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Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL //www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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61.  ガチ☆ボーイ 《ネタバレ》 記憶障害によって普通なら連続しているはずの人生が細切れにされ、毎朝まったく予想外の一日に直面しなければならない青年――毎日がガチンコ勝負、まさにガチ☆ボーイの物語。 悪い意味でマンガ的な演出、使い古されたギャグが多く、初めのうちは白けた。しかし後半での涙腺への波状攻撃がやばかった……。いかにも泣かせようというのが見え見えであるのにも関わらず、ベタな展開でベタに泣かされた。また、さり気ないところが実はかなり熱い。先輩と二人で風呂に入ったときのじんとくるやりとり。親父が読んだ日記の、「父さんと茜は一生僕を背負って生きていくのか」、という一節。 全編明るく、からっとした空気でハッピーエンド。でもよく考えてみればこのあとにも五十嵐にはけっして平穏ではない人生が待っているはずで、扱われている題材は極めて重い。それを吹き飛ばそうとするエネルギー、どんなに辛い一日の終わりにも「オレはプロレスをやる」と言い切る強さがあまりにも真っ直ぐで、眩しくて、泣けた。 役者は若い人ばっかりで、ときには拙いと思える部分もあったにはあったけれど、なぜかこの映画なら許せる。彼らの若さが、大学のサークル特有のあの緩いんだか熱いんだかわからない雰囲気にマッチしてる。 脇役ではドロップキック佐田の配置が良い。五十嵐の憧れの存在でありながら、音楽に関する絶望的な才能のなさ、マリリン・マンソンの仲間みたいな彼女のためにプロレスを捨てるバカさ加減、最後に美味しいところをもってっちゃう心憎さ。この役の配置は絶妙だったと思う。 なにより素晴らしいのは主演の佐藤隆太。彼がこの映画の成功の最大の理由であることは間違いない。なんだろう、いかにも名演技といった器用さが目に付くわけではないのに、自然に立ち上がる誠実さ、実直な人物像には誰にも真似できないものがある。好感を抱かずにいるのが難しいほどで、才能というより人徳という言葉がふさわしいかもしれない。 すごくまっとうなお話で、脚本作りのノウハウがあからさまに目につく部分もあるのだけれど、けっして否定する気にはなれない。まっとうなお話でまっとうに感動させるのは、そう簡単なことじゃないのだ。[DVD(邦画)] 8点(2008-10-10 19:32:05)(良:2票) 《改行有》

62.  やわらかい手 アイディアは独創的だけれど、あらすじから想像できる以上のものは何もなかった。俳優陣は与えられた役割を最大限果たしている。でも台詞のほとんどはあらかじめ引かれたストーリーのレールを辿るだけのもので、人物の体温が感じられない。 友達とのエピソードなんかは取ってつけたように思えた。息子さんとの関係も当然こうなるんだろうと予想される範囲内の展開で、それでも別に構わないんだけど、もっと丁寧な心理描写があればなおよかったと思う。どの登場人物もまるで脚本家の手で動かされるコマのよう。厚みを持った人間としての存在感がない。 全編を覆う鬱な音楽にも首をひねってしまう。一箇所も明るいトーンがないのは、なぜ? もしかしたら少しアキ・カウリスマキを意識しているのかもしれないけれど、あの世界観を中途半端に真似るのはあまりに危険でしょう。[DVD(字幕)] 5点(2008-10-10 18:21:07)《改行有》

63.  ホステル 《ネタバレ》 ちっとも怖くなかった。久々に時間を無駄にしたと思ったけど、他の方のレビューは意外と好意的なのですね? まあ確かに自分は恐怖のツボが独特なんですけど。 脚本は意外性を重視した畳み掛けるような展開で、目が離せないのは事実。でもその分、行き当たりばったり感が目につく、でたらめな話に思える。気楽なB級のノリと割り切ってついていければよかったのだけれど、前半があまりにもぐだぐだなのにうんざりしてしまった。事前に終盤が復讐劇になると知った上で観賞したのが致命傷だったのか、緊迫感も感じなかった。脱出シーンなんかあまりにも易々と逃げるし。 途中で少年時代に溺れる幼児を助けられなかった、というトラウマが語られるけど、もしも女性を助けに戻るシーンがそれを受けているとしたら、見せ方が下手。ていうかせっかく助けた女の子も死ぬ以上、伏線としての効果がなきに等しい。削っていいのでは? 加えて、売りにできるほどの残酷描写はない。かといって直接的な描写を省いて恐怖を盛り上げるテクニックがあるわけでもない。変態連中の拷問にも主人公の復讐にも、観ているこちらに痛みが伝わってくることはなかった。心理描写も大味で、音楽の大仰さは完全にギャグ。タランティーノはわざとやってるのか、偽日本人にはほとほとうんざりさせられた。カタカナ日本語を聞くだけで腰の骨が砕けるのは自分だけなのか。 「お菓子をくれなきゃぶち殺すぞ」的な子どもギャングはちょっと可愛かった。『キャビン・フィーバー』のパンケーキ少年といい、イーライ・ロス監督の映画は無闇に子どもが強いなあ。 正直いって不満は残るが、前知識ゼロ、かつシリアスなノリを期待しなければ、B級ホラーとして楽しめたのかもしれない。宣伝で過激さを強調した割りにそうした要素が弱く、なんというか、「面白い」けど「怖くない」。やたらと評判のいいロス監督だが、ぶっちゃけた話、騒ぐほどの才能なのか、個人的には疑問。本当に天才だったらもう少し物議をかもす、賛否両論のものを撮ると思うよ。[DVD(字幕)] 4点(2008-09-27 18:38:22)《改行有》

64.  ミスト 《ネタバレ》 「キングのファンとしては、割と原作のイメージに忠実であるというだけで嬉しかった。タコ足の登場シーンでは普通なら失笑してると思うけど、「うわ、懐かしー」と喜んでしまった。そうそう、数あるキングの小説のなかでも『霧』は飛び抜けてB級風味が強いんだよね。 ラストの賛否が分かれるのは当たり前。ただ正直な話、原作のぼやけた幕切れよりは数段ましだと思う。微かな希望を暗示する結末ではあったが、はっきりいってお茶を濁して終わった印象だった。キング本人が映画版の結末を認めたのも、あの中篇の最大の欠点がそこにあると自覚していたからじゃないだろうか。 このラストはあざといといえばそれまでだが、作品のコンセプトが明快になったのも確かだと思う。つまりは、ときには災難それ自体よりも人の恐怖心やパニック、絶望のほうが命取りになり得る、ということ。誰も指摘しないのが不思議だけれど、この作品の状況設定はスーパーマーケットに閉じ込められる『ゾンビ』によく似ている。『ゾンビ』の方は人間同士の悪意によって自滅するのに対し、こちらは精神的な脆さに焦点がある。仮に異次元の怪物ではなく大規模な自然災害を題材に選んだとしても、似たようなストーリーが成立したはずだ。 冷静に振り返れば、実は人々が冷静、かつ用心深くさえいれば、死傷者は半減しただろう。怪我人が霧中に危険があると証言した時点で、そこに留まって警察や軍隊の救援を待つというごく当たり前の判断をしていればよかったのだ。遭難したときに下手に動かずレスキューを待つのが賢いのと一緒で。ところが恐怖という感情は厄介なことに、伝染する。スーパーから逃げ出すはめになったのは恐怖心に支配された群衆のせいだが、逃避行に最悪の形で終止符を打ったのは、自分たちの恐怖心のせいだ。そもそも冷静に考えれば、工夫次第でさらに生き延びることができたはずではないか? 最後に再登場するあの母親が、もう一歩で助かり得たのだという冷厳な事実を突きつける。 ところでこの狂信者の女、アメリカ人からするとどれだけリアリティが感じられるキャラクターなのか、気になるところだ。日本人からすればこいつに惑わされるなんて絶対ありえないように思うが……いや、細木数子みたいなのがいれば数人は騙されるのか?[DVD(字幕)] 8点(2008-09-26 11:56:27)(良:1票) 《改行有》

65.  アメリカン・ギャングスター 《ネタバレ》 思うに、この物語の見所は二つある。 一つは己の信じる道を行く、ルーカスとロバーツの生き様の対比。二人は昼と夜のように正反対の世界に生きているが、常識を破り自分の力で道を切り開いていく強い信念の持ち主であるという点ではよく似ている。 二つ目は汚職警官の告発に際して、その対照的な二人の間に芽生える不思議な絆だ。ルーカスは凶悪な犯罪者ではあるが、その根底には貧困と人種差別、腐敗した警察機構といった社会の歪みへの怒りがあり、裏社会のトップに立つことでハーレムに一定の秩序を与えようとする意識があった。そのためロバーツが内部告発の手助けを持ちかけたとき、ルーカスは初めて警官に対して、共感と、敬意を覚えた。このとき、対照的な二人の生き方が初めて重なる。 しかしリドリー・スコット監督がこの感動的な物語を、100%完璧に表現できているかというと、残念ながら全然そうではないと思う。これがテレビのドキュメントドラマだったら文句はいわないが、多少のお金がかかっているというだけで、それ以上でのレベルではない。 脚本は確かに悪くはなく、テンポの良さもあって長丁場も飽きさせない。しかし、それだけだ。きれいにまとまっているだけで、目に焼きつくような場面もなく心を打つような台詞もなかった。フランクにしてもリッチーにしても、人物像は伝えているが深い内面まで踏み込んだ描写が致命的に少ない。話が平坦なのは実話だからではなく、焦点が定まっていない脚本と演出の問題だ。さまざまなエピソードをそつなくまとめるだけでは、原作のダイジェストにしかならない。展開はスピーディだが、その分観た者の胸に響くような重みは失われてしまった。 冒頭の処刑場面は、過激ではあるがありがちで、しかもほとんど内容のないエピソードだ。あのインパクトだけのつまらないプロローグが、この作品の中途半端さを表しているように思う。手堅く話をまとめただけで傑作ができるわけではない。この物語にしか込められないテーマをしっかり伝えようという意識があれば、不用意に平凡なエピソードを使ったりはしないはずだ。[DVD(字幕)] 6点(2008-09-10 19:40:58)《改行有》

66.  クローバーフィールド/HAKAISHA 《ネタバレ》 ディズニーランドのアトラクションの、映像に同調して座席がぐいんぐいん揺れるやつを思い出した。乗り物酔いは一切しない体質なので個人的には平気だったが、辛い人は辛いだろうなと思う。実際そういう上映方法をしても違和感はないレベルだった(健康には障るだろうけど)。 自由の女神の首が飛んで来る画は、それだけでニューヨークの死を明示する名場面。しかし以降それを上回る劇的な映像はなく、ちょっと退屈した。地下鉄に入ってからのありきたりな展開がとても残念。 有名俳優を起用しないことで登場人物の普通っぽい雰囲気が増し、また誰が生き残るか予想がつきにくくなっている。怪物の全貌を見せずに恐怖感を煽るところもそうだが、『エイリアン』第一作を思わせるテクニックを怪獣に用いたところが斬新。 でもこの映画に一番影響を与えているのは過去の作品ではなく9・11の記録映像だろうと思う。粉塵が押し寄せる光景は現実そのまま。家族から電話がかかってくる下りは、描写が素朴なだけに痛々しかった。幕の閉じ方も非常に秀逸。パーティーのときに暗示するような応答はあったが、なるほどあの伏線をこう回収するのか、と感動させられた。カメラマンをあえてああいう性格にすることで視点を明快にしたのも上手い。 ただ、実験精神は買うけれども、全体として普通に面白かったかというとそうでもない。せめてもう一箇所、女神像レベルの見せ場があれば作品が引き締まったのではないかと思う。[DVD(字幕)] 6点(2008-09-09 18:56:53)(良:1票) 《改行有》

67.  ジェシー・ジェームズの暗殺 《ネタバレ》 合衆国最初の銀行強盗であり列車強盗でもあるジェシー・ジェームズと、彼に憧れる若者ロバート・フォードの愛憎劇。派手なアクションはなく、渋めの人間ドラマに仕上がっている。冴えない青年暗殺者フォードは、ジョン・レノン殺害犯のチャールズ・ホイットマンを髣髴とさせる。 個人的には波長が合っていたのでそんなに気にならなかったけれど、この淡々とした語り口は冗長と批判されても仕方がないだろう。西部開拓時代の寒々とした空気が美しく表現されており、とくに列車の灯が暗闇を切り裂いて近づいてくる場面では、どんな傑作が始まるのかとわくわくした。 しかし脚本がちょっと、問題ありだった。ある部分では必要以上に丁寧に描写し、その割りに変なところを説明だけですませる。端的にいえば下手。なので別に複雑な話でもないのにすんなり入ってこない。主人公の心情を、それもクライマックスだというのに第三者のモノローグで説明してしまうのには、ちょっと呆れた。 それでも作品に見応えを与えているのは、素晴らしい俳優陣のおかげだろう。ブラッド・ピットは台詞のない場面でも表情と仕草だけでジェシー・ジェームズを創り上げている。アフレックの演技は冒頭ではちょっとわざとらしい気もしたけれど、ストーカー気質の青年の薄気味の悪さはよく出ていた。この映画のやたらと長い間がすべて成功しているとは思わないが、良いと思える場面では必ず役者が貢献している。 タイトルになっている暗殺の場面は痛ましい。恐怖と焦燥感に背中を押されるように引き金を引くボブ、人を疑うことに疲れ、半ば覚悟して背中を向けるジェシー・ジェームズ。英雄と称えられた男の最後を、寂しいくらいに人間らしく描いている(ただ、子どもを出すのはちょっぴりあざといと思った)。 欠点も目立つが、ブラッド・ピットに敬意を表してちょっと甘めの8点。[DVD(字幕)] 8点(2008-09-07 11:32:48)《改行有》

68.  ノーカントリー 《ネタバレ》 すごく面白いサスペンスが、終盤に無理に立派なことをいおうとしてバランスが崩れた、という印象。逆にいえば、深いテーマの作品なのにエンターテインメントの部分に必要以上に比重が傾いてしまっている。 映像・音・脚本ひっくるめての映画的な表現力については、文句なしにすごいと思う。これまでのコーエン作品に通じる雰囲気はもちろんあるが、あきらかに一段上のステージに上っている。音楽を廃し、微かな音と陰影の鮮やかな映像で張り詰めた空気を作り上げていく手腕は素晴らしい。とくに光と闇の扱い方が印象的で、とりわけ明け方の荒野での逃亡場面は鮮烈だった。シガーが夜の鉄橋を渡る途中にカラスを撃ち落とすさりげない場面も、悪夢のような独特の幻惑感がある。金網の切れ目を延々と映したり、足もとの血溜まりをひょいと避けたりといった妙にリアルな視点は、コーエン兄弟ならでは。悲惨な新聞記事を読み上げられて、若い保安官補がつい笑ってしまう、といった細かい描写も実に冴えている。映画の四分の三を観た時点では、諸手をあげて絶賛できると思っていた。 ただ、暴力が蔓延する社会の悲惨さを訴える割には、この映画の作り手たちが楽しんで暴力を描いている点が気にかかった。どこか似た雰囲気の『ヒストリー・オブ・ザ・バイオレンス』でも淡々と凄惨な暴力が為されるが、あちらが常に嫌悪感が付いてまわる(しかし目は釘付け状態)のに対して、こちらはシガーという強い個性に引きずられてか、サスペンスとして普通に楽しめてしまう。老保安官がいくら米国の現状を嘆いても、あの空気銃のインパクトの前には霞む。コーエン兄弟はこのシガーという殺人者を、愛情を持って描きすぎた。痴漢もののアダルトビデオで「絶対に性犯罪は許されない」と主張してもばかばかしいのと一緒で(例えが悪くてごめんなさい)、暴力を糾弾する作品にレクターを引き合いに出されるようなアンチヒーローは必要ない。 ルウェリンの死以降、緊張感が薄れ、極端な省略が増えて流れがつかみ難くなる。老人が夢を語って終わる映画があってもいい。しかし大半をサスペンスで通してきたのだから、サスペンスとしての着地点を期待してしまうのが当然だ。バランスよく構成を組み上げていないから、ラストのちぐはぐ感が拭い切れなくなる。さまざまな面で突出しているにも関わらず、匙加減を間違えた、非常にもったいない作品だと思う。[DVD(字幕)] 8点(2008-09-02 07:46:05)《改行有》

