みんなのシネマレビュー
かっぱ堰さんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

◆検索ウィンドウ◆

◆ログイン◆
メールアドレス
パスワード

◆ログイン登録関連◆
●ログインID登録画面
●パスワード変更画面

◆ヘルプ◆
●ヘルプ(FAQ)

◆通常ランキング◆
●平均点ベストランキング
●平均点ワーストランキング
●投稿数ランキング
●マニアックランキング

◆各種ページ◆
●TOPページ
●映画大辞典メニュー
●アカデミー賞メニュー
●新作レビュー一覧
●公開予定作品一覧
●新規 作品要望一覧照会
●変更 作品要望一覧照会
●人物要望一覧照会
●同一人物要望一覧照会
●関連作品要望一覧照会
●カスタマイズ画面
●レビュワー名簿
●お気に入り画面
Google

Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 1251
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

投稿関連 表示切替メニュー
レビュー表示レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示作品用コメント関連表示人物用コメント関連表示あらすじ関連表示
コメントなし】/【コメント有り】
統計メニュー
製作国別レビュー統計年代別レビュー統計
要望関連 表示切替メニュー
作品新規登録 / 変更 要望表示人物新規登録 / 変更 要望表示
要望済関連 表示切替メニュー
作品新規登録 要望済表示人物新規登録 要望済表示
予約関連 表示切替メニュー
予約データ 表示

評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
616263
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
616263
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
616263

781.  海の金魚 《ネタバレ》 「チェスト!」(2008)の監督が、同じく鹿児島の海を舞台にして撮った青春映画である。前回は結構よかったが、今回は残念な結果になっている。 まず台詞が変に説明的で不自然なところがあり、また肝心のストーリーも観客が素直にわかるようにできていない。不法係留少女に関する物語はあまりにファンタジックで、「冒険」「宝探し」とかいう要素が現実世界の中で浮いて見える。一方で人殺し少女はより現実世界に寄せた形だが、これはこれで設定や展開の現実味のなさが目についてしまって共感できない。 加えてテーマ上は些細なことかも知れないが、地元の若手漁業者を最底辺のゴロツキのような扱いにするのは許されるのか。不法係留しておいて開き直った上に、咎めた漁業者のほか県当局までを悪役扱いしており、これでよく鹿児島県の推薦などもらえたものだ。また人殺し少女の父親が、実行委員としては動けないが父親としては動けるというのでは、親の情を示すというより親の権威を背景にしてルールを曲げた話にしか思われず、いったい現実社会というものをどの程度まともに意識して作ったのか疑わしい。 また一方では終始画面に赤黄青緑というような色がかかっているのが目障りで、空や海の素直な青が出ていない。あからさまに歌詞の入った歌や、悲しい場面での悲しいメロディなども過剰で苛立たしい。 そのほかご当地映画的に見た場合、桜島は何度も映るもののそれで地元らしさが出ていたのかどうかわからない。ヨットレースの扱いに関して自分としては何もいえないが、ヨットマンはともかく漁師には見せられない映画だったろう。 そういうことで映画全体としては褒められないが、不法係留少女役の若手女優はけっこう好きだ。かなり人工的な感じのするマンガのような人格をちゃんと演じていたのはご苦労様である。微乳なのでボーイッシュで活発な役に向いていると思ったがそれはよけいなことか。[DVD(邦画)] 4点(2016-10-25 19:59:44)《改行有》

782.  猫なんかよんでもこない。 《ネタバレ》 日頃ネコ映画を好んで見ているわけでないので比較できないが、動くネコ映像が満載というだけでなく、ネコを飼うことに関してもよくできた映画ではないかと思われる。 映画では子ネコを飼い始めるところから死期が迫った状態、及び死後のペットロスまでを短期間ながら一貫して扱い、その間にネコが引き起こす各種の出来事を入れてある。ほか人間側の心構えや気の持ち方も語らせており、こういうのは死んで初めて考えるよりも、生きているうちから考えていた方がいいことと思われる。 個人的に重要だと思ったのは、劇中で死んだネコはヒトの立場からすれば自分のせいで死んだと思われたかも知れないが、当のネコは自分の本能に従って一生を全うしただけだということである。台詞とは別の表現をすれば、過剰な思い入れを排してヒトの都合・ネコの都合と割り切った上で、たとえ同床異夢でも同じ空間と時間を生きることが大切だということが語られていた気がする。 一方でこの映画が好きになれないのは、主人公が本物の馬鹿に見えるからである。原作が30年前のため現代の常識が普及していないという言い訳もあるようだが、主人公は早い段階で外飼いをするな、避妊・去勢をしろと忠告されたのを無視して何もしなかったのであって、それで問題が起こって慌てる/泣くぐらいなら初めから対処しておけと言いたくなる。避妊した後で後悔していたのも考えが足りない。 こういうのはストーリー上で必要な教訓を導くための都合かも知れないが、それにしても現代日本では普通のことを、主人公はやっと最後になってわかるという展開は非常に苛立たしい。そういうお勉強の面でいえば、現に飼っている人というよりも、これからネコを飼いたい人が見るのがふさわしいともいえる。30年間の人類の進歩?を疑似体験する映画ということかも知れない。 ただ主人公は結局最後まで外出を許しており、これは家に閉じ込めることについて制作側(原作者?)の割り切りができていないのかと思ったりもしたが、何にせよこのために、周辺住民の生活被害という非常に重要な問題が扱われない形になっていたのはさすがに困ったことである。現代であればこの点は絶対に外せない。 ちなみに個人的な考え方を書いておくと、ヒトとネコの間で無理に上下関係を想定しなくてもいいのではと思う。ネコが自分を見下していると考える必要はない。[DVD(邦画)] 5点(2016-10-18 19:41:29)(良:1票) 《改行有》

