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プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL //www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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61.  ファウスト(1994) 微妙。クレイアニメを期待していたら人形劇が中心で、肩透かしを食らった。ところどころに独特の発想があるのは確かだけれど、全体としては退屈だった。短篇集ならまだしも、このシュールな展開で九十分以上もたせるのは無理がある。 とくに人形劇やアニメーションではない場面の映像は非常に安っぽく、よく言えば味わいがあるのかもしれないが、普通の古い海外ドラマの映像と変わらないレベル。男が鞭を振るって呪文を唱える場面には正直、失笑してしまった。 湿り気のある不気味さはシュヴァンクマイエル独自の持ち味だが、さして刺激的でもなく、完成度が高いわけでもない。感性に任せて作られた意味不明な作品もあってもいいと思うが、それなら相応のクオリティとテンションを保ってほしいと思う。[ビデオ(字幕)] 4点(2009-01-14 16:25:59)《改行有》

62.  イースタン・プロミス 《ネタバレ》 人間の抱える矛盾、屈折した心理を巧みに描いている。主要な登場人物のほぼ全員が何らかの葛藤を抱え、それが歪んだ形で行動に現れている。同性愛者である自分を認められず相棒に娼婦を抱かせるキリル、流産した子どもの代替として行きずりの赤ん坊に執着するアンナ、覆面捜査官の域を逸脱した行為に出るニコライ――。 とりわけセミヨンの抱える矛盾は深刻だ。息子への憎悪と愛情、組織の秩序の尊重とエゴイズム、異国の少女を家畜扱いする一方で身内の娘を「天使」という。組織の規則を破ってまで息子を救おうとしたにも関わらず、最後にはその息子の手で幼い娘を殺させようとする。自己矛盾を統制しきれずに単純にエゴイスティックな行動に出た結果が、ついには破滅を呼ぶ。 ニコライが覆面捜査官になった理由は何だろうか。おそらくは最初から、正義感の裏側に自分でも認めたくない悪への憧憬があったことだろう。アンナに告げる「さよなら」の言葉が、彼のその後の選択を示している。 こうした矛盾、屈折にこそ人間が人間であることの苦しみがある。それは往々にして、悪が生まれる隙でもある。ラストで繰り返される少女の独白は、人が抱える闇の深さを物語っているかのようだ。[DVD(字幕)] 9点(2008-12-15 18:16:01)(良:3票) 《改行有》

63.  アフタースクール 《ネタバレ》 どんでん返しがキモの作品はたくさんあるが、この作品の趣向はよくできた「騙し絵」のようだ。一見して理解したつもりでいた光景が、少し角度をずらしただけでまったく異なる意味合いを持って見えてくる。観終わってすぐに再び初めから見直したくなる、精妙巧緻な仕掛けだ。ネタそのものがすごいというよりも、その観せ方が憎らしいほど上手い。真相の意外さよりも、実はその真相が(ある意味では)初めからずっと目前にあった、という衝撃が新鮮だった。『SAW』などの力技で騙す作品も悪くはないが、伏線をきれいに回収していくこの手並みの鮮やかさは素晴らしい。 ただし構成の精緻なミステリーの宿命で、敷かれたレールがしっかりしているのに反比例して登場人物が人間味を失ってしまう、物語のためのコマでしかなくなってしまうという短所からは逃れられていない。しかも本作の場合、一つの場面から二重の解釈ができるような微妙な雰囲気が強いられるため、普通以上に抑えた演技が多く、ますます感情移入が難しくなるというハンディを抱えている。個人的には気持ちよく騙してくれたからそれでOKなのだが、だめな人はだめだろうと思う。 ちなみに大泉ファンであればコメンタリーは必聴。期待に違わぬ、清々しい下らなさだった。監督と妙に仲がいい(笑)[DVD(邦画)] 7点(2008-12-15 18:12:56)(良:2票) 《改行有》

