みんなのシネマレビュー |
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1. 靖国 YASUKUNI 靖国問題は賛成反対といった単純な二分割で語ることが難しい。例えば遺族が合祀しないでほしいと訴えることと当時の首相が参拝することはなんら相反するものではない。この映画は様々な訴えが映されるが、それらは繋がりを持たず、ただ靖国神社のイビツさを浮かび上がらせてゆく。監督の主張がないという批判があるが、主張はある。反対だ賛成だとはたしかに語っていないが「靖国はイビツだ」ってことはじゅうぶん伝わってくる。合間合間に刀匠のインタビューを挟むことで「靖国は特別」な存在であることもふまえつつ、それ以上のイビツさを備える靖国が映し出されている。浄土真宗の僧侶が「靖国は戦争の頃から全く変わっていない」と言う。時代が変わろうと頑なに変わらないからイビツなのか、とも思った。映画の中で一部とんでもなく気持ち悪い連中が登場する。こういう人たちはそのイビツさの象徴的存在であり、またそういう人たちによって靖国のイビツさは増幅されているに違いない。しかしそのイビツさも含めて戦争の遺物であることを戦争フィルムをモンタージュすることで示している。[映画館(邦画)] 6点(2011-11-02 15:10:37) 2. 山形スクリーム 映画監督としてはなかなかのものを残してきた竹中直人ではあるが・・・。いや、俳優としてもいいものを持ってる。ただ、コミカルパート担当になるとその独特の存在感が際立っているせいで毎度同じような役柄を与えられワンパターンに陥っている。そのワンパターン化した竹中直人の「笑い」のセンスがこの作品に充満している。それは両極端のシリアスとコミカルができる竹中直人の「笑い」。所謂ギャップからくる「笑い」。こんな人がこんなアホなことしてる。あのキレイな顔であんなこと叫んでる。それはそれで楽しいかもしれないけど映画の「笑い」じゃない。ギャップを使うというのはそれ自体がパロディでもあるんだけど、そればっかりで映画作られるときつい。単純なストーリーはいいと思う。でも単純なだけに「笑い」をしっかりと演出してほしかった。[DVD(邦画)] 4点(2011-10-24 14:41:13) 3. 闇の子供たち 問題提起するならもっとこうしろだとか社会派としては中途半端とかといった批判が聞こえるが(まあわからんでもないが)、そもそもこの作品はフィクションである原作小説の映画化であるわけで、それらの批判は的外れだと思う。原作は読んでないけど映画だけで判断しても根っからの社会派であろうとはしていないように思われる。もちろん題材が題材なだけに観た者が問題を提起されたと思うことは想定しているだろうし、監督が意図しなくとも社会派の面があることは否めない。が、主人公の秘密は人間には表と裏があるということの決定打としてあるのであって、はたまた物語を楽しむためのサスペンスを生むためであって、けして児童虐待や幼児売春といった諸問題を語るためのものではない。宮崎あおいの役柄が若干やりすぎのような気もしたが反面分かりやすかった。福祉センターでボランティアをする人たちも含めて、正論は単なる正論でしかなく、そこから生まれるのは自己満足でしかなかったり、正論を吐くことで敵を作ることもあるという複雑な社会構図の見せ方が面白かった。人間も社会も単純ではない。ということを世界のどこかで起こっているかもしれない劣悪な現実に我々日本人が係わっているかもしれないという物語の中で見せた映画。[DVD(邦画)] 6点(2011-09-29 16:22:38) 4. 闇の手品 この映画、たしか数年前に溝口健二『折鶴お千』と共に見たもので、『折鶴お千』の私のレビュー年月からすると4年以上前に見たということになる。にしてもかなり映像が頭に残ってます。それほどにインパクトがあったってことなんだろうけど、1927年作品でモノクロで夜でしかも雨となれば画面は非常に観づらいはずなんだけど、ある少年が謎の人物とバッタリ出会い謎のものを預かるというなんとも怪しい雰囲気にこの見づらい暗がりがピッタリで、とくに謎の人物の見せ方が露骨に「謎の人物」で、なるほどここのドイツ表現主義的演出がインパクトを与え私の脳裏に画を残す要因になっているのだなと推察する。暗がり、つまり「闇」が少年の心理に影響を及ばすという重要な役割を担っているってことをうまく表現もしている。映画の目的がそこにある(傾向映画)とはいえ大写しにされる標語が少々くどい。わりと最近になって発見されたフィルムらしい。[映画館(邦画)] 6点(2011-07-25 14:27:18) 5. ヤッターマン(2008) 「タイムボカン」は見てたけど「ヤッターマン」になると見たり見なかったり。なんかバカバカしくって。前者のカブトムシは明らかなメカだったけど後者のイヌは自らの判断で動き、しゃべり、おしっこまでする。メカのくせに。むちゃくちゃだ。だったら性欲だってあるだろう。興奮だってするに決まってる。映画『ヤッターマン』はTVアニメ「ヤッターマン」のバカバカしい設定を逆手にとってバカバカしさをあえて露呈させてゆく。ヤッターマンのキメのポーズを目の当たりにする少女は羨望の眼差しでその勇姿を見つめることはない。なに?この人たち、バカ?といった表情で立ちすくむのだ。元ネタへの冒涜か?いや、「ヤッターマン」自体がおふざけの悪乗りが過ぎる作品だったのでこれこそがオマージュと言ってもいいだろう。元ネタのキャラと最も離れているドロンジョだが、見て納得。映画のドロンジョは恋する乙女。処女性とセクシーボディを併せ持つドロンジョを深田恭子以外に誰が出来ようか。アホな1号。そのアホに惚れてしまったドロンジョ。そのアホに秘かな想いをたぎらせる2号。真っ直ぐなアホはもてるのだ。そこにドロンジョへの無償の愛を貫くボヤッキー。なんて素敵な恋愛映画。[DVD(邦画)] 7点(2010-04-09 15:07:27)(良:1票) 6. 屋根裏の散歩者(1992) 乱歩のファンで中でも「屋根裏の散歩者」と「人間椅子」を偏愛するうちのヨメさん曰く、乱歩作品の映画はエロいから嫌い、らしい。たしかに本来上記の二作品はエロティックな香りこそ漂うもののエロティックな描写は無い(「人間椅子」はちょっとあるか・・)。怪しい世界を覗く話ではなく、覗き見る行為自体に怪しさがあるのだ。ただ客寄せなどと安易な考えでエロが付け足され描かれているのではなく、やはり乱歩のイメージとしてエロは外せないというのがあるのかもしれない。それにしたってここまで変態が集まるアパートもないだろう。それにエロシーンがなくてもオールセットと独特の光の使い方をする実相寺ワールドはそれだけでじゅうぶん怪しい。結果として原作に付け足された部分は宮崎ますみの部分も含めて全部蛇足に感じてしまう。三上博史がたまに見られるオーバーアクトがなく、怪しい世界に生きる主人公を好演している。あまりにイメージとかけ離れた嶋田久作の明智小五郎も意外に悪くない。[ビデオ(邦画)] 5点(2009-07-27 16:26:43) 7. ヤンヤン 夏の想い出 ヤンヤンの学校でのエピソード、姉の恋、祖母の意識不明、母の失踪、母の弟の新婚生活と仕事、父の青春、、、それぞれが丁寧に繊細に描かれる。どのシーンも省けない。物語上では省けても、一つ一つのシーンが愛おしくって省きようがない。ひとつのセリフにドキッとさせられたり、なにげない動きに優しさを感じたり、ちょっとした沈黙に考えさせられたり。そして、けして哲学的には語られないけど、この映画に人生が凝縮されているような気がする。男と女のドラマがそれぞれ展開される。興味と好奇心、信頼と裏切り、出会いと別れ、嫉妬、セックス、生活、夢、、、。そして家族が描かれ、年齢を重ねることが描かれ、「死」が描かれる。ヤンヤンにとって祖母は「知らない事を聞くと教えてくれる」人。「生きる」ということは知らないことを少しずつ知ってゆくこと。不思議な魅力を発散するイッセー尾形がその強烈な個性とは裏腹に、この美しく、そして優しい映画に奇跡的に染まっている。[DVD(字幕)] 8点(2008-03-07 16:29:36)(良:2票) 8. 奴らを高く吊るせ! 『牛泥棒』の私刑のシーンをそのままパクって、、いや、模倣したかのようなオープニングに始まり、後の『荒野のストレンジャー』を予告するかのようにイーストウッドが蘇り、そこから物語が始まるというのはなんともそそらせてくれます。アメリカ西部劇に欠かせない保安官と判事と無法者を取り揃えながらも復讐ものといういかにもマカロニウエスタン調の展開で、なおかつ「正義」とは、なんていうまじめそうなテーマをちらちらさせながらも結局いろんな映画のおいしいところを寄せ集めただけなんじゃないのかという感じの映画。軽すぎず重すぎず適度に楽しませてくれてはいるものの、冒頭でイーストウッドを助けた保安官がその後全く登場せずに「殺された」という言葉だけでその存在を消してしまう勿体無さ、目の前で夫を殺され犯された女の顚末のあやふやさがどうにもムズムズ感を残してしまって、どうせなら端折るところは端折ってシンプルに仕上げてくれたほうが良かったような気もする。[DVD(字幕)] 6点(2006-09-22 17:45:22) 9. 野獣の青春 モノクロ画面に赤い花が映し出されハッとして、カラー画面に変わってまたハッとする。冒頭の数分で一気に引き込まれた。キャバレーをマジックミラー越しに覗えるヤクザの事務所では店内の音を聞いたり消したりできるのですが、その音の出し入れが絶妙。対立するヤクザの事務所も壁一面がスクリーンになってて面白い。鞭打ちの刑のシーンの黄色すぎる砂嵐の画に、今につながる清順の自由な美学を感じる。映画ってこんなふうに撮っちゃったっていいんだよ、という奔放な発想の実用化がこの頃から始まる。とはいっても清順の初期作品はストーリーだけはオーソドックスに語られるほうなので、この作品も誰にでも楽しんで観ることができる作品だと思います。そのオーソドックスなストーリーの流れの中で清順だけが持ち得る空間の美を堪能できれば言うこと無し。 [DVD(字幕)] 7点(2005-12-20 14:23:58)(良:1票) 《改行有》 10. 約三十の嘘 密室という設定にプロの詐欺師たちの騙しあい、となればやはり手の込んだトリックを期待してしまうわけですが、大いに裏切られます。別の部屋をとってるなんてトリックとは言えない!と、文句から入っていきましたが、これは信頼関係の中で築かれた暗黙の了解があって初めて成立する詐欺で、いわばずるい詐欺なわけです。つまり、そもそもトリックを楽しむものではなく、信頼関係の崩壊と崩壊の阻止がメインのドラマになります。問題はそのドラマに気付く前に手の込んだトリックを期待させてしまう作り(それぞれの登場シーンとか)にあるのだと思うのですが、そういうことを度外視しても、列車の疾走感だとか、密室の緊張感だとかが皆無で、せっかくのおいしい設定が無視されているのが残念でたまらない。ミルキーちゃんのキャスティングはいいっす。私は絶対騙される自信があります。(そんなもんに自信持ってどーすんの) //追記//これって舞台劇にしたら面白いのに、って思ったら舞台劇の映画化だったんですね。うーん、映画化の旨みが無いぞ。 [DVD(字幕)] 3点(2005-08-02 17:32:54)《改行有》 11. 山猫 3時間6分の完全復元版を見ました。前半はシチリアの美しい情景を、後半は社交界の豪華絢爛な美をバックに、貴族出身のヴィスコンティ自身が投影されているだろうサリーナ公爵を通して、貴族の衰退と自らの老いをリンクさせながら描いてゆく。繁栄すればその後には衰退がある、生きていれば老いてゆく、というヴィスコンティの哲学とも言えるテーマの中で、平民の血をいれるという変革を決断し自由奔放な若きタンクレディに跡を任せるという潔さがまさに滅びの美学。しかしそこには葛藤がある。葛藤を隠して踊る堂々としたワルツの美しいこと。葛藤とは無縁のような性格のタンクレディが新しい時代に相応しいというのもどこか皮肉であるが、情勢によって立場をころっと変えてしまうタンクレディは誰からも好かれる好青年であり、その印象の良さはことさら強調される。若さと老いの対比である。 後半の舞踏会では、本物の貴族の家を使い、食器から装飾品までもがシチリア貴族のものを提供されたものらしい。そこまで拘ってはたして映像で伝わるのかどうかはわかりませんが、風前の灯火のごとく光輝く美がたしかにありました。この「美」の部分だけでも見る価値あり。[映画館(字幕)] 8点(2005-04-08 19:39:42)(良:1票) 12. 柔らかい肌 犯罪サスペンスでもないのになんでこんなにハラハラするんだ?決して私が浮気をしているからじゃないです。トリュフォーが凄いんです。いやホント、してないですよ。若くてきれいな浮気相手と旅行する為、したくもない公演に行ったはいいが、その先で主催者?につかまって彼女の相手ができない。外で待つ彼女を気にするも抜け出せない。アァ~イライラ。しかも誰かにナンパされてる~!アァ~ソワソワ。これらのシーンを映像だけで見せます。なのでナンパされてるのか道を尋ねられてるのかははっきりとはわからない。なので余計にソワソワ。なにも私がソワソワしなくたっていいんですが。怒る彼女をなだめホッ。ちょとドキドキで妻に電話。そしてガ-ン!また違ったドキドキ。もう完全にこの映画に遊ばれてます。いやー参った参った。7点(2004-06-22 10:14:14)(笑:1票) 13. 野性の少年 野生の少年が発見されて捕まるまでの冒頭のシーンはセリフが無いだけに監督の腕の見せ所なんですが、お見事です。その後の展開がちょっとありきたりに感じちゃいましたが実話ということなのでしょうがないか。イタール博士(トリュフォー)は野生の少年を”見世物”から救い出し人間として教育する、そこには確かに子供に対する父の愛が存在します。しかし学者としての研究欲もあるように見うけられる。最初はそっちのほうが強かったはず。「ジャン・ピエール・レオーに捧げる」とありますが、トリュフォーの映画の道具として『大人は判ってくれない』に出演し、その後も共に映画を作るうちにしだいに父と子のような関係を築きあげたトリュフォーとレオーがこの作品の2人とだぶります。野生の少年を演じた子供の演技は、演技とは思えないほどの好演でした。6点(2004-06-15 13:47:13) 14. ヤング・マスター/師弟出馬 いやというほどジャッキー・チェンの映画は見てきたが、よくよく考えると映画館で見たのはコレだけだ。当時かなり期待して見に行きました。これまでの「○○拳」という題名から「ヤング・マスター」という横文字に新しさを感じたからです。欧米での知名度も上がりつつある中でここで一気にと思ったのではと勝手に想像してました。いざ見てみるとこれまでの作品と同じような内容にがっかりしました。(これまでの作品も面白かったんですよ。) 後に思うに、期待していた新しい試みというのは「ヤング・マスター」以降の作品から登場します。この作品はソコに行くまでにジャッキーがしておきたかったこれまでのジャッキー映画の集大成だったんです。これまでのありきたりプロットにカンフーアクションをぎっしり詰め込んだ、小技大技満載のこれぞジャッキー・チェンの根っこと言える映画です。6点(2004-02-06 12:25:13) 15. 野性の証明 自衛隊の特殊部隊。本当の親子ではない健さん(役名忘れた)と薬師丸ひろ子演じる頼子ちゃん(かわいい!)。本当の父親は殺された?誰に?健さん!? 、、どうです?見たくなったでしょう。見ましょう!当時見たきりなので今見ても楽しめるか保証はしませんが..。「おとーさーーーん」なんならココだけでもいいし。7点(2003-12-27 18:43:17) 16. 柳生一族の陰謀 この辺りの歴史ものが好きだったのもあり初見時はかなり好きだった作品。十兵衛といえば千葉真一である。「柳生十兵衛、推参!」かっちょいい!しかし大分経ってから見るとどうもJACのオーバーアクトが気になる。十兵衛がニヤリと笑い「元気な子を産むんだぞ」とはっきりと解かりやすく大きな声で言うのもなあ..。ハヤテの恋心だとか、茜の死だとか..そんな描写もちょっとあざとい(JAC期待のホープ真田広之とエース級ヒロイン志穂美悦子の為に用意されたような)。まあ、でも筋は面白いのは間違いないと思います。特にラストはしてやられました。6点(2003-12-09 11:19:23)
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