みんなのシネマレビュー
S&Sさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

◆検索ウィンドウ◆

◆ログイン◆
メールアドレス
パスワード

◆ログイン登録関連◆
●ログインID登録画面
●パスワード変更画面

◆ヘルプ◆
●ヘルプ(FAQ)

◆通常ランキング◆
●平均点ベストランキング
●平均点ワーストランキング
●投稿数ランキング
●マニアックランキング

◆各種ページ◆
●TOPページ
●映画大辞典メニュー
●アカデミー賞メニュー
●新作レビュー一覧
●公開予定作品一覧
●新規 作品要望一覧照会
●変更 作品要望一覧照会
●人物要望一覧照会
●同一人物要望一覧照会
●関連作品要望一覧照会
●カスタマイズ画面
●レビュワー名簿
●お気に入り画面
Google

Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 2490
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

投稿関連 表示切替メニュー
レビュー表示レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示作品用コメント関連表示人物用コメント関連表示あらすじ関連表示
コメントなし】/【コメント有り】
統計メニュー
製作国別レビュー統計年代別レビュー統計
要望関連 表示切替メニュー
作品新規登録 / 変更 要望表示人物新規登録 / 変更 要望表示
要望済関連 表示切替メニュー
作品新規登録 要望済表示人物新規登録 要望済表示
予約関連 表示切替メニュー
予約データ 表示

評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
6162636465666768697071727374757677787980
81828384858687888990919293949596979899100
101102103104105106107108109110111112113114115116117118119120
121122123124125
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
6162636465666768697071727374757677787980
81828384858687888990919293949596979899100
101102103104105106107108109110111112113114115116117118119120
121122123124125
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
6162636465666768697071727374757677787980
81828384858687888990919293949596979899100
101102103104105106107108109110111112113114115116117118119120
121122123124125

361.  座頭市(2003) 《ネタバレ》 21世紀にもなって、これほど「め〇ら」というセリフが多用される日本映画が観れるとは、もう嬉しくなっちゃいます(笑)。「北野武が座頭市を撮る」と聞いてびっくりしたもんですが、観てみれば勝新太郎の『座頭市』とは似ても似つかず、“リブート”というよりも“リコンストラクション”と呼ぶのが相応しいぶっ飛びぶりでした。その強さはもう超能力者レベル、だいいち座頭市が金髪というところからしてどうかしています。自分は本作の特徴は“リズム”をとことん重視した撮り方じゃないかと思います。タップのリズムで野良仕事する百姓など時には意味不明なところもありますが、シーンが切り替わるタイミングなんかも含めて快調なリズム感はなかなか心地よい感じすらありました。まるでポリウッド・ムーヴィーみたいなラストはちょっとやり過ぎ感すらあり賛否が分かれていますが、自分は好みです。初めて観たときはまだ『踊るマハラジャ』などのポリウッド・ムーヴィーを知らなかったので、そりゃびっくりしましたよ。このセンスならダンス・ミュージカル映画を撮らせたら面白いんじゃないかな。思うにこの映画での座頭市は狂言回しみたいな役柄で、浅野忠信の浪人夫婦や盗賊一味を追う姉弟のエピソードがメインなのかなとすら思ってしまいます。だとすると、このサブストーリーの描き方(とくに浅野忠信パート)が弱いのは気になるわけで、ここが本作の最大の弱点なのかと感じます。またラストで座頭市の座頭市たる所以を否定する驚愕(?)のオチが用意されているわけですが、これなんかも勝新版『座頭市』のファンから嫌われる理由なのかもしれません。[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-03-19 22:26:02)

362.  アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ 《ネタバレ》 上映禁止とまではいかなかったけど、日本ではポルノ映画なみの扱いで公開された伝説のクソ映画『発情アニマル』のリメイク。オリジナル版の監督メイル・ザルチが製作総指揮だけど、30年たって『ソウ』シリーズがヒットして悪趣味なゴア描写に対する世間の寛容度が緩くなってきたので、「現代のエグさでリメイクしたら受けるんじゃね?」とビジネスチャンスを発見したってのが製作経緯だと思う、たぶん。たしかに本作はシリーズ化されたぐらいだからそこそこヒットしたみたいで、ザルチの思惑は見事に的中したみたいですね。 自分は未見ですけど、『発情アニマル』とは逆でレイプ・シーンよりも殺害・拷問シーンの方に比重が明らかに置かれています。というか、やはり『ソウ』シリーズの影響が強いみたいです。極悪非道なシェリフはオリジナルにはいないキャラみたいで、犯人5人の中で唯一の家族持ちで失うものが大きい存在だからストーリーの盛り上げには一役買っていたと思います。そして彼の衝撃の最期、『ソウ』でも滅多に観れないエグさです。シェリフのシークエンス以外はほぼオリジナル通りみたいですけど、一応普通レベルの監督・スタッフが関与しているのでそこそこの水準には達しているかな。と言っても真面目に撮れば撮るほど陰湿なカタルシスしか残らず、これは元ネタがあれだけに致し方ないって感じでしょうか。主演女優に、いろんな面で魅力が乏しかったのも難点でした。[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-03-16 22:05:52)

