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性別 女性

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21.  日の名残り 《ネタバレ》 スティーブンスの一人称で語られるカズオ・イシグロの小説の滑稽味を抑え、シリアスに徹したジェームズ・アイヴォリーの静かなる傑作。なじみの薄い大英帝国時代のサーヴァントの世界を描きながらその中に引き込む力はきわめて強い。「ゴスフォード・パーク」のような俗悪な描写ではなしに、あくまでプロに徹した精錬な仕事ぶりには清々しさ、崇高さが漂う。その中でともに重要な立場にある執事と女中頭は、屋敷の雑事一切を取り仕切る上で同志でありライヴァルであり信頼感と緊張感を併せもつ関係。彼らに好意以上のものが生まれても不思議はなく、そう感じながらも今一歩踏み出せないのが切なく痛ましくもあるが悲劇とは呼べないし、ホプキンスとトンプソンは最高と思われる演技を見せてくれる。(アンソニー・ホプキンスの一番有名な役がこれでないのは残念なことだ)ラブシーンや愛の言葉などなくとも、彼がひそかに愉しんでいた恋愛小説をミス・ケントンが手にとろうとする場面は作品のハイライトとして、酔わせる。とどかなかった愛は色褪せることもなく胸にしまわれ、一抹の悔恨を含みながらも人生は過ぎ行く。ダーリントン・ホールの新しい主人(クリストファー・リーブはノーブルなアメリカ人として選ばれたのだろうか?)の元、過去から身をふりほどき一人の執事に立ち戻るスティーブンスの姿には、仕事に人生を捧げた男の信念を感じる。[映画館(字幕)] 9点(2010-03-30 06:00:43)(良:2票)

22.  ロボコップ(1987) 《ネタバレ》 再生したマーフィの視界は常に広角域を使っている。通常の人間の視野とはちがう「ロボ」らしさを出し画面に奥行きを出すと同時に離れたものはより遠く見せ、彼が既にもといた世界からは隔たった存在になったことも暗示しているかもしれない。最初に始動し立ち上がる場面はカメラマンだけを動かし、モニターだけで姿を見せるのもセンスがいい。プリムローズ・レーンにあるマーフィの旧自宅での回想シーンは、彼の視点で連なる白い部屋を奥へと進む、わずかに残された記憶をたどる旅。悲しむ力も失くしている彼が嘆くこともないのがクールだが、失った家族のかわりに彼を支えるアン・ルイス巡査の友情とも愛情ともつかない好意が作品を冷たいものにしない。SWのチキンウォーカーにも似るシンプルで愛嬌のあるデザインのED-209は実物大モデルとアニメーションを上手く組み合わせており、モートン、ジョーンズ、クラレンスの敵方の関係も複雑である。半分メカゆえにジョーンズに蹂躙されていたマーフィが会長の一言で呪縛から解き放たれるラストは快感。誇らしげに名を告げる彼はどのような姿であってもふたたび一人の人間としての自覚を取りもどしたかのようだ。バーホーベンの暴力性はこの世界では無意義なものでなく、ポールドゥリスの特徴的なスコアも作品のイメージを印象づける。人間の再生を描いたこの作品の来年予定されているリメイクは、どのようなものになるのだろうか。[映画館(字幕)] 9点(2009-10-19 00:02:16)

