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381. 華岡青洲の妻 《ネタバレ》 何年も前に新薬被験者の登録をした時に、随分といろいろな妄想と、戦ったことを思い出す。もちろん、現在の試験は安全なのだろうけれど。 そう考えると、麻酔という技術が、半ば伝説としてしか無かった頃に、失敗したら死ぬかもしれない実験に、体を提供するのは、並の精神力ではない。 世界初の全身麻酔、と言う部分にはもちろん興味深さはある。しかし、スゴイと思うのは、母と嫁の被験者競争だ。子を溺愛して嫁に意地悪をする母、というのは、物語や幾人かの知り合いの話などで、聞くことはあるが、その張り合いが人体実験にまで及ぶというのは、大した狂気だ。 この部分の、二人の狂気的な張りあいを見ると、人間の一念、思いの強さ、を恐ろしい思いを持って観てしまう。と、同時に、顔も見ずに嫁入りし、新婚生活をも姑にコントロールされてなお、人体実験を申し出る、お武家さんとは、大したものだとも思う。 その人は、医者の家の美しい女将さんに憧れて、そこに嫁入りし、その美しい姑にいじめられ、さやあてのように被験を申し出る。まさしく「美しい花には毒があ」ったけど、そのおかげで「毒薬変じて薬とな」ったという、ことわざ通りのお話なわけだ。そういう意味では、これは『華岡青洲の母』でもあった話かもしれない。[DVD(邦画)] 7点(2012-10-22 22:59:56)《改行有》 382. ダーク・シャドウ(2012) 《ネタバレ》 妹が借りてこなければ、まず見ないタイプの映画だが、見てしまったので感想などを一つ。 バーナバスが成仏するとか、その愛が成就するとか、がその結末だと思っていた。確かに、彼の愛は成就したように見えるエンディングだったが、彼女は、彼の想い人の、直系ではない子孫だ。昔愛していた人に、良く似た親戚の子との恋が実って、メデタシメデタシってのは、どうかと思う。よくあるのは、生まれ変わり的なもので、それだったら200年の時を超えて結ばれる二人、という話になるけど、本人とは別モノとして描かれている。 こんなこと気になるのは、自分くらいかもしれないけど、戦いの最後に現れた時に、二人が邂逅する、という展開もアリなんじゃないかと思う。[DVD(字幕)] 5点(2012-10-21 03:19:01)《改行有》 383. あひるのうたがきこえてくるよ。 《ネタバレ》 教師としてなにがしかの挫折を味わった男が、美しい自然あふれる山深い田舎町で、アヒルを育てて、都会に帰って行くという、成長物語。非常に地味な映画だが、緑深い美しい自然と、カワイイあひるの映像に、心和まされ、強く感動したりはしないが、アヒルと一緒に主人公の男も育って巣立ったのだと、分かった時に心が暖かくなる。 今ではこれを、劇場で見ることは、なかなか難しいのかもしれないが、シネマスコープの大画面でもう一度、この自然の風景を見たいものだ。 パンフレットに相当する、ホネ・フィルムのガイドブックによると、温泉シーンの習字は、「一心不乱」以外は、本物の学童の好きな言葉を書いた習字だという。「図星」という言葉の選択は、すごいセンスだと思う。さらに奥には、「罪ほろぼし」もあるらしい。子供の発想力はスゴイ。[ビデオ(邦画)] 6点(2012-10-20 02:24:25)《改行有》 384. 名探偵コナン 11人目のストライカー 《ネタバレ》 今作だけの事ではないのだが、最近のアニメーションはコンピュータの導入が進んでいて、人間の動き以外の動きは、運動計算に基いて、かなりリアルな動画となっている。自動車の止まる時の、サスペンションの揺れ戻しなんか、顕著な例である。ところが、そういうのと、人間たちの動きが、絶望的に合っていない。物体だけリアルに動いて、人間だけリミテッドアニメの動きというのはとても気持ち悪い。絵柄もそうだが、動きだって、全体の統一感が大事なのではないだろうか? それと、いつもの真っ黒描写で描いていた、犯人の犯行準備を行なっていた場面。わざと古いフィルム的な効果を出していたのは、一体何故なのだ?ひょっとして、暗所の好感度撮影時のノイズを表現したのかな?それにしちゃあ、フィルム特有の盾傷も描かれていたし。時期的には現在の犯行を描いている場面なので、意味がわからん。 まあ、それはともかく、相変わらず、壮大な事象を起こす割には、犯行動機がしょぼく、爆弾の入手や物量など非現実で、そのご都合主義には、呆れ返る。推理モノって、そういう所があまいと途端に白けちゃうものなんだが。 ところで『戦慄の楽譜』の時にも感じたのだが、派手な部分は別として、事件のコアな部分がどうも、東映系刑事ドラマで見たことある感じなのだ。何だったか思い出せないが、今回のも、急病の子供を乗せた救急車が、渋滞的なものに阻まれて、それを恨んだ犯行、というドラマを思い出す。字にしてみると、似ているどころではない。これは、かなり問題だと思うのだが、どうだろう。[DVD(邦画)] 4点(2012-10-19 01:54:04)《改行有》 385. スノーホワイト(2012) 《ネタバレ》 昔、ある作家のエッセイで、女性読者の話としてこんな言葉を読んだ。「物語の中の女の子は、何故どこの馬の骨とも分からぬ王子を、それというだけで受け入れるのか?」 なるほど現代の女性は、相手のステータスだけで結婚相手を選ばない。自分と相手の気持の帰結としての、結び付きを求めている。 そういう意味では、今時は童話や昔話をしにくくなった事だろう。白雪姫にいたっては、「通りすがりの王子様」だもの。ちょっと、それはねえ。 そんな訳で今作の王子は、ちゃんとした隣国の王子で、スノーホワイトの幼なじみとなっている。彼女との思い出もあり、彼女も憎からず思っている。ところが、例の毒リンゴを食らわされて、この王子が泣きながらキスしても、覚醒めやしない。ここへ至ってやっと、白雪の相手は、命を助け合ったエリックの方なのだと気づく。生死と苦楽を共にした気持ちの結び付きは、遠い日の思い出よりも強いのだな。このあたりの展開も現代的、というか大人の物語として良いと思う。 ところで、毒リンゴのシーンに張り巡らされた、周到な罠には唸らされた。 冒頭に描かれた、白雪のイメージカラー、真っ白な雪のシーン、それと同じような雪のシーンで、「こちら側」感を出す罠。 幼少時の二人の遊びのエピソードとしてリンゴを使い、それと同じシチュエーションと見せかけて、それを毒リンゴと思わせない罠。 それまで女王自身、そんな大きな魔法を使えるとは思わせなかった罠。 ……で、まんまとそのシーンでアッといってしまった訳だ。 その後の、戦いに至るストーリーは、今時のファンタジー映画の流行りなのかもしれないが、私は好きではない。もうちょっと上手いこと魔法使いをやっつけるアイデアは無いものだろうか。 しかし好きでないとは言いながら、全体的には結構楽しめた。ちょっと前の『赤ずきん』よりかは、よっぽど。[DVD(字幕)] 6点(2012-10-18 13:50:00)《改行有》 386. 大地震(1974) 《ネタバレ》 なんだよ、地震国日本の「地震列島」より6年も早くコレがあったのかよ。しかも、見てみれば、おそらくコレが、日本版の元ネタじゃないか、と思うほどの似通い様。 …なんて言ってみみるも、そういえば超低音を売りにした宣伝を見た記憶も、蘇ってくる。当時は、『ポセイドンアドベンチャー』以降の数多く作られたパニック映画は、なんか他の二番煎じっぽく思っていたので、観ていなかったが、地震で建物の倒壊するさまや、人々の脱出のドラマで、なかなか魅せてくれる。色んな人のドラマが少しづつ絡んでいて、数々の思いを起こさせる。殊に、州兵という存在とその危うさは、日本人としては興味深かった。 特撮的にも、ほぼ不満点はなく、というより同時期の日本のそれと比べると、見事という他無い。 それにしても、本作や、『タワーリング・インフェルノ』など公開された、この時代のアメリカの高層建築家は、怖かったろうなあ。と、二十数年前にサンフランシスコで大地震の起きた、10月17日にこれを見て、不謹慎にも思うのである。[DVD(字幕)] 6点(2012-10-17 18:35:26)《改行有》 387. ガメラ3 邪神<イリス>覚醒 《ネタバレ》 第一作目のゴジラは、一作目にして完全な映画だった。モンスター映画としての映像も、核兵器批判としての表現も、そのアイデアも。 省みて今までのガメラは、怪獣映画としては、ほぼ完全だったが、ゴジラのように高尚そうなテーマが無いように見えた。その部分に手を出して、大失敗してしまった。と言うのが私の解釈だ。映像的には文句ないし(事に京都駅の映像はスゴイの一言だ)、自衛隊関係の描写も安定のリアルさだ。 だが、「巫女」とゲームクリエーター(こんなのが、政府関連の仕事を?)周りの物語の陳腐さは何だ?この男は、古代人についての想像とつまらない終末論を言うためだけの、他に何の役にもたってない登場人物で、同様の巫女と共に、居なくてもなんにも困らない役だ。この、マナというものとそれによる厄災の話で、地球環境的なテーマを語りたいのかもしれない。が、描写が足りなすぎだし、なにより結末が暗すぎる。あの二人の件を全部カットしたら、もっとマナと厄災、ガメラの物語が描けたろう。 それと、冗談のネタとも言える「正義の味方に踏み潰された人」という設定で描かれる、ガメラへの復讐の物語は、米軍と基地周辺住民問題に通じる、更に厄介な問題で、何かと同時に描くほど簡単な問題ではない。欲を出しすぎだ。 絶望的な暗さの結末については、そういう物語も当然アリだが、前二作の爽快感とあまりにも違いすぎて、戸惑う。 異論はたくさんあるとは思うが、怪獣映画は第一義的には子供のものだと思っている。そういう意味では、もうちょっと救いのある、というか明るい未来を信じられる結末を観たかった。見せたかった。ガメラが守るに値する未来を。[ブルーレイ(邦画)] 6点(2012-10-16 12:56:56)(良:1票) 《改行有》 388. ガメラ2 レギオン襲来 《ネタバレ》 大好評を博した『大怪獣空中決戦』の続編で、新怪獣の登場。なんだか防衛関係に好評だったのか、自衛隊協力のクレジットが異常に多い。 さて今回は、ただ現場にいたというだけの単なる民間人に、作戦上のアドバイスを受けたり、現場に連れて行ったりと、ちょっと非リアルでそういう所ダメな人も居そう。でも、今回の最大の見所は、師団長の「火力をレギオンの頭部に集中、ガメラを援護する」だろう。これこそ、一方的だった、ガメラの思いが成就した瞬間。ガメラが人類の味方、という設定だからこその、素晴らしいカタルシスだった。 また、某格闘アニメの影響からか、地球の「気」のようなものも、素直に受け入れられた。 しかし、今回の話は、私の気に入っていた「人類の味方設定」に、暗雲がかかっている。「ガメラが守っているのは人間じゃないのかも」とラストで示唆するところだ。 だけど、今作にはガメラが仙台に降り立った時に、踏み潰しそうになった車をよけるカットがある。そんな事言わないでほしいものだ。もちろん、草薙浅黄ちゃんがあの場にいたら、キリッと否定してくれたろうけど。[ブルーレイ(邦画)] 7点(2012-10-16 12:56:09)(良:1票) 《改行有》 389. 昼下りの決斗 《ネタバレ》 正義の保安官に性根を直された昔のヤンチャ者が、今、年老いてからヤンチャな青年と仕事を共にして、青年の生き方を変えて死んでゆく、という実にカッコイイ西部男の話。 最後の「決斗」場面は、"早撃ちガンマン"的でない、リアルな世界観で良いのだが、自らの死の受け入れ様が、冷静というか達観というか、アメリカ人的な感じがしない。生死の狭間で生きている、辺境の西武人ならではの、生死感なのだろうか。[地上波(吹替)] 6点(2012-10-15 18:26:40)《改行有》 390. 刑事物語 《ネタバレ》 ひっさしぶりに観たわ。 当時、東宝は、寅さんに対抗するシリーズにするつもりだったと何かで読んだが、こちらは犯罪事件が基本で全体的にちょっと暗めなためか、長く続かなくて残念なことだった。 モテない割に女にはめっぽう優しい、蟷螂拳の達人刑事の物語。いいキャラクタだったんだけどなあ。 こんないい人の力の源が、「憎むこと」なのは考えてみると意外だが、その台詞を言う前の段階で、この人は相手を憎んでいる、と分かっちゃう武田鉄矢の芝居に驚かされる。この、女に優しく毎回誰かを愛してはフラれ、を繰り返している刑事と、力を発揮するときには相手を憎む、と言う部分の関係についてのドラマをもっと観たかった。 ところで、ラストに流れる主題歌「唇をかみしめて」は、ホントにいい曲だ。スナックのカラオケでたまに歌うと、大抵のおじさん達が褒めてくれる。歌唱ではなく、歌の内容を。 [DVD(邦画)] 7点(2012-10-14 15:13:30)(良:1票) 《改行有》 391. ガメラ 大怪獣空中決戦 《ネタバレ》 この映画の優れた点は、巨大生物が現れた際の、日本の社会や防衛関係者などの、リアリティある描写にあると、多くの人が言う。私もそう思う。しかし、実はそれよりももっと、私が評価している、嬉しく思っているところがある。ガメラの性格である。いや、人格的な意味でなく。 ガメラは、子供の味方だった。ただし、旧作を見返してみると、そんなに説得力のある理由は無かった。いきなり「子供の味方」と言い出したのを、我々は喜んで観ていたわけだ。それを、子供→人類と置き換え、それにSF的設定を与えただけのことで、その性格をそのまま、上手く引き継いだこの平成版ガメラは、戦う不自然さを根本的に解消できた。 なによりこの設定で、ラストシーンの「来るよ、ガメラはきっと来るよ」という、実に晴ればれとしたセリフに帰結するさまが見事。 久しぶりに通しで見ると、色々と原作(『大怪獣空中戦』)の要素を、新解釈で描いていたりして、楽しい。ガキが勝手に名付けていた、名称についてのやりとりとか、「こんな生物はいない」というセリフとか、完全無欠な生物でもやはり夜行性なのかとか、足を切断するのはギャオスの宿命なのかとか。そういえば、ラストのシーン、急速に炎が収束するシーンで、ガメラの、炎好きで火を吸入する習性を思い出した。そういう事だったのか?[ブルーレイ(邦画)] 8点(2012-10-13 01:01:31)(良:2票) 《改行有》 392. 大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス 《ネタバレ》 何と言ってもギャオスのデザインがスゴイ! およそ地球上の生き物で、こんな直線を持ったものを私は知らない。それ故に感じる、異常な違和感、ヤバさ。これが目の前に現れたら、恐ろしいという以上の危険を感じると思う。ゴジラシリーズで言えば、キングギドラに匹敵する強烈なキャラクターだ。 物語は、時代を感じる「高速道路建設には対する住民と建設業者の諍い」でその場所に、ギャオスが現れて、結局強欲住民たちが心を入れ替えるという話。 この作品で、急にガメラの性格付けが決定されて、「子供の味方」と言う事になったらしいが、せめてその経緯くらい描いてほしいものだ。それにしてもガメラお前、背中に手が回るのか?[ビデオ(邦画)] 6点(2012-10-13 00:59:22)《改行有》 393. 大怪獣ガメラ 《ネタバレ》 今回、『大怪獣空中決戦』の参考のために観てみたが、思い込んでいた 「ガメラは子供の味方」という部分が、殆ど無いので肩透かし状態だった。実は、「浦島太郎」的なエピソードでもあって、子供の味方になるのかと思って、期待していたのだが。 