みんなのシネマレビュー |
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2541. 硫黄島からの手紙 《ネタバレ》 スタッフロールにスクリーンプレイ、アイリス・ヤマシタという名前が書いてあるのを見て、私はてっきりこのお話は、その当時を知る日系のおじいちゃんが書いたものなのかなと思ったんですけど、後にメイキング映像を見て実は日系の若い女性だということを知ってとても驚きました。当時の資料を集め研究し、出来る限り史実に忠実にしたかったのだそうな。ストーリーとしての素晴らしさも去ることながら、その真摯な仕事ぶりに感心致しました。イーストウッド氏は「戦争で亡くなった全ての人たちは尊敬に値する。彼らの犠牲があって今の日本があるんだということを、忘れてはならない」と語っています。これこそがこの作品のテーマであり、メッセージなわけです。日本の領土で行われた初めての日米の戦い。そして第二次大戦において最も激しい戦闘の一つであり、日米双方に多数の死傷者を出したという。特に日本軍は2万名余りの兵士のうち、そのほとんどが戦死ししてしまったそうな。まさに玉砕覚悟の防衛だったわけです。栗林中尉の台詞に「 我々の子供らが日本で、一日でも長く安泰に暮らせるなら、我々がこの島を守る一日には 意味があるんです!」というのがありましたけど、本当にそういう思いで戦ったんだろうと思います。にもかかわらず、制作者側が言う様にあまりきちんと教科書で教えられていない。この国ではやれ戦争や自国の歴史ということになると、すぐさま右と左のイデオロギーの戦いに終始してしまう。過去に起こったことをそのまま伝える事、戦争で亡くなった方々に敬意と哀悼を表する事は、本来はイデオロギーを超えたものであるはずなのに。そりゃ確かに戦争は無意味だし、嫌なものだから記憶からなくしてしまいたいかもしれない。でも彼らの存在まで無意味にし、その思いまでなかったことにしたら、それこそ何の教訓も得てないし、自分で自分を卑下する様なものですよ。思想的に偏屈になるか、あるいはただの無関心かのどちらかに行く事無く、全ての日本の人々が彼らの存在と思いを知り、頭をたれるその日が来るまで、この作品の意義が失われる事はないでしょう。[映画館(字幕)] 9点(2008-08-13 23:47:42)(良:3票) 2542. ノーカントリー 《ネタバレ》 酸素ボンベで人を殺しまくるシガーことハビエル・バルデムという俳優さん。「海を飛び夢」で尊厳死を選ぶ男の役を演じてるあの役者さんですよ。あまりのカメレオンっぷりに驚愕ですし、なによりこういう役にハビエル・バルデム氏を選ぶ制作者側の眼力にも驚かされる。全編にわたって緊張感漂ってますが、犬に川岸まで追いかけられるシーンなど、コーエン兄弟らしいこっけいさがあって独特な世界観は相変わらず。一番の見所はやはりモスとシガーのガチンコ対決シーン。静寂の中で繰り広げられる闘いはとても迫力があります。さて、この作品のテーマ、メッセージというものは、正直言って一度見ただけでよくわかりませんでした。邦題はノーカントリーですけど、原題はNo Country for Old Menなんですね。「ノーカントリー」じゃなんのことだかよくわからない。隠喩的な内容の作品だけに、邦題の付け方の難しさを感じてしまった。[DVD(字幕)] 6点(2008-08-13 22:40:26) 2543. いつか眠りにつく前に 《ネタバレ》 母が最後に言った言葉「人生に過ちなんてないのよ」がたぶんこの作品のメッセージなんでしょう。いろんなことあったけど、死ぬ間際になれば全部肯定的に受け入れられる、という感じなんでしょうか。ただ、僕が男だからでしょうか、どの人物にもあまり共感がしずらしいですよねぇ。文学作品の映画化というものの難しさを感じてしまいます。