783.  アナザヘヴン 《ネタバレ》 原作は読んでいない。TV版もあったようだが映画とは別物だそうである。 話の中身を簡単にいうと、人の心には善悪が並存していて、そのうち悪の部分だけを煮詰めた敵に善の部分が勝ったというようなことらしい。題名の説明らしきものも出ていたが、何にせよ普通の成人の目からすればごく普通の話で特に新たな発見はない。 また全般的に理屈はわかるが感情が伴わない場面が目立ち、特に女医を追い出した後の主人公の感傷などは唐突で、もっと事前の仕込みをしておかなければ共感も何もない。また終盤の「誘ってくれてありがとう」というのはかなり切ない台詞だったはずだが、言われて初めて当該場面に遡ってそういう意味だったのかと考えるようなもので、何かと後付けで納得を迫られる感じだった。そのように物語の構成要素が不足する一方、犯罪マニアの存在などこの映画に必要だったのか不明であり、映画化の際に整理できないまま半端になったような印象もある。 そのほか腹立たしいのは男どもが粗暴なことで、こういう頭の悪い連中は早く死ねばいいだろうと思いながら最後まで死ななかったのは後味が悪かった。善悪が分化する以前のケモノのようなのが人の良心を語るというのは片腹痛い。 そういうことで特に褒められない映画だが、しかし自分にとっては女優の存在が欠点を補っている面があり、特に主人公に拒絶された後の松雪さんの表情などは見ていて切ない。 また個人的には市川実和子という女優が結構好きで、この人の演じる天真爛漫な馴れ馴れしさとか精一杯の健気さなどを見ていると、映画自体の説明不足も何も関係なく全部わかったからもう文句いいませんと言いたくなる。「勝手に運命とか思い込んじゃった」というような台詞も愛しく思われて、かえって主人公の男が馬鹿なのに怒りを感じる。そのことからも、やはり男は全員死んでしまえばすっきり終わっただろうという気がした。それでは続編ができないので困るのだろうが。[DVD(邦画)] 4点(2016-10-18 19:41:26)《改行有》

784.  愛を語れば変態ですか 《ネタバレ》 コメディということになっているようだが特に笑うところはない。舞台劇のような映画は他にも見たことがあるのでそれ自体はいいとして、この映画に関してはことごとく噛み合わせを外したような展開が非常に苛立たしく、観客に対して答えを迫るような態度も煩わしい。執拗な相対化によって既成秩序をなし崩しに崩壊させていたのは常識に内在する価値を再認識させる意図なのか、あるいは崩壊自体を喜ぶ愉快犯のようなものか。 世界の不幸を放っておいて自分らだけが幸せになっていいのか、というのは、真面目に取れば一つの問いかけかも知れないが、一般論として自分の幸せを犠牲にしてまで不特定多数の他人を幸せにしようなどと考える人間はいない。幸せになれる人間をまず確実に幸せにした上で、その他の部分に対しては「愛は地球を救う」程度にしておくのが現実的であって、既存の枠組みを破壊してしまっては世界が崩壊して終わりである。 最後は完全に羽目を外したパニックホラーになっており、それまで市中に潜伏していたバケモノが正体を露わにして周囲の人間を襲い、被害が郊外から大都市へと拡大していく見通しを示していた。しかし被害者がまた被害者を生むゾンビパターンではなく発生源は一人のため、橋の向こうで鎮圧されて終わりになるのは目に見えている。こういうドタバタのようなものをどこまで真面目に見ればいいのかわからないが、とりあえず堅実に生きようとしている人間には馴染めない世界のようだった。 ちなみにこれを見た動機は題名のインパクト及び黒川芽以である。自分としては黒川芽以が出ていれば何でも見るわけではないが、黒川芽衣が主演だったからこそ見る気になった面もあり、今回は見てあまり得した感じではなかったが、引き続き黒川芽衣には期待していきたい。[DVD(邦画)] 3点(2016-10-13 19:52:57)《改行有》

785.  南風(なんぷう) 《ネタバレ》 台湾が舞台の自転車ロードムービーである。観光案内のようでもあるが、自分としては台湾に行ったことがないので別に悪い印象はなく、かえってストリートビューで少し現地の様子を見てみるかという気にもなる。ストーリーとしては人生の先行きに迷っていた3人が、この旅をきっかけにして新しい道を歩き出すということらしく、題名の「南風」は意味不明だが、例えば変化の予兆となる風というような意味づけだったのかも知れない。 面白かったのは日本人のおねえさんと台湾人少女のやり取りで、罵詈雑言の応酬などがかなり可笑しく、これだけでも楽しく見られる映画になっている。始終けんかしているようなのは遠慮のいらない関係ができているからで、要は本当の姉妹のようだということだろう。また日台関係に関しては、「龍騰断橋」のところで台湾人少女があからさまな親日感情を表明する一方、クールな台湾人青年の方は「家族みたいな関係」としながらも「時に嫌気がさす」と言っていた。これを日本人としてどのように捉えればいいのかわからないが、とりあえず(根拠はないが)台湾をやたらに世界の親日代表のように決めつけない方がいいのではと思ったりもした。あるいはこの映画全体として一つのあり方を示していたのかも知れない。 ところで騙されてはならない点として、台湾人少女役のテレサ・チーという女優は「維基百科,自由的百科全書」によるとアメリカ人とのハーフであり、こういう顔つきが現地では普通というわけではないと思われる。また生まれが1989/6/1のため劇中設定の1997/2/24より8歳も上で、黒川芽以(1987/5/13生まれ)とは2歳しか違わないのだった。これで16歳という設定がまかり通るのはどういうことかわからない。 個人的感覚としては、いかにオバサン扱いされようとも黒川芽以の方が和風でかわいく見えると言いたいところだが、なぜか途中から本当にオバサンっぽくなってもう黒川芽以だか何だかわからない顔になってしまうので困る。それでもオバサンのような女の子のような風情ではしゃいでいる姿は微笑ましい。 なお完全に余談だが、映画のポスター写真に使われた風力発電のある場所が気になったので調べると、苗栗県通霄鎮にある「石蓮園」という鉄道車両を利用した宿泊施設兼レストランだったが、ネット上には日本語の情報が極めて少ない。日本人にとっては超穴場的な場所ということになるだろうが、他人にお勧めできるところかどうかは不明である(YouTubeに現地語の動画が上がっている)。[DVD(邦画)] 6点(2016-10-13 19:52:54)《改行有》

