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プロフィール
コメント数 2490
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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21.  ザ・ベイ 《ネタバレ》 まあ良くある海洋モンスターものの変種バージョンといったところかな。海辺のスモールタウン、独立記念日というフェスティバル、予兆があっても楽観視して無策の首長、『JAWS』以来のお約束事をきっちり守っているので、その点では新鮮味はなし。唯一の工夫はB級低予算映画お得意のPOV形式で撮っているところだが、驚くべきことは監督がバリー・レビンソンだということ。『レインマン』のオスカー受賞監督が撮るような映画じゃない気がしますが、どうなんでしょうかね。考えてみるとたまたま最近観たロジャー・コーマンの『モンスター・パニック』というクソ映画とモンスターの種類が違うだけで展開はそっくりで、さすがに本作の方が丁寧に撮られていますね、そりゃ比べること自体が失礼ってもんですね(笑)。本作のモンスターはワラジムシの変種のような形態の寄生虫ということですが、成虫になったお姿はどう見てもゴキブリにしか見えない。こいつが大量発生する理屈は環境汚染による生態系破壊としているが、ステロイドを成長促進剤として使っている養鶏場から湾に流れ込んだ大量の鶏糞が原因(の一つ)とか、もっともらしいけどけっこう雑な設定です。モキュメンタリー形式で撮るならこういう細部に凝らないといけないんですよ。尺も短いし、暇つぶしにはちょうど良い映画としか言いようがないですね。[CS・衛星(字幕)] 4点(2025-01-16 21:38:14)

22.  オッペンハイマー 《ネタバレ》 凝った映像設計で知られるクリストファー・ノーランにしては、オッペンハイマー=キリアン・マーフィを軸にしたまるで対話劇の様な作劇だったのは意外でした。ほんとに、この映画はすべてのカットにキリアン・マーフィが映っていたんじゃないかと思うぐらいです。原爆開発の理論や技術的な面はほとんどスルーしていたような印象もあり、ひたすら政治劇を見せられていた感があります。ノーランお得意の時系列をシャッフルするストーリーテリングも、本作ではいたずらに物語を判りにくしてしまったんじゃないかな。単純に言っちゃうと、この映画はオッペンハイマーに対するルイス・ストローズ=ロバート・ダウニー・Jrの確執と陰謀に収斂されるストーリーだったかとも思いました。実は自分はキリアン・マーフィの爬虫類顔が前から苦手だったのですが、今回は自分たちが成し遂げたことの罪深さに慄くようになってゆく何を考えているのか判りにくいキャラの人物を演じるには最適の面構えだったのかもしれません。対するロバート・ダウニー・Jrは、ちょっと見には彼とは気づかない完璧な老けメイク、彼の持ち味である演技力を存分に見せつけた好演です。 この作品が「原爆の被害がまったく描かれていない」という抗議が日本であったことは耳に新しいところです。でも実際に鑑賞してみると、ノーランはあえてそれを見せない作劇をチョイスしたんじゃないかと私には思えて、これはこれで正解なんだと思いました。疑問に思ったのはその抗議を叫んだ団体などは、作品自体を日本で観られない時期に声を上げていたふだん映画には縁が無さそうな面々で、観てない映画を批判するのはNGなんじゃないですかね。歴史的な出来事には色々な視点があることは許容されなければならないし、それを認めないとなれば単なる言論弾圧になりますよ。実際に自分が不快極まりなかったのは原爆投下を喜ぶロスアラモス研究所の科学者たちの姿で、オッペンハイマー自身も「私たちは原爆開発を研究しただけで、どう使うのかは政治の話だ」とその時点では言っています。でもそうなると、この科学者たちはナチの命ずるままに職務に励んだ絶滅収容所の所長や看守となんら変わりがないんじゃないかと思えてしまうんですけど…[CS・衛星(字幕)] 8点(2025-01-13 22:44:03)(良:2票)

