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1. 迷霊怪談集 《ネタバレ》 ベトナムのホラー映画である。原題の「Chuyện ma gần nhà」とは近所の怪談というような意味らしい。場所はほとんどホーチミン市(サイゴン)、終盤の農村部は近郊のロンアン省とのことで、現地の雰囲気が映像に出ていなくもない。 内容としては、一部屋に集まった若手男女が都市伝説3話を語る趣向である。人が集まると怪談会を始める民族性なのか(日本だけでないのか)と思わせるものがあり、それで終了後に怪異が起こるというなら百物語の風情だが、この映画では語り出す前から怪異が起きていて、最後はむしろ新たな都市伝説(現代風ゾンビ伝説)が生まれたという意味かも知れない。 物語としては、第1話は比較的わかりやすいが設定上の突っ込みどころが大きい。また第2・3話は意味不明であって、Wikipediaベトナム語版のネタバレを読んだら(Google翻訳)かろうじて大体わかった。おれはおまえだ的な展開が2回もあり、登場人物の人格が無にされたかのように見えるのは物語としてつらいものがある。 出演者としては第1話の主人公が可愛い感じで、また第3話の主人公も眉がきりっとして嫌いでない。難点はなくもないが、奇抜な映像や現地の情景など全体的な印象は悪くなかった。 以下雑記 ・時代設定に関しては、最後のTVニュースは2020年代として、都市伝説の方は劇中の事物からして1990年代(末頃?)の話かも知れない。また都市伝説の原因になった事件はさらに遡った南ベトナム時代のことだったようで、主な観客層にとっての昔と、古いサイゴンやその周辺への懐古が表現されていたのかと思った。 ・テーマ曲は、南ベトナム時代に発表された「私を独りにしないで」(Đừng bỏ em một mình)という死者の心情を歌った歌で、昔のホラー映画でも使われたりしたものらしい。エンディングのほか3話それぞれで曲名や歌やピアノのアレンジ曲が出ていた。 ・第1話の絵は、現地で本当にこういう人物画を屋台に描く習慣があるようで、今は「コ・ミア」(Cô Mía/ミアさん)という呼び名が付けられている。その由来に関する都市伝説も実際なくはないらしいが、この映画の話とは違う。 ・第2話の「賞金300万ドン」は南ベトナム時代の通貨価値によるものかも知れない。 ・第3話の「人の魂は死ぬ時、3つに分かれる」は突拍子もない発想のようだが、19世紀末の朝鮮国に関する記録でも「人間には霊魂が三つあると考えられている。死後三つの霊魂はそれぞれ位牌、墓、《黄泉の国》に行く。」とされている(イザベラ・バード「朝鮮紀行」講談社学術文庫P374)。この朝鮮国での考え方は、故人の居場所が仏壇(の位牌)・墓・冥土(→来世)の3か所だということなら日本人にも納得しやすいが、この映画でも同じ考え方かどうかは不明瞭だった。[インターネット(字幕)] 6点(2024-08-31 09:06:57)《改行有》 2. メシア 伝えられし者たち 《ネタバレ》 2004/1/10に作品登録されてから誰も書かずに放置されていたので見てやることにした。 要はアクション映画だろうと思ったが、沖縄の島が舞台とすれば同じ監督の「無人島物語 BRQ」(2001)のように、無人島で殺し合いをするだけの映画かと思っていたらそうでもなく、それよりもう少し込み入った話を作ってある。撮影もその辺で適当にやったのではなく本当に沖縄に行ったようで、サトウキビ畑や亀甲墓、村落風景などがそれらしく映っている。 筋立てとしては、かつて琉球王朝に仕えた支配層の末裔に対し、虐げられていた一族が復讐しようとしたように見せておいて、実は単なる悪人だった(顔を見ればわかるが)ので滅ぼされた話である。しかしラストがどうなったのかが不明瞭で、また題名の意味も最後までわかった気がしない。一応考えてもわからなかったからには仕方ないので、考えたこと自体が野暮だったと思うしかない。 主人公は真面目で非力な女子中学生で、「あたしはもう大人よ」とは一応言っていたがまるきり中学生に見える。敵の首領があまりに迫力のある悪人顔のため、こんないたいけな女子が対抗できるのか心配させられるといえなくはないが、他はともかくこのヒロインが悲惨な目に遭うはずもなく、やる時はちゃんとやるので当然大丈夫なわけである。 主演の森田彩華という人は当時「美少女クラブ31」というもののメンバーだったとのことで、美少女というより普通の中学生っぽいのがかえって親しみを感じさせたが、終盤になると少し美少女寄りの姿を見せていた。また、たくましいのと細身なのと対照的な体格のアクション女優2人(清水あすか/浅井星光)が見せる本格的(多分)なアクション場面は見どころだったかも知れない。 