みんなのシネマレビュー |
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1. ラッシュアワー3 《ネタバレ》 シリーズを重ねる毎に「ダブル主人公」ではなく「主人公のリーと、その相棒のカーター」って形に変化していった二人。 自分としては元々リーの側に肩入れする気持ちが強かった為、さほど違和感を抱かずに済んだけど…… これってカーターの方が好きな観客にとっては、結構辛かったんじゃないかって思えますね。 前作のヒロイン格であるイザベラがリーと疎遠になったのも「カーターが悪い」って事になってるし、その辺ちょっと厳しいというか、ファンに優しくない作りだった気がします。 そんな明確な欠点がある映画なんですが、2に続いて3でも魅力的な敵役を用意してみせた点に関しては、素直に評価したいです。 本作でカーターの影が薄いのって、コイツのせいじゃないのかって思えるくらい、真田広之演じるケンジが魅力的。 「主人公リーの弟分」「今は敵対し、かつての兄貴分に愛憎入り混じった想いを抱いてる」って設定だけでもオイシイし、日本刀を鮮やかに振るう姿も恰好良い。 そんなケンジとの「エッフェル塔での戦い」は、間違いなくシリーズ屈指の見せ場だったと思います。 リーが弟分のケンジから「孤独な男」と断じられた場面で「孤独じゃないわ」と女装したカーターが助けに来る場面はグッと来るし「やるじゃん、シスター」「任せて、ブラザー」ってやり取りも面白かったしで、こうして感想を書いてみると(あれ? 意外と良い映画だな)って、鑑賞後の印象とのギャップに、自分でも戸惑っちゃうくらいですね。 では、何故そんな本作の「鑑賞後の印象」が悪かったかというと…… やっぱり、終わり方のせいだと思うんです。 本当、今観返してみても「唐突過ぎる」「呆気無い」「何でこんなブツ切りで終わらせたの」って、理解に苦しむくらい。 ……ただ、上述の「唐突の終わり方」に関しては、劇場公開版&ソフト版に限った話であり、地上波放映版では、未公開だったラストシーンが追加され、グッと自然な終わり方になっていたりもするんですよね。 劇中(扱いが酷いなぁ)と思えたイザベラに関しても、リー達と再会する場面が描かれ、しっかりフォローされていますし。 狙撃されたハン大使が無事に退院した事も明かされ、文句無しのハッピーエンドになってる。 そして何より「1や2と同じく、リーとカーターが休暇に旅立つ終わり方」「俺達は相棒じゃなく、兄弟だと認め合う終わり方」であった事が、本当に良かったです。 残念ながらNG集は拝めないってマイナスを考慮しても、自分は地上波放映版の終わり方を支持したいですね。 ちなみに、本作の劇中では「ケンジのタマ取って妹にしちゃえ」という台詞がありますが、ドラマ版(2016年)では実際にリーの妹が出てきたりもするので、気になった人は是非チェックして欲しいですね。 「映画版と殆ど変わらないカーター」「寡黙な美男子という独自の魅力を出してるリー」という主人公二人の描き方も良かったし、最後も綺麗に終わってるしで、この手の「人気映画をドラマ化してみた」パターンの中では、かなり良く出来てる方だと思うので、オススメしておきたいです。[地上波(吹替)] 6点(2022-06-24 09:24:48)(良:2票) 《改行有》 2. ラッシュアワー2 《ネタバレ》 ラッシュアワーシリーズって、三部作全てブレット・ラトナー監督のはずなんだけど…… (あれ、もしかして監督交代した?)と思えちゃうくらい、続編物としての欠点が目立つ作りなのが寂しいですね。 一応、1にあった楽しい雰囲気は維持されてると思うんだけど、何ていうか「1と2の繋げ方が雑」なんです。 前作のラストで「カーターは中国語を話せる」ってオチになったはずなのに、実際は手帳に書いたワードを読み上げる事しか出来ないって設定になってるし、1ではビーチボーイズを馬鹿にしてたカーターが「ビーチボーイズ最高!」と言ってる辺りも、1と2の間に何があったんだよと気になっちゃう。 シークレットサービスになれたと喜ぶカーターっていうのも、1のラストにてFBIになる事を拒否し「俺はロス市警で良い」と恰好良く啖呵を切った場面を考えると、違和感があるんですよね。 この辺に関しては、監督というより脚本家の交代が原因かとも思えるんですが、真相や如何に。 そんなこんなで、ちょっと褒めるのが難しい一本なんですが…… 一応「1には無かった、2独自の良さ」も、ちゃんと備わっていたと思います。 何と言っても最大の長所は、悪役美女のフー・リを演じる、チャン・ツィイーの存在。 林檎にナイフを投げる場面とか、戦う前に鮮やかな動きで髪を結う場面とか、もう惚れ惚れしちゃうくらい魅力的でしたね。 凛々しさと可憐さ、その双方を備え持っており、爆発で死んじゃうオチなのが悲しく思えたくらい。 リーが口の中にある爆弾を作動させない為、フーにキスする場面も可笑しかったし…… 父の仇であるラスボスのタンを撃つべきか、それとも正義の為に自制するかでリーが迷う場面にて、相棒のカーターが「撃て」と急かすのも、新鮮で良かったです。 こういう場合、相棒は撃たないようにと諭すか、わざと露悪的な事を言って思い止まらせるもんなのに「俺達以外には誰もいない」とか言い出す始末ですからね。 本作の主人公二人が、型通りの「バディ物」には収まらない魅力を持ってると示した、印象深い場面です。 前作と同じように「休暇に旅立つ二人」という、楽しい雰囲気のまま終わってる辺りも、嬉しいポイント。 上述の通り、続編映画としては色々と不満もあるんですが…… これ単体で評価する限りでは、中々良く出来た映画だったと思います。[DVD(吹替)] 6点(2022-06-24 09:20:13)《改行有》 3. ラッシュアワー 《ネタバレ》 米国におけるジャッキー人気を決定付けたという、記念すべき一本。 そう考えると、映画史においても重要な品のはずなのですが…… そんなアレコレを加味しなくとも、単純に刑事物のバディムービーとして、良く出来てると思います。 この手の映画の場合、主人公は「常識人タイプ」と「型破りタイプ」に分かれがちであり、本作も一見するとリー刑事が「常識人」カーター刑事が「型破り」なのかと思えるのですが、映画が進むにつれ、徐々にその関係性が逆転していく様が面白いんですよね。 