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プロフィール
コメント数 741
性別 男性
自己紹介 ソフト化されたタイミングでのレビューが中心です。2008年、子供の頃から夢だった自宅シアタールームがついに実現しました。(100~110インチ程度、音響2.1ch)できるだけネタバレせずに書いていますので文章がおかしい場合もあると思いますが、暖かい目で見守ってやってください。(2014初登録)

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21.  チャップリンの黄金狂時代 《ネタバレ》 音楽とナレーションがあるバージョンを見ました。どうやら私は長編になる前のチャップリン作品が好みらしく、本作「黄金狂時代」もとても楽しく鑑賞することができました。長すぎず短すぎない60分前後の収録時間のほうがこのような作風には合っているように感じます。 本作は脚本とプロット(構成)の作りこみが素晴らしく、最初から最後までキレイな線でつながっています。このきれいなライン上にバランス良くちりばめられたチャップリンのお家芸が本当に素敵で、どのシーンを切り取っても安心して見ていられます。余談ですが本作では「孤独な金鉱探しチャーリー」となっており、トランプ氏ではないのは結末のことを考えてあえて別人にしたのでしょうか。 オープニング、冬山にタキシードでやってくるチャーリーでまず笑ってしまう訳ですが、その後続くストーリーは予想に反してかなりリアルな流れです。直接描写は無いものの殺されたり遭難したりとシッカリ死人も出ます。しかし切迫した状況のハズが、続くロッジでのシチュエーションコメディでは定番のパターンでシッカリ笑わせます。靴をまるで魚のように上品に食べるシーンは映画史に残る名シーンでしょうw 街に降りてからロマンス路線に切り替わる流れもスムーズで、今回チャップリンの意中の相手は「ジョージア(ジョージア・ヘイル)」で、こちらも若干高飛車な人間性を嫌味なく絶妙な塩梅で演じていて本当に上手な女優さんでした。残念ながら他に目立った映画出演はないようです。 枕に忍ばせてあった彼女の写真と造花、再訪があると聞いて枕を破壊してまで喜ぶチャーリーが伏線となっていて、大晦日のシーンはかなり泣ける展開です。パンのダンスも素敵だし駄馬突入の流れも素晴らしかったので、、本作で最も素敵なシーンの一つだと思います。 その後の流れもスムーズかつスマートで、プロポーズしておいて本物の大金持ちになる流れはお見事です。途中挟まれているシーソーネタも退屈させず最後の最後までシッカリ楽しませてくれます。ラスト、金持ちになった事実を知らずにチャーリーをかばうジョージアも愛らしく、この流れから「ハッピーエンドですね?」「その通り、ハッピーエンドです!」のナレーションは心底名セリフ(脚本)でした。素晴らしい作品![インターネット(字幕)] 9点(2024-11-07 15:50:21)《改行有》

22.  モダン・タイムス 《ネタバレ》 名作を知らずに死ぬのは惜しいのでチャップリンとヒッチコックを見ています。本作「モダン・タイムス」は説明も多いですがしゃべりが無いのがいいです。個人的にはやはりチャップリンは無声映画が最も素晴らしいと感じています。 映画全体を見渡すと取っ散らかった印象があって若干説得力に欠けると感じる方もいるかもしれませんが、しかし要所要所、随所で見られる明確な意思表示や内面表現は非常に分かりやすくシンプルで力強いものでした。80年以上経った現代でも色々と当てはまる(思い当たる)部分があってなかなかに興味深く、トータルで見るとやはりさすがチャップリンとしかいいようがない素晴らしい仕上りだったと思います。 面白ポイント(納得ポイント)はやはり皆さん同様、、「ネジなら何でも締めたくなる病」「牢屋に戻りたがるほどの不景気」「デパートでのローラースケート」「歌」などのシーンです。ローラースケートのシーンは一体どうやって撮影したのか、地味ですが意外と凄いシーンだったりします。あとやはり歌の前に袖をすっ飛ばすシーンは大爆笑で、、ベタですがドリフとかより面白くて本物は一味違いました。逃げる際に椅子を散らかしていくのも地味にツボ。あと何気に「自動食事シーン」は星新一の短編小説を映像化したらあんな感じになりそうで笑えました。 個人的に気になったのが、、牢屋の待合室でくつろいでいるチャップリンの隣に座る牧師夫人とのやり取り。受刑者のくせにお茶を出されたり牧師に紹介されたりと、、まあ割と面白いシーンではあるものの、夫人と二人きりになった際のやり取りがよくわかりませんでした。これは何を意図して何を表現したかったのだろうか?いまいちピンときませんでした。 ラストの締めくくりは個人的にはちょっときれいごと過ぎて説教臭く感じてしまいました。いやもちろん笑顔は素敵なのですが、何となくちょっと出来過ぎた感じが鼻につく結末です。しかしながら総合的には非常によくできた素晴らしい作品だといえます。[インターネット(字幕)] 8点(2024-11-05 17:28:13)《改行有》

23.  キッド(1921) 名作を知らずに死ぬのは勿体無いと思い、チャップリンとヒッチコックを見ています。基本的に彼らの映画には大きなハズレはなく、本作「キッド」も一定以上のレベル(実際かなり高いレベル)に達しています。これが100年以上も前の作品だというのだから本当に驚きます。1921年にこのクオリティで映画を撮ったチャップリンは極めて偉大で、一世紀後の現代人が見ても十二分に納得感が得られるというのは、やはり凄いとしかいいようがありません。 無声映画で最も注意すべきは登場人物の態度と表情だと思いますが、これをチャップリン本人が意識的に演技するのはまあ当たり前にしても、7歳の子役(役どころでは5歳)であるジャッキー・クーガンが存分に演じていることに驚きます。とにかく表情豊かでしゃっちょこばった雰囲気もなく、自由にのびのびと演じています。 このジャッキー・クーガンという人物を調べてみると子役スターの第一人者でもあり、高額な子役の報酬を本人に代わって守るための法律「クーガン法」が制定される切っ掛けになった人物だそうです。当時300万ドルともいわれる多額の報酬を母親が無断で使い込んだそうで問題になったようです。Wikiによると(クーガン法(クーガンほう)は、子役が稼いだ収益の一部を子役自身のために残すことを義務つけたカリフォルニア州の法律(州法)。英語表記は「California Child Actor's Bill」。) 映画の内容としては非常にシンプルなもので、チャップリンが演じていなかったら面白くもなんともない題材だと思います。ただし、面白くないといっても人種を超えて動物の本能である”親子が互いを愛する物語”なので普遍的かつ決して色褪せない鉄板の題材でもあります。ここでひねりが効いているのが、、この親子が実は全く血縁ではないということ。パンケーキを数えて分け与えたり、寝ている最中に同じタイミングでビクついたりと・・ なんだか奥深くてホロっとさせられちゃいます。 ラストが物足りないという意見も見られますが、序盤に見られたような宗教色やら贖罪色やら強調されてもお寒いだけだったと思われます。真摯に子供の願いを聞き入れ、育ての親を呼び寄せるラストカットだけでもう十分に幸せな余韻に浸らせてくれる素晴らしい結末だったと思います。「やっぱりチャップリンは面白かった。。」これに尽きます。[インターネット(字幕)] 8点(2024-11-03 17:17:59)(良:1票) 《改行有》

24.  泥棒成金 全くヒッチコックらしくない映画でしたが、テクニカラー&ビスタビジョンで美しいヨーロッパの景色が鮮やかな色合いで堪能できる素敵な作品。シネスコと異なり圧縮されていないビスタビジョンは非常に美しく、70年ほど前の映画とは思えません。またWikiによるとヒッチコックとしては初のワイドスクリーン作品だったようで、車での長回しのシーンなども凝っていてとても美しく記録されています。 特筆すべきはダブル主演の「ケーリー・グラント」と「グレース・ケリー」のスーパーカップルがとにかく優雅で美しいということ。この甘美なカップルが美しいヨーロッパの景色を背景に華麗に振る舞う姿はまさに浮世離れした美しさで、スクリーンの中だけで繰り広げられる夢の世界に酔いしれることができる稀な作品です。 フランシス・ドッジの推理小説を原作にしているだけに話にも安定感があり、宝石が盗まれる過程や準備、謎にも破綻がありません。確かに21世紀の感覚で見てしまうと少々陳腐な部分もありますが、前述のケーリー・グラントとグレース・ケリーの圧倒的なスター性から陳腐さは些細なことのように思えてしまいます。また、彼らがランチデートでドライブするシーンの車のギミックも素晴らしく、到着した丘の上からモナコ市街が一望できるシーンは最高すぎました。鳥の足を食べた後にキスしたら鳥の味しかせんやろな~とか、、なぜ合成にしちゃったのかとか、、色々意味深なシーンです。有名な話ですが皮肉にもこの美しいシーンが撮影された付近でグレースケリーは車を運転中に亡くなっています。(脳梗塞&転落) ラストの対決が少々退屈しますが今の時代感覚で見てはいけません。真犯人もお決まりの展開ですが、本作はジャンル的には一応「サスペンス&コメディ&ロマンス」なので、結末としてはまあこんなものです。どちらかというとケリー嬢の圧倒的な美しさから「ロマンス」が一番強調されるべき部分ではないでしょうか。 本サイトのレビューでは低評価ですが、映画ファン、グレース・ケリーファンでしたら一度は見ておくべき名作です。後の大ヒットシリーズ「007ジェームズ・ボンド」にも多大な影響を与えたはずなので、007ファンも見て損のない作品です。(というか本作のほうがより007ぽいかも)[インターネット(字幕)] 8点(2024-11-03 11:54:19)《改行有》

25.  クライング・ゲーム 《ネタバレ》 「ネタバレ厳禁ですので鑑賞後にレビューを読むことをお勧めします」 30年も前に、、映画の師匠である先輩から勧められて鑑賞、とても感動した作品でした。今でもアレの衝撃だけはよく覚えていますが、久々に鑑賞してみたらアレ以外はほぼ全て忘れていました(笑) 人間の記憶って本当に当てになりませんね。 大人になって見返してみると脚本が非常に良い。友情と恋愛、人間の本質と性というものをリアルに描いてあって序盤からやたらと面白い展開を見せます。他の映画と違ってオープニングも非常に上手く、「男が女を愛する時」の曲と歌詞をじっくり観客に聞かすことで、暗に男が女を深く愛する映画なんだと刷り込まれます。結果的に半分は正解で半分はミスリードであったことが途中で判りますが、演出上は非常に自然で嫌味がありません。(まあ考えようによってはミスリードではないのかもしれませんが・・) 今でこそ性の多様性を認めるのが当たり前の時代ですが、当時は偏見も酷く本当にひた隠しにしていた人もいました。地域や宗教によってはバレたら犯罪者として裁かれるほど深刻な問題であったりもします。しかし本作ではその「アレ」に関しては全く隠しておらず、むしろポロリポロリと大胆に種を落としてみせます。ディルが一見すると性別が判り難いアフリカ系であったことで、歌に踊りにバイオレンスにと派手な演出で上手くカモフラージュされています。このディルという難しい役を本映画がデビュー作であるジェイ・デヴィッドソンが好演しています。いかにも強気な女性を演じていたかと思えば「あなたが裏切らなければ、私は一生あなたのもの」なんて素敵なセリフがでてきたり、表情豊かにリアルな女性像を巧みに演じています。 問題はファーガス(スティーヴン・レイ)のほうで、こちらはイイ人ぶっている割りにかなりのポンコツ具合を晒します。何せ半分は自分のせいで既に死んでいるジョディ(フォレスト・ウィテカー)の最期の願いを伝えないばかりか、ちゃっかり自分が新恋人の座に座ってしまうのですから酷いもんです。オマケにアレが判明した後の態度もまあまあ鬼畜で、決していい人なんかではありません。しかし良くいえば”人間らしい弱さを持ったリアルな男性像”がきちんと描けていて、それなりに魅力的で憎めない人物に仕上がってもいます。実際、ジョディからもディルからも(昔の悪仲間からも)好かれるキャラクターで、この巧みな人間形成がこの映画の奥深さに繋がっているような気がします。 か弱い彼らと周りの厳しい現実が上手く絡まりあって、シンプルかつ衝撃的なラストを迎えます。素敵なおとぎ話である「サソリとカエルの物語」も、イマイチ誰と誰に向けて語っているのか微妙に分かり難いわけですが、これも含めてラストは悲劇的になり過ぎない絶妙な塩梅で終わります。意外と奥深く脚本賞受賞は納得の出来栄え。考察する余地を残した素晴らしい作品ですのでにわかの映画ファンにも広くお勧めできる作品。 (余談ですが「ぼくのエリ」同様、本作品の根幹にかかわる最も大切な部分がボカシで隠されます。映倫の連中は映画とポルノの違いも判らない無能であることは誰の目にも明白で、、、 心底残念でした)[インターネット(字幕)] 8点(2024-10-31 18:06:37)《改行有》

26.  スプリット 《ネタバレ》 アンブレイカブルの続編ということですが、超能力とそれを認める(知る)人物が存在する以外はあまり繋がっていません。ラストにアノ人が出てきますが、、このシーンも取って付けたようで完全に遊び枠でしかありません。全体的に決して悪くはない仕上りなのですが、前のめりになるほどの作品でもなく・・ 評価的には何となく難しい映画でした。(監督カメオもヒッチコックほど面白くなく・・ てか、シャマラン監督もまだまだ若い) アンブレイカブルに続いて本作もやたらと暗い訳ですが、この暗さはシックスセンスやヴィレッジの時は作風とマッチしていましたが、さすがに辛気臭いのが続くと嫌になってきます。とにかくハッキリいってシリアス過ぎて疲れちゃいます。 本作では実質主人公に近いジェームズ・マカヴォイ(デニス他)がスプリットしまくりで、23人(+1)もの人格が一人の人間の内に秘められています。しかし2時間の映画に納めるなら人格は4~5人もいれば十分で、ストーリー上は「危険思想のデニス」「キーマンのヘドウィグ」「安全地帯のパトリシア」「ジョーカーであるケヴィンorビースト」で十分でした。23人だとちょっと意味もなく複雑になり過ぎた感じもします。あとそもそも論、23のスプリット人間を野放しにしていた時点でフレッチャー先生(ベティ・バックリー)の罪は大きく、あのラストも致し方ないところではありますね。(しかし、ジェームズ・マカヴォイの演技は手放しで素晴らしかった!) 本作では、、どちらかというとケイシー・クック(アニヤ・テイラー=ジョイ)の人生観や過去の問題のほうが興味深かったです。叔父さんネタは暗にそういう事を示唆している訳ですが、ビースト事件では皮肉にも過去のソレのおかげで命拾いします。女性警官が「叔父さんを呼ぶ」と言った時のラストの涙目演技で女性警官がどれくらい事の真相に気づいてくれるか興味が尽きないところでしたが、まあこの映画とは直接関係ない話なのでこのままフェードアウトしてしまいました。 使命感から「ミスター・ガラス」も観る予定ですが、結局地味で重たい流れだろうなということは想像できます。完結編でどれくらいアッと驚かせてくれるか、、、大いに期待(白目)しておきましょう![インターネット(字幕)] 6点(2024-10-26 11:00:10)《改行有》

27.  ダイヤルMを廻せ! 《ネタバレ》 死ぬまでに名作をみておけ、ということでヒッチコックを見ています。皆さん、ハズレを引きたくなければヒッチコックを選んでおけば基本的には大体どれも面白く、さすがヒッチコックといった抜群の安定感です。 本作「ダイヤルMを廻せ!」はミステリとしては極めて完成度が高い作品でした。まさにクラシックで正統派の映画、倒叙方式であるがゆえにとにかくハラハラドキドキしっぱなしです。またグレース・ケリー嬢の美しさといったらもうね・・ シミ―ズ姿で首を絞められるシーンは名シーンに認定しておきます。 ただ気に入らない部分も少しあります。まず「時計が止まっていた」というのは解せない。パーティ会場であれば幾らでも他に時計があったハズで、犯人が自分の腕時計に固着する必要性が全くないのは明白です。むしろタイミングが重要な完全犯罪を犯す前であればしきりに時間が気になるハズで、「時計が止まっていた」はあまりにも間抜けでした。また鍵のカラクリにしても、幾ら7~80年前とはいえ他人のマンションと自室の鍵が見分けがつかないというのも少々無理があったような気がしました。 ラストがハッピーエンドになっていますが、皆さんご指摘のように不倫の末のアレですから私もモヤっとした感覚が残りました。不倫の末にお金持ちの令嬢で超絶美人のグレース嬢をさらっていった訳ですから、私でも軽く殺意が湧きますw 結果的に若干整合性が取れない部分もありましたが、とにもかくにも犯行間際のあのドキドキ具合ったらないデス!!本当に素晴らしい映画ですので未見の方はぜひ一度はお試しください!(本作の監督カメオ出演はかなり笑えますので必見) PS 余談ですが、 Wikipediaによると”ダイヤルM”とは(Murder=殺人の頭文字M)だそうです。また、原題:Dial M for Murder を「殺人はダイヤルMまで!」とせずかなり飛躍した「ダイヤルMを廻せ!」にした邦題のセンスは本当に素晴らしい。あと鍵に関してもWikiに書かれていて、当時の英国アパートはホテルと同じ形式で、鍵を持たずに外にでると自動的に締め出される仕組みになっていたそうです。このラッチタイプのドアの関係から、どのお宅も同じ鍵の形状であった可能性はありそうです。。[インターネット(字幕)] 8点(2024-10-24 17:42:46)《改行有》

28.  北北西に進路を取れ 死ぬまでに名作をみておけ、ということでヒッチコックを見ています。皆さん、ハズレを引きたくなければヒッチコックを選んでおけば基本的には大体どれも面白く、さすがヒッチコックといった抜群の安定感です。 本作「北北西に進路を取れ」(North by Northwest)ですが、まずタイトルがやたらとカッコいい。調べてみるとこの表記の仕方は存在しない方位を示しているそうで、Wikipediaによると、北北西は「North-NorthWest(NNW)」が正しいようです。存在しない方位を示してあるのもまた余計にカッコいいです。またアカデミー脚本賞、編集賞、美術賞にノミネートされているだけあって、脚本が非常によく出来ていて最初から最後までずっと面白いまま突っ走ります。特に後半に向けてサスペンス色が深まる飛行機爆破のペーシングシーンは本当に印象深くて素敵なシーンでした。 ただ、ツッコミ所は色々と多めです。普通の広告マンだった主人公ロジャー・ソーンヒル(ケーリー・グラント)はいつも冷静沈着で、なぜか毎回うまくピンチを脱します。マザコンでバツ2の広告マンにしてはちょっと度胸がありすぎるし、とにかく落ち着いていて貫禄がありすぎます。また美しいイヴ・ケンドール(エヴァ・マリー・セイント)も、もとは普通の人だったと語られますが、まるで峰不二子ばりの本格スパイを地で行っています。26才でこの落ち着きはちょっと異常なくらいだし、ストーリー上、タウンゼント(フィリップ・ヴァンダム)についていく気満々だったようですが、それほど惚れているようにも見えません。結果的に終始よくわからないキャラを貫いていて、まさに峰不二子を地で行っていて少々不自然でした。 007シリーズに多大な影響を及ぼしたといわれますが、ホントにその通りだと感じました。初期のボンド作品よりずっと007なのが軽く笑っちゃうくらいです。粗はあるものの倒叙システムもよく効いていますし、結果的に面白ければ問題ないと言わしめるくらい脚本がよく出来ています。ちゅっちゅウフフで反転ハッピーエンドラストも本当に素敵でした。まあ文句なしでしょう!(ちなみに本作の監督カメオ出演は油断してると見逃がしますよ、私も見逃しました)[インターネット(字幕)] 8点(2024-10-24 17:35:44)《改行有》

29.  カイロの紫のバラ 《ネタバレ》 こういう作品のことを「映画」と呼ぶんだと思います。また本作はきちんとスクリーンで見れば楽しさ10倍増しなのは間違いありません。(自宅100インチ2.1チャンネル、スクリーン鑑賞) セシリア(ミア・ファロー)はあまり好きな女優ではありませんが、本作でも良い仕事をしています。私が好きじゃないだけで、彼女が素晴らしい役者なのは誰もが認めるところでしょう。本作の彼女はやたらとおっとりしていますが、このおっとりした雰囲気がより映画をメルヘンチックで素晴らしいものに昇華してくれていると思います。この映画が素敵になったのは彼女のおかげといっても過言ではないでしょう。 もちろんトム・バクスター/ギル・シェパード(ジェフ・ダニエルズ)も非常に素晴らしい演技をしてくれていて、飛行機で飛んできた本物とスクリーンから出てきた分身とで明らかに違う人物であるのが一目で判ります。さりげなく微妙に違う人間性をきちんと使い分けていて本当に素晴らしい。個人的には特に娼館で女性陣と語らうシーンが最高でした。ほほ愛の核心を突くのがスクリーンから飛び出してきた分身というのがお笑いポイントですが、不覚にも非常に感動的で涙が出そうになるレクチャーとなっています。 ウディ・アレンの良さは”間”の取り方にあると思います。本作ラストでもセシリアのシーンがあと2秒、長くても短くてもダメで、この絶妙な時間間隔で観客を飽きさせることなくしっかりと余韻に浸らせてくれます。この絶妙な間は本当に素晴らしいとしかいいようがありません。今はもう少なくなったクラシックな監督のなせる業です。 余談ですが、何気に同年公開のバック・トゥ・ザ・フューチャーと比べ本作のほうが合成映像に違和感がなかったのが地味に凄いですね。。また美しいラストの「トップ・ハット(Top Hat)」でアステアが躍るシーンは「グリーンマイル」でも使われています。私は映画が大好きですが、映画ファンを語るならぜひとも一度は鑑賞しておくべき映画でしょう。私も早く見なきゃ・・[インターネット(字幕)] 9点(2024-10-22 17:49:19)(良:1票) 《改行有》

30.  お熱いのがお好き 脚本がよく出来ていて、マリリン・モンローの美声と美貌も併せて堪能できる三拍子揃った作品となっています。説明なしに各キャラクターの性格を見せる匠技も上手く機能しており、流石ビリー・ワイルダー監督脚本といったところです。まあそもそも論、各キャラの設定自体に割と無理がある訳ですが、この時代特有のワザとらしい作り物のノリにシレっと乗っかるのが正しい鑑賞方法でもあったりします。 全ての出演陣が魅力的ですが個人的には緩衝材的な役目を担ったダフネ(ジャック・レモン)が素敵でした。ジョー・E・ブラウン扮するオズグッド・フィールディング3世に惚れられるシーンが極めて重要で、この設定のおかげで話が何倍にも広がっています。ダフネが嫌な顔をしてもなんだか憎めなくて素敵なのですが、対するジョセフィン(トニー・カーティス)は美味しいところを全て持って行ってしまって、、軽く腹が立つレベルでした。しかしながら確かに男前で度胸もあって頭も切れるので仕方がないところでしょうか。。船でのラブシーンは彼の騙しの真骨頂といった感じで腹が立つシーンだったりもしますww ラストがキレイにまとまり過ぎていますが、それは近年の凝り過ぎた映画に慣れてしまった弊害で、本来楽しい映画体験には「ハッピーエンド」が欠かせない要素の一つです。カサブランカのように悲しい結末を迎えるのもアリですが、本作は喜劇なのでやはり夕陽をバックにハッピーエンドが正解です。 気になる点としては、アメリカ特有の自由奔放&O型気質(いわゆるヤンキー気質)が目立つ点です。嘘をつきまくって平気で自分を正当化しますし、結果的に上手く収まれば経過は関係ないだろという強気なヤンキー気質が強く出ています。この点において誠実さに欠けると見るか自由奔放で楽しそうと見るかで評価が別れるかもしれません。まあ喜劇作品なので難しい話は抜きにして楽しんだもの勝ちでしょうけど。[インターネット(字幕)] 8点(2024-10-21 12:32:40)《改行有》