[DVD(字幕)] 6点(2008-08-13 20:58:37) 2544. デッド・サイレンス(2007) 《ネタバレ》 僕は小さい頃から人形というものに恐怖感を抱いていたタチなので、あれだけの数の人形がずらっと整列させられてしかもそれがカタカタと動き出すシーンなんかは、やっぱり観ていてゾクゾクするものがありましたね。「ソウ」ほどではないですが、それなりによく出来たホラームービーにはなってると思います。ラストのオチも見事です。でも最初の方は生身の父親が演じているわけですから、あれを人形だと思うには無理があるよね。だからちょっとずるい。特典映像を見ると、監督のジェームズ・ワンが出てくるんですけど、いやはや、あんなにも若い、気色の悪い髪型のアジア人だとは思ってなかったですね。まさに新進気鋭の監督といったところですな。[DVD(字幕)] 6点(2008-08-13 19:59:04) 2545. 怪談(1964) 《ネタバレ》 美術やセットなどが特筆される本作ですが、私はやっぱり音楽に注目したい。この作品、言わずと知れた世界の武満徹が音楽を担当しているわけですが、聞いてお分かりの通り、一般的なホラー映画のサウンドトラックとは一線を画している。つまりは通常のオーケストレーション、楽音ではないサウンドなわけですが、劇中の世界での音と、付随音楽とが分離不可分になっている。つまりは音楽でありながら効果音、効果音でありながら音楽、音響的音楽、音楽的音響とでもいうようなサウンドになっている(特に一話目の「黒髪」がそうです)。こういった音作りは、まさに、日本でのミュージック・コンクレートの先駆者の一人であった武満氏ならではの独創性であり、また和楽器の使い方に長けていた彼だからこそなし得る仕事だろうと思うんです。この作品を観ていて、改めて日本の伝統音楽というものの奥深さを感じざるをえないのです。よく「和音が西洋で、音色が東洋で、リズムがアフリカ」だなんて言われますけど、実験音楽が語られる以前から、すでに日本の伝統音楽というのは、ある種の「環境音楽」的な要素を持ち合わせていたのです。それはおそらく、自然と人間を分離する西洋と違い、自然と人間を一体と考える東洋独自の思想が影響しているのかもしれません。そのような伝統音楽が持つ固有のファクターを上手に活かしながら、なおかつ武満氏の実験精神が働いているのも見逃してはなりません。それはつまり、伝統楽器の音色が持つ固有の文化性や伝統性というものを洗い流し、純粋な「音」だけの世界にしようとする試みが行われているのです。それによって、全く新しいランドスケープを作り上げようという意欲を強く感じます。昨今、ジャパニーズ・ホラーなどと言われて日本の恐怖映画が世界に羽ばたいておりますけど、なぜ日本のホラー映画が世界に注目される様になったのかと言えば、それはやはりこの作品にあるような、西洋にはない日本独自の精神性及び蓄積というものがあったからだと思うんです。ちょっとオーバーかも知れませんが、私はこの作品を観ていて、独創性におけるジャパニーズ・ホラーと武満徹のこの数十年のタイムスケール、日本の伝統音楽と思想という数百年のスケール、環境音及び人間が持つ本能的恐怖感覚の構成という数万年のタイムスケール、それら点が線となって繋がる様を垣間みた様な気がして、なんだか考え深いものがありました。[CS・衛星(邦画)] 7点(2008-08-13 00:58:53)(良:1票) 2546. ブロンコ・ビリー 《ネタバレ》 人生ってなかなかうまくいかない。いろんな困難もあるし、嫌なこともいっぱいある。人それぞれいろんな人生あるけれど、みんなだいたいそうでしょう。イーストウッドの映画って、人間の人生に対する一種の鎮痛剤みたいな作用がある様に思います。前科者、端くれ者達によるワイルド・ウエスト・ショー。