白かった。
作品の流れは、4人のヒロインと青の関わりが描かれてゆきます。
それぞれのヒロインに一癖あって見ててすっかり青が翻弄されてるなぁと。実際強者男性でなきゃこんなもんだよなぁ。
と、今までの人生でそんなにモテたこともない私も思いました。この映画のレビューを見ると多くがイハ(中田青渚)
に共感というか男性なら惹かれたように読めるレビューが多くて、なるほどなぁと思った。そらボッチの飲み会で
隣に座って一緒に飲んでくれて、そのまま恋話で語り明かしたりしたら誰でも惚れてまうやろーとは思ったが、映像
からは敢えてそこに棘を随所に仕込んでいるように見えたり、映画の中では気の強い女性監督として描かれていた町子
(萩原みのり)ですが、実は一番誠実で正直なんじゃないかな?と感じたり、大人しそうな冬子が、青が出演する予定
だった上映会で町子につめより「存在の否定じゃんか」と罵るシーンに冒頭のナレーションがプレイバックしたり、
自分の浮気を理由に青と別れ話を切り出す雪(穂志もえか)は最初は酷いなぁと思ってたが、浮気相手が憧れの朝ドラ
俳優、間宮武(成田凌)だとわかったり、最後のコント場面で自転車で坂を登れなかったり、一方的な恋話なを始める
警察官に捕まったり、いろいろ不器用に生きてるんだなと思わせてもらったり、見てるうちに愛着が湧いたりもした。
鑑賞後なんだか席を立ちたくもなく、エンドロールをいつまでも眺めて余韻に浸る、いとおかしな今泉ワールドに
引き込まれた作品でした。[映画館(邦画)] 8点(2021-07-12 16:06:03)(良:1票) 《改行有》
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