みんなのシネマレビュー |
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581. 死霊館 エンフィールド事件 《ネタバレ》 『死霊館』の感想でも書きましたが、“実話もの”は個人的にはマイナス要素(可能性の幅が狭まるので)。それでも本格派オカルトホラーとして堅実なつくりで好印象です。やはり脚本は一級品でしょう。悪魔に操られていた幽霊からのメッセージの件は痺れました。後味の悪くないホラーというのも逆に新しいかもしれません。信頼できるシリーズ映画との認識です。[DVD(字幕)] 7点(2017-06-20 21:52:53) 582. 鬼談百景 《ネタバレ》 『残穢』の“私”こと、ミステリー作家(竹内結子)の元に届けられた、一般人からの恐怖体験談・短編集。「こんな手紙が届いた」がお決まりのイントロダクション。6人の監督がそれぞれのスタイルで小野不由美ホラーのテイストを再現するという趣向です。残穢も勿論ですが、小野女史の描くホラーの魅力は、淡々とした語り口調の中にあります。気づくと周りは闇だった。そんな静かな怖さ。空手でいうなら、現代主流のフルコンタクトではなく寸止め伝統派といったところでしょうか。10作品の中、出色の一作は『どろぼう』かと。キーアイテム“無花果”の使い方、小橋めぐみ(なんとまあ、綺麗にお歳を召したことでしょう)の怪演。観客の想像力を利用した脚本も好みです。[DVD(邦画)] 6点(2017-06-15 19:50:59) 583. 貞子vs伽椰子 《ネタバレ》 所謂ドリームマッチもの(?)というジャンルは昔からありますよね。異なる世界(観)のヒーロー対決。私的には推理小説の『ルパン対ホームズ』が真っ先に思いつきますが、映画界では昨今大流行中のカテゴリーです。『フレディVSジェイソン』『エイリアンVSプレデター』『ルパンⅢ世VS名探偵コナン』『仮面ライダー×スーパー戦隊』。最近だとスーパーマンとバットマンが戦っていましたね。同じ“事務所内”ならば、仮にパワーバランスに難ありでも、さして違和感は無いのですが、本作については、土俵は同じでも所属団体は別。武藤VS高田クラスの夢の大一番と考えます。個人的には生物学的アプローチで呪い定義した小説『リング』の大ファンなので、圧倒的な貞子派。もっとも映画のリングシリーズは最早小説とは全くの別物ゆえ、特にどちらを応援するでもなく(?)鑑賞いたしました(そりゃそうだ)。正直な感想を申しますと、「想像以上に良かった!ただしラストを除いては」ということになります。発注元の無茶ブリによく応えていたなと。毒をもって毒を制す。なるほど、発想はグッド。イケメン霊媒師&盲目少女コンビも、(既視感ある組み合わせですが)イイ感じ。ちゃんとキャラが立っていました。山本美月ちゃんも可愛かったですし。ですから、しっかりオチさえ付けてもらえれば、高得点を進呈したかったのです。ところがこの結末では○は付けられません。あれですか?ドラゴンボールでいうところのフュージョンってコトですか。んなアホな。両団体のエース対決を両者リングアウトの有耶無耶裁定にしなかったのは評価しますが、試合中に打ち解けてタッグを組むなんてファンが許しませんよ。どうせなら、続編では盲目少女が将軍KYワカマツとして、スーパー呪いマシン1号、2号、3号(坊主)を引き連れて暴れまわるなんて展開にしたらどうですか。藤波に「お前貞子だろ」と言わせたら土下座して10点差し上げます。[CS・衛星(邦画)] 3点(2017-06-10 19:22:06)(笑:1票) 584. 殿、利息でござる! 《ネタバレ》 現役最強クラスの喜劇役者・阿部サダヲが主演で、先行ポスターの図柄は、阿部の頭に銭のちょんまげ。こりゃどうしたって、軽いタッチの(例えるなら『超高速参勤交代』のような)コメディを想像してしまいます。ところがどっこい。これがしっかりシリアス、がっちり人情話。正直想像していたものとは違いました。しかしこれはこれで、面白かったと思います。本作で一番興味深かった点は、先代・浅野屋甚内の“秘話”が事態を動かす突破口となり得た点。これ“結果が全て”と言ってもいい現代の価値観では在り得ない話。結果よりも経過を尊ぶ、日本人本来の美徳は、心地よいものでありました。これが実話とは嬉しい限り。「昔は良かった」とは言いませんが、「良いところもあった」のは間違いないでしょう。[DVD(邦画)] 7点(2017-06-05 20:46:32) 585. インシディアス 第2章 《ネタバレ》 ♪過去と未来とあの世とこの世、行ったり来たり~(byタイ○ボカン)な続編。いやはや、今回もしっかりオカルト、それでいてミステリー。なかなかの見応えでありました。前作の足りない部分を補うというよりは(そもそも前作単独でちゃんと成立しています)、味変というか、薬味足しというか、シリーズ作品全体としてぐっと味わいが増す満足度の高い内容でした。このシリーズ構成はお見事だと思います。バスターズコンビを(控えめながらも)コメディリリーフに仕立てた点、さらにサイコロに糸電話と、小物の使い方も実に巧みで感心しました。この2作で完璧だと思うので、あまり余計な続編は観たくないというのが偽らざる本音。でも、ひょっとしてコチラの想像を超えてくれるのではないかという期待もあります。うーん痛し痒し。現時点では『SAW』シリーズを完全に上回る完成度と考えます。[DVD(吹替)] 8点(2017-05-30 21:15:41)(良:2票) 586. クリーピー 偽りの隣人 《ネタバレ》 『これがあんたの落とし穴だ』高倉が西野(仮)に吐き捨てた最後の言葉は、鈍痛を伴い胸に響きました。そう、それは高倉自身に向けられた台詞でもあったことでしょう。犯罪心理学を学んでいたが故の慢心が、墓穴を掘る形となった1年前の出来事。そして今一度、最愛の妻をも巻き込んで同じ轍を踏んでしまった愚かな自分。“サイコパスとはこういうもの”そんな決めつけ、思い込みが、最も危険だというのに。講義で学生に「参考にならない」そう自ら口にしていたはずなのに。医者の不養生。幸いにも(?)、西野(仮)もまた今までの獲物と高倉を“同質”と“決めつけた”おかげで、主人公は命拾いしたワケですが。数多く過ちを犯した者が勝利した結末とも言えます。夫の胸で号哭する妻の声は、魔界から現世に戻ってきた証。それはまるで産み落とされた赤子の鳴き声のようでもありました。漆黒の中の救い、と受け取りたいと思います。黒沢清監督の映画にしては、筋立ては明快。お馴染み難解ミステリーを予想していた身としては若干物足りなくも。ただし、監督のもう一つの顔“ホラー上手”の面は、如何なくなく発揮されていました。映像面では、光と影の使い方、画における間の取り方。極め付けは“スタジオ撮り乗用車シーン”でしょうか。ツクリモノ丸出しの感じが、異世界を進む西野(仮)ファミリーの地獄道をよく表していたと思います。また、脚本面では、早紀の身の上に起きた6年前の事象を、西野娘の姿を通じて間接的に知らしめる手法が技ありで、得も言われぬ恐怖と不快感を創出していたと思います。黒沢ホラー、ここに在り、です。今回のMVPは勿論香川照之。怪演でしたが、同じくらい西島の体温低い単調な演技も(氏の平常運転ですが)見事だったと思います。願わくば、手品(人心掌握)のタネは、クスリではなく純粋に西野(仮)の人間力であって欲しかったところです。[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-05-25 18:29:46)(良:1票) 587. インシディアス 《ネタバレ》 観見終えてみれば、既視感のある設定にストーリーだったなあと。オチも含めて。でも悪い印象はありません。それだけ王道・正統派のオカルトホラーという事でしょう。それにしても主役の男優さん、同じくワン監督の『死霊館』シリーズでも主役ですよね。正直こんがらがります。多分、外国の方からしたら『本能寺ホテル』や『プリンセス・トヨトミ』を観ても同じ印象なんじゃないでしょうか。本作単独でもちゃんと成立していると思いますが、レビューを拝見したところ続編で謎解きがあったりするんですね。これは楽しみです。[DVD(吹替)] 6点(2017-05-20 20:53:27) 588. パージ:アナーキー 《ネタバレ》 暗視ゴーグルのアドバンテージだけで、防弾チョッキひとつ身にまとわず「狩り」を愉しむ富裕層って、どんだけアホやねんと。絶体絶命の大ピンチに正義の味方が颯爽と現れて助かるなんて、そんな脚本よく通したなと。基本ウソだらけの映画ですが、一番の大嘘は人が人を好んで殺すという点と考えます。人が殺人を嫌うのは、殺したくないし、殺されたくないから。種の衰退に加担する行為を忌み嫌うのは自然の摂理です。それは富裕層とて同じこと。机上の理論は、悪意に満ちた偏見でもありました。貧困層が殺される側に甘んじる設定にしても同じこと。全ての犯罪が罪に問われない“人生一発逆転タイム”にただ逃げ隠れするだけなんて、ご冗談でしょう。[DVD(吹替)] 5点(2017-05-15 22:25:35)(良:3票) 589. キングコング: 髑髏島の巨神 《ネタバレ》 大味なバカ映画なんだろうなと高をくくっていたところ、意外にもシニカルかつポリティカルなメッセージが込められていたことに驚きました。“本当は戦う必要のない相手がどうして敵なのか”。頭空っぽにしてコングの大暴れが観られればいいと思っていたので、少々面食らった次第です。とはいえ基本は、巨大化け物バトル・ロワイアル。コングだけでなく、”ひたすらでかい”水牛、蜘蛛、怪鳥、そしてトカゲも頂戴できて大満足でした。劇場大スクリーンで迫力を楽しまなきゃ損の娯楽作品で間違いありません。PJ版キングコングから早12年ですか。CGのクオリティに関しては、もう文句のつけようのない極上の仕上がりで、本音を言えばストーリーなどどっちでもいいのですけれども。エンドクレジット後のオマケは、和製怪獣映画に対するオマージュという捉え方でよろしいんですよね。はい、大変面白かったです。[映画館(字幕)] 8点(2017-05-10 21:42:52) 590. 夜は短し歩けよ乙女 《ネタバレ》 一歩、いや半歩間違えば、“独りよがりなセンスの押しつけ”あるいは“分かるヒトにだけ分かるゲージツ作品”になりかねない本作。引き合いに出すのは適切ではないかもしれませんが、『ナイスの森』的とでも言いましょうか。しかしながら、その半歩を決して外さず、確実に一般大衆向け『娯楽作品』として成立しているのは、物語の幹を為すのがロマンスシネマの大正義“純愛”だからと考えます。先輩然り、パンツ総番長然り、紀子さん然り。みんな真剣なんです。間違った方向に。そう、誰もが経験した(または現在進行形で体験している)青春時代にありがちな、無様で、泥臭く、気恥ずかしい、完全にどうかしている心理状態を、アーティスティックにデフォルメしつつも、的確に表現していたと思います。詭弁踊り?韋駄天炬燵?時間軸無視?青春の“迷走感”に相通じる素晴らしき“ワケワカラナサ”。正直に告白しますと、20年以上昔、主人公とほぼ同じ年齢でリアルに“ナカメ作戦”を実行した私としましては、本作を否定するわけにはいかないのであります(もっとも私の場合は告白撃沈。未だに瘡蓋が取れません泣)。「これも何かのご縁」嗚呼なんと素敵な響きでしょうか。私も“私の黒髪の乙女”に言われたかったなと。おじさん、ニッコリ笑顔で泣けてしまいました。湯浅氏の傑作処女作『マインド・ゲーム』から実に13年ぶりの劇場監督2作目は、湯浅節のエッセンス健在に、見事に洗練された大人の映画に仕上がっておりました。大拍手を送りたいです(出張ついでに池袋にてレイトショー鑑賞。うん、やっぱり本作はレイトショーで見なきゃね)。[映画館(邦画)] 9点(2017-05-05 21:27:07) 591. メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮 《ネタバレ》 巨大迷路攻略という超強力なギミックを、1作目で早くも放棄してしまったシリーズ映画は、第2作目にして“世紀末ゾンビサバイバル”というお馴染みの設定に移行した模様です。もっともゾンビ要素はあくまで添え物。物語のアイデンティティは、ゾンビ治癒研究機関?WCKDとの戦いにありました。人類滅亡の危機に同種内で揉めている場合か!とも思いますが、モルモット側にしてみれば、研究者の狂った実験に付き合う道理もなく、この流れは必然と考えます。まあ、基本設定が脆弱なのでドラマをシリアスに捉える必要もありませんが。それにしても『ハンガー・ゲーム』といい、本作といい、最初にデカい花火を上げるやり方って流行っているんですかね。粗品無料プレゼントでお客を集めて、最終的に布団を買わせるみたいな。特段面白いと思っていない私も続編を観ているワケですから、まんまと欲しくもない布団を買わされている気分です。[DVD(吹替)] 5点(2017-04-30 21:43:37)(良:1票) 592. メイズ・ランナー 《ネタバレ》 予告編だけなら結構面白そうなんです。でも見進めていく程に、状況が判明していく程に、最初に在ったワクワク感がどんどん目減りしてゆきます。これはツライ。同類設定を有する『CUBE』と比べてみると、その差は歴然。マジックの種明かしは厳禁だという事がよく分かります。さて、本作は3部作とのこと。正確な評価は続編を観てからにさせて頂きたいのですが、期待感は『ハンガー・ゲーム』並みといったところでしょうか。[DVD(吹替)] 5点(2017-04-25 22:46:57)(良:1票) 593. ターミネーター:新起動/ジェニシス 《ネタバレ》 どうしてもシュワルツェネガーを使って続編を作りたかった苦心の跡が垣間見える『ターミネーター』シリーズ最新作。表面の体組織は人間と同じだから見た目は老いるのに、鉄骨むき出しになった腕はちゃんと再生される摩訶不思議。そのテクノロジーはT-800から取得したの?1984年製タイムマシーン。正直無理筋と思える設定が散見されます。極め付けはT-800の“アップデート”でしょうか。『ターミネーター』はタイムパラドックスを扱った映画としては、実にシンプルで分かり易い脚本が魅力だっただけに、この改変は個人的には残念でした。さて、聞くところによると、本作は新3部作の第1作目だそう。リブートだか、新解釈だか知りませんが、お手軽に過去の遺産を食い潰す制作手法は(本シリーズに限らず)あまり感心しません。[DVD(吹替)] 6点(2017-04-20 22:24:03)(良:1票) 594. 超高速!参勤交代 《ネタバレ》 これは懐かしの『桃太郎侍』や『暴れん坊将軍』、『水戸黄門』路線の娯楽時代劇。細かい時代考証は言いっこなしヨの世界観。久しくエンターテイメント時代劇から遠ざかっていたため逆に新鮮で、大変楽しめました。特に『情けは人の為ならず』な最期の大名行列にはグッときましたね。ただ、個人的にはもっとバラエティ豊かにクセ者役者を揃えても良かったかなあと。一番アクの強いキャラが陣内孝則の松平信祝では、少々弱いです。上地雄輔が生きていたのには単純にビックリしました。[DVD(邦画)] 6点(2017-04-15 21:26:19) 595. ヘイトフル・エイト 《ネタバレ》 本作を楽しめるか(受け入れられるか)の試金石は、“床下からの狙撃”シーンと考えます。ミステリー的には完全にアウト。終盤に初登場したキャラが犯人なんて反則技もいいところでしょう。でも「嘘つきだらけ」を公言している映画である以上、「そんなのズルイ」という批判は門前払いです。監督が一番の嘘つき。そもそもタイトルに偽りあり。なんとまあ卑怯な映画でしょうか。でも会話劇のマニアックさ、無駄とも思える長回し、刺激過多の残虐シーン、徹頭徹尾「馬鹿映画」の体裁ゆえ、観客の方がバカ負けしてしまうのです。良い映画ではないけれど、決して嫌いじゃない。褒める気はないものの、貶す気もない。胸糞悪いストーリーなのに、妙に清涼感あり。そんな不思議な映画でした。2時間50分という尺を知らず夜中に観始め、完全に明日の仕事に支障が出る時間を過ぎても途中で止められなかったくらいですから、私の趣向に合っていたのは間違い無さそうです。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-04-10 20:43:41) 596. パージ 《ネタバレ》 これはある種の『寓話』『風刺』として観るべきもので、設定に対するツッコミは野暮ってものなのでしょうね。でも中二病的世界観の作品ならば、やはり中二病的理論武装はして欲しいというのが正直なところ。あんなクズセキュリティで命と財産を守ろうなんてヘソで茶が沸きます。ただし、あの父親が“家族を守る”という絶対的な大義名分を捨てて、ホームレスを救おうと決意した件には心が動きました。男を差し出してしまったら、仮に家族と財産は守れたとしても、それと同等以上に大切なものを失うと判断したのでしょう。この決断を私は支持します。ただそれなら、家族の総力をもって全力で迎え撃つべきで、当然ホームレスともハナから共闘しなければなりません。せっかく自宅=“地の利”を活かさない展開も解せません。家族全員で生き残ってこそ、父親の決断の価値が生まれるのですから。結局のところ、どんなに素晴らしいメッセージや問題提起があっても、観客の目線が設定の緩さやストーリーの詰めの甘さといった“枝葉”へ向いてしまうようでは、失敗作と言わざるを得ません。そうは言いつつ、結構楽しめたんですけれども。[DVD(吹替)] 6点(2017-04-05 21:24:28)(良:2票) 597. 愛を語れば変態ですか 《ネタバレ》 『グミ・チョコレート・パイン』(2007)~『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2009)あたりの黒川芽以の“ぽっちゃり”可愛さは神懸かり的でしたが、アラサーとなってかなりシュッとした印象。少し戸田恵梨香が入っていますかね。相席スタートのメガネが自称“丁度いいブス”だそうですが、いうなれば本作の黒川は“丁度いい美人”。ちょっと粉をかけてみたい人妻感を見事に醸し出していました。彼女の超理論が炸裂する終盤は、もはや理解不能な展開ですが、これを喩えるなら“みんな野球をしているつもりだったのに、彼女一人だけサッカーの話を始めたよ”ってなところかと。まあ、勝手にやってくださいとしか言いようがありませんが、あのバスの乗客は羨ましいです。[DVD(邦画)] 5点(2017-03-30 19:19:53) 598. ヴィジット 《ネタバレ》 (激しくネタバレしておりますので、未見の方は閲覧ご注意ください……) サスペンスに慣れた人なら真相を見破るのは難しくありません。伏線と呼ぶにはあまりに“あからさま”なフリばかり。それでもなお、本作に“観る価値”があるのは、人物造形が見事だからです。老夫婦は、ただの狂人、あるいは殺人鬼でしょうか。いいえ、違います。確かに病んでいますし、社会規範や善悪の判断がつかなくなってはいますが、悪意の人ではありません。偽爺の言から汲み取るに、孫のいる人生を羨み、カウンセラー夫婦の身分を盗んだと。限定1週間、孫のいる人生を味わうため。子供たちを殺める気などハナからありませんでした(オーブンの奥を拭いて~のシークエンスが、子供たちへの殺意が無いことの証拠です)。それに事件を隠ぺいする気力も能力も備えていません。ですから見方によっては、2人の最期は巧妙な「自殺」とも見て取れます。子供たちの殺意が自らに向くように仕向けたと。姉弟2人のトラウマ解消のプレゼント付き(もちろん結果論として)。物悲しい後味と僅かな救いが本作の魅力と解します。[DVD(吹替)] 7点(2017-03-25 23:24:34) 599. 血まみれスケバンチェーンソー 《ネタバレ》 『テキサス・チェーンソー』(2003)、『女子高生チェーンソー』(2003)、『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』(2007)。世界3大チェーンソー映画を制覇した、自称おらが村イチのチェーンソーマニアとしましては、本作を見逃すワケにはいきません。(『メレン○の気持ち』で内田理央のふんどし姿が拝めると知ったからでは断じて無い!と言わせていただこう!)タイトルからして名作の香り漂います。スティーヴン・ソダーバーグ監督の傑作ドラマ『セックスと嘘とビデオテープ』、あるいはソ連製隠れた名作『動くな、死ね、甦れ!』にも通じるリズミカルな語感。確かに、血まみれで、スケバンで、チェーンソーでありました。血飛沫&グロ描写は十分。アバズレ感もバリバリ。リアル工具ではなく、凶器としてのチェーンソーという位置づけも、エンタメ特化で悪くありません。しかしどうでしょう。内田のふんどしが全く確認できないのです(別撮り感丸出しのチラリなど勘定のうちに入りません!!)。私のようにチェーンソーにしか興味のない者は兎も角も、内田のふんどし目当ての観客にはお気の毒としか言いようがありません。やるなら、ちゃんと、やり切ること。あざといくらい、しっかりと。個人的には決して評価していませんが、『片腕マシンガール』の井口昇監督に任せて、ひたすら悪趣味で下品な映画に仕上げるのもアリだった気がします。[DVD(邦画)] 4点(2017-03-21 18:56:32)(笑:1票) 600. 私たちのハァハァ 《ネタバレ》 本作は“距離”の映画。北九州から東京までの物理的な移動距離。旅に要する費用などの金銭感覚。憧れのバンドと自分たちとの間に在る隔たり。そして自らの将来に対する希望。どの距離感覚も彼女たちには、全くと言っていいほど備わっていません。いや正確には“測ろうとしていない”のでしょう。実測して現実と向き合い、絶望してしまうことに怯えているのかなと。この心理は理解できます。子供時代の終焉。現実と向き合う大人の世界へ。そんな不安な状況ゆえ、刹那の快楽に逃げるのも無理からぬこと。世間を、現状を、自分自身を、とりあえず見ないふり。まあ、それもいいでしょう。というより私自身、彼女らに説教を垂れられるほど立派な大人ではありません。ただ、心配なのは、今回の旅を“良い思い出”として消化してしまわないかということ。それだけは要注意です。360度いろんな人に迷惑をかけた事実を自覚すること。しばらくは布団に入る度に後悔でジタバタする必要があるでしょう。失敗をきちんと整理し、反省することで、はじめて成長できるのですから。家庭用ハンディカメラの映像をメインツールに臨場感を演出しながらも、通常のカメラも併用し客観的な視点を担保するバランス感覚は秀逸です(純粋に観易いという利点もあり)。ただ、編集用のカチンコをさりげなく本編に入れ込むあたりは、ハイセンス過ぎて鼻につきますが。主演の女子高生はみんな生々しくて素晴らしかったです。[DVD(邦画)] 8点(2017-03-15 21:28:43)
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