みんなのシネマレビュー |
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501. シンクロナイズドモンスター 《ネタバレ》 設定とオチを思い付いてから、逆算して脚本を書いたような印象を受けます。そう思ってしまうほど、基本となるアイデア(自分と同じ動きをする巨大怪獣が何故か異国の地に現れる)と、結末の“成る程そうきたか“感が抜きん出ているのです。言い方を変えるなら、本筋となるドラマがいまいちピンと来ないというか。アル中負け組の主人公が世界を救う爽快ストーリー。確かに間違いではありませんが、そもそもの原因は彼女にあるワケで。どちらかと言えば尻拭いなんです。そして元カレと幼馴染との三角関係が何とも微妙で。ラブコメのヤキモキが薄いんです。というのも、観客の感情移入先である“イイ人そうな“幼馴染が、結局クソ野郎だったワケです。更に言うならジョーカーとおぼしき常連イケメンの存在に意味が有ったのかも疑問。彼、肝心な場面で空気でした。何だよ結局セフレかと。すげえ羨ましいぞと。つまり、ラブコメな雰囲気アリアリなのに、全然そのカテゴリーでは楽しめなかったのです。一方、SFのギミックとして、理屈は通っているとは言い難いものの、説明責任は果たしており問題なしと考えます(2018.7.20投稿の『◯ディウス』とは似て非なるものです)。アイデアは純粋に素晴らしいと思いました。事情を知らないならまだしも、ロボと同化していると知りながら破壊行為を行ったクソ野郎には正直ドン引きで、もう少し気軽に笑えるコメディだったら良かったと思います。[DVD(吹替)] 6点(2018-11-05 18:55:39)(良:1票) 502. ミスミソウ 《ネタバレ》 壮絶ないじめ、両親を焼き殺される!~からの~復讐劇と聞いていたので、それはもう陰惨かつ過激な敵討ちを想像しておりましたが、実際それほどでもなく。確かに主人公の殺戮ぶりは容赦なく一線を越えておりますが、ヤッパ片手に敵地に乗り込む積極的な報復(任侠映画の如きノリ)はなく、見方によっては正当防衛(というか過当防衛)の範疇と言っても差支えない反撃に終始しています。あくまで相手からの仕掛けを待っての倍返し的な。決して仇の絶命や、苦しむ姿を見たいがための殺人ではありません。社会生活を営む人間が決して外すことのない“リミッター”を解除しているだけと見て取れます。ある意味それも致し方ないこと。本来コミュニティが保持している抑止力なり秩序なりが、何ら機能していないのですから。唯一覚悟を決めて対峙したであろう親殺しの実行犯にさえトドメを刺さぬばかりか、発端となった首謀者に赦しを与える主人公。復讐劇としては物足りなくもありますが、その分終盤に意外な展開が待っていました。もう誰も信じられない地獄の結末。八方塞。希望ナシ。ハッピーエンドが望めない物語であることは解りますが、そこまでやるかと。もちろん加害者に赦しを与えたところで魂が救われるとは思いませんし、差し違えての敵討ちにも価値は見出せません。ただ唯一、救いらしきものがあるとすれば、主人公とイジメ首謀者の間に、友情が僅かに残っていたことでしょうか。実際、首謀者は親殺しに直接関わっていませんでした(コレ重要)。首謀者が指摘した「他人の尻馬に乗って暴走する取り巻きは質が悪い」は正論だと思います(ただし、お前が言うなとは思いますが)。他人をダシに使って己の悪行(憂さ晴らし)を正当化するのは、卑劣極まりない行為です。責任をとる気が無いから、何でも出来るとも言えるでしょう。無責任な馬鹿が一番怖いということ。なかなかの鬱映画でありました。一瞬ギャグか?と思えるような軽薄なセリフや描写が散見されたのは何故でしょうか。除雪車が人を巻き込んでも緊急停止しないとか。基本設定は勿論ですが、全体的にリアリティを排除しているように感じました。マンガ原作ゆえのこと?あるいは凄惨な物語を薄める為に、わざと狙って粗いつくりなのでしょうか。[DVD(邦画)] 6点(2018-10-30 20:28:22)(良:1票) 503. 獣道 《ネタバレ》 ナレーション役の須賀くんが再三口にするように、本作のテーマは人間にとっての“居場所”の重要性。ヒトが初めて手にするそれは、親の腕の中にあります。沢山の愛情を受け、絶対的な自己肯定を獲得する場所。温かな家庭は、巣立ち後に待っている新たな居場所を手にいれるための“孤独な戦い”の備えをする場所です。言い換えるなら、孤独に耐えるための技能と体力を養うところ。しかしながら、本作の子供達は、最初の居場所で満足な支度が出来なかった様子。人生のレールどころか、進むべき道さえ示されません。そう、彼女らの人生は獣道。銃の扱い方も知らぬまま、戦場に放り出されるが如し。孤独に耐えられないから群れるしかありません。あるいは、孤独を孤高と言い換えて、自分自身を騙します。居場所の作り方を知らないから、他人の居場所を盗むような真似をしますし、せっかく手にした居場所の守り方も知りません。彼女らのストーリーを知る観客は、同情することが出来ます。しかし、現実には個人の事情を他者が知る術はありませんし、一部の暇人や好事家を除いては、そもそも他人の境遇に興味がないのです。一定の年齢を過ぎれば例外なく自己責任を求めるシステムを、私たちの社会は採用しています。そう、沙莉ちゃん、もといアマンダちゃん、もとい愛衣も、自己責任で居場所を確保するしかありません。子供時代と寸分違わぬ現在地は、成長していない証。たぶん愛衣が一番その現実に慄いているんじゃないでしょうか。だからラスト、彼女は須賀くんを呼び止めたのだと思うのです。さて、須賀くんの居場所に彼女は必要なのでしょうか。もし必要ならば、それを愛と呼ぶのでしょう。ももクロの茶色担当こと伊藤沙莉ちゃん目当てで、生涯初めて公開初日の舞台挨拶付き上映会を体験してきました(出張のついで)。なんとまあ、沙莉ちゃんのカワイイこと。あのハスキーボイスは大変な武器。そしてコメディエンヌとしての才能を再確認しました。ちなみにアントニーが想像以上に存在感を示していたことにも驚きました(そもそもデカイですしね)。バラエティーに富んだキャスティングは満点級。各人の演技も上々。ただ脚本は、ちょっとマニアックだった気がします。初見で『すげー面白かった!』とは言い辛いお話でしたが、繰り返し観ると良さが分かってくるタイプの映画だと思いました。実際自分の中で反芻するうち、どんどん味わいが増しています。体を張った沙莉ちゃんに5点、韓姉さんに2点、須賀くん、吉村さん、アントニーと矢部太郎に各1点だと10点を越えてしまうので、やっぱり矢部はマイナス2点としておきます。その方が芸人的にはオイシイでしょうから。それにしても、マイベスト映画『幕が上がる』の下級生役の皆さんの活躍ぶりは凄まじいばかり。この先『幕が上がる』が、どれほどのお宝映画に化けるのか、とても楽しみです。[映画館(邦画)] 8点(2018-10-26 22:44:27) 504. ダージリン急行 《ネタバレ》 序盤は意外と退屈しました。淡々と進む『真っ当なロードムービー』の様相。でもこれがウェス・アンダーソン監督の“リズム”であり“やり口”。案の定、3人のイカれ具合が露見していくに連れ、画面に釘付けになりました。結果的には今回も、監督の“センス”に見事にノックアウトされた格好です。京都修学旅行で木刀を求めるが如き感覚でのキング・コブラ購入、高級ベルトの執拗なやり取り、包帯をとったら普通に痛々しい顔など、思わず腹を抱えるネタ要素に加え、ビル・マーレイの無駄遣い、すぎむらしんいちが描きそうな瞳大きく唇厚い小顔客室乗務員の美女ぶりにも痺れましたが、やはりウェス・アンダーソン作品最大の魅力は、観客の予想の斜め上を行く脚本の出鱈目さ(失礼)でしょうか。コメディで子供を死なせる必要があったのかと。でも人生をきちんと描くのであれば人の死を禁忌とするのはかえって不自然なこと。事件、事故、病気。思うように行かぬ人の寿命。普段意識せずとも、死は常に私たちの隣に居ます。父の死、助けられなかった子供の命。2つの死と、母親の(愛ある?)身勝手さを目の当たりにして、3兄弟は悟ったのでしょう。何せ人生観が変わる異国の地NO.1のインドですから(完全な思い込み)。そう、“家族の絆”は美しく大切ですが、執着しても仕方がありません。全ては流れのままに。だから最後、ダージリン急行という名の人生の列車に乗るために、彼らは余計な荷物を捨てたと。うん、納得出来ます。共感します。何が幸せかは、実はとってもあやふやなこと。母が虎に食われずに生きている。息子が生まれる。それだけでどれほど幸せなことか。彼らは確かに成長しました。ただし、シガラミは捨てても、ホイットマンブラザーズは、もう少し常識を身に着けた方が良いとは思いますが。[DVD(吹替)] 9点(2018-10-26 22:40:21) 505. ミックス。 《ネタバレ》 『スポ根』+『ラブコメ』+『サクセスストーリー』の教科書どおりの仕様。それゆえ観易いというか、手堅いつくりとの印象です。細部に気配りも感じられました。例えば、元天才卓球少女と元プロボクサーというポンコツ負け組が、実業団トップと対等に渡り合うという“無理難題”を成立させるために数々のギミックが用意されています。「一流選手はミックス専門の練習はしない」「元天才卓球少女の底力」「一流ボクサーの運動神経」「1年という長尺の特訓期間」「右利き+左利きコンビのアドバンテージ」「道場破りで実力アップ」「元中国ナショナルチーム選手のコーチング」「敵チームの不仲」。これだけでも、本作が『卓球』というスポーツに対し敬意を払っていると言えましょう。それでもなお、卓球で必要とされる“技術”は一朝一夕で(下地のあるガッキーは兎も角も、瑛太は無理)身に付くものではありませんし、こと練習量で実業団選手を上回るとも思えません。元中学卓球部員としては、“在り得ない”と思うワケであります。また、男女混合(ミックス)を安易にラブストーリーのダシに使った点が腑に落ちません。それなら『社交ダンス』とか『フィギュアスケートペア』とか、男女が体を密着させている競技なんか、もう絶対デキてるって話じゃないですか!(失礼。興奮してしまいました。)冗談はさておき、肝心のラブストーリーが弱いことは否めません。決戦直前、卓球王子様からの再誘惑は「恋の最終ハードル」なのでしょうが、流石に無理があるでしょう。教科書に沿うがあまりの不自然さ。そもそもガッキーが冴えないOL役だったり、浮気されたりする時点で「そんな馬鹿な」ではありますが。サイドストーリーのドラマ(夫婦が卓球に打ち込んだ秘密、元ヤン心の解放)の方が、出来が良かったりします。[ビデオ(邦画)] 6点(2018-10-25 19:54:52)(良:1票) 506. 地獄の変異 《ネタバレ》 顔はカール・ルイス似。手足は長く均整の取れた幅跳び選手。観客に手拍子を要求し、軽やかにステップを踏み出した。いかにも跳びそう。8mくらい軽い。序盤の印象を例えるならこんな感じ。滑り出しの雰囲気は抜群でした。たぶん洞窟というシチュエーションが良いのだと思います。人類未開の地という意味では、海底や山奥の秘境も同じ。だけどワクワク度では洞窟に軍配が上がります。物理的に密閉されているところにそそられるワケです。アクシデントで閉じ込められ、脱出口を捜す探険が始まります。お約束の展開。序盤30分くらいは大満足でした。クリーチャーが登場してからは、ごく一般的なモンスター系パニック映画へ。寄生虫が原因で生物が変異するという発想は面白いですが、設定が活かされているとは言いがたいと感じます。お兄ちゃんの扱いがもったいないです。寄生されてしまった兄。もはや洞窟で生きていくしかない。彼らを襲った化け物と同じように。その切なさをもっと全面に押し出して良かったと思いました。ややドラマ性が淡白だったかと。でも類似作品数々あれど、出来は良いほうでは。ちゃんと脱出できましたしね。[DVD(字幕)] 6点(2018-10-21 09:04:40)(良:1票) 507. 音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!! 《ネタバレ》 興行成績的には爆死との噂は耳にしていましたが、それもそのはず。三木聡監督が本領を発揮したら、一般ウケするはずがないですよ。福田雄一でもなければ、クドカンでもなく、三木聡なんですから。ナンセンスとシュールの集中砲火にグロテスクギャグをトッピング。芸達者な常連俳優がノリノリでやりたい放題。その顔芸必要ですかと(フルーツあるあるかと)。少しでも常識があったら書けるはずもない迷走脚本。ツッコミ待ちとしか思えないクライマックスの長回しとか。それでいて、メインテーマはしっかり届けてくるあたり、さすが三木監督としか言い様がなく。最終的に不思議な感動さえあるという。個人的には大変満足いたしました。が、三木聡初体験の観客に、本作は相当キツイであろうことは想像に難くありません。かくいう私も初三木聡の時は戸惑いまくりでした。本作が駄目だったお方は『亀は意外と早く泳ぐ』と『図鑑に載ってない虫』で、頭と心を慣らしてから、再挑戦していただきたいなあと。(なお鑑賞は『亀』『図鑑』の順番でお願いします。いきなり図鑑だと刺激が強すぎますので。)クセはあるけど、旨味は抜群な監督さんですから。(以下余談)常連組で松重豊さんの顔が見えなかったのはやはり残念でありました。ふせ・岩松・松重トリオが揃ってこその三木映画でしょう。また、クドカン組の阿部さんのキャスティングはどうだったんでしょうか。シンガーでもあるサダヲさんは確かに適役ではありますが、三木作品のレギュラー主人公・オダギリジョーさんが演じるシンも見たかった気がします。[映画館(邦画)] 8点(2018-10-21 08:57:04) 508. 奴隷区 僕と23人の奴隷 《ネタバレ》 うーん。何なんでしょう。このモヤモヤ感は。とんだ茶番劇に、付き合わされた気がします。SCMのシステム自体は面白いと思います。敗北感で奴隷になると。ふむふむ。でも奴隷になったところで、信頼できる人と戦ってあえて負け、主人を変えれば助かるワケですよね。随分都合の良い抜け穴がありますな。また、奴隷を賭けた戦いに対して、全然緊張感がありません。SCMの機能について半信半疑であるうちはまだしも、その機能の絶対性を知ってなお、テキトーに戦ってしまうあたり何だかなあと。福本伸行バリにとは言いませんが、戦略など見どころは沢山ありそうですが。おっと、そもそも敗北感など抱かない図太い神経があれば最強なんですよね。やっぱりSCMのシステム自体、つまらんですわ。[インターネット(邦画)] 3点(2018-10-10 23:22:22) 509. 映画 「咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A」 《ネタバレ》 本作は『咲-Saki-』のアナザーストーリー。『咲-Saki-』が、全国高校麻雀大会・団体戦・長野県予選での『清澄高校』の奮闘を描いているのに対し、本作は同大会の全国大会、奈良県予選を勝ち抜いた『阿知賀女子学院』にスポットを当てています(ちなみに県予選を勝ち上がるまでの模様はTV連ドラで描かれています)。本作の主人公・高鴨穏乃は、清澄高校の原村和と子供の頃に麻雀を打った経験があり、全国大会で原ともう一度“麻雀で遊びたい”が、彼女の行動原理となっています。(戦いたいではなく、遊びたいというところが、らしいですね)。麻雀の方は、前作に増してオカルトチックと言いますか、超能力バトルと言いますか(界王拳みたいなのもアリ)、もはや麻雀という感じがしませんが、こんな摩訶不思議なアプローチが成立してしまうのも『麻雀』というゲームの奥深さかもしれません。それにしても、まあ見事に美少女ばかりを集めたものだと感心します。『エビ中』の中山莉子ちゃん、『チームしゃちほこ』の咲良菜緒ちゃんはよく存じていますし、『人狼ゲーム』シリーズに出演されていた皆さんは承知していますが、あとはサッパリ。『人狼ゲーム』シリーズが結構な演技力を要求されるのに対し、本作はアイドル仕様の演技でOKという感じ。どちらも若手女優の登竜門的なシリーズと考えて良さそうですが、本作の方は美少女を愛でる趣向が強いため、作品を採点することにあまり意味が無い気がします。ちなみに私は中山莉子ちゃんが一番カワイイと思うのであります。[DVD(邦画)] 5点(2018-10-07 22:54:09) 510. DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団 《ネタバレ》 劇場版鷹の爪名物、バジェットゲージ復活!これが本作の肝でした。ジャスティスリーグの皆さんは、予算的な問題から充分な活躍が出来ないと。なるほど、これはよく考えました。あとはもう、島根あり、ジャスティス母ちゃんのカポエィラアクションあり、といつもの味わい。今回は何時にも増して、批判風刺が多めだったかな。ファンなら納得のクオリティであったと思います。[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-10-05 00:31:06) 511. 鷹の爪8 ~吉田くんのX(バッテン)ファイル~ 《ネタバレ》 Eテレレギュラー放送終了以来、私的にはお久しぶりの『鷹の爪団』。相変わらずみんな元気そうで、まずは何より。今回は、鷹の爪団本体の活躍はお休みで、吉田くんの子供時代の思い出にスポットをあてた、いわばスピンオフ企画。とはいえ、ギャグのレパートリーは豊富(駄洒落、被せ、お約束、コボケ、自虐、マイナー競技いじり、懐かし、集団芸、フレーズ、ナンセンス等々)かつキレキレですし、お話はシリーズ屈指の良脚本ときました。ガハハで最後にホロリとさせる見事な完成度。ちょっと観ない間に、なんかパワーアップしてなwい?という感じ(ゆーびーむ☆の言い方で脳内再生希望)。いやいや、ホント楽しめました。一緒に鑑賞していた小3の娘にも大ウケでございました。よく考えるまでもなく、今回のお話は吉田くんの作り話。でも、ひょっとしたら・・・と思えるあたりが、鷹の爪団の人徳(魅力)でしょう。もはや、ここまでくれば一発屋なんて誰にも言わせません。どんどん新作つくっちゃってください。島根県さん、スポンサーお願いしますね。[DVD(邦画)] 8点(2018-10-05 00:28:55) 512. クワイエット・プレイス 《ネタバレ》 (ネタバレあります。ご注意ください)・・・ 昨日レイトショー鑑賞。本日昼間の仕事を終え、さて、感想でも書こうかと反芻してみたのですが、考えれは考えるほど、そんなワケねえだろう、いやいや待てよ、と当初から印象が変化するのです。例えばラスト。一応はハッピーエンド(希望の持てる結末)と受け取りましたが、多分そんなに甘いはずが無いんですよね。あの方法で、駆逐出来るほど敵の数が少数ならば、そもそも人類は絶滅の危機を迎えるはずもなく。重火器を有する軍隊が太刀打ちできなかったくらい、怪物の数は膨大だと考えるのが普通でしょう。ライフルの弾が果たして足りるのかと。また、父の娘への愛が、本来意図したかたちかではなかったにせよ、結果的に娘を救った点も、これをもって親の愛万歳とするのも実は違うのかなと思ったり。多分父は、娘の人口中耳作製で、少しでも希望が欲しかったのだと思います。あるいは現実逃避。耳が不自由というのは、あの世界を生き抜くにあたり、途方もないハンディキャップです。でも、娘にしてみれば父の執拗な人口中耳へのチャレンジは、自身の存在価値を否定されていると感じさせる部分もあったでしょう。弟の一件も合わさり、本当に辛い思いをしたに違いありません。“娘を思ってこそ“という父の気持ちを否定する気は毛頭ありませんが、無条件で称賛するのも同じように、してはいけない気がします。だって、毒親も似たような思考回路だったりしますし。父がまず取るべき行動は、希望探し(あるいは現実逃避)ではなく、息子が指摘したように、娘に心から愛していると伝えること(=存在を絶対的に肯定すること)であったと考えます。本当の意味で“子供を守る“とは、あるいは“親の使命“とは、こういうことかと。あの顛末(怪物の弱点発見)は、親子愛というセンチメンタリズムで処理するよりも、冷静に“試行錯誤は意外な幸運を呼ぶことがあるので価値がある“程度に受け止めるのがよろしいかと。設定は刺激的なれど、あまりに嘘くさい。だけど畳み掛け方が上手いオマケに、みんな大好き家族愛で感動不可避!多少の粗は不問にしましょうというサスペンス。余計な考察などせずに、素直に騙されておくのが一番なのかなあと思います。実際、否定的ともとれる見方を示しましたが、私はこの映画、全然嫌いじゃありませんから。[映画館(字幕)] 8点(2018-09-30 17:54:59)《改行有》 513. ビバリーヒルズ・コップ 大好きな作品です。まず何といってもキャラクターが魅力的。アクセル、タガート、ローズウッドの掛け合いを観ていると、いつもニヤけてしまいます。(登場人物を俳優ではなく役名で覚えていること。自分にとって大切な作品はこのパターンが多いようです。)また、ギャグを交えた台詞も見所。個人的には、吹替え版の方が断然好みです。訳そのものも字幕より気が利いていますし、ギャグのニュアンスが伝わり易い気がします。これはアクセル役の声優、故富山敬さんの力に負うところが大きいかと。私にとってエディ・マーフィーの声は、下条アトムでも山寺宏一でもなく、富山敬。やはり最初に耳にした声が、オリジナルとして心に残ります。あの軽妙な、リズミカルな言い回しが忘れられません。(富山氏のご冥福を心よりお祈りいたします。)なおまったく個人的な話ですが、本作のテーマ曲を聴くと「とんねるずのオールナイトニッポン」が浮かんできます。ハガキコーナーで使われていた曲。歌にしても映画にしても、人それぞれの想い出と共に残っていくもの。自分にとっては、初めて観たテレビ吹替え版が何より愛おしいのです。[地上波(吹替)] 9点(2018-09-26 22:07:07) 514. プレデター 地上波TV放送の度に観てしまう作品。プレデターが、実に人間臭いのが面白いです。狩人としての誇りを持ち、シュワを獲物ではあるが、好敵手と認めているのがイイですね。まるで、またぎと熊の関係です。もっともシュワは熊というよりゴリラですけれども。[地上波(吹替)] 7点(2018-09-24 19:29:38) 515. 愛しのアイリーン 《ネタバレ》 原作は連載当時時々拝見。吉田監督の手に合うはずだと確信しておりましたが、想像以上!吉田恵輔節炸裂の、地獄絵巻エンターテイメントを堪能させていただきました。まあ、そのやり口のエグいことエグいこと。修羅場と泥沼のドミノ倒しの中で笑わされる屈辱が堪りません。背徳感?不謹慎感?心が痛いのに気持ち良いから不思議。自分はMだったのかと困惑するばかりです。もうね、お話は基本的に滅茶苦茶なんですよ。暴走と迷走だらけ。でも、行動原理は“幸せになりたい(幸せにしたい)“。誰もが望むこと。何の問題がありましょうか。それが地獄へ続く田舎道という恐ろしさ。どうにもなら無い現実から性欲で逃避。いや、性欲こそが人生。アイリーンの場合は“お金“と言い換えてもいいでしょう。自己嫌悪と自暴自棄で、もうどうにでもなれってか?そりゃどう転んでもハッピーエンドなんて無理ですやん。そこに愛は有るの?なんて問い掛けが、これほど陳腐に感じるドラマがあったでしょうか。勝手に決めろ、自分で考えろと、突き放されているようでヒリヒリします。私が思うに、アイリーンに対して何らかの激情が岩男にあったのは間違いないでしょう。人殺しのハードルはかくも高いです。己を見失って思いの丈を“アレに彫る“とか、端から見たら完全に狂ってます。一番近い言い方が“愛“なのかなあと思います。“執着“よりも濃い感情。幸せだったかどうかは別にしても、岩男に生まれた意味はあったんだと思いたいです。嫁不足、晩婚化、国際結婚、村社会、格差、偏見、人種差別に、おばさんのくるくるパーマ。ディープな社会問題山盛りで、是非の処理能力が追い付きません。心が乱れて、最早正常な判断が無理なんであります。こんな修羅場ショーにあっても、気持ちがどん底まで落ちないのは、吉田監督には人間に対する肯定が根っこの部分にあるからだと考えます。錯覚かもしれませんが。最後に言っておきたいのが、アイリーンちゃん(ナッツ・シトイさん)が素晴らしいってコト。本年度のオレデミー主演女優賞は彼女で決定です。あと木野花さんの怪演にも特大のグランプリを進呈いたします。もちろん安田顕さんも最高でした。河井青葉さんには殊勲賞を、古賀シュウさんには敢闘賞で如何でしょうか。なお、この映画が文化庁の助成を受けていることに軽い衝撃をうけています。日常生活で気軽に『お◯んこ』って言っても大丈夫な気がしてしまうのが重大な副作用。自分が怖くって仕方がないです。年頃の娘がいるんです。この責任どう取ってくれるんですか。[映画館(邦画)] 10点(2018-09-24 06:36:35)(良:1票) 516. 無限の住人 『SPACE BATTLESHIPヤマト』の感想でも述べましたが、木村拓哉主演の本作は紛れもない「キムタクもの」。良しにつけ悪しきにつけ、ああ、キムタク主演の映画だなあとしか言いようがありません。ただ、従来の「キムタクもの」との違いは、彼を超えるアイドルが存在すること。そう、杉咲花ちゃん。この子はスゴイです。演技力もさることながら、華があります。眼力があります。正直、大スターのキムタクが霞むのです。「キムタクもの」では、本来あってはならない光景。例えるなら、オールスター水泳大会や運動会で、当て馬芸人が空気を読まずに勝っちゃったみたいな「マズイんじゃないの」感。もっともコレは「キムタクもの」における価値観の話で、イチ映画としては歓迎すべきこと。ヒロインに華があって何の問題がありましょう。そういう意味では「キムタクもの」の弱点が判明した記念碑的作品と言えなくもありません。[CS・衛星(邦画)] 5点(2018-09-20 23:36:23) 517. サイドカーに犬 《ネタバレ》 本来あり得ない“本妻の娘と愛人の友情”が、これほど自然な形で成立したのは何故でしょう。もちろん薫が幼かったせいもあります。でもあれくらいの年頃でも、男女の機微は分かるもの。女の子なら尚更です。薫が愛人であるヨーコをすんなり受け入れたのは、彼女が無防備だったからだと思いました。まるで親戚のお姉さんが遊びに来たようなノリで、ヨーコは薫の懐に入ってきました。無防備な相手には、こちらも防御を解いてしまうものです。薫はヨーコを敵と認識する前に、彼女を認めてしまいました。好きになってしまったのです。決め手は、コーラを一緒に飲んだ時。大人の女性に「尊敬する」と言われたら、小学生くらいの娘だったらメロメロでしょう。おそらくヨーコは薫に気に入られようと計算をしていません。薫を所詮子供と侮ってもいません。きっと彼女は相手の肩書きに興味がないのです。大切なのは人格のみ。だからこそ不倫にも躊躇が無いとも言えます。彼女は彼女の基準で生きているということ。真っ直ぐに、ひたすら正直に人と向きあえるヨーコは、途方も無く魅力的だと思いました。その反面、怖いとも思いますが…。「サイドカーの犬」はパートナーに目的地まで連れてってもらう人。薫はそういうタイプだといいます。多分母親もそうなのでしょう。思い通りにならないけれど楽チン。一方ヨーコは自力で目的地へ向かうタイプ。薫にとっては新鮮な価値観でした。自力で漕ぐ自転車の心地よさを、薫はヨーコから教えてもらいました。その結果、今の彼女があるのです。ちょっと大変だけど、薫は自力で自らの人生を漕いでいます。彼女の中にある理想は、颯爽と風を切るヨーコの姿。憧れと共にキラキラと輝く。成長期の出会いは、その後の人生を左右します。正直、薫を羨ましいと思いました。[DVD(邦画)] 9点(2018-09-13 20:16:18) 518. 大誘拐 RAINBOW KIDS 《ネタバレ》 まず脚本が素晴らしいです。“絶対悪”の誘拐事件をこんなにも清々しく調理し、エンターテイメントに仕上げるとは驚きです。事件に振り回された警察関係者や心労をかけた家族はお気の毒ですが、基本的に誰も傷ついてもいないのが楽しめる所以でしょう。当たり前の事ですが、意外とこのへんの処理が適当なコメディが多いもの。素晴らしいです。欲を言えばラスト。刀自と緒方拳が事件を語る場面では、最後までシラを切り通して欲しかったと思います。それが対戦した相手に対する礼儀かと。なお当然ながら、北林谷栄の貫禄の演技無くして本作は成立しませんでした。あの器の大きさ。童子が全てを委ねてしまうのも納得でした。そしてなんとチャーミングなことでしょう。希木麒麟の存在感も見逃せません。2大女優に感服いたしました。風間トオルのうそ臭い関西弁は本来マイナスポイントですが、刀自の魅力を際立たせる効果を上げているのでまあいいのかなあ。[DVD(邦画)] 8点(2018-09-13 20:09:57) 519. 累 -かさね- 《ネタバレ》 土屋太鳳ちゃんと芳根京子ちゃんのダブル主演との認識でしたが、オイシイ部分は太鳳ちゃんが持っていった印象。というのも『演技が下手なオリジナルニナ』『演技が凄い中身は累のニナ』『オリジナルの高飛車ニナ』『中身は累の陰気なニナ』『稽古に励む中身は累のニナ』『演出家に恋する中身は累のニナ』『実績を積み自信をつけた中身は累のニナ』『人生を取られそうになり不安なオリジナルニナ』『サロメを演じる中身は累のニナ』と、これ全部太鳳ちゃんが演じ分けているのに対し、京子ちゃんの方は『陰気なオリジナル累』『中身はレナの強い累』『人生を取られそうになり、不安な中身はニナの累』と(あ~こんがらがる)種類は少な目。物語の主軸は女優丹沢ニナの方にあるから当たり前ではあるのですが。なべやかんバリの替え玉受験か、一昔前に問題となった食品偽装表示か、あるいは12時間限定のシンデレラか、受け止め方の差異はあれ、やってることは不正に違いありません。どう取り繕ったところで感動ストーリーに変わるはずもなく。ドラえもんなら、調子に乗ったのび太にお仕置きが待っているのが常であります。というか、偽物が本物を越えるのではなく、もともと中身は本物なんですから。累の“劣等感“にもう少し寄り添えれば良かったのでしょうが、どうなんでしょう。顔にキズありの超美人と、ナチュラル不美人、どちらの顔の人生の方がキツイかって話です。そういう意味では、ガンバレルーヤよしこと、小雪(または多部未華子)のキャスティングなら、心震えるお話になった可能性はあります。土屋太鳳ちゃん、失礼、土屋太鳳さんが才気溢れる女優さんであることは再確認できました。芳根京子さんも流石の眼力でした。※よしこさん、いつも例に出してごめんなさい。でも、好きだからこそ、なんで許してね。[映画館(邦画)] 6点(2018-09-10 12:20:47)(良:1票) 520. ミッション:インポッシブル/フォールアウト 《ネタバレ》 シリーズ最高峰のハイスパートアクションエンターテイメント!笑い控え目、シリアス多め、目まぐるしく入れ替わる攻守、そして表と裏。ハントが何時にも増してよく走る!巧みな脚本とサスペンスフルなストーリー。シリーズの総括であり、新たな始まりとも言える本作は『ミッション:インポッシブル』ブランドの力を遺憾無く発揮した見事な大作でありました。ただ、個人的な好みを言わせてもらえれば、あの人には死んで欲しくなかったです。今回は徹底してシリアスモードだっただけに、主要キャラの一人や二人死んでも不思議は無いのですが、だからこそ死人を出さずにドラマを成立させることに挑戦して欲しかった気がします。“仲間一人の命も大切に“が本作のキーワードであったわけですから。とはいえ、満足度は満点級。映画館で観るべき映画でしょう。あっという間の2時間半でした。以下余談。大スター、トム・クルーズにも流石に加齢の波が感じられるようになりました。ハイクオリティを誇るシリーズを終わらせるのは如何にも勿体ない話ではありますが、そろそろキレイに店じまいをする頃かもしれません。すっかり売れっ子になったジェレミー・レナーにも復帰して頂いて、有終の美を飾って欲しいと願うワケであります。[映画館(字幕)] 9点(2018-09-10 12:19:05)
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