23.  美徳のよろめき 《ネタバレ》 1957年に出版された三島由紀夫のベストセラー小説の映画化、この“よろめき”というフレーズは同年の流行語大賞と言えるほど巷では流行ったそうです。原作の内容は日本版『ボヴァリー夫人』という感じの姦通小説で、フランスの心理小説を思わせる三島由紀夫独特の文体なんだそうです(自分は未読です)。 代々続いた華族家庭出身の節子(月丘夢路)は実業家の倉越一郎(三國連太郎)と結婚し、住み込みの家政婦もいる鎌倉の豪邸で幼稚園に通う一人息子と暮らしている。夫はまあ普通の男だが、彼女にはその俗っぽさなんかが合わなくて段々愛情が薄れてきている。そんな時に街で偶然むかしちょっと関係があった男である土屋(葉山良二)と遭遇してお互いを意識するようになる。女学校時代の同級生で人妻なのに男漁りが激しい牧田与志子(宮城千賀子)にけしかけられて、節子は土屋と段々深い関係になってゆく。 脚本を書いたのは新藤兼人、三島由紀夫小説の脚色とは彼のイメージに合わない感じがするが、新藤のパートナーである乙羽信子が月丘夢路と宝塚歌劇団の同期だったという関係もあったのかもしれない。実は三島はこの映画を「これ以上愚劣な映画はちょっと考えられない」とまで酷評しているんです。たしかに調べるとストーリーは外見的には似ているけど「内容的には原作と別物」と評されるのも納得できるところがあります。出版されたのが57年6月、封切が同年10月下旬なのでさすがの新藤もじっくりと構想を練って書く余裕が無かったのかもしれません。月岡夢路の節子はその美貌といい雰囲気といい文句なしです。でも東宝には久我美子や河内桃子といった本物の華族令嬢だった女優がいたので、東宝で彼女らを起用して映画化したら面白かったかもしれません。 本作の最大の難点は、二人の不倫カップルにぜんぜん感情移入ができないところです。とくに土屋という男は、内面の葛藤はともかく子どもいる人妻を自分の昔からの思いを成就するために、関係を持つだけでなく離婚させようとまでする心理がなんか不快。家では素っ裸で飯を食うのが愉しいなんて言う、確かにちょっとヘンなところもあります。節子は土屋との関係を妊娠中絶をきっかけに清算する決心をする訳ですが、原作では夫との子供を中絶した後に土屋の子供を二回中絶するという展開なんだそうです。こりゃ原作の方がよほど凄い展開で、こういうところをマイルドにしたのも三島の怒りを買ってしまったのかもしれません。 宮城千賀子の愛人役で安部徹がマッシュルームカットのプロレスラー(!)や、ストーリーと関係ないところで西村晃が盲目の按摩師で出演したりというキャスティングも面白いところがありました。とくに按摩しながら「失礼ですが、奥様おめでたですね」と妊娠を言い当てるところは強烈な印象を残しました、お前は超能力者なのかよ(笑)。月丘夢路がシャワーを浴びるシーンでは、当然ボディダブルでしょうが裸身を影だけで見せるところなんか、テクニシャン・中平康の面目躍如でしたね。でも新藤兼人と三島由紀夫はあまりに喰い合わせが悪くて、中平康でもどうしようもなかった感がありました。[CS・衛星(邦画)] 5点(2025-01-10 22:35:16)

24.  大魔神逆襲 《ネタバレ》 昭和41年の年内で三本が公開された大魔神シリーズの掉尾を飾ることになった三作目、ほんとは第四作目製作の予定もあったけど本作の興業成果が赤字に終わったことで立ち消えになっちゃったそうです。まあシリーズと言ってもこの三作には共通点は大魔神が暴れるだけでストーリー上の繋がりはありませんが、前二作ではお姫様をヒロインにしていたところを少年4人を主人公に据えたところに工夫が見られると言えるかも。 前二作を鑑賞済みならば大魔神降臨が後半三分の一ぐらいしかないというお約束は承知でしょうけど、少年たちが魔人のお山を越えてゆくまでのシークエンスはけっこう丁寧に撮られています。ロケ地の山岳地帯もよくこんな場所を見つけてきたな、と思わせる風景です。この少年たちの一人が激流に流されて死んでしまうのは初期の大映特撮ものらしいダークな展開で、東宝特撮では考えられないところです。でもあの筏を一瞬で作り上げるところは、いくら何でも雑過ぎるでしょ。今回は遂に大魔神が腰の宝剣を抜いた訳ですが、武器としてはあまり見せ場がなかったのは残念なところです。それでも毎度のことながらも建築物の破壊シーンには眼が引き付けられます、大映京都の時代劇で培った技術力は恐るべしです。ちなみにシリーズ通じてスーツアクターを務めたのは元プロ野球選手だった人で、あの眼だけは本人の素なんだそうです。彼はカメラが回っているときは決して瞬きをしない演技で通したそうで、毎回終いには充血して血走った眼になってしまったそうですが、それがかえって大魔神の憤怒の形相に迫力を与えていると思います。 けっきょく大魔神は、三池崇史の『妖怪大戦争 ガーディアンズ』に新造形で登場したぐらいで、50年以上経ってもリメイクされていませんが、かえってそれが日本特撮映画史上に残る伝説としての輝きを放っているんだと思います。[CS・衛星(邦画)] 5点(2025-01-07 22:35:40)(良:1票)

25.  ナポレオン(1927) 《ネタバレ》 リドリー・スコットも同じ題材で撮ったけど、やっぱしナポレオンの映画と言えばこのアベル・ガンス版でしょ。私はコッポラが修復した81年の4時間版を観たわけだけど、オリジナルはなんと上映時間9時間!その他にも短いものは110分もありそして5時間30分、おまけにトーキー化されたものなど知られているだけでも10くらいの異バージョンが存在するというまさにディレクター・カット商売の先駆けみたいな感じです。ナポレオンの士官学校時代から始まり4時間かかってもやっとイタリア遠征に取り掛かるところまでしか描かれていません。いわばナポレオンの青春時代編といった趣きですが、時代背景としてのフランス革命の推移も割と丁寧に語っています。この作品の凄いところはその目くるめく様な映像のド迫力で、高速モンタージュ・多重露出・VFX特撮・手持ちカメラ撮影など、この当時には映画撮影に必須の技術がすでに完成していたというのは驚くしかありません。この映画は、士官学校時代・トゥーロン攻囲戦・フランス革命の推移・ジョセフィーヌとの結婚・イタリア遠征というのが大まかな構成ですが、どのシークエンスも大がかりなセットや大量のエキストラが使われていて引き付けられてしまいました。とくに国民公会議場や乱痴気騒ぎみたいな舞踏会のシーンでのモブ映像はまさに数の暴力といった感じで、カネが相当掛かってますよ。公会議場でナポレオンが恐怖政治で粛清された面々の亡霊と対峙するところも印象深いのですが、ここで「私は世界革命を起こして欧州共和国を創るのが目標だ!」と演説するのはまるでレーニンかトロツキーみたいな感じで、フランス革命は共産主義革命の雛形だったんだなという感が深まりました。 全長版ではナポレオンの生涯のどこら辺まで辿ったのかは興味あるところでもありますが、おそらくこのストーリーテリングのスピードではせいぜい皇帝戴冠あたりだろうなと思います。それにしてもこんなに尺が長いと、サイレント時代ですから劇場での劇伴演奏する楽団は大変だったでしょうね。感想としては満点つけたい誘惑はありましたが、実は半分しか観ていないのも同然なので、マイナス一点とさせていただきます。[CS・衛星(字幕)] 9点(2025-01-04 22:14:36)

