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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. 雪に願うこと ばんえい競馬はよくドラマに登場するが、スポーツの爽快よりもイジメに見えてあまり好きではない。精神主義的な人生論が投影されやすいからかも知れない。なんか体育教師が「根性!根性!」と気合いを入れているよう。そんな私でも湯気を立てる馬のシルエットは美しく、息を呑んだ(美しけりゃあっさり共感してしまう主体性のなさ)。映画における湯気とか煙は、なぜこんなにも美しいのだろう。光を感じさせる装置だからだろうか。いくつかの映像の美しさでモトをとったと思った。見上げる廃橋と、雪に埋もれた廃橋。撮影に手間をかけてます。厩舎でのリハビリの話でもあるわけだ。感謝の気持ちを屋根へ雪玉を載せる行為で見せるのがよい。[映画館(邦画)] 6点(2013-10-15 09:09:48) 2. ゆれる 法事ってのは、つまり「身内」の全員集合なんだな。その濃密さ、鬱陶しさ。弁護士までおじさんなんだ。娘が不意に「触らないでよ」と振り返るあたりの緊迫感をあとにも欲しかったが、やや尻すぼみの印象。この映画はつまり顔見知りだけで暮らしてることのたまらなさの話だったと思うんだが、香川照之の意味不明な笑いがやはり絶品でした。彼は歌舞伎の顔見知りだけで作っているような閉鎖社会にこのあと入っていったんだが、狂気にまで近づく彼を見てると心配になる。「兄弟」ってのは「身内」でいて、そこから逃亡する通路でもあるのか、それとも最も強大な身内なのだろうか。[DVD(邦画)] 6点(2013-10-10 08:44:56) 3. 夕凪の街 桜の国 麻生久美子が「誰かに死ねばいいって思われてたのに生きてる」って言ったとき、おっ、ここがポイントだぞ、と思った。あの戦争のとき、多くのアジアの人に日本人は死ねばいいと思われた。その恨みを持たれた日本人の代表として、なぜ広島の庶民がむごく死なねばならなかったのか、この外から見ると理屈があって、こっちから見るとひどく理不尽というズレが、原爆の悲惨を世界に訴える上での障害になっている。そこに切り込んでいくのかと思っていると、どうも「死ねばいいと思っている誰か」とは、ここではアメリカだけのようで、もちろんアメリカを告発し続ける必要は未来永劫あるのだけれど、そこに「死ねばいいと思っていたアジア」の視線も含めていかないと、どうしても声は弱くなる。そうすれば、なぜ東京でなく広島だったのかという重要な疑問にも、もうちょっとで至れたのだ。米軍が「死ねばいい」と思ったのは広島の庶民であって、東京の軍の参謀や政府・天皇は話し相手として残しておいた。東京の庶民は平気で焼き殺したが、中枢に損害は与えなかった。日本対アジア・アメリカという図式でなく、広島や東京やアジアの庶民対米軍・日本軍という対立が見えてくる広々としたところまで、もうちょっとだったのだ。そこらへん、実に惜しいと思った。現代編で、父への尾行が時間を超えた追跡になっていくところをもっとうまく演出できたんじゃないか、などといろいろ不満はあるが、こういう映画さえ作られなくなったらオシマイ、と思ってるので、このぐらいで。[DVD(邦画)] 6点(2008-09-04 10:57:25) 4. 幽閉者 テロリスト わあー、60年代のATG低予算映画的気合いプンプンの作品。ノスタルジーと一番離れたような作風だが、なんかとても懐かしかったのは確か。こういったとんがった「ひとりよがり」が日本映画から消えてしまって久しい。でも、映画史って「ひとりよがり」が普遍を獲得していく歴史でもあったわけで。あの政治の時代を内側から体験した監督がどう総括するのか、と思って見ていたが、総括なんかしない。地下の革命家まで呼び出して、さらなる討論と試行錯誤(思考錯誤と表記したいところ)を繰り広げる。もうトリックはいらない、と叫ぶ主人公。現在の眼からはあの政治の季節は、ついに思考が地に足をつけられなかった観念の時代と見えるが、あの時代の眼でこっちを眺めれば、その無思想ぶりは、誰かがわざと仮装させているなんらかのトリックにしか見えないのだろう。[DVD(邦画)] 6点(2008-02-19 12:23:35) 5. 弓 《ネタバレ》 水の上の閉鎖空間ということで「春夏秋冬そして春」の浮き堂を思い出すが、こちらで閉じ込められているのは姫。(「魚と寝る女」とも類似性がありそうだけど未見)。王子に助け出されるまでの本当に骨格だけの寓話で、よくぞここまで削ぎ落としたと褒めてもいいが、痩せすぎてるとけなしたい気持ちもある。じいさんが単なるエロおやじでなく、精神性を感じさせる人物なのが大事だ。言葉というものがいらないまでの一体感で暮らしていた船、弓は外へ向けては武器になり、内に向けては愛の調べを奏でる楽器になる。その弓のように張りつめていた精神性。とにかくこの監督が描く愛は、ひとつとして市民社会に受け入れられるようなものはない。そういう愛の世界が船上に築かれていた。そこに外の音楽が入り込んでくる。別に張りつめてなく精神性も感じられないけれど、その凡庸さが心を穏やかにするような音楽が、ヘッドホンから聞こえてくる。それが外部。市民社会の音楽だ。姫の救出がひとつの高貴な王国の崩壊となるのも、寓話の宿命であろう。[DVD(字幕)] 6点(2007-12-18 12:30:06)(良:1票) 6. ユメ十夜 《ネタバレ》 デパ地下で試食品をハシゴし、けっこうお腹がいっぱいになったが食事をしたという満足には至らず、でもたまにはこういう日もいいかと思う、そんな感じの映画。この割り当て時間だと本格派より一瞬芸的世界のほうが印象に残りやすく、ひとつ選べと言うなら、単純にただきれいなアニメの第七夜か。あとは見立ての面白さを楽しんだ。運慶をパフォーマーに、旅客船を宇宙船ふうに、豚をブスに、それぞれ解釈して話を読み換える興味。さらに、市川崑のサイレント映画を見られたことと、本上まなみのブタを見られたこと。[DVD(邦画)] 6点(2007-11-17 12:16:04)
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