みんなのシネマレビュー |
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41. 機動警察パトレイバー2 the Movie 《ネタバレ》 ロボットアニメなのにレイバーの活躍は僅かで、騒々しい特車二課第二小隊の面々を、前作以上に脇役にして、両隊長を事件の中心に置いてます。もともとがOVA版『二課の一番長い日』のリメイクともいえる作品です。そこから更に押井テイストが前面に出た本作。観はじめは「私たちが知るパトレイバーらしくない」…って感じもしましたが、観ているうちにグイグイ引き込まれてしまい、最後のレイバー戦すら不要だったんじゃないか?って思えるくらい、見応えのあるSFアニメでした。 この映画のハイライト、幻の空爆が凄いです。平和ボケと言われた当時の日本で、かつて無いヤバい事が起きてるのがビシビシ伝わってくる。追撃に上がったウィザード隊が撃墜された時の衝撃。映像はF-15の編隊が飛んで、管制室と交信しているだけ(!)なのに。無機質なデジタル映像と、淡々とした登場人物のセリフ。場面にマッチした川井慶次の音楽。それら素晴らしいマリアージュが、あの何とも言えない緊張感を産み出したんですね。 ここはビデオテープが擦り切れるくらい何度も観ました。今回初めてサウンドリニューアル版も聞きましたが、俗にいう“素人バージョン”の方が伝わり具合が上回っているように感じます。 ※最初リニューアル版で観ようとしましたが、オープニングに曲を被せたりと、ちょっと違和感を感じたので、結局オリジナルバージョンで通し観しました。 この場面で荒川が急に車を飛ばします。ここから物語の勢いが急加速するので、今まで考えたこと無かったけど、荒川はどこに向かったんでしょうかね?まさか、首都圏から逃げたとか?後藤と南雲はどこに連れて行かれて、そこで何を見たんでしょう??今になって謎が生まれました。 当時の状況を思い出すと、湾岸戦争を機に、自衛隊がついに海外派遣('91年~)を始めたばかりで、OPの“戦場で発砲できずに撃墜される自衛隊レイバー”に、妙な説得力、リアルな未来を感じました。そしてベイブリッジ爆破、たった一発のミサイルで崩れ去る安全神話と繋がるから、実被害ゼロの幻の空爆に緊張感があるんですね。野明が暮らす寮にアジア系(ブラジル系?)の外国人。同じ屋根の下に外国人って、当時はまだ珍しかったんですよね。そして日常世界に武装した自衛隊が居る違和感。映画の中の架空の物語ですが、数年後にこの映画のような緊張感を現実に味わいます。地下鉄サリン事件('95年)で表面化したオウム事件です。都市部での毒ガス散布の脅威、破壊活動防止法。毎日の報道特番を観ながら、悪い意味で時代がSF映画に追いついたような、不思議な怖さを感じましたね。 どういう訳か、作品全体から冷たい印象を受けますよね。冬が舞台なのと、パトレイバーらしいアツい登場人物の出番が抑えられてるから…というだけでなく、なるほど、登場人物同士が、意図的に目を合わせてないんですね。 並んで正面(同じ方向)を向いていたり、人物の横顔を見ていたり。実際には向き合っている場面でも、話し相手を反射するガラスに映したり、敢えて顔を見切れさせたり…押井さんの実験とも取れますが、徹底してます。そして最後、しのぶが柘植に手錠を掛けたあと、無言で見つめ合う二人を映します。それをヘリから見る後藤。どれだけ思っても、しのぶがあの表情を後藤に向けることはない。手袋越しとはいえ、指を絡め、少しの時間でも一緒に居るため手錠の片側を自分に嵌めるしのぶ。ある意味普段のパトレイバーらしい気持ちの行き違いが、押井さんの抑えた演出により、大人の恋愛の切なさを感じさせます。[映画館(邦画)] 10点(2024-12-19 23:29:48)(良:1票) 《改行有》 42. 晩春 《ネタバレ》 大失敗!秋だったからって『秋日和』を先に観てしまったわっ!なので、こんな季節に『晩春』です。 父娘の物語の合間・合間に、平和で穏やかな日本の風景、文化をちりばめていますね。茶道教室でお茶を点てる所作を静かに観せる。中盤の能のシーンも印象的。ここでは紀子が父の再婚相手に複雑な感情を抱くシーンだけど、能に結構な時間を割いている。親子最後の京都旅行では、清水寺や竜安寺の石庭といった有数の観光地を観せている。終戦から4年後のお話ですが、まるで戦争なんて無かったかのごとく、時間が止まっているかのごとく、日本の美しい原風景が映し出されます。 今から振り返ると“懐かしい、古き良き日本”の映像ですが、公開当時は古い時代(戦前からあるもの)と新しい時代(戦後に出来たもの)の、日本の過渡期を表現していたように思えます。序盤の日本情緒あふれる鎌倉と比べ、近代的な銀座は外来のカタカナ看板が目立つ。若者がサイクリングで向かう先にはローマ字表記とコカ・コーラの看板。まだ進駐軍が残ってるんでしょうか、戦後らしいです。 紀子の友人アヤは、離婚してステノグラファー(速記)なんて仕事をしています。女性が手に職をつけて、社会で働く時代が目の前まで来てるんですね。働くだけでなく、旦那さん探しも大切なことです。紀子の同級生は、働くか、結婚しているようです。多くの若い男が戦争で命を落とし、女性が生きていくには、どちらかの道を選ぶ必要があったと思います。 周吉は、紀子と友人にパンと紅茶を運んできます。当時の日本の父親像といえば、亭主関白や一家の大黒柱といった“家長”としての立ち位置が思い浮かびますが、ずいぶんと柔らかい父親ですよね。紀子が『このままお父さんと居たい』といった気持ちがわかります。 周吉は56歳。まだ若い!と思うのは今の感覚。当時は(戦後の労働力不足の時代でさえ)55歳で定年退職でした。もう死を考えていい歳です。 紀子は27歳。全然若い!と思うのは今の感覚。当時は30過ぎて独身だと“行かず後家”と後ろ指刺されます。一世一代の嘘をついても、ここで嫁に出すしか無かったんですね。『ファザコン娘を父離れさせたい件』…なんて呑気な話ではなく、欧米化が進む戦後激動の時代、自分の死後、自活能力のない愛娘の、残り半分の人生をどうするか?という切実なお話だったのでした。 壺…特に気にならずに観てしまいましたが、私はこの父娘に性的な暗喩は感じませんでした。だって、この映画の主役は父でしょう? 壺は本来、食料を入れたり、花を挿したりするものですが、あの壺はそのような用途には使われていません。泊まり客の目を楽しませる、本来の用を成さない“置き物”です。おそらく、父と娘で仲良く暮らす、今のままの紀子を表しているんでしょう。二人一緒だと楽しいけれど、人として生まれながら、何の用も成せない、置き物のような存在になってしまう。 寝室の壺の後に、竜安寺の石庭が映ります。400年以上変わらないものを見つめ、ガラッと変わった戦後の日本を生きていく人間として、娘だけでも変えてあげなくてはいけない。