69.  ボルベール/帰郷 《ネタバレ》 恥を忍んで言うが、わけがわからない。正直、宇宙人のドラマを見せられているようだった。 つまらないとは思わないし、むしろ面白い。しかしたとえば映画の撮影スタッフが訪ねて来たその場でレストランを開こうと決めるところとか、全然思考回路が理解できない。旦那が死んでその死体が冷凍庫にまだ入っているのに、その場で商売を? 「え? え?」と言っているうちに物語がどんどん進んでいく。気持ちの切り替えが早いとか、ポジティヴというレベルではない。前に進むことしか知らない生命力の弾丸のような行動に、終始開いた口がふさがらなかった(悪い意味でなく)。 同監督の映画を他にも観たけれど、するりと消化できるようなものが一本もなく、必ず「はあ??」となってしまう。これは自分が男だからなのか、あるいは根っからのネガティヴ人間だからなのか……なのに、面白いといえば面白いのだから、戸惑ってしまう。なんなんだろう、このアルモドバルという人は?[DVD(字幕)] 8点(2008-08-18 22:22:39)(良:1票) 《改行有》

70.  となりのトトロ 正直子どもの頃に観てもいまいち、だったけれど、大人になってからは素直に楽しめる。今になると、カンタのいかにも男の子って感じの、ひねくれた可愛さもわかる(ファニング姉妹が声優を務めている英語版をちらっと観たら、カンタがちょっとおしゃべりになっていて興醒めだった)。 あと、階段の上り下りの場面などに観られる子ども特有の動き、細かな描写に改めて感心する。さつきが縁側から上って膝で座敷を歩く動作、そういえば子どもの頃、これを真似してやるようになったのだった。あの妹が教室に来てしまう場面も、わかる(うちの妹がああだった)。泣くときに顔がくしゃっとなる、あのリアリティもすごい。 大人になって初めて、この映画のよさがわかった気がする。子どもの世界に忠実すぎるあまり、ほんとうに子どもだと普通に流して観てしまうのだと思う。 また、世界観がすごい。大体にしてトトロもまっくろくろすけもねこバスも、同じような妖怪・妖精の類が伝承にあるわけでもない(トロルは名前が似てるだけでまったくといっていいほど違う)のに、普通に日本の田園風景に馴染んでしまっている。日本伝統のお化けというならわかるけど、宮崎駿の頭の中からひねり出された新参者の妖精たちが、なんの違和感もなく日本人に受け入れられてしまう。何気に、これは驚異的なことだと思う。田舎に親しみ、自然に同調するまでに豊かな感受性がなければこんなことはできない。 舞台は地名だけは関東地方のものをもじっているものの日本各地の風景を合成したものだそうだし、時代にしても特定の年代を象徴する描写はあえてされていない。日本人の心の底に眠るノスタルジーを汲み取って、結晶化した世界なのだ。宮崎駿のほかに誰がこんなことをできるだろう?[DVD(邦画)] 9点(2008-08-17 18:40:21)《改行有》

71.  レザボア・ドッグス 《ネタバレ》 初めて観たときは相当感動したものだけれど、観返すとそんなには――という感じだった。洒落た会話というのがそんなにピンとこなくて、とくにオレンジの回想パートなんか、なにが面白いのか全然わからない。冒頭や、コードネームを決めるときに大の男が「ピンクは嫌だ!」と本気で騒ぐところは面白かったけれど。逆に、大男同士でじゃれあう場面は今観て初めて良さがわかった気がする。ブルー登場以降の息詰まる展開はやはり圧巻。 公開からそれなりの年月が経った今でもタランティーノの個性は際立っていて、ろくなエピゴーネンすら生まれていない(生まれようがない?)。強い感銘は受けなかったけれど、タラの才能の得難さをつくづく再認識した。 ていうかあの目立たないおじさん、犯罪小説家(で、元常習犯罪者)のエドワード・バンカーだったのか。代表作の『ドック・イート・ドック』に似た感触のお話だなとは思っていたが、やっぱり影響は強かったんだなーと納得した。[DVD(字幕)] 8点(2008-08-16 02:34:33)《改行有》

72.  ダークナイト(2008) 《ネタバレ》 何より脚本が素晴らしい。第一級のエンターテインメントでありながら重いテーマに繋がる流れには淀みがなく、完成されている。 ジョーカー対バットマンの人知を賭した戦いは目が離せず、理屈ぬきに面白かった。ジョーカーの病的なまでに狡猾な策と、バットマンの取る破天荒かつ大胆な手段との対決には、アクションの爽快さと頭脳戦のサスペンスの両方が盛り込まれている。意表を突いた展開の連続はよくできたミステリーのようだし、アクションシーンの凄まじさはハリウッド映画の真骨頂といっていいだろう。 ジョーカーというキャラクターの魅力はこれまでのどんな悪役も及ばない“わけのわからなさ”、予測不可能の狂いっぷりにあるように思う。カリスマ性であればレクター博士などにはもちろん劣るが、しかしバットマンに蹴りつけられながらけたたましく笑い転げるあの底知れない不気味さ、予測不可能の恐怖は前代未聞だ。いたずら好きの残酷な子どもをそのまま大きくしたような純粋な悪意と、実は相当に理性的な知性の同居。これが怖い。 バットマンに関していえば、今回“財力”という要素を特徴的に扱っている点がユニークだったと思う。とくにアリバイ作り、スカイフック作戦の下りはほとんど『おぼっちゃまくん』『富豪刑事』レベルで、ちょっと笑えた。 しかしこれまでのアメコミヒーローとの決定的な違いは、自らを“必要悪”として認識しているところだろう。初めから、本来なら自分はいない方がいい存在であると考えていて、あくまでも主役は司法、自らは補助役に回る。 人が怒りや憎しみ、恐怖を抜きにして正義を為すことの難しさを真正面から描いている点は、アメリカ映画としては稀に見る誠実な作品だと思う。同じ立場にあって、自分はトゥーフェイスではなくバットマンでいられる、と言い切れる人がどれだけいるだろう?(しかもそのバットマンも、愛する人に選ばれなかったという真実は知らない上での、強さなのである)。後味は重苦しいが、しっかりとテーマに向き合っているからこその結末だろう。 これだけの要素を盛り込みながら二時間半、中だるみは一切なし。少なくとも娯楽作に限っては、おそらく2008年のベストじゃないだろうか。[映画館(字幕)] 9点(2008-08-15 18:37:27)(良:4票) 《改行有》

73.  バットマン ビギンズ 《ネタバレ》 誕生秘話ということで、どことなく『スパイダーマン』っぽい。自分なりの正義を問うところや、ヒロインとの距離の取り方といったそこかしこが似ている。敵キャラクターが主人公が成長するための踏み石的な存在である分、魅力に欠けているという点も、『スパイダーマン』に似ている。わかるけどやっぱりちょっと、バットマンシリーズとしては寂しい。 キリアン・マーフィのDrクレインが嵌まり役だったのだからもう少し活躍させてもいいんじゃないかと思った。せっかく恐怖心を呼び起こす幻覚剤を使う敵なのだから、今回のテーマにも沿うネタだったはず(たとえばバットマンが解毒剤ではなく精神力で幻覚をねじ伏せる、みたいな場面を取り入れればよかったんじゃないかと)。 バットマンシリーズにしてはちょっと“健康的”な雰囲気だった。ドラマとしては悪くないけど、アメコミらしい美学には乏しいので、従来のファンから非難されているのは理解できなくもない。クライマックスの列車の下りなんか、どこかの平凡なアクション映画で観たような気がした。[DVD(字幕)] 6点(2008-08-14 16:58:25)《改行有》

74.  グッバイ、レーニン! 《ネタバレ》 政治を題材にしつつ、同時にコメディタッチの温かい家族ドラマでもあるという稀有な作品。社会主義というと怖いイメージしかなかったけれども、思想の根底には平和と幸福を追求する純粋さがあるのかなあと思わされた(だからこそ恐ろしくもあるんだろうけれども)。 息子のお手製の偽ニュース映像を観て母親が泣くクライマックスはほんとうに素晴らしい。政治的きな臭さや現実の過酷さを、息子の強引極まりない嘘が振り切ってしまう。当然のごとく嘘は破綻するのだけれども、嘘というフィルターを透してかえってその愛情の真っ当さが顕わになるという脚本の上手さには、唸った。母親の「素晴らしいわ」という言葉は息子の嘘に調子を合わせてはいるんだけど、嘘じゃないんだよね。あの瞬間、突き通した嘘が真実になった。 「グッバイ、レーニン」というタイトルも秀逸。母親の純粋さは裏を返せば致命的なもろさでもあったはずで、本来ならかつての心の支柱であった社会主義に訣別するのは不可能だったろう。しかし映画を最後まで観ると、彼女は確かにこう言えたはずだと思えるのだ。[DVD(字幕)] 9点(2008-08-06 17:28:40)《改行有》

75.  トレインスポッティング レディオヘッドの某曲みたいな印象的なモノローグから始まり、イメージを連鎖させるような疾走感あふれる流れで物語が展開していく。物語そのものは単純極まりない。なんというか、詩的だと思う。 しかし当時はお洒落映画だったのだろうが、今見ると色褪せた感は否めない。美しい映像というのもどこのことだかわからないし、音楽の使い方もタランティーノなどに比べると格段に下手で、ちょっぴり浮いているようにすら感じる(タラが上手すぎるのか?)。 ユアン・マクレガーやロバート・カーライルの演技は素晴らしく、あきらかにしょうもないダメ人間だし鬱陶しいんだけれども、なんでかちょっと可愛らしい(?)、ほっとけない感が巧みに醸し出されている。インパクトがあるのは便所に潜るところ。えぐさ、汚さにかけては時代を経てもなかなか、強烈だった。[DVD(字幕)] 7点(2008-08-06 16:16:14)《改行有》

76.  28週後... 《ネタバレ》 ゾンビ映画は数あれど、すぐに忘れ去られてしまうのが明白なものが九割以上。しかしこれは、久々に当たりといっていい良作だったと思う。筋書きの荒さが目立つが、それにしても主題の明確さ、映像や音楽の質の高さは頭一つ抜けている。 狙撃部隊による無差別攻撃や、ナパーム弾で炎上する市街地の場面はとくによくできていると思う。かつての名作『ゾンビ』でショッピングセンターをだらだらと徘徊するゾンビたちに現代人の虚ろさを重ねて見ることができたのと同じように、この映画の凄まじい勢いで襲い来るゾンビたちには戦場における人間の暴力性を重ねることができる。 間の抜けた無計画さ、一見理性的なようでいて極端すぎる決断、いざというときには歯止めが利かない獣性によって見る見るうちに無残な結果へ向かっていくさまは、まったく現実の米軍を見ているようで、洒落になっていない。そういう意味では、『ドーン・オブ・ザ・デッド』などよりも遥かに“走るゾンビ”の必然性があるように感じられた。 残酷なエピソードが多く、それも生理的というよりは精神的に訴えてくるのがこの映画の特徴だ。家族で殺しあったり、軍唯一の良心ともいうべき兵士があっけなく焼き殺されてしまったりと、驚くほど救いがない。閉所恐怖と暗所恐怖の両方を同時に覚える地下鉄の下りは見る人によっては半ば拷問ではないかと思う(まあヘリコプターの攻撃は、半ばギャグだけど)。 中盤、姉弟がバイクで疾走する廃墟と化したロンドンの光景が印象に残った。無人の市街地の寂寥とした美しさに、全編を覆う絶望的なヴィジョンが集約されているように思う。[DVD(字幕)] 8点(2008-08-06 15:46:30)(良:1票) 《改行有》

77.  ティファニーで朝食を 久しぶりに映画を観るのではずしたくないな、と思って名作を借りたら思いっきりはずした。のっぺりした映像に、冴えない台詞。あの日本人描写は、仮に自分が差別主義者の白人だったとしても笑えないと思う。ちょうちんにぶつかったりとか、ドアにぶつかったりとか、チャップリンよりも時代をさかのぼってんじゃないの? 音楽だけはよかった。 映画以外の分野でもそうだけど、ときにはこういった作品が存在する。時代性と、ちょっとした幸運にめぐまれて「名作」と化した、中身のともなわない凡作。ヘップバーンと猫のシーンだけ編集して、ムーンリバーのプロモにした方がいくぶん価値が上がるだろう。[DVD(字幕)] 4点(2008-07-08 12:30:26)《改行有》

78.  アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎作品に特徴的なのは、そこかしこに散りばめられた独特のセンスによる遊び心と、ささやかなユーモアの一撃でもって暗い絶望を軽やかに飛び越えてしまう、不思議な力にあると思う。ひょうひょうとしてさり気ない、しかし妙に心強い救済の力。この映画はディティールには多少の差異があるとしても、そうした本質の部分を完璧にものにできている。 細かい脇役にまで気が配られているのがまたいい雰囲気。なぜか悪役がハローバイバイ(しかも妙にしっくり)だったり、本屋のばりばり訛ってる店員がめちゃくちゃ可愛かったり(エンドクレジットそのまんまで笑った)、父さんがチンカチンカのルービーの人だったり。こうした配置は絶妙で、得難いセンスが感じられた。 ていうかこの監督の次回作、長嶋有の『ジャージの二人』!? 面白いには面白いけど、映画原作としてあれを選ぶとは……。伊坂ワールドも楽しいが、中村義洋ワールドにも期待。原作と比べても甲乙付け難い出来だけど、個人的には映画のほうが好きですらあった。[DVD(邦画)] 7点(2008-04-15 15:38:39)《改行有》

79.  プラネット・テラー in グラインドハウス 《ネタバレ》 いやー、最高。グロ耐性のある自分としては文句なしに楽しかった。「あいつは法王の××××並みに役立たずだった」は死ぬまでに一度は使ってみたい名言中の名言。 残酷シーンは盛りだくさんだったけれど、それを別にすればけっこうきれいな映像が多かったのは好印象。意図的に傷んだフィルムのように見せかけた効果は大成功じゃないだろうか。悪ふざけといえば悪ふざけだが、ほんとうに冴えた悪ふざけだと思う。ベッドシーンの途中で「フィルムが焼失しました」のテロップが流れたのには大笑い(…しつつ、本気でがっかりした)。 義足マシンガンで戦うシーンはやっぱり最高だった。あのブリッジ! 別にブリッジで避ける必要なかったけどあのブリッジ! ブルース・ウィリスがビン・ラディンを殺したと告白するところとか、タイトル『プラネット・テラー』とかいって別に宇宙関係ないところとか、いちいち小ネタが面白い。ロドリゲス監督のコメンテーターも笑えてよかった(息子に対する仕打ちがひどすぎwww)。 スプラッターのノリが限度を超えているせいで人に奨められないのが残念だけど、個人的にはめちゃくちゃ楽しかった。くだらなさをとことん突き詰めた、B級映画の結晶とでもいうべき代物です。[DVD(字幕)] 9点(2008-04-14 14:34:15)(良:1票) 《改行有》

80.  ラストキング・オブ・スコットランド 《ネタバレ》 ウィッテカーの脂ぎった熱演が素晴らしい。役作りはウディ・アミンの人間性についての綿密な取材に基づいているそうで、心の弱い人間であれば確かに引きずられるだろうと思わせる力強さには、尋常じゃない説得力があった。その上演説は巧み、やろうと思えばユーモアのセンスまで発揮できるわけだから、一触即発の情勢を抱えた国であれば大衆が引き込まれたのも無理はないと思う。 映画を観ていく内に熱に浮かされていくような感覚があり、それがそのまま青年医師が半ば自覚的に(? たぶん)破滅に向かう姿に重なる。おぞましいのにどこか魅惑的な狂気の世界を、肌で感じることができた。昔読んだ原作がもっと長かったのでラストでは肩透かしを食らってしまったけれど、それがなければ普通に満足度の高い作品だったと思う。アフリカの土俗的な熱気を映像に封じ込めているという点だけとっても、稀有な作品といえるんじゃないだろうか。[DVD(字幕)] 8点(2008-04-12 22:47:30)《改行有》

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