363.  妖婆・死棺の呪い 《ネタバレ》 ゴーゴリの中編小説『ヴィー』の映像化。社会主義リアリズム・唯物史観のソ連で製作された珍しいホラー映画、まあ文豪ゴーゴリの作品の映画化だからお目こぼしをいただいたって感じなんでしょう。ゴーゴリにはこういうフォークロア的な怪奇譚を題材にした作品が散見され、言ってみれば小泉八雲の『怪談』の一エピソードを映像化したようなもんです。当初若手の監督が映像化を手掛けたが上手くいかず、ソ連発のカラー映画『石の花』を撮った大御所アレクサンドル・プトゥシェンコが引き継いで完成させました。 神学生が夏休みの帰郷途上で道に迷って気持ち悪い老婆の家に泊めてもらいます。老婆は夜中に神学生に迫ってきてあわや貞操の危機かと思いきや、実は彼女は魔女で神学生に馬乗りして空中浮遊を愉しみます。ここは原始的な合成特撮ですが、幻想的な雰囲気は良く出ていました。またここまでのストーリーテリングはコメディ調で、民話的な軽快さがあります。地上に降り立った魔女に神学生は反撃しこん棒で滅多打ち、瀕死になった魔女は若い美女に変身、彼はビビって逃げます。この魔女転じての美少女が確かに目を瞠るような美形で、これは眼福です。学校に逃げ帰った神学生は、校長から死にかけている地主の娘が彼を指名しているので、最期の祈祷をして来いと命令されます。行ってみると娘はすでに死んでおり、そして彼がボコボコにしたあの美少女でした。そして父親から三晩連続の祈祷を依頼されますが、それは恐怖に満ちた三晩になるのでした…ここからは死棺から夜な夜な蘇る娘と学生の対決になりますが、結界を造って籠ったので娘には中に入り込むことはもちろん彼を視認することすらできません。しかし三晩目には彼女は霊界から悪鬼と妖怪ヴィーを呼び込んで攻めまくってきます。やはりこの映画がカルトとして映画史に残ったのは、この悪鬼とヴィーのビジュアルのおどろしさでしょう。短いシークエンスでしたが子供が観たら悪夢に悩まされるのは必定でしたが、ヴィーの造形が水木しげるの描く妖怪みたいだったのには苦笑でした。  ランタイムも70分余りと中編でしたが、フォークロア調の語り口が印象的な秀作です。原作の舞台もロケ地もウクライナで、登場人物たちもウクライナ・コサックです。現在この地がとでもないことになっていると思うと、心が痛みます。[DVD(字幕)] 7点(2022-03-13 23:32:40)

364.  3-4X10月 《ネタバレ》 北野武、監督第二作目にしてやりたいことを全部ぶち込んできたというところでしょうか。というかこの一作で北野映画の基本プロットを全部手の内明かしたとも言うべきで、続いて撮った『あの夏、いちばん静かな海。』や『ソナチネ』は本作を因数分解したような感すらあります。音楽を全く使わず極端に少ないセリフ、そしてあっけにとられるラストといい一種の不条理劇と言えるんじゃないでしょうか。まだ俳優素人だったたけし軍団の面々も初起用、彼らにバラエティーのような騒々しい演技をさせなかったなかなかの慧眼です。とくにガダルカナル・タカの強面ぶりはかなりのもので、この人ヤクザを演じて凄ませたらピカイチです。あと渡嘉ちゃんのくりだすパンチは、さすが元チャンプだけあって惚れ惚れさせられます。どうせあのラストにするなら、もうちょっと続けて便所から出てきた柳ユーレイが実はあのチームのエースで四番打者、そして活動的な陽キャラだったと判らせるオチにしたら、パラレルSFみたいで面白かったんじゃないでしょうか。まあ北野映画に全般的に言えることは、SF要素というか発想が無いということで北野武のいちばん苦手な分野なのかもしれません。[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-03-10 22:38:41)

365.  太平洋奇跡の作戦 キスカ 《ネタバレ》 日露戦争の『日本海大海戦』やWW1の『青島要塞爆撃命令』なんかは確かにあるけど、戦後の太平洋戦争をテーマにした東宝特撮戦記映画で“勝ち戦(?)”を描いた唯一の作品です。真珠湾攻撃が含まれる『太平洋の鷲』や『太平洋の嵐』もありますが、どっちもボロ負けするまで描いていますからねえ。 有名なキスカ島撤退作戦の実話映像化ですけど、登場人物は全員仮名で生存している関係者がまだ多かった時期ですから、致し方ない面もあるでしょう。三船敏郎が演じる大村少将は“ヒゲのショーフクさん”で知られた木村昌福提督のわけで、容貌は似ても似つかないんですがその物に動じない豪傑ぶりは三船にはぴったりのキャラでした。前半で一水戦の長官として阿武隈に着任するシーンで、捧げ銃をして迎える水兵長のカイゼルひげこそが木村昌福が生やしていた髭で、三船と水兵長のやり取りを含めていわば楽屋落ちみたいになっています。その阿武隈や一水戦の駆逐艦群は東宝特撮で使われた艦船プロップでは最大縮尺で作られており(五十分の一ぐらいか)、モノクロ撮影も相まって迫力満点でした。だいたいは史実に沿ったストーリー展開ですが、けっこうフィクションも織り込まれておりそれが映画的にはスリルを盛り上げる効果を上げています。たとえば濃霧の中で補給船と阿武隈が衝突しますが、実際には衝突したのは駆逐艦でした。でも阿武隈が応急修理に一時間かかって「果たしてキスカ島突入に間に合うか?」というサスペンスを生むわけで、史実を上手く改変した脚本だと思います。エキストラを含めて女性がまったく登場しない、漢くさいお話しでもあります。 チャーチル曰く「撤退戦だけじゃ戦争に勝てない」のも真理ですけど、もぬけの殻になったキスカ島に上陸した米軍が同士討ちで三百人余りの死者・行方不明を出して、「史上最大の最も実戦的な上陸演習」と公式戦記にまで皮肉られているの知るとやはり痛快でしょう。しかしですね、アッツ島では全員玉砕、キスカ島では全員撤退、この差はなんなんでしょうかね。それは、アッツには海軍兵がほとんどいなかったけどキスカの守備隊のうち半分は海軍だった(この映画では全員海軍みたいな描き方ですけど)、という事情を言っちゃうと身も蓋もなくなっちゃうんですけどね。[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-03-07 21:38:37)

366.  勝手にしやがれ!! 黄金計画 《ネタバレ》 シリーズ三作目にして、だいたいの基本プロットが見えてきました。➀謎の女・洞口依子が運営する闇の探偵社(何でも屋?)があり、喫茶店が事務所になっていてオーナーの大杉漣は共同パートナーみたいな位置付け。➁哀川翔と前田耕陽はそこの調査員というか請負人みたいな感じで、ふたりは兄弟分みたいな関係でとくに前田は哀川とホモだちなんじゃないかと思うぐらいべったりの間柄。ここまでは言うまでもなく『傷だらけの天使』と同じというかパクり。➂そこに毎回ぶっ飛んだ不思議ちゃん系の女の子が飛び込んで来て二人は振り回される。④そしてエンドロールでは哀川と前田がデュエットする『森のくまさん』がなぜか流れる(笑)。 今回の不思議ちゃんは藤谷美紀ですが、シリーズ前二作に比べると割とまともというか大人しめのキャラ。居候先の家具・備品を勝手に売り捌いちゃう性癖(?)が彼女の笑わしどころ。そういや哀川の棲み処が、前二作の廃業した魚屋みたいなところからガレージがついた元店舗みたいなところに代わってました。ストーリー展開としてはいつものVシネマらしい雑なグダグダかと思いきや、中盤から悪徳刑事が絡んで来て、とうとうシリーズ初の死人が出る展開。でもこの刑事の末路も含めてブラックなテイストは悪くないかなと思います。微妙な差かもしれませんが、暫定ですけどシリーズ中でいちばん面白かったかなと感じます。 さて、ここからはシリーズ折り返し、はたしてどういう展開になります事やら…[CS・衛星(邦画)] 6点(2022-03-04 22:47:46)

367.  ファイナル・デッドサーキット 3D 《ネタバレ》 久方ぶりに観返しいたしましたが、もうここまで来るとシリーズ三作目あたりと展開なんかほとんど一緒です。もう完全に製作陣も開き直っちゃったのか、サーキットでの惨事からは登場人物たちの細かい描写は一切なくひたすら順番に惨死してゆくのを見せるだけ、エンドロールを除いたら78分という尺はシリーズ最短じゃないでしょうか。死神代理人みたいなトニー・トッドは顔を出さないし、一作目から観ている自分みたいなファン(?)はいいとしても初めての人たちにはパラノイア見たいに順番に拘る死神さんには訳が判らなくなるでしょうね(シリーズを観続けてるこっちにしても理解不能ですけど)。3D化しておりシリーズ中もっともカネをかけたみたいで、各人の死にざまというか人体破壊はそのグロさはMAX、エスカレーターに巻き込まれて肉片と化すなんてよく考えつくなと感心すらしますが、これって中国で実際に起こった事故だそうです。でも主人公のお友達、筋肉バカのハント君の死にざまだけはもう笑うしかありません、あんなことってあり得ますかね?真空ポンプじゃないんだから(笑)。けっきょく死神さんもめんどくさくなったのか、前作に続いて中心キャラを三人まとめてラストで始末、トラックに押しつぶされる三人はレントゲン・スケルトン状態なので男女の区別もつかないけれど、わずかな時間差なんだろうけどやっぱ順番通りなんだろうね(笑)。[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-02-28 20:29:12)

368.  キング・オブ・シーヴズ 《ネタバレ》 最近は世界各国で後期高齢者がつるんで悪さをするというプロットの映画が多いけど、本作はその英国名優版でちなみに実話の映画化。 引退して穏やかに暮らしていたマイケル・ケイン、かつては“キング・オブ・シーヴズ(泥棒王)”と闇社会では有名だった男。妻の死で落ち込んでいたところに、孫ほど歳が離れた若いセキュリティエンジニアからロンドンの宝石街ハットンガーデンにある貸金庫ある宝石・金塊・現金などのお宝を強奪する計画を持ちかけられる。「もう犯罪には関わらない」と亡き妻に誓わされていたが、眠っていた血が騒ぎ同年代の年老いた泥棒仲間を誘って人生最後の大勝負に乗り出すことに。集まったかつての仲間は、ジム・ブロードベント、トム・コートネイ、レイ・スウィントンなど名優ばかり、おまけにちょっとわけが判らないキャラでしたがマイケル・ガンボンまで顔を出します。言ってみれば『バンク・ジョブ』や『オーシャンズ11』の後期高齢者ヴァージョンという感じです。2015年に起こった事件ですが、実は『ハットンガーデンの金庫破り』という題名でTVミニ・シリーズも本作の後に製作されており、割と最近の事件だけにインパクトが強いみたいです。 金庫室の壁に開けられた穴なんかは実際の犯行現場と同じで、割と忠実に事件を再現しているみたいです。ところがその忠実さが仇となって『オーシャンズ11』などと違ってすっきりした物語にはならず、強奪自体は上映開始から半分ぐらいの尺で成功しますが、その後グループの仲間割れが酷くなってゆくところを見せつけられることになります。観ている方のテンションが下がってしまうのは、犯行計画を立てた首謀者であるマイケル・ケインが犯行成功前に脱落してしまうところでしょう。だって『オーシャンズ11』でジョージ・クルーニーが途中から降りてしまうなんて想像つかないじゃないですか。後を継いでリーダー格となるのがジム・ブロードベントですが、普段の穏やかなキャラではなく疑心暗鬼の強いけっこう凶暴な爺さんというのが面白い。他の二人も互いに疑いあって分け前で揉めるし、『グッドフェローズ』のデ・ニーロみたいにブロードベントが仲間を口封じするんじゃないかとひやひやしました。さすがにマイケル・ケインもそのままフェイド・アウトするのじゃなくてストーリーには絡んできますが、実話なんだからと言ってしまえばそれまでですけど、いまいちキレがないキャラでした。それでもぶち込まれる糖尿病やら他尿症やらといった老人ネタにはブラックなペーソスがあり、それを披露する各人はさすが芸達者です。 似たようなお話しですが『バンク・ジョブ』みたいなカタルシスは期待しない方が無難です。でもラストで、捕まったマイケル・ケインはじめご老人たちが法廷の廊下を歩くシーン、各人のアップの後にそれぞれが若き日に演じたギャング姿をカットバックで挿入する見せ方は、なかなか洒落ていました。[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-02-25 23:01:13)