そんな決意を固めたんでしょう。 「なるんだよ、幸せに」娘の幸せを一番に思う父の気持ちに、一人リンゴを剝く背中に、温かい気持ちになれました。[DVD(邦画)] 9点(2024-12-18 22:54:01)《改行有》 43. 若き勇者たち 《ネタバレ》 “Red Dawn”『赤い夜明け』。血の赤とか、共産圏のアカとか、そんな意味合いだと思います。 当時、第三次世界大戦が起きるとしたら、高い確率で全面核戦争で、東西両国家は滅ぶものと思っていました。戦車や歩兵が戦う戦争というのは、過去のものか、小規模な地域紛争で行われるものと考えていました。 初視聴はテレビのロードショーでしたが、最初のテロップの記憶が無かったです。米、英、中国(!?)連合VSソ連、ニカラグア、キューバ他東側諸国の戦争で、ヨーロッパは中立でNATOは解散。ソ連に核攻撃を受けた後の、映画本編でした。…こんな話だったんだぁ。 平和な街の日常に、ふわりとパラシュート部隊が降ってきて、担任の先生にいきなり機銃を撃つ非日常感。壊されていく日常風景。訳が分からないうちに始まる逃亡生活が、呆気ない核戦争とは違う恐ろしさを感じさせました。 それと同時に知恵と工夫次第では戦争でも生き残れることを示唆しているように感じて、まるでパニック映画やサバイバル映画の一つのように、私ならどうしたろうか?と考えを巡らせながら観る事ができました。 子供たち(と言っていいのかな?)だけで考えて、家族や街を滅茶苦茶にした連中に一泡吹かせる。撃墜された空軍大佐が来るまで、戦況もロクにわからずに、ただ抵抗運動を続ける(=アメリカの正規軍と連携をとっていない)様子が、『銀河漂流バイファム』のようで、不謹慎ながらワクワクして観ていましたね。 2度目以降の視聴では、結構ドンパチが多めで、ドラマが少ないな…って思いましたが、仲間がやられたり、捕虜を捕えたり、裏切りがあったりと、戦争では避けられない悲劇と、その場その場の判断を子供たちだけで決めていく様子に、とても共感して、時には驚いて観ていました。 敵の将校が人間味のある人物でしたね。当時の共産圏の敵将校だから、もっと憎々しい悪者か、殺戮が好きな狂人として描かれても不思議じゃなかったと思いますが、まっとうな考えの人物として描かれていたのは意外でした。[地上波(吹替)] 6点(2024-12-16 23:16:56)《改行有》 44. ブレイド2 《ネタバレ》 “BLADE II”邦題まま。 始まってすぐ、『ウィスラー、生きとったんかワレ!…格好わる』って驚きと共に、人気あったから無理っくり続編を作ったんかなぁ?って不安も大きかったです。今度の相棒スカッドが、なかなかいい味出してるんだから、あの状況でわざわざウィスラー復活させんでも…とは思いました。 今度の敵はリーパーズ。ヴァンパイアものだから前作からホラーテイストはありましたが、口の裂け方とか結構グロい。血が噴き出すとかでなく内臓系のグロさ。この辺はデル・トロの持ち味発揮だろうか? まさかのブレイドとバンパイアの共闘がワクワクさせてくれました。それも対ブレイド用に結成された部隊・ブラッドパックってのがかっこいい。日本刀には日本刀、無口で強いスノウマンがかっこいいですね。もっと活躍してほしかったですが、呆気ない最後…。チュパの名言「地獄行きまでマン毛一本だったぜ」は当時の私の流行語大賞でした。運よく使う機会は無かったですが。 ヴェルレーヌとライトハンマーのカップルって、日本のサイバーパンク系ボンデージファッションのキャラクターがモトのハズ(作者やタイトル失念しました)。そんなワケで、この長さの映画で、一度っきりの登場にも関わらず、ブラッドパックの面々の残した存在感はかなりのものでした。 ヴァンパイアと共闘しつつも、敵にも味方にも裏切りがあったりと、気の抜けない展開が飽きさせません。裏切者がハッキリして、本当の黒幕が割れて、ノーマックが戦う意味が分かり、さぁ最後スッキリ戦うぞ!って所から、なんか期待してたのと違う展開でした。でも2作続けて満足度は高めです。 3作目はイマイチだった記憶があるので、ここまでにしときます。[映画館(字幕)] 6点(2024-12-16 22:25:22)《改行有》 45. サルバドル/遥かなる日々 《ネタバレ》 “Salvador”スペイン語で『救う者』。男性名詞のElが頭に付いて国名『エルサルバドル』になる。プラトーンの大ヒットを受けて、オリバー・ストーン監督の一つ前の作品ですが、日本で劇場公開されました。私もプラトーンに衝撃を受けた影響で本作も劇場で観ようと思いましたが、上映期間が短かったため、レンタルビデオになりました。劇場で観ていたら、恐ろしすぎてトラウマになっていたかもしれません。ビデオでも充分怖かったです。今日まで再視聴しようって気にならなかったくらいですから、充分トラウマ級です。 戦争だと、敵と遭遇すると殺される危険性が理解できますが、内戦って、いつ、どこで、誰に殺されるかわからない。市民を殺しているのも右派の政府軍。こんな怖い国が、アメリカと地つづきで、騙された友人を乗せたボロ車で、ふらっと行ける距離にある。恐ろしいですね。ボイルたちがエルサルバドルに入国して以降、ずっとテンション張りっぱなしで観てました。 セジュラ(許可証)がないからと殺される青年も、処刑場の死体の山(新しいのから古いのまで)も衝撃でした。あまりに辛すぎて参ってしまいますが、友人ドクが清涼剤として機能していました。尻に注射打たれるシーンとか、いけ好かない女性リポーターの飲み物にLSD混ぜたりと、観てる私を救ってくれてます。 ボイルのアロハシャツにも注目です。南国とはいえ内戦で荒れた国に、能天気にも柄違いのアロハを6着ほど持ってきたみたいです。スマートでチャラい役のジェームズ・ウッズにアロハがとっても似合ってます。 また現地の恋人マリアも、ボランティアのキャシーも共にキュートです。エルピディア・カリロはプレデターでもヒロインやってましたし、シンシア・ギブは当時の映画雑誌(特にロードショー)の表紙に何回か出ていて、ダイアン・レインやリー・トンプソンと並び、新時代のアイドル的存在でした。それだけに、彼女たちに待ち受ける運命があまりに酷い。 キャシーを含む修道女のレイプはかなりショックです。当時ゴールデン洋画劇場で(このシーンも)放送されたので、記憶に焼き付いた人は多いかと思います。劇中キャシーの献身的な姿を観ているため、殺されると解って十字を切る姿、その後土の中から掘り起こされる無惨な姿が本当に痛ましい。この事件は実際に起きた事件で、最高齢のシスターは68歳だったそうです。 国境で殺されそうになるボイルが、間一髪助かった後、自分を殺そうとした連中と笑顔でビールを飲む。狂気です。この国の全てが病んでるって思えます。その病んでるちっぽけな小国の政府軍を、レーガン新政権が強力に支持していた事実。まだネットのない時代、まだ世界が広大だった時代。映画から学ぶことって沢山ありました。[ビデオ(字幕)] 7点(2024-12-08 22:33:33)《改行有》 46. ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生 《ネタバレ》 “NIGHT OF THE LIVING DEAD”『生ける屍の夜』。 全てのゾンビ映画の起源。モノクロでレトロな雰囲気が漂うけど、'68年と意外と新しい。この作品までの『ゾンビ』とは、ヴードゥー教の“畑とかで奴隷労働をさせられる死体”が原点で、人を襲うことはしません。本作よりもっと昔、'32年に『恐怖城』というゾンビ映画があったようですが、怖いのはゾンビではなく、ゾンビを作り出すマスター(祈祷師)の方だったみたいです。なので、この作品からゾンビ自体が恐怖のモンスターとなりました。 そして本作で追加された新設定①人を襲う。②頭を破壊しないと死なない。…といった今ではスタンダードな設定が誕生しました。また⑤火を怖がる。⑥動きが遅い。といった、宗教ルーツのモンスターらしい特徴も備えていますね。ここは恐らく次作までは継承されてます。 ※だけどベンの話だと猛スピードの給油トラックを襲ったらしいので、新鮮なゾンビは足が速いのかも? 作中ではモンスターを『ゾンビ』とは言ってなくて、これらの設定は、映画の中で徐々に解っていくようになっていきます。 ※基礎として、多くの人が本作を観る前にゾンビの設定を知っているので、徐々に明かされるモンスターの特徴を、新鮮な気持ちで観る視点は要求されます。 本作で一番の衝撃設定が、人を襲うだけでなく③襲った人を食う=カニバリズム。でしょう。ゾンビを怖いものにした最大の要素がこの“共食い行為”で、映画も残すところ20分って辺りに行われます。この映画のハイライトですね。人間の形をしたモンスターが、第三者ではなく映画の登場人物・トムとジュディの手や内臓を食う映像は、当時は倫理的に相当際どい描写だったと思います。’68年なのにモノクロ作品だったのも頷けます。 そして④噛まれた者もゾンビになる。この描写は、残り10分って辺りに、クーパーの娘と、バーバラの兄の登場で明らかになります。ゾンビが延々と増え続ける絶望感に繋がっていますが、作中では、クーパーの娘が父を食い、母を刺し殺すというおぞましい描写が描かれます。更に普通の映画だったら助かるヒロイン・バーバラが兄ジョニーに抱き抱えられて連れ去られます。その場で殺すのでなく“集団で女性を連れ去る”という行為が強姦(しかも兄妹)を連想させます。 物語も終盤に来て、カニバリズム、親殺し、近親相姦(を連想させる描写)といった、宗教倫理上の“禁忌行為”をバンバン入れてきます。この辺りが作中のモンスターを“ヴードゥー教のゾンビと同一のモノ”としなかった要因だったのかもしれません。後々を考えると、宗教ではなく原因不明(彗星や隕石とも言われますが)としたことが、他のモンスターと比べ、ゾンビの使い勝手の良さを拡大させたんでしょう。 恐怖の夜が明け、保安官達によって、ゾンビ騒動の鎮圧が成功しそうな方向で終わります。そうでもしないと、あまりに救いがなかったからでしょう。 ちなみに私が最初に観たの(レンタルビデオ)は、今となってはレアな着色カラーバージョンでした。普通のカラーと比べてそんなに違和感はなかったけど、炎の表現は透明感のないベタ塗りのオレンジでしたね。[ビデオ(字幕)] 8点(2024-12-08 11:44:27)《改行有》 47. ブレイド(1998) 《ネタバレ》 “Blade”『刃』。日米問わず、吸血鬼と刃の相性って良いみたいです。先日ハイランダーを見ましたが、ロングコートに日本刀の正統進化型ヒーローがこのブレイドでしょうかね?アメコミ原作のヒーロー物のようですが、初登場は'73年と結構古いみたいです。 初めて観た時、このダークな世界観とスタイリッシュでスピーディーな展開に結構ハマりました。主人公が“吸血鬼に噛まれた妊婦から生まれた子供”というのも斬新だったし、吸血鬼の血が入っていながら太陽の下を歩ける『デイウォーカー』って名前もセンス良いです。 ブレイドのビルでの大ジャンプ。警官が連射するアサルトライフルがドアに開ける穴(細かいな)。迫りくる弾丸を避けるフロスト。多数の警備員(警官)が守るビルエントランスでの銃撃戦。何ともマトリックスと被るシーンが結構ありますが、本作の方が半年早く上映されています。一般人の知らない社会の裏側で、強力な組織が世界を支配しているのも、吸血鬼とコンピュータの違いはあるけど、よく似ています。偶然の一致なのか、部分的に参考にしたのか解りませんが、どちらもよく出来た作品だと思います。 マトリックス同様、この作品からも日本の漫画やアニメの影響を感じますが、マトリックスに比べ、相当ディープなところをリスペクトしている様に思えます。古文書の部屋でキュートな黒人少女が、正体を表し連続ハイキック…格闘ゲーム真っ盛りの時代、まさにギャップ萌えです。大阪出身のバンドBang Wa Cherryの歌う、その名もズバリ「chin chin」…t.A.T.u.が世間に認知される以前に、このアングラ丸出しでディープすぎる女子高生ファッション・バンドをチョイスするセンス。アジア系のオッサン(何故かみんなサングラス)が、じっとりとした目で彼女たちを見つめる画がシュールで素敵すぎます。 決めポーズが可愛いブレイドも、ガソリン撒きながらタバコ吸う相棒ウィスラーも、バンパイアにドSなお仕置きをするカレンも魅力的ですが、スティーブン・ドーフ演じるライバル・フロストが、現代の王子様みたいな甘いルックスで、また格好いいんだぁ。見た目で言えばブレイドよりフロストのほうがヒーロー顔だよね。クインの腕を斬る冗談が怖カッコイイのです。あぁ、もう少し活躍してほしかった。欲を言えば勝ってほしかった。[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-12-06 22:58:55)《改行有》 48. バットマン ビギンズ 《ネタバレ》 “Batman Begins”『バットマン~始まり~』。タイトルの通り、徹底してバットマンの誕生秘話の作品です。よく見知った姿のバットマン(完全体)が登場まで約1時間、それまでブルース・ウェインの成長物語が続きます。 この当時、過去の名作と言われたSF映画がどんどんリバイバルされていて、作品の質も玉石混交。そんな中、バットマンは前作 Mr.フリーズからたった8年。当初は『ずいぶんと期間を開けた続編だなぁ』なんて思っていましたが、まさかたった8年で新シリーズを立ち上げるとは。当時はまだ、バートン版から4作続いたシリーズの記憶が鮮明過ぎて、どうにも新シリーズを観たいって気持ちにはなれませんでした。 渡辺謙が出てる。装甲車のようなバッドモービルと、何かと関心はありましたが、公開当時の周りの反応は『地味で暗い作品』だったと記憶してます。確かに前のシリーズが独特な世界観と漫画っぽいキャラクターが印象的だったので、シリアスでリアル路線の本作に違和感を感じたのもわかります。 本作はバットマン映画であり、同時にブルース・ウェインの映画でもありました。 バットマン映画として見ると、この作品は、続く『ダークナイト』を盛り上げるための序章に思います。映画1本まるまる使った序章って言うんですかね?。最後、カードを使った次回作への続きかたは、とてもワクワクする引っ張り方でした。そしてダークナイトが期待以上の作品だったため、本作の割り切った誕生物語が際立ちます。 単体で考えると、ブルース・ウェインの映画として観るのが一番の楽しめます。コウモリのトラウマ。両親殺害の犯人への復讐心がしっかり描かれていて、とても人間らしいウェインになっています。素顔の時はウェイン産業の大富豪として、プレイボーイの仮面を被って生活をし、夜はマスクを被って悪を倒す。この逆転現象も魅力的でした。[DVD(字幕)] 7点(2024-12-04 22:34:39)《改行有》 49. さかなのこ 《ネタバレ》 さかなクン(男)を、のん(女)が演じる。…なんで?どんな理由があるの?って、ここに食い付いた人も多かったと思う。 始まってすぐに『男か女かは、どっちでもいい』って、一番期待ハズレの解答が来ました。ウソでも良いから何か理由を用意してほしかったかなぁ。でも私のことだから、物語を散々引っ張った挙げ句、最後の方で『実はどっちでもいい』って結論になったら、それはそれで、残念な気持ちになったかもなぁ。 この映画、好きな部分と嫌いな部分がハッキリ分かれてます。初っ端からガッカリした反動で、幼少期は作品のノリに付いていけませんでした。ミー坊の過去に、さかなクンそのものが出てくる意味が解らず。このギョギョおじさんって、さかなクンのモトになる人が実際に居たんだろうか? ミー坊が捕まえた巨大な“タコさん”。お母さんの許可で飼うはずだったのを、お父さんがビッタンビッタンと殺す(絞める)…イヤちょっと、子供も観る映画っぽいのにさぁ、なにこのブラック・ユーモア。 再登場のギョギョおじさん。今度はお父さんが遊びに行っちゃダメというのを、お母さんが行っていいと許可する…イヤちょっと、子供も観る映画っぽいのにさぁ、なにこの犯罪誘発臭。実話だとしても、どうしてこう、観てて消化不良起こしそうな、児童性犯罪を連想させるエピソードを入れたのか?映画オリジナルか?原作の自叙伝を読めば納得できるのか?映画は映画で完結してほしいものです。 モモコが好きとハッキリいうミー坊を、男の子たちが「エロス!!エロス!!」とからかうとか、冒頭『どっちでもいい』と書いてた割には、性に関するエピソードを入れてくる。 青年期に入り、いよいよのん登場。ヤンキーの抗争に巻き込まれるのも、ほのぼのというか、漫画チックというか…どうにも方向性が私の好みではない。でも、この映画を小さい頃に、児童集会とかで友達と観てたら、きっと楽しめたかもしれない。 内心“子供向けな映画”と切り捨てながら観続けて、カブトガニの散歩あたりから、不思議と面白く感じてきたのだ。のんが本物の活きたアジを捌くところから、序盤のノリで終始フザけてるだけの映画じゃないように観えてきたんです。 …いや相変わらずフザケちゃいる。服切らないでアミ買ってこいよ。歯医者の要求に応えたい→大きな鯛を捕まえる→でも水槽にはマニアックな地味な魚…何この雑なエピソード?相変わらず構成は決して上手とは言えない。 調べたらミー坊の子供時代も女の子でした。ミー坊の性別は徹底して女性でしたが、上京してようやく、さかなクンをのん(女)が演じた効果が発揮されます。 ヒヨが彼女とのディナーにミー坊を呼ぶ。一見、両手に花のヒヨだけど、ミー坊は男の子。ミー坊と彼女で三角関係とか、無いのだ。頭が軽く混乱する。 ミー坊のアパートにモモコと連れ子が押し掛けてくる。川の字で寝る3人。一見、女友達のお泊りだけど、ミー坊は男の子。連れ子が居るとはいえ、内心ドキドキ展開なハズだけど、映像からはそんな事、思い浮かばないのだ。ますます混乱する。 さかなクンをのんが演じることで、男女間のエピソードが脳内で反転し『なぁんだ、さかなクンもただの男じゃん』ってならず、男女間の友情という妙なバランスをしっかり保ち、さかなクンの存在を際立たせることに成功している。 金銭面で無理してるミー坊と、モモコが出ていく場面は、お互いの性別を超えた思いやりと悲しさを見事に表現していました。後半はもう、素直に良い映画だと思います。序盤のイマイチさを、後半見事に盛り返した印象です。 映画を観て、さかなクンについて、思ったことがある。ミー坊は魚のことを「◯◯さん」と呼ぶよね。「タコさん」とか「アジさん」とか。これって、さかなクンは大好きな魚を“異性(女性)”として考えてるから、“さん付け”なんじゃないだろうか? だから男性の自分は「さかな“クン”」なんじゃないかな?更に、恋愛の対象じゃない友だちを呼ぶ時は、男も女も「ヒヨ」とか「モモ」とあだ名や呼び捨て。 なんかこう考えると、冒頭の『男か女かは、どっちでもいい』って言葉に、意味があるような気がしました。いや『どっちでも』良くはないと思うけど、この映画に関しては、さかなクンをのんが演じて良かったと感じています。[CS・衛星(邦画)] 6点(2024-12-03 22:40:18)《改行有》 50. ハイランダー/悪魔の戦士 《ネタバレ》 “Highlander”高地に住む人の意味だけど、本作のは『スコットランドのハイランド地方の戦士』です。 現代の大都会。ロングコートに日本刀の組み合わせの妙は、この映画から生まれたんでしょう。目付きの悪いクリストファー・ランバートとダークな世界観。テレビで観た当時、ターミネーターに引けを取らない、それはもう相当な衝撃を受けました。 当時も話題だったカメラワークは今観ても秀逸です。ドローンもない時代、大きく重たいカメラを、吊るしたり振り回したりして、あの映像を撮っていたんでしょう。大変な労力を想像すると頭が下がります。 主人公コナーは影があって暗いんですが、彼の周りは明るい奴らが多くてバランスを保っています。特筆すべきは名優ショーン・コネリー演じる“スペイン孔雀”。作中最高齢だろうけど、いつもチャラくて安心感がにじみ出てます。クルガンも悪党らしい悪党で、教会で嬉しそうに蝋燭の火を消すシーンが子供っぽくて大好きです。秘書のおばさんレイチェルとの出会いの秘話。けっこう色んな作品に影響を与えてますよね。ちょっぴりホロリとさせます。 最も衝撃だったのがクイーンの“Who Wants to Live Forever”の美しさと悲しさです。不死を恐れられて故郷を追われたコナーは、明るく美しいヘザーとずーっと一緒に暮らします。ずっと容姿の変わらないコナーと、年老いても明るいままのヘザー。避けられない死の悲しみと残される者の孤独。当時中学生でしたが、この楽曲と相まったこのシーンの美しさを超えるものは、映画史上そう多くは無いでしょう。 『永遠の命など 誰が欲しがる』このシーンを観て、この歌詞を付けたブライアン・メイの才能が光ります。私も早速、そうご電器YESでクイーンのアルバムをレンタルしてきましたよ。『アイアン・イーグル』のテーマ曲も入ってお得なアルバムでした。 この曲の邦題『リヴ・フォーエヴァー』って言うんですが、なんかそっちだとOasisの同名曲のイメージが強いです。そしてこの映画に関しては、邦題で省略されてる“Who Wants to”の部分がとても大事だと思いません? この映画以降、もっとダークな世界観を上手に表現した映画がたくさん出てきたので、思った以上に本作が脳内美化されてました。 私と同世代で、当時衝撃を受けた方。あの時以来、久しぶりに観てみようかな?なんて思うかもしれませんが『ネバーエンディング・ストーリー』と並んで、当時の美しい思い出に留めておいても良い映画かもしれません。もちろん、この映画の輝きは一生涯変わることはないんですが。[地上波(吹替)] 7点(2024-12-01 16:07:29)(良:1票) 《改行有》 51. PERFECT BLUE 『パーフェクト・ブルー 完全変態』という小説が原作(原案かも)で、タイトルの意味は良く解らないそう。 '90年代、羊たちの沈黙の大ヒット以降、サイコ・スリラーものがたくさん創られたけど、日本のアニメの代表作が本作かもしれません。 沙粧妙子みたいな劇中劇の効果もあって、アイドルへのストーカー犯罪として進行しますが、そのターゲット=ヒロインが、人気女優でもクラスの人気者でもなく、デパートの屋上イベントで歌ってる売出し中のアイドルグループの1人で、女優への方向転換期というのが、彼女の立場の不安定さを表しています。 当時はアイドル業界はモー娘。がデビューする辺り。インターネットが一般社会に普及していく拡大成長期。そしてジャパニメーションを世界中の映画関係者が観だした辺り…でしょうか。 ファンがあっけらかんと「未麻の部屋見てるよ~」というのにドキッとしました。あぁファンサイトの事か。と思ったらストーカーの本人なりきり日記風な内容にゾワッと…アイドルへの思いが独り歩きし、勝手な妄想と結びつく。それは未麻本人とは違う、ファンが勝手に作った未麻。現実の未麻が妄想の未麻と乖離したときに感じる不満と怒りが犯罪へと向かわせる。…って流れに思わせといて、女優を選んだ未麻自身の中にも、自分とは違う未麻が生まれ、どこまでが現実で、どこからが妄想か解らなくなってくる。でも現実世界はどんどん進んで、世間の思う未麻と、自分の思っていた未麻も乖離していく。怖い。最後は『うへぇ…』ってなりました。傘を持ってニコニコと追い掛ける妄想未麻と、鏡に映る必死に走る現実の犯人。あれは、誰視点の未麻だったんだろう? アイドルって、こんなにも気持ち悪いものに囲まれてるんですねぇ、怖いですねぇ。最後、未麻が立ち向かったからホッとしましたが、下手すると作品全体の気持ち悪さと不快感の方が、勝ってしまったかもしれません。 本作の素材としての魅力は感じますが、面白いかと言われると微妙です。そう思ったのは、私にアイドルオタクの資質がないからかもしれません。アイドルに対するストーカーやルミの気持ちが、私には自分ごとのように共感できなかったんでしょう。そういう人たちがいて、そういう気持ちが芽生えて、で、そんな事になってしまったって、うわべの部分しか理解できなかったんでしょうね。[DVD(字幕)] 5点(2024-12-01 14:52:57)《改行有》 52. スピード(1994) 《ネタバレ》 “SPEED”素直に『速度』って意味でしょうかね。確かに、これほど上映時間の長さを感じさせない映画は他に無いかも。時速80kmの縛りが出てきますが、タイトル=作品の性質な、珍しいタイトルです。 映画は3部構成。エレベーター、バス、地下鉄。どれも密閉空間で、そこから“外に出る”事が統一ミッション。どれも、誰でも思いつきそうなシンプルさだけど、考える間もなく畳み掛けられるトラブルの数々が秀逸。そして作品の質に対し、実はあまりお金が掛かってないのも凄い。 自分もその場に参加しているような気分を味わえるジェットコースタームービー。優秀なSWAT隊員となってみんなを救う“ヒーロー”になるか。元気いっぱいの巻き込まれ型“ヒロイン”になるか。そしてもう一つ肝心な部分、一生に一度すら体験することもない大事件に、自分が巻き込まれ、ヒーロー・ヒロインに救われる、いわゆる“参加型モブキャラ”になれるのが、この映画のいちばん凄いところです。 思えばディズニーランドやUSJのアトラクションでも、ヒーローでなくモブとして参加するものって多いですよね。 映画が始まってすぐにエレベーター落下の恐怖を体験。そこで突然ハリーが「クイズだ。ガンマンが人質を盾にしている、どうする?」ってジャックに質問を投げかけますね。映画を観ている我々も自然と考えてしまうんです『自分だったらどうするだろう?』って。加えてジャックの解答の奇抜さに、一般人との違いを観せてくれます。さて、エレベーターのモブキャラたちは、ほぼ何も出来ずに助けられますが、ここまでが練習問題です。 さぁいよいよ本番のバスジャック。モブキャラとして、自分だったらどんな行動を取れるのか?ただ恐怖に怯える。銃を持ったやつを取り押さえる。自分だけ逃げようとする…。序盤のハリーのクイズが効いていて、ただ映画を観る(与えられる)だけでなく、自分も考えながら観るから、115分がアッという間に終わってしまうんですね。 このバスジャックでスカッとお腹いっぱい、参加したモブキャラとしては、抱き合うジャックとアニーに大満足ですよ。そこから地下鉄へ… いままでSWAT隊員として、みんなのために戦っていたジャックが、1人の男としてアニーのためだけに、悪党ペインと直接対決します。一本の映画としては、見事なパッケージングだと思いませんか?…でも、最後の地下鉄は蛇足とか言われてます。 最後の地下鉄だけ、モブキャラの参加する余地、考える必要性が与えられていません。この映画をヒーローとして観た人、ヒロインとして観た人より、圧倒的にモブキャラとして観た人が多かったから、最後の地下鉄の評価に影響したのかも? 私はもちろん、モブ中のモブです。[ビデオ(字幕)] 9点(2024-12-01 12:02:34)《改行有》 53. マンハッタン無宿 《ネタバレ》 “Coogan's Bluff”『クーガンのハッタリ(ブラフ)』クーガンズブラフって、昔NYジャイアンツの野球スタジアムがあった場所の地名・俗称から付けたもの…だそうだけど、なんで?関連性は良く解らなかったです。マカロニ・ウエスタンで名を馳せたイーストウッドが、刑事アクションで名を馳せる、その第一歩と言える作品であり、近代化したニューヨークを時代錯誤なカウボーイが走り回るという、まさにイーストウッドの歴史の橋渡し的な作品。 観てて思ったのは「クロコダイル・ダンディー?(※実はまだ観てない)」。何度も出てくる「テキサスだっけ?」「…アラバマや」のテンドンについつい笑ってしまう。 パンナムビルのヘリ定期便が印象深い。昔はこんなのが運行してたんだ。アラバマ出身の主人公クーガンは、こんな未来チックな乗り物で現れ、最後もヘリで飛び去る。もう一つ公園を2台のバイクでチェイスするシーンも印象的。まさに“現代はカウボーイも馬からバイクに乗り換えて”って感じでしょうか?あ、そもそもクーガン馬に乗ってないわ。 後のダーティハリーの雰囲気をプンプン感じさせるものの、このクーガンって男が凄いんだか凄くないんだか、良く解らない。セクハラ男にはガツンと言ってやる硬派男かと思いきや、美女と二人っきりになるとグイッグイ迫りよる。宿に紹介された年増の娼婦(ん?無宿??)は足蹴にするくせに、保護官ジュリーにはメッチャ迫るし、精神を病んでる犯罪者の女にも手を出す。ヒッピームーブメントでラブ&ピースな時代だけど、クーガンもけっこうフリーダム。荒削りだけど嫌いじゃない映画です。[地上波(吹替)] 5点(2024-11-28 22:38:53)《改行有》 54. おしゃれ泥棒 《ネタバレ》 “How to Steal a Million”『大金の盗み方』。作中のセリフ同様『100万ドル』でも良いんですけど、フランスが舞台だからフランだよなぁ…みんな英語で話してるけど。ちなみに'66年当時の100万ドルは3億6千万円。100万フランは…良く解らなくて7千万円以上っぽいです。『おしゃれ泥棒』ってタイトルがセンス良いですよね。可愛らしくて私は大好きです。 ヘップバーンの黄金期の中でも後半の作品です。当時彼女は37歳。今の時代の37歳と違って“可愛い女性”を演じ続けるのは難しかったと思うけど、見事に可愛い一人娘を演じています。服装から真っ赤なちっちゃいオープンカーから、作風と相まってとてもチャーミングです。 ちょっとコミカルな作品の雰囲気で、それを盛り上げる音楽もとても印象的でした。おぉジョン・ウィリアムズの初期のスコアだったのか。さっすが。 ヘップバーンの映画と言えばオジサマ達の清純派アイドル的女優。そのためか彼女より一回り以上高齢な男性との恋愛が多い印象だったけど、本作のオトゥールは34歳。ここに来て彼女よりちょっぴり年下。でも今の価値観で観ると、これくらい年の近い同士の恋愛のほうが、自然な感じで感情移入しやすいです。 強力磁石にブーメランに変装…美術館での犯行もまたコミカルで、それでいて一つ一つに工夫が感じられて、ここもやっぱり可愛らしいです。2人で物置に長時間潜んでるのも微笑ましい。ワイラー監督はオードリーの魅力を引き出すのが上手い人ですね。[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-11-27 22:23:14)(良:1票) 《改行有》 55. ポルターガイスト(1982) 《ネタバレ》 “POLTER GEIST”ドイツ語でガイストはゴースト。じゃあポルターって??『ゴトゴト(と音を立てる)幽霊』みたいな意味みたいです。 パート2公開時から“呪われた映画”との触れ込みがあった気がします。私も2公開の近辺で、テレビで観たんだと思います。そして3では主役のキャロル・アンまで…作品自体より周辺の事情の方が怖いという変わった作品でした。 トビー・フーパー監督作品ですが、ほぼスピルバーグの作品ですね。当時の最新SFXを、死体や悪魔、宇宙怪獣やクリーチャーでなく、幽霊の表現に使ったのって、本作が初だったかもしれません。そして、日本ホラーの傑作『リング』の前に「テレビの砂嵐って何か不気味」って思わせたのは、この映画の影響がかなりあったんだと思います。アメリカ国歌が流れて放送が終わり、砂嵐になるところから始まる。ふと思ったけど、NHKって今でも放送終了時“君が代”流してるのかな? スピルバーグらしいなって思うのが、夜中の犬の活動を追いながら、寝ている家族(構成)を紹介していくのが、まず巧い。そして序盤はほぼホームコメディで、おじさんが集まってアメフト観戦してるのも微笑ましいし、死んだ小鳥の処理や隣人とのチャンネル争いなんかも面白いです。 ホラー描写はゆっくりと、スローペースでやってきます。砂嵐と話すキャロル・アンはちょっと不思議程度。寝室のピエロや庭の老木は子供時代に還ったみたいに何気ない怖さを感じられました。テーブルの上に椅子が乗ってるのは驚いた(アレどうやって撮った??)けど、ポルターガイスト現象に大はしゃぎするママは子供みたいで可愛かったな。 キャロル・アンが行方不明になって、不思議な現象が笑えない事件になっていくのも良いですね。レシュ博士ら専門家が役に立たないレベルの超常現象。助手の顔が崩れていく幻覚は、この映画の怖さ的にピークかもしれません。でもこの映画のキモは恐怖表現ではなく、超常現象のSFX表現で、キャロル・アン救出シーンは手に汗握りました。頼れる助っ人タンジーナが、小柄でカワイイおばさんなのが、当時は意外性があって好感度が高いです。 キャロル・アンを救い出し一件落着と思いきや、ママを襲うエロい幽霊に、地面から湧き出る棺桶とガイコツ達。って二段構えのゴージャス仕様。「墓石だけ動かして、死体をそのままにしたなー!」ここ結構好きだったりします。 決して怖い映画じゃないけど、ホラー映画と言うより、オカルト映画として面白いです。[地上波(吹替)] 7点(2024-11-24 22:07:08)《改行有》 56. アメリカン・スナイパー 《ネタバレ》 “American Sniper”『アメリカ人の狙撃手』。アメリカ側にしては『伝説』。でもイラク側からは『悪魔』であり懸賞金すら掛けられた存在。クリス・カイル。160人~255人の敵兵士を、その手で1人ずつ撃ち殺した兵士。 イラク戦争をアメリカ側から描いていますが、一方の正義は一方の悪であると、戦争の両面がきちんと描かれていました。任期を終えると平和なアメリカに帰っていくクリスと、常に戦場で生活をしているイラク人。虐殺者のような人間も出てきますが、だからイラクは悪だ。…と言い切れない状況をきちんと描いています。 「まさか最初がこんなだとは…」手榴弾を持った子供と母親の狙撃。撃つべきか、撃たざるべきか。戦争の悲惨さと向き合う作品の、選択肢のクライマックスとも言えそうなシーンから始まります。味方の海兵隊員を守るためには自分が撃たなければいけない、残酷な選択肢。 この母子と同じ建物の屋上で、男が戦車を見て携帯を掛けていた。怪しいけど何もしていないこの男をクリスは撃たなかった。もしかしたら、この男を撃っていれば、母子は助かったかもしれない。…後からそんなことを思ってしまうと、延々と答えの出ない葛藤に落ち込んだでしょう。どれだけタフでも、これは病んでしまう。 ビグルスの死もズシンと重かった。せっかく命が助かったのに、あんなカタチであっさりと迎えに来る死。アメリカで起きたことを、イラクで同僚の口から聞くというのも驚きを増した。自分の中で、危険な戦場と遠く安全な自国の境界線が無くなっていきそうで、感覚が麻痺してしまいそう。 クリスの最後については本か何かで知っていたけど、自分の中の葛藤を乗り越えつつあり、今度は自分と同じ苦しみを抱えた仲間を救うことに生涯を捧げようとした、その矢先だったろうに。 最後の葬儀のシーンがとても印象的。父の教えである「羊の群れを守る番犬であれ」を地で行ったクリス。敵兵士をたくさん殺したクリスを、英霊として見送れるアメリカ国民達。クリスが善か悪かを考える以前に、彼が自国と自国の兵士を守るために活躍した事実を、国民は理解しているんだろう。…多くの人を救助した英雄の葬儀ならともかく、クリスのような仕事を理解し、英雄として考えるのって、きっといまの日本では難しいんだろうな。[DVD(字幕)] 7点(2024-11-24 21:32:12)《改行有》 57. GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊2.0 《ネタバレ》 攻殻のDVDを安く手に入れて、喜んで観たらコレでした。確かに『~2.0』って書いてあるけど、ファイナル・エディションとかディレクターズ・カット版とかの、DVDの仕様だと思っていましたよ。 始まってCG素子を観て、あちゃーって思いました。で、バトーやトグサはアニメのままな事に、一つの作品として統一感の無さを感じました。どうせなら人物すべてCGにすれば良いのに…なんて思っていたら、CG素子は一部だけなのね。だったら人物は全部アニメのままで良かったのに… CG素子ですが、2008年って、まだこの程度のCG技術だったんですね。アニメパートより古臭さを感じます。 音は良くなっていると思います。オリジナル版はいま観ると、SEに古臭さというか、昔のアニメっぽさを感じます。本作は結構リアル路線な作品ですが、人が飛び上がるときに『ビュン!』とか『シュタッ!』とかって実際には鳴らない音を入れてるのが当時のアニメらしいです。本作はそこは改善されていて、銃の音とかリアリティが増しています。 でも声は昔のほうが、私は好きです。オリジナルの清掃員の会話「あんた子供いる?」「(被せ気味に、怒り気味に)いるように見える?」は、短いながらも千葉さんの名演技だったなぁ。 人形使いを家弓さんから榊原さんに変えたのは、良くも悪くもです。オリジナルの違和感も良かったし、田中さんと声質の似ている榊原さんというのも面白い。でも『だったら最初から女性声で良かったのでは?』って思いました。変える必要性がイマイチ伝わりませんでした。 5分ほど長くなっていますが、どこが伸びたんだろ?出来ればSEだけを変えた1.5を創ってほしかったかな。初めてこの作品を観るなら、オリジナル版でしょう。コッチは…観なくても。[DVD(邦画)] 4点(2024-11-24 14:49:15)《改行有》 58. GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 《ネタバレ》 “GHOST IN THE SHELL”=『攻殻機動隊』ではなかった筈です。『薬莢の中の魂』…みたいな意味かと。素子もバトーも体いじくって、戦闘サイボーグみたいになってるけど、その中にはいじることの出来ない人間のゴースト(自我?)がある。じゃあAI(人形使い)が自我を持ったら?…このアンドロイドともクローン人間とも違う、曖昧でリアルな未来感に、当時高校生だった私はとっても衝撃を受けました。 確かに、自分の体の一部が無くなっても、義手なり義足なりを使っても、私に変わりはない。時代が進み、“義体”なるものが出来たとして、最終的に脳さえあれば、それは私と言えるんだろうか?更に脳もいじるようになり、電脳化していったら、どこまでが私なんだろう?こんな世界観を考えるなんて、どんだけ凄い人なんだろう?この士郎正宗って人は。 日本のサイバーパンクSF漫画家として、私のSFヲタ心を満たしてくれたシロマサ。『プレデター』のカメレオンみたいな宇宙人の謎技術を、熱光学迷彩ってリアルで説得力のある未来技術に変えたシロマサ。過去の映像作品アップルシードもブラックマジックも面白かったけど、OVAじゃ一般の認知度は低かった。それらに比べ攻殻はテーマも解りやすく、ストーリーも一般受けしそう。それがいよいよ映画化される。そりゃワクワクしましたよ。 でも絵柄がイメージと違い、なんかコレジャナイ感が…ちょっと不安もあったので劇場ではなくレンタルで観ました。これは…押井さんの作品だわ。 カラッとしたハイテク・ジャパンな原作と雰囲気が異なり、映画はジメッとした和+中華というかアジアンというか、そんな音楽やキャラデザインに、やっぱり違和感を感じました。 80分の短い作品なのに、押井作品らしい独特の間はきちんと入れる。“親切なやつ”が銃撃から逃げて、素子と格闘するまでの“間”。立ち止まってビル越しの空を見上げたり、逃げるあいだにガラクタの山を観せたり。こういうの入れた必要性が解らなかったわ。敢えて言えば、シロマサ作品を踏み台にして、押井テイスト(=オレ流)を押し付けられてる感じがして、そこにどうにも居心地の悪さを感じました。 そして押井さんの作品ながら、この映画の面白いところがほぼ原作の面白いところそのまんまだったのも残念でした。攻殻に関しては劇場版パトレイバーのようなプラスαが感じられませんでしたね。 私の結論として、『あぁこの人、ハリウッド・ウケを狙ってるんだな』って。この映画はシロマサ原作好きに向けられたものではなく、ハリウッド向けに創られた、当時のジャパニメーションの技術サンプルのような作品だなぁ~って、そんな感想です。 まぁ海外では見事にウケて、押井さんの(世界的な)知名度も上がったようです。そして彼の次作は迷作アヴァロンでした。 人間が制御しているAI=フチコマ(多脚戦車)が出ない。「ゴーストがないお人形(ロボット)は悲しいね」などの名セリフも、使う場所を改変してて違和感を感じました。ストーリーもあちこち切り貼りされたこの映画に、技術的な価値は感じても、作品としての価値はあまり感じませんでした。原作の魅力的な部分だけはしっかり抽出して、余計な押井テイストを加味してしまった本作に『もう純粋に攻殻機動隊の面白さが映像化されることは無いんだな』って、ガッカリもしました。(※攻殻の他の映像作品は観てません。) あれからおよそ30年。『コレはコレで、良いのかな?』って、当時違和感ばかりだったこの作品にも、味わいを感じるようになりました。 相変わらず、原作>>>映画版ですが。[ビデオ(邦画)] 6点(2024-11-24 14:44:03)《改行有》 59. サンキュー・スモーキング 《ネタバレ》 “Thank You for Smoking”『喫煙してくれてありがとう』。 この映画のおかげで(せいで?)“ディベート”に興味を抱き、自分の中で賛成意見と反対意見を考えて競わせる…なんて脳内遊びをしてましたね。困ったことに人の話を聞いている時にも、相手の主張と逆の視点で考えてしまい、それをつい口に出して、相手を不快にさせてしまったことも…。私のレビューで、酷評書いてるのに点数は高かったり…なんてのがあったら、脳内ディベートの弊害ですね。 ケーブルテレビでやっていたのをたまたま観ました。軽快なテンポでとても面白かったです。なのでDVDを買って改めて観たんだけど、なんかイマイチ。原因は字幕でした。思えば当時ケーブルで観たのは吹替版でした。字幕ではニックのマシンガントークが、端折られた字幕に殺されてるのもあるんだけど、字幕だと私が一番好きなEGO社の一連のシーンが、あまり面白くなかったんです。ここではニックは聞き役で、社長のジェフと助手のジャックの軽快なトークが面白く、吹替版でこそ面白さが伝わります。ってか、字幕が酷すぎだと思います。文字で内容は伝わるけど端折りすぎててニュアンスが伝わらない。これじゃ映画の内容も薄っぺらく感じます。 かなり日本びいきのジェフ社長と、EGO社でデカデカと流される、シャチがアシカを襲う映像。俳優にタバコを吸わせて、観る人にカッコいいと思わせるように、シャチの残虐性を見せつけて、反捕鯨をひっくり返す印象操作の一環なんでしょうかね? でもこの映画の主題は喫煙の善悪ではなく、語り手の腕次第で人の印象がどう変わるかです。遊園地でジョーイと『バニラとチョコ』のディベートをします。「お前を説得したいんじゃない、ターゲットは彼ら(大衆)」。物事の善悪を何が決めるのか、とてもわかり易かったと思います。上院議員のように、強い意志を持って何かを決める意見は“個人の選択の自由”と言う反対意見…というか寛容な逃げ道には勝てない、大衆は選ばない。でもこの映画で大事なのは、“個人の選択の自由”って結論に至るまでの、話の組み立ての過程で、そこが字幕版では欠如していたように思います。…ディベートを扱った映画なのに。 私は選べるなら字幕を選ぶ派ですが、この映画をたまたま吹替版で観たから、素直に面白いと思いました。でも字幕で観ていたら、そこまで良い印象は無かったかもです。また最初に観た方(吹替)で良い印象を持てば、後から観た方(字幕)がイマイチでも、その作品自体の評価は変わらないものです。他の映画でも同じことが言えるでしょう。観るなら字幕か吹替か。最初に観た方の印象って大事だってことを、この映画から学びました。 ちなみに、この映画を観たときには、私は禁煙に成功していました。なので劇中に出てきたニコチンパッチの恐ろしさは重々承知しています。…説明書に書いてましたが、パッチしたまま寝ると本当に悪夢を観られますよ。[CS・衛星(吹替)] 7点(2024-11-24 11:38:18)《改行有》 60. アルマゲドン(1998) 《ネタバレ》 “Armageddon”『世界の終わりの最終決戦(の場)』滅亡とかって意味かと思っていましたが、善と悪の滅亡を掛けた決戦なんですね。この映画の前は『ハルマゲドン』って言ってました。デビルマンでも幻魔大戦でも。本作の相手は悪魔や侵略者でなく隕石ですが、地球を当たり前のように善の側としているところが、この映画の単純さを表していて清々しいです。 アメリカ人もノストラダムスを信じていたか知りませんが、世紀末に相応しい、グッド・タイミングな映画です。 私がジェリー・ブラッカイマーにマイケル・ベイって名前を認識したのが、この作品からだったと思います。例えばM・ナイト・シャマランやJ・J・エイブラムスは、デビューから一緒に成長した感じがあるのに、ブラ&ベイは突然大物として現れた感じがしました。堀江貴文が野球チームを買収しようとした時や、剛力彩芽が前澤友作と付き合ってたのを知った時に感じた「誰?この人。何がすごいの?」って気分。私の知らない社会の裏側で、着々と力を付けてきた人な感じが強かったです。人見知りな私は、何か拒否反応が出て、ディープインパクトは割と早めに観たけど、こっちは後回しにしました。 映画館の大画面で観るアトラクションなので、ストーリーに文句を言っても仕方ない作品です。こういう、頭空っぽにしてその場その場を楽しむ作品というのもまた、映画の醍醐味だと思います。 いきなりアトランティス号が爆発。作戦室でぐるぐる動くドキドキのカメラワーク。F-15のスクランブル発進の緊張感。破壊されるニューヨーク。逃げる松田聖子…こういう映画で観たいもの(破壊シーン)を最初っから観せてくれます。親切ですね。 中だるみはしますが、シャトル打ち上げからはノンストップ・アクションの連続。爆破は大成功し、オープニングでNYを破壊した隕石の破片が落ちてくるとかの心配もなさそうで、何よりです。小惑星の不時着であれだけボロボロになっても、きちんと帰ってきて、そこにみんな揃ってて、歓迎のアクロバット飛行まで観せて、大団円で終わる。観客が求めたものをきちんと直球勝負で提供できてたんじゃないでしょうか。 この映画全体がアメリカ人の理想のように思えます。人類最後の切り札が、NASAの精鋭チームでも米軍特殊部隊でもなく、採掘現場のブルーカラーの普通のオジサン達。…まぁ海洋石油採掘プラント勤務だからその辺の肉体労働のおじさんでなく難しい資格を持ったスペシャリストですが、でも親しみは感じます。 油にまみれた男たちの肉体美と、リブ・タイラーのセクシーな下着姿。パソコンの導入で肥満が増加したアメリカ人の思い描く、理想的な身体ですよね。 そして父親の愛情。リブ・タイラーは世界を救ったハリーの娘・グレースであり、主題歌を歌うスティーブン・タイラーの娘リブであり…彼女にとって本作は、愛情あふれるゴージャスなプライベートフィルムになってます。そして今回不覚にも(!?)泣いちゃったのは、ハリーのAJへの思い。「お前をずっと息子のように思っていた」ってところ。ホント、厳しくもカッコいい父親像でした。 世界を守る正しいアメリカ。世界を楽しませる娯楽の中心ハリウッド。ハリウッドの超大物・ブラッカイマーとベイのコンビ。カッコいいアメリカ人を描いて、狙い通り世界中でヒットしてしまったこの映画。3年後、ブラ&ベイ(&アフレック)が創ったパール・ハーバーは世界中から(アメリカからさえも)失笑され、ニューヨークのビルには隕石でなく飛行機が突入する。まるで理想と現実を履き違えたアメリカの解答に対する、世界の答え合わせかのよう。[地上波(吹替)] 5点(2024-11-17 16:18:18)《改行有》
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