みんなのシネマレビュー |
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1. ハート・ロッカー 《ネタバレ》 それなりにまとまっていて楽しめた、というのが当初の感想。 それで6点にしていたんですが、映画の舞台は実際のイラクなのに、リアルな諸問題とは一切関係なく撮ってるってどうなの?と後になって考えさせられ、結果この評価に。考えれば考えるほど、やっぱりこの映画、根本的におかしい...現在進行形の問題を置き去りにしての映画作りは、監督の感性や人間性を疑われてもしょうがないかも。 世界中の劇場で上映される作品を作る、映画人としての良心どーのこーのなんて関係ない。アタシはこういうのが好き!みたいな感じがするところは、女性の怖さかも。 地味な内容ながら、映画としてはうまくまとまっていて、私は8点とか9点の映画並みにおおむねテンションを保って見ることができました。 ?なシーンや、妙に長く感じるシーンもあったと思うけど、あまり気にならない。映画製作のテクニックは、高いレベルに達しているからなんだと思います。 ビグロー監督の昔の映画、ハートブルーの時もそうだったと思うけど、映像がこぎれい。人物や色彩など、戦争映画にも関わらず心地よい絵作りで見ていて安心感がある気がします。女性監督ならでは? 監督が描きたかったのは命を危険にさらしてまでプロに徹する男、それにつきるのだと思います。プロフェッショナルXとか、そういう視野、視点を感じました。描く世界が極端に小さいのはそのせいでしょう。 アカデミー賞をざくざく取るような映画ではない筈ですが、アメリカ軍の登場する映画で、ひさびさに軍や米国が正面から悪として描かれてないから取れたのではないでしょうか。競合作品もなく、タナボタ。 しかし今、現在進行中のアメリカ軍の今を描いといて、反省とか批判精神を色濃くしないで作品を完成させられるって、やっぱり男性監督ではできないのでは。戦争という最大のインパクトをもたらすシチュエーションを単なる小道具として使う大胆さ…映画によってはそれがOKな場合もあるかもだけど、この場合はやはりNGでしょう。イラク側が米軍に感謝して撮った映画とかならまだしも。女性ならではの感性が悪い方向に出てしまったようでなんだか悲しい。 ジェームズ役のジェレミー・レナーがよかったけど、この映画の場合は冒頭に書いた理由で後味がどんどん悪くなってきてしまいました。 ザンネンです![映画館(字幕)] 0点(2010-04-14 17:16:18)(良:1票) 《改行有》 2. ラブリーボーン 《ネタバレ》 予告編は明るい雰囲気だったので、殺人というエピソードはあるものの何か爽やかな映画なのかと勘違いして見に行きました。 物語は死後の場面から始まるのかと思いきや、スージーが死ぬまでのプロセスがじわじわ描かれ、性犯罪や猟奇的な題材は最近めっきり苦手になった私は、うんざりしながら鑑賞。 犯行場面そのものが詳細に描かれているわけではなく、イメージや連想させる手法ですが、私には十分でした。女性、それも全く抵抗力のない少女に対する暴力...かなり残酷で、知ってたら観なかった...と思いました。まさに穴の中に入って行ってしまったスージーと同じく、後悔しても遅かったです。 また、ロード・オブ・ザ・リングのピーター・ジャクソン監督ということで、すかっとするような壮大な風景が観られるかなと期待していたのですが、それほどでもなかった...。舞台をあの世とか天国に設定すると、結構イメージはありきたりで広がらないものなのかも。 犯人役の最期もとってつけたようで、観客サービスみたいな感じがしましたが、まったく納得いかず、消化不良な感じでした。死というものを軽々しく扱ってるなぁという感じが否めません。 死後も魂は生き続けるどうこうというモチーフがなんだか全然効いてませんでしたね。そういう系の映画ならスピルバーグの「オールウェイズ」の方が数段ましだと思いました。 ただ、主演のシアーシャちゃんの、今しか出せないであろうキラキラ感がよかった。彼女がとっても可愛かったです。 ちなみに死後の世界とか言って、あまりにも人生や生というものを都合よく考える人たちが多すぎると思います。死んでもまた会える、なんて本当に甘美な思想でハマる人はハマってしまうのでしょうが。