369.  グリーンランド -地球最後の2日間- 《ネタバレ》 すい星群が大挙して地球に衝突してついに人類絶滅か?というお話しですけど、たった二日間の猶予しかなく政府内部の動静はいっさい描かれず、ひたすらジェラルド・バトラーと家族の視点だけでのストーリーテリング、スピルバーグ版『宇宙戦争』と似た感じですね。実際のところ地球に接近する小惑星や彗星は全部把握することは不可能で、恐竜絶滅のきっかけになったような規模の小惑星の地球との衝突は一億年に一回の割合で起こるらしく、自分が生きている間に起こっても不思議はない災害イベント。だからこそシミュレーション的に考えて撮ればリアルな映画になったかもしれないけど、そう言う志向は皆無の脚本なんでとうてい面白いとは言えない映画になってしまいました。キリスト教的価値観のお国柄か、ハリウッドの核戦争や天変地異が地球を襲う映画は、ほとんどが「選ばれし者が生き残る」という結末なのが肌に合いません。グリーンランドにある合衆国のシェルターに避難できる人間に、なんで一介の建築技師であるバトラーとその家族が選ばれるのかはまったくもって理解不能。あんな状態で三人が離ればなれになったのに大した苦労もなく再会できるというはご都合主義の極み。恐竜絶滅のときよりも巨大なすい星がヨーロッパを直撃したのに、わずか9カ月後には太陽光地表に届く状態に回復するってあり得ないでしょう。だいたい、そんなにデカいのなら、もはや彗星ではなく小惑星ではないのかな?「人類は絶滅しない」という結論ありきなので、科学的な考察は蔑ろにされているのは残念。グリーンランドのシェルターにしたって、最初は死人がでても選別された人間しか運び込もうとしていなかったのに、最後の方になると誰でもOKみたいな感じなのも雑過ぎる。災害イベントにしても意外と見せ場は乏しく、あの荒唐無稽な『2012』の方がよほど見応えがありました。 最後に言っておきたいのは、こういうディザスター・ムーヴィーにおいて子供や家族愛をダシに使うことはもう止めてほしいってことです。[CS・衛星(字幕)] 3点(2022-02-22 23:30:30)

370.  ある愛のすべて 《ネタバレ》 『ある愛のすべて』、まず邦題からして如何なもんでしょうか。これは言わずと知れた70年の『ある愛の詩』のパクり、まあこの大ヒット映画とは似ても似つかないグチャグチャの三角関係の愛憎劇なんですからねえ。 セレブな建築家のマイケル・ケイン、その有閑マダムを絵に描いたような豊満な妻がエリザベス・テイラー、ケインが浮気のつもりで手を出したがだんだんマジになってゆくブティック・オーナーがスザンナ・ヨーク、というのが基本的な登場人物、というかこの三人だけで進行するストーリーです。この頃のケインは男の色気が絞ったら滴りそうな絶頂期、そのキャラ付けは60年代の出世作『アルフィー』の主人公がセレブに成り上がったという感じ。そのケインとリズの夫婦喧嘩が凄まじく、これを延々と見せられる前半はほんとうんざりさせられます。リズは『バージニア・ウルフなんかこわくない』を彷彿させる役柄、仲の悪い夫婦の悪妻はもはや彼女の十八番と言えそうな域に達しています。浮気相手のヨークにも面と向かって悪態をつくし、素のリズも口が悪いことでハリウッドでは有名だったので、けっこう本人も愉しんでいたんじゃないかな。でもそれを見せられる方としては愉しめるかと言うと、そんなわけないですよね。ケインもロールスロイスを乗り回す身分ながらリズのクリーニング代金にも文句をつけるケチ臭い男、小物感は否めません。 大喧嘩を繰り返した挙句ヨークとアパートを借りてリズと離婚するという展開なのに、リズがケインには未練たっぷりでお話しはすんなり進行せず行きつ戻りつ状態、挙句の果てにはリズがリストカットして自殺未遂という波乱のストーリー。「こりゃ、いったいどういうオチになるの?」と呆れているとヨークがリズに打ち明けたある秘密から予想外の展開になり、ラストカットのケインの表情と同じく観ている方も啞然茫然となる幕の閉じ方でした。 けっきょく誰にも感情移入できず、大人の恋愛というレベルのお話しにも達していない。三人ともキャリアに脂がのりきった時期の作品なのになんでこんなに埋もれた映画になってしまったのか、そりゃ観れば納得できますよ(笑)。[CS・衛星(字幕)] 3点(2022-02-19 21:51:31)