非常に思わせぶりな、少年の逃がしたカメとガメラの関係は、無いようだし、よくよく考えれば、本当に子供の味方なら、そもそも灯台壊さなきゃいい訳だし。助けたのは、ただの気まぐれだったとしか思えない。しかも、このストーリーに何の意味ももたらさないクソガキが、まあ、大人の邪魔をする、他人を危機に巻き込む。観ていてイライラする。 ゴジラのライバルの最初の物語は、意外と残念なものだった。[ビデオ(邦画)] 2点(2012-10-13 00:54:55)《改行有》 394. 勇気ある追跡 《ネタバレ》 ジョン・ウェインの、ウインチェスターを片手で給弾するアクションを、昔のテレビ映画番組で見て、強烈に印象に残っている。それが、この作品なのか他のものなのかは、今となっては不明だが。私にはジョン・ウェインといえば、何と言ってもこのウインチェスターさばきなのだ。ちなみに、少し大きくなって、おもちゃでやってみたが、腕の長さが足りなくて、ひどく痛い目を見たこともある。 父親の復讐のために、犯人を探しにゆく、少女の勇気を描いた映画だと思っていたが、本当の勇気は、自分の命に責任を持てる行動ができる者だ、ということがよく分かる映画だ。だからリメイク版の、その後少女は勇ましく生きた、的なエンディングより、少女らしく保安官に好意を伝えるこちらの版の方が、私は好きだ。[DVD(字幕)] 7点(2012-10-11 13:31:18)《改行有》 395. 幸福の黄色いハンカチ 《ネタバレ》 単純なストーリーと言ってしまえばそうだか、男を待っていたハンカチのシーンは心にしみる。 そして、この二人の経緯と成り行きを見届けた若い二人も、本当に心通わせるようになるのだろうと、思わせるラストシーンも素晴らしい。 DVD特典映像の監督インタビューで言われちゃったので、言うのためらわれるが、ラストの男と嫁のシーンで、抱き合ったりセずに、泣き崩れそうになる女を優しく抱きすくめて、家にいざなう男が、またカッコイイ!直前まで若者が女に抱きつこう抱きつこうとしていたから、ここは余計この方がいい。 『黄色いリボン』を観た時に知ったのだが、原作国のアメリカでは、女が出征する男に渡す黄色いリボンには、愛する男の無事な生還の祈りがこもっている、そういう思いを込めたものだという。リボンは日本でハンカチになったが、オツトメから戻ってくる男にこれ以上意義ある目印はないな。[DVD(邦画)] 9点(2012-10-11 07:17:34)《改行有》 396. HOME 愛しの座敷わらし 《ネタバレ》 なんと美しい日本の田舎の風景。葉擦れの音の気持ちの落ち着き。古民家の黒光りする柱、床の安心感。そして、囲炉裏の火のやさしさ。昔の、日本の自然の気持ちよさを思い出す。そして、昔の自然には少しだけ、妖かしの世界へ通じているような部分も、あったりする。そんな、いろんな事を思い出す。 その大自然の中の古い民家に引っ越してきた、どこか上手く行っていなさ気な家族が、座敷わらしらしきモノによって、次第に結びつきと自信を取り戻す話。 座敷わらしは、悪さをしないとか、家運が上がるとか言われている。確かにこの家族がまとまり始めたのは、「なにか見える」という体験を共有し始めてからだ。座敷わらしは彼ら家族と、関係無い話だったのか?そんな事は考えるのも野暮なことだ。小さな子供の前で争う大人がいないように、座敷わらしの存在自体が、彼らを変えたのだろう。 最後にウエイトレスが、6人ですね?と確認した時の、彼ら家族の嬉しそうな笑顔が、見るものをも嬉しくさせる。心温まるいい映画だった。 ところで、渥美清が寅さんの他に、映画で見せる見事な芝居を観た時に思った感じを、久しぶりに思い出した。一つの役をずーっと演じるのも、それは意義ある事だろうけど、もっともっと、いろんな芝居を見せて欲しい。そう思わせるだけの役者に、いつの間にかなっていたんですね、水谷豊さん。