31.  インソムニア 《ネタバレ》 ノーラン監督がバットマンで一世を風靡する直前の作品。業界では既に有名監督でしたので、本作ではアル・パチーノとロビン・ウィリアムズの超一流役者がまとめてスクリーンに大写しになるという、非常に贅沢な一コマが堪能できます。しかし作品自体は割と凡唐で、田舎で起きた殺人事件をLAの花形ヒーロー刑事が追うというシンプルなもの。白夜=夜が無いという特殊な仕組みはあるものの、一部主要人物たちが寝不足に陥るだけでその他目立ったカラクリはありません。まあこれは他レビュアーさんの書き込みにも見られるように、実際に白夜を経験していない人にはピンとこないのかもしれません。 物語自体もシンプルで、内部監査でヒーロー刑事の過去の汚点に火が付いて僻地捜査に飛ばされたものの、慣れない捜査で誤射がおきるというシンプルな構造です。ただこのプロットにはきちんとリアル志向の骨格があり、この悪徳刑事は自己の利益のみでは動いておらず、世の為を思って証拠を捏造したり、自分のミスが発覚すると過去の判例までも反故にされる可能性を恐れて秘匿してみたりと、一応は正義の側面もあります。実際、新人研修の手本となるようなヒーロー刑事としてのエピソードもきちんと描かれています。 凝った脚本に難しいセリフが合わさってイマイチ判り難い部分もありますが、アル・パチーノがモーラ・ティアニー扮する宿屋の女性(ERのアビーさん)に自身の心境を吐露するシーンや、犬の死体を利用して証拠を捏造するシーンなど興味深い演出も結構多いです。できれば被害者タニヤ(キャサリン・イザベル)と犯人が親しくなった経緯や彼らのバックボーンまで掘り下げてくれていたほうがより深みがあったと思いますが、時間が足らなかったのかそれらは一切描かれていませんでした。 結局のところ、ヒーロー刑事といえど彼もただの人であるという側面が見え隠れしていて興味深いのと、彼の最期はアレしかないという納得の流れで、きちんと若手を正義の道に導く彼の最期は何とか許容できました。あと皆さんがご指摘のようにロビン・ウィリアムズが、、まあ考えようによってはある種かなり不気味ではあるものの、恐怖心をあおる描写がほとんどなくてまるでイイ人にしかみえないのが残念でした。その割にラストでのあの暴れっぷりには少々違和感を感じました。「セブン」ほどの悪の描写は必要ないにしても、、せめて「サイコ」くらいのネジが飛んだ演出は欲しかったところです。 映画としての出来はかなり良いものの、極めて地味な作品でした。何年か経ったら忘れてしまうでしょうし、そうかといってまた見返したいかと聞かれると微妙な映画です。ノーランと大物演者らに免じてかなり甘めの点数。[インターネット(字幕)] 7点(2024-10-21 12:22:33)《改行有》

32.  プロミシング・ヤング・ウーマン かなりの衝撃作。全体的な流れは最初からある程度予想はできるものの、まさかここまでやり切るとは思いませんでした。一見するとリアル志向なのにライトでポップな要素もふんだんに使われていて退屈させません。学長との一件などもセリフだけで十分に怖さを演出しており、脚本と演出の上手さが光っています。この監督さん、全体的に直接的な描写をせず音・セリフ・印象だけで状況を理解させる術をよく知っていて、映画作品としては極めて洗練されています。(若手新人監督のエメラルド・フェネルという女性はまだ39歳というのだから驚き) 賛否あるようですが主人公は用意周到でことに臨んでいますので、刺し違える覚悟だったのは明らか。台詞でも「説明不能なほど考え抜いた結果」と言っていますので、自分が殺人犯になるか殺されるかの二択しか想定していなかったハズです。 動機として弱いという側面も確かにありますが、医大生というIQの高さゆえリスペクトしまくっていた大親友があのような悲惨な事件に巻き込まれ、親友の為に大学を中退までしたのに自殺されてしまったという衝撃的な経緯を知れば、動機としては十分あり得たと考えられます。 これが適度におバカさんであれば頭脳で消化しきれず、”理解不能案件”として徐々に風化するか心が壊れるかのどちらかだったのですが、彼女は頭が良すぎてそれを忘れることなく論理的に処理、徐々に考えが膨らんでいきます。その妄想に支配され、7年の時を経て妄想が実行可能なリアル案件へと変貌を遂げます。序盤のヤサ男風クズ男を懲らしめる描写はほとんどが前振り&予行練習だったということが理解できます。 きちんと前向きに生きる努力も描かれていますし、弁護士男性の心理を理解し歯止めをかける描写も描かれていますので、本人としてはできれば忘れたかったのでしょう。しかし前述のように高IQがそれを邪魔してしまい、哀れとしかいいようがない結末を迎えてしまいます。 この映画の凄い所は徹底的にセリフや情景だけで見せるイメージ戦略を貫いておいて、最後の最後、ラストの殺人描写は一部始終をハッキリ見せ切る潔さです。”4”が記させる佳境のシーンは「これリアルなんじゃないの?」というくらい生々しくて恐ろしく、そして”5”が記されるエピローグで彼女の想いは遂げられます。悲しくも素晴らしい映画でした。[インターネット(字幕)] 9点(2024-10-21 11:52:19)《改行有》

