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1. ワイルドバンチ
《ネタバレ》 おとこ、おとこ、おとこ。おとこ三っつでペキンパー!なんてふざけるのはこの偉大な傑作に対して失礼でした。すいません。でも、好きとか嫌いのむこうでなお、あまりの高みで冷たく輝き続けるマイナス一等星のようなこの映画を真面目な顔で取り上げるのは逆に少し気恥ずかしいのでした。美しくないものが宿している神々しい何か。強くないものがうちに秘めた強靭な何か。失われてゆくものが最後に高々と掲げた永遠と繋がる何か。滅びてゆくものが最後に叫ぶのは、”滅びたくなんかねえんだ!”っていう至極当たり前の叫びなんです。ろうそくは最後に明るく輝くのかもしれません。恒星も最後に明るく輝いて爆発するのかもしれません。線香花火でさえ、最後は明るく火花を散らすのかもしれません。でも、暴力の時代を生きぬいた男達は最後に、にやりと笑みをかわして死出の道をゆっくり行進することしかできません。それは生の輝きなんでしょうか?生きた証なんでしょうか?違います。そんな美しいものじゃあないんです。馬鹿馬鹿しい、無意味な、生きるに値しなかった、虚しいばかりの、汚らしい、卑しい、つまらない、罪深い、どうにも救われようのない人生の最後を、それでも背筋を伸ばして、真っ直ぐ歩く。その真っ直ぐ歩く道のりは、きっとたとえようもなく美しいんです。彼ら自身の醜さとは関係なく。暴力の詩人、なんてペキンパーを人はいいます。違うでしょう。20世紀後半に人間が詩情を保とうとしたら、暴力的でいる以外にいったいどうしたらいいというのでしょう。イーストウッドの『許されざる者』が声を大にしてそうする25年も前に、とっくにこの映画が”いわゆる西部劇”に引導を渡してたんですよ、アカデミー会員様。[DVD(字幕)] 10点(2005-10-10 03:25:54)
2. 用心棒
《ネタバレ》 おもしろい!おもしろい!かっこいい!かっこいい!かっこいい!見終わった直後はやっぱりそうとしか言えません、こいつに関しては。“切られりゃあ痛ぇぞ”その後の電光石火!その後の袋手の背筋の伸びっぷり!”まあ聞け、おやじ”その余裕!”哀れな奴はでぇ嫌いだ!めそめそしやがるとたたっ切るぞ!”そう言い放った顔の苦悩!そういいながらも哀れな奴を助けて自ら危ない橋に足を踏み入れる、そのいさぎよさ!そのかっこよさ!いちいち言ったら全部のカットに感嘆符をつけなきゃすまなくなりそうです。映画史上最高のハードボイルドヒーローでしょう、三十郎は、きっと。ボガードだってかなわないもの、減らず口とやせ我慢のむこうの背筋の伸びっぷりったら!ヒーローの条件、ってきっとこの背筋の伸びっぷりだと思う訳ですよ。マックイーンしかり、イーストウッドしかり、ブロンソンしかり、ボーグナイン(ワイルドバンチ!)しかり。並みいる男達のなかでも図抜けてやっぱり三十郎!というか三船敏郎!なんですよね。またこの映画、脇がいい!山田五十鈴姉さんのまあ憎々しいこと!仲代達矢のまあニヒルなこと!東野英治郎のまあかいがいしいこと!加東大介の天真爛漫なこと!いちいちみんな心憎い訳です。これぞ娯楽映画、これぞエンターテイメント!ラストの三船の最高にかっこいい台詞まで、かっこよさがとにかく画面の隅っこにまで溢れかえってるような映画です!古いから,とか、白黒だから、とか、巨匠の名作なんだろ、とか、台詞が聞きづらいんだろ、とかで観るのを止めてしまってるのは余りにもったいないですよ!かっこいいってつまりこういうことだもの!かっこいいおとこが観たい男の子や女の子はこいつを観るべきですよ!僕は元気が無くたったり、自信がなくなったりしたらこれを観るようにしてます。元気や自信がわいてくる訳じゃないけど、かっこいいおとなになりたかったんだよな、俺、ってのを思い出させてくれるから。やっぱり、かっこいい、って男の子には最優先だと思うんです。こういうほんとのかっこよさが。かっこいい!!10点(2004-02-10 03:19:33)(良:1票)
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