64.  ルネッサンス 映像革命と言うけれど、この程度の革命ならプロモーションビデオで充分。装いは新しいが内実は空虚、過去の作品の寄せ集めでしかないプロットとキャラクターは退屈そのものだ。 それどころか映像手法でさえ十二分に駆使されているとはいえない。やろうと思えばもっと美しい画を追求できたのでは? 白黒のなかに一部カラーを差し込むのは予想できたが……どうしてあんなくだらない使い方ができたのだろう? あらゆる面でお粗末な出来だ。 予告編にあった「構想十年」という言葉が事実なら、お気の毒としか言いようがない。[DVD(字幕)] 4点(2008-12-10 09:30:52)《改行有》

65.  JUNO/ジュノ 《ネタバレ》 う~ん……なんだかとても、釈然としない。確かに堕ろすよりは、良い里親を見つけて養子縁組をする方が賢明な選択であるようにも思える。しかし無計画な妊娠それ自体が大きな失敗で、養子縁組もまた苦渋の結果だった、という現実には変わりない。なのにあのあっけらかんとしたハッピーエンド。もうちょっと罪悪感を持ってほしいと思う自分は、頭が古いのだろうか。 それに妊娠の責任を一切負わなかったへたれのボーイフレンド、あれにジュノが惚れ直してしまう展開がどうしても理解できない。彼はジュノの妊娠に際して積極的な行動を一切取っておらず、まだ若いことを差し引いてもダメ男そのもの。だがジュノは「最高にクール」だという。おいおい、自分の無責任を棚にあげて「傷つけられたのは僕の方だ。君は子どもじみてる」と抜かす奴のどこがクールなんだ? この作品のコンセプトとしては、表面的には軽く、でも不謹慎なようでいて実は考えるべきところはちゃんと考えている、って辺りを目指したんだろう。でもどういった形であれ、一人の子どもの人生を、自分達の手で育てることなく決定付けてしまったなら、それは決して褒められた行動じゃない。「妊娠したら堕ろせばいい」という考えよりは「妊娠したら他人にあげればいい」という考えの方がましかもしれないが、けれども安易なのには違いないし、無責任さでは五十歩百歩だろう。 明るくポジティヴなのも、限度を超えればただのバカ。なんでもかんでもポップでクールにすればいいってもんじゃないよ。[DVD(字幕)] 6点(2008-12-05 09:42:34)(良:1票) 《改行有》

66.  ガチ☆ボーイ 《ネタバレ》 記憶障害によって普通なら連続しているはずの人生が細切れにされ、毎朝まったく予想外の一日に直面しなければならない青年――毎日がガチンコ勝負、まさにガチ☆ボーイの物語。 悪い意味でマンガ的な演出、使い古されたギャグが多く、初めのうちは白けた。しかし後半での涙腺への波状攻撃がやばかった……。いかにも泣かせようというのが見え見えであるのにも関わらず、ベタな展開でベタに泣かされた。また、さり気ないところが実はかなり熱い。先輩と二人で風呂に入ったときのじんとくるやりとり。親父が読んだ日記の、「父さんと茜は一生僕を背負って生きていくのか」、という一節。 全編明るく、からっとした空気でハッピーエンド。でもよく考えてみればこのあとにも五十嵐にはけっして平穏ではない人生が待っているはずで、扱われている題材は極めて重い。それを吹き飛ばそうとするエネルギー、どんなに辛い一日の終わりにも「オレはプロレスをやる」と言い切る強さがあまりにも真っ直ぐで、眩しくて、泣けた。 役者は若い人ばっかりで、ときには拙いと思える部分もあったにはあったけれど、なぜかこの映画なら許せる。彼らの若さが、大学のサークル特有のあの緩いんだか熱いんだかわからない雰囲気にマッチしてる。 脇役ではドロップキック佐田の配置が良い。五十嵐の憧れの存在でありながら、音楽に関する絶望的な才能のなさ、マリリン・マンソンの仲間みたいな彼女のためにプロレスを捨てるバカさ加減、最後に美味しいところをもってっちゃう心憎さ。この役の配置は絶妙だったと思う。 なにより素晴らしいのは主演の佐藤隆太。彼がこの映画の成功の最大の理由であることは間違いない。なんだろう、いかにも名演技といった器用さが目に付くわけではないのに、自然に立ち上がる誠実さ、実直な人物像には誰にも真似できないものがある。好感を抱かずにいるのが難しいほどで、才能というより人徳という言葉がふさわしいかもしれない。 すごくまっとうなお話で、脚本作りのノウハウがあからさまに目につく部分もあるのだけれど、けっして否定する気にはなれない。まっとうなお話でまっとうに感動させるのは、そう簡単なことじゃないのだ。[DVD(邦画)] 8点(2008-10-22 18:27:44)(良:2票) 《改行有》

67.  やわらかい手 アイディアは独創的だけれど、あらすじから想像できる以上のものは何もなかった。俳優陣は与えられた役割を最大限果たしている。でも台詞のほとんどはあらかじめ引かれたストーリーのレールを辿るだけのもので、人物の体温が感じられない。 友達とのエピソードなんかは取ってつけたように思えた。息子さんとの関係も当然こうなるんだろうと予想される範囲内の展開で、それでも別に構わないんだけど、もっと丁寧な心理描写があればなおよかったと思う。どの登場人物もまるで脚本家の手で動かされるコマのよう。厚みを持った人間としての存在感がない。 全編を覆う鬱な音楽にも首をひねってしまう。一箇所も明るいトーンがないのは、なぜ? もしかしたら少しアキ・カウリスマキを意識しているのかもしれないけれど、あの世界観を中途半端に真似るのはあまりに危険でしょう。[DVD(字幕)] 5点(2008-10-10 18:25:23)《改行有》

68.  キャビン・フィーバー(2002) 《ネタバレ》 有名監督が絶賛する価値があるのかな? 「イーサンはホラー映画の未来だ」だそうだけど、目新しいものはなくむしろ「過去」を観ているような気がする。理解不足のためか、面白さがよくわからなかった。後半の展開はまったく予想がつかないが、むちゃくちゃ過ぎて怖くない。  別に陸の孤島というわけでもないのに、都合のいい偶然の連続で逃げられない。どれだけ不運なのか。それに、あの店の連中は一体なんなの? 平気で死体を焼く警察といい、この地方の連中みんなおかしいよ。あの伝染病は風土病かなにかで、彼らはもう慣れてるんだろうか? 主役の突然の冷徹さも意味不明。残るは疑問ばかり。 そしてこの残酷さと牧歌的な雰囲気を併せる結末、古典ホラー『2000人の狂人』からそのまんま引用している。観た人の3%ぐらいにしか伝わらない上に、笑いにもならないパロディはパクリも同然。そもそも元ネタの方が断然怖かったし、なにがしたかったんだ? ホラーにはそれなりに詳しいつもりだが、こういうマニアの内輪受けを狙った狡すからいネタは好きじゃない。[DVD(字幕)] 5点(2008-09-27 19:06:44)《改行有》

69.  ホステル 《ネタバレ》 ちっとも怖くなかった。久々に時間を無駄にしたと思ったけど、他の方のレビューは意外と好意的なのですね? まあ確かに自分は恐怖のツボが独特なんですけど。 脚本は意外性を重視した畳み掛けるような展開で、目が離せないのは事実。でもその分、行き当たりばったり感が目につく、でたらめな話に思える。気楽なB級のノリと割り切ってついていければよかったのだけれど、前半があまりにもぐだぐだなのにうんざりしてしまった。事前に終盤が復讐劇になると知った上で観賞したのが致命傷だったのか、緊迫感も感じなかった。脱出シーンなんかあまりにも易々と逃げるし。 途中で少年時代に溺れる幼児を助けられなかった、というトラウマが語られるけど、もしも女性を助けに戻るシーンがそれを受けているとしたら、見せ方が下手。ていうかせっかく助けた女の子も死ぬ以上、伏線としての効果がなきに等しい。削っていいのでは? 加えて、売りにできるほどの残酷描写はない。かといって直接的な描写を省いて恐怖を盛り上げるテクニックがあるわけでもない。変態連中の拷問にも主人公の復讐にも、観ているこちらに痛みが伝わってくることはなかった。心理描写も大味で、音楽の大仰さは完全にギャグ。タランティーノはわざとやってるのか、偽日本人にはほとほとうんざりさせられた。カタカナ日本語を聞くだけで腰の骨が砕けるのは自分だけなのか。 「お菓子をくれなきゃぶち殺すぞ」的な子どもギャングはちょっと可愛かった。『キャビン・フィーバー』のパンケーキ少年といい、イーライ・ロス監督の映画は無闇に子どもが強いなあ。 正直いって不満は残るが、前知識ゼロ、かつシリアスなノリを期待しなければ、B級ホラーとして楽しめたのかもしれない。宣伝で過激さを強調した割りにそうした要素が弱く、なんというか、「面白い」けど「怖くない」。やたらと評判のいいロス監督だが、ぶっちゃけた話、騒ぐほどの才能なのか、個人的には疑問。本当に天才だったらもう少し物議をかもす、賛否両論のものを撮ると思うよ。[DVD(字幕)] 4点(2008-09-27 18:44:15)《改行有》

70.  ミスト 《ネタバレ》 「キングのファンとしては、割と原作のイメージに忠実であるというだけで嬉しかった。タコ足の登場シーンでは普通なら失笑してると思うけど、「うわ、懐かしー」と喜んでしまった。そうそう、数あるキングの小説のなかでも『霧』は飛び抜けてB級風味が強いんだよね。 ラストの賛否が分かれるのは当たり前。ただ正直な話、原作のぼやけた幕切れよりは数段ましだと思う。微かな希望を暗示する結末ではあったが、はっきりいってお茶を濁して終わった印象だった。キング本人が映画版の結末を認めたのも、あの中篇の最大の欠点がそこにあると自覚していたからじゃないだろうか。 このラストはあざといといえばそれまでだが、作品のコンセプトが明快になったのも確かだと思う。つまりは、ときには災難それ自体よりも人の恐怖心やパニック、絶望のほうが命取りになり得る、ということ。誰も指摘しないのが不思議だけれど、この作品の状況設定はスーパーマーケットに閉じ込められる『ゾンビ』によく似ている。『ゾンビ』の方は人間同士の悪意によって自滅するのに対し、こちらは精神的な脆さに焦点がある。仮に異次元の怪物ではなく大規模な自然災害を題材に選んだとしても、似たようなストーリーが成立したはずだ。 冷静に振り返れば、実は人々が冷静、かつ用心深くさえいれば、死傷者は半減しただろう。怪我人が霧中に危険があると証言した時点で、そこに留まって警察や軍隊の救援を待つというごく当たり前の判断をしていればよかったのだ。遭難したときに下手に動かずレスキューを待つのが賢いのと一緒で。ところが恐怖という感情は厄介なことに、伝染する。スーパーから逃げ出すはめになったのは恐怖心に支配された群衆のせいだが、逃避行に最悪の形で終止符を打ったのは、自分たちの恐怖心のせいだ。そもそも冷静に考えれば、工夫次第でさらに生き延びることができたはずではないか? 最後に再登場するあの母親が、もう一歩で助かり得たのだという冷厳な事実を突きつける。 ところでこの狂信者の女、アメリカ人からするとどれだけリアリティが感じられるキャラクターなのか、気になるところだ。日本人からすればこいつに惑わされるなんて絶対ありえないように思うが……いや、細木数子みたいなのがいれば数人は騙されるのか?[DVD(字幕)] 8点(2008-09-26 12:00:15)(良:1票) 《改行有》

71.  クローバーフィールド/HAKAISHA 《ネタバレ》 ディズニーランドのアトラクションの、映像に同調して座席がぐいんぐいん揺れるやつを思い出した。乗り物酔いは一切しない体質なので個人的には平気だったが、辛い人は辛いだろうなと思う。実際そういう上映方法をしても違和感はないレベルだった(健康には障るだろうけど)。 自由の女神の首が飛んで来る画は、それだけでニューヨークの死を明示する名場面。しかし以降それを上回る劇的な映像はなく、ちょっと退屈した。地下鉄に入ってからのありきたりな展開がとても残念。 有名俳優を起用しないことで登場人物の普通っぽい雰囲気が増し、また誰が生き残るか予想がつきにくくなっている。怪物の全貌を見せずに恐怖感を煽るところもそうだが、『エイリアン』第一作を思わせるテクニックを怪獣に用いたところが斬新。 でもこの映画に一番影響を与えているのは過去の作品ではなく9・11の記録映像だろうと思う。粉塵が押し寄せる光景は現実そのまま。家族から電話がかかってくる下りは、描写が素朴なだけに痛々しかった。幕の閉じ方も非常に秀逸。パーティーのときに暗示するような応答はあったが、なるほどあの伏線をこう回収するのか、と感動させられた。カメラマンをあえてああいう性格にすることで視点を明快にしたのも上手い。 ただ、実験精神は買うけれども、全体として普通に面白かったかというとそうでもない。せめてもう一箇所、女神像レベルの見せ場があれば作品が引き締まったのではないかと思う。[DVD(字幕)] 6点(2008-09-20 07:13:12)(良:1票) 《改行有》

72.  アメリカン・ギャングスター 《ネタバレ》 思うに、この物語の見所は二つある。 一つは己の信じる道を行く、ルーカスとロバーツの生き様の対比。二人は昼と夜のように正反対の世界に生きているが、常識を破り自分の力で道を切り開いていく強い信念の持ち主であるという点ではよく似ている。 二つ目は汚職警官の告発に際して、その対照的な二人の間に芽生える不思議な絆だ。ルーカスは凶悪な犯罪者ではあるが、その根底には貧困と人種差別、腐敗した警察機構といった社会の歪みへの怒りがあり、裏社会のトップに立つことでハーレムに一定の秩序を与えようとする意識があった。そのためロバーツが内部告発の手助けを持ちかけたとき、ルーカスは初めて警官に対して、共感と、敬意を覚えた。このとき、対照的な二人の生き方が初めて重なる。 しかしリドリー・スコット監督がこの感動的な物語を、100%完璧に表現できているかというと、残念ながら全然そうではないと思う。これがテレビのドキュメントドラマだったら文句はいわないが、多少のお金がかかっているというだけで、それ以上でのレベルではない。 脚本は確かに悪くはなく、テンポの良さもあって長丁場も飽きさせない。しかし、それだけだ。きれいにまとまっているだけで、目に焼きつくような場面もなく心を打つような台詞もなかった。フランクにしてもリッチーにしても、人物像は伝えているが深い内面まで踏み込んだ描写が致命的に少ない。話が平坦なのは実話だからではなく、焦点が定まっていない脚本と演出の問題だ。さまざまなエピソードをそつなくまとめるだけでは、原作のダイジェストにしかならない。展開はスピーディだが、その分観た者の胸に響くような重みは失われてしまった。 冒頭の処刑場面は、過激ではあるがありがちで、しかもほとんど内容のないエピソードだ。あのインパクトだけのつまらないプロローグが、この作品の中途半端さを表しているように思う。手堅く話をまとめただけで傑作ができるわけではない。この物語にしか込められないテーマをしっかり伝えようという意識があれば、不用意に平凡なエピソードを使ったりはしないはずだ。[DVD(字幕)] 6点(2008-09-13 14:51:47)《改行有》

73.  ブラッド・ダイヤモンド 《ネタバレ》 アクションパートは「銃撃戦開始」→「走って逃げる」の繰り返しで、話がだれそうになったらとりあえず襲われるみたいな安易な繋ぎもあり、エンターテインメントとしてはけっこう単調な作りだと思う。しかし戦闘シーンそのものの真に迫った凄惨さと、アフリカの残酷すぎる状況が、走って逃げるだけの場面にも異様な緊張感を与えている。娯楽の要素と社会派の要素が相互に補い合っている、珍しい例。 子どもが兵士にされるとは聞いたことがあったけど、まさかこれを映像化するとは思わなかった。アフリカの紛争ニュースを聞くと、人間ってほんとうにどこまでも残酷になれる生きものなんだと痛感させられる。 純粋な好みでいうとハリウッドテイストはなしで、もっと重くしてほしかった。面白いとは思うけどテーマが重要な割りにあっさりしすぎていて、このストーリーだと二三年で忘れてしまいそうだ。[DVD(字幕)] 6点(2008-09-10 21:02:25)《改行有》

74.  世界最速のインディアン とても真っ直ぐなお話ですね。序盤、あまりにも真っ直ぐ過ぎて一歩引いてしまったんだけども、バートの人柄の良さに引き込まれ、最後には心のなかで(いけ! がんばれ!)と応援していた。名優アンソニー・ホプキンスの演技は文句のつけようがなく、憎めない、というか好きにならずにいるのは難しいおじいちゃんを完璧に演じていた。周囲の人々の優しさと応援があって夢を叶えるに至るプロセスもいい。善人ばかりでリアリティがない、という声もありますけど、そうかな? 案外世の中捨てたもんじゃないし、ときにはこういう素敵な展開もあっておかしくないと思います。善意にあふれた人物には、周囲も鏡のように善意を返すものです(? たぶん)。そういう意味で、ホプキンスの愛すべき変人じじいっぷりは、この映画に説得力を与えています。[DVD(字幕)] 6点(2008-09-10 21:01:33)(良:1票)

75.  バットマン ビギンズ 《ネタバレ》 誕生秘話ということで、どことなく『スパイダーマン』っぽい。自分なりの正義を問うところや、ヒロインとの距離の取り方といったそこかしこが似ている。敵キャラクターが主人公が成長するための踏み石的な存在である分、魅力に欠けているという点も、『スパイダーマン』に似ている。わかるけどやっぱりちょっと、バットマンシリーズとしては寂しい。 キリアン・マーフィのDrクレインが嵌まり役だったのだからもう少し活躍させてもいいんじゃないかと思った。せっかく恐怖心を呼び起こす幻覚剤を使う敵なのだから、今回のテーマにも沿うネタだったはず(たとえばバットマンが解毒剤ではなく精神力で幻覚をねじ伏せる、みたいな場面を取り入れればよかったんじゃないかと)。 バットマンシリーズにしてはちょっと“健康的”な雰囲気だった。ドラマとしては悪くないけど、アメコミらしい美学には乏しいので、従来のファンから非難されているのは理解できなくもない。クライマックスの列車の下りなんか、どこかの平凡なアクション映画で観たような気がした。[DVD(字幕)] 6点(2008-09-10 21:00:47)《改行有》

76.  ペイルライダー 《ネタバレ》 黒沢清監督が奨めていたので観てみた。思ってたよりも単純明快で、あっけなくて、でもなぜか拍子抜けはしない。なんでしょうね、このシンプルなのに重くて、物悲しい感じは。牧師の過去は意味ありげなほのめかしがあるだけで結局明らかにされないのに、中途半端な印象は受けない。回想に踏み込めば多少は込み入り、泥臭くなりかねないところを、あえて短く控えめにまとめることで微かな気品すらまとっている。暗闇のなかで奇妙に光るイーストウッドの瞳、あれは名場面です。敵方一味も、脂っけのない保安官といい、個のない兵隊人形のような六人の助手といい、人ならぬ異様な雰囲気で面白かった(その割りに弱っちいけど)。無駄な色気のまったくない、西部劇の王道。しかし贅肉を清々しいまでに削ぎ落とした結果としてありふれた物語が清浄な空気を獲得し、この作品を非凡なものにしている。[DVD(字幕)] 7点(2008-09-10 20:59:30)

77.  ジェシー・ジェームズの暗殺 《ネタバレ》 合衆国最初の銀行強盗であり列車強盗でもあるジェシー・ジェームズと、彼に憧れる若者ロバート・フォードの愛憎劇。派手なアクションはなく、渋めの人間ドラマに仕上がっている。冴えない青年暗殺者フォードは、ジョン・レノン殺害犯のチャールズ・ホイットマンを髣髴とさせる。 個人的には波長が合っていたのでそんなに気にならなかったけれど、この淡々とした語り口は冗長と批判されても仕方がないだろう。西部開拓時代の寒々とした空気が美しく表現されており、とくに列車の灯が暗闇を切り裂いて近づいてくる場面では、どんな傑作が始まるのかとわくわくした。 しかし脚本がちょっと、問題ありだった。ある部分では必要以上に丁寧に描写し、その割りに変なところを説明だけですませる。端的にいえば下手。なので別に複雑な話でもないのにすんなり入ってこない。主人公の心情を、それもクライマックスだというのに第三者のモノローグで説明してしまうのには、ちょっと呆れた。 それでも作品に見応えを与えているのは、素晴らしい俳優陣のおかげだろう。ブラッド・ピットは台詞のない場面でも表情と仕草だけでジェシー・ジェームズを創り上げている。アフレックの演技は冒頭ではちょっとわざとらしい気もしたけれど、ストーカー気質の青年の薄気味の悪さはよく出ていた。この映画のやたらと長い間がすべて成功しているとは思わないが、良いと思える場面では必ず役者が貢献している。 タイトルになっている暗殺の場面は痛ましい。恐怖と焦燥感に背中を押されるように引き金を引くボブ、人を疑うことに疲れ、半ば覚悟して背中を向けるジェシー・ジェームズ。英雄と称えられた男の最後を、寂しいくらいに人間らしく描いている(ただ、子どもを出すのはちょっぴりあざといと思った)。 欠点も目立つが、ブラッド・ピットに敬意を表してちょっと甘めの8点。[DVD(字幕)] 8点(2008-09-07 11:40:31)《改行有》

78.  ノーカントリー 《ネタバレ》 すごく面白いサスペンスが、終盤に無理に立派なことをいおうとしてバランスが崩れた、という印象。逆にいえば、深いテーマの作品なのにエンターテインメントの部分に必要以上に比重が傾いてしまっている。 映像・音・脚本ひっくるめての映画的な表現力については、文句なしにすごいと思う。これまでのコーエン作品に通じる雰囲気はもちろんあるが、あきらかに一段上のステージに上っている。音楽を廃し、微かな音と陰影の鮮やかな映像で張り詰めた空気を作り上げていく手腕は素晴らしい。とくに光と闇の扱い方が印象的で、とりわけ明け方の荒野での逃亡場面は鮮烈だった。シガーが夜の鉄橋を渡る途中にカラスを撃ち落とすさりげない場面も、悪夢のような独特の幻惑感がある。金網の切れ目を延々と映したり、足もとの血溜まりをひょいと避けたりといった妙にリアルな視点は、コーエン兄弟ならでは。悲惨な新聞記事を読み上げられて、若い保安官補がつい笑ってしまう、といった細かい描写も実に冴えている。映画の四分の三を観た時点では、諸手をあげて絶賛できると思っていた。 ただ、暴力が蔓延する社会の悲惨さを訴える割には、この映画の作り手たちが楽しんで暴力を描いている点が気にかかった。どこか似た雰囲気の『ヒストリー・オブ・ザ・バイオレンス』でも淡々と凄惨な暴力が為されるが、あちらが常に嫌悪感が付いてまわる(しかし目は釘付け状態)のに対して、こちらはシガーという強い個性に引きずられてか、サスペンスとして普通に楽しめてしまう。老保安官がいくら米国の現状を嘆いても、あの空気銃のインパクトの前には霞む。コーエン兄弟はこのシガーという殺人者を、愛情を持って描きすぎた。痴漢もののアダルトビデオで「絶対に性犯罪は許されない」と主張してもばかばかしいのと一緒で(例えが悪くてごめんなさい)、暴力を糾弾する作品にレクターを引き合いに出されるようなアンチヒーローは必要ない。 ルウェリンの死以降、緊張感が薄れ、極端な省略が増えて流れがつかみ難くなる。老人が夢を語って終わる映画があってもいい。しかし大半をサスペンスで通してきたのだから、サスペンスとしての着地点を期待してしまうのが当然だ。バランスよく構成を組み上げていないから、ラストのちぐはぐ感が拭い切れなくなる。さまざまな面で突出しているにも関わらず、匙加減を間違えた、非常にもったいない作品だと思う。[DVD(字幕)] 8点(2008-09-02 07:52:58)《改行有》