[映画館(字幕)] 5点(2010-04-02 22:20:09)《改行有》 3. コララインとボタンの魔女 《ネタバレ》 アニメに全く興味のない自分でも、不思議なほど楽しめました。 物語の展開はありきたりな感じで、あちこちほつれはあるように思うのだけど、とても面白く観ていられました。ほかにどこにもない、いままで観たことのないようなオリジナルな映像の連続だからでしょうか。 アニメは、人形を使ったものにしろ、動画アニメにしろ、表現に関していろんなことが省略されるのが当然のようで、しばしばその表現不足さに、観賞中気が散ってしまったり気がそがれてしまうのが普通なのですが、この作品にはまったくそういう時間がなかった気がします。 作品への、物作りへの、ものすごい情熱、愛情があふれているという感じかなあ。 どう見てもかわいくない主人公が演じているのに、全然退屈しないのは何故なんだろうと考えたりしました。 いまどき風の親と冷静な子供、という構図には「千と千尋~」を思い出させるものがありましたが、こっちの方が先なのかな。もう一度、味わうように観てみたい映画です。[映画館(吹替)] 8点(2010-03-30 01:49:27)《改行有》 4. ワンダとダイヤと優しい奴ら 《ネタバレ》 私にはツボです...マヌケの全てを知りつくした人が書いて、演じてるハイセンスな映画。うすっぺらいパンに、シンプルな具材を分厚くサンドしたイギリス風のサンドイッチを思い出すような作品。 うすっぺらいパン、というのはタイトルにもなってる、ワンダと名付けた魚をこよなく愛するオッサン(ケン)のエピソード。これがきちんと冒頭と結末に来て、物語をサンドさせてるところが、何とも言えず好きです。 タイトルが出る時、おサカナがクローズアップするところで爆笑。 原題「ワンダと呼ばれた魚」から見れば、この映画の真の主役は、実はこのおサカナなんですからカメラ目線のワンダ(魚)のクローズアップを投入するのは道理ですよね。 たまりません(笑 その際流れる音楽も、ソープオペラ&メロドラマ調で最高です。 この映画はこんなにも下らないんですよ~と暗に華々しく発表されてる感じでときめきます。 私が最もツボなのはアーチーの奥さんのキャラ(ウェンディ)。 彼女とケヴィン・クライン演じるオットーとの掛け合い、最高。 オットーが口ごもりながらテキトウに言ったおかしな偽名を、しばらく経ってから完璧な再現で呼び掛けるところとか! 残忍な目をしたアメリカ人の単純バカ男を演じているケヴィン・クラインも出色だったし、アーチー役のジョン・クリーズには言うことないし、ケン役のマイケル・ペイリンもうますぎるなぁと。 人を嘲笑するのじゃなく自分を笑う類の笑いのセンスがベースだから安心して笑ってみていられました。 ジェイミー・リー・カーチスのいかにもアメリカ美人を強調したダサ系なファッション、面白いです。ほしのあきみたいなスレンダーに爆乳なグラマーぶり、すごかった。 トゥルー・ライズもまぁまぁだけど、やっぱり彼女はこの作品が一番輝いてますね。[地上波(字幕)] 9点(2010-03-30 01:32:09)(良:1票) 《改行有》 5. Dr.パルナサスの鏡 《ネタバレ》 どんな感じか予想できていたので、観に行こうと思いつつ、腰が重くなる一方でしたがヒース・レジャーの最後の出演作だし、もしかしたら意外に面白いかもしれないしね、と少ない期待を抱きつつようやく観にいきました。 感想は...だいたい予想通りでした。予想をちょっと下回った。。。 動く絵画展、みたいな感じで楽しめばいいのかなと思います。 ジョニー・デップ以外のシーンでは、顔が変わる必然性がシナリオの展開にあまり組み込まれてなく、やっぱりヒースの不在は苦しかった。 テリー・ギリアムワールドの忠実な映像化には膨大な予算が必要だなあと思いました。予算不足と折り合いがつけられない監督なのかな、という印象があります。 ともあれ、何かと製作上のトラブルが多いギリアム作品が、ぶじ日の目を見れてよかったです。 ワールドを表現するのに、監督が自分だけでできる方法(絵画や小説など)とか、小規模な製作(フィギュアとかアニメとか)を見つけることができれば、ギリアムワールドがもっと世に出れるんじゃないか、なんて思いました。 ストーリーもグダグダ感があったのですが、脚本も監督なのか....。[映画館(字幕)] 5点(2010-03-03 23:23:26)《改行有》 6. しあわせの隠れ場所 《ネタバレ》 サンドラ・ブロックのアメリカ版「肝っ玉母さん」ぶりが素晴らしかった。