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581. FRANK -フランク-(2014) 《ネタバレ》 鳥カゴの中の楽園を蹂躙する凡庸という名の悪魔。 才能ある人々の、だけれどもあまりに繊細で脆く壊れやすい世界を、才能の無い凡人が通俗的常識の下に無神経に破壊してしまうというお話し。 凡庸はそれのみで罪である訳ではありませんが、凡庸ゆえに他者との境界線を見る事が出来ずに楽園に足を踏み入れ、侵蝕し、破壊してしまう。それはずっと繰り返されてきた悲劇。 自らを被り物の中に閉じ込めたフランク。ファスベンダーの限定された状況下での絶妙な演技の賜物か、被り物自体の放つ強烈な個性か何か判りませんが、その存在感は圧倒的。フランクと周囲の人々が作り出す空気が愛おしく、それゆえに後半は胸に痛く。 通俗装置の象徴としてtwitterが登場し、そのtwitterにこの映画の感想をつぶやくという皮肉な構造が、私に対して凡人としての自覚と自戒と、そしてシニカルな笑いを促すのでした。[映画館(字幕)] 8点(2014-10-27 22:34:44)(良:1票) 《改行有》 582. メアリーと秘密の王国 《ネタバレ》 森の自然を描いた映像はとても美しく、その自然の中に展開するファンタジー世界の物語はよくできていて、いいアニメーション映画だと思いました。 でも、手放しでは喜べない感じも。 まず、最も気になったのは光と影=緑と腐敗=善と悪の対比が、生物の種によって区別されている設定。単純に善悪に組分けされている状態で、偏向した、下手をすると差別意識を感じさせてしまう描き方。種で分けてしまうと生まれの時点で邪悪、だもの。 それから、映像のテンポは速いけれど物語のテンポは遅いという点。面白味を出そうとしているのか、1つ1つのシーンに余計な枝葉を加えているのですが、物語の進行を遅らせ、空転、停滞させるばかり。成長物語としては描写の積み重ねが全体的に薄く、変化の唐突な感じが否めません。特にメアリーのお父さんが延々と空回り&進行の停滞を生み出す状態には辟易。 また、キャラクターがリアル系で、全体的に表情や動きに固さを感じます。キャラの演技に関してはディズニーやドリームワークスに比べて今一つ。 ですが、戦闘シーンや森の中に築かれた妖精達の世界の幻想的なシーン等、描き込みは相当なもので、ダニー・エルフマンの音楽と共にずっしりとした大作感を味わえます。 先に輸入版3Dブルーレイを買ってあったのですが、劇場公開されるという事で封印していました。でも上映はごく限られた劇場で2D吹替え版しか選べないという状態。 それでもスクリーンで見られるだけマシです。前作が公開されていながら未だに公開の目処も立っていない『ヒックとドラゴン2』のように、日本未公開、ビデオスルー状態の作品が沢山あります。 海外アニメーションファンから見ると、世界中で大ヒットしているメジャー系大作アニメーションすらマトモに見られないこの国の映画興行事情は非常に貧しいとしか思えません。何がクールジャパンだか。[映画館(吹替)] 6点(2014-10-27 22:01:35)(良:1票) 《改行有》 583. ヘラクレス(2014) 《ネタバレ》 神話としての、神の子としてのヘラクレスではなくて、人間ヘラクレスの映画となっています。その時点でスーパーヒーローの話ではなくなっているので、その超人っぷりを期待していくとかなりズレたモノを見せられちゃう、っていう。 神話を創造した人々の話とでもいうのでしょうか、ここにはファンタジー的な要素は出てきません。ヘラクレスは実はただのマッチョな人? ゼウスの子や12の難行というのは作り話? ケルベロスは3匹の大きな犬、ケンタウルスは馬に乗った人々、一人で戦ったのではなくて仲間に支えられていた・・・それはそれで解釈としてはアリなのでしょうけれど、でも、ハーフゴッドの圧倒的パワー!みたいな世界ではないという状態にどうしても失望感を抱いてしまいます。 映画は噂によって神格化された傭兵ヘラクレスが、一国の騒乱に巻き込まれて苦闘する物語。知略と鍛錬こそが勝利への道、という流れは平凡です。大きな戦闘シーンの間にある悲劇や謀略のドラマは魅力に欠けて退屈です。辛うじて傭兵仲間に与えられたユーモラスな個性を楽しめますが、それもごくエッセンス程度のもの。 アクションシーンにしても地理、位置関係の表現がメチャクチャで、それ、ちゃんと地図作って撮った?ってツッコミ入れたくなる感じ。 結局はドウェインに尽きるのですね。彼の肉体がスクリーン上で躍動してナンボ。でも、だったらもっともっと彼が動いて良かったんじゃないかな。彼が苦悩する演技なんて見たところで、それ、そんなに重要か?って感じですし。 その短い尺も手伝って映像はともかく話にスケール感がないのが肩透かしな感じ。『300』などよりも小ぢんまりしちゃってて、それでもエンドロールだけは『300』っぽかったです(笑)[試写会(字幕)] 5点(2014-10-20 21:19:15)(良:1票) 《改行有》 584. 猿の惑星:新世紀(ライジング) 《ネタバレ》 これまで108本見た3D映画の中でもワースト10に入るレベルの3Dの意味の無さ。暗い画面が殆どなので3Dの効果が出てる映像がちっともないんですよね。枝が手前にあります、みたいなモノばかり。映画自体の真面目な作りゆえに3Dに合うハデな移動撮影なんて映像が無かったのでしょうけれど、じゃあ、なんでわざわざ3Dにしちゃったんだろ? そう、今回の『猿の惑星』はとても真面目な映画。人と猿に姿を借りて、対立する民族が戦争に至るまでの過程を描いてゆきます。悪いのは血や国や生まれではなくて、無理解による差別意識や猜疑心や恐怖心であり、内なる悪にこそ目を向けるべきである、と。 で、その真面目さゆえに映画としては今一つ面白くない気がしました。 なるべく公平に平等に描こうとしているのでしょうか、結果的にキャラクターの誰にも気持ちが向いてゆきません。人間側の主役は常に善き人間である事に努め、ブレがありません。お猿側の主役シーザーはいつもご機嫌ナナメで悩める王みたいな状態です。それぞれの側の悪は、悪としての役割を要所できっちり果たしますという状態であり、それぞれの主人公の息子は狭窄な視野からの脱却の象徴の担当者。 キャラクターがあまりにキッチリと真面目に役割設計されていて、そこからは類型的な、読みやすいドラマばかりが生まれてゆく状態ですから、刺激の強い娯楽映画を求めてしまうと辛いなぁ、と。 ゾンビ映画的な終末世界もテーマや物語のための設定であり、不謹慎な刺激的欲求を回避し続ける器用な映画という感じ。唯一、突入シーンでのコバが「圧倒的な殺戮者が見せる不謹慎な刺激」を醸しておりましたが。 あんまり真面目だと、じゃああの猿達は一体どこの誰の象徴よ?ってな感じになってきちゃいますよね。「人間が英語を話す猿に支配されてる!」ってところの恐さからは離れてきちゃったかな。つーか、この作品世界だとタイムスリップなんて出すのも憚れるんじゃないかな。[映画館(字幕)] 6点(2014-10-15 22:24:14)(良:1票) 《改行有》 585. ファインド・アウト 《ネタバレ》 「脚本家のアタマの限界が登場人物の知能程度の限界」っていうのをよーく実感させてくれる、登場人物全員バカ、みたいな映画でした。 あまりに無能な警察に対してヒロインは主に「とっさに嘘をつく」という技で対抗してゆきますが、もちろん、そこにサスペンスを盛り上げてゆくための巧妙なテクニックが存在している訳ではなく、その場限りの見せ場の消化行為が作用するだけ。 この、その場限りっぷりは多くの登場人物と多くのエピソードに及びます。意味ありげな、思わせぶりな、伏線のように思えながら、実はただそこに転がしといただけ、みたいなキャラとエピソードと映像がゴロゴロ。それらはミスリードと言うレベルの作用をしている訳ではありません。 誰かの視線のように思えるショットや被写体を遮蔽物でかなり限定的に捉えたショット、それらに意味があるのかと言えば、ただカッコだけ。何かありそうな雰囲気作りに対しては機能していても、話の内容に対しては、ちーとも機能していません。 何しろ最終的にはヒロインの言動は妄想か現実か?って事のみがミステリーとして機能していただけで、犯人の正体とか行動とか警察の動きとかは一切重要ではないという(辛うじてヒロインが犯人に近付いてゆくための行動とそれに絡むキャラはとても都合のいい形で存在しておりますが)。 あれやこれやと連想される映画は数あれど、この映画のオリジナルな面白さとしては激しい思い込みに支配されたヒロインの言動の数々くらいのもので、でもそれすらもアマンダ主演作の中にそういうの、あったよね、って考えると、ちょっとシンドかったなぁ。 でも結構な数の登場人物の殆どが意味なし、って点では斬新だったかも。[CS・衛星(吹替)] 4点(2014-10-14 22:15:40)(良:1票) 《改行有》 586. 蜩ノ記 《ネタバレ》 ストイックな武士の世界を描いておりますが、今の日本人にも通じるところがあって。 金貸しの播磨屋と通じて年貢の取り立てで農民を苦しめる藩の姿は、まるで銀行や大企業を優遇し増税で庶民を苦しめる今のこの国の政府みたい。 で、そんな世界で日本人としていかに生きるか、日本人の美徳とは何か、というのを見つめさせる映画。不満を漏らすだけだったり、悪行に走ったりするのではなく、侍の姿を通して偽りなき生の在り様を示しているように思いました。 真面目に切り取られた美しい映像と、演者の端正な所作から日本人としての美意識を刺激する作品でした。 ただ、切腹に至る背景がとても判りづらく。「ねえねえ、あのセリフによる断片の羅列から結局何があったのかキチンと理解できた?」ってみんなに訊いてみたいカンジ。 また、キッチリとした映像に比べて物語は散文的でエピソードの繋がりが弱く、そこに到達するまでの各人の気持ちの流れというものがドラマとして、うねりとして伝わりきって来ないもどかしさ、スクリーンとの微妙な距離感が最後までつきまといました。最初から切腹を受け入れているように見える戸田に対して、やや背景がうるさかった気もします。 いつの間にか日本人から失われているもの、それを意識させてくれる映画ではありますが、お客さんはお年寄りばかりな上に、そのお年寄り達の鑑賞マナーがあまりよろしくないと来た日にゃ、なんだか暗澹たる気持ちにもなります。 少なくとも誹謗中傷や差別で溢れかえったネットからは日本人の美徳なんてモノ、失われまくっておりますしねぇ。そんなもの、もはや懐古の中にしかないのかしら?[映画館(邦画)] 6点(2014-10-12 14:56:34)《改行有》 587. テロ,ライブ 《ネタバレ》 ラジオの生放送中に爆破予告電話を受けたキャスターの姿をほぼリアルタイムで追ってゆくサスペンス映画です。 ところどころ「ん?」って頭をヒネっちゃう箇所が無きにしもあらずですが(テレビのニュースキャスターへの返り咲きを目論むキャスターはラジオ放送を放り出してしまいますが、番組が継続した様子がありません)、とにかく刻一刻と状況が変化してゆく、そのピリピリとした異様な緊張感に釘付けになります。 テレビの生放送でテロリストを説得してエンターテインメントに仕立て上げようとするキャスターが、逆にどんどんと追い詰められてゆく、事の重大さがのしかかってくる、その焦燥感がダイレクトに伝わってきます。 ですが、クライマックスに至って映画は向いている方向を思いきり変えてしまいます。「あれれ?」って感じで。韓国映画お得意「情」の世界に突入する事で問題がすり替えられてしまうような、大きな違和感。 爆破テロを行った人物に同情した上で最終的にキャスターの取った行為、あそこには社会的な意志があるようで、その実、全く無いようで。 テロリストにも理由がある、テロリストを生む原因を作っているのは誰だ?って事で、自らも権力の元で翻弄されている状態を実感し、って、でも、あのニュースがなければ彼は絶望しなかった、あの選択はなかったと考えると、ただの弱者達の自滅と自己完結で閉じただけの物語になってしまうんですよね。やたらパーソナルな思考で閉じてしまっている状態。 アレをした事で、じゃあ彼は何を成し得たのだろうか?と。 「権力に屈しなければならなかった人々の悲劇の物語」とするにはあまりに事件の大きさと個人の意志が及ぶ範囲の小ささのバランスが取れておらず、不恰好な脚本の姿が見えるような感じがしました。 っていうか、犯人があの立場でどうやってあれだけの威力をもたらす爆薬を手に入れ、そしてあれだけの範囲に渡って誰にも気付かれずにそれらを仕掛けられたのか、全くもって謎なのですが。[映画館(字幕)] 6点(2014-09-30 23:29:55)(良:1票) 《改行有》 588. イン・ザ・ヒーロー 《ネタバレ》 スーツアクターに対する愛、終わってみると、そこだけな映画って気がしてしまって。 まず紋切型な展開の序盤、湿った感じで火が付くまでにやたら時間がかかります。日陰の身であるスーツアクターの悲哀と魅力とが描かれている、のはいいのですが、判りやすい悪役を設定する事で良い人々を描くのはかえってノッてゆかないんですよね。ダサさを冷めて見ちゃう。 中盤、悪役が改心して群像劇になってゆくと俄然面白くなってゆきます。それぞれのキャラが立って一人一人が魅力的な存在になって。で、このままクライマックスに向って一気に突っ走ってくれると良かったのですが・・・ 結婚式の夜のシーンが終わるとそこまでの流れがパタッと止まって主人公のパーソナルな映画になります。ここからがクライマックスという事なのですが、まータメるタメる。二度も延々スローモーションでタメるシーン入って映画のテンポめためた。 で、そこまでして勿体つけてタメた末のクライマックスが「それはネタか?」という。「ワンカット長回しでCG使わずに撮るアクションシーン」という設定を、カット割りまくりのCG使いまくりで描いてくれます。「そんな拘りは重要ではないんだよ」って言いたいのならば、それだけ説得力のある画が必要だと思うのですが、そこまでのものは、いや、それ以前の戦隊モノのアクションシーンのキメポーズまで含めて、無かったように思えるんですよね。 第一「ハリウッド映画」の描写がめちゃくちゃ。死亡する危険性の高いスタントを無理矢理やらせるようなハリウッド映画がどこにありますか? アクションシーンのワンカット長回しに固執するハリウッド監督がどこにいますか? アクションシーンを長回ししたって『幕末高校生』のクライマックスみたいなアレな事になるだけですがな。「ハリウッドに日本のアクションの意地を見せてやる」って言ったって、そのハリウッドがニセモノ丸出しじゃあ情けなくないっすか? 登場人物はみんな魅力的だったのですから(いや、及川ミッチーに与えられたあまりに愛のない悪役っぷりは酷かったですが)、あまり無理をして虚勢張ってデカいホラ話にするんじゃなくて、もう少し身近な親しみのある範囲での話でまとめた方が良かったんじゃないかなぁ。[映画館(邦画)] 5点(2014-09-30 22:51:39)《改行有》 589. るろうに剣心 伝説の最期編 《ネタバレ》 前作からも、今作の中でも、エピソードの繋がりが悪いと思いました。 前作ラストのキーとなるエピソードが今作の中ではあまりに軽く扱われているのはどうした事でしょう? 剣心とは別段関係なく助けられてました、特に劇的な再会シーンがある訳ではなく、生きてるってセリフがあっただけで済んでしまいます、そんな軽さ。 大体、志々雄の野望は今回一体何処に行ってしまったのでしょう? 日本を支配する、そのために船出!って漕ぎ出したのはいいけれど、そのまま海上に停泊して一度砲撃しただけで、後は特に何もせず。政府が行動を起こすのを黙って見てるだけ。明らかに見えるところに大砲設置されてみすみす撃たれる事になる訳ですが。 海岸からえっほえっほ小舟漕いで乗り込んでくる剣心達ご一同様に対しても策がある訳でもなくみすみす船に上がらせてしまいます。これまた丸見えなのに。 志々雄達は結局滅ぼして貰えるのを待っていた、殺して欲しかったって事なんでしょうかねぇ? 悪役キャラ達の過去のエピソードもただセリフで説明されるだけで全くドラマがありません。ならばそんなもん無い方がよっぽどマシです。 で、だけど剣劇アクションは相変わらずガシガシとパワフルで魅せてくれます。ああいう存分に盛り込まれたキレのいいアクションを日本映画で見られるっていうのはいい事だと思いますよ。 でも、なんつーか、『プロジェクトA』の影響かなり受けてるよね・・・[映画館(邦画)] 6点(2014-09-30 22:13:48)(良:1票) 《改行有》 590. STAND BY ME ドラえもん 《ネタバレ》 ちゃんとこれ一作だけで『ドラえもん』として成立させられてない感じがします。従来の『ドラえもん』のイメージに頼っちゃってるでしょ?って。 『さよならドラえもん』をやるならば、そこまでののび太とドラえもんとのエピソードの積み重ねが必要な筈ですが、物語は主にのび太としずかちゃんのエピソードが中心になっていて、ドラえもんはサポートに回ってばかり。ひみつ道具による楽しい日々もダイジェスト状態でサラリと描かれる程度ですし。 なので、全体的に軽い、食い足らない感じの『ドラえもん』。 3Dは飛び出し方向に振ってあってトリッキーな3Dを楽しめますが、3DCGの技術はアメリカに比べたらまだまだ。それでもやっと「呼吸してる、かな?」くらいの表現には辿り着きましたか。アメリカのCGアニメをしっかと見てると判りますが、今はCGキャラ、普通に呼吸してますからね。モーションキャプチャー使ってれば呼吸も記録されるだろ、って? いや、今この『ドラえもん』も含めてモーションキャプチャー使ってるCGアニメ、あんまりないですよ。 でも、山崎貴監督らしい、最大公約数的『ドラえもん』でもあって、幅広い層にアピールできている作品でもあると思います。1つ1つのエピソードに過剰な重さを置いていないのも、あんまり子供にヘヴィなモノ見せたって仕方ないでしょ、っていう意識があるのでしょうし。 これまでのフィルモグラフィーを見てもこれと言って色の無い映画ばっかり撮ってる感じがしないでもないですが、『永遠のゼロ』と今作とで既に合わせて150億円を越える興行収入を上げている、今の時代の日本で最も観客を動員できる監督、その色の無さの中にこそ求められるモノがあるのではないでしょうかねぇ? 逆に言うと、他の監督には、観客から求められていない余計な色ってのがあるんじゃないのかなぁ。 で、唯一2Dアニメ版では全く感じなかった、この映画ならではの色。しずかちゃんがいいオンナ(笑)[映画館(邦画)] 6点(2014-09-15 23:01:48)《改行有》 591. 怪しい彼女(2014) 《ネタバレ》 「歌の持つ説得力」という点においてとても正しいなあ、って。 映画自体はベタな韓国映画です。よくある毎度の笑いと泣かせパターンな韓国映画。で、これはそれが上手い方に転んでるタイプ。 シム・ウンギョンはちっともあのイヤなババアに見えません。あのババアと全然イメージが繋がらないの。それは欠点かもしれないけれど、でも「若返ってジェネレーションギャップに苦しむキャラ」としては見事に成立していて。 『サニー 永遠の仲間たち』で見せたヤバいレベルのコメディ演技と美しい表情が更にパワーアップして本当に魅力的。 それに加えてあの歌ですよ。ぐっと惹き付けて彼女に心を寄せてゆくのに十分な歌の力。 物語はあくまでベタなので、後半の泣かせ展開に至る道なんかは王道過ぎ!って感じではありますが(何度もワザとスカすように見せながら結局そこに行くっていうややこしいテを使ってはおりますが)、遠い日の回想と現在とが同じ顔で直結する事でダイレクトに生み出されるドラマの感動的な事ったら。思わず泣かされますな。 老いの辛さ、切なさもあれば、そこに至るまでに重ねたかけがえのないものもあって、っていう、テーマも王道というかベタというか、ですが、シム・ウンギョンの存在によってキラッキラに輝くまばゆい映画となっていて韓国映画の良さを堪能できる一編でした。[映画館(字幕)] 8点(2014-09-15 22:40:36)《改行有》 592. フライト・ゲーム 《ネタバレ》 予告編や冒頭のシークエンスから何やらニオイがジョディ・フォスターの飛行機映画やデンゼル・ワシントンの飛行機映画を思い出しちゃってイヤな予感がしたのですが、中身はちゃんとリーアム兄さんのゴツゴツした映画で良かった(笑) 犯人は誰だ?ってミステリー部分は最後まで見ると「ん?」って首を傾げちゃう感じもありますが、クライマックスに至るまでのヒリヒリとしたサスペンスは上々。 主人公が真犯人扱いされてゆく展開も物語の足を引っ張ってテンポや気持ち良さを殺してしまうレベルまではいかずに良かった良かった。このゴニョゴニョした部分が大きくなればなるほど、イライラと気持ちよろしくないストレスが溜まる事になっちゃいますからねぇ。 乗客や乗員のリアクションも不快になる前にむしろ気持ちいい方向に持っていってくれますし。 画面内にメール文字を出すのは『子猫をお願い』や『電車男』を思い出して「ハリウッドは今更それやってるか(笑)」と思いましたけど、映画をテンポ良く運ぶには良いテですしね。 往年のエアポートシリーズを思わせる航空パニック映画の匂いも漂わせて堂々としていて、デカくて強いけど不器用なリーアム兄さんの正統な系譜に刻まれる娯楽作品でした。[映画館(字幕)] 8点(2014-09-15 22:12:46)《改行有》 593. 舞妓はレディ 《ネタバレ》 年に1~2回、京都旅行にでかけて、老後は京都に住みたい(宝くじでも当たればね・・・)と思っている私にとって(両親とも代々目黒なバリバリの東京モンですけどね)、京都は憧れの世界。 その京都の伝統、文化、そこに生きる人を伝えている部分はとても良かったと思います。絵葉書的な定番の風景も出てきますが、舞妓の世界から見た京都の生活というのがとても興味深くて。 一方、今年は『アナと雪の女王』19回見たりとか宝塚ハマって8回見たりとか(今年あとプラス3回予定)、ミュージカルづいておりますが、この映画、ミュージカルってモノとしてはダメダメな感じなんですよね。 歌や踊りにちゃんと命が通ってないの。なんていうか、とってもハンパなモノを見せられてるなぁ、って感じで。普通に演技している部分はいいのに、なんでミュージカルシーンになると途端に画がダラけてるようなふざけてるような、いい加減なモノになっちゃうんでしょ? 歌で心に響いたのって大原櫻子(このコは『カノジョは嘘を愛しすぎてる』でも聴かせてくれましたねぇ)のところだけ。主役のコも上手いけれども踊りや表情は全然な感じ。ベテラン俳優の皆様に至っては、見ていてキビシイとしか。 『Shall we ダンス?』(宝塚版も見させて頂きました)のダンス教室メンバーが揃って出演していて、ラストにはあの二人が復活したりもしていますが、そういう内輪ウケ的ノリが必ずしも良い方向に機能していたとは言い難い感じで。特に監督の奥さんのミュージカル部分、あそこは丸々要らなかったんじゃないかなぁ。その分、尺を削って欲しかった感じが。 京の伝統の大切さについて言及している映画が、ミュージカル映画とか歌謡映画とかの伝統を軽視しているように見えてしまうのは問題だなぁ。[映画館(邦画)] 6点(2014-09-14 20:22:11)《改行有》 594. ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 《ネタバレ》 予告編の印象から、もっとバカっぽい映画かと思ってたらとても熱く燃える映画でした。 まるで統一感のない魑魅魍魎状態のキャラ達が支離滅裂、ドタバタなところから銀河を守るって共通の目的でぐわーっとまとまってゆく、その熱さ。 アライグマとか木人間とか、ネタにしか思えないじゃないですか。だけどこれがちゃんと熱いの、感動させるの。 主人公にしても、冒頭の母に対する想いがちゃんとクライマックスからラストで回収されて、カセットテープに収録された全編を彩る懐メロの意味にも感動して。 VFXを駆使した燃えるシチュエーションの戦闘シーンもたっぷり、飽きさせるようなヘタな脇道もなく、混ざり物だらけのように見えながらとても純度の高い娯楽映画なのでした。 こういう、作ってる人間が「こういうのがやりたいんだ!」っていうのがハッキリ見えてくる映画はいいなあ。 【追記】4DX版見てきました。やっぱりドッグファイトとの馴染みは最高です。画面に合わせて前後左右にガンガン揺さぶられる状態は臨場感抜群で突入シーンでの盛り上がりがこれ以上無いってくらいな高揚感。一方で格闘シーンなんかは微妙かも。三人称視点のもの1つ1つに衝撃を与えてる状態ってワリと不自然。水や風はそこそこ、光や煙の演出は蛇足っぽく、シャボン玉は上手く画面に合って。でも、何と言っても「泣かせる揺らし」があるのがこの映画での4DXの最大の特徴かも。『スター・ツアーズ』にだって「泣かせる揺らし」ありませんものね。[映画館(吹替)] 10点(2014-09-14 19:46:45)(良:1票) 《改行有》 595. ルパン三世(2014) 《ネタバレ》 『ルパン三世』のイメージって言ったって、原作、テレビシリーズ、映画、テレビスペシャル、それぞれ作品ごとにかなり異なる訳で(つーか同じシリーズの中だって前期と後期、一部エピソードで全然違うとかあって)、ルパンはこうでなくちゃ!なんてのは結局それぞれの好みのルパンでしかないですよね。私だって世間的には評価の高い『カリオストロの城』の優しいお顔のベタベタとしたロリコンな正義の味方のルパンじゃ困っちゃうわけです。 で、主要キャストは良かったと思います。それって単なるコスプレだろ、みたいな状態ではなくて、それぞれにその人なりのキャラクター像を作り上げていた感じで。浅野忠信のたどたどしい喋り方は厳しかったですが。 問題は物語がちっとも面白くないって事と、アクションシーンがダメダメだって事。いや北村龍平からアクション取ったら何も残らないんじゃないの?って感じですが、細かく切りすぎでバカ臭くなってたり、アクションの起きている位置関係が不明だったり、繋ぎ方がおかしかったりで酷いです。 カーチェイスにしても単発のディティールばかりで繋いでる感じで全く流れになっておらず、それをカーチェイスシーンと呼べるのかどうかすら怪しいレベル。 で、物語は余計なキャラを絡ませ過ぎで。ルパン一味と銭形と悪役、それだけではダメなんですかねぇ。『スニーカーズ』みたいなグループものになっていて、そのオリジナルなキャラがつまんないです。 あと、黒木メイサの不二子は悪くないんですが、まるでお色気不足。これは彼女のせいでなくて、演出とかカメラとかコスチュームとかのせい。なんでそういうところにはフェティッシュなこだわりを見せられないんですかねぇ。 全編にアジアンテイストを盛り込んで国際色豊か、みたいな映画にしたかったようにも思えるのですが、なんか恥ずかしいノリになっちゃってるんですよね。結構ダサめ。 せっかくメインキャストの面々は頑張っているのですから、もっと彼らを中心にカッコよく見せてあげられなかったのかなぁ。残念。[映画館(邦画)] 4点(2014-09-01 21:06:26)《改行有》 596. イントゥ・ザ・ストーム 《ネタバレ》 ディザスター映画ってのは悪い人、間違った判断をした人、利己的な人が罰を食らってこそなんですよね。その点でまずダメ。 あのバカ二人はさっさと消えて欲しいと思ってたら、ラストに「がくーん」って状態だし、卒業式を強行したり避難に反対した校長だって、あれ、普通は「ぎゃあああああ」とか悲鳴を残して消えていいハズですよ。どうも最近はセオリーを破っちゃう映画が多くていけねえ。 さて、竜巻映画ってのは怪獣映画と似ていて、登場人物がソレと延々対面し続ける事に無理があるんですよね。なので追いかける立場の人間を登場させる。このあたりは『ツイスター』と一緒。で、追いかける以上は危機に陥っても自業自得、サスペンスにも限界がある。『ゴジラ2014』同様、脚本にそこら辺のジレンマがよく表れてるなぁ、と苦笑。家族を取材連中に絡ませる事でドラマを多層的に描いてはおりますが、その家族パートはやっぱり無理矢理になっちゃってる感じで。 コレにしろ『ゴジラ2014』にしろ、VFXこそそれなりに立派だけどドラマ部分は『シャークトパス』だの『エアポート20〇〇』だの『アルマゲドン20〇〇』みたいなビデオスルー映画みたいな安っぽさですねえ。 で、そのVFXも予算のせいか、起承転結が無い画が多いのが残念なんですよね。「ジャンボ機が舞ってまーす」って画はクドく見せても、じゃあ、それがどう舞い上げられて、そしてどう落ちるか、なんてのはちょっと見せるの無理なのね、みたいな。 なんか予告編はジミな印象でしたが、本編見ても「ああ、やっぱりこの程度なのね」って感じの映画でした。[映画館(字幕)] 5点(2014-08-31 20:05:01)《改行有》 597. LUCY ルーシー 《ネタバレ》 ツイッターのTLに並ぶ不評の嵐に「あー、ベッソンたらまたやっちゃったのねー」って思いつつ見に行きましたが、?あれ?面白いですよ?これ。 テレンス・マリックが3時間くらいかけて語りそうなネタを、ベッソンが優しく、判りやすく、アクション交えて90分足らずで伝えてます、みたいな映画。 冒頭、犯罪サスペンス映画にいきなり唐突に『アース』とか『ライフ いのちをつなぐ物語』とかのノリが入り込んできまーす、って状態は苦笑せざるを得えませんが。むしろそっちをやりたいんか?って。で、最後まで見ると結局はそっちがやりたかったようで。 ルーシーが復讐やら何やら、世俗に興味を無くしてしまった時点で映画としてはコワレます。犯罪サスペンス映画のプロットが進行している中で肝心の主人公がそのプロットとは全く別の方向を見ているという、もう映画と主人公との対話ができていない状態。 なんで脳がいっぱい使えると超能力者になっちゃうの?みたいなツッコミどころ満載な部分は、実は大して重要ではありません。人を越えたところから人を見つめる映画というところがポイントで。 宇宙の誕生から生命の誕生、営みを見つめて、そしてその時の流れの中に人間が存在する事の意味を捉えようという映画(モーガン・フリーマンが大体の要点は語っちゃってますが)。 出会って間もない男に騙されて犯罪の片棒を担がされちゃうような頭の悪そうなトロいお嬢さんが神様になるまでのお話。その、万物のシステムに触れてゆくスカヨハに神々しい魅力を感じられたので、私としてはいい映画。[映画館(字幕)] 8点(2014-08-31 14:56:14)《改行有》 598. her 世界でひとつの彼女 《ネタバレ》 映画はあまり「OSが人格を持って恋愛感情に発展して」って現象自体にコダワリを見せている訳ではなくて。むしろ普通の恋愛の過程を描いているような感じ。 その「言葉」が紡いでゆく愛の物語は心地良いです。言葉が五感を形作ってゆく、擬似的な行為がやがて現実的な感覚へと昇華されてゆく、そこに描かれる流れは特異でありながらドラマチック。 ですが、題材的には『ラースと、その彼女』や『ルビー・スパークス』に類似しつつ、それらを越えてゆく感じはしないんですよね。人間個人に寄りそうよりも興味はむしろ現象としての恋愛にあるような感じ。「心」を「頭」で捉えてるような感じに思えてしまうのはスパイク・ジョーンズらしくて、私はちょっと苦手。 『マルコビッチの穴』にも通じる、人間を超越した存在となって旅立ってゆくっていうのは死の象徴のようでもあるし、でもスパイク・ジョーンズの願望の表れなのかな? アメリカのお子様向けテレビアニメ『フィニアスとファーブ』でもアリが進化して人類を超越して旅立つって話がありましたが、わりとSF的にはポピュラーなのかしら?[映画館(字幕)] 6点(2014-08-24 22:13:10)(良:1票) 《改行有》 599. 宇宙兄弟#0 《ネタバレ》 原作未読、テレビシリーズは放映時間が変更になる前まで、実写映画版は見てます、という状態。 これ一作のみの映画として見ると色々とキツいかな。後にどんなドラマが待ち構えているか知っていてこそ楽しめる部分が多いように思います。 既知である過去部分の映像化という事で物語的な冒険はできません。キャラに思考や行動の大きな飛躍をさせる訳にもいきません。 ゆえに本筋上に存在しているような日々人のNASAでのドラマは予想の範囲の中に収まっている感じ。 一方、左遷という脇道を進む六太のドラマはキャラも活かされ六太の成長が描かれて楽しめました。 問題は作画。雑です。映画クオリティに達していません。 傾けたグラスの中の梅酒の梅が全くグラス内を移動しないというような細かい部分はともかくとして、ブライアンが月面を歩くシーンなどはとても重要なのですから、そこはちゃんと描いてくれないと。 月面を人が移動するのはどんな感じなのかは実際の映像でよく知っているわけですよね。その6分の1の重力の世界をブライアンがどう踏みしめたのか、どう歩んだのか、それを雑なぴょこぴょこしたアニメートで描いちゃうのってかなり残念。 地球での重力足らない感じのふわついたアニメート共々、その表現の差を求めるのは酷なんでしょうかねぇ。この題材ならばそこはとても重要になってくると思うのですが。 キャラや展開の説明不足、投げっぱなしになるエピソードの数々など、ファン向け映画といった風情で、知識あればこその感動はありますが、一見さんだとキツいですか。 個人的には雑な作画のアニメよりはむしろ実写版の小栗旬と岡田将生で見たかったかも。[映画館(邦画)] 6点(2014-08-24 21:37:31)(良:1票) 《改行有》 600. モンスター・ホテル 《ネタバレ》 メイヴィスが本当に可愛いのね。だからとーちゃんの気苦労もよーく判ります。 話の殆どはホテルの中だけで展開する、娘をホテルの外に出したくない、ずっと傍に置いておきたいヴァンパイアの話で、そこにはかつて妻を人間に殺された過去があり、モンスターという個性は世界から隔絶・秘匿された存在でなければならない、っていう背景があって。 作品には娘の自立心を尊重しなければならないという主張が存在していて。『アナと雪の女王』より先行して同じネタを扱ってますね。 でも、その肝心のメイヴィスが惚れてしまう人間の男がどうにもこうにもただのバカで、アレに惚れちゃうあたりのセンスに甚だ疑問を抱いてしまった訳で、メイヴィスって人格(ヴァンパイア格?)そのものの評価が下がってしまうレベルなんですが、これは後に英語版をブルーレイで見た時点で理解できたっていうか、英語版はそんなにバカじゃないです。日本語吹替版のオリラジ藤森、アイツがあの芸風そのまんまの喋りで吹き替えやがるから途轍もなくバカなわけで。 それと正直なところ、芸達者な山寺宏一の声も洋モノアニメで聴き過ぎて(『アラジン』のジーニーとか『シュレック』のドンキーとか『アイス・エイジ』のマニーとか)オリジナルな個性が消えてしまっています。 なので英語版ならば9点です。英語版はメイヴィスのキモチがきちんと見えてきますから。 現代の人間達が過去と違ってモンスターに対してとても好意的です、っていう設定は都合が良過ぎる感じがしますが、差別の無い世界への希望を描いていると解釈したいと思います。子供達に、その無限の可能性を指し示している映画なわけですから。[映画館(吹替)] 7点(2014-08-14 23:05:28)(良:3票) 《改行有》
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