みんなのシネマレビュー |
|
241. 脳男 《ネタバレ》 原作は出版時に読んだはずだが、「乱歩賞にオレが求めていたのはこういった物じゃなかったんだよな」と思った記憶しか残っていない。 さて、これは「倫理感」の話であろう。重大犯を悪として独自に罰を与える殺人マシーン。しかし、周りの人間のそれもどうなのか?と思わせる撒き餌のような罠が、待ち構えている。 冒頭、目を覆うような残酷な犯人を描写したが、被害者も犯罪者を挑発するうさん臭い占い師。この時に一気に、犯人への私の怒りがトーンダウンする。この話の中で一番マトモと思われた精神科医も、(見ているシロートですら、それ言うか!と思うような)重大事項を脳男に漏らしてしまう。そして、部下の命のために脳男を撃ち殺そうとする刑事。さらに最後に、怒りを持って全弾犯人に撃ち込んでしまう刑事。この時には正直、スカッとしてしまう。見ている者の倫理などガタガタである。 ふと昔の歌の「世の中誰も皆な同じくらい悪い」という歌詞を思い出す。本作の場合、同じくらいではなく、少しずつといった感じだろうか。 脳男を諌めた精神科医の生ぬるさが、爆弾魔との最後の闘いで自身最大の危機に陥れたが、(どうやって嗅ぎつけたか)刑事の銃弾で救われてよかった。しかし、この人はそれでも脳男に生ぬるい倫理を説き、脳男も感情を取り戻したかのような描写で終わるが、そこは気に入らない。 ここまで物語中で倫理を破壊したら、そんなもの役に立たないという結末のほうが、気持ちいい物語になるのではないだろうか。 細かい事では、言われるまで食べないで言葉を理解するまでにどうやって大きくなったとか、あの歳まで意識して排泄せずに生き延びられるはずがないとか、さすがに左胸刺されたら心臓の機能を失うのでは?など、若干のうそ臭さが僅かに気になる。 それでも、爆弾魔と脳男と(あんまり役に立ってないけど)警察の三つ巴のサスペンスにはワクワクさせられた。[DVD(邦画)] 7点(2013-09-08 10:02:29)《改行有》 242. バニシングIN TURBO 《ネタバレ》 もう、も文句なしに面白い! カーアクションの後発作品と比べるなんてナンセンス!。もちろん、これがそのジャンルの嚆矢だとは言わないが。 自動車のクラッシュなどは今のものとは比べるべくもないだろうが、何と言うかドキワク感がい今のCGと違う。いや、CGを否定するわけじゃなく、画面表現とは違う次元でのワクワク感が凄いのである。 この映画の描いているのは、価値観と権利の物語なのだと思う。 公開当時、どのくらい意識されていたのか知らないが、まるで古い日本の結婚感であるような婚約者縛りを、利用するやつ有り、応援するやつ有りで、結果的に個人の自由が勝利する展開にゴ~ル!! 実際にはそうならないだろうと40数年後の我々は思うだろうが、報道の自由と個人の自由と武力でない顛末として、この結末には現代人として拍手を送りたい。 また同時に、現代でもハッキリしない報道の権利と対象の権利の兼ね合いなども悩ましく考えさせる。[DVD(吹替)] 8点(2013-09-04 20:26:39)《改行有》 243. マルサの女 《ネタバレ》 随分前から言われていることだが、新書のタイトルというのは、実にうまく作られているもので、そういうタイトルにつられて、時々興味のない分野の本を読むことがある。全く知らなかった世界の話や、気にも止めていない普通の出来事の意味を知る事となり、たいそう勉強になる。いや、勉強というより知的好奇心が満たされるという感じか。 この映画の(というか、この人の映画の)魅力というのはつまり、そういう部分にある。有職者の8割が被雇用者だという日本では、この分野に詳しい人はそうそういない。客数を少なく見せる手口、印を付けた札(これ、違法な気もするが)を使った不正の追求、当たりくじを売りに来る奴など、税の攻防にまつわる話がどれも面白い。漠然と「敵」だと思っていた税務署・国税関係者などと、脱税者を巡る闘いは、もちろんスパイ物のような派手さはないが、地に足の着いた頭脳戦でワクワクさせられる。 