気が強く、self-determined、元気で働き者の、プチセレブ母さん。今までで一番ハマっている役ではないだろうか。実は本人には全然似ていない、マイケル役のキャスティングもかえって良かったと思う。 ファミリー物にありがちな、「子供が活躍するシーン」がいかにもな感じでちょっと白けたけど、まぁ、いいか。。 監督としては、アメリカの抱える貧困や黒人スラムの問題に踏み込みたいところかとは思うが、それでは映画のトーンが重くなり、観客が限られてしまう。 この作品は、そういったことを軽んじて描いてはいないと思うが、ストーリー上の背景として描き、多くを語らないレベルで留めている。まず楽しんで見られ、素直に感動できる作品。 アメリカを旅したことがある人なら、アメリカは国土だけじゃなく、ハートもビッグだなと感じたことがあると思う。 私もロスにホームステイした時、他人を信じて受け入れるアメリカ人の心の広さ、鷹揚さを身をもって感じた。 他人を家にあげ、泊まらせて、家族同然に一緒に暮らす。気楽にしていてね(make yourself at home)。ステイ中、この言葉を何度も聞いた。 他者を助けるという、人として当たり前の精神が、キリスト教を通じて最も基本の宗教観として、根本的に尊ばれている国なのかもしれない。 どこの国にもチャリティーという形で他者を援助しているスターは多いだろうが、血のつながらない子供を自分の家庭に受け入れているスターが多い国はダントツでアメリカだろうと思う。他人を家族とわけへだてなく助け受け入れようとするのは、やはりアメリカ独特の文化性で、日本にはないものだ。 なので今回のこの映画のストーリーは、アメリカでは、別にそれほど珍しい美談の類ではないと思う。GWに公開予定だという「プレシャス」しかり、なぜ今、こういう映画なのか... 白人優位社会だったアメリカは、本当に幸せな国になるために何をすべきかようやく見出し、やっと隣人に目を向け始めたのだろうか? それにしても、原題の「ブラインドサイド」という観客に問いかけてくるようなキリッとした感じを、もうちょっと邦題に活かせなかったのだろうか....。 [映画館(字幕)] 7点(2010-03-03 17:33:55)(良:2票) 《改行有》 7. イングロリアス・バスターズ 《ネタバレ》 どこをどう楽しめばいいのか、いまいちよくわからなかった。監督がここを楽しんでくれ、という感じで出してきていて、それを楽しめるのが一番気持ちいいのだけど... 冒頭の緊張感あふれる二人の俳優の芝居もおもしろかったし、とにかくブラピとバスターズ以外の俳優さんたちの演技がなんかすごくよかった。最初から最後まで、いろんな素晴らしい俳優のショーケースみたいな映画。 でもやっぱり映画はもう少し、ストーリーとかメッセージで魅せてほしいと思う。多分タランティーノ監督はストーリーよりもストーリーテリング、語り方とか語りそのものに凝る人だ。映画全体に流れる勢いみたいなものがあれば、そこに偏りぎみの映画でもいいけど、今回はちょっと血液ドロドロというか、動脈硬化というか....なんか映画のラストに突き進む勢いがなくて、なんかもう現役を引退した変態ジイサンがネチネチ攻めてくるという感じだった。それぞれ、芝居の時間が長過ぎなのかな...タランティーノ監督はトゥルー・ロマンス、レザボア・ドッグス、パルプ・フィクション、フロム・ダスク・ティル・ドーン、が好きな作品で昔のばっかりだなあ。キル・ビルもヒットしたのかもしれないけど、最近はなんか...どうなってんのかなって感じです。[映画館(字幕)] 6点(2009-11-26 18:04:59)(良:2票) 《改行有》 8. マイケル・ジャクソン/THIS IS IT 《ネタバレ》 映画制作というのは時間がかかるのが普通ですが、本作は映画らしくないタイムリーな作品である点がとにかく良いです。みんなが知りたいと思っている情報を、大スクリーンで伝えてくれる作品というのはもっとあっていいと思います。あまり例のない、特殊なジャンルの映画として10点にしました。 本物の音楽ライブの魅力を愛する人には、こういう作品はテンションが下がるのかもしれませんが、ライブに行ける人は限られています。もしMJが日本にコンサートしに来てくれても、私が観に行けたかどうか...