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プロフィール
コメント数 418
性別 男性
自己紹介 1959年生まれの48歳。
神戸市近郊に在住の、映画をこよなく愛する
市井の人であります。
ま、コツコツとレビューしようと思ってます。

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【製作年 : 1950年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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21.  血槍富士 「私は酒で◯◯を棒に振りました。この世に酒というものさえなければ・・・」 私のまわりにも現にいました、こういう人。シラフならホントにいい人なんだが、いったん酒が入ると別人のように人が変わった。それはさておき本作は、庶民の観点から描いた時代劇として完璧といってよいほど良く出来ています。冒頭早々より主要登場人物をカメラでゆったりと捉える。袖振り合うも他生の縁、みなさん渡し船にこじんまりと収まる。そしてこれらの登場人物が、物語が進むにつれすべてつながってゆく。作品そのものはちょっとユーモラスな作風で、富士を背景に描かれるは天下太平の世。さしずめ人情味溢れる和風ロードムービーと言ったところか。監督はあの邦画史上に燦然と輝く人間ドラマの傑作「飢餓海峡」を世に出した内田吐夢。縁日や旅籠の味わい深い雰囲気描写、多彩な人間模様の数々、庶民に向ける温かい眼差しなどなど、巨匠の名にふさわしく人の描き様が感心するほど上手い。しかも、中国抑留をはさむ10年余の空白を全く感じさせることはない。個人的にはやはり、月形龍之介演じる藤三郎の話が意外性も手伝い大きく胸を打ちましたね。ラストに用意された、青天のへきれきさながらの斬り合いのシーンも迫力充分。あの息づかいといい、見ているこちらまで仇討に参加しているみたいだ。そしてエンディングシーン、骨箱を抱えてトボトボと去ってゆく権八(片岡千恵蔵)の姿がなんともダサカッコイイのだ。まさに異色のヒーローが絵になる時代劇の傑作。[ビデオ(字幕)] 9点(2006-02-11 23:32:43)

22.  地上最大のショウ 監督はあのスペクタクル史劇「十戒」の巨匠セシル・B・デミルなんですが、本作はエンターテイメント作品としてなかなか良く出来ています。世界を代表するリング・リング・サーカスとバーナム・ベイリー・サーカス。この二大サーカスの全面協力を得たことが大きいのは言うまでもなく、適度なサスペンスを散りばめたドラマ仕立てにしたのが良かったのかもしれない。ヴィクター・ヤングの胸躍るテーマ曲が流れるタイトルロールからしてワクワクさせてくれた。サーカスの華である空中ブランコのハラハラドキドキするシーン、象や犬たちのユーモラスな芸などなど、見せ場をふんだんに盛り込んでおり最後まで観客を飽きさせない。ラストに用意されたサーカス列車のスペクタクルシーンなんかも、さすがデミル監督らしくサービス度は満点。そんな中、個人的にはジェームズ・スチュワート演じる謎のピエロのエピソードが胸を打ちましたね。(何と、この時すでに安楽死の問題についてふれている) 観客に夢と感動を与える団員たちのプロ意識にはただただ脱帽。そんな彼らを取り仕切るボスこと座長の苦労の何と多いことか。古き良きアメリカを映し出すテクニカルカラーも印象的な、郷愁を存分に誘う名作です。9点(2005-01-25 12:13:40)(良:1票)

23.  真空地帯 逃げ場のない閉ざされた社会では、陰湿なイジメやリンチが当然の如く発生する。ましてや当時の日本の軍隊という上官や目上の命令が絶対的なものである縦社会では、それが歪な形で顕著に表われる。そもそも軍隊というものは武力や暴力により人を殺すことを目的としている組織なわけで、機構そのものが不条理の塊になって当然といえば当然かもしれない。それにしても初年兵や目下の者を殴る殴る。人間であることを徹底的に否定される様は凄まじい限りである。まさに真空地帯とは言いえて妙で、そこに人間らしさを感じ取れる空気は皆無である。さらに軍幹部は絶対的な権限を有するため、軍需物資を平気で横流し私腹を肥やす。監督山本薩夫は、そんな不条理で腐り切った軍隊という機構を力強くリアルにあばいてゆく。原作者の野間宏と共に監督自身も軍隊経験者だけに、しかも戦後7年しか経っていないこともあるがセット美術、役者達の演技、殺伐とした雰囲気描写などすべてに於いて生々しくリアルである。ガラの悪い関西弁も一役買っている。また木村功、下元勉、西村晃など演技力確かな役者陣に支えられている辺り、群像劇としても見応え充分。反戦映画としては完成度も高く、しかも群像劇の傑作でもあります。9点(2005-01-09 21:51:05)(良:3票)

24.  無法松の一生(1958) 戦時中に作られた阪妻主演の前作は、当局の検閲により大幅にカットされたと聞きます。そのことが余程悔しかったのでしょか、作り手のこの作品にかける意気込みと愛情が充分過ぎるほど伝わってきます。美しいカラー映像を彩りのあるメロディーで包み込んだタイトルロールからしてヤラれてしまった。監督稲垣浩の手作り感に満ちた演出が冴えに冴えており、存在感たっぷりの無法松を演じた三船敏郎に名女優高峰秀子のしっとりとした演技、そしてカメラワーク、音楽、セット美術ともどもすべてに於いて申し分ない。光陰矢の如しというか、過ぎ去る年月を人力車の車輪でもって表現するシーンは抜群に美しく、監督稲垣浩のセンスの良さを遺憾なく発揮している。松五郎が万感の思いを込め祇園太鼓を打つシーンは大いに盛り上がるわけですが、個人的には運動会のエピソードが好きですね。松が子供の頃、唯一大泣きした話をぼんぼんに聞かせた後、パッと開放的な運動会の場面に切り替わる。松が徒競走に飛び入りする。「松、負けたら承知せんぞ」と酔客から声援が贈られる。ぼんと夫人の期待に応えて一等になる。ぼんは小躍りして喜び(この時の笑顔が最高にイイ)、夫を亡くしふさぎがちだった吉岡夫人の瞳までがキラキラと輝く。松を中心にぼんと奥さんが唯一三人一体となった場面で、この瞬間、松はぼんにとって父親以上の存在となる。この感涙を誘う一連のシークエンスが、この映画のヤマ場でしょうね。ラスト、貯金の話しも泣かせてくれた。名作です。9点(2004-12-17 15:54:57)(良:2票)

25.  蜘蛛巣城 時は狂乱の戦国の世。武者の骸が野に山ほど積まれ、さながらその光景はこの世の地獄だったに違いなく想像しただけでもオゾマシイ。序盤、落雷に見舞われる森の中、三船敏郎演じる武時と義明(千秋実)が物の怪に遭遇するシーンがある。これが雰囲気満点で、妖婆の不気味な声と共にコントラストを効かした白黒映像が抜群の効果を収めており、何回見ても背筋がゾーとする。その他にも脳裡に焼き付くシーンは数多く、武時が雨あられの矢を受けるラストはもちろんのこと、薄気味悪い明かず間の雰囲気描写、ついに発狂する冷血な妻浅茅(山田五十鈴)、森厳なる森が城に押し寄せるというくだりもゾクゾクさせてくれた。本作は「マクベス」がベースになっているわけだが、やはり下克上という血で血を洗う狂気に満ちた時代設定だからこそオゾマシさが倍増するのであろう。しかも黒澤明監督独自の、存分にイマジネーションを掻き立ててくれる怪奇物語の傑作に仕上げる手腕もさすがだ。9点(2004-11-21 14:01:36)