[DVD(邦画)] 8点(2012-10-10 00:18:24)《改行有》 397. ガス人間第一号 《ネタバレ》 自在に気体になることが出来る体を持った男と、踊りの美人家元との愛と葛藤の物語。 一つの超科学を想定したSFドラマであるのは、『電送人間』『美女と液体』と同じだが、こちらはガス人間と美人家元との、倫理を超えた愛(不倫って意味じゃなく)の物語が織り込まれ、他2作よりも見応えのあるものになっている。 表面的な倫理観で、人の思いを拒絶する女が多い、凡百の創作物中の女と違い、この家元・藤千代は、人殺しで銀行強盗の、狂気の愛とも言える思いを受け入れる。ここが、実にいい。そして、それでもこのまま生きては居れないという、藤千代の最後の選択が泣かせる。[DVD(邦画)] 6点(2012-10-09 01:31:25)《改行有》 398. 電送人間 《ネタバレ》 人間を伝送できるという超科学が、犯罪に使われる話。 物語のキモは、人間を伝送する技術によって、犯人が忽然と消え、また鉄壁なアリバイを作ることができる、その犯罪と警察の闘い。 本来なら、逃げ場のないところから犯人が消える謎、あるいはあるはずの焼死体が消えた謎、鉄壁なアリバイの謎などを提示して、観客を物語に引き付けるんだろうが、その辺が弱い。 それと一応、戦時中に横領した金にまつわる復讐譚、というドラマがあるが、さすがに今となっては魅力にかける話。『液体人間』の時と同じような、単なる事件記録を見ているような味気なさ。[DVD(邦画)] 4点(2012-10-09 01:30:05)《改行有》 399. 美女と液体人間 《ネタバレ》 東宝は、放射能で生物を巨大化したと思ったら、今度は液状化までさせてしまっている。現在だったら、被爆者への偏見に繋がりかねないとして、許されなかったかも知れない表現だ。 ま、そこは目を瞑ろう。気持ち的に核兵器(実は危険なのは兵器だけじゃなかったわけだが)の、恐ろしさと批判が根底にあるだろうことは、容易にわかる。 だが、この物語はその部分を強調すること無く、超科学を信じずに右往左往振り回される、捜査陣を執拗に描写している。だから、普通の刑事ドラマのように見えるのだが、それにしてはドラマが薄い。観客が(少なくとも私の)見たいのは、事件記録ではなく、事件にまつわる人間のドラマである。 学者と女のラブストーリ-をもっと丁寧に描くとか、「精神活動を持った」という部分をもっと膨らまして、あえて女を襲わない部分を描くとかしてみれば、それなりに面白くなったのでは。 [DVD(邦画)] 4点(2012-10-09 01:29:13)《改行有》 400. アイアンマン2 《ネタバレ》 この話の中で、非常に重要な要素として考えられるのは、個人が強大な軍事力を持つということは、どういう事なのか?それは許されるのか?というような事だと思う。観ている者がそれを正義だと思ったとしても、それを許すべきなのかどうかは、微妙な問題だ。 しかし、物語は、結局は、それに対抗する個人軍事力(しかもロシア由来)と、なし崩し的にそれに対する闘いの物語になって、結果オーライで、その個人は、軍から表彰される。 アイアンマンを評しないで、こういう事を言うのは何だが、この物語は、アイアンマン(1)が提議したものに、真っ向から泥を塗った形になっているのではないだろうか?確かに、バトルスーツとその戦闘シーンはカッコイイ。しかし、その意義的には、頷けない。 ああ、思い出した。合衆国には修正憲法があって、 「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であり、 人民が武器を保有し、またそれを携帯する権利を侵してはならない。」 だそうだ。これは、個人が国家の力を上回っても、有効なのだろうか?[地上波(吹替)] 5点(2012-10-08 03:06:25)(良:1票) 《改行有》
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