33.  武士の一分 単体で見れば本作も十分に面白い作品なのですが、残念ながら藤沢周平三部作「たそがれ清兵衛」→「隠し剣鬼の爪」→「武士の一分」の順に面白くなくなっています。これはおそらく慣れた監督が緊張感を失ってしまったが故でしょう。特に本作が致命的なのはメインのキャスティングで、木村拓哉×檀れい×笹野高史のセットでは、、まるで釣りバカや寅さんレベルのお気軽さを醸し出してしまっています。これはイタイ。 各キャスト自体はそれぞれに良い演技をしていますが、キムタクを筆頭に全体的にやたらと軽いのが悪目立ちしています。「たそがれ」の時に強調していた”幕末のリアリズム”はいったいどこへいってしまったのか。そもそも論、主役にキムタクを抜擢した時点で絶望的に詰んでいた訳ですが、しかしながら日本での興行成績を見ると藤沢周平三部作の中では本作「武士の一分」が最も売れたようです。この事実から見てもやはり日本の観客(および批評家)の質の低さが露呈してしまっているようにも感じます。 唯一特筆すべきは檀れいの猛烈な可愛さで、公開当時35歳ですがロリじみた少女のような雰囲気と、端正に整ったルックスは誰が見ても他人様から奪いたくなること必至。檀れいを見るためだけに本作を手に取っても良いレベルでした。というかこれくらいしか特筆すべき点が無かったような気がしますw あと気になった点としては本作では「たそがれ清兵衛」と異なり、決着より前の段階でご丁寧にも練習シーンが差し込まれています(「隠し剣鬼の爪」も同様)。これは致命的で、、倒叙方式のような効果は得られず単に技ネタがバレてしまっただけのように思います。結果的に大いに緊張感を削ぐ結果につながってしまったように思います。 まあ結局のところ本作も「たそがれ清兵衛」には遠く及ばない並程度の映画作品だったなという印象です。富田勲の音楽に関しても非常に素晴らしかった「たそがれ」と比較して、本作では特筆すべき点がない極めて汎唐な音楽に成り下がっていたと感じます。かなりおまけしてこの点数としておきます。[インターネット(邦画)] 5点(2024-10-20 17:33:54)《改行有》

34.  隠し剣 鬼の爪 本作も十分に面白い映画ではありますが、同じ監督作品とは思えないくらいに「たそがれ清兵衛」の完成度が高すぎました。本作は脚本の練り方も「たそがれ」ほど時間をかけていないようで、かなり無理な設定や話運びが目立ちます。また比較するのは酷ですが「たそがれ」の眞田広之×宮沢りえ×田中泯の完璧布陣と比較してしまうと、どうしても役者の格の違いを感じずにはいられません。例えるならば「たそがれ」=世界基準、「鬼の爪」=邦画基準、「武士の一分」=昼ドラ基準といったところでしょうか。 ただし、鬼の爪を使うラストのワンカットはやたらとカッコいい。このワンカットを見る為だけにこの映画を手に取っても間違いではないでしょう。でも実のところ友を斬るために教わった「実用的な立ち回り」と、「秘伝 鬼の爪」はどちらも結構ショボい技で、姑息は言い過ぎにしても極めて侍の精神に反する戦い方であったといわざるを得ません。また小澤征悦扮する(狭間弥市郎)の妻、高島礼子のエピソードが無駄に主張していて浮いているように感じました。そもそもこのシーケンスは本筋上は無理に入れなくても問題無いエピソードで、ちょっと盛り込み過ぎてしまった感じさえ受けます。(結局のところ高島礼子自体がミスキャストではなかったか?) あと、この作品を邦画レベルに落としてしまった最大の汚点は、松たか子扮する(きえ)とのぬるい恋愛模様でしょう。(本作においては)悪い意味で山田洋次監督らしい癖がここで出てしまいました。藤沢周平原作の映画化なのでここはグッと辛抱して、表情だけで心情が判る物悲しい描写もしくは清々しい描写を期待したかったところですが、ベタな少女趣味の流れになってしまいました。しかしこの部分を否定してしまうと本作を全否定したことにも繋がりかねず、なかなか難しいバランス感覚ではあります。まあ結局のところ「たそがれ清兵衛」が良すぎただけなのかもしれません。松たか子の愛らしさに免じて少し甘い評価で。[インターネット(邦画)] 7点(2024-10-20 16:40:09)《改行有》

35.  スノーピアサー 《ネタバレ》 マッドマックスのジョージ・ミラーがいかに天才かよくわかります。本作もマッドマックスのようなリアル志向のデストピア系作品ですが、設定をリアルにしてしまったが故にそれを具現化する術を持ち合わせていない監督の力量不足が目立ってしまったように感じます。まあ、原作・脚本・監督がご本人さんなのでお好きにどうぞって感じではあるのですが。 いえ、プロットは素敵なのですよ。しかし一年かけて列車で世界を周回しているのはあまりにも無理がありすぎるしそもそもその行動原理がイミフ(止まっているほうが絶対安全だし暖も取りやすい)。後ろの住人は労働させられるわけでもなくタダ飯だけ食わされていて、これもいったい何がしたいのか全く理解不能。そもそも論、このカースト(ピラミッド)の理論がよく理解できないのでどう考えていいものか。その他、無数にある無理やり設定が頭の中を支配してしまってベースにある素敵なプロットを楽しむところまでいけません。 水族館や娯楽施設の車両も無理が多すぎるし、ステーキってあんたら牛もどこかで飼育してたんかい?ラストも子供に歯車の代わりをさせていたとかもう失笑もんだし、脱線して普通に外にでちゃってるしw 7分で凍る設定は一体何だったのか。本作を楽しむためには無数の違和感や矛盾を封印するしかありません。ゲーム「フォール・アウト3」のシステムのほうがよほど説得力があって無理が無かったように感じます。 超豪華出演陣には驚きますが、個人的にはポン・ジュノ監督はあまり好きではありません。前述の通りリアルな設定をおざなりにしておいて、シレっとリアルそうな流れを作ろうとする無理感というか、、説明が難しいのですがなんか違うのですよ彼の作品の作り方は。 この世界観を楽しむにはあまりにも大人になり過ぎた私は話半分くらいしか楽しめませんでした。大人も子供も有無を言わさず楽しませる勢いを持ったジョージ・ミラーはやはり偉大でした。個人的にはティルダ・スウィントンじゃないほうのふくよかな秘書さんにはもう少し活躍していただきたかった。。[地上波(吹替)] 5点(2024-10-10 17:25:50)《改行有》

36.  バトルシップ(2012) 《ネタバレ》 べた褒めの方がいるのにちょっと驚いちゃいましたが、好意的に見れば確かに割とレベルの高い映像が多かったです。話の根幹である「深宇宙へ信号を送る」は割とリアルで、本作のようなことが起こり得る可能性がありそうなのがガチで怖いす。でも肝心の脚本がねぇ・・ オープニングの入りは良いものの、ブリトー逮捕後にいきなり海軍エリート&リアルバービーとチュッチュウフフなのはイミフ。まあ言いたいことはわかるものの、この流れなら別にブリトーまでの落ちぶれたオープニングは要らなかったですよね。エンディングのネタがやりたかっただけでしょうけど、これもさして面白く無いジョークでしたので微妙です。(アメリカ人ってこういうブルーカラーがホワイトカラーの頂点に上り詰める的な話が好きですよねぇw) 古いネタですが、、国防長官役のピーター・マクニコルが「アリー・マイ・ラブ」にしか思えなくてキツかったです。いつバリーホワイトの音楽に乗って踊り出すのかとヒヤヒヤ・・ あと、浅野忠信は準主役というかなり美味しい役どころで演技も素晴らしかったです。アメリカお得意のステレオタイプの日本人にならず、日本人が見て違和感のない日本人になっていました。ただ、序盤のサッカー付近の日本描写は何となく違和感が目立ちます。 反面、悪目立ちしちゃったのがリーアム・ニーソン。あの役柄で彼を使うのですからもう少し重要な決断でもあるのかと思いきや、まさかのコメディリリーフ。前述の国防長官のほうが彼の雰囲気には合っていたように感じました。予算的にも役的にもかなり勿体無い使われ方でした。 Wikiを見てご存知の方もいらっしゃると思いますが、戦艦ミズーリの始動シーンは本物だそうです。退役軍人さんが過去の遺物で戦う展開は胸アツですが、ちゃんと動くのは少しオカシイですよね。流れ的にも割とスムーズなのですが、、なんなんでしょうねこの稚拙な雰囲気は。。 日本の防衛省も非公式という体で一応出ています。エンタメですがネタとしてパールハーバーで日米が映画を撮影できて素敵です。個人的には本作に似た映画としては「世界侵略:ロサンゼルス決戦」のほうがもう少し真面目に作られていて、本作よりは大分マシだったなといった印象です。本作に関してはまあ・・ 夏休みの子供向けの派手な映像を見て楽しむ系の作品。[地上波(吹替)] 4点(2024-09-07 13:19:45)《改行有》

37.  ジャージー・ボーイズ 《ネタバレ》 特に日本ではフォー・シーズンズがあまり有名ではなかった点が致命的でしょうか。日本で1960年代といえばやはりビートルズ、ビーチボーイズ、サイモン&ガーファンクルあたりでしょうか。私自身ギター経験が長く、オールディーズやロカビリーが好きでしたが、やはりプレスリーやバディ・ホリーの次はビートルズで、フォーシーズンズは”名前は知ってるけど・・”という程度でした。 イーストウッドが作った映画と相性が悪い私ですが、本作は割とすんなり入り込めました。序盤が少々速足&わかり難い感じもありますが、メンバーが出所してからは割と落ち着いて見られます。デカルト(クリストファー・ウォーケン)が最初から良い味が出ていて流石でした。要所要所にしか出てきませんがその全てが素晴らしかったです。 ストーリーの骨格はよくある”ミュージシャンの伝記もの”の定番で、むしろかなり表面だけなぞったお手軽な感じに仕上がっています。いや、あえてそう仕上げたのか、普段のイーストウッドのように馬鹿正直に重たい流れにしていたら見るのがしんどかったかも。ある意味全く深みが感じられないおかげで割と見やすい映画に仕上がっています。(怪我の功名?それとも意図的?) フランキー・ヴァリ(ジョン・ロイド・ヤング)が魅力的で映画を引っ張ります。背が低く序盤からかなり子供っぽくてなんだか頼りない感じですが、キリッと整った眉毛と歌声は魅力的でどんどん引き込まれます。「君の瞳に恋してる」のオリジナルが彼らのものだったのにはチョット感動。ディスコバージョンも有名ですが割とスタンダードの名曲で、文句のつけようがないパーフェクトなラブソングです。 心に残るほどの映画ではなかったですが、及第点以上は十分与えられる無難な作品だと思います。[地上波(字幕)] 7点(2024-08-31 15:37:31)《改行有》

38.  モーガン プロトタイプ L-9 《ネタバレ》 リドリー・スコットの息子ルーク・スコット長編デビュー作ということで手厳しい評論家が多い本作ですが、ご祝儀キャスト、コンパクト脚本、落ち着いた演出、高い演技力、洗練された映像表現等、基本的にどれをとっても文句の出ない美しい作品だったと思います。個人的にはかなり良かった。 結局のところ皆さんが気に入らないのは、父親の代表作である「ブレードランナー」の影響を強く受けている(あえて同じ流れに挑んだ?)点でしょうか。個人的には大いに結構で、むしろ赤の他人ではリドリー・スコットの影響下に深く切り込んだ本作のような絶妙路線はなかなか取れない訳で、七光り息子の利点を最大限に生かした本作作風はルークスコットならでは、非常に素晴らしいとすら感じました。 とにかくキャストが豪華。リー・ウェザーズ(ケイト・マーラ)も最初からどっちがアレなの?という絶妙な演出&演技力だし、モーガン(アニャ・テイラー=ジョイ)に至ってはもう本当にリアルでウマイの一言。ジェニファー・ジェイソン・リーなんか最初はどこに出ているのか判らないくらい贅沢な使い方だし(笑)、ミシェル・ヨーも「サンシャイン2057」や本作など、興行成績より趣味優先で割とハードなSFが好きなんだなと驚きすらありました。ポール・ジアマッティ、トビー・ジョーンズら大御所もかなりリッチに使われていますし、ゲーム・オブ・スローンズで美味しい役を演じたローズ・レスリーも難しい表現を上手に演じていました。 美的センスも洗練されていて、天国のような湖がどうなるのか不安でしたが大人が見て納得できるリアル志向の美しさでした。ぶっちゃけ、、「ブレードランナー2049」「プロメテウス」「エイリアン・コヴェナント」なんかよりもずっと上手くまとまっていたと感じました。 エクス・マキナと比較されている方も多いですが、DNA的(クローン的)な流れの本作と、AIモノ(アンドロイド)とは全く別の流れだと思っています。そういった意味では本作は疑問符が多く、むしろエクス・マキナのほうが流れに無理が無かったように感じます。そもそも論、遺伝子操作で作った生命体は本来弱く短命なハズで、むしろ兵器として利用するなら感情に関わるDNAをどうやって排除すべきか苦労したはずです。彼女らはあくまで”モノ”として生まれ”モノ”として消費されていく運命です。そういった意味では本作は根本的に無理な設定が目立つし、更にはそれら”モノ”に派手なアクションをやらせて収束させた脚本も少々安易でした。本来ならもっとインナーSF特有の深みを与えることができるテーマだっただけに惜しい作品と言わざるを得ません。ただ、否定的に見ても映画としては案外楽しめましたので、やはり作品の出来映えとしては結構良かったものと思われます。 ちなみに日本の配給会社は本当にセンスがなくて、売れなくても本作は劇場公開しておくべきカルト映画だったと思いますがビデオスルーという憂き目をみています。ハイウェイの彼方に/プレミアム・ラッシュ/ナイン・デイズ(2020)等、割といい作品をビデオスルーしていて本当に日本の配給基準のセンスの無さが辛いところです。。[インターネット(字幕)] 8点(2024-08-29 10:52:38)《改行有》

39.  しあわせの隠れ場所 ベタでアレかなぁ~・・ と思いましたが意外と良かったです。特にマイケル・オアー役のクィントン・アーロン君の優しそうな雰囲気が良かったですが、他に目立った出演作はないようです。また、皆さんおっしゃるようにサンドラ・ブロックがはまり役でした。彼女にはこういう役がピッタリですね。 ジョン・リー・ハンコック監督は「パーフェクトワールド」「オールドルーキー」「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」などの脚本や監督を務めるベテラン監督&脚本家ですが、本作においては嫌な部分は全て封印してあり、基本的には表面をなぞっただけのかなりお手軽&シンプルな作品に仕上げています。 アメフトを知らない人にはマイケル・オアーの凄さが判らないと判断したのか、ご丁寧にもオープニングでアメフトのルール説明が入ります。しかし興味がない私にとってはそれでもイミフ。素直に「メンフィスの最も貧しい地域で生まれ育ったマイケル・オアー選手がいかにしてアメフトのスーパースターの仲間入りを果たしたのか、皆さんはご存知だろうか?」で十分伝わったと思います(某番組のナレーションみたいですけど)。 前述の通り、良い部分だけなぞった生ぬるい作品ではありますが、裏を返せば雨の夜道でビッグマイケルを拾ったのもタイミングだし入学前に監督が彼の能力に気付いたのもタイミングでした。優しい先生に巡り合えたのもタイミング、全てが絶妙なタイミングの元で成るべくしてスーパースターになった人物の物語ともいえます。そういった意味では無駄に雑音を挟まなかった監督・脚本家の判断は正しかったのかもしれません。とにかく、リー・アン・テューイ家の家族が全員素晴らしい。更にその素晴らしさがマイケル・オアーの人柄から引き出されたものなのも素敵でした。 金銭・友人・地域的な問題など面倒なことは全て棚上げしていて深みには欠けますが、限りなくおとぎ話に近い実話として後味も良い作品に仕上がっています。興味があれば見て損の無い映画だと思います。[地上波(字幕)] 7点(2024-08-23 11:09:26)《改行有》

40.  ローズマリーの赤ちゃん 《ネタバレ》 昔見たハズですが覚えていませんでした。個人的にはロマン・ポランスキーもミア・ファローもあまり好きではないのですが、本作に関しては苦手感覚をあまり意識せず楽しめました。(髪をカットする前のミア・ファローがかなり可愛いです) 1968年公開という古臭い映画ですが普通に楽しめたのは扱っている題材が普遍的で、表現方法も奇をてらわず王道に徹した点が良かったと思います。見せすぎない演出も素晴らしく、おかげで観客もローズマリーと一緒に薄ら気味悪い雰囲気、どうにもやり場のない不安感を共有できるようになっています。悪夢をうまく表現できている悪魔との例のシーンもリアルで、これが悪夢なのか現実なのかよくわからない感じが本当に素晴らしかったです。スマホやSNSが無ければ今でも普通に通用しそうな普遍的な怖さがありました。 題名も素晴らしく「原題:Rosemary's Baby」をそのまま「ローズマリーの赤ちゃん」とした点は素晴らしい。そしてのその赤ちゃんを一度も見せなかったセンスも素晴らしいです。最初から最後まで割と正しいチョイスがきちんと行われている奇跡の映画です。 ラスト、ローズマリーが恐怖におののく顔から反転、静かにゆりかごをゆすり始める流れが最高でした。今も色あせない名作だと思います。難点としては、引っ越し前のシーンから非常に丁寧に描かれていて序盤40分は少々退屈します。その点を考慮して少し点数を下げておきますが、限りなく8点に近い7点です。[地上波(字幕)] 7点(2024-08-22 15:42:20)(良:1票) 《改行有》

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