786.  ひとまずすすめ 《ネタバレ》 群馬県藤岡市が舞台になっているが、積極的に地元PRをしようという意思は見えない。たまたま主演女優(斉藤夏美)がここの出身だったので地元としても協力した、という程度のことらしい。 本編は30分の短い映画だが、ほかに17分のスピンオフ「ひとまずすすんだ、そのあとに」も制作されており、これは3話オムニバスで後日談と続編を含んでいる。さらにマンガ版というのがあるが内容は前日談である。このマンガ版を本編・続編のリアルな実写版と比べると、身も蓋もない現実をこのように美化するのが少女マンガだ、ということを示したようで面白い。以上がDVDには全て入っており、全部見るとかろうじて通常の映画1本を見た気分になる。 ストーリーとしては人生の特定時期に、特定タイプの人物に起こりそうなことを淡々と描いた感じで、そのタイプに該当すればかなりの共感をもって見られるかも知れない。これが実際どの程度広く受け入れられるものかわからないが、宣伝文にある「現代の空気」というよりは、もう少し普遍的な内容になっているように思われる。 ただし当然ながら女子の都合に合わせた話になっており、かつファンタジーでもなく現実感のある内容のため、自分(男)としては素直に受け取れないところも少しある。まあそれはいいとしても最大の問題は、あまりにも話が普通すぎる、ということではないか(少し呆れた)。映画に刺激を求める人々には全く受けないだろうが、しかし、そういうものをあえて平然と作ろうとする態度は悪くない。これで普通の人々が元気をもらえるというなら他人事ながら喜ばしい。[DVD(邦画)] 5点(2016-10-01 14:07:11)《改行有》

787.  ガールズ・ステップ 《ネタバレ》 原作をそのまま映画化すると「幕が上がる」(2015)との違いが出なかったかも知れないが、映画ではより一般向けにアレンジして、多くの若年者が共感できる青春物語にしたように見える。少なくとも序盤は普通にほのぼのして可笑しく、フェスティバル出演のあたりまでは素直に楽しめる。「××JK」のJKはいわば職名のようなものだろうが一定の敬意も感じられて面白い。 しかし屈託ないのは前半のうちだけで、あとは意外にも重い話が続く。何で女子高生の話となると妊娠事件など出さなければ気が済まないかと思うが、主人公もまたすぐそこに答えが見えているのに気づかないのが非常にもどかしく、八方美人という設定らしいが強者に媚びているだけのようで説得力がない。また片思いの問題がどのように処理されたのかも不明瞭だった。 しかし全編の何か所かに感動ポイントが設けてあって泣かされるのも間違いない。「…自分のダンスを踊れ…」というのは万人向けの処方箋ではないだろうが、劇中人物のようにつぶれそうになっている連中がいるなら自分としてもそのように言ってやりたくなる。その上でみんなのためにということも考えればいいだろう。 ところで登場人物のうちメインのJKは原作でも5人だが、映画では劇中人物というより女優5人がそれぞれ存在感を出せる形で補正したようにも見える。 まず秋月三佳さんは予想を裏切らない感じだが、小芝風花さんはついこの前は可愛らしい魔女役だったのに今回はかなりシビアな役柄で、見せ場での渾身の(多分)演技には泣かされた。小野花梨さんは南極料理人のわがまま娘よりも大人になって個性がより前面に出ており、この人の見せ場にも泣かされる。上原実矩さんはヤンキー女子ぶりがベタだが「暗殺教室」とのギャップはかなり大きかったりする。また主演の石井杏奈という人は、ダンスはこの中で第一人者だろうが容貌としてはけっこう普通の(普通に可愛らしい)女子に見え、こういうと失礼だろうが他のキャストから突出して見えないのが全体の調和に貢献している。ちゃんと一人ひとりが主役になれそうな感じの映画なのは嬉しいことだった。 なお終盤でコーチを見送りに来ておいて、一度そのまま帰ろうとした場面は笑った。若いので対人関係の取り方がいい加減とも取れるが、若いからこそドライに心機一転して次のステージを目指すラストへも素直につながるように見えた。[DVD(邦画)] 6点(2016-10-01 14:07:07)《改行有》