カーターの方は「ビバリーヒルズ・コップ」(1984年)的な「陽気な黒人刑事」というキャラクターであり、どう考えても相手を振り回す側のはずなのに、無口で真面目そうなリーに振り回されるという意外性。 旧来のバディ物、そして刑事物に慣れ親しんだ観客であればあるほど、この展開には意表を突かれ、新鮮な魅力を味わえたんじゃないでしょうか。 監督のブレット・ラトナーがジャッキーのファンだったので、アクション・シーンもジャッキーが好きなように演じる事が出来たという、その一点も素晴らしいですね。 クライマックスにて描かれる「展示品を壊さぬように、必死にフォローしながら戦う場面」「絨毯ダイブ」などの魅力は、如何にもジャッキー映画的であり、彼のファンとしても、大いに満足。 そんなジャッキー演じるリーだけでなく、相棒となるカーターが魅力的なキャラクターであった事も、忘れちゃいけないポイント。 「誰にでも出来る、下らない任務」としてリーの接待を任されたカーターだけど、見事に誘拐事件を解決してみせて「高慢なFBIの鼻を明かす」って痛快さを描いてるんですよね。 リーの側だけでなく、カーターの側に感情移入して観ても面白いって辺りは、続編の「2」や「3」では失われてしまった長所であり、本作のバディムービーとしての完成度の高さを証明してる気がします。 「カーターは銃を二丁持ってる」「リーから銃の奪い方を教わっている」などの伏線が、きちんと張られている事にも感心しちゃうし、反目する主人公達が仲良くなるキッカケが「歌と踊り」っていうのも、お約束な魅力がありましたね。 幼女のスー・ヤンに、爆弾処理に長けたタニアといった具合に、魅力的な脇役が揃ってる点も良い。 商業的な成功が、必ずしも傑作の条件という訳ではありませんが…… 本作に関しては、ヒットしたのも納得。 そしてシリーズ化したのも納得な、魅力のある映画だったと思います。[DVD(吹替)] 7点(2022-06-24 09:14:47)《改行有》 4. ラブ・アクチュアリー 《ネタバレ》 「ラブ・アクチュアリーを観た日」という曲を聴いた勢いで、元ネタである本作も鑑賞。 所謂「グランド・ホテル」形式の群像劇であり、エピソードの殆どを「恋愛」で纏めている点と「クリスマス」という特別な日にスポットを当てた点が、当時としては斬新だったのでしょうね。 この映画から数年後に「バレンタイン」や「大晦日」にスポットを当てたラブコメ群像劇が作られていますし、影響力の強さが窺えます。 登場人物が多く、同時進行するエピソードも多くて、難易度の高い作品なのですが、それをギリギリで混乱させず、破綻させずに仕上げてる手腕も見事。 特に「場面転換の際に音楽を用いて、各話の繋ぎを自然にしてる事」には感心させられましたね。 主人公の一人が歌手である点も含め、全体的に音楽の使い方が上手かったと思います。 個人的に一番好きなのは、義理の親子であるダニエルとサムが、少しずつ距離を縮めていくエピソード。 そして、ラブストーリーとして一番好きなのは「小説家と家政婦の恋」になりそうですね。 後者に関しては「言葉が通じない彼女とも、キスによって互いの想いを確認する」「片言のポルトガル語で告白したら、相手も片言の英語で答えてくれて、互いに相手の為に言葉を習ってたと分かる」って場面が凄く良かったし、映画全体の構成を考えても、この二組の話が主軸になってた気がします。 それと、オールスターキャストも魅力的でしたが、やはり一番印象深いのは、ローワン・アトキンソン。 カメオ出演のような形で「店員役」として登場し、それで出番終了とばかり思っていたのに、終盤まさかの再登場でしたからね。 しかも、デパートでは傍迷惑だった「緩慢な動作」が、空港では恋する少年を助ける形になってたりするんだから、これには脱帽。 つまり「誰かにとっては迷惑な人物が、他の誰かにとっては有益な人物と成り得る」って事を描いている訳で、群像劇ならではの魅力があるんです。 正直、各キャラの繋がりが「たまたま知り合いだった」「血縁だった」程度な事にはガッカリしちゃったけど…… 彼の存在だけでも、本作を群像劇にしたのは正解だったと言えるんじゃないでしょうか。 その他、欠点としては ・歌手からマネージャーへの想いが、友情なのか同性愛なのか分かり難い。 ・サムがダニエルの事を初めて「パパ」と呼んだ場面が、アッサリし過ぎていて戸惑う。 ・クラウディア・シファー演じるキャロルが出てくる場面は意味深なのに「本当に偶々、ダニエル憧れのクラウディア・シファーに似てるだけ」ってオチなのが残念。 等々が挙げられそうですが…… これらに関しては「脚本が説明不足」というより「演出が拙くて、場面の意味が伝わり難い」って印象を受けましたね。 やはり、リチャード・カーティスは「監督」というよりも「脚本家」気質の人なんだと思います。 後は「アメリカに行けば俺はモテまくるはず!」って一念で渡米した若者が、本当にモテモテになっちゃうオチだったのは吃驚したとか、精神を病んだ弟がいるサラだけは意中のカールと結ばれず可哀想とか……気になったのは、そのくらいかな? サラという例外もありましたけど、彼女は彼女で「恋愛」よりも「姉弟愛」を選んだと言えそうな感じですし、色んな形の「愛」を肯定し、優しく包み込んでるような雰囲気が心地良かったです。 「ハッピーエンドな恋愛映画」の代表として、曲のタイトルに選ばれるのも納得なくらいの、良い映画でした。 ……ちなみに、2017年の続編ドラマ(米国版)では、サラがカール以外の男性と結婚する展開になってたりもするんですよね。 本作を鑑賞後にモヤモヤが残ってしまった人は、そちらも是非チェックして欲しいです。[DVD(吹替)] 7点(2021-12-25 21:12:45)(良:3票) 《改行有》 5. ラストサマー2 《ネタバレ》 前作ラストが「主人公ジュリーが見た夢」で片付けられる導入部にガッカリ。 でも結果的に、そこから尻上がりで面白くなったというか…… 「序盤は面白いのに、中盤からつまらなくなる」っていう前作とは逆の「序盤は退屈で、途中から意外と面白い」って形になってるのが興味深かったですね。 クローズド・サークル物として「嵐に閉ざされた無人島」を舞台にしたのも正解だったと思います。 一応「優しいボーイフレンドと思われたウィルが、実は殺人鬼の仲間だった」というサプライズもありましたが、基本的にミステリー映画ではなく、スラッシャー映画として分かり易く舵取りしてるのも好印象。 「ミステリーなのかスラッシャーなのか分かり難く、どっち付かずな内容」という前作の不満点が、それなりに改善されてる形。 「如何にも怪しげな人物であるエステスが、ウィルに襲い掛かる」→「エステスは悪人? と思わせる」→「実はウィルが犯人の一人」って流れも面白くて、少なくとも脚本に関しては前作より洗練されてたんじゃないかと。 彼氏役であるレイが、プロポーズ用の指輪を質に入れて拳銃を買い、主人公ジュリーを救いに来るっていうのも、熱い展開で良かったです。 それと、前作でも「海に投げ入れようとした死体が、直前で蘇生する」という場面があり「犯人は、主人公達が殺したと思っていた死体」ってオチに自然と繋げていましたが、本作でもその辺は上手かったですね。 「ブラジルの首都はリオじゃないのに、何故かクイズに正解して旅行に招待される」って形で「この旅行自体が罠だった」ってオチに、きちんと繋げてる。 細部に不満やら矛盾点やらはありますが、こういう大事なとこはしっかりしている辺り、人気作としての背骨の太さのようなものを感じました。 そんな訳で、こうやって良い部分を挙げる限りでは「前作よりも面白い、正統進化版の続編」って言えそうなんですが…… 残念な事に、前作の欠点が足を引っ張ってもいるんですよね。 2単体で評価すればカッコ良い彼氏役のレイに関しても(でもコイツ、前作ラストで罪を告白せずに逃げた卑怯者なんだよな……)って事が気になって、素直に応援出来ませんでしたし。 ラストの「殺人鬼は生きていた」オチに関しても、お約束の魅力を感じる以上に(またかよ)って呆れる気持ちが強かったです。 あと、フィッシャーマンが勢い余ってウィルを殺す場面は間抜け過ぎて笑っちゃったし、前作同様「脇役を活かしきれてない」って印象は拭えなかったのも難点。 「話の掴みが上手い」「青春映画としての切なさ」などの「1には有って、2には無い魅力」も色々ありますし…… 総合的に評価すると、前作と同じくらいの面白さって感じに落ち着きそうですね。 以下は、映画の内容と直接関係無い余談。 今回再鑑賞して気付いたのですが、殺される端役として無名時代のジャック・ブラックが出演してるのも、中々興味深い符号だと思います。 それというのも「13日の金曜日」ではケヴィン・ベーコン「エルム街の悪夢」ではジョニー・デップという具合に「歴史的ホラー映画では、無名時代の大物俳優が殺されてる」っていうジンクスがあるんですよね。 本作は1ではなく2という形だし、個人的には大好きなジャック・ブラックも、上記二名ほど大物ではないかも知れませんが…… なんだかんだで「ラスト・サマー」シリーズも、歴史に残るホラー映画なんじゃないかなって、そう感じさせるエピソードでした。[DVD(吹替)] 5点(2021-10-14 07:35:36)(良:1票) 《改行有》 6. ラストサマー 《ネタバレ》 「去年の夏」に関する手紙が届く序盤までは、かなり良い感じ。 これはヒット作となったのも納得だなと思えたのですが…… 中盤以降は失速というか、どうも着地が拙かった気がしますね。 まず、ジャンルとして「犯人探しのミステリー物」とも「殺人鬼が暴れるスラッシャー物」とも言えないような、中途半端な内容だったのが痛い。 両方の魅力の良いとこ取りが出来ている訳でもないし、観ている間(……で、どっちにするの?)と、観客としてはもどかしく思えちゃうんですよね。 鑑賞後に結論を下すとすれば「スラッシャー物」って事になるんでしょうけど、それにしたって殺人鬼となるフィッシャーマンに魅力を感じなくて、ノリ切れないんです。 無関係の人間も色々殺しまくってるから「怒りに燃える復讐者」って感じもしないし「車のトランクにあった死体」が消えちゃう件とか(この殺人鬼は現実的な存在ではなく、ファンタジーで何でも出来ちゃう系なの?)と気になっちゃうのも難点。 話の主筋はシンプルで分かり易いのに、こういう細部が曖昧で分かり難いって形なのは、ちょっとチグハグでバランス悪いんじゃないかと。 あと、キャラの使い方も勿体無い感じなんですよね。 アン・ヘッシュ演じるミッシーとか「犯人候補であり、主人公カップルと三角関係に成り得る存在」なのに、途中から全然出てこなくなって戸惑いますし。 シバース姉妹の確執が伏線っぽく描かれていたのに、姉がアッサリ殺されて終わりってのも吃驚です。 ベタではありますが、姉が殺される直前に妹を庇い「逃げなさい!」と言ったりして、喧嘩しがちでも姉妹の絆は確かにあったって展開にしても良かったと思うんですよね。 魅惑的な要素が色々散りばめられていたのに、それらを活かしきれてない気がします。 無事に殺人鬼を撃退した後「命を狙われた原因に心当たりは無いか?」と問われて「いいえ」と答える展開にも、心底ガッカリ。 (こいつら結局、何も反省してねぇな!)と呆れちゃうし「比較的善人と思われた主人公カップルも、結局は嫌な奴らだった」ってオチになっちゃう訳で、凄く後味悪いんですよね。 「殺人鬼は、実は生きていた」というお約束エンド迎えるのも、好みとは言えないです。 冒頭にて述べた通り、序盤の展開というか「話の掴み」は上手いと思うし、カメラワークや音楽のチョイスなども良いので、観ていて退屈するって事は無いんですけどね。 夜の浜辺で「高校最後の夏」を楽しむ様には、青春映画としての魅力が確かにあったと思うし…… 事件から一年後、かつて抱いていた夢が嘘のように冴えない日々を送ってる仲間達と再会する流れも、切なさがあって好きです。 エンディング曲もかなり良い感じで、映画本編に対する不満を忘れさせる効果がありましたね。 商業的に成功したのは納得だし、90年代を代表する品なのは間違いないと思いますが…… 名作や傑作とは評し難い。 でも、粗削りな魅力は確かにあるという「青春映画」という以上に「若者映画」って感じの一品でした。[DVD(吹替)] 5点(2021-10-14 07:30:45)(良:1票) 《改行有》 7. ラッキーナンバー7 《ネタバレ》 所謂「巻き込まれ」系かと思いきや、実は主人公が黒幕だったというオチの映画。 出演者が吃驚するくらい豪華だし、伏線も丁寧に張ってあるし、画作りも上手いしで、普通なら好みの品のはずなんですが…… 本作に関しては、どうも肌が合わなくて、観ていて辛かったですね。 復讐計画が偶然に頼り過ぎとか、種明かしの件が長過ぎてダレるとか、色々と欠点が目に付いちゃったし…… 中でも「主人公達に魅力を感じない」「復讐に正当性を感じない」ってのが、この手の映画としては致命的だったと思います。 そもそも主人公の父マックスが殺されたのだって「闇賭博に手を出して大敗した」って背景がある以上、自業自得感が強くて、復讐の動機として弱いんですよね。 でもって、復讐の方法がまた酷いというか、無関係のフィッシャーを殺してるもんだから、全然スッキリしないんです。 殺した後、まるで主人公達は悪くないという言い訳のように「十四歳の少女に暴行して、八年間更生施設に入ってた」「君は死んだ方が役に立つ」「死んでも惜しむ者のいないクズだ」なんて台詞が挟まれる訳だけど、それで納得出来る訳ないというか…… (無関係の人間殺してるアンタらの方が、よっぽどクズだよ)って思えちゃって、復讐者としての主人公に、全く魅力を感じなかったです。 大体、フィッシャーを殺す必然性も無くて、誘拐監禁しておくだけでも計画としては成立したと思うんですよね。 「それは面倒だし、殺す方が簡単で確実だ」という考えの主人公であるのなら、やっぱり最低な奴だとしか思えない訳で、困っちゃいます。 ポール・マクギガン監督は、自分の大好きなドラマ「SHERLOCK」の主要スタッフでもあるし、腕は確かな人だと思うんですけどね。 正直、映画に関してはパッとしないというか、観た後ガッカリしちゃう品の方が多い気がします。 それでも、あえて良かった点を探すなら…… ヒロインが可愛かったとか「ジェームズ・ボンドといえば、この俳優」と語り合う場面はロマンティックだったとか、そのくらいになるかな? 何よりも、主演のジョシュ・ハートネットが大好きであるだけに、こんな主人公を演じさせた事が、恨めしく思えちゃいます。 自分とは、相性の悪い映画でありました。[DVD(吹替)] 4点(2020-06-18 11:47:13)(良:1票) 《改行有》 8. ラッキー・ガール 《ネタバレ》 「ラブコメなんて女子が観るもの」という考えだった自分に「ラブコメって、こんなに面白かったのか!」という衝撃を与えてくれた、記念すべき一本。 久々に再見してみると、非常にシンプルな作りであり(ありがちなラブコメでしかなくて、際立った傑作という訳ではなかったんだな)と、寂しい想いに駆られたりもしたんですが…… それでもなお、本作が「面白い映画」「好きな映画」である事は揺らぎませんでしたね。 主人公アシュレーを演じるリンジー・ローハンは魅力的だし、後にカーク船長となるクリス・パインが、彼女と対になる「とことん不運な彼氏」のジェイクを演じているのも面白い。 思えば、この映画を初めて観た頃の自分って(ラブコメ映画に出てくる彼氏役ときたら、男の自分には嘘臭くて耐えられないような奴ばかり)っていう偏見があった気がするんですよね。 でも、本作のジェイクには自然と感情移入出来たし(良い奴だなぁ……幸せになって欲しいな)と応援する気持ちになれたんだから、これって凄い事だと思います。 脇役も充実しており、ジェイクの隣に住んでる幼女のケイティなんて、特にキュートでしたね。 アシュレーが不運になっても決して見放したりせず、一緒に同居生活を送ってくれる女友達の存在も、実に好ましい。 ボウリング場で慣れない仕事を頑張る場面や、洗濯室で泡まみれになって戯れる場面など、昔観て(良いな)と思えた場面に対し、今観ても同じようなトキメキを感じられた事も嬉しかったです。 ラストの「二人同時にケイティにキスをする」という解決法も(そう来たか!)という感じで、意外性があって良かったですね。 今後の主人公カップルは、不運続きな人生になってしまうかも知れないけど、ケイティが傍にいて支えてあげれば大丈夫じゃないかなーって思えるし、ちゃんとハッピーエンドと呼べそうな雰囲気で終わっているのが嬉しい。 再び人生の岐路に立たされるようなイベントが起こったら、ケイティからキスしてもらって一時的に幸運を授かり、事を済ませた後に再びキスしてケイティに幸運を返す、なんて日々を送ってそうな気もしますね。 あえて難点を挙げるとすれば……「会議のプレゼンが成功」とか「車に轢かれても平気」とか(それって運が良いだけで済む話なの?)と思えてモヤッとする場面があるとか、それくらいでしょうか。 あとは、クライマックスの演奏シーンで、もっと盛り上げてくれていたら、文句無しの傑作と呼べていたかも。 この映画と出会っていなかったら、ラブコメを好きになれないまま、多くのラブコメ映画を楽しめないままだったかも知れないなと思えば、ちょっと身震いするような気分になりますね。 そういう意味では、とても特別な映画ですし、忘れ難い一品です。[DVD(吹替)] 8点(2019-11-28 18:50:03)★《更新》★《改行有》 9. ライジング・ドラゴン 《ネタバレ》 「アジアの鷹」シリーズの第三弾……なのですが、ちょっと毛色が違うというか、外伝のような印象も受けましたね。 それというのも、本作の主人公は「JC」と呼ばれており、彼が「アジアの鷹」であると判明するのは終盤も終盤、クライマックスの空中戦においてだったりするのです。 自分としては観賞前から「プロジェクト・イーグルの続編」という気持ちでいたもので、その辺ちょっとチグハグというか、ノリ切れないものがあって残念。 多分これ、作り手側としても意図的に「主人公の正体は不明」にしておき、ラスト間際にて「主人公は、あのアジアの鷹だった」と種明かしして、驚かせる構造にしていたんじゃないでしょうか。 過去二作における主人公のトレードマック「ガムを食べるシーン」が登場するのがラスト三十分ほどになってから、というのもそれを裏付けており、ここで(あのガムの食べ方は、もしかして?)と観客に思わせた後(やっぱり、そうだった!)というカタルシスを与えるつもりだったんじゃないかなぁ……と予想します。 基本的には単独で仕事をこなすイメージのあった「アジアの鷹」が、チームワークを活かして盗みを働く存在になっている事、何時の間にか奥さんまでゲットしていた事など、戸惑う展開が多い辺りも困り物。 さながら「プロジェクト・イーグル」と本作の間に何本も作品があって、その間に仲間が増えたり、ライバルの「禿鷹」と出会ったり、結婚したりしたかのようで、置いてけぼり感がありました。 そんなこんなで、中途半端な予備知識が仇となってしまったパターンなのですが……それでも充分楽しめる作品に仕上がっている辺りは、流石という感じ。 「世界に四枚しかない切手」の内の三枚を破り捨て「世界に一枚の切手」にして価値を高めるシーンなど「物の価値とは何だろう」と考えさせる脚本になっているのは、如何にも「アジアの鷹」シリーズっぽくて、嬉しかったですね。 税関を用いた本物と偽物を入れ替えて盗むテクニックには感心させられたし「薔薇を大切にしろよ」という台詞が伏線になっており、それが黒幕の逮捕劇に繋がっている流れも良い。 「戦争によって奪われた国宝を取り戻す」という、やや堅苦しいテーマの作品なんだけど、愛国心やら戦争犯罪やらを訴える役割は新キャラのココが担っており、主人公は「中国という枠組みに囚われず、時には英国贔屓な見解を示す事もある」「昔の過ちを今の考えで裁くなんて不可能だと主張する」という中立的な描き方をしている辺りも、上手いバランスだなと思えました。 全身ローラースーツや、カメラと脚立を駆使したアクション。 それに、画面を華やかに彩る美女達の存在も、忘れず盛り込まれており、このシリーズにおける「お約束」「娯楽性」を忘れていないなと感じさせる辺りも嬉しい。 また「戦っていた敵であっても、目の前で死にそうになると、咄嗟に助けてしまう」「最初は敵対していた相手とも、なんだかんだで仲良しになる」というシーンが印象的に描かれているのも本シリーズの特徴であり、その点はヒューマニズムならぬジャッキーイズムといったものを体現していた気がしますね。 生まれてきた赤ん坊に「世界平和」という意味の名前を付ける辺りも、如何にもジャッキーらしくて好きです。 一作目においては「何よりも金が大事」という考え方だった主人公。 そんな彼が、二作目において「金よりも大事なものがあるんじゃないか?」と疑問を抱くようになり、三作目において「金よりも家族が大事だ」という結論に着地する。 三つの映画を使って、少しずつ主人公の考えが変わっていく様を描いてきたからこその感動があり、妻と仲間に囲まれて幸せそうな「アジアの鷹」を描いて終わる本作は、やっぱり嫌いになれないです。 アクション大作からの引退を決意しての、記念すべき一品という事で、主人公の妻役にジョアン・リン(=私生活においてもジャッキー・チェンの妻である女優さん)を起用する遊び心なんかも「そう来るか!」という感じがして、ニヤけちゃいましたね。 自分としては(妻になったのは誰? メイ? エイダ? エルサ? 桃子?)と、過去作の女性キャラクターを色々思い浮かべていただけに、完全に意表を突かれた形。 この「主人公の妻」のチョイスに関しては、それだけ「アジアの鷹」というキャラクターがジャッキーに愛されており、文字通りの意味で「ジャッキーの分身」と呼ぶに相応しい存在である事を証明してくれたかのようで、ファンとしては感慨深かったです。 妻だけでなく、ジャッキーとしても、これまで頑張り続けてきた自分に「お疲れ様」と伝えてあげる……そんな意図があった映画なんじゃないかな、と思えました。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2018-10-18 11:43:47)(良:2票) 《改行有》 10. ランダウン/ロッキング・ザ・アマゾン 《ネタバレ》 これは……ちょっと雑な作りの映画であるように思えます。 例えば主人公は「あえて銃を撃たないタフガイ」という設定であり、劇中でも「銃は持っていくな」という歌詞の曲が流れるくらいの徹底振りなんですが、そんな彼が「とうとう自らのルールを破って、銃を撃つシーン」のカタルシスが弱いんですよね。 そもそも「過去に悲劇的な事件があって銃を撃てなくなっていたが、友を助ける為にトラウマを克服して引き金をひいた」とか、そういう展開な訳でもなく「銃を使うと大変な事になるから」という、一種の「強過ぎる自分を縛る為の枷」みたいな認識で銃を撃たずにいただけであり、窮地に陥ったら「やっぱり銃を撃たないと無理そうだから撃つ事にする」と考え方を変えただけというんだから、観ていて拍子抜けです。 じゃあ、いざ銃を使ったら無敵の存在になるのかなと思っていたら、最初こそ恰好良く撃ちまくっていて良い感じだったのに、敵の中ボス格である鞭使い達が出てきたら、途端に苦戦して銃を奪われ、結局は肉弾戦になっちゃうという始末。 アクション自体は主演のザ・ロックの熱演もあってクオリティが高かっただけに、この辺りの脚本の雑さが、凄く気になっちゃいました。 ラストに関しても「コンラボスによる幻覚」のギャグで終わらせたかったんだろうけど(どうせトラビスを逃がすなら、わざわざ連れて帰らなきゃ良かったのに……)って思えちゃうしで、最後までスッキリしないんですよね。 多分「主人公は義理堅い男なので、一度請け負った仕事は果たす事にした」→「まさか息子のトラビスに害は加えまいと思っていたのだが、そうではないと気付いて逃がす事にした」って流れなんでしょうけど、それならもっとハッキリ「このままだとトラビスは殺されてしまう」くらいの危機感を抱かせる演出にして欲しかったところです。 そんな具合に不満点も多いんですが……どうにも嫌いになれない愛嬌も備わっているんですよね、この映画って。 ザ・ロックと、ショーン・ウィリアム・スコットが共演しているというだけでも、二人を好きな自分としては嬉しくなっちゃうし、ちゃんと彼らを魅力的に撮ろうという意気込みは伝わってくる。 冒頭で顔見せしたシュワルツェネッガーに、主人公から指輪を奪った同僚という強烈なインパクトを残す二人が、それっきり出番無しで終わったりもするんですが「とりあえずスターをカメオ出演させておいた」「良い味出してる小人の俳優がいたので、とりあえず出しておいた」という茶目っ気が感じられて、憎めなかったです。 「エルドラド」が「ヘルドラド」に書き換えられている看板や、敵のボスが「歯の妖精」について部下に説明する件なんかも印象深いですね。 願わくば、もうちょっと主役二人の掛け合いを魅力的に描いてくれていたら「嫌いじゃない映画」から「好きな映画」に変わっていた気がする…… そんな、勿体無い一品でした。[DVD(吹替)] 6点(2018-02-21 07:51:00)《改行有》 11. ラン・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 「ゾンビ」+「パルクール」という組み合わせの、一発ネタのような映画かと思いきや、さにあらず。 予想以上に真面目に作られており、驚かされましたね。 とはいえ「パルクールゾンビならではの魅力」という意味では、序盤の「壁蹴り階段降りシーン」くらいでしかそれを感じられなかったし……そういう意味では、期待外れとも言えちゃいそう。 人間ドラマが中心となっており、ゾンビは障害の一つに過ぎないという扱いなんですよね。 ・主人公のコールはウイルスに感染済みであり、薬を使っても十八時間後には発症してしまう。 ・時間切れになる前に、唯一抗体を持ってる可能性があるアンジェラを見つけ出し、無事に保護しなければいけない。 という構造になっており、非常にゲーム的な作りなんです。 この辺りは「安っぽい」「薄っぺらい」と感じる人もいるかも知れませんが、自分としては、分かり易くて好印象でした。 それと、メイン主人公のコールだけでなく、サブ主人公としてアンジェラの元彼であるジョーが用意されている辺りも良かったです。 (ははぁん、コールは死んじゃうからジョーをもう一人の主人公として生存させるって訳か……) とばかり思っていたのに、まさかの両者死亡エンドでしたからね。 これには、本当に吃驚しました。 でも、バッドエンドという訳ではなく、二人とも「無事にアンジェラを逃がす事が出来た」という満足感を抱いて死んでいくので、後味も決して悪くないんですよね。 それぞれ「大手製薬会社に雇われて、汚れ仕事を色々とやってきた始末屋」「麻薬中毒の少年を誤って射殺してしまった元警官」という暗い過去を背負っており「アンジェラを救い、人類を救う事」が「贖罪」であるという風に描かれている。 基本的に主人公が死ぬ映画ってのは好みじゃないのですが、これは冒頭の時点でコールの死が示唆されている事も含め、あまり抵抗を感じず楽しむ事が出来ました。 その他、難点としては、低予算なのが画面から伝わって来てしまう作りな事。 そして、主人公二人は罪悪感を抱いて鬱屈としているし、アンジェラは受け身なお姫様ポジションだし、その他の人物も自分勝手な言動が目立つしで、登場人物に感情移入しきれなかった事が挙げられそうですね。 総合すると、自信を持ってオススメ出来る……という程ではありませんが「意外とイケるよ」という意味で、ゾンビ映画好きには、こっそりと推薦したくなる。 そんな一品でありました。[DVD(吹替)] 6点(2017-06-12 06:49:56)(良:1票) 《改行有》 12. ライフ・オブ・デビッド・ゲイル 《ネタバレ》 クオリティの高さは分かるのだけど、どうにも作中の価値観やらメッセージやらが肌に合わなくて「面白い」と素直に言えないタイプの映画があります。 残念ながら本作もそんな一つとなってしまったみたいで、脚本の騙しのテクニックやら演出やらに感心させられつつも、観賞後は「うーむ」と腕を組んで考えさせられる破目になりました。 まず、この映画の最大のオチに関しては「無実の人が死刑された確かな証拠があれば、死刑停止に追い込める」という台詞をデビッド・ゲイルが耳にするシーンがある以上、多くの人が途中で気が付かれたのではないかな、と思います。 自分も、この台詞が飛び出す時点(映画が始まってから三十分程)でオチは読めていたので、衝撃という意味では薄かったのですが、ラストに長々と説明せず「デビッド・ゲイルも彼女が自殺であると承知の上であり、一連の計画の協力者であった」と映像で示すだけで、スパッと終わらせる演出は見事でしたね。 こういうパターンの場合、つい「こんな分かり易い伏線があるんだから、気が付くに決まっている」と作品を見下してしまいそうにもなりますが、ラストの演出で説明を最低限に済ます以上、このくらいのバランスで丁度良かったのではないでしょうか。 観客に対して、きちんと「推理する材料」を提示するという意味でも、非常に誠実な作りであったと思います。 で、上述の「肌に合わない」部分に関してなのですが……これ、どう考えても「死刑制度の問題点」を指摘しているとは思えないのですよね。 自分で死刑になるように行動しておいて「実は冤罪なのに殺されちゃいました」って、自業自得としか思えないし、この場合に明らかになった問題点とは「自ら積極的に死刑になろうと色々と工作した人間を死刑にしてしまう可能性がある」という話でしかない訳だから、台詞の通りに「死刑停止に追い込める」とは考えられないのです。 デビッド・ゲイルの動機としては「取材を受ける報酬として手にした大金を、別居中の妻と息子に贈りたい」「もうじき病死してしまう恋人と心中したい」という想いの方が強かったのではないかな、とも思えますが、劇中ではそれらの感情的な動機よりも、あくまで「死刑制度の是非」という点に重きが置かれている為、やっぱり「そんなやり方で死刑制度を廃止出来る訳ないじゃん」という結論に至ってしまう訳で、何とも中途半端。 本当に死刑制度の問題点を指摘したいなら、倫理的に許されないのを承知の上で「無関係な第三者を犯人に仕立て上げ、彼が必死に無実を訴えても死刑が宣告されるのを見届けてから、執行の直前に全てを自白する」という作戦を取った方が、よっぽど効果的だったのではないかと。 そんな困った人物である彼を、過度に美化する事は無く「公開討論番組で、知事に言い負かされた仕返しをしたかっただけ」「権力者を馬鹿にして、自分の方が利口だって証明したかっただけ」と示す描写も挟むなど、作り手の器の大きさというか、公平な視野を感じさせる辺りは、好ましく思えます。 それだけに、話の核となる部分から説得力が伝わってこなかった事が、実に勿体無く思える一品でありました。[DVD(吹替)] 6点(2016-12-22 10:36:31)《改行有》 13. ラブ&ピース 《ネタバレ》 二十五年以上前、まだ無名であった監督自身が書き上げた脚本を基に「夢見る若者」について描いた一品。 序盤に関しては、ハッキリ言って、観ているのが辛い内容。 主人公は「冴えない若者」どころの話じゃなくて、さながら精神的な病でも抱えているかのような、酷い描かれ方をしているのですよね。 トイレの個室の落書きが、そのまま主人公の強迫観念を描き出している演出と「炬燵に隠れる主人公の姿」が「亀」を連想させる演出などには、クスっとさせられましたが、精々それくらい。 怪獣みたいで良い名前だ、という理由でペットの亀に「ピカドン」と名付けるシーン。 そして、そんなピカドンに、人生ゲームのマップや、野球盤の上を歩かせて遊ぶシーンにて(おぉ、怪獣映画みたい!)と思わされた辺りから、ようやく面白くなってきて、後は右肩上がり。 いくら会社で揶揄われたのが原因とはいえ、ピカドンを主人公が自らトイレに流してしまう展開には疑問も残りましたが「皆に笑われて、自ら夢を諦めてしまった若者」を暗示している描写の為、仕方なかったのだろうなと、何とか納得出来る範疇でした。 その後に、ピカドンを想って作った曲を路上で熱唱し、主人公がスター街道を駆け上っていく展開は、本当に痛快で面白かったですね。 映画「地獄でなぜ悪い」の劇中曲が、本作で使われているファンサービスにも、思わずニヤリ。 また、サイドストーリーも秀逸であり、視点が主人公から離れる場面でも、全く飽きさせない作りとなっていましたね。 謎の老人の正体が判明する件には「サンタクロースだったの!?」と本当に吃驚。 作中にて彼に浴びせられる「どうせ来年も、アンタの配った夢が、ここに戻ってくるんだ……」という台詞にも、独特の情感があって、非常に良かったです。 サンタさんは皆に夢を与えている訳ではなく、皆が捨てた夢を配り直しているだけなのだという、哀しい世界観。 それが、実に味わい深い魅力を、作品に与えてくれていました。 予見していた通り、怪獣映画そのものなクライマックスが訪れた瞬間には、もう大興奮。 そして主人公が「過去の自分」「恥ずかしい夢を抱えていた頃の自分そのもの」であるピカドンと向き合い、耐え切れずに、震え出してしまう件では、こちらも固唾を飲んで、画面を見つめる事になりました。 誰だって、他人に知られたら恥ずかしいような夢を抱いていた事はあるはずですが、この映画は、そんな過去の自分を、否応無く思い出させてくれる。 そして、夢を叶えてみせたはずの主人公が、段々と嫌な奴へと化してしまった事も併せて描き「夢を抱く事って、そんなに素晴らしいか? 夢を叶えたら幸せになれるのか?」という、極めて難しい問いかけを投げかけてくるのです。 ピカドンが消えたのを目にし、呆然としたまま元いた家に帰っていく主人公の姿に、RCサクセションの「スローバラード」が重なる演出に関しては、もう反則。 名曲というだけでなく、非常に思い入れ深い曲でもあったりする為に、それだけで満点を付けたい気持ちに襲われました。 ただ、最後の最後、主人公がピカドンと再会して「カメ」と呼んだ事に関しては、大いに不満。 「スローバラード」曲中にて「カメ」と言っているように聞こえる部分があるからと、無理やり重ねたように思えてしまい「空耳アワーかよ!」とツッコんでしまいましたね。 「僕ら、夢を見たのさ」「とっても、良く似た夢を……」というフレーズに関しては、主人公とピカドンに似合っていただけに、そこだけが残念で仕方ない。 他にも、家具をそのままにしておいたという発言など「最終的に主人公は、この家に帰ってくる」伏線が分かり易過ぎた辺りは、欠点と言えそうです。 監督の特色である血みどろバイオレス描写、フェティッシュな性描写が無くとも、しっかり面白かった辺りは、嬉しかったですね。 上述の「夢」に関する問い掛けについても 「夢を抱く姿は滑稽で、馬鹿にされたりするかも知れないが、きっと分かってくれる人がいる」 「夢を叶える為に自分を見失うくらいなら、叶わなくても構わない」 という、優しい答えが示されているように思えて、じんわり胸が温かくなりました。 結局、この作品のラストにて主人公は、夢が叶う前の、ピカドンに夢を語り聞かせていた頃の、恥ずかしい自分に戻ってしまいます。 何の進歩もしていないと、馬鹿にして笑い飛ばす事だって出来てしまいそうな、寂しいエンディング。 だけど、今度こそは自分を見失わないまま、ピカドンを見失わないままで、夢を叶えてみせて欲しいと、全力で応援したくなる。 そんな、素敵な映画でした。[DVD(邦画)] 8点(2016-07-07 23:01:17)《改行有》 14. ラム・ダイアリー 《ネタバレ》 ラストシーンにて 「主人公は後に、米国で最も尊敬されるジャーナリストの一人となった」 というテロップが表示される訳ですが 「いや、そこ(偉大なジャーナリストになるまでの具体的な経緯)を映画で描いてよ!」 とツッコんでしまいましたね。 映画の中で主に語られるのは、彼がジャーナリズムに目覚めたキッカケ、後に結婚する事となる女性シュノーとの出会いくらいなので、伝記映画として考えた場合「起承転結」の「起」の部分で終わってしまったかのような印象なのです。 飲んだくれの若者であっても、勇気を出して行動すれば偉大な人になれるというメッセージ性が込められているのかなとも思いましたが、この映画で主人公が最後に行うのは「鼻持ちならない金持ちの船を盗んでやる事」だったりするもので、そんな道徳的な意図があるとも考えられず、何とも判断に困る一品。 主演のジョニー・デップが、仲の良かったジャーナリストに対する敬意や親愛の情を映画という形にして伝えてみせた……という作品なのかも知れませんね。 だとしたら、第三者の観客である自分には分からない魅力が色々と籠められているのだろうな、と推測します。 主人公が喉の渇きに耐えかねて、金魚鉢の水を飲み干す姿は可笑しかったし、舞台となるプエルトリコの風景も美しい。 クライマックスにて語られる「真実の匂いは、インクの匂い」という言葉も、胸に響くものがありました。 それらの(あぁ、良いなぁ……)と思える部分もあっただけに、あの終り方が、実にもどかしかったです。 「惜しまれる内が華」「もっと続きが観たいと思っている時に終わる映画こそ名作」という考え方もあるかも知れませんが、本作に関しては、ちょっとばかり観たい「続き」の量が多過ぎるようにも感じられました。[DVD(吹替)] 4点(2016-06-01 21:46:28)《改行有》 15. ラブ & ドラッグ 《ネタバレ》 ほほう、バイアグラ販売員の映画なのか……と思っていた序盤から一転、所謂「難病モノ」な内容にシフトする構成には驚かされました。 こういったテーマを描く際、女性側は「余命僅かな不治の病」というパターンが多いのですが、本作においては「病気と闘いながら生きていかなければならない」という形だったのが新鮮でしたね。 彼女を愛するならば、一時の悲劇で済ます訳にはいかない。 パーキンソン病という障害を背負った彼女と、長い「余命」を共に生きて行かなければならない。 徐々に変貌していく彼女を、本当に愛し続けていく事が出来るだろうか? と問い掛けてくるかのような内容には、大いに考えさせられるものがありました。 ただ、そういった深いテーマが盛り込まれた映画のはずなのに、作風としては非常にライトなノリなのですよね。 このギャップというか、落差をプラスと捉えられるか否かによって、この映画の評価が変わってきそう。 自分としては、それなりに面白かったのですが、今一つハマりきれないものもあったりして、少し残念です。 理由としては、主役二人に対して「病気に負けず頑張って生きて欲しい」と思えるような印象が乏しかった事も挙げられるでしょうか。 主人公の男性は、道徳的に善人とは言い難い軟派男だったりするし、ヒロインも第一印象が余り良くなかったもので、どうしても距離を取って眺める形になってしまった気がします。 とはいえ、二人とも悪人という訳ではないのだし、ハッピーエンドだった事にはホッとさせられましたね。 アン・ハサウェイは好きな女優さんなので、彼女のヌードが飛び出すシーンには、恥ずかしながら興奮したりなんかも。 作中、あまり彼女の病状が進展しない内に「綺麗なまま」映画が終わってしまった件に関しては 「いやいや、そこから先が大変なんでしょう?」 と、納得出来ない気持ちもあるんですが…… 「主人公の強い決意を描いた以上、二人はずっと一緒なのだから、ここから先はあえて描く必要は無いのだ」 という作り手からのメッセージなのだと解釈したいところですね。 元ネタである自伝「涙と笑いの奮闘記 全米セールスNo.1に輝いた"バイアグラ"セールスマン」の作者は、この本はラブストーリーではないと語っているみたいですが、映画の方は立派にラブストーリーとして成立していたと思います。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-01 18:02:52)(良:2票) 《改行有》 16. ラスト・ターゲット(2010) 《ネタバレ》 まさかの恋愛映画でしたね。 冒頭、主人公が恋人と思しき女性を射殺するシーンが描かれており、色恋沙汰を排したハードボイルドな作風かと思いながら観賞していただけに、意外な印象を受けました。 作中に映し出される風景は美しく、それらを眺めているだけで癒されましたし、観賞中「大人」の雰囲気に浸る事が出来る映画というのは、決して嫌いではないです。 ただ、上述のように予想以上に恋愛要素が色濃くて、戸惑う面も大きかったですね。 何と言っても、冒頭のプロフェッショナルとしての主人公の姿と、イタリアの町を訪れてからの主人公の姿が、どうにも一致していない印象を受けてしまいました。 途中、ヒロインの事を疑って殺そうとする展開になるも、結局は悩んでいる内に「彼女は無実だった」と気が付くオチになったりして、何だか肩透かし。 じゃあ最初のスピーディーな射殺っぷりは何だったのか、とついつい思ってしまいます。 冒頭の彼女は恋人ではなく、自分が勝手に勘違いしていただけかも知れませんが「何で今回は対応が違うの?」と思ってしまい、最後までその違和感が拭えませんでした。 それだけ彼女の事を愛していたんだろう、と納得さえ出来たら楽しめたと思われるだけに、非常に残念。 せめて、もっと年数を経過させて、冒頭のシーンを遠い過去の出来事として描いてくれたのならば、印象も違ったかも知れません。 主人公が黙々と腕立て伏せを行ったり、銃を組み立てたりする場面などは、とても良かったですね。 クライマックスの、小銃に仕掛けを施しておいた事が分かるシーン。 そして、無事に助かったかと思われた主人公が、実は撃たれていたと分かるシーンなども、衝撃的でした。 熟成された苦味と同時に、どこか煮え切っていない甘味のようなものを残している。 そんな一品だったと思います[DVD(吹替)] 6点(2016-05-29 18:01:59)(良:1票) 《改行有》 17. ラン・オールナイト 《ネタバレ》 リーアム・ニーソンとエド・ハリス。 二人が画面に映っているだけでも映画として成立しそうな名優の共演作、たっぷり楽しませて頂きました。 一緒に煙草を吸うシーンでの思い出話により、二人が長年の親友である事を自然と理解させてくれる作りなど、上手かったですね。 そして作中で主人公が息子に語り掛ける「お前は撃つな」という台詞。 汚れ仕事を引き受け続けてきた彼の過去とも合致しているし、何より息子を想う父としての願いが伝わってくるものがあって、非常に良かったと思います。 脇役である「誰よりも主人公を憎んでいるはずの警官」も、オイシイ役どころ。 そんな彼が、憎んでいるはずの相手の息子を救う事になる結末なんかも、渋くて好みでした。 一方で、最後の敵という形になる殺し屋に関しては、特にコレといった背景が描かれていなかった事も含めて、どうにも印象が薄くなってしまい、残念。 監督としても、この映画のクライマックスは主人公が親友を殺すシーンであると考えており、その後は簡略的に済ませて「後始末」のように主人公を死なせてみせた、という事なのかも知れませんね。 ただ、自分としては今一つ物足りないものがあって、これなら普通に自首させて終わりでも良かったんじゃないかな、と思えた次第。 それと、この映画のストーリーラインを考えてみるに「飲んだくれのダメ親父と化した主人公だが、実は今でも殺し屋として凄腕である」というサプライズが存在していた事も窺えました。 自分が「96時間」などを未見であったなら (えっ? この親父さん、こんなに強かったの!?) という衝撃を受けて、もっと楽しめた可能性も高そうです。[DVD(吹替)] 7点(2016-05-27 14:39:37)(良:1票) 《改行有》
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