みんなのシネマレビュー |
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681. 3-4X10月 まず撮りたい画があって、それに合わせてストーリーを構築していったような印象で、はっきり言ってストーリーはよく分からないのだが、それでもけっこう面白かった。たけし映画はセリフが少ないのが特徴的だが、この映画では音楽もカラオケでベンガルが歌う曲以外は一切なしという徹底ぶりで「その男、凶暴につき」に続いて独特の雰囲気を持った作品となっていて、沖縄、海、空など「ソナチネ」と通ずるようなところがあるのも偶然ではないだろう。「ソナチネ」でも海や空の青がとにかく印象的だったが、わずか2作目にして既に海や空の映像に対してこだわりが見られ、たけし映画の特徴の一つであるキタノ・ブルーと呼ばれる青を強調した映像がこの映画でも美しく表現されており、「その男、凶暴につき」同様、たけしのお笑い芸人とは全く違う映画監督としての北野武を語る上でとても貴重な作品で、特にのちのたけし映画の芸術性はこの映画が原点なのだと思わずにはいられない。個人的には「その男、凶暴につき」のほうが好みだが、この映画もたけし映画の原点として外せない映画ではないだろうか。たけし本人が出ていて、主役ではないのもこれだけのような気がする。(かなり目立っちゃってるけど。)それにしても無名時代のトヨエツが若いなあ。[DVD(邦画)] 7点(2011-06-02 00:14:36)(良:1票) 682. 河童のクゥと夏休み 《ネタバレ》 「構想○○年」とうたい文句にしている映画はあまり面白くない印象があり、この映画も原恵一監督が20年ほど前からあたためていた企画を実現させた作品と聞いていたので、見たい反面、不安もあり、なかなか手が出ずにいたが、ようやく見た。ほのぼのした前半からマスコミがクゥのことを嗅ぎつける中盤あたりからシリアスになり、やがてそれが広まって報道陣が上原家の前に陣取る様子はものすごくリアルで、テレビの取材に興奮する康一の描写なども実際こういうことに遭遇すると仕方がないよねという感じでものすごくリアリティがある。ストーリーはこの後半からつらい方向にいき、自分がいることで上原家に迷惑をかけていると自責の念に駆られるクゥに感情移入し、虐待を受けていたオッサンの過去もついついウルっときてしまった。テレビに出演したクゥが父親の腕を見せられるところや、クゥを守ろうとしたオッサンが跳ねられて死んでしまうシーン、それに東京タワーのシーンはそのときのクゥの気持ちが痛いほど分かり、見ていて本当に泣けてくる。とくにオッサンが死ぬシーンはそれまでのクゥとの関係や、これまでのオッサンの生き様を考えると切なくてたまらない。全体的にはややいろいろ詰め込みすぎてしまった感はあるが、この映画の主軸はひとりぼっちになってしまった河童と現代の家族の交流を描いたひと夏の物語であり、登場するのはごく普通の平凡な家庭。中盤以降にある動物の目線から見ると人間社会はこうだというやや批判めいた描写が強烈で、マスコミや野次馬の描き方なども露骨ではあるが、でも決してそれが後半の主題になることはなく、クゥと上原家、クゥと父親、それに康一と菊池の関係がずっと主題として描かれている。おそらく「クレヨンしんちゃん」映画シリーズと同じく家族や親子、友情を描くことに原監督のこの映画に対するテーマというか、そういうものがあるような気がする。アニメの絵柄が最新のデジタルでなく、地味なアナログのような絵柄なのは原監督の意向かもしれないが、絵柄が素朴な分、映像もなんとなく優しさが感じられるものになっているのもいい。どこかで原監督は松竹大船調を受け継ぐ監督だと聞いたことがあるけど、それもよく分かる。それにしても最近殺伐とした映画ばかり見ていたような気がするのでこういうあたたかい映画を久しぶりに見ると、やっぱりこういう映画っていいなあと思える。見る前の不安はすっかり消え去り、見終わったあと、素直にこの映画を見てよかったと思えたし、原監督らしい佳作だったと思う。これからも原監督の作品はできる限りずっと見ていこう。[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-05-29 16:12:15)(良:1票) 683. 非情都市 《ネタバレ》 特ダネを必死に追い求める三橋達也演じる新聞記者を描いた鈴木英夫監督の映画。三橋達也演じる主人公が記事のためなら危険を冒してでもものにする、たとえやばいネタであっても記事のためなら何でもするというようなはみ出した男で、こういう新聞記者は実際にいそうで妙にリアルだなあと思っていたら、井手雅人の脚本は実在した新聞記者の手記をもとにしているとのことで納得。こういう一つのことに執着し、周りをよく見ない人物というのは三橋達也にはうってつけで、記事のために恋人(司葉子)にも平気でスパイをさせたりするようなダメ男を見事に演じていて、やっぱり三橋達也にはこういうだらしない男が似合うと改めて感じた。鈴木監督の演出もシャープで、冒頭の主人公と刑事のトイレでのやりとりや、水道から流れる水までもクールな感じがして印象に残る。最後の最後、事件の犯人を匿ったことがばれて逮捕されても、まだ諦めておらず、新聞社を首になったことも信じられない様子の主人公には呆れてしまうが、三橋達也が演じていると、まあしょうがないかとも思えてしまうのが不思議。まあ、同情や共感は出来ないけど。全体的にもう少しサスペンスとしての緊張感が欲しかったような気がしないでもないが、なかなか面白い映画だった。[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-05-28 14:38:58) 684. その男、凶暴につき 《ネタバレ》 お笑い芸人であるビートたけしが北野武として映画監督デビューを飾った作品。最初の少年の家にたけし扮する刑事が乗り込んでいくシーンから既に異様な雰囲気が漂い、ここでもう一気に惹きこまれた。映画監督のデビュー作というのは、まだ作風がちゃんと確立しておらず、何本か見たあとになって初めて見たりするとあまりらしさを感じられなかったりすることがあるが、この映画は既に一作目にしてのちのたけし映画の独特な雰囲気が出ており、これは本当にお笑い芸人の監督デビュー作なのかと思うほどのちのたけしの映画監督としての方向性がハッキリと出ている。「その男、凶暴につき」というタイトルどおり、犯人に対して執拗に暴行を繰り返す主人公の狂気もさることながら、映画全体に漂う恐ろしさがなんともいえず、見ている間ずっと緊張しっぱなしだった。ロッカールームでの暴行シーンなどは、直接見せているわけではないのに中で何が行われているのか想像するだけで恐ろしくなるし、クライマックスの対決シーンで薬を探す妹をみつめる主人公の目線にも恐怖を感じる。たけしらしい笑いも盛り込まれているが、全体的には殺気にあふれており、完全に「映画監督 北野武」というものをこれ一本で確立してしまっているのが凄い。この映画、最初の企画段階では深作欣二監督の予定だったそうだが、深作監督ではこの独特な雰囲気は出せないだろうし、まさにこれは北野武だからこそ出来る映画だと思う。それにしても一作目にしてこんな凄い映画を作ってしまったのがお笑い芸人とはやっぱり信じられない。最近でも俳優やお笑い芸人が監督デビューすることが多いが、それらが何やら話題性だけのように感じるのに対し、ビートたけし=北野武にはほかのタレント監督とは違う本物の作家性というものがあることをこの第一作目から感じずにはいられない。間違いなく傑作だと思う。[DVD(邦画)] 8点(2011-05-26 14:22:43)(良:3票) 685. 新 仁義なき戦い 組長最後の日 《ネタバレ》 シリーズ通算8作目で深作欣二監督と菅原文太のコンビによる「仁義なき戦い」のタイトルを冠した映画ではこれが最後の作品となる。前作「組長の首」より飯干晃一の名がクレジットから外され、完全オリジナル脚本となったが、この映画も五部作ほどの勢いはなく、普通のプログラムピクチャーのヤクザ映画という印象で、そんなに面白くはないし、ナレーション(酒井哲)が少なく、テロップによる人物紹介もないなど、これまでのシリーズと比べるとかなり印象が違う。「完結篇」で大友勝利を演じ、「新仁義なき戦い」にも出演していた宍戸錠の弟である郷瑛治が殺し屋「ジョー」という役名で出ているのには笑える。今回の組長は悪役がハマリ役の小沢栄太郎だけど、出番が少ないうえに、憎々しさもイマイチで残念。シリーズ最後の作品ということもあって(と言っても製作中にはそう思っている関係者はいなかったかもしれないが。)か、菅原文太演じる主人公が刺されてしまうが、そのまま終わってしまうのはかなりの中途半端さで、せめて主人公の生死をハッキリさせてから終わってほしかった。それとやはり今回も金子信雄がいないのがさびしい。[DVD(邦画)] 5点(2011-05-19 14:18:37) 686. ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない 「電車男」(原作、映画、ドラマ共に未見だが。)と同じようにネット掲示板から派生した書籍の映画化らしい。たぶん、この映画で描かれている会社を「ブラック会社」というのはちょっと違うような気がするし、主人公(小池徹平)の同僚たちもコミカルに描かれておりどこかリアリティーに欠ける部分があるように思うのだが、元ニートの主人公(小池徹平)が成長していくサクセスストーリーとしてそこそこ面白く出来ており、また主人公に優しく接する藤田(田辺誠一)の過去なども放置せずにちゃんと描いているところも良かったと思う。でも、もうちょっと深みがほしかった気もして、例えば主人公の屈折感をもう少し掘り下げてもよかったのではないか。小池徹平は初めて出演作品を見たのだが、けっこうハマリ役で、この主人公が見ていて親しみがわいてくるような好印象なのもその影響だろう。リーダー役の品川は、ガンダムマニアのKYな同僚とともにうざったく、なかなかハマッいるが、この人は「ガリレオ」の弓削刑事を演じていたときもちょっとうざく感じていたので、元々こういうキャラで売っている芸人(そうなのかはよく知らないが。)で、ひょっとしたら役作りせず、素のまま演じているのだろうなあと思ってしまった。なんだか褒め言葉になってないなあ。この映画に関しての全体的な感想は見る前は全く期待していなかったし、実際不満もあるが、そんなに悪くない映画だったと思う。[DVD(邦画)] 5点(2011-05-15 15:03:36)(良:1票) 687. 嵐が丘(1988) 吉田喜重監督がエミリー・ブロンテの名作文学を中世の日本を舞台に脚色し、映画化した作品。中世を再現したセットは、黒澤明監督の映画で美術を担当する村木与四郎だけあって、黒澤監督の「乱」のような重厚さがあり、全体的に見て非常に芸術性の高い映画になっている。しかし、吉田監督の演出はやや力みすぎの印象があり、松田優作は主人公 鬼丸を彼ならではの野性味あふれる演技で演じているが、相手役の田中裕子との共演シーンは二人の相性がよくないのか少し違和感を感じたし、ストーリーもやや退屈に感じる。石田えりをかなり久しぶりに見たような気がするが、三國連太郎が出ていることで、実際の共演シーンが無いにもかかわらず、この年始まった「釣りバカ日誌」シリーズのスーさんとみち子さんを思い浮かべてしまった。[CS・衛星(邦画)] 4点(2011-05-13 21:25:06) 688. 新・仁義なき戦い 組長の首 シリーズ通算7作目。主な舞台が広島から九州に変わり、飯干晃一の原作とは関係のないオリジナル脚本となり、完全に最初の五部作とは別の一話完結の物語になっているが、どうもシリーズとしての勢いがなくなってきてる印象。確かにカーチェイスなど五部作になかった見せ場があるのだが、どうも空回りしているし、菅原文太扮する主人公のキャラも広能に比べて魅力がないように思う。深作欣二監督が撮影中に絶賛したという山崎努は確かに良かったとは思うけど、なんかエピソードが中途半端で演じたキャラクターがあまり印象に残らない。「広島死闘篇」の上原靖子役が印象的だった梶芽衣子の使い方も勿体無く感じる。ヤクザ相手に男から男へ渡り歩く女を演じるひし美ゆり子は「ウルトラセブン」のアンヌ隊員役でお馴染みなだけにこういう役を演じていること自体に驚くが、この女のエピソードをもっと膨らませればドラマにもっと厚みが出たのではないか。それと金子信雄が出てないことも残念。大和田組長を演じる西村晃は山守役の候補にあがっていた人で、貫ろくのある組長を見事に演じているが、やはり金子信雄演じる山守ほどのインパクトがなく、物足りなく感じた。それでも娯楽アクション映画としてそれなりには楽しめるものにはなっているとは思う。でもやっぱり物足りなさが残る映画だった。[DVD(邦画)] 5点(2011-05-12 13:53:52) 689. 劔岳 点の記 《ネタバレ》 雪を撮らせたら右に出る者はいないと言われるキャメラマンである木村大作が自ら脚本と監督を手がけた山岳映画。映画キャメラマンの監督作品を日本映画で見るのは初めてのような気がするが、どうしても新田次郎の原作を映画化したかったという木村監督の思いがよく伝わってくる反面、山の険しさ、厳しさと美しさを表現したいという思いが強すぎる故か、どうも木村監督の興味がただ山を撮ることだけにあるように思え、山に挑む主人公たちの人間ドラマにはほとんど興味がないかのように思えるほど、人間ドラマが薄く、葛藤というものが描かれていないばかりか、上映時間の都合か最後もいきなり頂上にたどりついたような印象で、カタルシスを感じないし、物足りない。全部生撮りで撮影の現場は録音技師の斉藤禎一が負傷するなど過酷だったようだが、映画を見ていてその過酷さが伝わって来ないし、作っている側は感動しているのかもしれないが、見ている側の感動は薄い。同じ新田次郎原作で木村監督が撮影を担当している「八甲田山」のほうがドラマとしての見ごたえはあるのではないかと思う。エンドロールが「俺たちは苦労してこの映画を作ったんだぞ。どうだ。」みたいな感じがして、なんだかこの映画がすべて撮影に関わったスタッフ・キャストの自己満足を満たすためだけに作られた映画のように思えてしまったのがなんかイヤだった。そういうことをされると所詮はそういう映画だったのかということしか印象に残らなくなる。ここに2点マイナス。[DVD(邦画)] 3点(2011-05-05 14:34:04) 690. リオの若大将 《ネタバレ》 シリーズ12作目で大学生篇の完結篇、そしてヒロイン 澄子が登場するのもこれが最後となる節目の作品だが、だからと言ってどういうことはなくいつもどおりの展開で安心して見ていられる。が、最後なのだからもう少し捻ったストーリーでもよかったような気がする。若大将が劇中で歌をうたうのはいつものことだが、今回は曲名がテロップ表示されたりして歌のシーンは加山雄三のPVを見ている感じがいつもよりも強くなっている気がする。「エレキの若大将」に出ていた内田裕也が同じように音楽ショーの司会者役で出ているが、意識したキャスティングかもしれない。若大将をリオに同行させる大学教授が宮口精二だったり、今回の青大将の父親が中村伸郎(田中邦衛と中村伸郎が親子役というのがすごい組み合わせだなあ。)だったり脇役陣はいつもよりも豪華な印象だが、和尚役が勝新の「悪名」や鈴木清順監督の「河内カルメン」の原作者である今東光なのはビックリ。なかなか貫ろくのある演技で存在感があり、本職の俳優に負けていない。星由里子同様に小学生の頃にゴジラ映画でよく見かけていた久保明が出演しているのも嬉しかったりする。星由里子を初めて見たのは小学生の頃に見た「三大怪獣地球最大の決戦」と「モスラ対ゴジラ」。もう20年ほど前の話になる。同じく小学生時代にゴジラ映画でよく見ていた志村喬や土屋嘉男に高校時代に黒澤明監督の映画を見て再会したとき、懐かしくそして嬉しかったのを覚えているが、最初にこのシリーズに「大学の若大将」でふれたときも既に星由里子を朝ドラ「あぐり」などゴジラ映画以外で見かけたことがあるにも関わらず、そのときと同じような嬉しさがあった。彼女がこのシリーズで演じている澄子はそんなに好きではないが、このシリーズを見る動機の一つとして、「小学生の頃、好きだったゴジラ映画で印象に残っている女優の一人である星由里子をまた見れる」というのがあったのかもしれない。そんな星由里子も若大将の大学卒業とともにシリーズから卒業してしまうのだが、なんだかんだ言ってやっぱり少しさびしいような気がする。[DVD(邦画)] 5点(2011-04-28 15:25:31) 691. ゴー!ゴー!若大将 《ネタバレ》 シリーズ11作目。いつも若大将と同じ部のマネージャーという設定の江口が若大将とは違う部に所属していて、陸上部の若大将が江口の自動車部に借り出されて前半でラリーに出場するという展開を持ってきて、若大将が取り組むスポーツをふたつにして見どころを増やしたり、今まで劇中ではありそうでなかった澄子を田能久の面々に紹介しようとする展開などこれまでのシリーズをずっと見ていると新鮮に感じる部分があり、それがなかなか面白かった。ラリーの部分で日産がスポンサーについており、青大将がダットサンの由来について解説するシーンや、ガソリンスタンドのシーンで「出光」の看板が映るなどタイアップ色がかなり強いのも今までのシリーズではあまりなかったような。若大将が澄子とのことで青大将の相談を断るのも(あの状況じゃ普通そうするわな。)大人になったねえという感じがするのはシリーズずっと見てるからだろうし、そういうパターン破りというか、いつもと違う展開がいやという人もいるかもしれないが、個人的にはたまにはこういうのもアリだろうと思うし、いつもと違う展開の作品がたまにあるのもシリーズものの面白さだと個人的には思う。今回、澄子の恋敵となる芸者を演じるのは浜木綿子。この人は香川照之の母親であるが、あまりなじみがなく、息子のほうがよくテレビなどで見かけることが多いからか、うっかりしているとそれを忘れてしまいそうになる。澄子役の星由里子はこの次の回でシリーズから勇退するが、自分もこのシリーズで星由里子を見るのはもうあと一回。何本今まで見たかあまり意識していないのでもうそんなにこのシリーズ見たのかとちょっとビックリしてしまった。[DVD(邦画)] 7点(2011-04-20 03:07:32) 692. 憑神 《ネタバレ》 降旗康男監督が「鉄道員(ぽっぽや)」に続いて浅田次郎の小説を映画化した時代劇。浅田次郎原作の映画はこれまで2本(「鉄道員(ぽっぽや)」、「壬生義士伝」)しか見ていないが、面白いと思ったことがなく、降旗監督の映画もどちらかと言えば苦手なので全く期待していなかった。前半は軽いコメディータッチで降旗監督にしては珍しいと思ったが、ちょっとギャグがくどく感じられる部分もあり、あまり笑えない。死神(森迫永衣)が登場するあたりから映画の雰囲気がシリアスになるが、なにやらコメディータッチが気がついたらいきなりシリアスモードになってしまった印象で少し違和感を感じたし、盛り上がるはずのラストもちょと。でもそれだけならまだ良かった。原作のある映画だと、原作者自身がカメオ出演することがよくあるのだが、さすがにいちばん最後の浅田次郎の登場シーンは強引すぎるし、はっきり言ってただ出演したかっただけではないのかと思えてしまう。もし、そうでなければ何がしたいのか意味不明だし、もっと言うとなにもこんなことしてまで本人役で出なくてもと呆れる。この映画も最初に思ったとおり、以前見た2本と同じくあまり面白くはなかったが、この原作者登場シーンさえなければ、もう少しは印象は違っていたかもしれない。[DVD(邦画)] 3点(2011-04-13 18:28:54) 693. 新仁義なき戦い(1974) 《ネタバレ》 全5作で完結した「仁義なき戦い」シリーズであるが、それからあまり間を置かずに製作された新シリーズ第1作。人気シリーズを手放したくないのは分かるが、ちょっと潔さが感じられないなと思いつつも見たが、想像よりは悪くないし、シリーズ初参加となる大物俳優の存在感もあって楽しめる。それに五部作で登場するたびに殺されていた松方弘樹が最後まで生き残るのは見ている側の予想を裏切る展開である意味新鮮に感じた。五部作とは役名の変わった出演者が多い(でも、田中邦衛とか役柄はほぼそのまま。)中で金子信雄だけは同じ役名で同じ役柄というのが嬉しかったりもする。しかし、ドラマとしてはちょっと盛り上がりに欠け、五部作に比べてちょっと物足りないというか、普通のプログラム・ピクチャーになってしまった感じがするのが残念。(五部作では人間ドラマの面白みに加え、ラストシーンが印象的な場合が多く、それが評価を上げる一因になっていたのだが。)菅原文太演じる主人公も広能と口調は同じだが、キャラクターが広能と比べるとワルな感じなのが少し違和感を覚える。田中邦衛の手旗信号のシーンはコミカルだし、五部作同様ユーモラスな場面があるんだけど、やはり五部作のほうがドラマとしての見ごたえはあったと思う。殺された組員(誠直也)の母親役で1シーン登場する菅井きんが強烈だった。[DVD(邦画)] 6点(2011-04-05 16:24:24) 694. 仁義なき戦い 完結篇 《ネタバレ》 前作「頂上作戦」で一応の完結を見たかに見えたこのシリーズだが、四部作では中途半端と考えたのか(実際はヒットシリーズを手放すのが惜しかったのだろう。)急遽企画され製作された五作目にして広能昌三を主人公としたシリーズの完結篇。笠原和夫が脚本から降板してしまい、高田宏治が脚本を担当している。これまでのシリーズと比べてややこじんまりとしていて盛り上がりにも欠けるし、前作のラストから強引に続けてしまった感もやはりある。それに今回は広能(菅原文太)をはじめ、武田(小林旭)も山守(金子信雄)もあまり登場しないのだが、それでもなかなか面白かった。しかし、このシリーズ(に限ったことではないが)では役者の使い回しが目立つが、今回話を引っ張る若いヤクザを演じるのが北大路欣也というのは「広島死闘篇」の山中役が印象的だっただけに止めてほしかったかも。大友役も宍戸錠に代わっているが、千葉真一のようなインパクトはないものの、それほど違和感はない。(小林旭と宍戸錠の共演を見ていると日活映画を連想してしまい、裕次郎がどこからか出てくるのではと思ってしまったり。)一作目の青大将のようなキャラからみるみる出世していった槙原(田中邦衛)が殺されるのはキャラに愛着がわいていたのでやや寂しさを感じる。ラストの広能が引退を決意するシーンもこれで本当に終わりなんだと思うと感慨深いものがある。(エンドマークが「仁義なき戦い 完」というのも哀愁を感じさせていていい。)余談だが映画館の入り口で桜木健一演じるヤクザが殺されるシーンで出てくる藤純子のポスターを見て「緋牡丹博徒」シリーズが見てみたくなった。[DVD(邦画)] 7点(2011-03-30 19:05:30)(良:2票) 695. ドラゴンボール 最強への道 《ネタバレ》 「ドラゴンボール」のアニメ劇場版としては(今のところ)最後の作品で、内容は原作のはじめからレッドリボン軍篇までをリメイクしたもの。個人的には「ドラゴンボール」は初期のほうが好きなので最初の悟空とブルマの出会いのシーンはかなり懐かしかったし、ウーロンとの出会いやヤムチャとの戦いもZ以降から考えればほのぼのとしていてノスタルジックに感じる。しかし、後半以降は原作やテレビシリーズと比べてちょっとシリアスになりすぎていて原作やテレビシリーズとはかなり違うような気がする。レッドリボン軍篇の前のピラフ篇がけっこう好き(というかピラフ一味のキャラクターが好き。)なのだが、まるまるカットされてるのは致し方ないとはいえ、ちょっと残念。[DVD(邦画)] 5点(2011-03-24 16:36:57) 696. シュアリー・サムデイ やりたいことはなんとなく分かるのだが、劇中の竹中直人のセリフのとおり本当に勢いだけで作ってしまった感じで、とにかく落ち着きがなく、映画に全く入り込めないまま、2時間がひたすら長く感じた。小栗旬の初監督作品ということで、見る前は嫌な予感しかしなかったが、やっぱり人気俳優が監督に初挑戦という話題性だけの映画という印象しかない。小栗監督の人脈か次々登場するゲスト俳優たちも使い方が勿体無いような気がするし、役者への演出も下手なのであろう、例えば小西真奈美なんかもっと出来るはずだと思うのに活かせていないような気がするし、回想シーンの多用もなんかうざったらしく感じてしまった。(他の映画だと普段はあまり気にしないのに。)それに、終盤の演奏シーンはなんか唐突に感じるし、脚本も詰め込みすぎでグダグダで、ドラマも薄く全体的に見てはっきり言って典型的な駄作だと思う。それにしても人気の若手俳優が話題性だけでこうも簡単に劇場映画を撮れるなんて、考えたら今映画監督を目指している若い人たちがあまりにも可哀想な気がしてならない。[DVD(邦画)] 2点(2011-03-21 00:52:14) 697. 大当り三色娘 美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみの「三人娘」シリーズ、初めて見たが、いかにもこの時代の東宝映画らしい明るいプログラムピクチャーのアイドル映画という感じ。主演の三人のそれぞれの歌うシーンがやはり見どころで、ストーリー的に心に響くものはないのだが、三人にそれほど興味の無い自分でもじゅうぶんに楽しめた。昭和30年代の前半という時代のアイドル映画ということで、映し出される風景もなんだかほのぼのしていて癒される。これが東宝スコープ第一作とのことだが、そのことからも東宝のこのシリーズに対する自信が分かるし、数々見てきた東宝のシネマスコープ映画の最初がこれなのだと思うと妙に感慨深いものもあったりする。主演の三人のうち、江利チエミは東映時代劇の「この首一万石」や「ちいさこべ」でのシリアスな演技が印象に残っているが、ここでは明るくコミカルなキャラクターで、江利チエミを初めて見たのが確か「ジャンケン娘」のジェットコースターのシーンの映像(全編は見てない)だったせいか、本格的に出演作を見る以前から明るいアイドルというイメージが強かったのだが、まさにイメージ通りだ。(「サザエさん」が見たいなあ。)雪村いづみは現在から見てもスタイルがいいと思う。美空ひばりは既に顔つきに味があり、歌もこぶしが利いていて、晩年の映像とさほど印象が変わっていないのがすごいが、当時は二十歳くらい。主演の三人は同い年のはずだが三人居並ぶとどう見てももっと年上に見えるし、三人の中ではいちばんアイドルという感じではない顔立ちのような気がする。[CS・衛星(邦画)] 5点(2011-03-18 22:12:09) 698. カムイ外伝 《ネタバレ》 アクションシーンではただ飛んだり跳ねたりしているだけで見ていて退屈で、とくにいちばん盛り上がるであろうクライマックスの不動(伊藤英明)との対決シーンが躍動感と臨場感がなく、サメとかも一発でそれと分かるCGで幻滅。人間ドラマに至ってもいくらでも深みが出せそうなものを浅いままなので、登場人物にほとんど感情移入が出来ず、これも退屈。崔洋一監督の演出もやっつけ仕事にしか思えず、見ていて完全に頼まれ仕事だと分かるほどにやる気が感じられない。主演の松山ケンイチは「デスノート」のL役を見て演技が出来る俳優だと思ったが、この映画では役に合ってないのかイマイチな感じだし、スガルを演じる小雪も過去を背負って生きる宿命づけられた抜け忍という感じがしなく、(そもそも冒頭のシーンから忍者という感じもあまりしない。)この二人ははっきり言ってミスキャスト。ほかにも佐藤浩市はなんか勿体無い感じで、土屋アンナ(中島哲也監督の映画以外で見るのはコレが初めて。)はいてもいなくてもいいような役だし。全体的にもうちょっと工夫があれば、少しはマシな映画になったのではとも思うけど、はっきり言って大味な駄作時代劇以外の何者でもない。冒頭に漫画の原画を出したのは「愛のコリーダ」や「御法度」で崔監督と付き合いのある大島渚監督の「忍者武芸帳」(本作と同じ白土三平原作。)へのオマージュかと思ったが、どうせならあの映画のように全編を漫画の原画で通したほうが面白かったのではないかと冗談半分ながら思ってしまった。[DVD(邦画)] 3点(2011-03-15 16:02:11) 699. きな子~見習い警察犬の物語~ 《ネタバレ》 香川県に実在する見習い警察犬きな子(2011年1月 警察犬デビュー)を題材にした動物映画。一応、実話の映画化ということになるんだろうけど、ストーリー自体は見習い警察犬訓練士の成長物語となっており、きな子をネタに一本映画を作ってみたという感じ。訓練所の所長(寺脇康文)の家族はそれぞれいい味を出していて、この一家の配役はみんな適役。ドラマとしては独立寸前までいきながら家庭の事情で諦めざるを得なかった田代(山本裕典)の葛藤や、杏子(夏帆)ときな子の絆などもう少し掘り下げてもよかったのではと思う部分もあるが、ファミリー映画でもあるので限界があるのかもしれない。(それでも杏子ときな子の絆にはもう少し踏み込んだドラマがあってもよかったのではないかと思う。)クライマックスで所長一家の長女(大野百花)が危機に陥ってそれを杏子ときな子が助けるという展開はかなり予想通りでありがちではあるが、やはりちょっとほろっとさせられる。全体としては別にこの映画で実在の犬を題材にしなくてもという気持ちもないではないが、ファミリー映画としてはそこそこ楽しめたといったところか。[DVD(邦画)] 5点(2011-03-12 13:49:18) 700. 仁義なき戦い 頂上作戦 《ネタバレ》 シリーズ第4作。いよいよ抗争が激化して最初から最後まで息つく暇もないほどなのだが、これまでなかった一般市民の犠牲や、抗争事件の取材に躍起になるマスコミ、そして暴力団一斉検挙に乗り出した警察という要素が加わったことで見ごたえが増していて4作目というのにクオリティを全く落とさないのは凄い。今回は広能(菅原文太)が前半で警察に逮捕され、後半は前回登場した武田(小林旭)が引っ張っていくあたりは「広島死闘篇」同様にこのシリーズがヤクザ社会を描いた群像劇であるということを強く感じさせられるし、次々と登場する曲者ぞろいのキャラクターたちもこのシリーズの魅力なのだろう。深作欣二監督の演出も相変わらずパワフルで魅せてくれる。最後は警察の頂上作戦によって生き残ったヤクザたちが逮捕されてしまうのにはなぜか哀れみを感じてしまった。それに最後の最後、広能と武田の会話はグッと来るものがあり、広能や武田よりも山守(金子信雄)のような卑怯者(でも、なぜか個人的には打本(加藤武)同様、なぜか嫌いにはなれない。)の方が刑期が短いというあたりに世の中の矛盾も感じさせている終わり方で印象に残る。それに完全にこの回で完結してもおかしくない空気が流れていて、実際に笠原和夫の脚本のシリーズとしては最後になった(次回以降降板)のも理解できる。菅原文太が広能を演じるのはあと一作残されていて、もちろん見るつもりでいるが、くどくならないかがちょっと心配。[DVD(邦画)] 8点(2011-03-10 13:58:12)
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