788.  脳漿炸裂ガール 《ネタバレ》 これを見た動機は、竹富聖花という人名をたまたま自分が登録したために、その後の経過も追わなければならない気がしていたからである。そういう理由で見たからには、この人の凄味のある美少女ぶり(超絶美女/超お嬢様/まぢキレーーーーーー!!!!!!)を賞賛するのは当然のことで、また途中でそれまでの言動をひっくり返すようなことを言ったとしても、自分としてはどこまでもこの人を信じていくのが義務と思っていたが、最終的にその信頼は裏切られないで済んだことになる。この人の最後の言葉は見事に映画全体の締めくくりになっていて感動的だった。 またこの手の映画で全く血が飛ばないというのはかなり斬新だったかも知れない。実際誰も死んでいなかったらしいが。 ちなみに世情に疎いため、ボーカロイドがボカロと呼ばれていることを知らなかった。音だけだと聞き取れない言葉が多いが、動画を見ると全部字で書いてあるのでありがたい。[DVD(邦画)] 5点(2016-10-01 14:07:03)《改行有》

789.  生贄のジレンマ 《ネタバレ》 よくもこれだけ似たような映画を次々に作るものだと呆れるが、加えてこの映画はとにかく長く、DVD3本の時間表示を単純に加算すると4:37:09にもなる。連続して見る前提でなければまあ退屈せずに見られる内容だが、長さに応じた内容が詰まっているかというとそれほどでもない気がする。 特に問題なのが主人公の行動に全く共感できないことで、死ぬな死ぬなと怒鳴るばかりで自分も死なずに言い訳するとか出来もしないことをやろうとして予定通り失敗するとか俺は何もできないと暴れておいて結局何もしないで終わるとかで本物の馬鹿にしか見えないが、ラストのカミングアウトまで聞けば動機だけはわかる。行動面でうまくいかなくとも、まずは心の指向性(=こころざし)をしっかり持つことが大事だと若年者に訴えるために、あえて逡巡と試行錯誤と愚行の部分を描いてみせたと取れなくもない。これはこれで新しい試みかも知れないが、しかしとにかく見ていて苛立たしい主人公であり、最後はヒロインにまで馬鹿が伝染したように見えるのはやめてもらいたかった。 また終盤で明らかになる真相が後付けで妄想話をでっち上げた印象しかないこと、最後に死人が生き返るのではこの映画自体が人生は簡単にリセット可能というゲーム感覚のように見えること、及びバグだらけのクソゲーというのがこの映画自体の言い訳のように聞こえることを苦情として挙げておく。個人的には最後に残った連中よりも、初回に青木さんの様子を見かねて自分に投票した男に最も共感した。 ところで個性的な若手女優が多数出ているのは大変結構なことで、これが長時間それほど飽きずに見続けるための大きな要因になっていると思われる。ヒロイン役の女優はこれと同時期(少し後)の似たような映画にも出ているが、こっちの方が出演時間がはるかに長いので見ごたえがある。また当初は冷たい感じと思ったミステリアスな少女が、実は弟思いのお姉さんだったというのは心和むものがあった。ほか自分としては2組の保育士志望の生徒(演・佐々木萌詠)の卒業ビデオに泣いた(が生き返った)。 なお余談として、映画部の男2人が「大林」「大森」だったのは微妙な冗談である。また「仮面ライダーW」<TV>(2009)で恋人役だった2人が揃って出ていたが、この映画ではくっつかないのだった。[DVD(邦画)] 6点(2016-10-01 14:06:54)《改行有》

790.  チキンズダイナマイト 《ネタバレ》 「優れた若手映画作家の発掘と育成」を目的に、NPO法人映像産業振興機構(VIPO)が2006年から文化庁委託事業として行っている“ndjc”(若手映画作家育成プロジェクト)での選定を受けて製作された短編映画である。同様の経緯で製作されたものとして、ここのサイトに作品登録されている範囲では「琥珀色のキラキラ」「動物の狩り方」がある。映像ソフトとしては同じ監督の「独裁者、古賀。」(2013)のDVDに収録されている。 内容は実質的に「独裁者…」の簡略版または普及版のようで、似たようなテーマでコメディ化してハッピーエンドに変えた形になっている。他のレビューサイトなどを見るとこっちの方が評判がいいようで、見やすくかつ笑える映画になっているとは思われる。しかし当然ながら長編だった前作の方が明らかに内容が充実しており、「独裁者…」を先に見た自分にとっては中身が希薄のように思われたが、それはまあ娯楽性とテーマ性のバランスの問題ということかも知れない。 なおヒロイン役の恒松祐里という人は、「くちびるに歌を」(2014)の合唱部の仲村ナズナ役(本来の主人公)で、この映画では清純女子高生ともいえないが、下品なストーリー展開の中でもイメージを崩さずに済んでいた。[DVD(邦画)] 4点(2016-10-01 13:44:30)《改行有》

