みんなのシネマレビュー |
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1. 残穢 -住んではいけない部屋- 《ネタバレ》 中村義洋監督によるホラー映画。中村監督は先週見た「仄暗い水の底から」で脚本に参加していたのだが、本作も偶然か集合住宅が舞台となっていて、同じようなものなのかと思って見始めたのだが、本作は邦画ホラーにありがちなハデに脅かす演出は控えめで、主人公のヒロイン二人が事故物件で起きた心霊現象の謎を探るミステリー中心のストーリーとなっていて、淡々としていて印象としてはかなり地味で、ホラーを期待すると肩透かしかもしれないが、ここ最近鈴木光司原作のホラー映画ばかり見ていたこともあってか、疑似ドキュメンタリーのように展開していく本作はそれがけっこう新鮮に感じられて引き込まれた。二人がマンションの謎を探っていくところは怖さよりも見ているこちらもつい好奇心に駆られてしまい、一緒に謎解きしているような感覚を覚える。雰囲気も良く、語り部的に入る主人公の作家(竹内結子)のモノローグも良い感じで、ホラー映画として見るとしっとりとした怪談的な怖さがあり、やっぱりお化け屋敷的なホラーよりはこういう雰囲気で怖がらせるホラーのほうがわざとらしさがなくて好きだな。でも、それだけに最後の最後で安直な恐怖演出をしていたのはそこだけ急に浮いて見え、ちょっと残念。(ここがなければもう1点アップしていたかも。)エンドロールになっても画面が暗転せず、最後に住職(上田耕一)が絵を見つめるシーンを入れていたのは良かった。最後にもう一言、新人時代に「リング」の冒頭に出演していた竹内結子がホラー映画に主演しているのは感慨深くもある。[DVD(邦画)] 6点(2025-03-16 18:53:59) 2. 仄暗い水の底から 《ネタバレ》 監督 中田秀夫、原作 鈴木光司、プロデューサー 一瀬隆重という「リング」トリオによるホラー映画。「リング」では海や井戸が重要な要素として登場していたが、本作は水をテーマにした短編集の一編が原作ということもあり、降り続く雨や湿った空気感などが印象的に描かれ、舞台となる古びたアパートも実にホラー映画らしい雰囲気が感じられるのだが、離婚調停中の女性(黒木瞳)が主人公ということもあり、話としては彼女と幼稚園児の娘(菅野莉央)の親子のドラマが中心になっていて、ただのホラー映画にはしないという製作陣の意気込みも分かるし、実際、シングルマザーの大変さはよく伝わってくる内容になっている。しかし、この母親が情緒不安定気味で被害妄想も強めなので、こんなんで果たして大丈夫なのかと思えてくるし、実際劇中でも指摘されているのはごもっとも。夫(小日向文世)だけでなく幼稚園の職員やアパートの関係者も不快な登場人物ばかりで、仮に本作がホラー映画でなくても怖さを感じるのだが、肝心の行方不明になった少女の悪霊が登場するクライマックスはなんかホラー映画としてはありふれた感じで、それまでの雨や部屋の水漏れによってできた天井の滲みなどの水が登場するシーンや、アパートの不気味さに比べて弱く、煽りは怖かったのにメインは大したことなかったという肩透かし感がある。エピローグの10年後のシーンは別になくてもと思うし、あの大水からよく助かったなあと思えてしまうのだが、ここがあることで後味の悪さをそれほど感じずに見終えれたのはまあ良かったかなと。でも、好みの問題かもしれないが、黒木瞳ってあんまり良い母親には見えないんだよなあ。[DVD(邦画)] 5点(2025-03-09 18:13:12) 3. リング0 バースデイ 《ネタバレ》 今回は貞子そのものを主人公に、彼女が井戸に落とされるまでが描かれた過去篇となっていて、監督も変わって今までと毛色の違う作品になっているが、おかげでホラー色が少なくてもそれほど気にならずに見れたし、どちらかといえば青春映画のような雰囲気があり「らせん」を含めたシリーズ続編ではいちばん好印象。でも、貞子が主役の青春映画として見て面白いかといえばはっきり言って微妙で、とくに前半はホラー要素がほとんどなく貞子(仲間由紀恵)が所属した劇団のメンバーの人間模様が描かれていて面白くなりそうなのにこの部分が非常に薄っぺらく、謎の死を遂げた主役女優(奥貫薫)の代役に貞子(仲間由紀恵)が抜擢されるところなどは「Wの悲劇」をなんとなく思い出すものの、ここに至ってこの劇団の話の部分が出来損ないの「Wの悲劇」のように思えてきて、なんか幻滅で、せっかく青年座が協力してるのに勿体なく感じる。後半はホラー要素が強くなるのだが、二人に分離した貞子とかかなり唐突で、二人の貞子は別人格と思って見ているといつの間にか劇団員たちに殺された貞子が復活してるとか(二人で一つの記憶を共有した同じ顔の存在なのかとちょっと考えてしまったじゃないか。)滅茶苦茶で破綻しているとしか思えないし、そもそも冒頭から貞子が劇団内で憎まれているという設定にあまり説得力が感じられないため、この後半のホラー部分も怖さをあまり感じられないものとなっている。それに「トリック」を先に見ていると終盤に貞子が迫ってくるシーンは仲間由紀恵なんだと思いながら見てしまうとどうしても山田にしか見えずギャグのように映って脱力してしまうのも本当のところ。でも、本作がきっかけで「トリック」のオファーがあったみたいなので仲間由紀恵にとっては本作はやはりブレイクのきっかけになった作品のひとつには間違いないのだろう。時代設定は昭和43年なのだが、ちゃんと作り込まれてる感じがして良かった。シリーズは一応これで終わりなのだが、(後年貞子シリーズとして再開してる。)ここまで見てもなぜ貞子の怨念が取り付くのがビデオテープなのかは分からなかったなあ。[DVD(邦画)] 5点(2025-03-02 19:11:27) 4. リング2 《ネタバレ》 「らせん」を無視した「リング」の映画オリジナル脚本による続編。「らせん」を映画化しているのにまた別の続編を作ってしまうところに商魂逞しさを感じてしまうのだが、「らせん」と比べると「リング」の雰囲気は保たれていて、分かりやすく見やすい作りになっている。でも、やっぱり面白くなく、ホラー映画としても怖さをほとんど感じられないし、貞子の呪いを科学的に解明しようとするところは結局「らせん」と同じようになってしまっている気がしてしまうのだが、やはりそうなるとホラーではなくなってしまい、見ていて冷めてしまう。でも、今回それをやる医者を演じるのが佐藤浩市ではなく、小日向文世なので、この医者に少しうさん臭さが出ていたのは良かったかも。しかし、クライマックスのプールでの実験シーンまでこの調子なので、一体何を見ているのかという気分になってしまうし、そのプールから貞子の井戸につながるという展開も意味不明に感じる。一応、話の本筋としては「リング」にチョイ役で登場し、「らせん」にもヒロインとして登場した高野舞(中谷美紀)が主人公となり、怜子(松嶋菜々子)と高山(真田広之)の息子である陽一(大高力也)を貞子の呪いから守るというものになっているが、はっきり言ってそのストーリーでやるなら「リング」の焼き直しでも構わなかった気がするし、せっかく「らせん」と切り離した続編なのだからもっとホラー色が強くても良かった気がする。全体的に見ればよくある無理にやらなくて良かった続編という気がするのだが、それでも、呪いのビデオを見てしまった女子高生(深田恭子)の死に顔の描写が智子(竹内結子)のそれをちゃんと踏襲していたのは良かった(ここは今回のほうがインパクトあったかな。)し、雅美(佐藤仁美)の後日譚も出て来るので「リング」を見ていればそこが見どころになるかな。[DVD(邦画)] 3点(2025-02-23 23:56:26) 5. らせん 《ネタバレ》 「リング」の続編小説を原作としていて、公開当時は「リング」との同時上映をウリにしていた映画だが、ミステリー仕立てでありつつも、ちゃんと単純なホラー映画としての側面もしっかりとしていた「リング」に対してこちらは科学的・医学的な側面から貞子の謎に挑む内容であり、あえて「リング」と方向性やアプローチを変えた作風となっているのは理解できなくもないのだが、あまりにもその方向に行ってしまったためにホラー映画として見るとほとんど怖さがなく、ただの理屈っぽいだけのSFのようになってしまった感じで、そこがまた面白ければ良いのだが、そうではないために見ていて純粋に退屈で、山場や見せ場もないのではっきり言ってつまらないし、佐伯日菜子演じる貞子も当然のように存在感が感じられない。話が進むたびに分かりにくさも増していくのだが、とくに死んだ舞(中谷美紀)が貞子として生まれ変わってからはついていけなくなってしまった。そして全体的に中途半端であり、ラストシーンなどはそれまでの流れからすると完全に浮いていて結局何が言いたかった映画だったのかよく分からない。ちなみに「リング」と同じグループが歌う主題歌はしっとりとしたバラード調で、主題歌だけはこちらの方が好み。エンドロールの後に「ループ」の告知が出ていて、この時点では映画化する気満々だったのかもしれない。[DVD(邦画)] 3点(2025-02-17 00:06:21) 6. ドラゴンボール超 スーパーヒーロー 《ネタバレ》 見る前は今更レッドリボン軍が敵なのかと思っていたが、悟空が本筋に関わらず、メインを悟飯、ピッコロ、それに3歳のパンの三人にしたことで、うまくストーリーを作っているし、スーパーヒーローに憧れるドクターヘドが悟空たちを悪者と信じ込まされているなど、工夫の利いた脚本になっていて、そのあたりも良かった。新しい人造人間であるガンマ1号と2号のキャラも魅力的だったと思う。とはいえ、全体から受ける印象はいつもの「ドラゴンボール」の劇場版とあまり変わらず、戦わなくなった悟飯が覚醒するまでがあっさりとしていたりするあたりは、テレビアニメや原作漫画だともう少し引っ張っていただろうなあという感じはする(引っ張り過ぎても困るのだが。)し、今回は話に絡んでおらず、出番の少ない悟空はベジータと一緒にビルスの所にいるのだが、いざ登場するとそのシーンがけっこう長く感じてしまったのは少しもどかしかった。(30年ほど前のブロリーの映画「危険なふたり!超戦士はねむれない」のほうがまだ出番は少なかった気がする。)それでも、終盤はバトルをじっくり見せる構成になっており、悟空やベジータの存在を忘れて見ることが出来たのは良かったと思うし、最後まで悟飯とピッコロが主役という姿勢を崩していないのにも好感が持てたし、悟飯が魔貫光殺砲を撃つ戦いの決着シーンは昔から悟飯とピッコロの関係を知っているとやっぱり熱いものがある。惜しむらくは最後の敵であるセルマックスが怪物然としすぎていて、セルの再現体とのことだが、セルにあったようなかっこよさが無くなり、ただ不気味なだけになっていて、それでいて声は同じ若本規夫が演じているというのが残念だった。3DCGによる作画で描かれたシーンもゲームの映像っぽくて何か違和感がある。音楽がこのシリーズでは聞きなれない曲調だと思ったら佐藤直紀が担当していて、この曲がけっこう合っていて良かったし、この手のテレビアニメの劇場版に主題歌がないというのも新鮮だった。[DVD(邦画)] 6点(2025-01-26 17:29:38) 7. 電磁戦隊メガレンジャーVSカーレンジャー<OV> 《ネタバレ》 スーパー戦隊VSシリーズ第3作で、メガレンジャーとカーレンジャーのコラボ作品。高校生であるメガレンジャーの卒業写真の撮影を控えているというエピソードにカーレンジャーがゲスト登場する構成だが、カーレンジャーが会社員なのもあって、このコラボはすごく自然に感じた。カーレンジャーの浦沢義雄らしいぶっ飛んだギャグ路線がとても好きなのだが、あくまでメガレンジャーのVシネマということで、カーレンジャーのその路線は控えめではあるが、先輩ヒーローとしての顔もちゃんと見せるカーレンジャーにはなにか感慨深いものがある。メガレッドである健太の実家である八百屋はカーレンジャーにも登場していたが、その八百屋の主人を演じていた高月忠が同じくその八百屋の主人である健太の父親として登場するなどハイパーリンク的な部分もあるのが楽しい。このシリーズ前作ではオーレンジャー側の敵としてバラノイアの残党怪人が登場していたが、今回はカーレンジャー側の敵として本作オリジナルであるヘルメドーが登場するのはカーレンジャーの結末的に残党を出しにくいのもあるのかもしれないが、マンネリ化対策のようにも感じる。今回もタイトルどおり両戦隊が対決するシーンもあるのだが、カーレンジャーがネジレジアに操られたのがきっかけというのが実に正統派のヒーロー番組らしい。芋長の芋羊羹も登場しているが、ヘルメドーが最終決戦時に巨大化するのが芋羊羹でなく、ビビデビによってだったのはほんの少し残念だったかな。エンドロールのバックで10人でメガレンジャーのエンディングを再現しているのはなんか良い。[DVD(邦画)] 6点(2025-01-22 19:46:51) 8. 五番町夕霧楼(1980) 《ネタバレ》 田坂具隆監督の東映版に続いてこの松竹版も見てみた。東映版は夕子の悲しい生き様を中心に描いていたが、この松竹版は夕子と正順の関係を中心にしていて、東映版でやや唐突に感じた正順の登場だが、こちらでは冒頭から存在に言及があるなどして、自然に夕子と正順のラブストーリーとして見る事ができる作りになっている。しかし、東映版にあったような深みや、きめ細かさがなく、ひたすらあらすじを追ってるだけのテレビドラマのように見え、上映時間は東映版に対して10分ほど短いだけなのだが、まるでダイジェストを見ているように感じた。東映版の佐久間良子演じる夕子は悲しみの中にある純粋さも感じ取れる演技でとても良かったのだが、本作の松坂慶子演じる夕子にはそういったものが感じられず、言ってしまえば松坂慶子そのものに見えてしまい、とてもつらい境遇にいるように見えないのが残念。夕霧楼の仲間たちは一応はそれらしく描かれていて、東映版のようなアットホームな雰囲気はそれほど感じないのだが、女将さん役が浜木綿子(主人公の夕子、夕霧楼ときてこのキャスティングだと狙ってる感じがすごくしてしまう。)というのはいかにもなお母さん感がしすぎてなんか違うし、夕子の最初の客を演じるのが長門裕之というのも分かりやすすぎる感じがする。本作では正順の放火にいたるまでの寺でのエピソードももう少し踏み込んで描かれていたのは東映版の補足としては良かったと思う。しかし、肺病で入院している夕子を寺に連れ込んでのラブシーンは思わず突っ込まずにはいられなかったし、正順が燃え盛る寺に飛び込んで運命を共にするという最期であればいっそのこと正順を主人公にしておいたほうが良かった気がする。東映版では夕霧楼の仲間たちがいなくなった夕子を心配しているラスト近くのシーンがとても印象的だったのだが、本作ではそこは軽く流されてしまったのも残念で、東映版で印象的だった百日紅も登場せず、ラストシーンも趣が違い、あくまで本作は夕子と正順のラブストーリーであることを強調したものになっているが、やはり東映版のラストの方が良かったかな。あと、出演者に関しての見どころと言えば夕霧楼の仲間の一人であるお新を中原早苗が演じていて、松坂慶子との共演はある意味では見ものかもしれない。まあ、すごく下世話な話ではあるのだが。[DVD(邦画)] 5点(2025-01-13 16:43:40) 9. 五番町夕霧楼(1963) 《ネタバレ》 水上勉が三島由紀夫の「金閣寺」に対して書いた小説を原作にした田坂具隆監督の映画。「金閣寺」を原作にした市川崑監督の「炎上」を先日見たのでこちらも鑑賞。「炎上」が犯人である学生僧の内面を描いていたのに対し、こちらは学生僧の恋人である遊郭の女性を主人公にしていて、見た直後というのもあって「炎上」に少しだけ出てきた中村玉緒演じる遊女をどうしても思い浮かべてしまうが、本作では学生僧の事件に至る背景よりもこの主人公・夕子(佐久間良子)の悲しい運命が描かれていて、そこに原作の水上勉らしさを感じるし、田坂監督の視線にも優しさが感じられるものとなっているが、その田坂監督の演出も格調高く、女性の儚さや美しさを見事に描き出していて、映画としての深みももちろんじゅうぶん。主演の佐久間良子はこれまで何本か出演作を見ているが、単独の主演作を見るのはおそらくこれが初めてかもしれないが、そんな田坂監督の演出に応えて、素晴らしい演技を見せていて、夕子の悲しみの中にある純粋さというものがよく出ていて、間違いなく本作は田坂監督のみならず佐久間良子にとっても代表作の一本だろう。夕子の売られた遊郭の女性たち(木暮実千代演じる女将さんがすごくいい。)がみな優しく、家庭的な雰囲気を醸し出しているのは少し違和感を残すものの、千秋実演じる夕子の最初の客で、彼女に入れ込む男が肺を病んだ夕子に対して最後は冷たくなるのとの対比になっているのでこれで良いのだろうと思うし、正順(河原崎長一郎)の自殺を報道する新聞記事を見ながら夕子を思う遊女たちからは女性としての強い優しさを感じ、ラスト近くのこのシーンには心を打たれるものがある。夕子の故郷の百日紅の美しさも印象的なのだが、この百日紅が夕子の人生を象徴するような花として描かれているのもドラマに深みを与えている。[DVD(邦画)] 8点(2025-01-05 18:36:57) 10. 仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ 《ネタバレ》 「仮面ライダーW」の単独劇場版。44話と45話の間の出来事を描いているが、44話をYouTubeで見終わってすぐに見た。今回は44話でシュラウドが自分の母親であることを明かされたフィリップ(菅田将暉)が目の前に現れた女性・マリア(杉本彩)がシュラウドの正体なのではと疑うのを軸に、T2ガイアメモリを奪った傭兵軍団NEVERとの戦いが描かれているが、このフィリップの母親に対する思いを描くというのは「ビギンズ・ナイト」で翔太郎(桐山漣)と壮吉(吉川晃司)の関係を描いていたのと対になっていて、結果、二人の主人公の内面に関する話を二つの劇場版で描くという構成になっているのがけっこう印象的。「ビギンズ・ナイト」のストーリーは別にテレビシリーズでやってもと思わなくもなかったが、テレビシリーズが終盤に差し掛かっている時期なのもあって、今回のストーリーを劇場版でやったのは正解だったのではないか。見たのは86分のディレクターズカット版だったこともあるのか、この主題の部分もわりとしっかりとしていたように感じた。(DC版が完全初見のため、劇場公開版とどう違うのかが分からないのだが。)今回の敵であるNEVERの面々(彼らの設定は「ユニバーサル・ソルジャー」みたい。)は各自存在感があり、強烈な印象を残しているが、中でもやっぱりリーダーである大道克己(松岡充)が群を抜いていてかっこよかった。Wでは仮面ライダーは希望の象徴として描かれていて、それゆえ、仮面ライダーどうしの対決や対立は基本的にやらず、それが全体のわかりやすさにもつながっているように思うのだが、この克己が変身する仮面ライダーエターナルは完全な悪役として登場しているのは劇場版ならではだろうか。翔太郎が一人でジョーカーに変身して捕らわれたフィリップを助けに行くというのがクライマックスの見どころの一つ。サイクロンジョーカーのデザインが好きなのだが、この全身黒のジョーカーのデザインは旧1号やBLACKを意識したオマージュのように感じる。もっと言えばサイクロンジョーカーの左右非対称の黒緑というデザインはBLACKとRXを意識したオマージュしたものなのだろう。風都タワーの最終決戦を見守る群衆の中にこれまで登場した依頼人たちが紛れているのはグッとくるものがあるのだが、前半のこれまで登場したドーパントたちの再登場と合わせてテレビシリーズも最終回が近いことを感じさせているのがなんだかさびしくもある。[インターネット(邦画)] 6点(2024-12-24 23:08:02) 11. 劇場版 SPY×FAMILY CODE: White 《ネタバレ》 最近のテレビアニメはほとんど見ないのだが、この「SPY×FAMILY」はこれまで放送された3クール分すべて楽しく見た。中でも、豪華客船(プリンセス・ローレライ)編は全編見終わって映画一本見終えたような満足感があり、すごく面白かった。でも、だからと言って劇場版である本作にはあまり期待していなかったのだが、印象としてはいつもの「SPY×FAMILY」の拡大版という感じで、まあ予想通りではあるが、それなりに楽しめる。でも、元々、テレビアニメからして主人公ロイドが目的を達成したら終わるのだろうという予想がある程度できるシリーズではあるが、そのロイドが任務のために作った偽装家族の日常を描くことによって「クレヨンしんちゃん」に近い印象もあり、とくに今回の劇場版はアーニャがマイクロフィルムの入ったチョコを食べたことからフォージャー家が事件に巻き込まれるところは「暗黒タマタマ大追跡」っぽいし、ほかにも少し劇場版「クレヨンしんちゃん」からの影響が感じられる部分が多かったような気がするが、そこはあまり気にせずに見られた。でも、ロイドのオペレーション〈梟〉からの解任問題は結末が分かっているとはいえ、もう少し緊迫感を持って描いても良かった気がするし、逆にヨルがロイドに浮気疑惑を抱くところはヨルの普段の天然さが良く出ていたものの、その部分は少し冗長に感じてしまった。アクションシーンなどの作画は非常に丁寧で迫力があり、見ていて飽きない。ヨルとタイプFが戦うシーンは「ターミネーター2」みたいだったけど、見ごたえはあったと思う。ロイドもヨルもさしてアーニャに正体を隠そうとしていないのはさすがに気になるが、原作やテレビアニメとの整合性よりも劇場版としてのイベント性を重視した結果だろうと思えばなんとなく許せてしまう。最後にもう一つ、エンドロールで主題歌が2曲流れるのだが、歌っているアーティスト的にもオープニングとエンディングに一曲ずつ流したほうが良かったのではないか。見終わった直後は5点かなとも思ったが、まあ6点を。[DVD(邦画)] 6点(2024-12-08 20:00:17) 12. 仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE 《ネタバレ》 仮面ライダーWと仮面ライダーオーズの中編劇場版と共演のパートで構成されているが、Wを最終回までまだ見ていない状態での鑑賞だったので、最終回後の話であるWパートをその状態で見て大丈夫なのかという不安はあったものの、そのWパートでは照井と亜樹子の結婚式当日が舞台となっていて、完全にテレビシリーズの後日談になってるみたいだが、内容は仮面ライダーアレルギーの亜樹子が怪人の力によって父である壮吉がなぜ仮面ライダースカルになったかを見せられるというもので、ほとんどスカルのスピンオフみたいになっているが、(出演者クレジットのトップも吉川晃司。)そのおかげか、Wを全部見ていないことをあまり気にせずに見る事が出来た。壮吉と相棒である山本太郎演じるマツのコンビは本当にハードボイルドな雰囲気があり、演じる二人を見ても本当に仮面ライダー映画なのかと思うほどで、前作MOVIE大戦のWパートがいつものWという感じだったのとは対照的に思える。(たぶん、それを狙ってるんだろうなあ。)話自体もけっこう面白く、そこそこ満足。続くオーズのパートだが、オーズ自体をこれで初めて見たということもあり、レギュラーの登場人物の関係からよく分からなかったっものの、王道のヒーロー番組らしい作りでけっこう安心して見ていられた。(ひょっとしたらオーズのパートの方が子供受けはいいかも。)最後の共演パートも敵を2体出し、主役ライダー二人とサブライダー二人がそれぞれコンビを組んで二組に分かれて挑むというのが見ていて思わず年甲斐もなく燃えてしまった。このパートはWパートのエピローグでもあり、見終わってこの映画は亜樹子が仮面ライダーアレルギーを克服し、照井と結ばれるまでをオーズの世界と絡めて描いたものだったのかなあと思えてくる。それにしても、前作でも思ったが、いくらオムニバス映画とはいえ、パートが変わるごとに東映マークが出るのはやはり違和感がある。[インターネット(邦画)] 5点(2024-11-07 00:38:51) 13. バトル・ロワイアル 特別編 《ネタバレ》 見るのは二十数年ぶり二回目だったのだが、バスケのシーンをはじめとした追加シーンがあるこの特別編を見たのは実は初めて。オリジナル版と見比べてはいないのだが、その追加シーンが足を引っ張ることなく、とくに追加シーンのメインであるバスケのシーンなどは元からあったとしても違和感はないだろう。オリジナル版を見た時は深作欣二監督の映画を4本くらいしか見ておらず、その70歳とは思えないパワフルさに驚いたのだが、30本前後見ている現在だとどんなふうに思うのか不安もあったが、徐々に引き込まれ、素直に楽しめたし、実に深作監督らしい映画になっていて、やはり衰えを感じさせていないのはすごい。登場する生徒で印象に残るのはオリジナル版を見た時もそうだったのだが、光子(柴咲コウ)と桐山(安藤政信)のインパクトが抜きん出ていてやはり強烈だったし、中盤あたりの灯台のシーンの和気あいあいとしたガールズトークが一人が毒で死んだのをきっかけに罵り合い、殺し合いに発展するのは本作の中でもっとも怖さを感じさせる部分ではないだろうか。出て来るだけで異様な存在感を放つ教師をたけしが演じているのも「その男、凶暴につき」の監督に当初深作監督が予定されていたことを踏まえると満を持しての待望のタッグという感じがして、たけし自身ものびのびと演じているように思えるし、たけしが演じるからこそこの教師の冷徹さやその中にある人間味が際立っていて、とても良かった。ラスト(特別編ではそのあとにまだエピローグがあるのだが。)に出る「走れ」という画面いっぱいのテロップは今になって考えると既にこの頃癌に侵されていた深作監督のこれからの世代に対するメッセージであることは明白で、監督自身もうそんなに長くないという自覚もあったのではないかと思えてくる。(DVDに入ってる特典映像のメイキング風景を見ると監督がいちばん元気そうでとてもそうは見えないけど。)最後に本作のような映画を手掛けて、しかも賛否はどうあれちゃんと話題作になる。これは深作監督にとって本当に幸せなことだったのかもしれない。やはり個人的には本作が深作監督の遺作だと思いたい。[DVD(邦画)] 8点(2024-11-03 20:03:39) 14. 仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010 《ネタバレ》 前後の仮面ライダーシリーズの主役ライダーの共演を描くMOVIE大戦シリーズの第1作。ストレートに2つの戦隊の共演を描くスーパー戦隊シリーズのVSシリーズと比べて、まずそれぞれの中編劇場版をオムニバスで順番に流した後、最後のパートで満を持して2大ライダーの共演を描くという構成というのが凝っている。YouTubeで配信している「仮面ライダーW」をけっこう楽しく見ていて、12話まで見たところで同じく配信された本作を見たのだが、最初のパートである「仮面ライダーディケイド」のエピソードは、ディケイドに関して昔にテレビで放送していた「オールライダー対大ショッカー」しか見ていないこともあってやっぱり退屈。写真館の主人(石橋蓮司)が何の脈略もなく死神博士に変身するのは「オールライダー対大ショッカー」同様に意味が分からないが、次のWのパートでガイアメモリを使っていたことが暗示されていて後付け感が満載だが、Wの企画はディケイドの企画の前からあったとのことでムリヤリ納得。個人的には死神博士や地獄大使と違って再登場機会のなかったゾル大佐が登場してるのが嬉しい。続くWのエピソードはやはりテレビシリーズを見ている最中のためか、テレビシリーズと変わらぬいつもと同じ雰囲気で、やはり安心して楽しく見た。テレビシリーズで描かれていない翔太郎(桐山漣)とフィリップ(菅田将暉)の出会いや、二人がWに変身するようになった経緯も描いていて、第2話や第3話あたりでやっていても良さそうなエピソードをあえて劇場版で描くというのはなかなか大胆。翔太郎と彼の師匠である鳴海壮吉(吉川晃司)の関係も深みを持って描かれ、やっぱり翔太郎の被っている帽子のエピソードが良いなあ。ディケイドとWの共演パートの最後で壮吉が翔太郎にかける言葉もちょっと感動してしまった。その共演パートはWのエピソードからそのままつながっている感じで見ていて唐突感があるし、雰囲気も突然変わるので違和感がすごく、ハチャメチャという印象だが、子供向けのお祭り映画としてはこれでいいのだろう。でも、それだったら壮吉が翔太郎に言葉をかけるさっき書いたシーンはちゃんとWのエピソードの中でやってほしかったなあ。[インターネット(邦画)] 5点(2024-09-15 23:04:37) 15. こんにちは、母さん 《ネタバレ》 見る前は正直言ってあまり期待していなかったのだが、山田洋次監督の吉永小百合主演映画の中ではいちばん山田監督の喜劇作家としての側面が出た映画になっていて安心して見ていられたし、面白かった。吉永小百合扮する母親・福江が住んでいる家のセットの間取りがどことなくとらやっぽく、その二階で大泉洋扮する息子と幼馴染であり、会社の同僚でもある宮藤官九郎が会社人事を巡ってケンカをしているシーンなんてまるで寅さんを見ているようでつい声に出して笑ってしまった。今更感もある初めての老け役という吉永小百合も、この人の芝居にいつも感じる不自然さを感じることなく、あくまで自然な感じに演じていて、逆にそれがちょっと意外な感じもしたが、良かった。教会の牧師(寺尾聰)との老いらくの恋も違和感がなく、すんなりと受け入れられるし、吉永小百合は日活時代、宇野重吉との共演が多かったので見ていて寺尾聰との共演が感慨深くもある。(でも、この一つ前に見た山田監督の映画は「男はつらいよ お帰り寅さん」なのだが、やっぱりそこに登場した泉のお父さんは寺尾聰であってほしかったと本作を見て改めて思ってしまったことも事実。なんで出てないのだろう。)この老いらくの恋の結末はなんとなく予想できるのだが、それが分かり切っていても切ないものがあり、別れのシーンで福江が牧師にかける言葉が彼女の気持ちを全て物語っているようで良い。ラストは落ち着くところへ落ち着いたという感じではあるが、この結末で良かった気がする。いちばん最後の花火もとても印象的だった。[DVD(邦画)] 7点(2024-07-28 23:37:52) 16. 沈黙のパレード 《ネタバレ》 劇場版シリーズ第3作。今回は過去に完全黙秘を貫いて無罪になった男(村上淳)が再び殺人容疑で逮捕されるところから始まり、この黙秘を続ければ無罪になるということが今回の最大のキーワードになっているわけだが、ちょっと疑問が残るし、あんな決定的な物的証拠(大量の血がついた作業着)があれば黙秘を続けても意味がないのではとも思えてきてしまい、そこがちょっと残念。その過去の事件で殺された被害者の居酒屋経営の家族とその関係者が共謀してその男の殺害計画を立てるまでは良かったし、その全員が警察に対して黙秘を貫くというのはどう供述に持っていくかが見どころで、確かに面白いのだが、それがあっさりとしまっていて拍子抜け。戸島(田口浩正)のいうように事件に関わった人たちの感情の度合いの違いを見せたかったのかもしれないが、どうも納得できない。真実が明かされる終盤に至ってはどんでん返しに凝るあまり、背景の人間ドラマとミステリーとしてのリアリティさえもおざなりになってしまった感が強く、特に先生(椎名桔平)の奥さん(吉田羊)が被害者である教え子を突き飛ばして公園のフェンスにぶつけただけで死んだと誤解して気が動転するのはいくらなんでもお粗末で無理があり、思わず突っ込んでしまい、もう少しもっともらしい描写が出来たのではと思ってしまう。それにもう一つのキーとなるパレードのシーンも少し長く感じてしまった。この劇場版シリーズは「容疑者Xの献身」がテレビドラマの劇場版であることを感じさせない作品で実際面白かったのだが、その次の「真夏の方程式」はテレビドラマの劇場版という感じがしていた。今回は終わってみれば内容は重めだったかも知れないが全体の印象としては軽く、これまででいちばんイベント性の高い映画になっていて、湯川(福山雅治)が推理しながら数式を書かないなどドラマとは違うという劇場版のお約束は今回も守られているものの、前作に輪をかけてテレビドラマっぽい作りに感じる。今回の話のきっかけとなる男を演じる村上淳だが、公開と同時期にテレビドラマ化された「禁断の魔術」には息子である村上虹郎が重要な役で出ているのが面白い。久々に内海(柴咲コウ)が登場して、それだけで同窓会的な楽しさはあるし、主題歌がKOH+なのも「ガリレオ」はやはりこうでないとと思わせてくれる部分ではある。本作を見て願わくば「真夏の方程式」も主題歌だけはKOH+であって欲しかった気がした。本作単体で見れば5点が関の山だと思うのだが、シリーズをずっと見ていることもあってこれに免じて1点プラスの6点。[DVD(邦画)] 6点(2024-07-22 00:29:00) 17. 映画ドラえもん のび太と空の理想郷 《ネタバレ》 同じ年の大河ドラマも手掛けていた古沢良太が脚本を担当した「ドラえもん」の劇場版。ユートピアであるパラダピア(パラダイス+ユートピア)を舞台にしているが、敵が世界平和のために人間の心を無くそうと考えているマッドサイエンティストな博士というのが意外性があり、テーマ的にちょっと難解さも少々感じるのだが、そういうテーマを持っていながら、小難しく説教臭くならずに、それでいて個人個人が個性を持ち、それを大事にすることの大切さをちゃんと描いていて、メッセージ性もしっかりとある映画になっていて素直に良かったと思えた。パラダピアで数日過ごしたジャイアンとスネ夫、そしてしずかちゃんが心を失って操り人形のようになっていくという展開はトラウマものでけっこう怖く、秀逸。ドラえもんと同じネコ型ロボットであるソーニャとの対比も面白く、最初は子守ロボットとして作られたドラえもんがソーニャに自分たちが生まれた理由を語る言葉はまさに「ドラえもん」という作品を象徴するような言葉で、とても印象深かった。四次元ゴミ袋や天気雨(狐の嫁入り)、そしてのび太が見つけた不思議な虫といった前半に何気なく登場した物が後の伏線になっているのもうまい。クライマックスはドラえもん映画にしては珍しくのび太たちの住む町内が舞台となっているが、考えてみれば古沢良太は山崎貴監督の三丁目の夕日シリーズ(アニメ版が「ドラえもん」の裏番組だったらしい。)の脚本にも参加しており、それもあってか山崎監督の手掛けた「STANDBYME ドラえもん」を少し意識している部分もあったのかも知れない。ソーニャがパラダピアの爆発と共に消えるラストは「鉄人兵団」のリルルを思わせるものがあり、感動的。もう少し書かせてもらうとその直前にソーニャがドラえもんたちのタケコプターを撃っていくのだが、最後にドラえもんのタケコプターを撃つシーンの演出がまるでドラえもんが射殺されたかのような描写になっているのはビックリしてしまった。母に勉強会と偽ったり、最後の最後、0点の答案が落ちてきて母に怒られるのび太というのは「竜の騎士」を少し前に見ていたので、思わずニヤニヤ。のび太の両親が二人だけで食事をしているシーンがあるのだが、その怖いくらいの異様な静けさもすごく印象的だった。[DVD(邦画)] 8点(2024-07-15 00:12:05) 18. 真・仮面ライダー 序章(プロローグ) <OV> 《ネタバレ》 仮面ライダーシリーズがテレビでの新作を休止していた90年代に作られたシリーズ初のVシネマ作品。初めて大人向けを意識して作られたということでテレビや映画ではなく、Vシネマでやったのは正解だったように思う。冒頭から描かれる殺人シーンからして残酷なのも「クウガ」以降ならともかくこの時代の特撮作品ではあまり見ないような描写なのが当時としては斬新な感じだし、登場する仮面ライダーもヒーローというイメージは皆無で、いかにもな怪人バッタ男(変身シーンからしてかなりグロテスク。)という感じのデザインなのも、原作者である石ノ森章太郎が本作を0号と言っていたようにこのバッタ男から仮面ライダーになっていくまでを描きたかったのだろうというのがよく分かり、興味深いところではある。(同様の構想は初代の時点で既にあったらしいのだが、さすがに出来なかったとのこと。)でも、作品全体で見るとテンポがイマイチ悪く、あまり乗れなかったというのが本当のところで、退屈に感じる部分も多かった。確かに主人公とヒロインの関係の描き方などは平成以降の仮面ライダーでもやらないような描写が多く、(そりゃ、朝の子供番組だからね。)大人向けといえばそうなのかもしれないが、80年代以降の東映映画らしいエロさを感じてしまい、なんか戸惑った。(東映のそういう路線、苦手なのかもしれない。)タイトルに「序章」とあるように、明らかに続編がある終わり方をするのだが、なぜか続編は作られておらず、中途半端なまま終わってしまったのがそれでも残念。[DVD(邦画)] 4点(2024-07-07 23:53:20)(良:1票) 19. シン・ウルトラマン 《ネタバレ》 新ウルトラマンと言えば「帰ってきたウルトラマン」(ジャック)をどうしても思い浮かべるし、脚本ほかを担当した庵野秀明監督も「帰ってきたウルトラマン」のファンということもあったので「帰ってきたウルトラマン」のリブートでも良かった気がするが、初代ウルトラマンのリブート映画である。樋口真嗣監督と庵野監督の前回のコンビ作である「シン・ゴジラ」はゴジラ映画としてはやや異質ながらも災害映画としてリアリティがあり、こういうゴジラが見たかったと見終わって思わせるものがあったが、今回はウルトラマンという素材を使って自由に遊んでいるという感じで、映画としての完成度は高くなく、むしろ「ウルトラマン 怪獣大決戦」などのウルトラマンのテレビシリーズのエピソードをオムニバスに並べた映画のような印象があるのだが、それでも面白かった。一方で、ウルトラマンを最初にデザインした成田亨の初期デザインのとおりにカラータイマーのないウルトラマンや、パゴス、ネロンガ、ガボラの三体が似ていると言及があるのも、「ウルトラQ」や「ウルトラマン」に最初に出てきた個体が同じ着ぐるみから作られていることを知っていれば思わずニヤリとしてしまうのだが、同時にそれが原因でけっこうマニアックな映画に感じてしまうのも事実で、最初から万人受けを狙っていないようにも思えるのは庵野監督らしいところかもしれないが、ちょっと残念。オリジナルは最終回の最後まで正体が周囲に露呈することがないというのが好きなのだが、本作ではザラブのくだりで周囲に正体を明かすという展開で、オリジナルでザラブ星人が登場するエピソードである「遊星から来た兄弟」の同じ部分を考えるとこの方が自然に見え、ここの部分の脚色は良かったと思う。メフィラス(山本耕史の独特な演技が印象深い。)の力で浅見(長澤まさみ)が巨大化しているシーンはオリジナル(「禁じられた言葉」、私の好きなエピソードです。)の巨大フジ隊員よりも登場時間が長かったように思えたのも個人的には良かった。そしてゼットンだが、これがもう見るからにエヴァの使徒でこんなのいたよねという形状で、怪獣ではなく、最終兵器という設定にも違和感を感じるも、ちゃんと脅威が感じられるものになっていて、何より一兆度の熱線というのにちゃんと触れていたのは嬉しかった。ただこのゼットンを持ってきたのがゾーフィという名前なのはゾフィが悪役のように描かれているように感じられてしまい、どうしてもここだけ抵抗感が残る。ラストシーンもウルトラマンと分離した主人公がただ目覚めてエンドロールが流れ始めるのではなく、もう少し何か欲しかったような気がする。感想が少しマニア目線になってしまったみたいだが、まあさっきも書いたように楽しめたし、全体的に見ても嫌いではない映画だ。それともう一つ、宮内国郎の劇伴を使うなら、主題歌は「ウルトラマンの歌」をそのまま使っていたほうが良かった気がしないでもない。[DVD(邦画)] 6点(2024-06-30 23:55:48)(良:2票) 20. 映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021 《ネタバレ》 オリジナルを見る度に疑問に思っていたなぜビッグライトを使わないのかということに対する説明や、映画に登場してもいつも冒険には不参加の出木杉に対するフォローがしっかりされているところは素直に嬉しかったし、脚本的にもおおまかにオリジナルの流れを踏襲しながら、それでいて本作オリジナル部分も違和感を感じることなく盛り込まれていてよく出来ていたと思う。とくにオリジナルキャラクターのピイナの存在がうまく活かされていて、この存在のおかげでパピのキャラクター性が高まっていて、恐怖心や子供らしさといったのび太たちとなんら変わらない少年らしい部分をうまく描き出すことに成功しているし、パピの演説がピリカ人たちの蜂起につながるクライマックスの構成はオリジナルよりも説得力があり、とても良かったと思う。ドラコルルは本作でも知的な策士として描かれているが、それ以上に単なる悪役に収まらないような人間味が強調されて描かれていて、ギルモアの忠実な部下である軍人でありながら、心の中では決してこの戦争を望んでいるわけではないと垣間見えるところや、ジャイアンに捕まって降伏するかわりに部下の安全を保障するようドラえもんに頼むシーンなどはドラコルルの部下に対する思いのようなものが伝わってくるし、その直前の副官の行動もドラコルルの人望の厚さをじゅうぶん物語っている。特撮映画が題材の一つということもあってか、実際のミニチュアセットを合成したシーンもあるのはなかなかだし、それによって劇場版らしい迫力も増しているように感じる。欲を言えば映画撮影のシーンでピシアの戦艦を故障させるのはジャイアンであってほしかったところで、オリジナルで楽しかった映画のパロディーがほぼ無くなっているのが少し残念に思うのも本当のところなのだが、それはまあ些細なことかもしれない。挿入歌の「ココロありがとう」はオリジナルで「少年期」が挿入歌として流れるシーンで流れるのだろうと思っていたら、違ったのでちょっと意外に感じた。[DVD(邦画)] 7点(2024-06-09 18:42:16)
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