26.  張込み(1958) 刑事という職務上のひとつである“張込み”をドキュメンタリータッチで描いており、まるで刑事達の日々の仕事ぶりを見ているかのようである。捜査そのものは強盗殺人事件の共犯者を追っているわけだが、その張込みがリアリティ充分で、事実このような地道な仕事の積み重ねが犯人逮捕に繋がるのであろう。しかも犯人側にもちょっとした人間ドラマがあり、当然刑事側にも普通の人間と同様に考え事や悩みごとがある。またこの映画では、当時の庶民の生活模様をかなり意識してモノクロ映像に収めているものと思われる。戦後間もない夜行列車内での風景、昼下がりの地方の風物詩、人情味ある旅館の様子などなど…この辺りなかなかの雰囲気描写で懐かしい日本の盛夏を味わえる作風になっている。《ネタバレ》ラスト、大木実演じる刑事柚木が犯人石井(田村高廣)に向かって言う「今日からやり直すんだ」。 この言葉、fujicoさんの仰るとおり犯人だけにではなく、さだ子(高峰秀子)を通じて女心というものを知り結婚を決意した自分自身にも言い聞かせている。この佐賀での一週間は、犯人はもちろんのこと柚木にとっても人生のターニングポイントであり、東京へ向け折り返し出発する汽車がその事を力強く訴えている。監督野村芳太郎の演出が冴えるサスペンスドラマの名作です。9点(2004-11-13 16:19:18)(良:1票)

27.  眼には眼を イスラム圏では、こんな身の毛もよだつ復讐の仕方もあるのだろうか。戦後、日本人は西欧文化の合理主義に慣らされてしまっているせいもあると思うが、これはどう見ても不条理に巻き込まれてしまった“世にも気の毒な男”の物語にしか映らない。いや、西欧の支配下に置かれていた当時のシリアの国情も考えなくてはならず、アラブ人の視点からするとまた違った受け取り方をするのかもしれない。この映画は個々のシーンが丁寧に作り込まれており、しかもミステリアスな雰囲気を漂わしながら進行するためグイグイと画面に引き込まれる。《ネタバレ》そして後半、クルト・ユルゲンス演じるフランス人医師に向かって放つアラブ人ボルタク(フォルコ・ルリ)のことば、「よい旅を! !」から二人の心理サスペンス劇がただならぬ緊張感を持って展開される。太陽が照りつける岩石砂漠が延々と続く中、脳裡に焼き付くシーンも数多い。工事用のロープウェイのシーンは見ているだけで縮み上がりそうで、喉の渇きに耐えかね瓶に入ったオイルを飲み干すシーンなんかは想像しただけでもゾッとする。ボルタクの本心は最後まで分からず謎のままだが、ラスト、俯瞰から捉えた延々と続く熱砂がこの絶望的な不条理劇を物語っている。スゴい作品です。9点(2004-10-16 11:36:32)(良:1票)

28.  日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声 “わだつみの声”とは、戦後生き残った学徒兵たちの手により、戦没学徒の家族や知人に宛てた手紙や日記などを手記としてまとめあげたもの。反戦の願いが込められたこの手記は、当時若者たちのあいだで大ベストセラーになったという。そしてこの映画は“わだつみの声”を原作にビルマ戦線を舞台としたもので、脚本は船橋和郎で監督は関川秀雄による演出。戦況が悪化の一途を辿る南方戦線に於いて、将校や上官たちだけで配給された食料を分け合い、末端の一兵卒クラスにはまともに与えられなかったのは事実だったらしい。戦闘の足手まといとなる負傷兵の自爆シーンも、また悲し過ぎる事実。敵弾に撃ち抜かれるだけではなく、栄養失調やマラリアで多くの兵隊がバタバタと死んでゆく光景は凄惨さを極めていたという。「かあさん… 死にたくない」「ああ坊や…」各俳優たちのドロドロかつ迫真の演技が、戦場の惨絶さを見る者に強烈に訴える。脳裡に表われる楽しかった故国の思い出が、戦争の悲劇性をより一層浮き彫りにする。心底無念だったろう。戦争を、運命を憎んだであろう。夢多き学徒たちの凄絶な死を描いた戦争映画としては、今井正作「ひめゆりの塔(53)」と共に日本映画史上、永遠に記録されるべき名作です。9点(2004-09-09 10:58:29)(良:1票)