791.  独裁者、古賀。 《ネタバレ》 気弱な男子高校生が壁を壊して前に進もうとする話である。基本的には良作と思われるが、しかし自分としては登場人物が不快なために見るのが苦痛だったというのが正直なところである。 まず主人公は単なる馬鹿に見える。本当に臆病ならもう少し用心深いのではと思うが、攻撃される危険のある場所にわざわざ大事なものを持って来て、案の定奪われるのは普通一般の知能を備えた人間とは思われない。こういう度を越して愚かな人間は共感どころか憐憫の対象にもならないのであって、こんな奴の人生は初めから終わっているから今さら何しても仕方ないだろうという感覚が最後まで尾を引いた。これはもしかするとイジメを“する”側の立場に観客を置こうとする試みなのか。 また担任教員が優柔不断なのか大勢順応的なのかわからないが良心というものが見えない男で、そのため女子生徒の自己判断とされていたものも、実は担任教員が裏で圧力をかけたのではないかと疑われた。終わってみればそうでなかったことはわかるが、この男の人格自体を認めたくない心境になってしまってからではもう挽回できない。主人公(馬鹿)を含めて、過度の反感を持つことのない人物造形にしてもらいたかったものだと思う。 ちなみに主要人物以外では、小柄な女子生徒がどういう役回りなのかわからなかった。眼鏡っ子が差別されていたのも意味不明である。 ところで進学校という設定は何の役に立っていたのかわからない。もしかすると迫害側の女子生徒が妙な観念論を述べたり文語調の表現をしたりするところに生きていたのかも知れないが、自分としてはそういう小理屈のようなものは聞きたくない。この進学校という設定のため、それにふさわしくない様相を呈する登場人物や校内の状況がストーリーの都合で不自然に作られたものに見え、個人的にはこの映画への共感を一層妨げる結果になっていた。 ただ実は進学校というのは口先だけで、体面ばかり気にして内実が伴わない自称進学校だったのかとも思われる。そう考えれば、迫害側の女子生徒が本来自分のいるべき場所でないところに置かれていることで苛立ちを募らせ、それが馬鹿の虐待につながったとも取れるので、これは案外そういう理解でいいのかも知れない。 なお「独裁者」という言葉の最終的な意味付けはよかったと思われる(自分の理解が正しければ)。またヒロイン役の村上穂乃佳という人は、「人狼ゲーム クレイジーフォックス」(2015)で見たときは悪役風で好きになれなかったが、この映画では内向的な普通の少女役が好印象だった。[DVD(邦画)] 5点(2016-10-01 13:44:27)《改行有》

792.  恋の罪 《ネタバレ》 とりあえずデリヘル事務所の顛末は単純に面白かった。派遣先での「ボケー!」の台詞も心に残る(笑った)。 ほか全体的なことに関しては、まずはいかにも頭の悪そうな人物が予定通り堕落していく話になっている。部外者としては目を逸らして見なかったことにするだけの相手であり(こっち見るな!)、おれは関係ない、で終わりである。 また途中で頭のいい人物が出て来て深淵な哲学を語りそうな雰囲気だったので、これは自分などの理解を絶した世界かと思っていたが、実際は普通の言葉でわりと簡単に説明できそうなことを難しくしただけで、結局最後は誰でも想像できる範囲に収まった感じだった。普通に生きることが難しい境遇だったとしても、そこを何とかカバーする知性をこの人物は備えていたはずで、その点で父親の行動はまだしも理性的な範囲にとどまっていたと思われるが、こういうのは性別によっても違うと言いたいのか。 以上の2人に関しては、こうなったことにもそれなりの事情があったらしく、全てが生来の体質によるものともいえないところがあるが、少なくとも次に生まれ変わった時には別の人生が期待できるわけで、その際は例えば修行して悟りを開いて仏になることを志したりするのもいいかも知れない。 そのほか警視庁の刑事には単純に失望した。劇中には全般的に変な連中が多いが、この人物は特に職業と人格の関係、また家庭環境に関する設定が支離滅裂である。またこの映画では三者三様のヘアヌードが出て、見た目でいえば胸の大きさの違いが明らかな特徴になっているが、この人物は中庸であって個性の表現にはつながっていない。別にそんな点は評価項目にならないのでどうでもいいわけだが、頭の良し悪しと胸の大きさに負の相関関係があると主張していたのであれば問題がある。多分そんなことも言ってないだろうが。 なお個人的には、この映画を見ながら大岡越前守の逸話と伝えられる「灰になるまで」の話を思い出したりしたが、それは関係ないか。何にせよあまり深入りしたくない映画だった。[DVD(邦画)] 5点(2016-10-01 13:44:24)《改行有》

793.  桜ノ雨 《ネタバレ》 有名かも知れないが一応説明しておくと、「桜ノ雨」とはもともと「ニコニコ動画」で初音ミクの歌う歌として発表されたもので、現在では卒業ソングとして定番化しているらしく、動画投稿サイトで検索すると各地で児童生徒が歌う動画が上がっている。その歌のイメージをもとにした小説版を原作にしたのがこの映画であり、主人公の名前「未来」は小説版に由来しているが、元は初音ミクから来たものらしい。 内容としては原曲のイメージ通り素直な気分で見られる青春ドラマになっており、人の気に障る要素をわざわざ入れたがるリアル路線の作りにはなっていない。キャラクター設定を始め人物の行動や効果音にマンガのようなところが目につくが、極端なのは前半のコメディ部分だけである。また特に先輩(部長)役がとても高校生には見えず、これはさすがにミスキャストではと思ったが、少女マンガのような先輩役をシレっと演じるにはこのくらいの役者でなければならなかったのかも知れない。 最初と最後には全ての発端になったエピソードが出ていたが、ここでの「桜の雨の中にいた」という図柄がまたいかにもマンガのようである。そこで振り向いた主人公が少し小首をかしげてみせるのもわざとらしいが、その辺はまあ微笑ましいので嫌いでない。 一方でストーリーを真面目に見た場合、合唱の世界とは縁のない自分としても納得できないものになっている。「好きな歌うたって、楽しければそれでいい」を大前提にしてしまっていたが、気に入らないものを好きになろうともしないのでは世界が広がらないだろうし、また真剣に取り組んでいれば逆に愛着がわくこともあるだろう。そういう葛藤なしで結局「桜ノ雨」が全ての解決法というのでは、いくら歌が出発点の映画にしても話が簡単すぎる。理性的観点からすれば絶賛できるお話には全くなっていないが、それでも個人的にそれほど悪い映画に思えなかったのは、やはり合唱というものが本来持つ力のせいだろうという気がする(正直泣けた)。 もう一つ、「こんなんじゃ楽しめない」という主人公の爆弾発言は容認できないが、何かベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章の”O Freunde, nicht diese Töne!” に通じるものがあるような気がして自分としては全否定できなかった。そこまでは関係ないか。 なお映画と関係ないが、今年もNHK全国学校音楽コンクール全国大会にうちの地元の高校が出場することになっている。○高がんばれ。[DVD(邦画)] 6点(2016-09-23 19:58:12)《改行有》

794.  私たちのハァハァ 《ネタバレ》 宣伝写真の印象にはかなり騙された。公式サイトにあるような、穏やかな海を背景にしてそれぞれの思いを含んだ顔の場面とか、草原で自転車に乗っている場面(これはこれでかなり変だが)は劇中にはない。そもそも移動手段にもこだわっておらず、自転車で1,000kmなどというできそうもないことはしない話になっている。 またこの映画が見づらい原因としてはカメラの動きがせわしないこと、及び集団で奇声を発するのがとにかく物理的にやかましいことである。こんな音響で本人らの脳が破壊されたりしないのかと思うが、後半になってLINEのやり取りをしていた場面は静かで、最初からこれだけでやっていればよかっただろうと思わせる。 そのほかとにかく傍若無人のふるまいが多く危機管理の観念も欠落していて「この連中はバカ」と言い放って終わりにしたくなったがとりあえず黙って見ていると、神戸まで行ったところでやっと無敵集団が解体し、誰がどういう風にどの程度バカなのかもわかって来た。ミュージシャン志望の人物が一番のバカに「戦ってちゃんと!」と言っていたのは可笑しい。終盤に至るとまた少し意外性のある展開だったが、ここで以前に世話になったお姉さんに怒られたのを見ると、自分がこの連中に感じた反感は必ずしも性別の違いによるものでないことがわかる(当然だが)。 自分としては仮に同年代であってもこの連中には絶対共感できないという自信があるが、少なくとも自分以外の誰かにとっての青春を濃縮してみせた形になっているのだろうとは思われる。当然ながら本人らもまだ何とか許されるうちを狙ってやる小狡さはあるわけで、こういう連中の未来を信じてやれなければそれこそ「日本オワットル」ということになるだろう。 ちなみに、2回見ると初回よりは少し微笑ましく見られる。終盤でライブ映像に本人らの歌声が被さるところも少し感動する(やかましいが)。 なお劇中で未成年が煙草を吸う場面があったが、常習者はミュージシャンだけで(さすが不良少女)、もう一人は吸い方を知らなかった。 また広島での夜は「ナミキジャンクションの近くで野宿します」とのことだったが、原爆ドームの見える場所(平和記念公園)を“ライブハウスの近く”としか認識していないのは年配者とは明らかに感覚が違っていて笑ってしまう。少なくともこの連中にとってのいわゆる“聖地”ではないということである。[DVD(邦画)] 7点(2016-09-23 19:58:09)《改行有》

795.  君の名は。(2016) 《ネタバレ》 見るつもりはなかったが、なぜか「シン・ゴジラ」と張り合っているかのような雰囲気が出ていたので見て来た。 印象としてはストレートな青春アニメであって、きれいに作ってはあるがあまり突出したものを感じず、映像的にもキャラクター設定もストーリー展開も至るところに既視感がある。SF的にも突っ込みどころが多そうに見えるほか、意外性の面でも弱いところがあり、時間のずれというのは観客としても想定の範囲内である。また突然の大災害も、冒頭の落下映像で最初から危惧を覚えていたわけなので、やはりそうだったのか(泣)という程度の衝撃だった。 最も意外だったのは、変に丸く見えた湖が火山に由来するもの(カルデラ地形など)ではなくクレーターだったということで、地球上でクレーターが2個接続した状態になっているのは珍しいのではないかと思われる(2個同時に近接して形成された事例はあるようだが)。もしかすると山上の聖地も恐山のような火口原ではなくクレーターであって、ご神体の岩塊は隕石というつもりだったのかも知れない。星の世界につながる特異点のような場所という設定とすれば科学考証的にはどうかと思うが、当方としては初めからファンタジーとして見ているので別に構わない。 ほかにも考えれば指摘すべき点はいろいろありそうだが、自分としては頭を使うのが面倒臭いのでそこまではしない。それよりも、若い登場人物に対して素直によかったねと言ってやりたくなる展開(見ている自分の境遇はさて置いて)だったのは当然ながら嫌いでなく、最終的には明らかにいい印象を残す映画になっていた。見ていてはっと胸をつかれるところが何か所かあり、特に終盤で並走する電車の場面では、一瞬の動揺を劇場内で隠すのが困難だった。 また「シン・ゴジラ」だけでなく、この映画でも何気なく先の震災が念頭にあったようで、今後起こりうる災害から目を逸らすことなく、まともに意識しながらしなやかな心で対していこうとする気構えが日本人の中にできて来ているとすれば心強いことである。 ちなみに、少女のオッパイが「転校生」(1982)だとすれば、ラストで記憶のない2人が再会できたのは「時をかける少女」(1983)に対抗したものではないか。切なさ優先で登場人物を不幸にするラストよりもこっちの方がよほどいい。(1953年のドラマのことは知らないので無視)[映画館(邦画)] 7点(2016-09-19 17:12:02)(良:1票) 《改行有》

796.  火星人地球大襲撃 《ネタバレ》 「原子人間」(1955)、「宇宙からの侵略生物」(1957)に続く、いわゆる“クォーターマス・シリーズ”の劇場版第3作である。前回から間が空いてしまったために今回はブライアン・ドンレヴィ氏が出ておらず、そのせいもあってかクエイタマス(クウェイタマス)教授がわりと普通の人のように見える。しかし原作・脚本は同じ人物であり、このシリーズらしい硬派でミステリー風の雰囲気は出ているものと思われる。 今回は邦題のとおり火星人の侵略を扱っているが、500万年前という設定のためそれほど荒唐無稽な印象はない。地質年代の過去を語る一方で歴史時代の記録も紐解く形にし、単なる大風呂敷でない堅実なスケール感を出している。人類の起源に関する説明の部分は普通にSF風だが、科学者は超常現象を信じないという割に透視力・念力・悪魔・ポルターガイスト・神話・呪術・魔女まで科学の領域に取り込もうとしていたのが貪欲な感じで、こういうところが主人公らしさということかも知れない。 しかし火星人の意図が何だったのかは正直よくわからなかった。自分らの品種改良の手法(優生学を背景にした民族浄化?)を地球生物にも適用して都合のいい種族を作ろうとしていたのかも知れないが、それが火星人にとってどういう役に立つのかがわからない。教授も人間なので徐々に考えを深めていく過程だったのだろうが、結局最後まで説明不足に終わっていた気もする。 また特殊撮影は明らかに貧弱だが、終盤で光る像が窓から見えているあたりは逃げ場がない感じで少し怖かった。ラストは物悲しい音楽が余韻を残す終幕だったが、これはもしかすると生涯の盟友になるかも知れなかった理解者を失った悲しみということかも知れない。全体としては力の入ったTVドラマという程度にも見えるが、こういう実直な作りのものは嫌いでない。 ちなみに問題のホッブズ通りというのが一体どの時代まで遡れるのかと思いながら見ていたが(東京なら江戸時代よりも前に遡れない)、1763年はともかく1341年の段階でも「ホッブズ通り」という言葉が出ており、その時代からすでに都市街路として存在していたことになっていた。ローマ時代の伝承も残っていたようで、最初からローマ都市ロンディニウムの城壁内だったのかも知れない。教授によれば「あの一帯は沼だった」とのことだが、そもそもロンディニウムという都市名自体が沼地に由来しているとのことである。[DVD(字幕)] 6点(2016-09-17 19:59:42)《改行有》

797.  原始獣レプティリカス 《ネタバレ》 最初から余談だが、怪獣を攻撃していた軍艦はデンマーク海軍のコルベットF346フローラ(Flora, 894t)である。これはイタリアが建造したアルバトロス級コルベットをNATOの枠組みのもとでアメリカがデンマークに供与したもので、1956年に就役し1977年に退役している。また空軍が活躍する機会はなかったようだが、この時期ならF-100スーパーセイバーとかに出てもらいたかった。 劇中では場所がデンマークのわりにアメリカ人が妙に幅を利かせており、登場人物がみな英語なのも興を削ぐところがあるが、コペンハーゲンの現地映像はそれなりに出している。不機嫌なアメリカ人が暇だという理由で市内観光に出て、若い女性の案内でいきなり機嫌を直して人魚姫その他の名所を回るあたりは、背景音楽のせいもあって楽しいひと時を過ごした気分にさせられなくもない。図々しいまでのご当地映画ぶりも笑える。 ところで怪獣に関しては、「爬虫類から哺乳類への進化の過程」というのはゴジラ風にも聞こえるが、実際は恐竜というよりドラゴンのようなもので、翼が付いているが飛べない仕様だったらしく、また脚も動いていないのでただの蛇である。爆雷攻撃時にこれが海底に沈んでいた姿には大笑いした(目に生気がなく攻撃前からすでに死骸)。 しかし見た目はともかく実は結構恐ろしい怪獣であって、襲撃された農場主が妻子の目の前で怪獣に呑まれるという悲惨でチープな合成映像があったりもする。また口から緑色のものを吐いていたのは「酸性粘液」(acid slime)とのことだが、実際これにやられるとどうなるかの映像化を徹底的に回避していたのは残酷描写を自己規制していたのかも知れない。 さらに恐ろしいのは死体を1000個にばらすと1000匹に育つという性質であって、そのため通常の爆発物による攻撃ができずに手詰まりになった場面は一定の緊張感を出していた。ここで指揮官がアメリカ人であるからには熱核攻撃とか言い出すのではと思ったが、さすがにヨーロッパで核兵器を使う発想はなかったらしく、代わりに薬物を口から撃ち込んだのは斬新な手法だった。この辺は「シン・ゴジラ」(2016)の元ネタだったのではと勘繰ってみてもいいかも知れない。 世間的に酷評されるのもよくわかる映画だが、自分としては正直けっこう面白かった。ちなみにランゲ橋という大きな橋(長い橋)を大勢の市民が逃げていた時、跳ね橋部分を上げたために人が落ちていく実写映像は特撮場面以上の驚きがあった。[DVD(字幕)] 3点(2016-09-17 19:59:40)《改行有》

798.  大海獣ビヒモス 《ネタバレ》 放射能怪獣が大都市を襲うパターンは「原子怪獣現わる」(1953)と同じだが、前回からここまでの間に“放射能は怖い”という認識に至ったらしいのは著しい進歩である。食物連鎖をもとにした説明はゴジラにもなかった説得力があり、また怪獣の死体を「核廃棄物として安全に処理」する必要があると思っていたのもまともな感覚である(実際はそうでもなかったが)。最後はゴジラ並みに“最後の一匹だとは思えない”的な終わり方になっており、核の時代に警鐘を鳴らす形には一応なっていた。 またこの映画でも怪獣が出現するのは遅いが、その間のドラマ部分にあまり退屈しなかったのは大違いだった。積極派と慎重派の学者がある程度の緊張感を持ちながら、結構まともに見える検証を通じてともに怪獣の存在を確信するに至り、それを軍当局に通報したことで速やかに対策が始まるというのが理性的で、これはさすがイギリス人だとか思ってしまう。また放射能カレイ(日本なら放射能マグロ)が発見された時点で、慎重派の学者は市場に出ないよう関係機関に通報し、積極派の学者は原因究明に当たっていたのもそれぞれの個性を生かした分担で現実味があった。トロール船の船長と学者の会話もなかなか気の利いた感じで面白い。 ただし出て来た怪獣は基本が恐竜なので姿形に面白味がない。それでも何か武器を持たせなければならないと思ったのか電気ウナギからネタを借りたようだが、実際それで攻撃する際の効果音が極めて間抜けである。それでもやっとロンドンに上陸した後はそれなりの迫力があり、川岸からぬっと上がって迫って来るとか、お決まりの高電圧線の接触場面など面白く見せようとしているところもある。パニック描写としてはエキストラ然とした人々がとにかく走る場面が多かったが、街角で怪獣を見た老人が口をあけたまま固まってしまい、その後のポワポワ攻撃でやられてしまったのは気の毒だが笑ってしまった。 なお途中で出た古生物学者は低身長で威厳はないがユーモラスで、これから第三の中心人物として活躍するのかと思ったらすぐ退場してしまったのは残念だった。制作側としては、もし恐竜が生き残っていたらという子どもらしい夢を、この人物を通じて語らせようという思いがあったように思われる。日本のゴジラも出発点は恐竜ながら、その後は普通一般の生物を超越した存在になっていったのとは対照的である。[DVD(字幕)] 5点(2016-09-17 19:59:36)《改行有》

799.  原子怪獣現わる 《ネタバレ》 レイ・ブラッドベリの短編「霧笛」をもとにした映画とのことで一応それも読んでみると、劇中では灯台のエピソードに化けていたようである(形だけだが)。全体として「ゴジラ」(1954)の元ネタになっているというのはその通りかも知れないが、北極圏から出現するとか灯台を襲うところなどは「ガメラ」(1965)でも真似しているように見えた。 そういう面で歴史的意味はあるのだろうが、しかしこの映画自体にはどうにも褒める材料がないので困る。定評のある特撮部分を除けばほとんど取り柄のない映画であって、これに比べれば「ゴジラ」などは特撮技術とメッセージ性の両面で全く新しいものを創造したというくらいに言ってしまっていいのではないかという気がする。 まず苦情を言いたくなるのは、全編の3/4程度は怪獣がほとんど出ないので人間を見ているしかないわけだが、その間のドラマ部分が非常にかったるいことである。精神病扱いされてまでモンスターにこだわる主人公の気が知れず、どうせそのうちニューヨークに出るのだから放っておけばいいだろうと言いたくなる。ちなみにタコをサメに食わせる水族館映像をしつこく見せられるのもつらい。 やっと怪獣が上陸してからはそれなりに見ごたえがあるが、しかしその怪獣が人間にとって致命的な病気をばらまくという展開は唐突で変である(ちなみに日本語字幕で「細菌」「病原菌」と出るのは不正確で、また「分子」は明らかに誤り)。その必然性がどこにあったかというと、当時の科学の最先端だった放射線でなければ除去できなさそうな感じの危険な性質を怪獣に付与しようとしたかったようで、要は人類の未来を担う核技術バンザイと言いたかったらしい。しかしそういう強力な放射線を使うには作業着のようなものを着れば安全だと思ったのか、また怪獣が死んだ後でも死体に残った放射性物質の危険性は変わらないという意識があったのかは不明である。そもそも主人公は最初から身辺が放射能だらけのように言っていて、とても長生きできそうにない男であるから、ヒロインは早目に別れてしまって生涯の伴侶を別に求めた方がいいだろう。 そういうことで、古い映画をわざわざ見ておいてけなすのは大人気ないと思うが、ここは見た通りの点数をつけておく。ちなみに映像表現としては、高圧電線に触れた時の光の明滅と、怪獣が火のついた構造物を跳ね上げたところが印象的だった。[DVD(字幕)] 4点(2016-09-17 19:59:32)《改行有》

800.  極道大戦争 《ネタバレ》 当初の設定がどうでもよくなって野放図に展開していくのは意外性があるが、個別の構成要素はどこかで見たようなものであって独創性が感じられず、また特に笑えるようなものにもなっていない。見てしまったからといっていちいち律儀にコメントを付けるのは苦痛である。[DVD(邦画)] 1点(2016-09-12 20:14:21)

0110.88%
1272.16%
2614.88%
3987.83%
418214.55%
532826.22%
628722.94%
717814.23%
8614.88%
9171.36%
1010.08%

全部

Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS