みんなのシネマレビュー |
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201. 転校生(1982) 《ネタバレ》 『転校生』は性別役割をコミカルに強調し過ぎである。あんなになさけない「女性」はいない。女性の役割ももっと毅然としていいのだ、レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」画のマリアのように。大林は『廃市』が最高。 [映画館(邦画)] 4点(2011-03-21 18:55:05)《改行有》 202. インデペンデンス・デイ 《ネタバレ》 アメリカは戦争が仕事の国で、ハリウッドはその宣伝省であることを実に明確に見せる。異星人は醜く描かれ、対話の可能性は一切無く、異星人からの「地球の独立」をアメリカ大統領が宣言するという、猛烈に政治的な映画である。[映画館(字幕)] 2点(2011-03-21 12:24:47)(笑:1票) (良:2票) 203. しとやかな獣 《ネタバレ》 『還って来た男』からすでに十八年(いや戦後十七年)経って、川島雄三の『しとやかな獣』(1962)が作られる。戦後の復興目覚ましく、都会も巨大になる。旧「海軍中佐」伊藤雄之助の一家が住んでいるのは新興公団住宅の高層集合住宅で、それも「エレベーターがない」安い方のタイプである。高い階に住んでいるので長い階段を上らなくてはならず、次の階に通じる階段が鬱陶しく入口に覆い被さっている。したがってこの階段は相対的な貧しさの証ではあるが、しかしまた一昔前の本物の窮乏からの段差であると呼ぶこともできる。家長としての威厳がほとんど地に落ちている伊藤雄之助だが、家族を一喝する言葉においてのみ圧倒的に存在する。 「おまえたちはまたあの時のような生活がしたいのか、雨漏りのするバラックで雑炊ばかり食っていた生活が」 この頃を境に日本映画から貧乏というテーマが消えてゆくのであって、同年に作られた浦山桐郎『キューポラのある街』では、貧乏だから人間がだめになるのか人間がだめだから貧乏になるのかなどといった問いかけが、記念碑的に響いている。そうすると『しとやかな獣』の家族は日本そのもの(隠喩)であり、空虚な「豊かさ」への昇格を体現する。この昇格は落下への不安を伴い、事実この建物から落下して死ぬ人物も出てくることになる。高度経済成長期の物象界にあってどこでどう階段から足を踏み外す羽目になるかは、もう誰にもわからない。そういうサスペンスでもある。因みに、男たちを手玉に取る「獣」若尾文子のヴォイス・オーヴァー(野心を吐露)が入るのは、秘かな長い階段を上るショットにおいてである。 [映画館(邦画)] 10点(2011-03-21 11:11:55)《改行有》 204. 晩春 《ネタバレ》 揺れる立木のショットが意味ありげに入っている。ゆったりとした、自然と人生という感じが溢れている。描き込みの多い『麦秋』に比べて簡素な構成により、小津の最高の作品となっている。[映画館(邦画)] 9点(2011-03-21 10:50:28) 205. おくりびと 《ネタバレ》 いい映画だが、映画館で観ているときから違和感のあった箇所を二つ挙げる。一つ目、「死」に触れて帰宅したモックンが広末に抱きつく場面がポルノ映画的になっている、つまり「死」に対する「生」の対置が窃視的な「性」に流れすぎ(省略技法が大切だ!)。二つ目、ラストのクライマックスにはモックンの一筋の涙だけで崇高なのに、広末がらみでなんだかんだ喋らせてぶち壊している。だから省略という方法がこの作品にもっとも欠けているものであって、それは作品の気品にかかわるのである。[映画館(邦画)] 6点(2011-03-21 09:57:49) 206. ディア・ドクター 《ネタバレ》 同質的であることを前面に押し出す芸風の鶴瓶ももちろん、何を考えているかわからないような他者である。このキャスティングがいい。ところで、見終わったときはかなりいい感じだったが、日が経つと印象が薄れていく。[映画館(邦画)] 6点(2011-03-20 23:32:00) 207. 書を捨てよ町へ出よう 《ネタバレ》 冒頭の「観客罵倒」は演劇で流行ったものであるが、それを寺山は映画観客に向けた。映画の中での映画観客罵倒は迫力を欠くが、まあ一度はやってみたかったことなのだろう。[映画館(邦画)] 5点(2011-03-20 22:12:38) 208. 海辺のポーリーヌ 《ネタバレ》 バカンスの海をバックにカメラの前に横一列の人物たち、というのがまず良い。背後にウィンド・サーフィンのボードの帆が風に吹かれている。まったく内的繋がりのない人物たちをまずはウィンド・サーフィンが繋いでいる。じつに浅い関係、恋も?キャンディー売りの女(恋多き女)があの「海辺」を移動して(唯一のトラベリング移動撮影)、恋の相関図にちょっかい…嘘だらけなのだが、べつに嘘でもいいじゃん、しあわせならば、というラストの「名言」がシビレル味。[映画館(字幕)] 9点(2011-03-20 21:32:38) 209. みゆき 《ネタバレ》 予想はしたがそれにしてものこの欄の低評価には驚く。私の、『メイン・テーマ』評に共通するのだが、80年代の「戯れ」表現は故意に平面的にされた明るさの裏に或る貴重な哀しみを抱え込んでいる。この作品では例えば運動場のシーン(囲い込まれた自由)が重要だ。そこに現れる「第三の女性」石原真理子のシーンなども大切なのだが、井筒和幸自身が自分の映画の良さをどうもわかっていないような気がする。私は映画館で観た後ビデオでも繰り返し見た。[映画館(邦画)] 7点(2011-03-19 13:28:00) 210. 空気人形 韓国の女優さんを使っての、こういう「隠喩的な」映画は、ただ恥ずかしい気持ちにさせただけだ。韓国の素材に触れるなら大島渚を通ってからにしてほしい(映画人としてそういう真剣さがないなら資格なし)。[映画館(邦画)] 1点(2011-03-19 11:17:36) 211. 歩いても 歩いても 《ネタバレ》 限られた場面で面白みを繋いでいく演出が立派である。この人がなんで『空気人形』なんかを撮るのかわけがわからない。[映画館(邦画)] 6点(2011-03-19 11:14:11) 212. 愛怨峡 《ネタバレ》 フィルムセンターでついに観ることができたときは嬉しかった。期待通りの凄い作品であった。映画館という「暗い部屋」でこの映画の暗さに包まれなければならない。ほんとうに暗い。だがこれは克服されるべき暗さであるというのが溝口の仕掛けなのである。堕ちたときから強くなる女性という溝口パターン。[映画館(邦画)] 10点(2011-03-19 10:32:04)(良:1票) 213. 用心棒 《ネタバレ》 まずは映画館を思わせる飲み屋の暗い空間からの「覗き」、次に火の見やぐらからの「高見の見物」をしていた三船が、やがて渦中の人となり危害を加えられ「目も当てられない」姿になる。やがて傷も癒えた三船による大掃除。クロサワの長所は、視のテーマが明確なことにある。[映画館(邦画)] 8点(2011-03-19 10:07:57) 214. ピクニック(1936) 《ネタバレ》 見上げるカメラと見下ろすカメラという区別。見上げるカメラは被写体の背後の空を呼吸し、晴れ上がった空の幸福が、画面いっぱいに広がる。ブランコという宙吊りの媒介の威力がそのとき驚異的である。ピクニックをしに田舎にやってきた家族の娘をどう誘惑すべきか、当地の二人のナンパ青年たちが策を練っており、窓をバンと開けると、ブランコに乗る当の娘の姿がある。なんとも美しい刺激的なシーンである。そして、寄りの見上げのカメラのなか、ブランコの娘は凧のように上に上に昇るかのようで、瞬間上へフレームアウトしたりする。男たちの関心は、娘のスカートのなか、猥雑な見上げ。 娘とナンパ男は、川岸にあがり、草上に腰をおろす。娘は「無垢に」見上げる。樹にとまる小鳥の姿が、娘の見た目ショットとしてカットインされる。「無垢な」見上げに小鳥は、苦笑を誘うほどに、いかにもふさわしい。その娘を彼が押し倒す。「無垢な」見上げが押し倒され、カメラは今度は濡れ場を見下ろすというわけである。 [映画館(字幕)] 10点(2011-03-18 22:27:33)《改行有》 215. 黒い罠 《ネタバレ》 ウェルズのローアングル手法(まさにこの作品で炸裂)が巨大な体積の「悪」ウェルズを見上げる。ジャネット・リーがいい。[映画館(字幕)] 6点(2011-03-18 15:41:39) 216. エデンの東(1955) 《ネタバレ》 あの問題のエリア・カザンである。赤狩り時代の汚点がアカデミー賞授賞式で再燃したのであった(アカデミー賞という環境もなかなかしぶとい、忘却しない、水に流さない)。本作品は、家父長制の甘ったるい美化である。家父長制に積極的に従うジェームス・ディーンという役柄(かっこわるい若者像である!)は、『理由無き反抗』にもある(監督は違うが、父親からエプロンを剥ぎ取るシーンの反動性)。カザン監督の作品は四つ観ただけだが、『アレンジメント』がいちばん良い(あとは『欲望という名の電車』と『草原の輝き』)。[映画館(字幕)] 5点(2011-03-18 14:24:35) 217. 突然炎のごとく(1961) 5点台という評価には本当に驚く。こういうかつては名作中の名作と目されていた作品が、その時代的文脈、その時代の映画館の暗闇から離れると、博物館のひからびた陳列物のごときものになる。すぐれた黒白映画というものは、映画館の暗闇に包まれてこそ輝く。[映画館(字幕)] 8点(2011-03-18 14:01:52) 218. キートンの探偵学入門 《ネタバレ》 キートンの最高。「探偵もの」の分、知的な仕掛けもある(身体能力についてはいうまでもない)。ラストの映画内映画のシーンは観客を翻弄する野心的な試みであるが、これは映画館にいないと実感できない。私はキートンに「ほとんど」見つめられていると感じてしまった。俳優と目が合ったとき映画が終わるのは、ありふれていようが、この作品こそが白眉なのである。[映画館(字幕)] 10点(2011-03-18 13:42:22) 219. キッスで殺せ! 《ネタバレ》 フィルム・ノワールのきわめて切れ味鋭いタイプと言おうか、暗く淀んではいない。核爆発で終わる映画の「The End」のマークは、まさに「一巻の終わり」。私は映画館の中で「被曝」して、この恐怖をしっかり味わった。公開当時「原爆で殺すな、キッスで殺せ」という標語も生まれたそうだが、いまや、「原爆」のかわりに「原発」で、「原発で殺すな、キッスで殺せ」。[映画館(字幕)] 10点(2011-03-18 13:34:56) 220. 東京の合唱 《ネタバレ》 失業の身でかつての先生と出遭う。先生と合同の見た目で「カロリー軒」の暖簾が揺れている、これが素晴らしいのだ。見た目(主観ショット)をサイレント期では小津はけっこう使用している。ロマンティックな甘めのエンディングだが、名作だ。[映画館(邦画)] 8点(2011-03-17 23:48:48)
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