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1.  笑ひのガス 《ネタバレ》 あれ?最初床屋さんかと思ったけど、よく見ると歯医者さんて事が分かります。歯医者さんでのチャップリンの男と女の客に対する態度の違いが面白く、そんなチャップリンが蹴られたり、投げられたり、またまた椅子から転げ落ちたり、椅子ごとぐるぐる回してみたりとチャップリンらしい動きだけで笑わせてくれたりします。ガスがこの映画の場合だと薬という事らしいけど、こんな歯医者には私なら絶対行きたくありません。[インターネット(字幕)] 7点(2021-02-08 21:17:26)

2.  若おかみは小学生! 《ネタバレ》 いやあ、参った!絵柄からは考えられない感動作品です。子供向けでありながら大人が見ても楽しい上に感動する素晴らしい作品です。まず何よりおっこの健気さ、両親を事故で失なったにもかかわらず、前向きに生きてるのが素晴らしい。そんなおっこと関わる幽霊ウリ坊と美陽、子鬼の鈴鬼とのやりとりも楽しい。旅館に泊まりに来る客との会話、やりとりも良い。どんな人でも受け入れる。全てにおいてこの映画は優しい。温かい。おっこと最初は仲悪く、喧嘩ばかりしてるライバル旅館の娘にしても単なる意地悪な人物として描かれていない。おっこが助けを求めてくれば応えてみせる。両親の事故の原因、両親を死なせたお客さんに対しても他のお客さんと同等に扱う。差別しない。正にどんな人でも受け入れるという花の湯のモットーである。子供向けでありながらも人生において大事なことを教えてくれる作品として、大人にも是非、見て欲しい。むしろ、大人の方が泣ける作品ではないだろうか!つい、一週間前に偶々、車運転中に何かのラジオ番組で紹介されていたのを聴いて、この映画の存在を知って、今日から私の住んでる地域でも公開すると知って観て来ましたが、何故、土曜日の昼間なのに私の他にお客さん2人なんだ?誰もが知ってる。大ヒットハリウッド大作も悪くは無いがこういう作品こそ大ヒットして欲しい。もっと沢山の人に観て欲しい作品です。絵柄だけで、無視されたり、敬遠されてるのかもしれないけど勿体無いです。よくよく聞いたらこの映画の脚本、ガールズ&パンツァーの人らしい。あれといい、今作といい、絵柄からは想像できない素晴らしい作品ですね。[映画館(邦画)] 9点(2018-12-29 19:29:35)(良:1票)

3.  われに撃つ用意あり 《ネタバレ》 映画において監督の力量でその作品の出来、不出来が決まる物もあれば、役者の演技と魅力で作品の出来、不出来が決まる物もある。そういう意味でこの作品は役者の演技と魅力で決まる作品である事は見ていて感じ取れる。ヤクザから逃げるベトベト人の女を助けるマスター、原田芳雄の人間臭さ、アウトローな男としての魅力はこの俳優ならではで、若くしてこの世を去った松田優作と何処か似た物感じずにはいられない。けして二枚目ではないし、何処か不器用な中に感じる男らしさ、そんな男を演じたら本当に上手いし、そういう男の役がよく似合う。ストーリーそのものはよくある日本の刑事物ぽく、さほど、新鮮味も感じられない。しかし、なんども言うように役者の魅力で見せる作品と言って良いぐらい、役者の演技、魅力で充満している。原田芳雄以外でも刑事役の蟹江敬三のかっこよさも印象に残る。印象に残ると言うと、新宿の街並み、歌舞伎町の色々な所にある店の看板を含めたギラギラしていて、犯罪都市の恐い雰囲気も印象に残る。映画のラストの暴動シーンに映画はその時の時代を映すと改めて感じる事が出来る。[DVD(邦画)] 7点(2016-10-08 20:06:13)

4.  わるいやつら 何だか凄いキャスティング、俳優陣の顔ぶれは豪華だし、原作は松本清張だし、つまらないはずはなく、しかしだ。野村芳太郎監督にしては今ひとつの出来です。映画的な興奮がほとんど感じられずに何だかよくある二時間ドラマのサスペンスものを見てるようでした。確かにわるいやつらなんだけど、もっともっと凄みが欲しい。主役である松坂慶子が悪女としては物足りない。どうせなら「疑惑」の桃井かおりぐらいに何だよ!このクソ女!ぐらい嫌な奴を見せて欲しかったし、これ松坂慶子の主役だけを若尾文子に変えて増村保造監督が演出したらどうなるか?て思わずにはいられず。野村芳太郎監督はサスペンスものを撮らせても素晴らしい監督だけど今作は全体的にやたらしつこいベッドシーンやらで他でもっと凄みのある部分を見せて欲しかった。野村芳太郎ならばそれぐらい出来たはずです。全くつまらないとは感じなかったし、それなりに楽しめはしたから一応6点だけど、繰り返し見たいて思う気持ちにはなれなかった。 [DVD(邦画)] 6点(2013-10-12 19:11:02)《改行有》

5.  わが青春に悔なし この映画は何と言っても原節子が出ているということに注目である。単に出ているだけなら何の注目も感じないし、どうってこともないが、黒澤映画に原節子が出ているというのは小津映画に三船敏郎が出るぐらい凄いことである。男の力強さを描くことに力を注ぐ黒澤明監督が原節子を主演に選ぶというのは小津や成瀬、木下、今井といった同じ時代を生きてきた名監督への挑戦とも考えられなくはない。俺だって、女を描こうと思えば描けると黒澤明監督の叫びが聞えてきそうです。作品全体の空気、原節子にしてもそうです。小津や成瀬映画の常連となる原節子に対してもやはり黒澤明監督はまるで男のように描く。後半の農婦姿での原節子の描き方、力強さは男社会の中でも女はやっていける。十分に暮らして行けるものだ!というような叫びのようなものが聞えてきそうなほどの他の監督作品ではまずは見られない原節子がここにいる。映画的にはそんなにも特別に面白いとも思えないし、黒澤映画の中でも普通の作品というのが評価として最も相応しい映画である。それでも原節子!しつこいようだが、黒澤映画で原節子というのを見れる映画として「白痴」同様貴重な作品という意味で昔の邦画好きなら見て損のない映画でもある。[DVD(邦画)] 6点(2010-06-21 21:36:45)(良:1票)

6.  忘れえぬ想い 《ネタバレ》 セシリア・チャンって女優さん、初めて見るけど何だか見た感じ、凄く気が強そうで我がままな感じの漂う女だなあ!ていうのが、最初の印象です。バスの事故によって愛する夫を失った女性、そこに後から優しく手を差し伸べる一人の男、これが何とも日本の俳優、財津一郎にそっくりでして、どうも財津一郎を観ると私には「新・男はつらいよ」の泥棒が真っ先に頭に浮かんでくる。そんな財津一郎そっくりな男、ファイ役の俳優、見た目は間違いなく悪い人、すいません。何しろ財津一郎似=泥棒のイメージが強すぎて、絶対に何か企んでるに違いない。夫を事故で失った美しい女性に近づいて、絶対に何か起こすとばかり勝手に思っていたら、どんでもなかった。何て良い奴なんだ!男は顔じゃないぜ!性格であるぜ!と言わんばかりの優しさ、セシリア・チャン演じるシウワイに「あなたって良い人ね」と言われるのを聞くと、この場合の良い人って?考えようによって色々解釈できる。女にとっての都合の良い人って場合もあれば、心から優しくて良い人という場合もある。ここでの財津一郎じゃなくてだ!ラウ・チンワン、名前通り本当に犬みたいだけど、セシリア・チャン演じる未亡人の子供ロロとも直ぐに親しくなるし、人懐っこい所なんて正しく犬である。とにかく本当に顔は泥棒顔でも温かくて良い奴で、それゃあ、セシリア・チャンもその子供も親しくできるのがよく解る。初めは何だか泣かせる為の話、韓国映画的なのかな?なんて韓国ものが大嫌いな私には外れたかと思ったけど、主演の二人がとにかく良いので楽しむことが出来た。ただ残念なのは亡くなった夫のことを簡単に忘れられるこの女性の心理がいまひとつ私には理解出来なかった。男が見た場合と女の人が見た場合で感想が大きく違うような作品かもしれない。[DVD(字幕)] 7点(2010-05-25 22:29:13)

7.  我輩はカモである 《ネタバレ》 何というアホぶり、何というふざけた作品、戦争なんかどこ行く風かというような滅茶苦茶さこそがこの作品の一番の魅力である。鏡に向って飛んで行く。そして、壊れた鏡の向こうで繰り広げられる三人のやりとり、同じ姿で同じ動きでそこに鏡が存在しているような芸、この馬鹿馬鹿しさ、戦争が始まってもマイペースを崩さないマルクス兄弟、放たれた銃がお尻に当るギャグ、壺を被ってしまい、頭から抜けなくなってしまったグルーチョ、そのグルーチョの顔の落書きも余りにも馬鹿馬鹿し過ぎて、笑ってしまう。こりゃ、笑わずにはいられない。全てにおいて、ナンセンス、笑いのためならどんなものでも笑いのネタにしてしまうマルクス兄弟、ドリフターズはこの兄弟の影響を間違いなく受けている。[DVD(字幕)] 9点(2009-11-22 17:53:17)

8.  私の中のあなた 《ネタバレ》 姉の命を助ける為に親の都合によって利用され産まれてきた妹、母親の愛に飢え、本当の愛を知らない妹の辛さ、一方で姉も姉で辛いのは観ていてよく解る。一人の命を救うために犠牲者扱いされるようにして産まれてきた妹、この二人の間で揺れる母親の気持ちなどよく描かれているが、それでも何かしっくりとこない。生きることの喜びや生きるってことの素晴らしさ、家族同士であれ、時には母親をも告訴するほどの妹の辛さなど、色んな事を考えさせられるよく出来た作品だけど、この点数が限度なのは母親の病気の姉に対する愛と同じぐらい妹にも愛情を注いでいれば、こんな事にはならなかったと思ってしまうのと、妹を犠牲にする姿が余りにも辛すぎて、私にはこれ以上の点数は付けられません。最後にこの映画のタイトルの「私の中のあなた」とは姉の妹への思いと妹の姉への思い、その両方に対する母親の思い、それこそが正に「私の中のあなた」を意味しているのであろう![映画館(字幕)] 6点(2009-10-17 17:49:58)(良:1票)

9.  忘れじの面影(1948) 何だか解らないなあ!ジョーン・フォンティンのような美人が何故、忘れられるのか?いまひとつ解らないだけにちょっと感情移入しずらい部分がある。ただ、作品全体の雰囲気、まるでヨーロッパ映画でも見ているような錯覚を覚えるほどの美しい映像とジョーン・フォンティンの美しさを見ているという部分においては見ていて物語を忘れてしまうほど、とにかくこの映画は映像といい、ジョーン・フォンティンといい、美しい。話の中には入りずらい部分と何故、ジョーン・フォンティンの存在が男にとって忘れじの面影として残らなくてはならないのかという疑問が残るが、それでもジョーン・フォンティンの存在と演技の上手さ、待つ女の悲しさみたいなものがきちんと描かれているという意味では評価出来るだけの作品だと思う。白いバラが似合う女、ヒッチコック作品同様に美しいジョーン・フォンティンの為の彼女の美しさを楽しむための映画ではないかと思う。[DVD(字幕)] 6点(2009-06-28 13:54:52)

10.  once ダブリンの街角で 男と女の話となると直ぐに男も女も馬鹿の一つ覚えみたいに脱いで、抱合ってとそういう作品が多過ぎる。特にハリウッド映画にはその傾向が見られる。そんな中でこの映画にはそういうものが何一つない。それがこの映画の良いところである。全編に流れる音楽の美しさ、素晴らしさは言うまでもない。話そのものは特に何か凄いものを感じることは出来ないけれど、至ってシンプル、うるさい音楽とは違う音楽の良さと心地の良い映像美に、そして、何よりも主演の二人が良い。特にあの男優が二枚目じゃないのが良い。どこにでもいそうな感じの男と女だから最後まで安心して、楽しむことが出来た。[DVD(字幕)] 8点(2009-04-25 19:24:26)

11.  わらの犬(1971) 《ネタバレ》 アメリカという国の日常に潜む暴力、そんなアメリカという国に嫌気を感じて、妻の田舎であるイギリスへと引っ越して来た数学者の眼には例えアメリカからイギリスへと移り渡ろうが、やはり人が住んでいる以上、しかも男と女がいる以上は何も変わりはしない。どんな国へ来ようとも男もいれば女もいるし、常に危険は付きまとうものであるということを監督のサム・ペキンパーは言いたかったのではないだろうか?確かに凄まじいほどの暴力的なシーンが多くて、これは見ていてもけして、楽しいとか面白いとか思えないし、むしろ、不快感のが多い作品である。が、しかし、ただ不快だからといってはいられない。人間である以上、また、生きものである以上は男も女も同じ生きものであり、自分の身を守ることすら出来ない妻とそんな妻のことをほったらかしたまま周りの男の誘いに乗って狩を楽しんでいる隙に二人の男に相次いで妻をレイプされてしまうアホな亭主!人間って如何にアホな生きものであり、隙だらけであるということをもこの作品を通して見せ付けられているようにも思えて怖い。平和主義である数学者ダスティン・ホフマン演じる男の凄まじいほどの変わりよう、平和主義が何なんだ?いつの時代でも常に暴力というものが付きまとうこの世の中において、平和主義だろうがなかろうがそんなものは何の役にも立たないんだよってサム・ペキンパー監督が言ってるように思える。そう考えると人間の心の中には誰しも暴力的なものを抱えたまま生きているんだということを思い知らされると同時に自分自身を守るものは自分であって他人ではない。やはり自分こそ一番の見方である。そんな作品であると見終わった後、私は思いました。[ビデオ(字幕)] 7点(2009-02-08 11:52:22)

12.  ワン・ツー・スリー/ラブハント作戦 《ネタバレ》 普通、人が怒っている姿を見たり、愚痴を言うのを聞かされると自分も嫌な気分になるものたが、ジェームズ・キャグニーが怒ってるのを見てもちっとも嫌な気持ちにはならず、むしろ面白く感じるから不思議である。これこそこのジェームズ・キャグニーの魅力であると私は思っている。ここでも終始怒ってばかりでいてもそれがまた面白いのである。大体、ジェームズ・キャグニーが大企業の社長てことからして普通じゃない。ライバル会社との駆け引きも令嬢に惑わされ、令嬢の夫となる青年を騙してみたりと、それでいて自分も騙される。ラストの飛行場でのシーン、あのラスト、奥さんと息子達がコーラを飲もうとして、その後、ペプシコーラしかなくて唖然とさせられるあの落ちも決まっていて良い。ビリー・ワイルダー監督の小道具の使い方も面白い。ただ、全体にブラックユーモアというものがここでは危険な匂いが充満し過ぎで笑うに笑えないものがあるという不満も残るがワイルダー監督のセンスの良さはここでも健在!東西の冷戦の皮肉の込め方の凄まじさとハイテンションな台詞の応酬と演技合戦でテンポ良く見せてくれていて面白く見ることは出来ました。[ビデオ(字幕)] 7点(2009-01-02 11:04:08)

13.  若者のすべて 《ネタバレ》 凄まじい!その凄まじさときたら半端じゃないぐらいの恐ろしさです。この監督の映画では「ベニスに死す」が世間的には最も有名で評価も高い気がするが、あの映画はそれまでヨーロッパ映画を一度も観たことのない人には薦められないし、まず最初に観ても解らないだろうが、これは最初に観てもよく解る。とにかくこの映画における描写、心理的描写がとにかく凄い。ある家族の物語で一人の女を好きになった二人の兄弟の全く性格の違う部分を見せながら家族がどんどん破滅していく様子が物凄いリアルに描かれている。アラン・ドロン演じる優しき三男ロッコが眼の前で一つ上の兄のシモーネが自分に対する嫉妬からナディアをレイプするシーンの恐ろしさ、シモーネがどんどん崩れていくのに何もしてあげられないロッコ、ナディアに対しても何もしてあげられず、助けることも出来なかったロッコのあの悲痛、悲しみ、苦しみをアラン・ドロンは見事に演じている。また他の兄弟、特に一番上の兄もシモーネとロッコの仲を元のようにしてあげらず苦しむ姿が描かれている。ナディアを殺してしまったシモーネを最も好きでいた長男の苦しみ、またナディアのことを何も解っていないし、それ以上にシモーネの犯したこともロッコの苦しさも何一つとして解っていないバカな母親、全てがこれだけの悲劇を生むというその痛くて重たいドラマの中にあって、私が思ったのは一番悲しい、哀れなのはナディアではないかと思う。ナディアは確かに二人の兄弟を引き裂く一番の原因ではあるが、母親がもっとまともな人間であって二人の兄弟のことを理解していればこんなことにはならなかったと思うとナディアの「死にたくない」と絶叫したのちにシモーネに殺されてしまう運命に人間の悲しさと惨酷さのようなものを感じてならない。この映画は人間の惨酷さ、醜さをある家族の眼を通して、描いた作品で、そのあまりの凄まじさにとにかく痛い。心が痛む。あまりの痛さに繰り返し観ることは出来ないが、人間が崩れていくこととはこういうものなのかと考えさせられる作品です。[ビデオ(字幕)] 8点(2008-07-06 13:20:58)(良:1票)

14.  我が家は楽し(1951) 《ネタバレ》 笠智衆と山田五十鈴が夫婦でその娘に高峰秀子と岸恵子ってどんな家庭や?何だかそれだけで凄いドラマが待っていると期待せずにはいられない。期待通りの出来栄えです。勤続二十五年の祝いをしてもらうこととなった笠智衆が山田五十鈴の前で表彰状を受け取る時の練習風景が何とも笑える。まるでチャップリンのようなコミカルな動きと表情、そんな楽しい前半が電車の中でスリの被害に会ってお金を全て盗まれてしまってから不幸の連続へと進んで行く中で、妹二人と弟がそんなこととは知らずにいる中で、偶然にもそのことを聞いてしまった高峰秀子が自分の書いた絵を売ろうとする姿に何だか泣けてきて仕方ない。毎度ながら高峰秀子という女優さんは見る者に対し感情移入させるのが本当に上手い。ただ上手いだけでなくつい、応援したくなるそんな魅力を持った数少ない女優、それが高峰秀子だと思う。山田五十鈴の果せなかった夢を二人で語るシーンの母と娘の会話、やれとりもこれまた良い。このまま不幸で終わるかと思ったら最後は再び幸せが待っている。一度は家族全員、家を追い出されなくなったものの山田五十鈴の母の一言で再び絵を書くことにし、その絵が認められ、更にその一枚の絵が原因で家を出なくてすむようになった家族達、そこで元気いっぱいに歌う岸恵子、それに釣られるようにして歌う笠智衆と山田五十鈴の二人の表情の素晴らしさ、お金よりも大切な何かを得ることの出来た人達、見ている私にもお金よりも家族の愛、絆の方が大切であることを改めて教えてくれたこの家族達の名演技ぶり、言葉に出さなくても背中で演技する笠智衆と家族を支える山田五十鈴の名演技ぶりに高峰秀子という女優の凄さ、美しさに見入ってしまうこと間違いなしのこれまた見応え十分のホームドラマを見せてもらった思いでいっぱいになりました。[ビデオ(邦画)] 8点(2008-06-22 11:20:08)(良:1票)

15.  私は告白する 久しぶりのヒッチコック作品の鑑賞!でもって、やはり上手い。冒頭から正にヒッチコックらしい、モノクロの映像のセンスが漂っていて自然と作品に釘付けとなる。あの斜めからの角度による教会の映し方、下から斜めからとそのアングルによる撮影により緊張感というものが効果を得ているところなど流石はヒッチコック!映像の魔術師と言われるだけのことはあります。あの不安定な建物がモノクロの映像と共に忍び寄る恐さ、教会の中での会話の場面と外の風景とを交互に素早いカット割りで映すことで生まれる心理的恐さ、教会の上に流れるあの雲などただそれでけで恐い。そして、この映画では主人公、殺人の罪をかぶせられる男を演じているモンゴメリー・クリフトの表情から感じられる苦しみ、怯える姿などは正しくこの俳優ならではのものを感じることが出来る。「陽のあたる場所」で見せた何かに怯えているような表情こそこの俳優の持ち味ではないかとここでもまたそんな素晴らしい演技が見られる。サスペンス映画として見たら確かに少し弱い部分がなくもないが、人間の心理というものを捉えた一つの作品として観ると凄く面白い。やはりヒッチコックの作り出す世界は私は好きだ。これも私にとっては満足のいく仕上がりになってます。[ビデオ(字幕)] 8点(2008-06-01 13:38:29)

16.  我等の仲間 《ネタバレ》 「望郷」と同じ監督、そして、主演もこれまた同じくジャン・ギャバンによる男達の友情と一人の女の登場によって、友情が崩れていく模様が描かれている。相変わらずジャン・ギャバンの渋い演技が味わい深い。男五人のそれぞれ別の仕事を抱えている中で共同して買った宝くじが当り、みんなで小さなホテルを作ろうとする。順調に行っていたかと思ったものの、それも一人の女の登場でどんどんと話は深刻になってく。男の友情に絡んでくる女の怪しさ、色気、悪女ぶりが女の恐ろしさを感じると共に惨酷さを感じるこの何とも悲しくも切ない物語に個人的には同じ監督、同じジャン・ギャバン主演でも「望郷」と比べるとこっちの方が私としては好きです。仲間の一人を射ち殺したジャン・ギャバンの横で仲間の一人の恋人からの贈り物である時計の鐘の音が鳴るラストシーンはこの映画の終わり方として最高の終わり方ではないだろうか![ビデオ(字幕)] 8点(2008-02-03 21:23:19)

17.  笑う蛙 《ネタバレ》 いや~凄い!これは正しくヒッチクック映画のようなハラハラドキドキの傑作密室劇です。大塚寧々演じる若き人妻とそんな人妻を捨て別の女を作り、更には会社の金を横領した罪で警察から追われている夫を演じている長塚京三、二人共この映画の為に生まれてきたのでは、俳優になったのではないかと思うぐらいの見事なハマリ役!一旦は妻を捨てたものの、警察から逃れる為に再び妻の元へ戻って来た夫を家の中で隠し、そんな中、毎日、毎日色んな人間が彼女の所へやってくる。ここからがこの映画の凄いところです。誰にも見つからないように隠れている夫が妻の所へやってくる人間との会話、妻の愛人との情事、夫を追ってやってくる刑事とのやりとりを隠れた部屋の中から小さな穴を開けて見ている夫、まるでその視線はヒッチコック映画のようなカメラ視線です。そして、愛人とのSEXを隠されている部屋の中から見ている夫がそれを見てたまらなくなっている場面のあのゾクゾク感は男ならきっと理解出来る筈の凄さ、愛人が帰った後、夫を隠れていた部屋から出す妻、そして、妻は今までの行為を夫に見られていたことを知る場面における妻の表情とそんな妻がその後、夫を意識しながらまたしてもやって来る人達とのやり取りを楽しんでいる凄さ、覗く側と覗かれる側の心理状態を見事に生かした上手さに、そして、何と言っても一人だけ予測の出来ない行動を取る妻、事故で死んだことにされた夫を家族や愛人達にかくまっていたことをばらすという凄まじき行動、みんなの前で夫が今までの事を全て悔い改め、やり直したいと訴えるシーンを見てる時の大塚寧々の表情に女の恐さを感じ、愛人との間に子供が出来たというとんだ大嘘まで言う始末!夫だけでなく愛人、身内と全てを騙し続けたしたたかな女の凄さに唖然とさせられた。これは本当に毒のある恐ろしくも哀しい、人間の惨酷さと矛盾さを描いている傑作です。[ビデオ(邦画)] 9点(2007-11-18 13:01:21)(良:1票)

18.  ワイルドバンチ タイトルに偽りなしの本当にワイルドな男達の映画である。もう、誰が見方で誰が敵なのか?見方であっても敵みたいな常に緊張感が漂う。アクションシーンの凄さばかりに眼が行きそうになるが、その前の静けさがあればこその緊張感、とにかく緊張しっぱなしである。ストーリーそのものは特別に面白いとは感じない。熱い男達、むさ苦しい男達きりの息詰る戦いが観たい人にはこの映画を観ることを薦める。二枚目なんか出てこない。よって女性に薦める映画なんかじゃないがこれが男だ!そう思わせる男が男に痺れる映画![映画館(字幕)] 8点(2007-11-11 21:27:19)

19.  若草物語(1949) まずは何という豪華な四人の姉妹であることか!それだけでもこの映画は成功していると思うぐらいの四人、ハリウッド映画が本当に良かった時代、素晴らしかった時代、今みたいに何でもかんでも馬鹿の一つ覚えみたいに凄い特撮、凄い映像、終始鳴り響く音楽、そんなものとは大きな差を感じる品の良さ、女優陣の魅力と気品に満ち溢れた態度、美しさ、笑顔、笑い声、何もかもが本当に美しく見応え十分のドラマにし上がっている。どの配役にしてもこの役はこの女優に当てはまるぐらいのキャスティングの妙、2時間という長さもほとんど感じることなく観れるのはやはり出演者のおかげと監督の演出のおかげだと思う。ラストの空に浮かぶ美しい虹、この映画は本当にどれもこれもが美しい。それにしてもこれだけのキャストの中にあって当時若干16歳にしてこの美しさと可愛さの両方を兼ね備えているエリザベス・テイラー、彼女一人いるといないとでは、また、別の人が演じていたら全く違う作品になっていたに違いない。[DVD(字幕)] 8点(2007-10-21 15:37:45)

20.  わが町(1956) 《ネタバレ》 東北は青森県生まれの川島雄三監督が大阪の世界をどんな風に描いているのか?どうしても見たくて仕方がなく現在東京では川島雄三監督の映画の特集をしてるのたが、東京まで観に行くことは出来ない。そんな訳で思い切ってDVD購入してしまった。どうしよう?もし、つまらなかったら期待外れに終わったらどうしよう?そんな思いもこの映画を見て完全に消えた。川島雄三監督と言えば奇想天外な作品ばかりで当り外れの激しい事で有名だが、この「わが町」のような心温まる人情劇もきちんと描けるということを見せてくれた。話としてはとても長い時代の物なのにそれを川島雄三監督らしいテンポの良さと時代を読み取る観察力の鋭さでこの時代の風景、雰囲気をきちんと描いている。また登場人物にしても誰一人として疎かにはせず、それでいて、僅か1時間半とい短い時間で描ききっているのも素晴らしい。 主演の辰巳柳太郎は勿論のこと、中でも一人二役の南田洋子の美しいこと。あっ!稲垣浩監督、阪妻主演のあの名作「無法松の一生」が好きな人は楽しめる筈です。この映画を観て大阪が益々好きになった。やはり大阪が舞台の映画は良いねえ!最後のあの場面、プラネタリウムのシーンでの辰巳柳太郎演じる主人公、他吉の死に顔は涙が止まらず!最後の最後まで人情深く熱い男ぶりを見せて死んでいった他吉の姿にこれぞ男の中の男を見たそんな思いでいっぱいになりました。[DVD(邦画)] 9点(2007-06-24 21:33:42)(良:1票)

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