みんなのシネマレビュー |
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681. 八つ墓村(1977) 《ネタバレ》 地上波TVバージョン(つまり編集版)は何度か観ておりますが、この度フル尺を初めて鑑賞しました。正直2時間半は長い!と感じつつも、同じような描写が延々と続き、遅々として物語が進展しない“もっさり感”が、むしろ田舎社会の旧態依然とした淀んだ空気感を正しく表現していた気もします。本作の金田一は渥美清。正直、違和感が無いと言えばウソになります。しかし『ナイル殺人事件』のピーター・ユスティノフも原作のポワロのイメージとは程遠い見た目。馴染んでしまえばそれもアリ。ただ渥美さんの場合は寅次郎のイメージに悪影響を及ぼすことがあってはなりません。金田一を継続しなかったのは正しい判断であったと考えます。聞くところによると『八つ墓村』は金田一シリーズの中で最も多く映像化された作品だそう。それだけキャッチーかつインパクトの強い設定なのでしょう。主役は名探偵・金田一耕助ではなく、旧家の跡継ぎ・寺田辰弥。演じるはショーケンです。存在感と雰囲気は抜群ですが、演技が上手いのか下手なのかよくわからない、いつものショーケン流。そこに小川真由美の妖艶さや、違和感ある寅さん風味、印象的な音楽が相まって、形容し難い独特の空気感の作品に仕上がっております。それが横溝正史の世界観とマッチしていたかどうかは謎ですが。ところで本作の金田一は物証に基づく論理的な推理を披露していましたっけ?ミステリーというより、オカルトホラーであったことに今頃になって気づきました。[インターネット(邦画)] 7点(2018-04-15 07:57:21) 682. 激流(1994) 《ネタバレ》 “逃走中の強盗に脅されながら、大自然の中を川下り”という、トリッキーな設定を有するサスペンスは、恐怖度1コワの甘口仕様で家族揃って楽しめる娯楽作品でした。ハイライトは、ガントレットと呼ばれる激流をゴムボートで乗り越えるシーンで、普通にアクティビティを楽しむ感覚。ノーCGの迫力ある画が楽しめますが、クライムサスペンスのハラハラドキドキとはまた別の種類のもで、ネイチャーアドベンチャー要素の比率の方が遥かに高いと考えます。それにしても、途中から別行動となったお父さんの動きが謎過ぎました。家族救出を試みるなら、(絶対に越えられないと散々アナウンスしていた)ガントレットの前じゃなきゃ駄目なんじゃないでしょうか。まあ、そのあたりも“お約束”と捉えて、ゆるく楽しむのが正しい観方なのでしょう。[CS・衛星(吹替)] 7点(2018-02-25 22:58:16) 683. ソルト 《ネタバレ》 最早ハリウッドいち女スパイ役が似合う女優、アンジェリーナ・ジョリー。派手過ぎる顔立ちは、決してスパイ向きとは思えませんが。さて、ストーリーの方は二重スパイの嫌疑をかけられた主人公の逃亡劇をメインとしたサスペンス。そもそもハズレの少ないカテゴリーではありますが、ミスリードが上手く、それでいてヒントもフェアに出されており、脚本は上質だったと思います。展開にメリハリもありましたし。ただしヒロインの無敵感は、やや過ぎたかもしれません。これなら、エイリアンVSプレデターのノリでイーサンハントVSイヴリン・ソルトもアリじゃないかと思ったりします。[CS・衛星(吹替)] 7点(2018-02-15 00:23:53)(良:1票) 684. チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜 《ネタバレ》 豪華女優陣の感想から。まずは、天海祐希(早乙女先生)。本サクセスストーリー上の真の主人公は、紛れもなく先生です。彼女の教育者としての信念と熱意が、偉業達成の原動力であったのは間違いありません。そういう意味では『スクールウォーズ』や『金八先生』のように、指導者にスポットをあてた物語に仕立てることも出来たはずです。しかし、何故そうしなかったのでしょうか。私が考える理由は2つ。一つめは、天海の女優としての資質の問題。華はあっても、ナチュラルな演技は厳しいタイプ(失礼)。正直言って演技派とは思えません。彼女が最大限魅力を発揮するのは『女王の教室』のような極端なキャラ設定のとき。本作では、なまじ実話であったがゆえに、デフォルメした人物像は難しかったかもしれません。2つめの理由の方が決定的と考えますが、これは後述としましょう。次に、中条あやみ(彩乃)。彼女は影の主役と言っていいキーパーソン。主将として、チアダンス部を牽引してきた功労者です。最後に檜舞台でセンターを外されるという悲劇も用意されており、感情移入しやすいポジションでもありました。しかしながら、美人で真面目という淡白な人物設定からも分かるように、あくまで準主役に届かない“脇役”に甘んじている印象です。彼女の魅力を際立たせる手立てはいくらでもあったと思いますが、あえて”控えた”と推測します。こちらの理由も後述します。そして冨田望生(ぽっちゃりさん)。キャラクターバランスの観点からも、体型に特徴あるキャラが欲しいのは分かります。しかし、ステレオタイプな配役の感は否めません。誰でも夢は勝ち取れるというメッセージかもしれませんが、全米制覇という途方もない目標の前に、早乙女先生が課した個のスキルアップには、当然ボディスタイルも含まれていると考えるのが道理かと。あれだけ厳しい練習をして、痩せない方が逆に不自然でしょう。スケジュール的に難しい面もありましょうが、徐々にシェイプアップされていくキャラがいても面白かったかなと思います。さて、最後に広瀬すず(ひかり)。実は今まで彼女の出演作品を観てこなかったのですが、正直度肝を抜かれました。何と言う存在感。圧倒的主役感。持っている熱量が桁違いの女優さんでした。更に演技も上手い!「チアの気持ちが生まれながらに備わっている」というひかりへの抽象的な人物評に説得力が生まれるのも、広瀬ならでは。その一方、サッカー部の彼への片思いがリアリティを欠くという不具合が生じてしまうのも、同じ理由と言えましょう(広瀬をふる男などこの世に存在するはずがないのです!)。彼女の前では、元宝塚の大スターも、S級美少女も霞んでしまう化け物女優でありました(誉めているように聞こえませんね笑)。こうなると、無理に準主役級のキャラを仕立てるより、脇は脇に徹した方が全体のバランスは取れるでしょう。本来なら主役クラスの天海や中条の扱いが軽かった点も合点がいくというもの。広瀬すずの配役が決定した時点で、本作の方向性が定まったと考えます(すみません。完全な決め付けです笑)。青春サクセスストーリーとしては、全てのピースが揃っているところから始まるため、ややドラマチックさには欠けますが、その分子供たちのメンタルと技術向上の過程を丁寧に描いた印象です。とはいえ、イチ女優の魅力だけで本作は既に成立してしまっているのも事実。何とも不思議な映画との評価です(長文失礼しました!)。[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-02-10 00:56:08) 685. 劇場版 マジンガーZ/INFINITY 《ネタバレ》 有安杏果さんのももクロ卒業を明日に控え、モノノフ(ファン)が今観る映画はやはりZだろうと本作を選択。と言うのは半分冗談ですが、何やら良さそうな噂を耳にしておりましたので劇場鑑賞に至りました。懐かしのスーパーロボットが今風のアプローチでどう生まれ変わったのか興味津々でしたが、まあ、何と言いますか、馬鹿映画というか、変態映画というか、滅茶苦茶でしたね。『シン・ゴジラ』チックなリアルシミュレーションエッセンスもありつつの、トンデモSF理論やら中2病的倫理観やらが混在するカオスな世界観。さらに劇画風お馴染みキャラと新顔の美少女萌えキャラの作画の差異も違和感アリアリで、食べ会わせがいいんだか悪いんだか。兎に角、リクエストのあったもの全部ぶち込みました感が凄いです。そうそう、火薬の量も半端なかったので、やはり馬鹿映画で間違いありません。良くも悪くも振り切れている作品なので文句はありませんが。[映画館(邦画)] 7点(2018-01-20 20:48:41) 686. ドクター・ストレンジ 《ネタバレ》 小難しい理論は差し置いても、この映像美は大ご馳走。折りたたまれるビル群、歪む次元、私たちの知る法則の外の世界。映画館の大スクリーンで鑑賞したら、さぞや楽しめた事でしょう。それにしてもティルダ・スウィントン。『コンスタンティン』の大天使役のときも感心しましたが、年齢性別を超越した存在感は素晴らしいですね。折角魔法を題材とした物語ですから、よくわからない念の縄みたいな攻撃だけでなく、様々な種類・属性の魔法を見たかった気がしますが、続編に期待ということで。[CS・衛星(吹替)] 7点(2018-01-10 18:21:15) 687. 本能寺ホテル 《ネタバレ》 今やカワイイ天然キャラをやらせたら右に出る者なし。流石、綾瀬はるか。彼女の魅力で無理筋なファンタジーや、理想主義で説教じみたテーマも、何となく納得させられてしまう仕掛け。ほんわかしてしまうんですね。凄い才能だと思います。そして何より素晴らしかったのは、ボディライン際立つ白ニット!トップとアンダーの差は、一体いくらあるのかと。たすき掛けポシェットの強調感たるや最早悪魔的かと。『おっぱいバレー』より、余程おっぱい祭りでありました。綾瀬はるかが遂に本気を出した本作を、目隠シストは有無を言わさず支持します!(師走に何言ってんだか)[CS・衛星(邦画)] 7点(2017-12-30 00:55:00) 688. DRIVE 《ネタバレ》 2017年の時点で観ると、まず驚くのがキャストの豪華さ。松重豊、ピエール瀧、津田寛治、松雪泰子ら人気と実力を兼ねそろえた味ある俳優がチョイ役で色を添える贅沢ぶり。まあ15年も前の作品ですから今とはネームバリューが違いますけれども。ホント、どのキャラクターも濃いめの味つけで自分好みでした。趣としては、『世にも奇妙な物語』風のファンタジックな仕上がり。テーマは人の縁。マヌケな銀行強盗たちと生真面目主人公の偶然の出会いが化学変化を引き起こし、各人の人生が好転していく様は観ていて気持ちの良いものでした。因果応報の原則が効いているのかいないのか微妙なところですが、強盗たちは皆その後お縄になったと考えるのが自然なのでしょうね。[DVD(邦画)] 7点(2017-12-25 19:50:57) 689. 映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ 《ネタバレ》 今日は、小2と小6の娘を連れて劇場鑑賞。上の娘の評価はイマイチでしたが、下の娘はいたく気に入った様子。まあ、そうでしょう。原作児童書のメインターゲットは、小学低学年~就学未満児。そういう意味では、手堅くターゲットを狙い撃ち出来た仕上がりであったと思います(劇場内のお子さま客の反応も上々でした)。物語は『バックトゥザフューチャー』を下敷きに『シン・ゴジラ』もオマージュ。名作の骨組みを利用しているワケですから見応えは充分。一緒に来た親御さんも退屈しないで済むと思われます。さて、私の目的は勿論声優初挑戦のももクロのリーダー・百田夏菜子さん。既にナレーションのお仕事は経験済みですし、女優としてのキャリアも順調に積んでいる現在、本格アニメ声優も心配ないとは思っておりましたが、堅実な仕事ぶりに安心しました。夏菜子さんの声質は、声優向きで間違いありません。今後も声のお仕事を続けていただきたいものです。それにしても、今の夏菜子さん(ももクロ全員ですが)の成長は凄まじいばかり。歌も演技も飛躍的に伸びました。努力の証。4年前の『天使とジャンプ』の頃と比べると演技面ではまるで別人です。返す返すも本格的に女優に挑戦した『幕が上がる』が、彼女らにとってターニングポイントであったことがよく分かります(夏菜子さんについては朝ドラ『べっぴんさん』で得た経験も大きかったでしょう)。個人的には、現地参戦がかなった青春ツアーの富山で披露された”替え歌『瀬戸の花嫁』完全版”の確認が出来てニヤニヤ。エンディングの歌も何気に良曲で嬉しいかぎりです。[映画館(邦画)] 7点(2017-12-10 15:29:18) 690. ジャスティス・リーグ(2017) 《ネタバレ》 映画の日に劇場で映画を観ないワケにはいかないと本作を鑑賞(スミマセン。つく必要のない嘘をつきました。たまたまです)。物語の背景は知りません。関連作品では『マン・オブ・スティール』を観たくらい(後から調べて関連を知りました。もち偶然です)。でも支障はありませんでした。何故ならストーリーはオマケみたいなものだから。”皆で協力して敵を倒しましょう”という目的さえ理解していればOK。『プリキュアオールスターズ』や『仮面ライダー・戦隊もの大集合』と同じお祭り映画との認識です。(注:ただし『バットマンvsスーパーマン』は観ておいた方がいいかも知れません。本作の前日譚にあたりますので、BvSの結末がネタバレしています。)本作のメインディッシュは、バトルアクション。その観点で充分な満足度を得たなと。スピード感、重量感、戦闘の視認性、破壊のカタルシス、どれも標準以上。足りないのは、”痛み”くらいでしょうか(キャラの能力にばらつきがあるため、その攻撃でどの程度のダメージを受けたのか?が解りにくいです)。劇場の大画面と重低音で体感するタイプのアトラクション映画でした。『2012』とか『インディペンデンス・デイ』と同様のディザスター映画の側面もあります。それにしても、ダイアナちゃんが魅力的なこと。知的な大人セクシー。最強で最高です。後れ馳せながら、『ワンダーウーマン』も観ることにしますね。(以下余談)スーパーマンが横綱級としたら、ワンダーウーマン、アクアマンが関脇、サイボーグやフラッシュが十両ってとこでしょうか。バットマンは、序二段?谷町?パワーバランスが取れているような、取れていないような。このアンバランスの妙が、本シリーズの魅力かもしれません。[映画館(字幕)] 7点(2017-12-05 00:24:10) 691. 傷だらけの悪魔 《ネタバレ》 イジメの加害者が、転校先でかつての被害者に復讐されるお話。と書くと、“ざまあみろ”な、スッキリ系を想像するかもしれませんが、そうではありません。結構主人公に同情してしまう仕立て。というのは、主人公の悪行の説明が不十分だからです(ポップな音楽に乗せてごく一部を切り取り提示)。確かに彼女も悪いことをしたけれど、そこまでやられなくても、と思ってしまうのです。これは、恐らく確信的なミスリード。直接、間接、当事者から。聞いたコト、見たコト、体験したコト。そして受け手の人生観、人生経験、想像力、感受性。個々人で“彼女の罪の重さ”に対する受け取り方は大きく違うでしょう。裁かれるのは罪人でありながら、実は裁く側も自身の値打ちが量られているワケです。代理復讐という名の免罪符に飛び付く者、達観したつもりの傍観者、自身の良心に操られる者。見事に、様々なタイプの人間性が垣間見えました。なかなか興味深いです。主人公の反撃は、逆ギレ以外の何物でもありませんが、自身の裁量で現状を打破した点は評価してもいい気がします。彼女の母親がいう“イワシ人間になるな”は、理想であり、個人的には共感できる考え方ですが、全員がシャチやサメになれるものでもありません。イワシも一つの生き方。私が願うのは、色んなタイプの人間が生きることを許される社会です。甘いですかね。デフォルメの効いた演出は(ややハイセンスアピールが強い気もしますが)面白いと思いましたし、若手俳優の皆さんの演技も上々でした。やや甘めで7点 進呈。[DVD(邦画)] 7点(2017-10-25 21:57:09) 692. エンド・オブ・トンネル 《ネタバレ》 (ネタバレあります。未見の方はご注意ください)『最大の武器は動かない下半身』予告編の煽り文句は、やや“盛っちゃったかな”と。車椅子というハンディキャップがサスペンス性を高める一因にはなっているものの、車椅子ならではの優位性(設定上の必然性)にまでは言及されていなかったと感じます。例えば車椅子生活が故に思いつく仰天アイデア、あるいは容疑者から除外されるロジックなどが欲しかったなと。さて、ここからがネタバレ。結末を一言でいうなら「現金横取りは叶わなかったけれど、代わりに主人公は新たな家族を手に入れました」。一見ハートウォーミングな印象ですが、その実は、“監禁”、“小児性愛”に“悪党全員死亡”(一部は主人公が直接手を下したものアリ!)とハードでシリアスな鬱展開。単純に「めでたし、めでたし」とは言い辛いんですね。サスペンスとして上々な出来だとは思いますが、コメディで調でリメイクしたらもっと面白くなる題材だと思います。[DVD(吹替)] 7点(2017-10-21 00:24:38) 693. アウトレイジ 最終章 《ネタバレ》 前作が『ビヨンド』なら、常識的にいって本作は『ファイナル』か『フォーエバー』ですよね。何故に『最終章』だったのか。見終えてその謎が解けた気がします。それは監督からのメッセージ。“お前らの想像どおりには行かないよ”ということ。テンション高い「バカヤロー、コノヤロー祭り」を期待していた私としては完全に一本取られた心境です。でもちょっと嬉しいような。多分、正しい商業監督、あるいは職人監督なら、ちゃんと観客のニーズ通りの映画を撮ったでしょう。でも北野監督は、芸人であり、芸術家。同じコトの繰り返しでは満足しなかったものと推測します。前2作を前フリに使っての見事なスカシ。裏切りこそ笑いの神髄。痺れました。雰囲気激変の静かな『アウトレイジ』ではありますが、基本エッセンスは健在でした。会長、花田のエグ過ぎる殺され方。大友&市川のマシンガン襲撃。カタルシスは十分です。シリーズ映画完結作として、ケツの拭き方も見事なもの。ただ、大友が「なんだよ、お前ら信じちゃったのかよ。コレだよコレ」なんて台詞を吐きながら、トマトケチャップを差し出してきたら、拍手喝采したい気分ではありますが(笑)。(以下余談)それにしても役者「北野武」は全くもって大根だと再確認しました。いや正しくは味わい深いので“いぶりがっこ”でしょうか。好きな演技は塩見さん。印象に残ったのは原田泰造さん。あの小物感、テンパリ感はいいなと。大御所・名優・クセモノ揃いの俳優陣の中で、チョイ役ながらちゃんと輝いていたと思います。[映画館(邦画)] 7点(2017-10-13 23:59:12) 694. ガール・オン・ザ・トレイン 《ネタバレ》 “アルコール依存症に由来する記憶の曖昧さ”を犯人捜しミステリーのギミックとする手法は、決して目新しいものではありません。多少捻くれた見方をするならば、主人公が自身を疑うに足る怪しい状況であればあるほど、逆に主人公はシロなんだろうなと勘繰るワケです。かといって、裏をかいて“やっぱり主人公が犯人でした”ではツマラナイので、ある程度筋書きが見え隠れしても、なお観客を惹きつけるだけの魅力が作品には必要だと考えます。本作からミステリーの要素を排すると、それはもうドロドロの愛憎劇。あっちで不倫、こっちで不妊、至る所にトラウマ地雷。幸せな人が誰も出てこないという(苦笑)。とことん人間の業の深さを描きます。とっても濃いです。お話も役者の顔も。これは、これで見応えがあったなと。ネタバレを考慮して結末はボカしますが、ハイライトは今妻の“ダメ押し”でしょうか。エグいっすねえ。ポップコーンとコーラを片手に観るような映画ではありませんので、ご注意ください。[DVD(吹替)] 7点(2017-09-15 22:21:07)(良:1票) 695. オー・マイ・ゼット! 《ネタバレ》 いやはや、まったく驚きました。ゾンビパロディの傑作『ショーン・オブ・ザ・デッド』に退けをとらない面白さと言いたい気分。『シン・ゴジラ』も真っ青の、おバカなリアルシミュレーション“もしも日本にゾンビが現れたら”に感心することしきり。そうですよね、弱点だらけのゾンビにこの社会が支配されるなんてウソっぱちですよね。この切り口には大いに納得いたしました。アンダーグラウンドのゾンビ活用法も実にらしいなと。ヒトの欲望は果てしなく、マニアの数だけ趣向がある。唯一の常識人(?)、角ちゃんのツッコミが冴え渡ります。(東京03のコントと見紛いますけれども)。大いに笑わせて頂きました。であるがゆえに終盤、正調“ゾンビもの”へシフトなどせず、きっちりコメディで押しきって欲しかったと思うのです。(注:ちゃんと序盤から転調に対する伏線は張っているんです。演出も脚本も仕事は丁寧でした。でも、シリアス要素を入れ込むこと自体がありきたりというか、無難に置きにいった感があるんです。)ゾンビ映画なのに結局誰も死なねえのかよ!何だよハラワタひとつ出ねえのかよ!そんなツッコミを(角ちゃんのように)嬉々として入れたくなってしまった私が悪いのですが。意欲作で間違いないでしょう。[DVD(邦画)] 7点(2017-09-05 19:26:57)(良:1票) 696. ドント・ブリーズ 《ネタバレ》 勧善懲悪、白黒ハッキリ付いているお話は分かりやすくて好きですが、感情の置き場所に困るような複雑な要素を孕む物語は、もっと好物です。“自業自得だけど情状酌量の余地はある”vs“境遇に同情はするがやってるコトがキチ過ぎる”。う~ん、どちらに感情移入しようかしら。ウソです。同じ犯罪でも感覚的な罪の重さ(法で規定する量刑の重さに比例しない)には、大きな差異がありました。“セキュリティ会社の内部犯+視覚障害者の弱みにつけこむ窃盗”も相当悪質ですが、“拉致監禁+強姦罪”は、それを遥かに上回ります(侵入者に対する過当防衛は不問としても)。つまり、観客は窃盗犯サイドに肩入れし、この自業自得な悪夢と対峙する羽目になります。 暗闇、室内閉鎖空間、番犬、銃、格闘スキル。弱者と強者の立場を逆転させるマジックはお見事で、命懸けの目隠し鬼ごっこを堪能させていただきました。後味も秀逸です。ほぼ真相は藪の中ということ。それでいいのでしょうか。いえ、良いはずがありません。しかし、主人公には自らの手札を切る勇気は残されていないでしょう。大金を手にした代償は、ある種の呪い。選択肢を奪われるのは恐ろしいことです。トリッキーかつテクニカルな”技あり“ホラーで、王道サスペンスに飽きた御仁には特にオススメの一作であります。[DVD(吹替)] 7点(2017-08-25 01:41:59)(良:1票) 697. 人狼ゲーム ラヴァーズ 《ネタバレ》 本作初登場の役職は“キューピッド”。プレイヤーの中から任意で2名を“恋人”に指名する役目です。恋人はサブ役職で、片方が死ねば自動的に死亡。最後まで生き残れれば、キューピッドと共に生還とのこと。つまり、村人、人狼とは運命を異にする第3勢力が“恋人+キューピッド”でした。人狼(2人)は互いに協力できるアドバンテージがあるワケですが、恋人陣営も共闘でき、しかも人狼を数で上回る3人組。さらに、恋人のうち1人は人狼から選出されたという幸運つき。この優位は圧倒的です。数の多い序盤さえ乗り切れれば、恋人陣営に負けはありません。事実、主人公(人狼であり恋人)のサバイバルという点においては、シリーズ中最も“安心”して観ていられました。サスペンスとしては弱点とも言えます。その分、終盤の選択でドラマが用意してありましたが、個人的には今一つ腑に落ちないものでした。積極的にネタバレを書くのは憚られるのでボカしますが、“そこまでする行動原理が果たして彼女にはあったのか?”と。“正当防衛であり強制された殺人”と“欲望(私怨)達成のための人殺し”には、人間として簡単には越えられない高い壁があると考えます(おそらく彼女はゲームを通じて本物の人狼に転化したのでしょう)。とはいえ、本作もシリアスなシリーズのテイストは堅持されており、かつ若手俳優の皆さんの熱演もあり、満足度の高い仕上がり。素晴らしいです。[DVD(邦画)] 7点(2017-07-30 09:29:35)(良:1票) 698. 死霊館 エンフィールド事件 《ネタバレ》 『死霊館』の感想でも書きましたが、“実話もの”は個人的にはマイナス要素(可能性の幅が狭まるので)。それでも本格派オカルトホラーとして堅実なつくりで好印象です。やはり脚本は一級品でしょう。悪魔に操られていた幽霊からのメッセージの件は痺れました。後味の悪くないホラーというのも逆に新しいかもしれません。信頼できるシリーズ映画との認識です。[DVD(字幕)] 7点(2017-06-20 21:52:53) 699. 殿、利息でござる! 《ネタバレ》 現役最強クラスの喜劇役者・阿部サダヲが主演で、先行ポスターの図柄は、阿部の頭に銭のちょんまげ。こりゃどうしたって、軽いタッチの(例えるなら『超高速参勤交代』のような)コメディを想像してしまいます。ところがどっこい。これがしっかりシリアス、がっちり人情話。正直想像していたものとは違いました。しかしこれはこれで、面白かったと思います。本作で一番興味深かった点は、先代・浅野屋甚内の“秘話”が事態を動かす突破口となり得た点。これ“結果が全て”と言ってもいい現代の価値観では在り得ない話。結果よりも経過を尊ぶ、日本人本来の美徳は、心地よいものでありました。これが実話とは嬉しい限り。「昔は良かった」とは言いませんが、「良いところもあった」のは間違いないでしょう。[DVD(邦画)] 7点(2017-06-05 20:46:32) 700. ヘイトフル・エイト 《ネタバレ》 本作を楽しめるか(受け入れられるか)の試金石は、“床下からの狙撃”シーンと考えます。ミステリー的には完全にアウト。終盤に初登場したキャラが犯人なんて反則技もいいところでしょう。でも「嘘つきだらけ」を公言している映画である以上、「そんなのズルイ」という批判は門前払いです。監督が一番の嘘つき。そもそもタイトルに偽りあり。なんとまあ卑怯な映画でしょうか。でも会話劇のマニアックさ、無駄とも思える長回し、刺激過多の残虐シーン、徹頭徹尾「馬鹿映画」の体裁ゆえ、観客の方がバカ負けしてしまうのです。良い映画ではないけれど、決して嫌いじゃない。褒める気はないものの、貶す気もない。胸糞悪いストーリーなのに、妙に清涼感あり。そんな不思議な映画でした。2時間50分という尺を知らず夜中に観始め、完全に明日の仕事に支障が出る時間を過ぎても途中で止められなかったくらいですから、私の趣向に合っていたのは間違い無さそうです。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-04-10 20:43:41)
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