26.  俺たちは天使じゃない(1989) 《ネタバレ》 1955年のオリジナルも昔に観ているけど、これは全然別物といった感じです。まず短いシークエンスながらも、脱獄に成功するまでの刑務所の生活が怖い。隊列を組んで作業に向かう囚人たちの姿は、まるで『メトロポリス』の地下世界みたいです。カナダとの国境に面しているという設定である川沿いの町は、修道院も含めてなんとすべて一から造ったセットなんだというから驚き。デ・ニーロとショーン・ペンという二大演技派の競演は見応えがあるし、二人の組み合わせは19年後に撮られた『トラブル・イン・ハリウッド』の二作しかないので貴重です。ペンの演技スタイルというとキレやすい粗暴なキャラ(実際の本人もそうらしい)というイメージがあるけど、悪事は働くけどちょっとオツムが弱い根は善良なキャラを演じるのも上手い役者で、私は本作の若き日のペンは最高の演技だと思っています。考えてみれば、ハリウッドの三大名優、デ・ニーロ、ジャック・ニコルソン、アル・パチーノのすべてと共演してるんですよね、ダスティン・ホフマンとは絡みがないのはちょっと残念ですけど。いちおう舞台はNY州の北部の町という設定なんですが、アメリカにあれほどカトリック教会の影響が強い町があるなんてフィクションとはいえちょっと信じられないぐらい、まるでシチリアあたりのお話みたいです。かなりカトリック臭の強いお話だけど、さすがに名脚本家デヴィッド・マメットだけあってサスペンスを盛り込みながら上手くまとめています。ラストの橋上でのデ・ニーロとペンのハンド・シグナルだけの別れのシーンは、ちょっとジーンときました。[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-12-31 22:09:06)

27.  宇宙大戦争 《ネタバレ》 『地球防衛軍』製作より2年、東宝は初めて人類が地球を飛び出して宇宙でエイリアンと闘うという本格的なスターウォーズ映画を世に送り出しました。製作が1959年なので色々と突っ込むところはありますが、果たしてその評価は如何に。■ストーリー上のつながりはありませんが、登場人物の一部の名前が共通であるなどの拘りはあるみたいです。メカや宇宙船の設定は『地球防衛軍』と同じく小松崎茂、当時の少年雑誌の口絵や軍艦や戦闘機のプラモデルの箱絵で有名な昭和の大絵師です。月面探検車のデザインなどに彼らしい雰囲気があります。いわば本作のプロダクション・デザイナー的な存在と言えるでしょう。敵方の遊星人ナタール「地球を我々の植民地にする」なんて公言して観測できない月の裏側を基地としていきなり攻め込んでくる、まるで19世紀の帝国主義国家みたいな存在。ナタールの細かい説明は一切オミットしてひたすら人類vsナタールの戦いを見せるある意味雑な関沢新一の脚本ですが、まあ50年代のSFなんてこんなもんでしょ。■いちおう当時の一般的な知見に基づく科学考証が施されているが、ここは現在の常識からすると粗が目立つところです。ナタール人が使う“物質を無重力にする冷却線”なる武器は、”物質が絶対零度に近づくと核振動が弱くなって無重力になる”という今では否定されているトンデモ学説に基づいていたそうです。驚くのは月面探険車がホバークラフトみたいに気体を噴射して移動するところで、なんと当時には月面の一部には希薄な大気が存在するという学説があったからなんだとか。宇宙船内の無重力や月面で隊員たちがふわふわした動きをするというのは、土屋嘉男が「こうならなくちゃおかしい」とスタッフを説得した成果なんだそうです。文系がほとんどの映画人の中で彼は俳優になるまでは現在の山梨大学医学部を卒業したぐらいで、東宝俳優の中でもっとも博識と言われただけのことはあります。まあ間違った学説が多々あった頃なので仕方なかったでしょうが、正しい科学考証のもとに撮られたSFは『2001年宇宙の旅』まで待たなければなりませんでした。■興味深いことは40年代から50年代はハリウッドや他国でも宇宙からエイリアンやモンスターが来襲して地球が危機に陥るというプロットのSFが多かったけど、どれも自国の軍隊で対応して打ち勝つというところです。国連なのかは別としても東西両陣営が結束して共同軍を結成して立ち向かうという展開なのは、実は東宝特撮SFでしか観られない特徴なんです。これは当時の日本人に根強かった国連崇拝と敗戦国としての劣等感の表れだったと思います。まあ当時の軍事力に対するアレルギー反応もあったかもしれませんが、この映画でも日本の軍隊=自衛隊の存在は影も形もありません。その反面、千田是也を隊長とする探査チームは、とても科学者の集団とは思えない軍隊組織みたいでしたね(笑)。[CS・衛星(邦画)] 5点(2024-12-28 21:50:35)(良:1票)