悪徳保安官に蔑まれ、悪ガキに火をつけられテントが燃やされるも、教会では飯を分けてもらい、精神病棟では新しいテントを作ってくれる。言ってみれば「捨てる神あれば拾う神あり」。旅は道連れ世は情けと言いますが、米国を旅するこの大道芸集団の生き様はまさに人生そのものなわけですなぁ。それにしても、ソンドラ・ロックのわがまま娘っぷりはとても板についてうまいなぁと観てて思ったんですが、彼女のその後の実生活を考えると、演技というより本当にああいう人だったのかもね。[CS・衛星(字幕)] 8点(2008-08-11 20:49:16) 2547. ウォーター・ホース 《ネタバレ》 少年と動物の友情を軸に、その動物を大人達が殺そうとする、、、、という、実によくありがちなパターンのお話なんですけど、今作はその動物がネス湖のネッシーというこれまでにない題材。ネッシーがファンタジー映画として使われるということは、逆に言うとそれだけネッシーという存在が、「いるのかいないのか」から「人間が作り出したUMA」になった証なのかな。でも、自分が子供の頃には、ああいう湖に古代の恐竜がもし生き残ってたら、、、なんてことを考えただけでわくわくしてましたよね。なにかこう、男の子のロマンをくすぐるものがあった。今回の映画化は子供達に向けたよき娯楽作品となることでしょう。CGの出来も視聴に耐えうる出来に仕上がってたと思います。アンガスを背中に乗せたクルーソーは水中をどんどん潜っていきますが、本当にああいうことをしたらアンガスは水圧でおかしくなっちゃいます。でもいいんです。ファンタジー映画ですもの。恐竜の背中に乗って水中を探検するというのは、それこそ「男の子のロマン」なんですから。[DVD(字幕)] 6点(2008-08-11 00:00:42) 2548. ブレージングサドル 《ネタバレ》 この作品がいまだ名作として語り継がれる所以は、やはりギャグの際どさにあろう。下ネタは今のお下劣ムービーの方が上だが、ほぼ全編にわたる「人種差別」ネタは他の追随を寄せつけない。このまんまじゃ劇場にも出せないしTVにも流せないよというので試しに際どいシーンを全部カットしたら作品の尺が9分になってしまったという逸話もあるそうな。終盤に至ってはもはや西部劇であることを辞め、ハチャクチャ、ぶっ飛び、超現実の世界にまでいってしまうが、その呆れるほどのハチャメチャの向こう側にほんのりと希望の光が見いだせるのは、この作品の根底に「人間賛美」の精神があるからに違いない。 [DVD(字幕)] 6点(2008-08-10 01:03:15)(良:1票) 《改行有》 2549. ジャンパー 《ネタバレ》 なんたることか!なんたることか! 拙者はこの前、実に無節操な活動写真を見たでござる!「ジャンパー」という題名であったのだが、これがなんともはらわた煮えくり返る若僧が画面を飛び回るのでござる!我々庶民は原油高でどこに行くにもひぃひぃ言うとるこのご時世に、この若僧は念ずるだけで空間を移動するという黒魔術を使うのである!なんたることか!庶民の苦労も知らずに、こんなことが許されるものか!しかもこの若僧、人様の金を横取り、豪勢に使い回し、あげくの果てに女までゲットする始末である!なんたることか!この無礼者め!世間の苦労、世の大変さをこの若僧は身を持って知るべきである!浅黒い顔をした白髪の老人が言っておったではないか。「このような力は神だけに許される」と。その通りでござる![DVD(字幕)] 5点(2008-08-10 00:28:19)(笑:2票) 2550. 地獄の変異 《ネタバレ》 この作品の予告編が藤岡探検隊のパロディだったもんで、どんだけひどいC級ムービーなんだよと思って観てみたら、これがどっこい、とても真面目に作られた結構な大作ではありませんか。見終わって割と得した気分になったのと同時に、あの予告編と邦題は宣伝の仕方が間違ってる!配給会社は何をやっとるかぁ!と思わず怒鳴って(心の中で)しまった。見た感じでは、実際の海底洞窟の映像とセットを織り交ぜて全体を構成してるんでしょう。とても美しいシーンが多いし、あのメインのエイリアンはともかく、途中出てきたうなぎの親戚みたいなやつだったら本当に前人未到のどこかの洞窟にいそうな気がしないでもない。そう思わせるくらいの映画的リアリズムがあったし、閉鎖的でありながらだだっ広い空間の怖さというものがうまく出ていて(博士やチャーリーが襲われるシーンなど)後に印象深く残る。ただ全体的に、音楽含めて過剰演出は控えめなので、その辺の好きずきで賛否別れるかも。[DVD(字幕)] 6点(2008-08-08 01:24:08)(良:1票) 2551. ピンクの豹 《ネタバレ》 一言で言うと「上品なドリフ」ですよね。ピーター・セラーズが度々コケたりどこかにぶつかったりするんですけど、あまりに古典的なのでなんだか時の流れを感じてしまいました。でも後半の仮面舞踏会はとっても面白い。とくにシマウマが愉快です。花火でドンパチ、ゴリラ同士の珍プレイ、及び女王様のチャーミングさ込みで6点。[CS・衛星(字幕)] 6点(2008-08-08 00:40:43) 2552. グッドモーニング,ベトナム 《ネタバレ》 これ、ロビン・ウィリアムズのマシンガントークが理解出来ればどれほど面白いんだろうと、文化の違いみたいなものを痛感しちゃいますよね。バッドエンドなんかじゃないけど、なんとも切ないラストです。振り返ってみれば、親友だと思っていたベトナム人からは裏切られ、恋の行方も結局実らず、ラジオ局は退かれる始末。何一つ気持ちよい結末ではないんだけど、それ故に現実的な共感を覚えるし、what a wonderful worldのシーンにある様なメッセージをストーリーそのものにも体現されているようでいい。ただよく言われる様に、ベトナム人の描き方がちょっとおちゃらけ。[CS・衛星(字幕)] 7点(2008-08-03 19:43:49) 2553. 崖の上のポニョ 《ネタバレ》 なんだか前半と後半で全然違う様な印象を持っちゃいました。冒頭、色鮮やかな海底のシーンから始まり、台詞無し&雄弁に語る音楽で観る者をぐっと捕らえさせ、崖の上の家&そこから出てくる宗介の絵本的な描写と見せ方、宗介に迫る妖怪の様な波の畏敬的な表現、ポニョの狂おしいまでの愛くるしさ(魚と人間の中間の時は可愛いというよりむしろ気色悪いが、それがかえって印象的)、リサの活気溢れる超絶ドライブテク&浜辺の街の美しさ、そして魚で表現される大波のダイナミズム&壮大なシンフォニー等、前半の一連の流れは僕はほぼ満点じゃないかと思うんですけど、ポニョが人間になって宗介に会って以降の後半はなんだかどれも隠喩的な匂いを漂われながらどんどん進んでいく。近年の駿監督の作品はどれもそういう展開ですけど、今回のはそれが徹底してる。そのせいか、後半はいろいろ考えちゃって前半の様に純粋無垢には楽しめなかったですねぇ。ということで前半10点後半6点で、間をとって8点ということにしておきます。後から考えればいろいろと解釈出来ますけど、そういう意味合いよりは、やっぱり宮崎アニメの漫画映画としての醍醐味を存分に味わう方が見方としては合ってるんでしょう。考えてもみてください。これほどまでに、ただ単に見ているだけで楽しい2Dを作れる人というのは、もはや世界中探しても宮崎監督ぐらいしかいないんじゃないでしょうか。そんな彼ももう歳で、作画に必要な腕力が全盛期の三分の一にまで落ちてしまったという。彼がいなくなってしまったら、もう宮崎アニメの新作を見る事が出来なくなってしまう。この世から最高の漫画映画を作る人がいなくなってしまう。そう考えただけで胸に迫る思いがします。僕の願望としては、そんなことは無理だけど、永遠に作品を作り続けてほしい。永遠に人々を楽しませてほしい。僕の中では、宮崎駿監督をクローン化して、その世代その世代の宮崎駿が無限に作品を作り出せる体制を構築してほしいと思わせる、ほとんど唯一の人物です。[映画館(邦画)] 8点(2008-08-03 11:19:57) 2554. シャンハイ・ナイト 《ネタバレ》 さすがのジャッキーも50代ですから、昔に比べるとキレやスピード感はなくなりましたけど、その分ユーモアの要素を取り込んで全体としてのエンターテイメントの総量を保とうとしている様に見えます。雨に唄えばやインディ・ジョーンズなどのパロディネタもあります。鼻の形が妙な俳優で有名なオーウェン・ウィルソンのおちゃらけキャラもなかなか愉快。本当に可も不可もない作品です。全体的にセットが少し安っぽいかな。[地上波(吹替)] 6点(2008-08-01 21:46:04) 2555. わらびのこう 蕨野行 《ネタバレ》 恩地日出夫版「楢山節考 」といったところでしょうか。方言まるだしなので、語ってる内容を理解するのが大変だったんですけど、(おばばよい、の、ばばって、姑のことなんですね。)この作品のテーマは特に今の日本においては今一度しっかりと考えていかないといけないものです。現代の老人ホームと違い、蕨野行は老人だけで全てをまかなっていかないといけない。今の感覚からするとそこには宿命的な残酷さが付きまとってますが、食べるのも大変だったこの農村ではそれは生きる為の知恵であったわけですね。生と死は相反ではなく、共に繋がり円となる代物。厳しい掟を自ら与えることにより、そこから生き甲斐を得る事が出来る。律することもなく、ただ長く生きることだけが善とされる現代において、ある種、正反対の世界を描くことで見いだされる教訓というものがあるのでしょう。[CS・衛星(邦画)] 6点(2008-07-29 22:05:26) 2556. 28週後... 《ネタバレ》 個人的には前作の方がよかったですね。今作は明らかに人間のせいで起こった事件ですよ。まずウィルスの正体がなんなのかわかってないのにたったの28週でもう人々をイギリスに移住させてる。妻を調べた医者が「調査させてください」と頼み込むも、「その必要はない」と切り捨てる米軍。妻を隔離してある施設に易々と入り込める夫。最後まで飽きさせないし、ゾンビが襲ってくるシーンはどれも見応えありだが、バックグラウンドの設定がいい加減すぎる。ヘリのプロペラでゾンビどもをミンチにするシーンは笑った。[DVD(吹替)] 6点(2008-07-28 21:00:38) 2557. キャプティビティ 《ネタバレ》 映像も音楽も割とスタイリッシュで、繰り返される嫌な拷問シーンなど、その手の代物が好きな人にはツボを押さえていていいかもですけど、こういう監禁ものというのが、最近は実によく作られ、その中でも出来のいいシリーズなんかとどうしても比較してしまう己がいるわけです。飽きさせず最後まで見せてくれるんですが、そのラストがなぜか世界版と日本版では違うそうな(男に復讐する必要はないですよね)。どうしてそういうことをするのか、理解に苦しむ。[DVD(字幕)] 5点(2008-07-28 19:57:50) 2558. エミリー・ローズ 《ネタバレ》 なかなか見応えのある作品でしたね。果たして悪魔は実存するのか?それとも単に人の心が作り出すものなのか?興味深いテーマを軸に、ジェニファーさん扮するエミリーの怪演も相まって、最後まで飽きさせない展開となっています。ただ、法廷の最後の弁論でエリンが「可能性」という言葉を持ち出して神父を擁護したり、その判決が有罪だけど刑は今日でおしまいなどという結末を見ていて、おいおいと思ってしまった。果たしてどこまでが「実話」なのか判断しかねます。エミリーが本当に悪魔に取り憑かれていたのかを判断する材料として、この作品は重要な部分を説明していない様に思います。途中事故で亡くなる医者が「彼女は悪魔に取り憑かれていない時は全くの正常なんだ。それが精神疾患ではない証拠だ」みたいなこと言ってましたけど、それだったら同一性障害の部類の可能性はないのか。正常な時のエミリーは、取り憑かれてる時の記憶をどこまで保ってるのかとか、そういう点が説明不足だし、最も重要な「育った家庭環境」を知る上で、家族というものが、ほとんど無に等しい様な描かれ方しかされていないのが、この作品の一番の難点だと思われます。神父に責任があるのかどうか、もし自分が陪審員だったらどうしていただろうと思うと、早急に答えは出てきません。もしも被告人ムーアがキリスト教の神父さんじゃなくて、新興宗教のおっさんだとしたら、たぶん私は迷わず有罪にしていたでしょうが(なんでやねん!笑)。余計なお世話かもしれませんが、ジェニファー・カーペンターの体のけぞらし目をひんむき、金切り声あげて憑依を演じるその様を、澄まし顔でフフンと居座る日本の女優の方々にぜひ見ていただきたい。ああいう演技出来る人、果たして日本にいるかなぁ?[DVD(字幕)] 7点(2008-07-27 01:52:26) 2559. 東京オリンピック 《ネタバレ》 純粋な記録映画ということではなく、メッセージ性のある作品にしようということで、後に論争を引き起こすことになるわけですが、しかし本当に純粋な記録映画だったら当時最高の観客動員数と今日にまで語られるほどの名作にはなってなかったでしょう。冒頭の太陽に始まり、ギリシャからスタートした聖火がアジアの国々を経て、広島、富士山、東京へと行き、開会式につながっていく一連のシーンは映像的に実に素晴らしい。その後は淡々と選手たちの競技を映し出していくが、今と昔のオリンピックの違いを見ているだけでも時代を感じさせて面白い。掲揚する各国の旗に折り目がばっちりついてたり、選手の名前を呼ぶ時に「○○さぁ~ん」「いちについてぇ、よぉ~い」なんてのを見ていると、当時の五輪というのは結構素朴で手作り感があったんだなと思わせる。それから水泳の水着が今と全然違う。今でこそ競泳用としての水着が定着しているが、当時の水着は競技というよりほとんどバカンスに来たみたいな水着であることに驚く。それと女子バレー東洋の魔女が金メダルを獲得するシーン。びっくりすることに、どの選手も頭の形の2倍はありそうな勢いのサザエさんヘアーである。あんな重たそうな髪型でよくもまぁ激しく動き回れたもんだと感心する。ラストはマラソンである。のちに遺書を残し自殺してしまう円谷選手の勇姿である。ゴール寸前でイギリスの選手に抜かれ3位となるものの、表彰台での彼の表情は実に晴れ晴れであった。途中あったチャドの選手のエピゾードは正直言って不要である。本人からしたら、「いつも一人でご飯を食べて、孤独を感じないわけではないが~」なんてナレーションを入れられてもありがた迷惑だろう。[CS・衛星(邦画)] 7点(2008-07-23 21:19:45) 2560. 魍魎の匣 《ネタバレ》 戦後日本が舞台ということなんですけど、特に前半はどう見ても中国の街並みでしょう。ありゃ?東京じゃなかったっけ?いつの間に中国に?みたいに混乱しちゃいましたよ・・・。それに、もうこれは相性の問題なのかもしれませんけど、全編がジャンプ・カットみたいなショットで進んでいくでしょう。シーンの余韻みたいなものもないし、もの凄く違和感がありますよね、ああいうのって。加菜子の性格も理解不能。割と大作なのに、もったいない、、、。[DVD(邦画)] 4点(2008-07-20 22:18:27)
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