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Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 250
性別 男性
自己紹介 サンボリズムとリアリズムのバランスのとれた作品が好きです。
評価はもちろん主観です。
評価基準 各2点ずつで計10点
1.物語の内容・映像にリアリティを感じるか?
2.視覚的に何かを象徴できているか?
3.プロットの構成は適切か?
4.画面に映る動き・台詞や音にリズム感があるか?
5.作品のテーマに普遍性はあるか?

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41.  ある男 撮影・演出・演技は素晴らしいです。ある程度緊迫感を保ちながらどこかユーモラスで親しみやすく見やすい作品です、小籔千豊がいい味出してますね。登場人物はみな現代の日本にはこういう人いるよね、と思わせるリアリティがあります。ただ柄本明はちょっと漫画っぽいかなあとは思いました、レクター博士っぽいとも言えます。音響はいいのに音楽がいまいちなんですよね。ほのぼのしたシーンではほのぼのした音楽、緊迫したシーンには緊迫した音楽、しんみりするシーンにはしんみりした音楽と極めて単純です。音響へのこだわりに比べると随分無頓着だなと思いました。社会問題もあくまで触れるだけで出たきりのまま放置されています。最終的に個人のアイデンティティーの問題に帰着するのは日本文化の良いところとも悪いところとも言えますが、今は欠点とみなした方がいいでしょう。全体として誰が主人公かわかりにくくかといって群像劇とも言いがたい構成ですが、今の社会で生きづらさを抱えた人たちみなが主人公だと理解するのが正しいのかもしれませんね。[インターネット(邦画)] 7点(2023-05-08 23:42:44)

42.  ドラゴンクエスト ユア・ストーリー ドラゴンクエストに関しては無知な人間ですので、失礼ながら一本のアニメーション映画として評価します。物語に起伏もありラストの妙にひねった展開がなければ普通に冒険ファンタジー映画として評価される出来だと思います。CGも動きの硬さは感じますがよくできてると思います。特に顔の生傷には相当こだわっていますね。2Dアニメは基本的に単色で塗られたのっぺりした肌しか表現できませんので、これは3Dアニメであることの強みを生かしていると思います。それで例のラストなんですが、まあ失敗ですし悪評も仕方ないです。でも一部に支持派がいるのは納得できます、というか支持します。やるならもっと序盤からわかりやすく示唆すべきというのも尤もな批判ではあります。でもラストのメッセージ的にもここまでは全てが本物であるかのように語られる必要性はあったと思います。我々はなぜフィクションに対して本物以上に思い入れを抱くことができるのか。それは単にフィクションが傷つくことのない別の世界へ逃れることを可能とする現実逃避の対象だからでしょうか?いやむしろ現実では傷つくことから本能的に逃げようとしてしまうからこそ、それに真剣に向き合う場としてのフィクションが必要なのだと思います。そしてそこで前述の生傷へのこだわりが生きてくると思います。この映画の裏メッセージは傷つくことこそが生きていると感じられる本物の証であるということだと思います。[DVD(邦画)] 7点(2023-05-07 23:24:28)

43.  アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル 事件についてはほとんど知識がなかったので純粋に一本の映画として見ましたがそれでも面白いですね。対テロ作戦の専門家とうそぶく太ったボディガードなんてさすがに本当はこんな感じじゃないんだろうと思ってたらそのまんまの人物がエンドロールに出てきたのには笑っちゃいました。マーゴット・ロビーは23歳以下の役を26歳で演じていてけっこう違和感があります、母親にその髪型だと若く見えるなんてことを言われたのもメタな皮肉としか思えませんでした(笑)。でもコメディ調の作りなのでこれもアリです、むしろ下手に真実性なんて重要視してないところが好印象です。真実性を追及していないとは言っても、スケートのシーンはおそらくCGを交えながらも違和感のない描写で技術レベルの高さもうかがえます。タバコの火を靴で踏み消すなんてありがちなシーンですがそれをスケート靴のブレードでやると印象に残るシーンになるんですね。トーニャがFBIの取り調べを受ける場面でテディベアを抱えているところも印象に残りました。とにかく人間関係にしろ置かれた地位にしろ不釣り合いであったことで起きた悲劇という感じなんですよね。バカとクズしか出てきませんがそんなバカとクズたちを決して嫌いにはなれない、深刻でありながらも最後には爽快感すら感じられる良質な人間ドラマであります。[インターネット(字幕)] 7点(2023-05-02 23:56:11)

44.  GOEMON これはまともな映画だと思います。リーマンショックの次の年にこの映画を公開できた紀里谷和明は悪くない勘の持ち主です、CASSHERNもイラク戦争開戦の次の年ですからね。CGを使った派手なアクションシーンばかり注目されますが、蛍が飛び交う水場、年少時代の五右衛門と茶々の寝室でのシーン、オルゴールの音が流れる五右衛門と秀吉の最期の会話シーン、こうした静のシーンもちゃんと作られていて静と動のリズム感があります。映画は蛍の光に始まり、中盤で蛍の水場での茶々との再会のシーンが挿入され、最後は空の蛍の光で終わる。物語の時間軸としては信長の兜を五右衛門が投げ渡されることで始まり、最後には信長の鎧兜を身に付けて終わる。反復構造による演出も考えられています。単にCGを多用するからダメだとは思いません、我々はCGアニメで描かれる物語にもリアリティを感じることができます。CGによってリアリティが損なわれるのは映像に統一感がなくなることが一番の原因です。この映画の映像には統一性があります、まあ確かにアクションシーンはやりすぎなんですが。惜しむらくは叩かれすぎたのか後の作品ではCGを多用した映像美を捨ててしまったことです。上手く手綱を握れる人間さえいれば実写映画で新海誠と庵野秀明を足して割らないような監督になっていた可能性すらあると思います。結局宇多田ヒカルと別れちゃったのが一番の失敗だったのかもしれません。[インターネット(邦画)] 7点(2023-04-27 23:50:18)

45.  疑惑(1982) コメディでもないのにめっちゃ笑えます。桃井かおりはここまで来ると憎たらしいを超えて痛快で気持ちいいんですよね。マスコミも司法も道徳もバカバカしいと笑い飛ばす、もはや存在自体がアンチミステリーですらあります。この映画のメッセージは無理して他人の目を気にして生きる必要なんてないってことだと思います、そう見れば最高のハッピーエンドです。この映画で野村芳太郎はビリー・ワイルダーを超えたと言っても過言ではありませんね。ただ映像的にはテレビドラマレベルと揶揄されても仕方ない感はあるのでそこはちょっと減点です。[インターネット(邦画)] 7点(2023-04-25 23:55:41)

46.  銀河 浮浪者のような二人の巡礼者はゴドーを待ちながらっぽいです。この映画もある意味どこにもたどり着けない空虚な徒労の旅のお話です。現代において宗教なんてものはパロディの対象でしかない、真剣に描けば描くほどバカバカしくなってきます。しかしこの映画はキリスト教を滑稽なものとして描きながらも神学的に間違った描写もなされていないのです。古代・中世・現代の世界と人物がシームレスに溶け合いながらもこの映画は不思議とそれらに平等にリアリティを感じられます。別の見方をすれば親しみやすい娯楽性を加えた真面目なキリスト教映画でもあります。これを受け入れてしまう懐の深さこそがキリスト教の強さとも言えます。[インターネット(字幕)] 7点(2023-04-23 23:42:38)

47.  バトル・ロワイアル この映画の面白さは異常事態に陥っても人間は日常と同じように振る舞ってしまう姿が描かれているところではないでしょうか。殺し合いの中でもつい能天気だったり相手を気遣うような言葉を口走ってしまう。いざこざの原因もふだんの人間関係の延長線上にあります。さすがにBR法のようなものが現実に制定されることはないでしょう。しかしその冗談みたいな事業がまるで学校の行事のように執り行われています。面白おかしく報道するマスコミ、生徒に話しかける教師の口調、設定こそ異常ですが細部の描写は私たちの生活の中で既視感のあるものです。大人たちは確かに悪役であり文字通り反面教師ではありますが、その心の弱さに共感できる描き方であり若者だけの群像劇にしてはいません。集合写真で始まり集合写真で終わる、冒頭と違いエンドクレジットのそれは明らかに遺影です。どこか寂寞とした感情を抱かせます。ちょうどこの映画は深作欣二監督の遺作になりました。[インターネット(邦画)] 7点(2023-04-22 23:07:17)

48.  悪魔の墓場 確かにジョージ・A・ロメロのナイト・オブ・ザ・リビング・デッドの焼き直しでしかないんですが、あくまで放射線をただゾンビ発生の原因として採用したに過ぎなかった元ネタよりも超音波による公害を明確にテーマに据えた点は評価できます。ラストの展開も死者が蘇るという設定をより生かしていると思います。それにゾンビ映画に似つかわしくなく結構おしゃれな雰囲気があっていいんですよねー。主演のレイ・ラブロックをはじめ、登場人物がみんなファッショナブルです。滝の前で点滅し続けるフラッシュと警察のカメラのフラッシュを繋げる、ホテルの看板と本物のフクロウを繋げる、編集と場面転換もセンスがあります。冒頭の有害な煙が漂う都会と緑豊かな田舎の自然のコントラスト、環境問題テーマを視覚イメージとしても昇華できています。なんだかゾンビの出てくる場面が一番ダサくてがっかりしちゃうぐらいです(笑)。[インターネット(字幕)] 7点(2023-04-19 23:36:09)

49.  禁じられた遊び(1952) ポーレットがひとりぼっちになり川に犬の亡骸が投げ捨てられて始まるこの映画は、ミシェルが川に十字架を投げ捨てポーレットがまたひとりぼっちになって終わります。しかし冒頭の犬の痙攣はすごい、この時代のことですから危険な薬でも飲ませちゃったりしたのでしょうか。描かれるのはとにかく死が尊重されない世界です。十字架の扱いはまさにその象徴です。感動の名作というよりルイス・ブニュエルに近いほとんどブラックコメディですらあります。墓場での殴り合いはもう笑わせに来てるとしか思えません。もうほとんど忘れられたような監督ですが、良質なフランス映画の伝統ともヌーヴェルヴァーグとも微妙にずれた立ち位置にいるのがルネ・クレマンの面白さです。現代だとミシェル・アザナヴィシウスが似たような立場にいるのかもしれません。[インターネット(字幕)] 7点(2023-04-10 23:57:34)

50.  生きる 現代では風俗こそすっかり様変わりしてしまいましたが、根本的な人間の姿はほとんど古びていないのには驚きました。無意味で空虚な仕事がもたらす精神の荒廃、お役所仕事の弊害(序盤はシン・ゴジラにもそっくり)、肉親の間ですらどこかよそよそしさが付きまとう人間関係、うちの中もおもてもおんなじ寒さという日本の住宅事情への愚痴まで現代と変わらない(笑)。日本社会の本質がこの時代から大して変化していないというだけかもしれませんが、これは人間への真摯な観察の賜物でしょう。しかし細部の描写はいいのですが演出や脚本がそれほどうまいとは思えません。志村喬が病院待合室で診察を受ける前の会話では他の患者が胃がんなのに胃潰瘍と言われたと語られ、後の場面で医者に同じことを言われるんだろうなと簡単に推測できてしまいます。酒場での小説家との会話では胃がんが人生に対する目を開かせたなんて作品のプロットを全部台詞で説明しちゃってます。小田切みきとの交流は今見るとパパ活みたいで真面目に見るべきなのか笑えばいいのか…。有名なハッピーバースデーのシーンも分かり易すぎていかにも演出の作為が見えてしまいます。葬式のシーン以降はやっぱり長すぎますし、社会批判というよりは主人公をひたすら賞賛しているだけのように見えてしまいます。本来は社会風刺喜劇になるべきところにヒューマニズムドラマまでつぎ込んでいるのでどうにもバランスが悪いです。しかしバランスが悪かろうと語り方が下手だろうと伝えたいテーマを何としてでも伝えようとする姿勢は立派だと思います。「わしは人を憎んでなんかいられない、わしにはそんな暇はない」こういう心を揺さぶる台詞が出てくるのはやはり小手先の技術ではないと思います。ダメなところもたくさんあるとは思いますが、黒澤明はやっぱり偉大な監督です。[インターネット(邦画)] 7点(2023-04-08 22:21:27)(良:2票)

51.  マイスモールランド この映画は何ひとつ特別なことを描いているわけではありません。クルド難民という設定を抜きにすれば社会派映画というよりは日本映画では珍しいとも言えない思春期の女性の繊細な感情を丁寧に描いた青春映画です。親と子のすれ違い・愛情、他人に話せない悩み、日々の生活で味わう息苦しさ、そして恋。新しい物語を模索というよりは、既にあるフォーマットに沿って問題を処理しているとも言えます。それはこの映画の欠点であり長所でもあると思います。親しみやすい内容ですので、もし広く宣伝されていたならば今よりも多くの観客の共感を得られそこそこのヒットも狙えたのではないかと思います。そうなることがこの映画が作られた目的にも沿うと思います。もっと言うならば商業映画はこの程度のレベルが普通であってほしいのです。(コインランドリーと移民という要素がエブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスと被っていますが、偶然なのかそれとも何か共通の要因があったりするのでしょうか?)[インターネット(邦画)] 7点(2023-04-02 21:23:06)(良:1票)

52.  フェイス/オフ この映画の設定は王子と乞食のような古典作品が底流にあるのかもしません。ショーン・アーチャー(ジョン・トラボルタ)は上側の男です。彼の仕事場は高層ビルの上層にあり、親密な人間とコミュニケーションを取る時には人の顔を指で撫でます。顔は人間の体では一番上にある部位です。一方、キャスター・トロイ(ニコラス・ケイジ)は下側の男です。彼が親密な相手とコミュニケーションを取るときには必ず体の下側に触れます(弟の靴ひもを結ぶ、女の尻をさわり、ショーンの妻の脚に触れる)。この映画は下側の男が上へ向かい、上側の男を下へ叩き落そうとする物語です。冒頭の空港のシーンでは飛行機でキャスターは空(上)へ逃げようとしますが、ショーンに妨害され地上(下)へ引きずり落とされます。キャスターがショーンと入れ替わることで上下は逆転します。刑務所で囚人が履かされるブーツはその象徴です。磁場でショーンは下へ固定されてしまいます。ショーンとキャスターが鏡越しに向かい合う場面で鏡はお互いの真実の姿を映し出す、その象徴性も素晴らしいです。鳩は単にカッコいいから出しているとも限りません。クライマックスの葬儀は誰の葬儀か、ラザロです。ラザロといえば聖書に描かれたイエスキリストの力によって死から蘇った男です。別にこの映画でラザロは復活しませんが、ショーンの復活劇の舞台としてこれ以上のものはないでしょう。鳩は明らかに聖霊の象徴です。そういえば息子の名前もアダムですね。ラストのボートチェイスは冗長かつ何の象徴にもなっていないのでマイナス点です。立場を入れ替えることで世界の見え方が変わるところが面白いのですが、最終的には勧善懲悪ストーリーで終わってしまったのは惜しいです。90年代のハリウッドの限界でしょう。インファナル・アフェアはこの映画の影響を受けていると思いますが、その点においてより深く丁寧に描写できていました。格差社会が問題となる現代でリメイクしてみるのも面白いかもしれません。[DVD(字幕)] 7点(2023-03-18 21:33:08)(良:1票)

53.  アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド ドイツ映画といえば国際的に評価されてるような作品はたいていナチス・戦争たまに東独という感じですが、この映画はそのどれでもなくジャンル分けするならSFとラブコメです。そう表現するとキワモノっぽい印象を受けますが、むしろこういう題材が完全に大人のドラマとして成立する時代になったんだなあと感慨深くなります。自分の理想と願望を充足させてくれる存在とは自分自身に他ならない、他者はどこまで必要な存在なのか?私はラストの言葉で示された結論の方に賛成ですが、言葉ではない領域でこの映画はもう一つの結論を提示しており、こういう演出は映画的と言えます。[DVD(字幕)] 7点(2023-03-16 20:39:14)

54.  地球が静止する日 2000年代のハリウッドSF映画では宇宙戦争と並ぶトンデモ駄作扱いの作品ですね。しかし宇宙戦争が同時多発テロの暗喩として理解されるように、この映画もある程度は評価されてもいいと思います。クラトゥ(キアヌ・リーブス)は人間の姿形をとって現れた神、すなわちキリストであり、巨大ロボット・ゴートが虫の大群に姿を変え人間を襲撃するのも出エジプト記のイナゴの災いが元ネタ(最近ではジュラシックワールド/新たなる支配者でも似たようなことやってましたね)。バッハもキリスト教音楽を多数作曲しました。血の繋がらない親子ですが、キリストも処女懐胎によって生まれましたので父親とは血が繋がっておりませんでした。ラストのキアヌ・リーブスの心変わりに納得がいかないという意見も多いですが、親子が聖母子像を意識していると理解すれば自然な成り行きとも言えます。キリスト=クラトゥは最後に人類の罪を背負い去って行きます。この映画は気候変動の危機をキリスト教のイメージをベースに描くことで広く訴えかけるのが目的なのです。伝統的宗教を基盤としてエコロジー的主張を行うのはそう珍しい例ではなく、日本でも神道のアニミズムを環境保護的な思想として理解する向きがあります。近代文明が取りこぼしたものに目を向けるという点では通じ合うものがあるのでしょう。[DVD(字幕)] 7点(2023-03-09 21:45:04)

55.  聖地には蜘蛛が巣を張る 《ネタバレ》 この監督の過去作はファンタジー的題材をリアリズムをもって描くという作風だったので、こういう実際の事件を題材とした作品は向いているのかなと不安だったのですが、演出に関してはバッチリでしたね。感情を大きく揺さぶるような事件だからこそ、抑制され冷静さを保ちながら現実を見つめさせるスタイルは正解だったと思います。ただ、お話に関してはちょっとどうなのかなと気になるところがありました。主人公のジャーナリストのラヒミの物語よりも犯人のサイードの人物像を描くことに多くの時間が割かれているのはバランスが悪いのではないかと思います。これでは彼女がイラン国外の人間が感情移入するための器のようでしかなく人間味が感じられません。警察や宗教者が犯人とグルなのではという疑惑を抱かせながらストーリーは進むのですが、実際にはそんなことはなくサイードは普通にイランの司法の下で処刑されてしまいますし、ラヒミは組んでいた地元の記者といい感じになってめでたしめでたしみたいな空気になるので拍子抜けしてしまいました。基本的に大衆は殺人鬼は怖いという態度で、イスラム教徒全員が犯人に賛同しているわけでもない部分は劇中でも描かれています。それはそれで正しいのでしょうが、これがイラン社会への批判が目的なら犯人とその賛同者の異常性だけを強調しすぎている気がします。親から子への悪の継承を示唆するラストも問題を社会全体よりも血筋に押し付けているような違和感があります。映画自体の内容よりもイラン本国で撮影を拒否されバッシングを受けたこと等、製作過程や現実の事件の方が興味深いというのが正直なところですね。[DVD(字幕)] 6点(2023-10-28 23:54:56)

56.  [リミット] 棺の中だけじゃ絶対画面が単調になるでしょうと侮っていたのですが、なかなかこんな狭い空間の中でも色んな画が撮れるもんですね。ライターのオレンジの炎、携帯の青い画面の光、緑のケミカルライト、懐中伝統の黄色と赤の光、同じ空間でも照らす光の変化で映像の調子が変化していく工夫が成されているおかげで飽きずに見られます。棺の蓋を無視したかのように上から主人公を映すアングルでこれはもうネタ切れなのかと思ったら、そこからワンカットで棺の天井が映るところまでカメラが移動したのにはやられましたね。まあしかし傑作になるには不条理なワンアイデアだけでなくもうちょっとストーリー性が欲しかったところはありますね。イラク戦争批判も臭わせる程度で中途半端な描き方でしかありません。[インターネット(字幕)] 6点(2023-10-24 23:06:20)

57.  狩人の夜 変な映画であることは間違いないです。サイコサスペンスのようでほのぼのとした児童ファンタジーのようでもありジャンルが不明瞭である点は独特の魅力ではありますが、ちぐはぐな構成であるような印象も受けます。この時代の映画にしては映像もカメラワークも当時のハリウッドスタンダードから逸脱した凝りようでそれが成功しているかはともかく古臭さは感じません。序盤の空撮は天にいる神が地上を見守っていることを表現しているんでしょうか。でもそんなに大した内容でもなく結局ロバート・ミッチャムのエキセントリックなキャラクターを楽しむだけの映画のような気がします。超然としているようで金目当ての俗っぽい行動だったり、子供相手にムキになる姿は恐ろしいというよりなんだか滑稽で可愛らしいところもあります(笑)。聖書を揶揄するような台詞もリリアン・ギッシュもまた聖書について語る役回りである以上、社会風刺やキリスト教への批判が目的というよりはロバート・ミッチャムの悪魔的キャラクターを演出するためのフレーバーでしかないですね。ラストの民衆の暴動はフリッツ・ラングのMをやりたかったんでしょうか、それも大して意味がなく終わってしまいます。[インターネット(字幕)] 6点(2023-10-22 23:06:18)(良:1票)

58.  手紙は憶えている この映画ラストは確かにすごくいいと思ったんですけど、それも結局初見のインパクトだけでしかなく1回見たら満足してそれっきりになってしまうというか、深く考えれば考える程いくら認知症とはいえそうなるか?もし認知症になってなかったらどうするつもりだったんだろう?と次々疑問が湧いてきてしまいます。不自然というわけではないにしろ伏線らしい伏線もなく、今までの積み重ねがこのラストシーンをさらに盛り上げるように機能しているとも言い難いです。どちらかというとこの作品の価値は社会派というよりは認知症の老人のような一見滑稽な言動しかできないような人物を主人公にしてシリアスなドラマを語ろうとしたことの方にあるとは思いますが、扱ってる題材が重い割には人物造形が単純すぎてコミカルで笑えるようなシーンも多く、この映画自体が荒唐無稽なコメディに見えてしまい台無しになってるとも感じます。[インターネット(字幕)] 6点(2023-10-17 23:44:17)

59.  こんにちは、私のお母さん テレビで大喜びするシーンがあるのは三丁目の夕日を思い出します。中国人にとって文革が終わった後の時代はちょうど日本の戦後にあたるのでしょうね。基本的なプロットはバック・トゥ・ザ・フューチャーを参考にしてそうですが、中国人の太った娘と母親の物語である点は奇しくも同時期のアメリカ映画エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスとも被ってますね。太っていることを笑いのネタにはしない配慮は良いのですが、ハゲは普通に笑い者にしちゃっているあたり監督が主演を兼ねてるのでそこは避けただけなのかもしれません(笑)。中国は一人っ子政策だから子供への期待が大きく、そして一人っ子政策だからこそ親から子供が大切に育てられていることが反映された物語ではあるんでしょうね。普通に笑って泣ける映画ですが、最終的に単純な母性愛賛歌に収まるのにはなんだか検閲の臭いを感じなくもないです。それにしても父親の影が薄いのですが、そこは東アジアに共通の傾向がありそうです。[インターネット(字幕)] 6点(2023-10-14 23:46:08)

60.  家族を想うとき ドラマ性も情緒のかけらもなく徹底的にリアリズムを基調にした作品です。これを見れば映画のリアリティには手持ちカメラの揺れも長回しも関係ないということがよくわかります。家族以外との繋がりがなく多様な人間との交流の機会もなければ団結しての抵抗も願えない、確かにこれはイギリスに限らず日本でも同じ状況が見られる紛れもない現代社会の現実そのものであり、83歳の監督がここまで社会に対して冷静で客観的な視点を持てているのは驚異的ではあります。ただあまりにもこれは現実そのものでしかなく、それはそれで凄い映画と認めざるを得ないのですが見ていて途方に暮れてしまうだけというのが正直なところです。ところどころにクスッと笑えるような台詞もあるのですが、この作りだと笑うに笑えません。安易に救いや泣ける展開があればいいとは言いませんが、この映画にはリアリティ以外に評価できる点がないように思えます。自分の家族以外への広い視野を持てない人間が主人公とはいえ、映画で描かれる世界もまたそこから広がっていくことができないところも欠点だと感じます。[インターネット(字幕)] 6点(2023-10-11 23:34:19)

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