「戦」とはいっても当然、命の遣り取りをするわけでもないうえ、「査察が入って潰れた会社はない」そうなので、結構ゲーム的な感覚で安心して見ていられるのも良い。 それだからこそ、権堂と板倉の友情に似た、たぶん「好敵手」というのが一番似合うのだろう、その関係にグッとくる。[DVD(邦画)] 9点(2013-08-21 00:43:13)《改行有》 244. 遙かなる走路 《ネタバレ》 随分と昔、東南アジアの国へ旅行に行った時に、その国の写真フィルムを買おうと思ったら、そんな物は無いと言われ驚いたことがある。我々は大抵のものは国産品があると思っている。無いのは石油と旅客機(YS-11が現役ならなあ)くらいではないだろうか? そう、日本人というのは、とにかく自国の物を求めるし、自国で作ろうとする。なんでも自分で作らないといられない、というモノ作り大国の気概、素晴らしや。 そんな主人公、豊田喜一郎の幼少時の自動車への興味から、工学を学び自動車を開発する過程が丁寧に描かれており、製造業に携わるものとしては、大変に面白く見られた映画である。 特に論理的・基礎的な技術と同時に、製造技術の壁も実際の製品開発には重要なファクターである話、会社というものは人々の生活を背負っているのだという事に悩む経営者の話などもまた、興味深い。 さらにこれも前の話だが、数十年ぶりに光岡自動車がメーカーとして認可されたというニュースを、不思議と思ったその訳もこれで理解できた。 完成直後の役人との密約や政治的駆け引き、とりあえず作っちまうというスタンスなど、ちょっとどうなのかと思う所もあるが、行動力と情熱の人というのは伝わってくる。 色々ともっと知りたい部分もある。シボレーのエンジンパーツと入れ替えてみるって、デッドコピーを作っているんだろうか?とか、60馬力を超えた時の原因と対策は何だったのか?とか、箱根をヒーヒー言って押しながら超えたのに、あの電報はいいのか?とか、ニッサンはライバルじゃなかったのか?とか。でも、細かいとこだから、いいのだけれど。 [DVD(邦画)] 8点(2013-08-11 08:57:45)《改行有》 245. 平原児 《ネタバレ》 平原児などと言うと、腰に毛皮でも巻いて草原をタッタカ走り回る子供をイメージしてしまうが、有名なバッファロー・ビルとワイルド・ビル・ヒコック、カラミティ・ジェーンの物語。 アメリカ原住民を征服した事については、それぞれの国の事情であるから、現在視点から非難するには当たらない。それよりも、敵側であるインデアンに最新の連発銃(ウインチェスター)を売ってしまうという、商道徳だ。 つい最近「民主的手法でナチスが政権をとった」と発言した政治家がいるが、こちらも負けずに考えてしまうのは、自由経済の枠組みの中で敵国と商売していることだ。基本的には国の掲げる自由主義に基づいているのだ。 そういう意味でこの映画は、今の時代の価値観と比べて随分と面白い。敵対組織に武器を売るのもそうだが、目の前で焼き殺されそうな同胞を救ったのに、より多くの同胞(だが軍人だ)に不利益をもたらした女を糾弾する、町の衆。これは、カラミティ・ジェーンがちょっと可哀相になったが、外敵と戦っている開拓民としては守護者の危機の方が公益だったのだろうなあ。だが、考えてみるとアメリカ映画の基本姿勢として、絶対に全体のために一人を犠牲にはしないんだよなあ。 ちなみにバッファロー・ビルの嫁は役に立たなかったのか、ちょっと気になってしまった。[DVD(字幕)] 6点(2013-08-09 10:12:55)《改行有》 246. ボディガード(1992) 《ネタバレ》 特殊な状況下におけるラブストーリー。まあ良くあるっちゃあよくある感じ。 犯人は誰?的な要素が2段階になっていて、最初のやつは充分推測できるようになっているが、真犯人についてはその背景が全く描かれていない。 映画の目的がケヴィンとホイットニーのラブストーリーなのだから、それでイイという方針でもアリだけど、頭ひねった側としては何故そうなのか、気になるところである。 特に人を守る仕事をしていた人が何故なのか?彼の後ろに誰かいるのかいないのか?なんてあたりを描いてくれると、もっと「ボディガード」という映画になった気がする。 と同時に、その人異常に不自然な人物だから、登場後しばらくして怪しいと思えちゃうのも、イマイチ。[DVD(字幕)] 5点(2013-08-05 14:10:04)《改行有》 247. 明日に向って撃て! 《ネタバレ》 子供の頃、初めてテレビ放送で見た時ほど、主人公の二人を称賛できないのは彼らの素性が強盗で、大人となった今は当時ほど純粋に彼らを英雄視出来ないからかもしれない。 それでも、彼らが進んで人を殺していない事、逃走中にみせる二人の会話・軽口などからその友情を好ましく感じている事などによって、なかなか憎めない。 だから、ボリビア軍の銃弾の雨に飛び出すラストシーンは、彼らの「明日」を信じてあげたくなるのだ。 そうだ、このタイトルが素晴らしいのは、これが彼らに向けた声援だからなのだろう。ボクら観るものの気持ちの代弁なのだから。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2013-08-02 20:50:58)《改行有》 248. 泥だらけの純情(1963) 《ネタバレ》 家の対立を社会身分に置き換えた『ロミオとジュリエット』もの。身分と言っても片方はヤクザ。反社会的だが、人間的には良いヤツに設定されている。 イマドキの女子高生なら、あの程度のことで死を思い詰めちゃうほどの恋にはならないんだろうが、この時代の少女は純真だ。二人の楽しそうな逃避行は、巧くいってるように見える。だが、ふとした瞬間に二人で見つめた睡眠薬の誘惑に勝てないほど、二人は追い詰められていたんだなあ。 アニキの立場の裏にある、次郎に対する本心がウレシイ。それを含む、二人の死を知った各々の周辺人物のコメントが、その境遇の違いを浮き彫りにする。 しかし、葬儀のシーンの対比による非難がましさは、原作ではそこまで描かれていないので、本作独自の表現なのだろうが、ちょっとうるささを感じさせる。[DVD(邦画)] 6点(2013-08-01 21:23:17)《改行有》 249. 悪名(1961) 《ネタバレ》 主人公は「オレはヤクザじゃない」と言いながら、行動が随分と堅気ばなれしている。それはそれで面白い展開だから良いのだが。というか、この人のそういう行動こそが、この映画の面白さなのだと思う。 昭和初期の遊郭の認識がどんなものかちょっと理解を超えるが、時の社会秩序に反してでも女を自由にしてやるという現代的な正義感。その行動も正攻法ばかりでは無くしたたか。そういった男の生き方の映画。 もうちょっとピンチに陥って巻き返すくらいの盛り上がりがあってもいい気もするが、拳銃が最終兵器的な扱いの、時代なりのリアルさというものもある。 最後に「これにすがって帰れ」というバアさんのステッキを叩き折ったのが痛快であった。このステッキはバアさんの情けであり、ヤクザ世界での彼女の力であるからだ。 ところで、主人公が嫌がった「悪名」がこの映画のタイトルなのは、どうしたことだろう。世間に伝わる悪い名も、その大元にはそれとは真逆な魂の物語があるかも知れん、と言う事なのだろうか。[DVD(邦画)] 6点(2013-07-31 18:59:43)《改行有》 250. 第三の男 《ネタバレ》 なるほど、『霧笛が俺を読んでいる』のネタ元ですね。事件そのものの詳細、特に3人目の人間がいた・いないの件はちょっと判りにくい上に水掛け論的でイマイチ。門番が証言を覆す心情もちょっと雑っぽい。 だが、終戦後たった4年という時期の、敗戦国扱いと見紛うばかりのオーストリアでの出来事にしては、アメリカ人の妙な正義感が上滑りしている物語が良い。どこか倫理的な価値観による男の行動原理と比べると、女のそれはそういったモノとは違う感情に基づいており、「んー、いつの世も女は女なんだな」と、分かったような分からぬような事を思わせる。 正直なことろ、話としてはそれほど面白くは思えなかったが、後から振り返った歴史認識ではドイツに侵略されたと思っていたオーストリアが、終戦当初はドイツ側(合併したからか)である敗戦国扱いだったという事を知ったのが、これを見て一番勉強になり、驚いたことだった。[DVD(字幕)] 6点(2013-07-25 22:44:10)《改行有》 251. 霧笛が俺を呼んでいる 《ネタバレ》 タイトルの意味の無さには引くが、思っていたよりも面白い。伏線なんかない、行き当たりばったりの無国籍アクションかと思ったが、かつて友情で結ばれていた男二人の物語の、時を経て迎えた結末が良い。 …と思ったら、第三の男の翻案だったのか。知らずに恥をかくところだった。名作と言うのは見ておくものだ。と言う訳で急遽、原典も見てみた。 戦争の傷跡をすっかり拭い去って、うまい事日本の話に翻案したのではないだろうか。但し、原典で魅力的な役だった、殺された男の女が、ちょっと軽くなってしまっている。その役割の一部を小百合ちゃんに割ったのだろうか。さすがに映画出演2作目だという吉永小百合の演技は、拙いなんてもんじゃないけど、美少女全開のカラー映像はそれだけでイイ。[DVD(邦画)] 6点(2013-07-25 22:42:19)《改行有》 252. トキワ荘の青春 《ネタバレ》 しかし、自分のやり方が通用しなくて、後から来た若者がどんどん認められてゆく状態というのは、キビシイものだ。客観的な優劣がない代わりに、人々の支持という形で現れる類のモノでは、なおさら辛かろうと思う。 そういう人が、次々と成功する後続を見つめ続けるこの物語は、タイトルがイメージさせるほど若く明るいものではない。むしろ「寺田の苦悩」ともいうべき物語に見える。…まあ、そうは言っても描写が淡白すぎて、彼がどう葛藤しているのかいないのか、分かりにくい事は事実。 そうかと言って、トキワ荘に住む若者たちの群像劇だといわれると、ちょっと視線が寺田に寄り過ぎている。 つまり、何を描きたいのかがよく分からない。正直、あのアパートで見たいものは新しい漫画のムーブメントを作った若者たちの話であって、道半ばに倒れた若者の話をではない。それをするするなら、別の素材もしくは成功側の若者を排除した視点でやるくらいの「絞り込み」が必要ではないだろうか。 それと、暗転が長い。多い。物語に無関係な、昔の写真の時間がもったいない。セリフが聞き取りづらい。[DVD(邦画)] 3点(2013-07-24 23:56:18)《改行有》 253. 首都消失 《ネタバレ》 理不尽で不可解な超常現象に対して、人間が右往左往しながら対峙する物語。基本的に、怪獣映画のセンスで作られているが、異常事態が発生した時の政治家たちや報道機関、安全地帯にいる一般人などを、リアルに描こうとする姿勢が見て取れ、まだゴジラシリーズよりはまともに見れる。もっとも、SCMトラックなどはメーサー砲のセンスで辟易ではある。 この東京を包み込む謎の雲の正体が、全く語られないのが逆に良かった。自然現象と説明するのは無理がありすぎるし、兵器・地球外からのいたずらや攻撃などでも規模が規模だけにウソっぽい。人間にはどうしようもない事のメタファとしてそのままで良いと思う。 電気的な特徴を持っているとか、薄い皮のような状態だとかの、雲の詳細が少しづつ分かってくるあたりは、とてもワクワクする面白さなのだが、人間の家族ドラマのほうがありきたりで、つまらない。さらに「特殊兵器」への展開には、やっぱり日本のSFなのだなあ、と思い知らされる。[ビデオ(邦画)] 4点(2013-07-23 20:05:40)《改行有》 254. シュガー・ラッシュ 《ネタバレ》 こんなに登場人物に感情移入したのは、久しぶりであった。その世界で汚れ役を押し付けられて、当然と思われている男。それが職業であるのに、その為に忌み嫌われている男。 「神に選ばれてそれをしただけなのに、なぜユダは救われないんだ問題」である。 まあ、そんな重たいテーマでは、子供に見せられる映画にはならない。しかし、さすがディズニー映画、疎外する周りの人達を含めて、巧いこと着地させている。 私としては、ラルフが去りゲーム世界が成立しなくなったシーンが最高に小気味よい。世の中には必要悪というのがあるのだ、と思うよりは、この世に必要ない人なんていないんだ、とディズニー的に解釈したい。 しかし、多分この物語の一番の重要所であろう、フェリックスが嫌われた事を嘆き、以ってラルフの苦悩を知るところの描写が、ちょっと軽かったのではないか。 が、その後の大団円までの怒涛の展開が素晴らしい。うっかり忘れそうになっていたアレと彼女が、ラルフたちの物語に絡んできて、まさかのアレがそんな伏線になっていようとは…。つくづく、見事だった。 唯一気に入らないのは、ラルフの疎外についての結末で、物語途中でフェリックスと理解し合った描写はあるものの、他の住人たちに関しては、ほとんど描写のないことだ。「君がいないとダメなんだ」くらいの事を言わせても良かったと思うのだが。[DVD(字幕)] 8点(2013-07-22 21:04:08)(良:1票) 《改行有》 255. わさお 《ネタバレ》 自分にもネコの家族がいる身なれば、こういう動物と心通わす物語は大好きである。古くは、マリリンに逢いたいや、ハチ公物語、最近ではきな子なんて犬映画があった。どれも実在の犬の実話ベース。皆それぞれ見たくなるよなドラマがあった。 しかし、このわさお君はこれといったドラマの無いタダの人気者なので、感動ドラマを作って本人が演じたという。 その物語というのが、どうにも…。 少年の母親が大事故に合うシーン。古典的なボールの落とし方から、レースコース上でまさかの自動車事故など、色々言いたいことはあるが、もう敢えて全てに目をつぶろう。 それでも受け入れられないのは、東京から少年に会いに帰ってきた犬が、直前で彼を見守るっているだけって所だ。訳あって離れている息子を陰から見守る親、なんてのを思い浮かべる。しかし、彼は犬である。 コレと、薬師丸の飼っている犬達が、同じ生き物だと納得するのは難しい。もちろん、訓練もしていない、マタギ犬でもないわさおが、クマと戦って相手を殺すなどという話にも。 主人公わさおに関する話が、説得力皆無というのは、致命的だ。 語るドラマも無い本人と、本当のドラマを演じる別人。多くの観客は、本人よりも劇映画を見に来ているはずである。わさお君が見たい人は会いに行くべきだ。映画を見たい人は、コレではない何かを見るべきだ。[DVD(邦画)] 3点(2013-07-15 11:38:44)《改行有》 256. 突破口! 《ネタバレ》 井筒和幸がラジオで「映画の義務教育」などと絶賛していた映画。まあしかし、よくよく考えてみると放送当時公開していた、自作のギャング映画の宣伝に担がれたっぽく、その辺若干腹立たしい。本作自体には関係ないけど。 銀行強盗で得た金を持って逃げる犯人と、それを追うマフィア一味との追っかけっこ。犯罪者が逃亡に使う闇の商売に、(当然だが)ことごとくマフィアの手が回っているのを、うまくかわしながら逃げる主人公の頭の良さに唸る。 飛行機の曲乗りの設定が生きる、ラストの展開も見事。 …だけど、歯のレントゲン写真の小細工といい、名前入りオーバーオールの処置といい、まだまだ警察に追われちゃうよな。[DVD(字幕)] 7点(2013-07-12 07:22:33)《改行有》 257. アイコ十六歳 《ネタバレ》 原作のアイコを研磨してすっかりカドを落とした感じがするのは、その面白さでもある、彼女の一人称で語られる若者らしい考えの数々が、映画では見えないからだろう。 その代わり、さすが女の子映画の旗手、今関よしあきによる目にも楽しい美少女たちの、ごく普通の学校生活が楽しく美しく描かれている。 その辺、方向を違えていくのかと思ったら、数々のエピソードの中から、生き死にというテーマにそって、オリジナルとして首吊り死体発見や新任教師の自殺騒動など加えながら、次第に原作通りのクライマックスへ誘う展開は巧みである。そしてそれとは繋がりそうもなかった紅子の問題も、自殺未遂教師の件で着地(完全にではないけど)させているのも巧い。 しかし、今作の最大の魅力は、なんといっても(あんまり活躍しないが男子も含めての)高校生たち。夏の強い光をそのまま反射させているような、その輝きだ。ちなみに最後のシーンは本来年末の設定だったが、映画はすべてを夏(少なくとも夏服の時期)として描いている。これも正解。若い魅力にはまぶしい光がよく似合う。[DVD(邦画)] 9点(2013-07-11 10:46:46)《改行有》 258. 大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇] 《ネタバレ》 こんなに手当たり次第に子作りしてると、いざご懐妊という時に、誰の子?となる事必至だろうな。 一応、後継ぎの父はそれなりに地位を与えられる仕組みらしいから、結構厄介なことになると思うのだが。 ま、いいけど。 主に女性(と、男の好きな人)向けの「たくさんの若いイケメンを楽しむ」という目的で、男女逆転の世界を作ったハズのわりには、今回女将軍に選ばれる人たちが、どれもこれも田舎のにいちゃんっぽいのは、いかがなものか。いや、自分は別に構わないけど。 好意的に解釈すれば、今回の映画はそんなところに主眼は無く、堺雅人と菅野美穂のラブストーリーなのだ、と取れるが、それなら男女逆転してなくて良くないか? この設定を生かすなら、冒頭書いたような騒動でも起こって、男と女の否応ない違いと役割を問う位しないと、意味が出てこない気がする。あっ、若いイケメンを楽しむのが意義だったか。[DVD(邦画)] 4点(2013-07-09 10:25:50)《改行有》 259. 不知火檢校 《ネタバレ》 盲や障害者の人たちは善人だという根拠の無い思い込みを、これだけ豪快にぶっ飛ばしてくれると、清々しくもある。そして、その悪行ぶりも目の見えない事を理由にしておらず、純粋な悪意として描かれており、勝新の演技の生々しさと相まって、実に憎々しい悪党ぶりだ。 最後に自ら仕掛けた罠に、返り討ちに会うように身を滅ぼすのも気持ちイイ![DVD(邦画)] 7点(2013-07-06 03:58:47)(良:1票) 《改行有》 260. デンデラ 《ネタバレ》 アレは違う所の話で、ましてや続編などではないのは百も承知だが、どうしたって『楢山節考』を思い出す。あの、親を捨てなくてはいけなかった息子の苦悩、息子たちの負担になるまいとして捨てられることを喜んだ母の思い。そういったものが台無しになった感がとても悲しい。あれとは違う世界なのだと、自分に言い聞かせながら見なくてはいけない。 まあしかし、有名な伝説であり、後日談を書くのは自由だ。だが、いきなり捨てられた事への復讐という、期待と違う方向へどんどん行ってしまう話に焦る。姥捨ての生き残りの話なら、どう考えても貧しさと生き死にに関する話だ。 復讐譚が未遂に終わり、やっと野生動物との生き死にをかけた話になるが、はやり期待した世界観とは違って戸惑う。だが、良く考えると、熊は生きるために人間を食う。そのためにやむを得ず人には死んでもらう、姥捨てと同じ論理である。 だから、この話の中で老婆たちが熊の論理に、片鱗でも思いを巡らせたら、その上でやはり人間は死ぬ訳にはいかないと結論したなら、私はこの物語を評価したと思う。だが、彼女らは自分を滅ぼすものとして徹底して熊を悪者にしているだけだ。ある意味、草笛長老の意思通りなのだが。 その境地に至るのは我らが主人公、浅丘ルリ子だけだ。彼女は今度こそ、極楽浄土へ行くことだろう。[DVD(邦画)] 5点(2013-06-26 17:32:35)《改行有》
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS