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201. トイレット 《ネタバレ》 一度体験して、その素晴らしさを知ってしまったら、それがない生活にはもう絶対に戻れないもの。その例えとしての「ウォシュレット」なんでしょう。 もし今を記憶したまま、とつぜん30年以上前の昔にタイムスリップしてしまった、としよう。僕としては、スマフォもネットもYouTubeもないのはたぶん我慢できる。不便にはなるけど、煩わしさを感じることも多いし、こんなものたちはなければないで何とかなるよきっと。しかし、ウォシュレットは別格。もうこの爽快感と便利さを知ってしまったからには、それがない生活 (ウォシュレットの存在しない世界!) にはもう戻れる気がしません。 だからおそらくは、過剰な便利さよりも本当に一つだけ必要なものとは何だろう? といった問いかけのお話しなんです。 「システムの氾濫と腐敗」 見逃しがちですが、おもちゃ屋の彼が詩の朗読会で読んだこの言葉が意味深だったように思えます。荻上監督らしく、まったりとしたとぼけた味わいでしたが、本作は発展する過度な文明社会に対する監督なりの答えかもしれませんね。 もちろん、ウォシュレットにこだわらず、考えるもよし。 なくても大丈夫なもの、そして本当に必要なもの。 あらら、、なぜか今ある人間関係がたくさん浮かんでしまったわ (笑)[映画館(邦画)] 6点(2020-07-25 01:06:15)(良:1票) 202. レイニーデイ・イン・ニューヨーク 《ネタバレ》 公開中止を心配しておりましたが、まずは一安心。 のっけから、聴いてすぐにウディアレン監督とわかる音楽が相変わらずよいです。 それと、いつにも増して台詞をたくさん詰め込んだなあ、と。特にティモシー・シャラメにエル・ファニング、そしてジュードロウあたりは、まるで話していないと死んでしまう強迫観念にかられたように、よくしゃべります。 (そのジュードロウ、しばらく誰だか気付かなかった・・笑) その会話劇ですが、私は楽しめましたよ。映画監督、脚本家、俳優といった女好きの三バカに、インタビュアーは美人だけど頭の中がお花畑の田舎娘って、もう設定だけで勝ったようなもの。こういう、映画にまつわる大した仕事をこなす人らが総じて情けない感じで、最も一般人たるセレーナ・ゴメスのようなやさぐれたネエちゃんが誰よりも言葉に深みがあって冷静によく物事をみてる、それってやっぱり笑っちゃうよね。 強いて言うなら、雨とニューヨークといったロマンチックなキーワードに、撮影はかのヴィットリオ・ストラーロなので、忘れ難いような美しい一画を期待していましたが、それがなかったのが残念かな。 ではでは、ウディアレン監督。やはり私はこういうの、大好きです。今置かれている逆境はさておき、私はいつまでも支持します。[映画館(字幕)] 7点(2020-07-15 16:12:54)(良:1票) 203. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 - スペシャル・エクステンデッド・エディション - 《ネタバレ》 いよいよ第三部、最終章。 「王の帰還」という表題なんだけど、僕は心の中で「ミナス・ティリスに導かれし者たち」と呼んでいる。 城塞都市ミナス・ティリスの堂々たる佇まい、その荘厳さ・・。その姿はまるで天空の城ラピュタのよう、、まぁそれはさておき。 通常版ではいつの間にか死んだ (ことになっていた) 、サルマンと蛇の舌グリマ。卑劣な彼らに相応しい最後にスッキリ、ついでにストーリーがキレイにつながってモヤモヤがスッキリ。 アラゴルンたちが死者の軍勢を連れて海賊船を乗っ取る過程、ここもキレイにつながりましたね。 そして、ガンダルフとナズグル王の対峙、これはもう鳥肌モノでしょう・・。白の魔法使いと黒い悪魔の戦い、これは「絵」としても、まちがいなくシリーズ最高峰でした。 さて、SEEを通して鑑賞した総評。 当然ながら、登場人物たちの知られざるエピソードが追加された分、彼ら (彼女たち) の人物像をより知ることができてよかった。通常版では見えなかったエピソードたった一つでも、その人の印象は大きく変わり、そして新たな人と人のつながりによって世界もまた広がった。例外的にフロドとサムのエピソードは通常版からほぼ過不足ないため、あくまで指輪の主たる彼らのエピソードを軸にスリム化して劇場公開されたのだろう、と改めて感じることもできた。 しかしながら、今回、通常版の未公開映像を堪能できて嬉しい反面、これほど重要なエピソードを知らずにLOTRを観ていたのかぁ~ という落胆の気持ちが少しだけあったことも確か。何より、渾身の演技をカットされた役者たちの心境を考えると不憫でならない、、。特にボロミア、ガラドリエル、エオウィン、サルマン、、(泣) 願わくば、1つのバージョンでスパッと! そこは本当にお願いしたいです。 最後ですが、原作者の想像力、この世界観を映像化するにあたり、作品に携わった膨大な労力、、その力には頭が下がる思いです。 そして、役者たちは、登場人物たち一人一人に魂を吹き込んだと思う。 第一部から通して680分、この世界に退屈することなど僅かたりともなかった。 今は、ただただ「指輪物語」の世界にどっぷり浸った幸せでこころがいっぱいだ。[DVD(字幕)] 9点(2020-07-01 14:48:26) 204. ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 - スペシャル・エクステンデッド・エディション - 《ネタバレ》 「二つの塔」って、サウロンとサルマンの邪悪な権力を象徴する表題なんだけど、僕にとって第二部は騎士の都ローハンにまつわる物語なんだ。 だから、SEEではローハンという国の内情、セオデン王、エオメル、エオウィンの三人がより深く掘り下げられていて、とても満足でした。 個人的にエオウィンを演じたミランダ・オットーが大好きなので、彼女のエピソードが追加されていたことは本当にうれしい。セオデン王の息子の埋葬で、彼女が捧げた歌の悲しくも美しい響き・・。彼女ひいきを抜きにしても、この埋葬は心を打つ名場面の一つだったように思う。彼女がアラゴルンに手料理のシチューをふるまうシーンもよかったな。味はイマイチだったようだが、彼女の家庭的な一面が見れて私はなおさら好きになったよ (笑) 今回、ボロミアの過去がまたしても明らかになりますが、彼が指輪の旅に加わった背景、ファラミアとの絆を確認することができます。そして、あの心を揺さぶる名演説、、。しかし、初めの公開版ではこのエピソードをバッサリ削除するとは (泣) ショーン・ビーンよ、さては撮影中にピーター・ジャクソンとケンカでもしたかぁ? また、アラゴルンが自身の年齢と長寿の家系であることをしれっと告白したり、俺ぁそんなことも知らずに今まで何度もLOTRを観ていたのか~、とか色々と衝撃的であった。 そして歴史が大きく動く裏で、メリーとピピンがここまで奔走していたとは知らなかった。(そのいたずらぶりも強調されていたような気がするが、、) おっと忘れていた。肝心のフロドら指輪の主たちのエピソードは通常版からほぼ過不足ないため、彼ら二人の印象はSEEでもここまであまり変わらず。 ではでは、「王の帰還」も続けて観よう。 あと、250分、めくるめくファンタジーと冒険の最終章へ。[DVD(字幕)] 8点(2020-07-01 14:43:04) 205. ロード・オブ・ザ・リング - スペシャル・エクステンデッド・エディション - 《ネタバレ》 前々から気になっていたSEE、ようやく鑑賞することができました。主に通常版にはなかったエピソードに感じたことをつらつら。 まず、ホビット庄のエピソードの長さ。フロドたち四人の性格というよりは、「ホビット」という種族の特性や生活ぶりが強調されています。やがてここに生きて帰ってきたい、という郷愁、そして「指輪」さえなければ、いつまでも平和だったことを強く印象づけたようにも思う。 そして、最重要はエルフの都の存在でしょうか。とにかく、通常版ではガラドリエルの登場が少ないため、ようわからんが何だか偉そうなヤツだ、といった程度でしたが、旅の仲間たちを優しく包み込むような、この神秘的な美しさったら、すごいわ。特に彼女とギムリという予想外の絡みはとても微笑ましい。モリア坑道に仲間たちを誘ったことにより、彼がガンダルフの死に感じていた罪悪感、彼女の言葉はそれを優しく癒したように思う。 そしてみなさんと同感で、SEEによってより存在感が増した一人はボロミアです。彼の名誉を守ったんじゃないかな。ゴンドールの執政官であった父の幻影を探して苦悩する姿。意外と優しい一面も持っていて。ただの指輪に目がくらんだヤツではなかった。 全体的に通常版では見えなかった登場人物同士のつながり、例えたった一つの会話でも、それはただの一エピソードにとどまらずそのまま物語全体の奥行きが広がったように思う。 ではでは、続けて「二つの塔」へ。[DVD(字幕)] 8点(2020-07-01 14:38:41) 206. ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ) 《ネタバレ》 リリとハーゲンが小高い丘の上から見下ろす風景の美しさに息を吞むとともに、あぁこの瞬間が少女と犬にとって幸福の絶頂なんだなあ、と予感めいたものが確かにありました。 そのハーゲンが捨てられた直後、いったん彼目線の展開になるので、このまま「銀牙-流れ星」のような犬目線の冒険活劇になるのかな (笑) と思いきやそうでもなく、なかなか壮絶な人生、、ならぬ犬生ではありました。 どうしても犬の殺処分ばかりを問題提起しがちですが、そもそも血統書付きと雑種を区分けしたり、リリを「ホワイト・ゴッド」と称するあたり、人間が気づかぬうちに血によって「命」の重さそのものを値踏みしている事実、その警告が含みとしてありそうです。思えば、冒頭の白衣に飛び散った食用牛の血、拭っても消えないその濃さが、本作の根の深さを暗示しているようにも思えます。 市街地を疾走する野犬の群れはスペクタクルではあるし、トランペットの音色が実は重要な伏線であったり、映画としてツボは外していないと思います。 ただ、本作は怒りとか悲しみとか、そういった心が揺さぶられるような感情はなかったです。 知っていながら見て見ぬふりをするしかない、というやり切れなさ、そういう嫌な部分を見透かされたような、そんな心境になりました。[DVD(字幕)] 6点(2020-06-19 22:47:55) 207. 夕陽のギャングたち 《ネタバレ》 ロッド・スタイガーは群衆を投影させた等身大のヒーロー。イーストウッドやリー・ヴァン・クリーフのようなカリスマ性はないんだけど、その分人間味があって、体型も平均的だし感情移入がしやすいと言うか、、セルジオ・レオーネもそこが狙いだったのかもしれない。「革命家」の映画に孤高のガンマンはいらないということだろう。 フアンが成り行きで革命の英雄として崇められる展開は、どこか笑ってしまうというか喜劇調でもあって、およそセルジオ・レオーネらしくないお話しだな、と。でも過程はどうであれ革命家は成し遂げた "結果" が全てだし、群衆が認めて決めたことならば、うんうん、と納得させられるようなところは確かにあった。革命に失敗した者、自ら革命家と吹聴する者、そのどちらもホンモノにあらず、だしね。 エンニオ・モリコーネの音楽はもはや鉄板で、相変わらずよかった。 それにしても、、監督の銃殺刑へのこだわりぶりは凄いな。( いったい何回あった? ) そして、夕陽というよりは夜の闇ばかりではあったが。 とにかく、いい齢であろう主演二人のいささかも衰えない眼光、その野心的な光がいつまでも脳裏に焼き付いている。[DVD(字幕)] 7点(2020-06-19 12:12:06) 208. シンプル・シモン 《ネタバレ》 シモン君が、道行く女性たちに性癖やらアンケートして奔走する場面が可笑しい。これが日本だったら警察に通報されるだろうし、性に開放的な国スウェーデンだから笑いとして成立するんだろう。だから、そういう貞操観念も文化も全く違う国の恋愛映画として、まず楽しめる。 思えば、アスペルガー症候群ならではの特性と言うか、シモン君の〇や数字や宇宙に対するマニアックな嗜好って、不思議と映画映えするんですよねぇ、、視覚的にもストーリー的にも。そのへん、色使いも含めて、ファンタジータッチにうまく映像化したように思います。 なお、決して本作を、「アスペルガー症候群が恋に目覚めるまで」に固執した恋愛映画として閉じないよう。だって、宇宙船プレイにロマンチックな丘のパーティーとか、むしろ普通の恋には飽きたあなた、今の関係をマンネリに感じているあなた自身こそ必要かも? (笑)[DVD(字幕)] 7点(2020-06-09 18:59:13) 209. シンプルメン 《ネタバレ》 いきなり強盗の場面だし、見ての通りストーリーはぶっ飛んでるけど、演出自体はいたっておとなしいです。そう、映画は初めから最後まで、頑なに36.5度の平熱を保ってる。当然、たまにウトウトしかけるんだけど、いいタイミングで強烈なビンタが入ったり、狂ったように踊り出すから、眠気覚ましにはちょうどいいです、はい。 しかしながら、何かとてつもない出来事が起こりそうな緊張感だけは持続していて、なんやかんやで最後まで引っ張ります。でも、やはり最後まで大したことは起こらない (笑) 我が道を往く登場人物たちの誰にも共感できないし、映画はむしろそれを拒んでいて、お客さんは黙って映画を眺めていろ、って感じ。 つまり、ありがちでありながら、どの映画にも属さないという、「ハル・ハートリー」という映画のジャンル、は確立させています。 色使いと、その「透明感」は必見。[DVD(字幕)] 6点(2020-06-03 22:37:43) 210. ハッピーエンド(2017) 《ネタバレ》 題名に嘘偽りなく。トランティニャン爺がこの結末を自ら望んだのだから、彼の主観的に見るならば、紛うことなきハッピーエンドなんでしょう。そして、誰もが羨む金持ち一家が迎えた終焉ということで、客観的には "他人の不幸は蜜の味" というハッピーエンドでもある。そこが、ハネケのイヤラシイところ。 しかし、これをSNSというフィルターを通して見れば、少女が見ず知らずの車椅子の老人を快楽的に海に突き落として動画撮影しているようにしか見えず、残念ながら当事者たち以外には「ハッピーエンド」には全く見えない。 要するに、世界中に溢れる芸術性のかけらもない稚拙な映像作品によって、意図的あるいは偶発的に真実が歪曲されて伝わること、そこをハネケは警告しているのだろう。[DVD(字幕)] 6点(2020-06-01 14:07:41) 211. 手紙は憶えている 《ネタバレ》 物語半ば、ゼヴの奏でるピアノの美しい旋律。 でも、その姿は上流階級者の風格が確かにあって、かつてアウシュビッツに収容されていたユダヤ人には見えないというか、、とにかく違和感を覚えました。このあたりから、彼自身の、まさかの正体を疑ってしまったのです。だから、個人的にはどんでん返しとは言えるような驚きはなかった。 しかし、それが低評価の材料にはならないほど、本作は人間たちのドラマに感動し、心を打たれるものがありました。理由の一つとして、かつてトラップ大佐を演じてナチスに反旗を翻したクリストファー・プラマーと、まるで使命のようにヒトラーを演じたブルーノ・ガンツという、この歴史にゆかりの深い名優が演じたことが大きいと思う。 これは、最後まで生き残ったナチスの残党二人が、自らその歴史に終止符を打った、という物語。(と思いたい) 「だから彼ら (ナチスの戦犯者たち) を追うことは、もう終わりにしてほしい」 名優二人は、そんな願いを役に込めたような気がしてならない。[DVD(字幕)] 8点(2020-05-31 22:44:24) 212. ピクニックatハンギング・ロック 《ネタバレ》 1900年2月14日、オーストラリアのとある山に忽然と消えた女たちの物語。 今だ未解決事件、だから興味の焦点はなぜ消えたのか? なぜこの三人だったのか? ここに限られてきます。 なぜ消えたのか? その手がかりはありませんでしたが、男たちに連れ去られたとか、カルト集団に連れ去られたとか、それでは全く神秘的ではないので面白くありません。可能性を除外します。 では頂上に存在したタイムゾーンで過去にトリップしたか。あるいは、彼女たちを百万年も待っていた山の精霊たちに連れていかれたか。神隠しなんて、もともと科学や理屈では説明がつかないから、きっとこのどちらかなんでしょう。 次、なぜこの三人だったのか? 山の精霊説であることを前提に、思ったことをつらつら。まず、山の精霊様は男です。山頂に突起した "三つの岩" から抽象的にそう感じたから。だから、女であることと三人という人数は予め定められた運命なんです。そして選ばれたのは、潜在的に性の欲求不満だった者たち。何となくですが、マクロウ先生はわかる。それは、「 (山が) 粘性の強い状態で突出した」 といった台詞や、バナナを食べてる描写から。また、「マクロウの男性的な知性を信頼してた」 という校長の台詞から。ミランダたち三人 (正確には二人) はそうとわかる描写はないが、まるでケーキに群がるアリのように、山頂にそびえ立つ岩に誘引されるように吸い寄せられたから、結果的にそう判断されて選ばれた、と思うしかない。アーマが生還したのは、定員オーバー。マクロウ先生に押し出された形で返された。 亡くなった二人についてですが、根拠はなく直感ですが、セーラと校長はそれぞれが同性愛者のような気がしました。特にセーラのミランダに対する熱っぽい視線は、単なる友人としてではない憧れにも見えます。この二人はきっと、男性を愛せないことで精霊様の逆鱗に触れたのでしょうか・・。 時計が止まったこと、これだけはどうしても人の心に依存する謎ではないため、精霊様との因果関係は推し量ることが出来ません。 と、かなり飛躍した解釈になりましたが、もともとが女性だけの閉鎖的な世界の物語で、そこから外界に行くこと自体がまだ見ぬ異性へのあこがれとか性の解放とか、実話に便乗してそこをミステリアスに描こうとしているように感じました。そう、事件そのものより、女という謎、その神秘的な美しさ。 これほどの雰囲気を味わえる映画にはなかなか出会えないということで、私は高評価します。[DVD(字幕)] 8点(2020-05-26 02:00:11) 213. ナッシュビル 《ネタバレ》 まず、半分はブラックコメディと思って観たほうがいい。何しろ群像劇の軸となる音楽界の大御所二人からして、「ヘブン」なんてふざけた名前のヅラ野郎と貧血ぎみの歌姫ですから。とは言え、もともとロバート・アルトマンは斜に構えてその本心を見せないところがあり、そのアメリカへの愛国心が隠せない映画であることは間違いありません。 映画は全編を通して、不景気や政治汚職にベトナム戦争の傷跡が見え隠れするし、停滞中どころか沈没寸前、そこには70年代の痛々しいアメリカの姿がありました。 そんな時代でも「歌」だけが心の拠り所と信じて観ていたら、ショービズ界の汚らしい裏側を見せつけられて、そして音楽フェスの銃撃テロ・・。しかし、続くシュプレヒコールのごとく圧巻の大合唱は、アメリカはどん底だ、もう歌うしかない、という開き直りと再生への願いが入り混じった群衆の「叫び」なんだろう。 大混乱の最中、一人会場を後にするベトナム帰還兵 (スコット・グレン) の姿が印象的。彼がベトナムに戻りたくなるほどこの国が愛想をつかれたのか、それともこの国がようやく戦争の暗い影を振り払うことができたのか。 ロバート・アルトマンは、シニカルな笑いを浮かべて我々に問いかけているようだ。[DVD(字幕)] 7点(2020-05-24 12:21:05) 214. アナコンダ 《ネタバレ》 「真夜中のカーボーイ」「帰郷」の名優ジョン・ヴォイト。個人的には、「チャンプ」の印象が強い。とにかく、とても好きな役者だ。 だから、アナコンダに飲み込まれた彼に、私は涙ながらに叫んだ。「チャンプ、起きてよ、、お願いだ、起きてよ、チャンプ!!」 そしたら、、奇跡が起きた! ウインクされたよ!! 最後にもう一度だけ言わせてほしい。 名優ジョン・ヴォイト。代表作、真夜中のカーボーイ、帰郷、チャンプ、アナコンダ・・。[映画館(字幕)] 6点(2020-05-16 22:43:10) 215. イタリアは呼んでいる 《ネタバレ》 ↓ そうなんです、ワインの香り漂う「サイドウェイ」三部作のイタリア編。(ってことにしよう) いい歳したオッサンたちなので、自分探しの旅とか言われると痛い感じですが、例によって仕事を口実にしてそこはうまく回避してます。 それにしても、、これは映画をあまり観ない人は厳しいねぇ・・。その映画ネタやパロディにしたって、さすがに飽きてくるので、もはやネタとしての有難みがなくなってる。もっとワインと料理を楽しませてくれ~。 まあ、そのへんを差し引いても、そこそこ有名人で、女には不自由せず、会社経費でイタリア満喫のワイン三昧、こんなヤツらには何一つ共感できません、結局はそこ。[DVD(字幕)] 4点(2020-05-11 21:51:38) 216. 北京的西瓜 《ネタバレ》 八百春や居酒屋における人々のやり取りは、カメラを意識しない自由さで、ドキュメント調のようなつくりになっています。このあたり台本はつくり込まずに、場面場面において出演者の即興に委ねた印象を受けました。そして超常現象も奇をてらった演出もなくて、およそ大林監督らしくない映画でしたが、、 最後、強烈なのがありましたねえ (笑) 特にカメラに向かって語りかける演出は、近年の戦争3部作を彷彿させます。しかし、確かに画期的な演出とは思いましたが、スタンダードな人間ドラマとして流れが秀逸でしたので、そこは中国で撮影したふりをしてでもそのまま行ってほしかった、という思いが強かったです。 ストーリーとしては、国際交流を描いた美談であるし心温まるいい話です。ただ春三さんは家庭や店が崩壊寸前になるまで中国人に肩入れして、家族に対してその謝罪が最後までなかったのは残念です。店が持ち直して事態が好転したため、そこだけがうやむやになってる。この映画だけを見ると、春三さんよりもむしろ彼を支え続けた美智さんの忖度や忍耐こそ讃えられるべきでは? ・・でもそう考えると本作は、大林監督の妻であり映画プロデューサーでもある大林恭子氏に、感謝の意を込めた映画かもしれませんね。[DVD(邦画)] 6点(2020-05-06 13:11:31) 217. ペーパー・ムーン 《ネタバレ》 映画の、全体的なイメージがとてもいいです。お月さまに座ってるポスターとか、「PAPER MOON」ていうタイトルもそうだけど、そのタイトルロゴとか、レトロな音楽とか、、その全てを含めて、映画という枠組みを越えたおしゃれ絵のカタログのようです。テイタム・オニールのフォトジェニックな存在感があって、カタログは完成。まさに永久保存版、と言えるでしょう。 でも始まってみれば、彼女のその愛らしいルックスに大人びた冷めた目線、そのギャップにちょっと面食らう。思えば、ギリギリですよね。これがあと2~3歳ほど年長だったら、ただのクソ生意気なガキですから、ホントに奇跡的なタイミングで映画として記録に残したと思う。 ストーリーは全体的に大人はバカでカモで異性に目がない、子供 (彼女) は冷静でクールに描かれてる感じでした。 途中、モーゼは痛い目に合ったりもしますが、そこは聖書をエサにした詐欺師ですから。ハッピーエンドで終わるために、罪の清算には「罪の償い」が必要なんです。 全編を通して、カメラは車中の二人を主に正面から捕らえていますが、一転してラストは後ろから。 目の前に広がる、どこまでも真っ直ぐに続く長い長い一本道・・・。 車はポンコツで、チームワークも悪そうですが、、まぁこの二人なら何とかなるでしょう!![DVD(字幕)] 8点(2020-05-05 00:20:20) 218. ダウン・バイ・ロー わかってる。 人生、「愛か友情か、さもなくば牢獄か」ってことだよね、ジャームッシュ。 愛がいつも寄り添うことならば、友情は心のつながりだけで成立するけど、いつか再会するための口実は必要、とも。[DVD(字幕)] 8点(2020-04-29 18:57:41) 219. 龍三と七人の子分たち 《ネタバレ》 まあ、毒を以て毒を制す、なんでしょう (笑) どっちもどっちで、あまり褒められたものではありませんが、ちょっと感じたこと。これは、ジジイたちもまだまだやるぞい! ではなくて、こういうジジイたちには絶対になるな、という反面教師的な映画ではないかと。ジジイたち勝っちゃった! のは、こんなジジイたちでも若造にボッコボコにされる脚本では、さすがに企画段階で通らんだろうし。 それと、あまり関係ありませんが、「キレやすい高齢者」が増えている、といった話題をネット上で見かけました。 実際、人に迷惑をかけない良い老人になりたい、って改めて思いましたわ。[DVD(邦画)] 5点(2020-04-23 22:33:58)(良:1票) 220. ダンス・ウィズ・ウルブズ 《ネタバレ》 180分もありながら、なぜジョン・ダンバーの生い立ちを描かないのだろう。このせいで、なぜ彼がそれほどまでに未開のフロンティアに魅せられているのか、とか、なぜインディアンに肩入れしたがるのか、私にはまったくわからない。ついでに言うなら、切断を覚悟するほど重症だった右足が、いつどうやって完治したのか、それもわからない。 先に登場したポーニー族の戦慄。ここは今までの西部劇にならって、インディアンは白人を見つけたら殺る、ただそれだけである。彼らには人格すらまともに与えられていない。しかし、温厚なスー族が登場すると、様相が変わってくる。本作は彼らを通して、インディアンたちの生活を中から描いて、一人一人に個性があること、そして白人側に和解する覚悟があれば手を取り合う意志があることを充分に見せてくれた。ジョン・ダンバーをインディアン集落への (白人代表の) 潜入捜査官のように見立てて、彼が苦労し、発見し、打ち解けて、恋をして、衣食住をともにする過程の中でインディアンを描いているのが斬新で面白いところか。 始めに、ジョン・ダンバーという男がよくわからない、と書いた。そんな彼について、一つ、確かなことがある。それは、とてつもない強運の持ち主、ということ。南北戦争では、あれほどの銃弾が全て彼をよけて通った。砦にたった独りで籠城しながら、初めに出くわしたのが、好戦的なポーニー族ではなかった。 そして何より、彼は狼に咬まれなかった。 以上。[DVD(字幕)] 6点(2020-04-22 17:51:54)
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