また、コンサート形式だったらMJがみんなに伝えたかったことが果たして世界中のこれだけ多くの人に、深く伝わっただろうかと思いました。 地球破壊、環境破壊に関して、時間がない、とはよく言われていることです。あと4年以内に、とMJは言ってましたが、彼が最高の唄とダンスを何に捧げているかを感じとってもらうことがMJの望みなんじゃないかなと思います。MJの人柄、唄とダンス、そこに目が奪われますが、彼が伝えたかったメッセージの大きさを思うと、そのために犠牲になったんじゃないかという気さえしてしまいました。[映画館(字幕)] 10点(2009-11-26 17:48:04)(良:1票) 《改行有》 9. ロスト・ハイウェイ 《ネタバレ》 わかりにくい映画は減点ですが、監督はこの映画を「わかりにくい映画」に作ってないです。乱暴な言い方をすれば、男女の「よくある話」をリンチ流に映画化しただけというか。 現実の記憶以外に、ひとの頭の中には詰まっているもの。 夢の記憶、何かで観たイメージの断片、誰かに聞いて想像したこと、願望、妄想...これら非現実に属する事柄も、「ストーリーを語る上で有効」と思えば、当然の如くに現実と並列に映像化するのがリンチ監督です。 前半で、刑事にデジカメを持っているか訊かれて、主人公のフレッドがこう答えるシーンがあります。「I want to remember things in my own way.=自分の見たとおりに記憶しておきたい(から、デジカメはいらない)。」 この映画に描かれているのは、全編がこのクレイジーなサックス吹き、フレッドの世界観です。彼は自分がうすうす察知していることも、自分にとって好ましいことでなければ無視する。行動を起こすなんてとんでもない、察知したことさえ否定したい人間。 その類まれなる内向性のせいで、当然もやもやしていく感情を、ただサックスにぶつけて生きている。彼は深刻な性的不能に陥っていて、妻の浮気を疑っている。でも、気づいていることを自分自身にさえも言わない。そういうことが絶対にあってほしくないし、あるわけはないと信じ込もうとしている。非常に危険な男です。 この映画にはフェロモンとかエロとかセクシーとかいった軽いノリではない、ものすごく真剣で重苦しい、1人の女への男の愛(と呼んでいいのかどうか..)が描かれています。 解釈にはいろんなバージョンがあると思いますが、私の解釈はフレッドという男が、自分の女を殺したあとも自分の中でそのことを認めず、自分だけの妄想の中で、いろいろなバージョンで彼女を登場させ、愛していく。愛する彼女が(ヒロミ・ゴーの唄ではないですが)少女で娼婦でAV女優で金髪で黒髪で妖精で悪女で…イメクラですか?というほど妄想を広げます。そこでは、彼はもはや性的不能ではないし、むしろ精力旺盛な男(ロラント)の女になっている彼女を寝とる、スーペリアーな存在と化しています。フレッドのスイートかつ狂った妄想が終わりを告げそうな所で、映画はラストを迎えます。真実を認識したフレッドがどうなったか...刑務所でサックスを吹ければ、こんなことにはならなかったのかも。[DVD(字幕)] 9点(2009-05-06 02:06:46)《改行有》 10. タッカー 《ネタバレ》 そう、製作はジョージ・ルーカスなんですよね。 実話に基づくこの映画のストーリーが、都合よくつくってあるものなのか、そのあたりはよくわからないんですが... 誰も見たことのない映画作りに格闘を重ねてきたルーカスとコッポラが、理想のクルマ作りにまっしぐらに突き進んだ1人の男、タッカーと、タッカー社のクルマに魅かれるのがよくわかります。私もタッカー車に乗ってみたくなります。 ハッピーエンドではないけど、すがすがしさのあるエンディングで好きです。ものを創ることの素晴らしさを感じられる映画。the man and his dream という、シンプルなサブタイトルが心に残ります。 ちなみに、まだあまり売れてなかった頃のクリスチャン・スレイターが出てます。彼は今どうしてるんでしょうか??[ビデオ(字幕)] 8点(2009-05-04 20:59:54)《改行有》 11. シューテム・アップ 《ネタバレ》 なんかすごく気楽に楽しめる映画でした。意外と面白かった! 劇場公開中だった「ザ・バンク落ちた巨像」にクライブ・オーウェンが出ていて、結構主演作が多いけどまだ一本も観たことがなかったので、観てみました。 まず、冒頭から「なんか音楽のつけかたが安易だなー」と思ったんですが、みなさんのレビューを見て、「ああ、コレB級映画だったのか、だからか」と妙に納得しました。 B級映画って、音楽で高揚感が出ないように細心の注意を払ってるかのように音楽がペタペタした感じですよね。 初めてマジマジと見るクライブ・オーウェン。名前はオーウェン・ウィルソンと間違えそうで、顔はシャイア・ラブーフにも似てるって言ったら怒られるでしょうか。 カッコ悪くはなかったけど何が魅力なのか、よくわかりませんでした。ガタイの良いおじさんという感じ。 映画じたいは、笑える場面が多くて(苦笑だけど)結構楽しく見られました。なかなかの娯楽映画だと思います。悪役のおじさんに、いまいち悪の雰囲気を感じなかったけど、こんなもんかな。こういう映画に異色な出演者、0歳児役の赤ちゃん俳優の撮影裏話とか、ちょっと興味あります。[DVD(字幕)] 6点(2009-05-04 20:13:01)《改行有》 12. ブロークバック・マウンテン 《ネタバレ》 自分でもなぜ10点ではないんだろうと思うのですが、やはり悲しすぎる映画だからですかね。救いはないです。それだけ現実的な話です。 興味を持てない映画でしたが、ダークナイトを見たあとに、あのヒース・レジャーが出演している作品ということで鑑賞しました。 平たすぎる表現ですが「素晴らしい」映画でした。フィクションにすぎないはずなのに、現実の事件に衝撃を受けたかのように、鑑賞してしばらくしてからも映画のことが頭から離れなかったです。特にヒースが演じたイニスのことが気の毒でたまらなかったですね。幼稚な表現ですが、でも素直にそう感じました。なんとも言えないラストシーンに描写されているイニスの気持ちを必死に検証して何か希望を持ちたいと思うのですが、難しかった。どうすれば二人で幸せになれたのか?答えがないんです。イニスと一緒になって、いつまでも悲しい気持ちを引きずってしまいました。 ワイオミング在住の作家、アニー・プルーがこの物語に「気づいた」きっかけは、地元のバーに行った際にふと目にした初老の男性だったそうです。にぎやかにビリヤードをやる男の子たちにじっと目をやっていた、その孤独感漂う男性を見た時、「何か」を感じたらしいのですね。つまり、その男性がイニスのモデルです。 「愛はいつだって純粋で完璧なのに、いつも社会や、外部の何かが邪魔をしてくる」サンドラ・ブロックが何かのインタビューで言っていましたが、この映画の二人もまさにそう。イニスとジャックの愛は完璧だったけど、その完璧さゆえに逆に、周囲を巻き込んでさらに不幸になっていく。 「愛ってスバラシイ、」ではなく「人間て。。。。」って感じてしまうから、音楽、脚本、撮影、演技、すべて素晴らしい映画だと思うけど、やっぱり10点はつけられないかな。[DVD(字幕)] 9点(2009-05-04 19:33:03)(良:2票) 《改行有》 13. ダークナイト(2008) 《ネタバレ》 エポックメイキングってこういう映画のためにある言葉だろうと思います。 2008年は、期せずして「崖の上のポニョ」も公開されてましたが、時代の流れに迎合せずに思い切ったやり方で作られた映画という点で、両者が共通しているのも感慨深いものがあります。映画館で4回観たのですが、DVD発売後にメイキングを観て、なぜこの映画がこんなに濃いーのか、納得しました。 いろいろカッコよかったですが、一部では活躍不足として不評だったクリスチャン・ベール。活躍しないところが、とてもカッコよかったです。そういう感じ方をするのは女性だけかもしれませんが。ちょっと森進一チックな声ではあったけど(笑。 言うまでもないという感じですが、ヒース・レジャーの挑戦もすばらしかった。この映画で初めて観たのですが、彼はいつもチャレンジしてた人なんですね。もう居ないのが残念です。彼だけでなく、監督をはじめチャレンジングな人たちが集まってチャレンジした、その結晶みたいな作品。チャレンジのほとんどが成功しているのがまた凄い。 ここまで達成されてれば、バットマンのガールフレンドのキャラクターとか髪型とかほうれい線がイマイチでも、もういいです。そのぐらいのことは軽く吹き飛んでしまう圧倒的な何かを受け取った映画でした。[映画館(字幕)] 10点(2009-05-04 18:45:28)《改行有》 14. デッドマン(1995) 《ネタバレ》 9をつけたい大好きな映画だけど、それじゃ思いやりがなくて自分勝手な感じがするので7、いや、やっぱり8はつけたい。 この映画が自分にとって最もリアルなインディアン映画で、アメリカの当時の原住民の生活を感じることができて好きなのと、音楽がやっぱりいいですよねえ。 女装の野蛮人も、すごくリアル。滑稽で、恐ろしい。本当に恐ろしいものはジョーカー然り、このように滑稽な姿をしているのですよね。 でも何より、映画を流れるこのタイム感覚がいいです。知らない場所、拠り所のない場所に来てしまい、少しずつ、自分のタイム感覚が侵食され、壊れていき、最終的に人生が純粋なプロセッシングと化していくブレイクさん。 電車の中で居眠りすると変な正夢を見たりするように(自分だけか)、夢かうつつか、現実か幻か、前世か来世か、キョクタンな話なのか、勘違いなのか、いろいろなことが何がなんだかわからなくなってくる不思議な感じ、とてもいい。 登場人物の名前が米英の詩人とかってとこが気に食わないけど、何かメタファーでもあんのか?ほんとにあんのか?あったとして、ほんとに映画に活きてくんのか?とかが気になるんですけど、追及する気にならず。意味ないんだったらステキだけど、意味があるならなんか嫌だな~。 最後、ノーバディの銃弾戦を目の前に、ようやく死へと旅立つブレイクさん。破壊、崩壊のピークがこれかい。しかし拍子ぬけはしなくて、圧倒的な美を感じますね。サイレントで。ウツクシイ。ポエム。ラストではこうして、おかしなフランス人になってしまう自分でした。 ジャームッシュ監督、最初の二作とこれ以外はなんだか全然だなあ。自分的には。もうちょっと、作るのかと思ってたけど...。[DVD(字幕)] 8点(2009-05-01 05:10:39)《改行有》 15. イントゥ・ザ・ワイルド 《ネタバレ》 原作を読んでいたので、映画化できるのか危惧してました。普通に描いたら「若者にはよくありがちな話」になってしまい、「こういう無鉄砲な若者っているよね~」で終わってしまうのでは?と。実際、「ああ、親が仲悪かったからグレちゃったのね...」としか思いようがないような、まとまった話になってました。そんなまとめで人生何事も済むなら、あのニーチェだって、奥さんと仲悪かったからああなった...みたいな、スケールの小さい話になりうる。。。もっとストーリーの余地が欲しい。題材をこなしきれてないという感じ。言葉や説明シーンを首尾よく配置して、全て解き明かす形で描くのでなく、観客の素直な「なぜ、どうして?」を大切にして描くことが、クリスの言わなかったことを描くことに繋がったはず。原作本は、作者のジョン・クラカワーが、この一件に「ありきたりでないもの」を感じ、総力取材をして生前のクリスと接触があった人たちの発言を集めたものが中心で、今となっては亡き人クリスが、実際どうしてそんなことをしたのか、本当のところは誰にもわからない。そのもやもやしたところが、クリスにまつわる話のもつ力であり、人間が誰でも持っている大きな衝動に通じているのに、ペン監督は何事も「白黒つけたいタイプ」の監督なんだなあきっと。ガス・ヴァン・サント監督が撮ったらもっと素材が活きたのかも。「ライ麦畑でつかまえて」の作者サリンジャーも、作品の映画化を断固拒否してるけど、こうなるのが目に見えてるんでしょう。 最大に残念だった点=主演のキャスティング。実際のクリスは、若い頃のディカプリオみたいな、ひょろっとした手足の長い青年で、いかにも夢想家の感じ。だからエミールみたいな、ちょっと野卑な感じのするゴツい体つきの人を持ってきてしまうと違う表現になると思う。なぜ彼がキャスティングされたのか...って、ハリウッド映画にそんなこと言ってもしょうがないか。いずれにしても、原作本が抱えている、なんとも言えないあの感じ、をうまく映画化することは、かなり難しそうです。(クリスの家族だって実在するのだろうから、その点もハードルでは?) ストーリーにはあまり関係ないけど、劇中トレイシーが歌うシーンがとても良かった!映画の中で歌って映えてることって、めったにないけど、ナチュラルで素敵だった。ああいう魅力あるシーンが主人公になかったのも、残念。[DVD(字幕)] 4点(2009-04-30 19:27:36) 16. タイタニック(1997) 《ネタバレ》 娯楽映画の傑作です。史実であり、実際、人が大量に死んでいるのに娯楽映画とは不謹慎な気もしますが... 恋愛映画にはほとんど興味がないのですが、ディカプリオとケイト・ウィンスレットの演技がリアルで、軸となる若い二人の物語にすんなり共感できました。 普通に演じたらケイトの添え物にしか見えないだろう役を、ディカプリオが自分で肉付けして、すごく素敵な青年(死語)に作りあげていて感動します。ケイト・ウィンスレットも、今ものすごく株が上がっていますが、やっぱり当時から抜きんでていたんですね。今の若い女優にはなかなかない、あの線の太さがとてもいい。可憐でもセクシーでもない魅力。貴重な存在ではないかな。 いろいろツッコミどころはありますが(例えば、二人が船内のクルマの中で結ばれるシーン。私にはギャグとしか思えない演出がありました)、タイトル通りのスケールの大きさに爽快感を感じます。 文字にしてみると単なるメロドラマのようですが、ケイト演じるローズは、貴族の名を捨てても自分の信じる生き方を貫こうとする清廉な女性。無名で無一文の画家とつきあい、相手の才能に惚れこんで、あの時代にヌードにまでなる。若さゆえのハジケ方とも言えますが、なんだか気持いい。 ディカプリオ演じるジャックは、浮浪児のようでいながら、出自など気にせず、借り物のタキシードで貴族のディナーに堂々と乗り込み、楽しんで帰ってくる。 二人ともマンガや偉人伝に登場するような大物系キャラクター。 この若い二人が劇中、最初から最後まで一生懸命生きている感じがして、とても魅力的です。[DVD(字幕)] 9点(2009-03-10 02:53:44)(良:1票) 《改行有》 17. A.I. 《ネタバレ》 自分の中ではバンザイ10点。 人が人を愛するのは、必ずしも「こうしてくれたから」とか、口で説明できるような立派さを備えているからではないですよね。私がこの映画を愛してやまないのも、そういうことです。ワケがわからないけど心魅かれ、いつまでも印象に残る作品。でも!自分にとってツボだからってここで10点をつけるわけには....確かに、映画としてかなりのとっつきづらさ・のみこみにくさがあると思うので。 目を引く高評価なポイント。美術というか、プロダクションデザイン。 未来のクルマ、衣服、住居、インテリア…SFなので、一から作らなければならないものがどれだけあったろうと思いますが、全体感が保たれていて、見ごたえがありました。SF映画では、一部を除いて結局しょぼい感じ・ちゃちい感じになっちゃったということがありがちですから…登場した宇宙人も、ちょっとトンデモになりがちなギリなデザインなのに器用にまとめていて、感心しました。 AIのロゴひとつを見ても、この作品をつくるのにいかに多くの労力と時間がつぎ込まれたか、いかにこの作品が監督にとって特別であるかということを感じます。まさに、ディヴィッドを創った博士の情熱そのもの。 故・キューブリック監督が温めていた膨大なスケッチやアイディアを忠実に映像化しただけでなく、監督自らの実験精神を最大に発揮しようとした、そんな印象があります。盛り込みすぎの感もありますが、めったに見られない世界を見ることができてかなり満足です。オマケが多すぎて、何が本体なのかわからない現象が起きてますが。そこら辺の凝り過ぎ感は私好みかな。基本のストーリーは「ママ&ママの愛を求めて」それだけですよね。 ちなみに、カワイイ♪ぐらいしか評価されていないテディですが、この映画での助演男優賞はテディでしょう。「人間になりたい」と言い続けるディヴィッドに何も言わず、どこまでもつきそい、できることをして助ける。ディヴィッドよりチャチなロボットのはずなのに、インプットされている以上のことをやっていたテディが泣けます。 最後に大きな奇跡を呼んだ、テディの小さな、愛らしい行為。観る人が観ればわざとらしいのでしょうが、私はあのシーンの詩的さが好きです。[DVD(字幕)] 8点(2009-03-10 01:46:36)《改行有》 18. 7つの贈り物 《ネタバレ》 論議を呼ぶ映画と言ってた人もいるそうですが、こんなのを見て論議してるのは時間のムダかなぁと。 こういう役、ストーリーを好んで選んだ主役の俳優さんは、とにかく、何かシリアスな役をやりたかったのか...あるいは、おカネを儲けすぎて価値観が狂っているのか? 映像はなかなかきれいだったけど、すごく迷惑な話。おしつけがましい宗教みたいな感じでした。主人公は精神的治療が必要です。 常識をはずれたことをやって大成功するという、みんなが大事にしている映画のマジックにツバをはいている映画に結果的になっていると思いました。 でも、黒柳徹子さんは絶賛してました。2回みると良いそうです。[映画館(字幕)] 3点(2009-03-10 00:57:13)《改行有》 19. フェイク シティ ある男のルール 《ネタバレ》 フォレスト・ウィティカーが出て来る映画って、何故かいつも期待感を煽る割にまったく面白くない(最近ではバンテージ・ポイント)ので、きっと今回もダメなんだろうなと思いつつ、キアヌの演技に期待して観ました。 館内は観客が私のほかに6人しかおらず、全員男性。 キアヌの刑事ものと言えば「ハートブルー」で成功した印象がありましたが、エルロイワールドのようなエグい世界には、やっぱりキアヌさんは 合わないかなーと。 ハードボイルドの一本調子な感じのキャラは、ニヒルな人やセクシーな人だと安心して見ていられますが、それは全くキアヌのキャラではなく。生身だけど不死身&無表情を延々と演じられてもなんだか人物が魅力的に活きて感じられず、むしろ心配に。 それでも、融通の効かない、KYな中年刑事(だからやっていけなくてアルコールに走る)というものを、きっちり演じていたとは思います。確かにベテラン俳優。 ここはキアヌだからすごく活きてくるな、と思うシーンは、セクハラ暴言をウィティカーにされてるところぐらい。 「お前をホモのコイツが襲いたがってるよ」ってところ。 群像劇というか、舞台が狭いせいか、ストーリーもチマチマした印象です。 全体的にもっとシャープなつくりにしてほしかった。俳優は皆、演技派だったけどそれぞれ芝居が長いかも。テレビシリーズの1話分ぐらいにまとめた方が面白かったんじゃないかと思います。 キタナイモノしか出てこないって分かってるのを、ジリジリと見せられるっていうのもなかなかだるい...クライム・サスペンスものが好きな人には、このまったりとしたトーンが楽しいのかもしれませんね。[映画館(字幕)] 5点(2009-03-10 00:35:54)《改行有》 20. バーン・アフター・リーディング 《ネタバレ》 予告が良かったので、海外DVDを購入して鑑賞。 感想は、「コーエン兄弟ってどんだけ...」。良きにつけ悪しきにつけ、どこか謎めいていて、かつそれを解き明かしたくなるコーエン兄弟映画。でも絶対にヒミツを教えてくれなさそうな... 前作「ノーカントリー」の面白さを、ほとんど解さなかった私ですが、今回の作品には笑いました。 シリアスな場面が、最終的には滑稽かつ笑えるシーンになり、結局、全体的に笑えてしまう。このオセロマジックを、兄弟はどうやってかけているのか...別録りした笑い声が流れるワケでもなく、役者もことさら笑いを取ろうとしてないのに、この可笑しさはどこから来るのか...。 見るからにコミカルに演じている監督夫人のマクドーマンドさんとブラピは、実はそれほど面白くなくて、一番笑ってしまうのは、一見まったくコミカルに演じてないジョン・マルコビッチ演じるオズボーン氏と、ティルダ・ウィンストン演じるその妻のシーン。これは何度見ても可笑しかったです。 考えてみると、ギャアギャア言う早口女性と、ボケラーとした男性という組み合わせは、コーエン映画によく登場するので、彼らの得意な分野(?!)なのでしょうね。 オズボーン夫妻のあまりに関係の破綻したさま...あっけにとられつつ、やはり笑い。 夫「大変なことが起きた」妻「頼んでおいたチーズは取ってきたのっ?!」 夫「...疲れたんだ」妻「はァ?どうして??」 夫「ずっと官僚主義と闘ってきて、うんぬん」妻「私の年金とかはどうなってるの?」 そんなに面白い会話でもないはずなのに、なんで笑っちゃうのか。 そして、なぜ、コーエン映画は深い感じがするのか? 謎はつきませんが、おいおい考えていきたいと思います。 あと、 ジョージ・クルーニーが、とてもカコワルいのですが、よく見るとシャツをやたら股上の深いジーパンの中に思いっきりイン状態にしていたりする...感慨深いです。[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2009-03-07 03:09:30)《改行有》
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