23.  レ・ミゼラブル<TVM>(2000) 「モンテ・クリスト伯」に続いて製作されたフランスのTVドラマ大作。こちらの方が枝葉の多い「モンテ」より圧縮はしやすいが、これくらい尺がないとそれらしいものにはならない。ともに十数年投獄され、同じく一人の老神父に導かれながらバルジャンとダンテスの後半生は似ておらず、観ていて面白いのは「モンテ」だけれどもより惹かれるのは必ずしも報われたとはいいがたい「レミゼ」。自分に有利な言動は避けようとする彼の人生の終焉はさびしいものだが、それだけに感じ入る。がっしりとした体格のドパルデューはこちらの方が向いているかもしれない。フランス語の台詞をこなすマルコヴィッチの「法の番人」は彼独特の粘着質なジャベールで拮抗する。前半のヒロインであるファンティーヌはシャルロット・ゲンズブール。自国の名の知れた女優を使いたかったのかもしれないが、映画のユマ・サーマンの方がイメージにあっているように思う。ファンティーヌは不幸な一生とひきかえにしたように華やかに美しい金髪の女性だから。その娘の清純なコゼットに対して立つ負のヒロイン、エポニーヌの存在もミュージカルほどではないが革命に身を投ずるマリウスをはさんで小さくない。ラストは原作とも映画とも異なる劇的なシーンで幕を降ろしており、バルジャンとコゼットの絆を強調して生涯でただ一つの愛を手放した彼へのシンパシーを感じさせる。未見のDVDは8時間を3時間に短縮し英語吹替になっていることでファンには評判が芳しくないようだ。[CS・衛星(吹替)] 9点(2009-09-30 01:04:39)

24.  モンテ・クリスト伯(1998)<TVM> 《ネタバレ》 エドモン・ダンテス、ジャン・バルジャン、そしてシラノ・ド・ベルジュラックを演じたジェラール・ドパルデュー。 フランスの俳優としてこれ以上の幸せはないのではないか。 ダンテスのイメージではないかもしれないが(特徴ある風貌で巨体の持ち主である彼がプゾーニ神父やウィルモア卿に変装しても、一目でそれとわかってしまう)、存在感は揺るぎないもので、燃える復讐心と恩義を忘れぬ忠誠心をあわせもつダンテスを描く後半はエンターテイメントの醍醐味といえようか。 ダンテスを陥れるフェルナン、ダングラール、ビルフォール、カドルッスらは徹底して卑しく描かれ、悪側の毒盛りや不義の子を箱詰めにして埋めるエピソードもフランス的な猟奇色で作品を盛り上げるが、ダンテスの復讐は彼らを手にかけるような野蛮さがないのが好対照をなす。 新生ファラオン号がマルセイユに華々しく入港する際、モレル氏が安堵と歓喜のあまり息絶えるのは衝撃的な脚色だが、ダンテスの厚意の対象を息子マクシミリアンにすみやかに移行させるためか。 ダンテスに仕えるベルトゥッチオは執事というより孤独なダンテスの友人に近い人間となり、メルセデス(オルネラ・ムーティ)はより生身の人間らしい女性となっている。 結末は読者や観客が望むように変えられ、本来こうなるべきであったのを見たい人が多いということなのだろう。 その煽りを食って王女エデのレゾン・デートルの半分は失われたが、原作のままではメルセデスが不憫ではあるので、これはこれでよいと思う。 「レ・ミゼラブル」と両作品で青年時代を演じたドパルデューの子息、ギョームは08年に惜しくも亡くなっている。[CS・衛星(吹替)] 9点(2009-09-29 00:55:01)

25.  ローマの休日 アンは生まれながらに望みもしないのに美しく飾られた牢獄にいるようなもの。彼女の望みが贅沢とは思われない。(ダルトン・トランボは、後年の「ジョニーは戦場へ行った」とは全く違う形で自由から隔てられた若者の物語を書いた)後半が切ないのは楽しい前半からの転調が十分に効いているからだが、この構成は見事だと思う。ジョー・ブラッドレーが金欠の新聞記者というのもこれ以上ない設定だし、友人のカメラマン、アーヴィングも最高である。アーニャはヘアカットとともに袖を巻き上げスカーフを巻くだけでイメージを一新し、美容師マリオ・デ・ラーニ役のパオロ・カルリーニが明るいイタリアンな情緒を添える。「仕方なくしていることだってあるんだよ」とのジョーの言葉は作品の底辺に諦念が流れているのを感じさせるが、ラストは言葉にたよらず感情を細やかに伝えてみせる。たった一日、しかしかけがえのない一日が小国の王女を大きく変えた。そしてまたジョーも。オードリーの笑顔と涙はこれからも観客を魅了し続けるのだろう。[映画館(字幕)] 9点(2009-08-31 01:33:44)(良:3票)

26.  ブレードランナー/ファイナル・カット 25周年を機にお色直しをされたデジタル・リマスター版は、グラデーションが多くディテールに凝るBRでは絵画修復なみの威力を発揮する。 くすんでいた画面も彩度が上がって生気を取戻し、蔵出し映像や完全版のシーンも加えられながら時間は短縮され、音質もレンジが広がった。 見苦しかった箇所(初登場時のロイ・バティ(タイレルとのシーンのアウトテイクを流用?)の背景、アブドゥル・ハサンを詰問するデッカードの口の動き、ガラスを突き破るゾーラのスタントの頭部、スピナーを吊り下げるワイヤーなど)をいずれも抜かりなく修正してきているのも、納得のいくものを作りたいスコットの執念を感じさせる。 鳩のシーンだけは元の方がよく思え、雲の切れ目からのぞく青空に羽ばたく鳩が昇天するバティと感じられるのだ。 ディレクターズ・カットと同じく、ボイス・オーバーと旧エンディングがないことでピアノの上に飾られた写真の異質さが際立ち、スコットの意図どおり白いユニコーンとともにデッカードの出自の不確かさをほのめかすものとなった。 ドリュー・ストルーザンによるブルーを基調とした新しいポスターも新鮮な趣きをそえる。[DVD(字幕)] 9点(2009-07-21 03:41:52)(良:1票)

27.  シラノ・ド・ベルジュラック(1990) 《ネタバレ》 実在のシラノよりロスタンの戯曲の彼の方が、遥かに人間味をもって迫ってくる。 自分の容貌に自信がなく思う相手に告白できないというのは、人間だけが持ちうる繊細な感情であろう。 本能的に秀でたものを求める生物の一員でもあるが故に、外見と内面の狭間で揺れ動くのもまた人間。 美しく生まれながら才の無さを嘆くのも人間なればこそ。 三人三様の思いがロマンを呼び、自分に赦された領分でロクサーヌに愛の花を降らせるシラノには心うたれる。 気風よく剣の腕前に優れ、類まれな詩心を持ちながら小心ともいえるシラノを、巨漢ドパルデューが演じているのがまたよい。 容姿ゆえ母親からも疎まれたシラノの、幼少よりただ一人の女友達であった従姉妹ロクサーヌ。 彼女が美男子クリスチャンに惹かれながらも、シラノの言葉にこめられた心を解する女でもあったために、最後の最後で彼の思いが報われたことは喜びたい。「さらば ゆかしき君 懐かしき君 無二の君」[CS・衛星(字幕)] 9点(2009-06-16 02:55:16)(良:3票)

28.  ターミネーター2 《ネタバレ》 「1」は低予算ながらすばらしかったが、技術的にもそれを超えてみせた「2」は、「アビス」で試験的に使われたCGが本格的に導入され、VFXの新時代を切り開いたエポックメーキングな作品。 そしてまた、CGを使った華やかなシーンだけでなくT-1000(ロバート・パトリックが「1」のシュワルツェネッガーに劣らないシツコサで驚愕!)が乗るトラックが引火する細部でもジェームズ・キャメロンが「見せ方」ということに神経を使っているのが感じられ、流れがよくストレスを感じない。 CGだけに頼ることなく、クライマックスで致命的に被弾したリキッドメタルが大きく変形するシーンでは、スタン・ウィンストンによる古典的な手法を活かしているのも見どころ。 ポストプロダクションで加工される前の撮影素材(「ゴースト/ニューヨークの幻」のアダム・グリーンバーグによる)が非常に質感があり高品位であることも忘れてはならず、これがかつてないような臨場感を映画に与えていてとても美しい。 「1」とは対称的な役柄で続投となったアーノルド・シュワルツェネッガーを中心に、当時13才だったエドワード・ファーロングの美少年ぶりも作品に新鮮な魅力を与えており、体を鍛え上げたリンダ・ハミルトンは「エイリアン2」でアカデミー賞ノミニーとなったシガーニー・ウィーバーを意識しているかもしれず、サラの役柄には抵抗を感じる部分もあるがそれも計算ずみなのだろう。 ジョン・コナー少年の養母を「エイリアン2」のバスケス役ジャネット・ゴールドスタインが演じているが、筋肉がおちているせいで一目ではそれとわからぬほど。 SFアクション映画として点数が高いのは今も変らないが、唯一の欠点といえる最後の場面が演歌調なのはいただけない気がする。 [映画館(字幕)] 9点(2009-06-07 04:58:47)《改行有》

29.  ロスト・チルドレン クローンの六つ子、そのオリジナルの博士(ドミニク・ピノン)に脳だけの男イルヴィン(ジャン=ルイ・トランティニャン)、夢を見られぬクランクと小人美女、シャム姉妹と一つ目族。 愛すべき変わり者たちにベール(緑)の海、耳にどこか懐かしい手風琴の音は、ジュネ&キャロのめくるめく世界。 少女ミエット(ジュディット・ビッテ)の大人びた表情に魅了され、失意のワン(ロン・パールマン)を慰める酒場の赤いドレスの美女も捨てがたく。 「私はあなたのヒーターなの」 ちょっとばかり気をひかれる男に、ジェラスな少女。 小さくてもミエットは女、少年窃盗団のリーダーだったクールな彼女の瞳が潤んで見えるのも、さらわれた弟を探す心やさしき怪力男ワンに恋してしまったから。 「ダンレー弟、ミエット妹」 それでもいいわ、今のところは。 ミエットはそっと笑みをもらす。[映画館(字幕)] 9点(2007-09-30 11:15:14)

30.  プリティ・ベビー 数年前ニューオーリンズが洪水に見舞われた時、実在のヴァイオレットがいた館も水に沈んだのだろうかとふと思った。 12才の少女と娼婦の写真を撮り続けた写真家ベロックを結びつけ物語を織り上げたのはルイ・マル、アメリカ映画ながらフランス映画の佇まい。 娼館にロートレックのような画家、そしてこのベロックのような写真家ら芸術家が入り込み、日々彼女らの姿を二次元に写しとる作業を行うと、そこは濃き香り漂う美的空間に変貌する。 「芸術家と女たち」はそれほどそれ自体が絵になるのだ。 スヴェン・ニクヴィストの撮るアンティークな色合いにブルック・シールズの子供と女が共存する美しさが映え、その母として遜色ない妖艶なスーザン・サランドンと陽気な娼婦たち。 マルはこの世界を悲惨なものとして描かなかった、こういう世界があったとだけ。 この少女は何も恐れない、新参者ベロックが自分を愛さぬこと以外は。 自分が値打ちのある商品であることに自負さえ持つ屈託なさ。 「教授」(「スタハチ」のアントニオ・ファーガス)がサロンで弾くピアノがメランコリックに流れ、彼が可愛がっていた彼女が水揚げされ、値をつけられていくのを聞きながら顔を歪める場面が印象的だ。 彼にどう出来よう? 彼女の稼ぎも彼の生活を支えるになくてはならぬものなのだ。 ヴァイオレットに近づきすぎたせいで破滅に陥るベロックのものとはまた違う、彼が小さなコケットに注ぐ眼差もこの作品中で忘れがたい。[映画館(字幕)] 9点(2007-07-21 12:09:20)(良:1票)

31.  愛情物語(1956) 《ネタバレ》 喜びも哀しみもふくんだ穏やかな夜想曲(ノクターン)を聴くたびにこの映画を思い出す。 成功を手にしながら彼はかならずしも幸運な人間とはいえない。 天使であった最初の妻を失うだけでなく、嵐の夜にようやく開かれた息子の心を抱きしめたのもつかの間、まだ若い自分自身まで。 だがピアノにも家族にも精一杯の愛情を注いだ人生は短くともなんと価値のあることか。 瞬きのうちに風のように飛び去る魂を表現しているかにも思えるひときわ鮮やかなラストは、万感とともにこれ以上の幕切れを見たことがない気さえしてしまう。[CS・衛星(字幕)] 9点(2006-03-31 20:43:29)(良:1票)

32.  オール・ザット・ジャズ 実物は「星の王子さま」のスネークとしてしかお目にかかることのなかったボブ・フォッシーの分身、ジョー・ギデオン。 身を削ることとなっても常にSHOW MUST GO ONの人生。 死に向かって疾走する彼の表情は実に穏やかだ。 「キングコング」より3年後の復帰作となったジェシカ・ラングの美しき死神も、浮世から魂が離れつつある彼の心が生んだ幻か。 I THINK I’M GONNA DIE・・・♪ ギデオンが恋人の団員に告げる「偉大なダンサーにも優秀なダンサーにもしてやることはできないが、よりよいダンサーにすることはできる」という言葉が心に刻まれ、ジップアップな身仕舞はあまりにドライな幕切れ。 BYE BYE LIFE![映画館(字幕)] 9点(2005-12-21 20:05:30)

33.  コン・ティキ 映画になった「コンチキ号漂流記」。 自説を証明するため、1500年前と同じ仕様の筏(いかだ)で南米からポリネシアめざして8000kmの旅へ乗り出すトール・ヘイエルダールらは、学究心よりも冒険心にあふれた命知らずの男たち。 船よりも海面に近い筏での旅は危険もまた大きいのですが、本の中でも印象的だった、コン・ティキの下を巨大なジンベイザメがくぐり、夜間に海の生きものたちが燐光を放つのを肌で感じられるのは船ではできない体験、見ている側も太陽神を帆に掲げ、バルサの木で作られたコン・ティキの存在を身近に感じられるのです。 へイエルダールと陸(おか)で待つ妻との絆と葛藤も描かれ、これは本にはなかったプライベートな部分で、大半が航海で占められる映画のアクセントにもなっています。 現在では彼らが証明したかったことが立証されたとは必ずしもいえないようですが、たとえそうであっても彼らの思いは十分むくわれたのでは。 海で撮影することにこだわり、プール撮影でVFXを駆使した「ライフ・オブ・パイ」ほど映像的に洗練されてはいませんが、海と人間の知恵と勇気がスクリーンいっぱいに広がる素朴で力強い作品。[映画館(字幕)] 8点(2013-12-31 07:04:54)

34.  ブライト・スター/いちばん美しい恋の詩(うた) 夭折でありながらその才能がシェイクスピアとも並び称されたという、英国の詩人ジョン・キーツの恋を描き、たくさんの蝶が舞う部屋や青いブルーベルが群生する森でキーツの手紙に読みいるファニーなど、ポエティックなイメージが盛りこまれた美しい映画。 ジェーン・カンピオン作品にもかかわらずごく一部で公開され、国内盤ソフトも出ておらず、カンピオンにしては抑制されたマチュアな表現がアピールしないと思われたのか、主演のベン・ウィショーとアビー・コーニッシュの日本での知名度がいまひとつであるせいか。 キーツ本人よりも、詩人にインスピレーションを与えたミューズである隣家の娘ファニー・ブローンに重点が置かれているようで、裁縫を得意とするファニーの衣装がキーツと知り合ったことで微妙に変化していくのも見どころの一つ。 キーツもファニーの愛を得て、精神は高まりながら肉体は病に冒されていくのが皮肉で、ファニーの母親やキーツの友人ブラウンが彼らの交歓に投げかける視線もまた複雑なもの。 ファニーの母親は「エンジェル・アット・マイ・テーブル」のケリー・フォックス、恋人たちのそばをはなれない弟(トーマス・サングスター)や妹も強い印象を残しており、特におさない妹の存在感はカンピオンらしさがのぞいているようでした。 ブライト・スター(明るい星)とはキーツにとってのファニー、薄命の詩人には金星(ヴィーナス)のような存在であったのかもしれません。[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2013-12-31 07:02:40)

35.  汚れた血 《ネタバレ》 なつかしいね、両腕をひろげたビノシュ。 カラフルな2作目はアンナの恋人が年上の男なのもあって彼らの若さがきわだつ。 赤や青、あざやかな色のイマージュは、90年代のキェシロフスキ「トリコロール」3部作のアイディアも生んだのではないかと思えるほどで、あの3人のうち2人はこのビノシュとデルピーでもあるし。 「モダン・ラブ」で塀ぞいに疾走するラヴァンは依然ボウイ信奉者カラックス、この躍動感は最後のビノシュと対か。 SFチックな設定はかすみがちだけれど、感覚と純愛がメインらしいので気にならない映画は、飛行場であれほど思ってくれたアレックスの命がつきるとアンナの中で何かがこわれ、鳥のように、風のように滑走路をひた走る、青春を切りとったようなラストシーンが鮮烈。[DVD(字幕)] 8点(2013-10-10 07:00:02)

36.  イブラヒムおじさんとコーランの花たち 「アラビアのロレンス」から40年たつと、オマー・シャリフもこんな感じに。 「宗教(キリスト教・イスラム教・仏教)と文化」の三部作の著作をもつ監督の作品は、とりたててイスラム教プッシュではなく、そこここにエッセンスが置いてある感じ。 前半はロベール・サバティエの「ラバ通りの人びと」のような懐古的なパリの裏通りものでもあり、30年代のラバ通りに対してブルー通りには60年代の活気とカルチャー。 神経衰弱の父と暮らすモモが貯金箱をこわして街娼たちに近づくのは、母の匂いを求めてでもあるのだろうし、孤独な少年の人生はストリートにある。 通りをへだてたイブラヒムおじさんの小さな雑貨店にはところせましと商品が並べられ、なつかしい雰囲気。 手くせのわるいモモへの「万引きを続けるなら、うちの店でやってくれ」は、他の店でしょっぴかれないようにとの心遣い。 「アラブ人じゃあない」とも、トルコ商人の彼にも国の誇りがあるのだ。 厚化粧とカツラで若い女優に化けたイザベル・アジャーニが、映画ロケの合間にふらりと訪れたりも。 後半はためたお金をはたいて赤いスポーツカーを買いこみ、父も失ったモモとの故郷への旅。 イスラム世界に浸透していくユダヤ人のモモとイブラヒムとの養子縁組は、人種の壁に阻まれるのが苦い。 痛ましい結果におわるその旅でモモに残されたものは。 心の父イブラヒムと同じ言葉を口にし、ブルー通りに佇むモモには思い出と居場所がある。[DVD(字幕)] 8点(2013-10-08 07:00:03)

37.  シックス・センス 《ネタバレ》 人間の「思いこみ」を最大限に利用した映画なのでは。 自分をふくめて観客の多くはマルコム(ブルース・ウィリス)がバスには乗っていても車は運転していないことに、人と向かい合っていても会話はしていないのに気づかない。(唯一の例外はサイキック少年) 最低限の条件を提示されていて、「何か変」と思いつつ、そちらの方へは思い至らせない誘導がうまいのと、あと俳優の魅力。 ブルース・ウィリスはアクション・スター以外の慎重さを見せ、オリヴィア・ウィリアムズが視点の定まらない美しい妻。(指輪が落ちる場面は奈落へ落ちるような衝撃と哀しさがあります) ハーレイ・ジョエル・オスメント君もよかったし、母親のトニ・コレットがまた上手。 彼女のオスカーノミネートがこれ一つだけなのは少なすぎじゃないか!とは思いますが、トニの涙はアカデミー会員の方々もお気に召したよう。[映画館(字幕)] 8点(2013-10-05 07:00:01)

38.  落下の王国 映画監督だけが仕事なわけではないアーティスト、ターセム・シンの作品数は少なく、1本1本が貴重。 近作「インモータルズ」が影と闇に支配されていたのとは対照的に、この映画の空想部分は光と色に溢れ、世界遺産めぐりの旅でもあり、至福のひととき。 遺跡を舞台としイメージや舞踊をとりいれることで、それ自体も新たな生命を帯びてくるよう。 一方現実の方はかなりシビア。 たびたびスタントのことにも言及したのは、縁の下の力持ちの彼らが映画を支えているのに思いをはせてほしいからなのですが、負傷のスタントマンにスポットをあてるなぞ嬉しくもあまりない趣向。 ラストは「ニュー・シネマ・パラダイス」より好きかもしれず、無謀より果敢という言葉がふさわしい、表舞台に出ることはないはかない英雄たちの勇姿の数々。 彼らの代表であるロイと少女アレクサンドリアの繋がりが、夢のような映画を夢で終わらせておらず、「落(堕)ちる」ことの痛みとそれへの抵抗が、美しい映像に縫いこまれていたように思います。 力強さより浮遊感のある作風も特徴か。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-10-01 07:00:04)(良:1票)

39.  フレンチ・コネクション 《ネタバレ》 ジーン・ハックマンが引退して10年近くになります。 レックス・ルーサーやスコット牧師も好きですが、代表作はやっぱりコレかな、刑事ポパイ。 仕事熱心なあまり時々無茶をやらかすポパイは、家ではデレッと寝ててもいざ仕事となると帽子・スカーフ・コートのアンサンブルがキマってたり。 相棒はロイ・シャイダー、主役じゃないのでチョロチョロしてる印象でも、組織の車からなかなか発見できないブツを見つけられたのは、ポパイだけではできなかった勘のよさ。 有名な高架下のカーチェイスとならんで緊迫するのは電車のプラットホームでの攻防、ギリギリのところでまんまと逃げおおすシャルニエ(フェルナンド・レイ)に屈辱的な「ニギニギ」を食らわされるポパイの憤懣やるかたない表情がリアル。 親玉をとり逃がしてしまうラストの意外性と虚脱感が独特ですが、続編が作られる余地ともなったよう。 70年代初めの大都市ニューヨークで、ポパイがそこから浮いてしまわずに、その一部となって動きまわるのがいい感じで、「ダーティハリー」より好みです。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-09-05 07:00:02)

40.  アイアンマン3 《ネタバレ》 監督がシェーン・ブラックに交代したのは、「2」がちょっとマッタリとしてたからか(あのオットリした感じも悪くなかった)、前監督ジョン・ファブローは製作総指揮にまわり、瀕死のホーガンの俳優として存在感を見せてます。 前半は不気味なエクストリミスの出現やスターク邸の崩壊(「アベンジャーズ」でスターク・ビルが破壊されるのにつづいて?)など今までになくヘヴィーな展開は「時流にのったか?」と思えたのですが、悩めるトニー(ロバート・ダウニーJR)が一時リッチライフから離れて、少年と行動を共にする雌伏をへて復活。 新しいパワードスーツ「マーク42」はパーツが遠隔操作できるのが画期的、それがフルに生かされフィールドが広がり、エアフォース・ワンからこぼれおちた多数の乗客ひろいあつめて救出のシーンも感激、フィナーレはアレが花火に! 格段にスケールアップしたSFアクションムービーは、ペッパー(グウィネス・パルトロウ)のまさかの特撮ヒロインも見られ、満足度高し。(そのノリは、アイディア満載の進化型ハード・ロック的?) ウォー・マシンからアイアン・パトリオットに転身したローディ(ドン・チードル)との連携もよかったんだけど、マヤ(レベッカ・ホール)だけはかわいそうでした。 悪役もガイ・ピアースとベン・キングズレーの二枚看板、ホワイトハウスは大統領ウィリアム・サドラーに副大統領ミゲル・フェラー(「ロボコップ」)となつかしい顔ぶれ。 トニー最後の決断は潔いですが、TONY STARK WILL RETURN(007のまね!)はアチラで?[映画館(字幕)] 8点(2013-05-10 07:05:02)

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