79.  ボルベール/帰郷 《ネタバレ》 恥を忍んで言うが、わけがわからない。正直、宇宙人のドラマを見せられているようだった。 つまらないとは思わないし、むしろ面白い。しかしたとえば映画の撮影スタッフが訪ねて来たその場でレストランを開こうと決めるところとか、全然思考回路が理解できない。旦那が死んでその死体が冷凍庫にまだ入っているのに、その場で商売を? 「え? え?」と言っているうちに物語がどんどん進んでいく。気持ちの切り替えが早いとか、ポジティヴというレベルではない。前に進むことしか知らない生命力の弾丸のような行動に、終始開いた口がふさがらなかった(悪い意味でなく)。 同監督の映画を他にも観たけれど、するりと消化できるようなものが一本もなく、必ず「はあ??」となってしまう。これは自分が男だからなのか、あるいは根っからのネガティヴ人間だからなのか……なのに、面白いといえば面白いのだから、戸惑ってしまう。なんなんだろう、このアルモドバルという人は?[DVD(字幕)] 8点(2008-08-18 22:22:39)(良:1票) 《改行有》

80.  となりのトトロ 正直子どもの頃に観てもいまいち、だったけれど、大人になってからは素直に楽しめる。今になると、カンタのいかにも男の子って感じの、ひねくれた可愛さもわかる(ファニング姉妹が声優を務めている英語版をちらっと観たら、カンタがちょっとおしゃべりになっていて興醒めだった)。 あと、階段の上り下りの場面などに観られる子ども特有の動き、細かな描写に改めて感心する。さつきが縁側から上って膝で座敷を歩く動作、そういえば子どもの頃、これを真似してやるようになったのだった。あの妹が教室に来てしまう場面も、わかる(うちの妹がああだった)。泣くときに顔がくしゃっとなる、あのリアリティもすごい。 大人になって初めて、この映画のよさがわかった気がする。子どもの世界に忠実すぎるあまり、ほんとうに子どもだと普通に流して観てしまうのだと思う。 また、世界観がすごい。大体にしてトトロもまっくろくろすけもねこバスも、同じような妖怪・妖精の類が伝承にあるわけでもない(トロルは名前が似てるだけでまったくといっていいほど違う)のに、普通に日本の田園風景に馴染んでしまっている。日本伝統のお化けというならわかるけど、宮崎駿の頭の中からひねり出された新参者の妖精たちが、なんの違和感もなく日本人に受け入れられてしまう。何気に、これは驚異的なことだと思う。田舎に親しみ、自然に同調するまでに豊かな感受性がなければこんなことはできない。 舞台は地名だけは関東地方のものをもじっているものの日本各地の風景を合成したものだそうだし、時代にしても特定の年代を象徴する描写はあえてされていない。日本人の心の底に眠るノスタルジーを汲み取って、結晶化した世界なのだ。宮崎駿のほかに誰がこんなことをできるだろう?[DVD(邦画)] 9点(2008-08-17 18:40:21)《改行有》

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