29.  橋(1959年/ベルンハルト・ヴィッキ監督) 少年達は愛国心と責任感から生まれ育った愛する家族のいる町のため、米軍の攻撃から懸命に橋を守り抜こうとする。子供扱いされるのを嫌い、早く祖国のため役立つ人間になりたいと願う。ましてや男子たるもの腰抜けの卑怯者だけにはなりたくない。愛国心を煽るプロパガンダ教育も行われたと思うが、当時少年達がこのような考え方を持つのはごく自然であったと思われる。しかし戦場では壮絶な殺し合いが繰り広げられ、敵味方のそのほとんどが即死か苦しみ悶えて死んでいく。周りの大人達は誰もこんな事は教えてくれないのだ。ところで、この作品での戦闘シーンは独特の色彩を放つ。とくに、重い金属音を響かせ米軍戦車が現われるまでの緊張感は特筆もので、後の「プライベート・ライアン」でも利用されるほど。また、敵である米兵が少年達に「戦争は遊びじゃない」と叱りとばすシーンも印象的だ。戦場を実際に体験した時にはもはや手後れで、死ぬか生き残るかの二つにひとつ。地獄を体験するには余りにも幼すぎた。ただ泣きじゃくりながら母のいる町へと歩いてゆく少年の姿が、戦争の悲劇性を切々と訴えている。名作です。9点(2004-07-29 10:25:10)(良:1票)

30.  地球の静止する日 宇宙人侵略ものである同年に出された「遊星よりの物体X」や、「宇宙戦争」と対極に位置される友好型宇宙人を描いたSF映画の古典的名作。その後、「未知との遭遇」や「アビス」、そして「サイン」などSF映画に多大な影響を与え続けており、かなり高得点を付けてもおかしくはないエポックメーキング的な作品と個人的には思う。特撮や描写は時代を感じさせなくはないが(もっとも本作は社会派ドラマとして見るのが正解でしょう)、宇宙人による人類に対しての文明批判や警鐘というメッセージ性は当時としては斬新で、未来永劫語り継がれるべく永遠のテーマ。冒頭の主人公宇宙人と地球人側のファースト・コンタクトは大変考えさせられるシーンであり、さらに人間側との交流の中、会話のやりとりも深遠で味わい深い。このような説得力のあるドラマチックな演出は、さすが名匠ロバート・ワイズと言ったところか。不安を煽る不気味なテーマ曲も印象的だった。9点(2004-04-12 20:58:45)(良:2票)

31.  人間魚雷回天 特攻隊といえば、敵艦目掛けて体当たりするゼロ戦ことゼロ式戦闘機が有名。そして、もうひとつの特攻隊である人間魚雷「回天」も忘れてはならない。潜水艦に備え付けられた魚雷に隊員が乗り込み、ゼロ戦と同様、敵艦に突っ込むという正気の沙汰とは思えない戦法である。まさに戦争による狂気が生み出した産物であり、人間を人間として見なさない当時の帝国陸海軍の証左ともいえよう。この作品は回天特別攻撃隊津村敏行の手記を映画化したもので、脚本は須崎勝弥に、監督は松林宗恵による演出。戦後10年しか経っていないこともあるとは思うが、リアリティ溢れる描写とセット美術が素晴らしい。荘厳で哀愁漂う音楽も、この戦争ドラマに厚みを加えている。岡田英二演じる特攻隊員を筆頭に木村功、宇津井健、沼田曜一など個々の切々と訴える好演も手伝い、見る者により一層悲壮感を掻き立たせる。とくにラスト。「赤とんぼ」の歌声が幻聴となって表われる中、朝倉少尉(岡田英二)が「我未だ生存せり」と心境を刻み込み、生を噛みしめんとするエンディングは悲し過ぎる。このシーンは何回見ても涙なしではいられない。もう遅い、すべてが遅過ぎたのである。神よ神よとおだてられ、自ら志願した後では時すでに遅く、お国の為に散っていくより選択の余地のない土壌が用意されていたのである。純粋な学徒達を特攻隊へと駆り立てた歴史的事実を描いた作品としては、「雲ながるる果てに」と共に日本映画史上、永遠に記録されるべき名作です。9点(2004-04-05 21:56:47)(良:2票)

32.  私は貝になりたい(1959) 悲しい映画です。戦後、この様な例は数多くあったことでしょう。そのことがフランキー堺の好演も手伝い、より一層悲しく記憶に残る作品にしている。軍隊という規律の厳しい縦社会で、上官の命令に背けようはずがなく米捕虜を突き殺すフランキー堺演じる二等兵。終戦後、戦犯として裁かれるのは命令を下した上官だけではなく、末端の一兵卒にまで及んでしまう。彼は殺したのではなく、殺しをさせられたのである。しかも腕を刺しただけなのに…。善良な一市民が戦争に巻き込まれた悲劇を描いている。心優しい日本兵が米捕虜に栄養をと思いゴボウを与えた善意が、木の根を食べさせたとして有罪になったというのは本当の事らしい。名脚本家でもある橋本忍による演出。戦争の不条理と共に、日米の言葉の壁をも取り上げており、それが通じないという事はいかに誤解を招き最悪の事態へと導いていくかをも訴えている。問題作でもあり名作です。9点(2004-02-18 15:51:52)(良:1票)

33.  雨月物語 時代は戦国の世。いうなれば武器を持てる侍のみが、地位と富を手に入れることが出来る狂乱の時代。男なら夢捨てきれず、妻子を捨ててまで出世欲や色欲にとりつかれるというのは分からなくはない。ところが世間はそんなに甘かろうはずはなく、分相応元のさやに収まる …と、なにやら教訓めいた大人の寓話。男なら耳がイタいのでは…。もちろん本作はストーリーよりも、東洋的な神秘性に包まれた溝口健二の世界観を堪能すべき作品でしょう。幻想的で幽玄な映像美、長廻しを多用した鮮麗なカメラワーク、京マチ子の妖艶溢れる演技、和楽器を取り入れた不気味な音楽 …等々。ベネチア映画祭銀獅子賞獲得も大いに納得の名画です。9点(2004-01-05 11:39:45)(良:1票)

34.  野菊の如き君なりき(1955) モノクロ作品にもかかわらず、何故か淡いパステルカラーで思い出される。これもひとえに監督木下恵介の洗練された演出と描写の賜物なんだろう。そうそう、笠智衆が演じる老人の回想という構成も切ない雰囲気を盛り上げていた。さらに、木下忠司の哀感溢れるメロディーも作品の印象付けに多大に貢献。封建的な村社会で生きてゆかざるを得ない哀しい定めを、そこはかとなく漂わせており、木下恵介の抒情的な世界観に思う存分浸れた。観る者の涙腺を緩める、余りにも日本的な名画。9点(2003-11-24 16:01:46)(良:1票)

35.  必死の逃亡者 名匠ウィリアム・ワイラー監督がヒューマン・タッチに描いたサスペンス映画の傑作。平和な一家に三人の脱獄囚が突然押し入り、家族全員が人質となってしまう。ハンフリー・ボガート演じる犯人側の頭グレンと、家族を守り抜こうとする一家の主ダン(フレドリック・マーチ)の必死の駆け引きを軸に、手に汗握るサスペンスが展開されていく。緻密でスキのない構成、一級品の演出に圧倒される人物描写 …等々、ワイラー監督の見事なまでの手腕にはただただ脱帽。とくにラスト。弾を抜いた拳銃が鍵となるクライマックスは圧巻だった。極限状態で繰り広げられるグレンとダンの息詰まる駆け引き。深まる家族愛。さらに父と子の信頼をも見事描き切っていた。9点(2003-09-21 20:03:32)(良:3票)

36.  道(1954) 巨匠フェリーニの一級品の演出に、味わい深い描写が冴えまくる名作中の名作!! アンソニー・クインが演じるザンパノという男は、粗暴でエゴの固まり。あげくの果てには人殺しまでやってしまうクソ野郎で、ラストのクライマックスを迎えるまでは、とても感情移入出来るシロモノではない。その彼と対照的な女、ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は天使のように純真無垢。ニーノ・ロータのメロディーと共に、見る者に哀れみと涙を誘う。ラストに用意されたザンパノの号泣は、わずかに残っていた人間らしい部分(悔恨、懺悔)で、ここにきて初めて彼に感情移入させられる。フェリーニの演出に、見事してやられてしまった…。凄い作品です。9点(2003-09-07 10:58:25)

37.  生きる 主人公を演じる志村喬の独特で鬼気迫る演技がすべてに尽きるでしょう。しかも、これほど奥が深く密度の濃いい作品はそうは無い。巨匠の練り上げられた脚本に見事なまでの演出。さらに、この当時の文化、風俗、慣習等もしっかりと描き込んでいる。まさに見れば見るほど味があり、新たな発見があるという典型的な黒澤映画。 やはり、主人公が児童公園で“ゴンドラの唄”を歌うブランコのシーンが圧巻。それはミイラなんかではなく、“生きた”人間としての“大往生”そのもの。このシーン、個人的には大人の“おとぎ話”と受け取りたいですね。9点(2003-08-23 23:26:23)

38.  十二人の怒れる男(1957) アイデアと脚本、そして役者陣次第では、こんな限られた条件下でも見事な傑作が作り得るということでしょう。蒸し暑く閉塞感充分な室内の描写。サスペンスを盛り上げるナイフの演出。次第に浮き彫りにされる人間ドラマ。雨上がりの中、それぞれが家路に向かう開放感溢れるラスト。そんな見事なまでの展開に、最後まで画面にクギ付けでした。本作では、一人また一人と有罪から無罪へと流れが変わっていきます。しかし、もしこれが逆だったら(無罪から有罪へ)と思うとゾッとします。密室で行われ、しかも法の専門科でない人達による陪審員制度の難しさをも、教えてくれる作品でありました。9点(2003-08-16 13:27:11)(良:1票)

39.  ゴジラ(1954) 日本特撮映画史上の最高傑作! しかも、この映画ほどイマジネーションを働かせてくれる作品はそうはなく、傑作としての説得力は十分過ぎるぐらい持っている。“ゴジラ”という希有なキャラクターが日本のみならず世界中にその名を轟かすというのは、その存在がいかに激烈であるかの一言でしょう。とにかく想像上の生き物である怪獣“ゴジラ”を生み出したことが凄いし、素晴らしい。その山の様にとてつもなく巨大な生き物が白熱光線を吐き散らし、都市を破壊し尽くす様は想像しただけでも恐ろしい光景だ。個人的にはあまり理屈っぽく考えず、ただただ“ゴジラ”という巨大な生き物に恐れおののけば良いと思う。9点(2003-07-27 00:05:08)(良:1票)

40.  恐怖の報酬(1953) この映画、見応え満点の傑作には違いないが、心臓にメチャクチャ悪かった! ! 冒頭より、やや退屈な人情ドラマが続くわけですが、ニトログリセリンの威力を見せつけられた瞬間から、俄然話が盛り上がってくる! ! しかも、前半の男達の人情ドラマが、後半の生死を分けるサスペンスに見事活かされている。名匠クルーゾーの縦横無尽の演出は、映画の面白さと醍醐味をこの作品一本で十二分に教えてくれた。この作品から得た教訓、「狂喜乱舞は命取り」…こんな諺、ないか !? 9点(2003-06-07 14:29:06)

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