371.  王妃マルゴ 《ネタバレ》 製作時にフランス映画史上で最大の製作費をかけたという大作。歴史物語というよりもアレクサンドル・デュマの小説『王妃マルゴ』の映像化と言うほうがしっくりきます。シャルル九世のカトリーヌ・ド・メディシスによる毒殺などただでさえドロドロした歴史にデュマ節のフィクションが盛り込まれていて、もうコテコテ状態です。同時代のイングランドのチューダー朝に負けず劣らずヴァロア朝もグチャグチャな宮廷ですけど、こりゃあヴァロア朝の方が上を行ってるかも。 巻頭のマルゴとアンリの結婚式シークエンスからして、こりゃカネかかってるな、と見せつけられる映像です。カトリックとプロテスタントの対立なんて一般の日本人には実感不可能なお話しですけど、中世ヨーロッパ王家では婚姻は外交であり政治であるってことだけは理解できます。たしかにマルゴ19歳アンリ18歳での結婚が史実ですから、この二人はトウが立ちすぎていることは否めません。でもアンリの方は肖像画とダニエル・オートゥイユの風貌が結構似ているから、フランス人には違和感が少なかったかもしれません。アンリはプロテスタント→カトリック→プロテスタントと何度も改宗するわけですが、まるで選挙で支持政党を替えるような感じすらして、いくら生き残る為だったとは言ってもますます「信仰って何なんだろう?」と疑問は深まるばかりです。マルゴはマルゴで近親相姦までするほとんどニンフォマニアみたいな女、まさにイザベル・アジャーニにぴったりのキャラ(おっと失礼)。この映画は全編にわたって彼女の大芝居を延々と見せられるわけですが、偽装結婚だったはずのアンリを助けるようになる心境の変化が判りにくい。まあ愛人ラ・モールを救うためだったとすると、身も蓋もないんですけどね。そうなってくると、いちばん感情移入できるのはジャン=ユーグ・アングラ―ドが演じたシャルル九世なんでしょうね、文字通り血の汗を流しての悶死はあまりに壮絶です。 この映画は、サン・バルテルミの虐殺や死体の解剖など血生臭い描写が多いのが難点です。これは製作当時にエスカレート中だったフレンチ・スプラッターのゴア描写の影響もあったのかな。[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-02-16 22:38:41)

372.  八甲田山 《ネタバレ》 近年では新資料の発掘により高倉健が演じた徳島大尉=福島大尉の傲慢ぶりやその雪中行軍での実像が明らかにされていますが、原作の『八甲田山 死の彷徨』はあくまで(当時判明していた)史実をもとにしたフィクションであり、割り切って観るのが正解です。それでもこの原作を映像化したプロジェクトは、日本映画界の偉業というか狂いっぷりとして永く語り継がれてゆくことでしょう。だいたい、真冬の八甲田山であの豪雪の中ロケを敢行するというムチャっぷりがぶっ飛んでます。これはヴェルナー・ヘルツォ―クの『アギーレ/神の怒り』や『フィツカラルド』に匹敵する映画的暴挙とも言えるんじゃないでしょうか。CGなんかもちろん存在していなかった時代、あの腰まで埋まる積雪や暴風雪、雪がこびりついた軍服や軍帽のひさしから垂れる氷柱まですべて本物なんですからねえ。特に息を飲むのは雪崩に巻き込まれるシーン、実際にダイナマイトを使って起こした雪崩は想定を超えた規模になり、撮影現場で見ていた橋本忍は「こりゃ死人がでたぞ、これでこの映画は終わりだ…」と戦いたそうです。俳優やエキストラたちも過酷な扱いになり、褌一丁で雪の中で転げまわさせられたりしてこれだけでも重病人が出そうな撮影です。神田隊の隊列を鳥瞰で見せるカットからはその人数は史実通り200人超の様であり、普通の映画よりはるかに少人数だとは言ってもエキストラの確保は苦労したでしょう。某角川映画にエキストラ参加した経験がある自分としては、エキストラの半分が逃げたというのは実感できます。でも屋外ロケはほとんどが雪原であり、照明が使えないうえに雪が光を乱反射してしまうからフードを被った俳優たちの顔は昼間でもほとんど識別不可能、声で判断するしかないってのは苦しいところです。もっとも加山雄三だけは、あの独特の太い声と大根なセリフ回しのおかげですぐ判りますけどね(笑)。有名な「天は我々を見放した~」というセリフは史実に基づいているそうですが、たしかに部下の前で隊長が言ってはいけませんね。それよりも、徳島大尉=高倉健が道案内してくれた秋吉久美子に「案内人どのに向かって、かしら右!」と号令をかけるところの方が心打たれました、もちろんフィクションですけど。あと忘れてはいけないのはこの映画のテーマソングにすら思える軍歌『雪の進軍』、名曲です。 印象に残ったのは、地元青森出身の兵士が言う「あいつらは宮城や岩手の人間だから雪の本当の怖さを知んねえ」という言葉、雪国育ちではない自分にとっては宮城も岩手も冬は雪が多いところというイメージですが、青森から見たら全然違うってことなんでしょうね。でも確かに地図を見てみれば青森周辺は本州の中でももっとも太平洋と日本海が近接している地域で、この地理的要因がもたらす自然の猛威は軽く見てはいけないんですね。[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-02-13 22:48:57)(良:2票)

373.  マシニスト 《ネタバレ》 暗~いこの独特な雰囲気、やはりというか地味なハリウッドの俳優と監督を起用しているがプロデューサー以下の製作陣とロケ地はスペインで、どうりでスパニッシュ・ホラーのような雰囲気が漂っていたわけですね。良心の痛みがドッペルゲンガーを通して具現化されちゃうというのは、古くは20年代の『プラーグの大学生』を筆頭に良く使われてきたプロットですが、そこに不眠症を絡ませてきたのが新しいところですかな。一年間も眠れないというのは現実にはあり得ないし(速攻で死んじゃうでしょう)、実際の不眠症状だって多少なりともレム睡眠的な状態になって人体を維持しているものです。なので『地獄の黙示録』のカーツ大佐みたいなアイヴァンが妄想的な存在であることは、観てればすぐ判る。でもオチを知って感心させられるのは現実と妄想のシームレスな見せ方で、このストーリーテリングは素直に上手いなと感心しました。 そして何と言っても壮絶なのは、まるでアウシュビッツの囚人みたいなクリスチャン・ベールの激やせっぷりです。ストーリー上でも不眠症になる前のベール=トレヴァーの姿をちょっと見せますから、この対比は凄いの一言です。きっとこのシーンは、ベールが役作りに入る前にいの一番に撮ったんじゃないかな。思えばこれがいまやクリスチャン・ベールの代名詞ともなった肉体改造の始まりなんですが、劇中で肉体改造のビフォーアフターを見せたのは本作だけだったんじゃないでしょうか。でもあれだけ骨川筋衛門になっても体重が55キロっていうのも、ある意味凄い。やっぱこの人は骨が太いんでしょうね(笑)。[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-02-10 23:08:30)

374.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 いやぁ~、わずか15年前にはこんなトンデモナイ映画がハリウッドで製作できたんですね。スパルタ人が全員白人なのは当然としても、もう“悪の帝国”感丸出しのペルシャは黒人系を始めとする有色人の俳優ばかり、そして中には「こんな奴、おらんやろー」と叫びたくなるような巨人や腕の先っぽがナタみたいになってる奇形人間まで登場、ペルシャはエイリアンの国かよ!9.11後にアメリカ合衆国vsイスラム教という対決図式が定着したので、こういう煽情的な映画がウケると判断した製作陣、まあ貴方たちの読みは外れてなかったんですけどね。あのトンデモ国家・スパルタが民主主義の原点だという史観は「ちょっと違うだろ」と突っ込みたくなりますし、そのうえ最後にディリオスが伝えるレオニダス王のメッセージは、そのまんま当時のブッシュ大統領の演説なんじゃないかと錯覚させられるようなロジック。ペルシャの末裔でもあるイランがこの映画のペルシャ人の描写に猛抗議したそうですが、ハリウッドは当然のように無視。でも最近のハリウッドは中国政府にはクセルクセスに跪いているようにヘイコラしているのが現状、カネがすべてのハリウッドですけど少しは恥を知れ!と言いたい。 手足がそして首がバッサバッサとちぎれ飛ぶチャンバラの迫力は刺激が強すぎですが、よく考えるとこの映画は演技している俳優以外の背景や画はほとんどCGなんですね。スパルタの男たちはみんな腹筋割れまくりマッチョ、製作陣は否定しているけどあのシックスパックも実はCGなんじゃないの(笑)。兜と盾は持っているけどパンツ一丁に赤いマントを羽織ったまるでプロレスラーみたいな戦闘装束、重装歩兵戦術が最盛期なんだからそんな半裸で戦争したわけないでしょ。あとペルシャ兵が手榴弾みたいな爆発物を投擲するけど、火薬が発明されたのはその千年ぐらいあとなんですけど…と、ツッコミどころは満載です。まあ、あのヤバい奴フランク・ミラーのグラフィック・ノヴェルが原作なので、ケチつけてもしょうがないですけどね。B.L.M 運動なんかが盛んな現在では、ぜったいに製作できない内容であることは確かです、ひょっとしたら将来は上映禁止になったりして…[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-02-07 22:03:15)

375.  どん底作家の人生に幸あれ! 《ネタバレ》 文豪チャールズ・ディケンズの自伝的小説『デイヴィッド・コパーフィールド』の五十年ぶりの劇場映画化です。それにしても『どん底作家の人生に幸あれ!』とはずいぶん大胆な邦題ですね、でも意外と内容を上手く要約した良いセンスだと思います。 原作はサマセット・モームが選んだ“世界十大小説”にランクインするほどの名作、英文学をかじった人なら知らない者がいないほどの有名小説です。文庫本にしても4分冊にもなる長編ですが、それを二時間にまとめるというのはなかなか骨の折れる仕事だったと思います。この映画化でユニークなところは、主役のコパーフィールドをインド系のデヴ・パテルが演じており、また一部の主要登場人物がインド系・黒人・東洋系の俳優が起用されているところです。なので、コパーフィールドの白人の親友スティアーフォースの母親が黒人女優、なんて不思議な映像を見せられます。このキャスティングの意図は私には?ですが、推測するにデヴ・パテルを主演に使いたいというアイデアから始まった企画なのかもしれません。でも観ているうちにどんどん違和感がなくなるのが不思議、それだけパテルの演技が素晴らしかったということでしょう。この人の映画は初めてでしたが、彼は近い将来オスカー男優賞をゲットするような大物俳優になることは間違いなしです。コパーフィールドの伯母役はティルダ・スウィントンですが、珍妙なキャラを飄々と演じています。『デッド・ドント・ダイ』もありますが、彼女って最近はヘンなキャラで怪演を見せてくれることが多いんじゃないかな(笑)。 メタ・フィクション的なストーリーテリングは現代的な印象を与えますが、実はこれは原作の語り口の再現でもあります。開始から約三分の二までは原作に忠実な展開ですけど、ラストにかけてはかなり監督の独自解釈になっています。世間知らずの妻ドーラやウィックフィールド弁護士の死はなかったことにして、作家として成功したコパーフィールドのもとにほとんどの登場キャラが楽しそうに集まる大ハッピーエンドで幕が下りるのです。ディケンズ自身もこの自伝的小説で失恋や失敗だった結婚生活などを幸福な体験に作り替えており、尺の都合で端折らなくてはいけない事情を逆手にとって、ディケンズの夢想した幸福を見せようとしたんじゃないかな。波乱万丈なストーリーだけど、多幸感に満ち溢れたラストはこれで良かったんじゃないかと思います。[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-02-04 22:37:08)(良:1票)

376.  勝手にしやがれ!! 脱出計画 《ネタバレ》 黒沢清の90年代Vシネマシリーズ第二弾です。もちろん哀川翔はじめ基本的なメンバーは変わっていませんが、それぞれのキャラ付けが少し濃くなってきました。哀川翔=藤田雄次は割とまともそうに見えるが実はいい加減なキャラ、前田耕陽=吉行耕作はほとんどバカだけど馬鹿正直なバカ。大杉漣や洞口依子といった常連との会話などは快調なノリで、一作目よりも黒沢清の脚本の腕が上がったかなと思います。しかしストーリー自体は相変わらずVシネマらしいいい加減さ、前回で二人を引っ掻き回したキャラを女から男に変えただけのようなストーリー。ヤクザの親分の娘に惚れられた予備校生とその娘の妹が騒動を引き起こすわけですけど、この予備校生が前作のキャバクラでバイトする保母よりもさらに上を行くいい加減な不思議男、しかも誰だか知らないけど演じる男優が大根役者(妹役の女優のひどさもかなりのレベルでしたけどね)。まあラストのオチは誰でも予想が付くもんでしょうけど、そこに持ってゆくまでの展開の雑さは第一作の再現みたいな感じでした。エンドタイトルで流れる哀川翔と前田耕陽が大真面目に歌っているのが『森のくまさん』、さすがにこのセンスは理解不能です(笑)。[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-02-01 22:36:18)

377.  インドへの道 《ネタバレ》 ああ、これがデヴィッド・リーンの遺作なんですね。実はリーンの妻はインド人で、インドにはいろいろな思いがあったんじゃないかと思います。結果的に最後の作品でインドをテーマにしたわけですが、本当は『ガンジー』みたいな映画を撮りたかったんじゃないかな。 鑑賞してつくづく感じたのは、このインド統治こそが英国人および大英帝国の本性を理解させてくれるものだということでした。前半で散々見せられるアジズ医師を始めとするインド人たちの卑屈さよ、逆に言うと彼らをここまで飼いならす英国人の植民地支配の手腕こそが凄いんでしょうね。朝鮮・台湾が植民地統治だったのかは疑問のあるところですが、大日本帝国なんて帝国主義の世界ではアマチュアだったんじゃないでしょうか。そんな坩堝のような地に旅してくるいわば意識の高い系の二人の女性が、インドの持つ魔力に運命を狂わされる物語でもあります。ジュディ・デイビスは美形なんだけどその眼力というか眼つきの悪さは他の追随を許さないものがあります。この後はウディ・アレンの映画によく出ていましたね。彼女は洞窟に入ったところでそれまでインドの風物からの影響で燻っていた官能に火がついてどうしようもなくなったという感じなんでしょうね。音楽はモーリス・ジャールですけど、アデラが官能的な気分になると流れるメロディーは、どう聞いても『ライアンの娘』のメインテーマの変奏としか思えない。ジャールは本作でオスカー受賞しましたが、どうせなら『ライアンの娘』で評価してオスカーを与えて欲しかったな。同じく洞穴に入ってこだまに恐れおののいて結局死期を早めることになったペギー・アシュクロフト、この人のことは良く知らなかったけどキャリアを感じさせる手練れの演技を見せてくれてオスカー助演女優賞ゲットは納得です。やはり面白いのは、ちょっとKYなんじゃないかと思わせる浮世離れした哲学教授を演じたアレック・ギネスです。狂言回し的なキャラでしたが見事にインド人に化けていました、さすが百面相俳優の異名を持つだけのことはあります。一緒に狂言回しキャラを演じていたのがジェームズ・フォックス、最後に美味しいところを持って行った感はありました。それにしても、『ジャッカルの日』のエドワード・フォックスは弟ですけど、この当時になるとこの二人は見分けがつかないほどそっくりさんになってます。 14年も映画を撮らなかった(撮れなかった?)とは思えないほど、お得意の自然描写やストーリーテリングはしっかりしていたと思います。高齢の大監督の晩年作はメロメロになってしまうことが良くありますが、そんなところは微塵も感じさせられませんでした。[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-31 23:10:38)

378.  マリア・ブラウンの結婚 《ネタバレ》 とにかくこの映画は、主演ハンナ・シグラ=マリア・ブラウンの惚れ惚れとするような逞しい生きざまとその美貌を堪能するのが正解です。敗戦間際にドイツ軍将校と結婚したマリア、夫は激戦の中で行方不明に。駅でプラカードを背負って夫の消息を求めるマリアですが、親友の夫からは「彼は死んだ」と聞かされます。このようなプロットはソフィア・ローレンの『ひまわり』が思い出されますが、そりゃあ監督がファスビンダーですからヴィットリオ・デ・シーカのようなメロドラマになるはずがありません。マリアは黒人米兵の愛人となって身籠りますが、そこに死んだはずの夫が捕虜収容所から帰還して黒人兵と鉢合わせになります。二人がもみ合いになるとマリアは黒人兵をビール瓶で撲殺、裁判では夫が身代わりになって有罪判決を受けて収監されます。まず驚いたのはマリアがあっさり子供を堕胎してしまうところで、あまりのサバサバぶりには「ドイツ女って怖い…」と引いてしまいます。就職した中小企業ではベッドの中で覚えた英語を武器にしてビジネス・ウーマンとしての才覚を発揮してのし上がってゆくマリア、当然の様に社長とは愛人関係になりますが、それを服役中の夫にいちいち報告するのが堪りません。とにかくこの映画では女が強い、その反面に男がみんな腑抜けや甲斐性なし、良くて紳士的で大人しいというのが特徴です。戦後ドイツおよび西独の世情がカリカチュアされていますが、それを暗喩しているのが背景音として流れるラジオ放送の内容です。戦後直後は行方不明者の尋ね人放送、やがてニュースでは西独首相アデナウアーの政策が流されついには54年のワールドカップ決勝“ドイツの奇跡”の実況にまでなります。マリアが親友のベティやその夫ヴィリーと良く訪れる学校の廃墟だけはいつまでたっても復興されず、そこだけはマリアが成人するまで育った戦前のドイツが残っているようで、その場所ではいつもとげとげしいマリアの言動も心なしか落ち着いた感じになります。西独が再軍備を開始してワールドカップを制覇した54年、マリアと夫はマリアが建てた邸宅で彼女の故意に起こしたガス爆発で吹っ飛んでしまいます。この結末にこそ、ファスビンダーの西独政治への辛辣な批評と思想性が込められているんじゃないでしょうか。 今まで観たドイツ映画に登場した女優でハンナ・シグラ=マリア・ブラウンほどその美貌が凄みすら感じさせるキャラは観たことがありません。若死にしたファスビンダーが残した“ニュー・ジャーマン・シネマ”を代表する傑作です。[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-01-28 22:12:09)

379.  アレキサンダー 《ネタバレ》 人類史上で最大の偉業を成し遂げたアレキサンダー大王、子どもの頃にこの話を知った時にはあまりに凄くて神話のお話しかと思ったぐらいです。実は他の歴史上の英雄たちと違って、本作の前に彼の生涯が映画化されたのは、リチャード・バートンがアレキサンダーを演じた56年製作の『アレキサンダー大王』しかないんですね。そんな難易度の高い題材にチャレンジしたのが、21世紀に入って誇大妄想気味になってきたオリヴァー・ストーンです。 物語はアレキサンダーの死から40年後、プトレマイオス朝のファラオに収まっているかつての部下プトレマイオスの回想という形式で進行します。家庭教師アリストテレスとのエピソードなど順当なストーリーテリングで始まったと思いきや、プトレマイオス=アンソニー・ホプキンスのいわゆる“ナレ死”だけで父王フィリッポスからアレキサンダーに代替わり、アジア遠征に乗り出しエジプトを征服しペルシャに攻め入りガウガメラの決戦までナレーションだけで進行するので、これは総集編かよ、ってツッコんでしまいました。でも中盤以降になってフラッシュ・バックしてフィリッポス暗殺とアレキサンダー即位をシークエンスとしてきっちり見せてくれ、けっこう巧みな脚本なのかなと感じます。ガウガメラの決戦・バビロン入城・インド侵入と象軍団との死闘、というところが大きな見せ場・スペクタクルとなりますが、やはりガウガメラは力の入った入魂のシークエンスで凄いスペクタクルです。個人的にはインドでの戦象との闘いには強烈な印象を受け、象がこんなに恐ろしい兵器になるとは驚きしかありません。初めて英軍のタンクに攻め込まれたWW1のドイツ兵もこんな感じだったんでしょうね。あとアレキサンダーたちが初めて猿と遭遇して(ギリシャには猿はいなかったみたいですね)、人間の言葉を喋らない小人の軍団だと驚くところが面白かったです。書物を読んだだけでは到底実感できないアレキサンダーの偉業も、こうやって映像で見せられるとイメージし易くなるもんですね。 ストーリー展開の背景では、妖しい母親アンジェリーナ・ジョリーの野望が隠し味となっています。まるでフランス革命の理想を語っているようなアレキサンダー=コリン・ファレルはいかにも現代的なのキャラクターですけど、マザコン的・BL的なキャラとしては最適な彼が大王らしいかというと首を捻るところです。あと驚かされたのは、アレキサンダーの死が側近将軍たちの毒殺という解釈が採られているところで、さすが『JFK』でケネディ大統領暗殺陰謀説の教祖となったオリヴァー・ストーンらしいですね。ということは、彼が主張したかったのはアレキサンダーが古代のJFKだったということか?[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-25 22:54:00)

380.  第9地区 《ネタバレ》 まさに“アイデア一発勝負”で製作された映画、エイリアンを難民と捉えて大量に増えたエイリアンがスラム化した難民キャンプに押し込められるという設定は斬新でしょう。でもよく考えると、地球に来たエイリアンと人類の共存というテーマは、過去にも『エイリアン・ネイション』なんかで使われているしそう独創的でもない。このストーリーを思いついた監督が南アフリカ共和国人なんで、南アフリカ共和国や周辺アフリカ諸国の現状を織り込んだ脚本はSFながらも普遍的な社会性を持つことに成功しています。だいいち、『第9地区』というタイトルは南アフリカ共和国にかつて存在した黒人隔離施設“第6地区”のもじりなんですから。しかしながら長編映画を初めて監督したというニール・プロムカンプの力量はまだまだの水準で、オスカー作品賞にノミネートされたけど監督賞にはノミネートなしというのは止むを得ないでしょう。 プロットの秀逸さは誰しも認めるところでしょうが、私には映像やアイテムは過去のSF映画の寄せ集め的な印象が拭えないんですけどね。ヨハネスブルク上空で静止する円盤は『インデペンデンス・デイ』、ヴィカスがエイリアン化してゆく描写は『ザ・フライ』、後半に大暴れするモビルスーツは『ロボコップ2』という風に既視感が強いんですよ。まず、本来宇宙船を稼働させるための燃料を身に浴びることでヴィカスがエイリアン化するのが理屈というか説得力がまるで感じられない。エイリアンの姿形や習性のグロさは観ていて拒否反応を起こす人が多そうなレベルですけど、スラム内で活動するギャング団のナイジェリア人の描かれ方も相当なもんです。まあそれを言ったら主人公ヴィカスも感情移入できない奴で、エイリアンの卵を焼き払って「中絶だ」とはしゃぐところなんか、ほんとサイテーです。こういったポリティカル・コレクトに引っかかりそうな描写は、欧米の映画では見られないものですね。面白いのはエイリアンと人類ではお互いの言語を聞き取って理解することができるのに、決して相手の言葉を喋らない(喋れない?)ところです。この変則的なコミュニケーションは、人種や宗教の違いで起こる国際社会での摩擦の一つのメタファーなのかもしれません。[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-22 22:12:57)

030.12%
1120.48%
2371.49%
31315.26%
42068.27%
537114.90%
646818.80%
764125.74%
844717.95%
91445.78%
10301.20%

全部

Copyright(C) 1997-2025 JTNEWS