28.  オーディション(2000) 《ネタバレ》 前半から中盤までは三池崇史の作品とは思えない淡々とした穏やかなストーリーテリング、再婚相手を探すために映画の主演女優募集のオーディションを開催するなんていかにも業界人あたりが考えそうな手口だが、さほど違和感がある設定ではない。ところが世界中の映画人から最凶の評価を得ている本作だから、そんなホンワカとし続ける訳がない。この映画の秀逸なところは、中盤以降に謎の女・麻美の本性や過去が現実の中にカットバックされるところで、これが終盤の悲惨な目に遭う石橋凌にも使われて「これは夢なのか、はたまたパラレル・ワールドなのか?」というまるで悪夢を見せられている様な不安感に突き落とされます。有名な拷問シークエンスはイーライ・ロスがきっと観て喜んだろうなという凄惨さ、これはきついです。あの“足首からキリキリキリ…”は、きっと『ソウ』シリーズ第一作目に影響を与えたんだろうなと確信しました。石橋凌が針をブスブス刺されるところは、逆に『ヘルレイザー』シリーズのピンヘッドのオマージュなのかもしれません。強いて言えば私にはしいなえいひ=麻美の演技力がイマイチで、狂気の果てを飛び越えたような人間の姿が希薄で単なるメンヘラ女にしか見えなかったのは残念でした。 本作が『リング』と並んで『死ぬまでに観たい映画1001本』に選出されているのは妥当でしょう。でも本当に怖いのは、霊じゃなくて人間なんですね。[CS・衛星(邦画)] 8点(2024-12-25 21:58:19)(良:1票)

29.  ダイナー(1982) 《ネタバレ》 登場人物たちがウダウダと無駄噺に明け暮れる、いわば元祖”タランティーノ・スタイル”とも言える作品。このジャンルはまさに本作から始まったと言っても過言じゃないでしょう。同じ80年代に流行った『セント・エルモズ・ファイアー』などのような所謂ブラッドパック映画と同じくくりにされることもあるが、はっきり言って全然別物。ブラッドパックものとは違って舞台や登場キャラにはキラキラ感はないけど、それを補って余りあるリアル感に満ちているのが特徴。実生活でも若いころの犯罪的な武勇伝を“ヤンチャ”と称して自慢するおっさんがいますが、この映画で描かれるような何者でもない若者の何事もないが突っ張った生き方こそが本来の“ヤンチャ”なんじゃないでしょうか。登場人物たちはせいぜいいたずらをして留置場で一泊するぐらいが関の山、決して規律に縛られる生き方はしていないが誰もが経験した様な青春の一コマです。本質的な悪人と呼べるキャラが誰もいないストーリーでもあります。 時代設定は1959年のクリスマス、考えてみればこの当時の20歳前後の世代はベトナム戦争に巻き込まれる一つ前の世代で、大戦後の米国が最も社会的にも幸福だった時代だったと思います。本作でケヴィン・ベーコンが印象に残りますが、やはり一番輝いていたのはミッキー・ロークだったと思っています。やっぱ彼の紆余曲折の多いフィルモグラフィ中でも代表作は本作のブギー役だったと思います。このころのロークはそりゃモテないはずがないじゃん、と羨みたくなるほど男の色気が迸っています。賭けグルイで負けを取り戻すために親友の妻エレン・バーキンを誘惑するのかと思いきや、寸前で踏みとどまって逆に夫婦仲を修復させようとする本質的に優しい男でした。また本作の良いところは、すでに製作から40年以上経っているけど”彼らのその後の物語”風の続編めいたものが撮られてないことじゃないかと思います。やはりそこも今でも多くの人に愛される作品となった要因なのかもしれません。[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-12-22 22:33:49)

30.  セルラー 《ネタバレ》 これは面白い、いや抜群に面白いと言っちゃいます、20年も前の映画なのに自分はなんで今まで観てなかったのかと不明を恥じるばかりです。まずストーリーテリングのスピードが類を見ないぐらい突っ走っています。この映画の原案はラリー・コーエンですが、ほんとこの人はストーリーを思いついたり脚本を書かせたら天才的な才能を発揮します、なぜか監督させたらどうしようもなくヘボなんですけどね(笑)。オープニング早々いきなり踏み込んできた男たちに拉致されるキム・ベイジンガー、屋根裏部屋の密室で監禁されますが、部屋にある粉々にされた電話機の回線を繋いで外部と連絡を撮ろうとします。高校の生物教師という設定の彼女がなんでそんな機械的な知識を持っているんだろう?と突っ込みたくなりますが、まあそこは良いでしょう。これまたなぜか彼女の電話がクリス・エヴァンスの携帯電話に繋がってしまうのですが、そこからはもうノンストップ・サスペンスの始まりとなります。この映画は脇を固める連中のキャラが立ちまくっているのが特徴。情け容赦ない誘拐グループの隊長挌なのが若き日の“ハゲ無双”ジェイソン・ステイサムなんですよね、というか20年経ってもヘアスタイルや風貌が全然変化してないのがある意味凄い。今や女(男にもか)にモテモテの正義の味方しか演じないスタイルみたいなジェイソンの、希少な純悪役キャラというのは貴重なのかも。やっぱこのおっさん、悪党面ですよね。当然のごとくにラストでは射殺される訳ですが、映画の中でこの人が殺されるのは後にも先にも本作だけじゃないかな。あと定年間近で妻とスパ・サロンを開店することにしか興味が無さそうなウィリアム・H・メイシー、観てて「きっとこのボンクラ警官が最後には活躍するんだろうな」と容易く予測出来たけど、それでも終盤は胸がすくものがありました。ラストでキム・ベイジンガーに「あなたに何かお礼ができることないかしら?」と尋ねられて「それじゃあ、二度と僕に電話しないでくれ」と返すクリス・エヴァンス、洒落てますよね。それにしても映画に登場するLA市警は悪徳警官とボンクラばかりいる印象、これも実態を反映しているのかな。これまたびっくりしたのが携帯の画面を使ったエンド・ロール、こんな斬新なアイデアを思いつくとはこれもラリー・コーエンの功績なのかも。[CS・衛星(字幕)] 9点(2024-12-19 21:41:55)

31.  遊びの時間は終らない 《ネタバレ》 いやあ笑った笑った、今年観た映画でいちばん笑わせてくれたかもしれないです。昭和バブル期の邦画は不作だったという見方が強いが、探せばこういうお宝がまだまだ埋もれているんですよね。『狼たちの午後』を彷彿される銀行強盗かと思いきや、モッくんが人質に発砲する緊迫のシーン、それがなんと「バンッ」という口鉄砲、これは金融機関の協力のもとで行われた防犯訓練だったんですね。そこから始まるモッくんの大暴走、このころの本木雅弘は真面目でクールだが内に狂気を秘めたキャラを演じさせたらピカイチで、警官らしい丁寧な言葉遣いに終始するけど観てる方はいつキレるかとハラハラさせる緊張感が堪りません。対する警察側の各キャラも一人一人のキャラが立っていて、石橋蓮司の小役人ぶり丸出しの所轄署長が傑作でした。それでもほとんど怪演といえるレベルだった萩原流行がいちばん強烈で、劇中でほとんど瞬きしてなかったんじゃないかというガンギマリ演技です。あんなに長時間にわたって行員たちがバカバカしい訓練に付き合うというところは、もう一種の不条理劇のレベルに達していたと思います。“死体”の張り紙も笑ったけど、“レイプ”“空気”はもう最高でした。舞台となる金融機関は“平商工信用組合”となっていましたが驚くことに(現在も存続しているかは不明ですが)実在の金融機関で、さすが昭和の映画、現在ではこんなこと絶対にできないと断言しちゃいます。こんな傑作な作品の知名度が低いというのは、私には本当に解せないところです。[CS・衛星(邦画)] 8点(2024-12-16 22:44:23)

32.  TALK TO ME トーク・トゥ・ミー 《ネタバレ》 いまや全世界を席巻しているSNS文化と若者たちを支配している自己承認欲求が、プロットに巧みに織り込まれたストーリーだと思います。この若い連中がのめりこむ90秒憑依遊びはいわばコックリさんみたいな感じだけど、90秒を超過すると霊に乗り移られてしまうというところがキモなんですね。この映画の上手いところは、ヒロインであるミアに非常に不安定な言動を取らせることによってすんなりと彼女に感情移入し難くしているところでしょう。あと頑なまでにミアの体験の状況説明をオミットしているところで、それによって母親の死の真相や霊となって現れる母親が邪悪な存在に見えるところなんかです。父親が母親の遺書めいた手紙を読み聞かせた後の展開も不可解で、ミアを襲う父親と部屋に入ろうとしてドアをたたき続ける父親は同一人物なのだろうか?私は実は母親の死は自殺に見せかけた父親の故殺だったという凡庸な展開を予想していましたので、しょうじきその後の展開は訳が判らん状態でした。エグい描写はほぼ弟君ライリーに集中していましたが、これはかなりのレベルでしたね。ラストのオチは救いようがないと言っても良いと思いますが、宗教色を下手に出さなかったところには好感がもてました。 『ヘレディタリー 継承』を上げるまでもなく、近年世界でもっとも勢いがあるのがオージー・ホラーで間違いないでしょう。オージー・ホラーはせいぜい中規模程度のバジェットが限界なのだがそれぞれの作品にはハリウッド・ホラーにはない視点やアイデアで撮られた作品が多く、『リング』を始めとするいわゆるJホラーの影響が強い感があります。本作はかなり好評だったらしく続編製作が決定しているそうですが、まさかミアが実は生きていたなんてことにはならないでしょうね?あの手首のトルソが持ち主が代わって転々としてゆく、というのが妥当なプロットなのかな。[CS・衛星(吹替)] 7点(2024-12-13 22:06:16)

33.  サンシャイン 2057 《ネタバレ》 この映画では2050年には太陽がなぜか活動が弱まって地球が凍り付くという設定だが、太陽という恒星は水素がヘリウムに変換される核融合によってエネルギーを放出しており、一説ではその燃料が枯渇する63億年後には赤色巨星となって消滅するそうです。その燃料となる水素の減少によって逆に太陽からの放射エネルギーは徐々に増大していて、5億年後には地球は焼け焦げた惑星と化して生命が存在できない環境となるだろうとの予測もあります。まあ今からたった50年後に太陽が活動縮小するなんてことはあり得ないことですが、そこはSFだから全然ありですね。 ほぼ宇宙船内だけでストーリーは展開し登場人物はモンスターと化すマーク・ストロングを含めても9人こっきり、イカロス2号の乗員たちは8人中3人が東洋系でわれらが真田広之が船長!でも序盤であっさり退場しちゃったのは残念でした。イカロス2号の外観や船内はよく造りこまれていると思いますが、“地球の核物質をすべて使って製作したマンハッタン島ぐらいの大きさの核爆弾”というのが宇宙船のどこに装着されているのか不明。ラストで太陽に打ち込まれるその爆弾はどう見ても普通(?)の大きさで、ちょっと大風呂敷を広げ過ぎじゃない(笑)。本作はダニー・ボイルと脚本アレックス・ガーランドの最後のコンビ作だけど、その後監督業に進出したガーランド作品の暴走ぶりを考えると、ボイルは彼を良くコントロールしていたなと思います。でもこれだけは言っておきたいんですよね、この映画は中盤以降の展開はその10年前に撮られた伝説の怪作SF『イベント・ホライズン』とそっくりなんですよ。なぜかモンスターと化したイカロス1号の船長マーク・ストロングの登場は、ここに由来していたとしか思えません。とは言え『イベント・ホライズン』ほどのモンスター風味は薄く、ガーランド脚本特有の哲学趣味というか臭みが濃厚だったのも確かですけどね。 けっきょく登場人物は全員死んでしまったが、人類は救われる(のかな?)という結末は陳腐ではあるけどラストカットはダニー・ボイルらしさがあって良かったと思います。彼は本作でよほど苦労したらしく「もうSFは二度と撮らない」と語ったそうですが、それは確かに正解だと思いますよ(笑)。[CS・衛星(字幕)] 6点(2024-12-10 22:06:28)

34.  サボタージュ(1936) 《ネタバレ》 いやあ、正直言って驚きましたよ、まさか少年が運ばされている爆弾がバスを粉々にしてこの子まで死んでしまうとは!予備知識なく観ていたのであの“初めてのお使い”のシークエンスは、ハラハラ・ドキドキさせてどこかで爆弾が爆発しないか当初の目的を達成できないという良くある展開だとばかり高をくくっていたので、まさに“黒いヒッチコック”がこんなに若い頃の作品で見られるなんて予想もしませんでした。そこからのシルヴィア・シドニーが夕食の配膳をしている最中にオスカー・ホモルカを刺殺するまでの短いシークエンスは、そのピリつくような緊張感は圧巻で本作最大の見どころです。この指令を受けながらロンドンでテロを実行するオスカー・ホモルカが演じる男、もちろん明言はないけど時期的にナチス・ドイツのエージェントであることは誰でも判ったでしょう。でもこの男と妻であるシルヴィア・シドニーとの関係やキャラ設定がイマイチ甘いのも確かです。この怪しげな訛りが強い英語を喋る男は夫婦で米国から移住してきたという設定だけど、いきなりロンドンの中心部で自前の映画館を持てるというのはなんか不自然。まあ雇い主の某国が活動拠点として資金を出して映画館を買い取ったという推理(というか妄想)も成り立つけどね。このあまりに不釣り合いな夫婦だが、妻は彼が真面目で善良な人物だと信じて疑っていなかったのに、弟が爆死した真相を夫から聞かされても弟の死に激しいショックを受けているのに夫の正体にはあまり驚いている風には見えないんですよ。エージェントとしてのホモルカも無差別殺人に繋がるような指令には動揺は見せるが、けっきょく任務を放棄しないところもなんか判りにくいキャラであります。 ラストは辻褄合わせの様な一種のハッピーエンド(なのかな?)としてまとめているけど、最後の爆発はどこから爆弾が出てきたんだ?様子を探りに言ったペット屋が爆弾を持ち歩いていたということなのかな?ヒッチコックの娘がヒッチコックのフィルモグラフィ中でもっとも暗い作品の一つに上げているのは、なんか納得できます。[CS・衛星(字幕)] 6点(2024-12-07 23:37:08)

35.  デッドマン(1995) 《ネタバレ》 ジム・ジャームッシュの現在までの唯一撮ったウエスタン、ジャームッシュ史上もっとも豪華な出演者を揃えている作品でもあります。ジョニー・デップが演じる主人公の名前がウィリアム・ブレイクであり、本作自体が英国の大詩人ウィリアム・ブレイクの詩と思想に対するオマージュがプロットなんだそうな。浅学な自分はブレイクのことなんて皆目判らないけど、セリフや登場人物の名前などが多々引用されているらしい。あとサブキャラ的な登場人物にはやたらとロック・ミュージシャンの名前がそのまま使われており、一例としてはロバート・ミッチャムが演じた役名はアイアン・メイデンのボーカルであるブルース・ディッキンソンが由来だったりとかね。まあこういうところはあくまでジャームッシュの個人的な趣味の反映で、ストーリー自体には有機的な関りは薄いけどね。 あくまで本作は西部劇ではあるけどやはり所謂ジャームッシュ節は健在で、短いシークエンスの集積みたいな構成でその変わり目は画面暗転で繋ぐ、ジョニデと遭遇するサブキャラたちがみんな揃って「煙草をくれ」とせがむというジャームッシュ作品ではお馴染みの煙草への拘り、などです。本質的にはこの映画はジョニデと原住民ノーバディーのロードムービーなんだと思いますが、“デッドマン”というタイトル通りジョニデは前半のどこかで死んでいて、死者のジョニデが黄泉の国に流されてゆくのがラストシーンなんではないかな。この原住民ノーバディーがなかなかいい味を出しているんだけど、名前は忘れちゃったけどサッカー関係者でとんねるずのヴァラエティーによく出ていた人と瓜二つなんだよな(笑)。ランス・ヘンリクセンが演じる殺し屋の不気味さもかなりのもんで、死体の頭を踏みつぶすわ相棒を射殺してなんと喰っちまう、あの焚火にあたりながらなんかの肉を喰っているカット、それが人の腕だったと判ったときはちょっと衝撃でした。 まあ大多数の人にはジャームッシュの文学趣味が炸裂するこの映画は「なんじゃコリャ?」となるでしょうが、ジャームッシュ節愛好家の自分にはけっこうイイ感じな作品でした。あと完成した映像を見ながら即興でつけたニール・ヤングのギター演奏は、掛け値なしに渋い。[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-12-04 20:06:39)

36.  始皇帝暗殺 《ネタバレ》 荊軻と言えば中華史上もっとも有名な刺客、なんせ後の始皇帝となる秦王政をあわや暗殺する間際にまで追い込んだ人物ですからね。その荊軻と秦王政にこれは架空の人物である趙姫をはさみ、そこに呂不韋・嫪毐を絡ませた一種の群像劇のような構成となっています。 荊軻と言えば有名な割には『史記』にしか史料が残っていないような人物、一般に知られる荊軻像とはかけ離れたような大胆なキャラとなっています。まず初登場時の容貌からして『電波少年』に出ていたころのなすびにそっくり、壮士として知られる人物とは到底思えない姿。本来はカネで動く単なる殺し屋という設定で、しかもアヘンでも吸ってラリってるんじゃないかという感じの緩慢な動作。秦王政も後年の始皇帝となる人物のイメージにはほど遠く、その言動にはなんかガキっぽさが感じられます。そこはやはり趙姫=コン・リーの存在感と凛とした美貌は際立っており、やはり本作は彼女のための映画だったと言えるでしょう。燕丹が仕掛けた秦王政の暗殺計画が趙姫の発案で政と共謀した謀略とするのはもちろんフィクションですけど、ストーリーに深みを与える面では成功していると思います。『史記』では荊軻は臆病と思われたほどに無駄な危険を犯さなかったとされるが、劇中でも盗みを犯した子供を救うために要求されるがまま這いつくばって店の主人の股をくぐるけど、これって有名な“韓信の股くぐり”の故事のパクりじゃん(笑)。野外での合戦や王宮でのシーンはカネかけただけあって迫力満点です。でも趙の邯鄲が秦に攻め落とされるシークエンスでは、趙の幼い子供たちが城壁から次々と投身するところや趙姫が生き埋めにされた子供たちを見つけるシーンには心が痛みました。生き埋めは始皇帝の得意技と言っても過言じゃない処刑ですが、王朝の滅亡時の“王家一族郎党皆殺し”は、その後の中華王朝では何度も繰り返された伝統芸みたいなもんですね。あと嫪毐のクーデター失敗のシークエンスもなかなか凄い絵面でしたが、私には嫪毐が生瀬勝久が演じているとしか思えなかったんです、似てますよね(笑)。 この時代の中国史に多少なりとも興味があればいろいろと突っ込んだりもできてそれなりに愉しめる作品だと思いますけど、そうじゃないとちょっと見続けるのはキツいかも。でも作品としてはフィクションを交えながらも骨太なストーリーで見応えはあったと思います。[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-11-29 22:40:06)

37.  トップガン マーヴェリック 《ネタバレ》 オープニングは今やテスト・パイロットになっているマーヴェリック=トム・クルーズが試作機を飛ばして速度記録(なんとマッハ10!それにしても大風呂敷広げたもんだ)に挑戦するというシークエンスで、これはまるで『ライトスタッフ』の再現ではないか!トム・クルーズは現代のチャック・イェ―ガーだったというわけです。まあこれは製作陣の一種の遊び心だと好意的に解釈しておきましょう。あの『トップガン』の続編というにはあまりに年数が空いているのでリ・ユニオン的なストーリーになるだろうなとは予想していましたが、マーヴェリックがトップガンに教官として戻ってくるなど自分が予想した通りの展開でした。リ・ユニオンらしくライバルだったアイスマン=ヴァル・キルマーは海軍大将の艦隊司令官に昇りつめているけど、マーヴェリックは大佐どまり、まあこれは現役パイロットでいたいので昇進拒否しているので仕方がないか。前作で死なせてしまった相棒グースの息子がマーヴェリックの教え子となるのですが、グースの妻だったメグ・ライアンはすでに死去しているという設定で、これはルックス劣化が著しいライアンを出演させない意図があったのかも。それを言ったらシャーロット・“チャーリー”・ブラックウッド=ケリー・マクギリスに至っては出演どころか言及すらされない存在です。リ・ユニオンなのに実は彼女には出演オファーすらなかったそうで、どうもデブっちゃったので敬遠されたみたいです。 本作は前作と違って某国の原子力施設を空爆する作戦のために精鋭たちはトップガンに集められており、そこら辺はかなり好戦的です。この某国は北朝鮮なのかイランかはたまたロシアなのかは、さすがに敢えてぼかした撮り方ですが、ラストにかけてその国がF-14トムキャットを運用しているのでこれはイランで確定ですね。まあイランも北部山岳地帯に行けば雪も降りそうですからね。このミッションは懐かしの『633爆撃隊』のモスキート機による重水工場爆撃と地形からしてそっくり、製作陣は古の航空機映画をいろいろと研究したみたいですね。イランが第五世代戦闘機を配備しているというのはちょっとしたおふざけですが、その機影はCG作成ながらもロシアの第五代戦闘機と言われるSuー57とそっくりさんでした。F/A-18ホーネットの飛行シーンはさすがに迫力は満点で、大スクリーンで観たら飛行機酔いするんじゃないかと思うほど。どうやって撮ったか、多分CG使用なんだろうけどホーネットが高性能機でしかできない荒業“プガチョフのコブラ”機動をするシーンにはびっくり、F/A-18の実機でこれが可能なのかは疑問ですけどね。 あんだけ地対空ミサイルを撃ちまくられたのに二機撃墜こそされたが戦死0というのはちょっとご都合主義が過ぎるけど、やっぱマーヴェリックのカッコよさに見入ってしまうとそんなことどうでも良くなっちゃいますね。こういう単純明快さこそがハリウッド・エンターテインメントの強味なんでしょう。[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-11-26 23:36:31)(良:1票)

38.  非常線の女 《ネタバレ》 恥ずかしながら小津安二郎がギャング映画的な作品をサイレント時代に撮っていたとは知らなんだが、たしかにこの作品にはハリウッド映画の影響が強く感じられるけど、まあ言ってみればギャングというよりは小津版任侠映画といったところかな。元ボクサーの岡譲二はヤクザというよりは与太者のボス、田中絹代はその情婦だが昼は普通の会社でズべ公の本性を隠し大人しく上品なOL(当時は女事務員と言うのが正しいか)なのである。手下には“姐御”と呼ばれる存在なのに、言い寄ってくる社長の息子の副社長をおぼこっぽいふりをして貢がせるしたたかな女です。岡のグループに入ってきた不良学生には姉がいて、弟を更生させようとする彼女と出会ってから、岡の与太者稼業が思わぬ展開になってくるんです。 確かに本作はギャング・任侠的な要素が濃厚ですけど、さすが松竹らしく女優を愛でる映画なんです。戦後の田中絹代しか知らなかった自分ですが、当時20代半ばの田中の顔つきの幼さには驚かされました。これじゃ昼間のOLはともかくとしてもギャングの情婦という役柄はミスキャストという声があるのも止むを得ないかもと思います。でも演技力は確かなもので、終盤の展開ではなんかホロリと来るものがありました。しかしなんといっても姉役の水久保澄子を知ることが出来たのは大収穫でした。松竹歌劇団出身の彼女は当時まだ17歳、その目を引く美貌は元祖アイドル女優とも言われているのは納得です。そんな将来を嘱望されていた彼女ですが、自殺未遂を図ったり移籍した日活ではいろいろと揉め事を起こした挙句に35年にフィリピン人と電撃結婚して渡比、2年で離婚して帰国したけど映画界からは追放状態でその後映画出演はありませんでした。本作を観る限りでは美貌だけでなく引き付けられる演技力も持っており、このままキャリアを積めば原節子並みの大女優になっていたかもしれないし、実に残念なことです。[CS・衛星(邦画)] 8点(2024-11-23 23:10:24)

39.  花嫁はエイリアン 《ネタバレ》 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がもちろん代表格だけど、80年代SFコメディは40年後の現代でも観ていて愉しくさせてくれるから嬉しい。この映画も冒頭のトム・ジョーンズからしてバブル時代のうきうきした雰囲気が伝わってきます、そりゃあ音楽担当は『バック…』と同じアラン・シルヴェストリですからね。男やもめのどん臭い科学者というのはダン・エイクロイドお得意のキャラですが、やっぱコメディエンヌとしてのキム・ベイジンガーの魅力がもっとも堪能できるのは間違いなく本作でしょう。このころの彼女はその美の絶頂期だったし、ウエディングドレス姿も含めて彼女の色んなファッションも眼を愉しませてくれます。あとエイクロイドの13歳の娘もなかなかキュートで良かったですね。この映画ではストーリー云々に突っ込むのはそりゃナンセンスですよ。愛すべきおバカなストーリーのラストで、円盤からステファニー王女軍団が現れて主人公の弟ロンがロールスロイスごと宇宙に旅立っちゃうのには笑わせていただきました。こんなおバカな終わり方のコメディ映画は、滅多にお目にかかれないでしょう。こういうノリのコメディ映画は、もうハリウッドでは製作されないのかなあ…[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-11-20 22:14:15)(良:1票)

40.  マンディ 地獄のロード・ウォリアー 《ネタバレ》 ニコラス・ケイジが主演ということで『ゴーストライダー』みたいなノリのお話しかと思いきや、肝心のニコジーは冒頭にちょっと顔を出したと思ったら50分過ぎまでまったく登場しなくなっちゃうし、その間キチ〇イカルト集団の何の意味もない世迷い言を延々と聞かされる拷問みたいな展開。やっと再登場したニコジーボウガンやら手製の剣で嫁を焼き殺されて復讐に奮闘するわけですが、そもそもこの役は枯れてもオスカー俳優が演じるもんじゃないじゃないか?いやいやカルト教祖に負けない不気味さのこの主人公は、やっぱニコラス・ケイジじゃないと演じられないというかまさに適役だったのかなと最後には思い知らされました。彼の主演作の中でももっとも汚いんじゃないかと思う髭面で、殺した相手や自身の負った傷でもう人相も判らなくなるぐらいに血まみれ状態なんだからねえ。でも快作『ウィリーズ・ワンダーランド』のような吹っ切れた爽快感(?)はなくて、重低音の音楽を背景にしたレンズに赤フィルターをつけて撮ったような観ずらい映像で陰惨なストーリーを見せられるのは苦痛です。でもそんなヘンなストーリーでもところどころに味がある部分もあって、ニコジーが夢の中で観るアニメーションがなんか斬新な感じがしました。 この映画で一番耐性が試されたところ:チェダー・ゴブリンのチーズマカロニのCM、こんな気色悪いフェイクCMをわざわざ撮る監督はどうかしてるぜ!ちなみに監督は『カサンドラ・クロス』や『コブラ』を監督したジョージ・パン・コスマトスの息子だそうです。[CS・衛星(字幕)] 4点(2024-11-17 21:58:57)

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