それほど絶賛するようなものではないが、正直それほど悪くない印象の映画だった。[DVD(邦画)] 4点(2020-06-27 09:51:16)《改行有》 3. 迷宮カフェ 《ネタバレ》 骨髄移植をテーマとした映画で、少なくとも前半はあからさまにPR映画のように見える。ファンタジックかつミステリー調に展開する中でも、骨髄移植の基礎知識のようなことを主人公が何気にしっかり語っており、そのあとコーディネーターが出た場面などは本当に啓発ビデオ(コメディ風味)のようだった。 提供された側が感謝する顔をわかりやすく出すことをしないのは、現実に相手の顔が見えないことの反映と思われる。しかし代わりに出ていた「調整医師」役の女優はまさに本物であって、実際に骨髄移植を受けたからこそ今この人がここに映っているということのようである。そのほか映画的な作為として本人と偶然対面する場面があったりもした。 また啓発だけでなく後半では“家族”や“生命”に関することを加えて物語の厚みを増していたようだが、特に“生命”に関することが正直わかりにくいのは困った。無理にまとめる必要はないかも知れないがあえてまとめると、生命の価値はそれ自体が絶対的なものであって代替不可能、というようなことを訴えたいのかという気はしたが、それにしても台詞が長かったりして文章を読み解くような努力を要するのは少々つらい。 また本当にわからなかったのは獄中結婚のくだりであって、これは獄中側にとってはありがたいことだろうとは思うが、結婚を言い出した側の動機については納得できなかった。いろいろと事情はあるにせよ、自分を助けるための人助けをするな、という一般原則に反した軽率な行動ではなかったかという気はしなくもない。 一方で物語の作りとしては、少々わざとらしいが意外な展開が何か所かあって退屈せず、また個人的には2か所、思わず泣ける場面があった(録音テープの声、コーヒーが好きな人)。最後に出た「浜辺の少女」(役名)というのがほんわかした感じで心和むものがあり、このことも穏やかな余韻を残す結果につながっている。 また主人公は良心的な人物だろうと最初から思ってはいたが、「甘いもの食べると少し元気が出る」という言葉を聞くと、あらためて心優しい人柄が見えた気がして素直に好意を寄せたくなる。最初はただのPR映画と思っていたら結果としては意外に悪くなく、心温まる映画に思われたというのが実感だった。 ちなみに自分としては、これからドナー登録をするには遅いようだが、せめて(直接関係ないが)献血くらいは続けたい。[DVD(邦画)] 6点(2017-12-06 19:27:52)《改行有》 4. メリーさんの電話 《ネタバレ》 「ムラサキカガミ」(2010)に続く紗綾(さあや)の主演ホラー2作目で、今回はAKB48の菊地あやかとのダブル主演という名目だが、実質的には紗綾の行動が主軸である。登場人物が女子だけなのは1作目と同じで、今回は微妙に男子向けサービスと思われる場面もあったのは前回の反省かも知れないが苦笑した。 題名の都市伝説に関しては、本物は冒頭(と最後?)に出るだけで、ほとんどは映画独自の話に変えられている。ホラー要素にオリジナリティが感じられず、設定やストーリーも緩い感じなのは前回同様だが、肩透かしながらも微妙に怖い画面づくりがされており、意図的ミスリード?ともいえる箇所があったりするのは低予算なりの工夫とも思われる。登場人物が暗くて怖いところへ入る際、普通のホラーであれば怖がらせのために暗くしたままにするところ、あえて電気を点けていたのは一般常識に合わせた感じで好印象だった。それからクライマックスで、前回に続いてまた便所に逃げ込むのかと思わせておいてからの展開は意表をついていた(笑)。 ところで劇中では、誰でも知っている有名な交霊術の名前をわざわざ変えて使っていたが、これは撮影中に本当に交霊術をやってしまうのを避けるためだとすれば良心的な対応と考えられる。また凶兆におびえた友人が思わず不吉なことを口にするのを主人公が諌める場面があったが、こういう不用意な連中が人心を不安に陥れ、あるいは自ら墓穴を掘るようなことをやらかすのに対して警告を発しているようなのも理性的に見える。特に今回は、主人公が前回同様に怖がりな性格ながらもしっかりした人物だったことで、“正しく怖がるのを恥じることはない”という若年者への教育的配慮が感じられる映画になっていた。 ただその割に、登場人物が芝居がかった調子で延々と昔語りをする場面があったりするので、そういうことを現場で口に出すのは自ら災難を呼び寄せるようなものだからやめろと言いたくなるが、まあこの語り自体は前回に続いての定例行事と理解した方がいいのかも知れない。何にせよ前回同様の実直な印象で個人的には結構好きだ。前回と共通のエンディングテーマも悪くない。 ちなみに冒頭のタイトルが無粋な感じの明朝体になっているのは、自分としては1968年のTV番組「怪奇大作戦」の第4話「恐怖の電話」を連想させるものがあったが、意識してやっていたのかはわからない。[DVD(邦画)] 5点(2013-09-17 19:58:39)《改行有》 5. MAIL 《ネタバレ》 7年前に投稿が3件あっただけで、あとは忘れられたらしい。当時の上映版とは異なり、DVD2巻の「完全版」(少し長い)を見たのだが、大体同じということで書かせていただく。どうせ誰も読まないだろうが。 それでまず、構成としては全9回のTVシリーズを並べたようなもので、途中で連続2回も貞子が出るのはどうかと思ったが、ちょっとほろりと来る回などもあってそれほど退屈ではない。第4話の女優が台本を何回読んでも泣いちゃうと言っていたのは同感である。 また9話全体を通じたストーリーも一応あり、第2話からレギュラーで出るヒロインは顔が好みでないのだが、毎度見ていると愛着がわくのはシリーズ物ならではと思う。終盤で出る少女の子役も愛らしいので、少し切ないラストはいい感じに思えた。 これが映画としてどうなのかは問題もあるだろうが、見た時間を損したとまでは思わなかったし、また個人的には最後の言葉が底なしに悲しいので、少しいい点を付けておく。このサイトでは破格の点数になってしまうが、どうせ誰も読まないからいいだろう。[DVD(吹替)] 6点(2012-08-05 20:11:54)《改行有》 6. メタル・オブ・ウォー 《ネタバレ》 [2024/7/13改訂] 1999年のコソボ紛争関連の映画である。製作国をアルバニアとする情報もあるが、脚本・監督や出演者からみて実質的にコソボ映画と思われる(公開当時は独立宣言していなかった)。場所設定としては首都プリシュティナ周辺が多かったようで、撮影地も主にコソボだろうがアルバニアの首都ティラナの映像も少し見えた。 内容的には映像が古くさく、昭和のTVドラマのように見える。戦争映画といえるものではなく、戦闘場面はあるが茶番にしか見えない。ドラマとしても雑な展開で、特にコソボ解放軍の指揮官(だった男)の登場は都合がよすぎた(7回)。よかった点としては、主人公の表情を映していたときに、後方で待機していたネコがタイミングよく走り出す場面があったのは感心した。 物語の主な要素は次の①~⑤と思われる。コソボ文化省の支援を受けたと冒頭に出るので政府見解からは外れていないと思われる。 ①セルビア軍が民族浄化のためアルバニア人を虐殺し、若い女性を集団的に強姦した。 ②敵の強姦で生まれた子は戦後も社会に受け入れられず疎外される。 ③強姦で生まれた子や戦災孤児を集めて人身売買する犯罪集団ができている。その正体は、戦争犯罪の証拠隠滅が目的とすればセルビア人ということになるだろうが、ただし首謀者がアルバニア人だと言っていたのはどう解釈すべきか不明。 ④コソボ解放軍は英雄的に戦った。戦後は武装を解いたが、③の犯罪集団を壊滅させるため再武装して出動した。 ⑤なぜかアメリカ人の報道記者が出て来て①の実態を世界へ知らせ、③に関しても当局に通報して主人公を助けた。④のコソボ解放軍には好意的だったが、国連警察のやり方には抗議した。 以上により主に表現されていたのは、①セルビアは邪悪、④コソボ解放軍は正義、⑤アメリカは友人だが国連は信用できない、というような感じに見える。特に政府としてはコソボ解放軍を肯定的に扱わなければ済まなかったはずで、この点については終始一貫していたようだった。ただし終盤の意味不明な会話を聞くと、実はもっと深遠なテーマが背景にあって、意味不明な原題もそれを表現していたのかと想像できなくもない。本来は上記②③あたりも重要でなかったのかと思った。 なお宗教関係についてはキリスト教(正教とカトリック?)だけで、イスラム教がほとんど出ないのはなぜか不明だった。アメリカ向けに作ったからか。 登場人物に関して、主人公の結婚相手は川谷拓三か仁科貴に見える(コソボの役者は人材不足か)。またアメリカ人「ローラ」役の演者は1995年のミス・コソボだったようで、劇中この人が変に美人扱いされていたのはそのためかも知れない。主人公はなかなか感じのいい人で、こういう心正しい人がまっとうに生きられる社会であってほしいという思いが感じ取れる気はした。[DVD(吹替)] 3点(2012-05-09 23:13:03)《改行有》
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