みんなのシネマレビュー |
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1081. バトルシップ(2012) 《ネタバレ》 あのねー、もうどこから突っ込んでよいのか悩むほどで、突っ込みマニアとしてはもう嬉しい悲鳴状態です。マイケル・ベイとローランド・エメリッヒのハリウッド二大バカ巨匠の代表作『パール・ハーバー』と『インデペンデンス・デイ』を足して二で割るという荒業は、普通の感覚を持った映画人ではなかなか出来るもんじゃありません。米海軍のミサイル駆逐艦が主役メカなんだから『デストロイヤー』が正しい題名だろと突っ込んでいたら、まさかの記念艦ミズーリの登場で実は『沈黙の戦艦』もパクっていたんですね、これなら『バトルシップ』でもイイのかな。この戦艦ミズーリがラストに向けて大活躍するのですが、高速出してる排水量48,000トンのミズーリがアンカーを落としたら海面をまるでドリフトしたみたいに方向転換するところ、どんだけ物理の法則を無視するんだよという衝撃の映像でした。それにしても浅野忠信は予想外の美味しい役でしたね、なんせ沈みゆく駆逐艦の艦尾で『タイタニック』のジャックとローズごっこまで披露させられるんですから(笑)。 『トランスフォーマー』のメカみたいなエイリアン・メカはデカ過ぎてイマイチ全体像が判らなかったんですが、エイリアンが火薬由来の兵器を使うというのは初めて観た様な気がします。そしてあの回転しながら飛んでくるコマみたいな奴、これ絶対むかし流行ったベイブレードが元ネタですよ。でもあごヒゲを生やしたジジイにしか見えないエイリアンも相当なもんです。なぜか視認できる間合いの人間は殺さないヘンに人道的な連中ですけど、スキャンして心臓が動いているのが確認できる対象には手を出さない(だから馬も無事でした)のをモットーにしているみたいで、まあどっちにしろ訳が判らんことには変わりはないです。 これでも突っ込みポイントの十分の一くらいしか消化できませんでしたが、長くなるのでまあ我慢しておきましょう。残念だったのはせっかくリーアム・二―ソンを使っているのに全然活躍させてくれなかったことで、ここは最後にFA-18を駆って自らエイリアン攻撃の先頭に立って欲しかったところでした。[CS・衛星(字幕)] 3点(2016-05-06 23:27:09) 1082. 提報者~ES細胞捏造事件~ そう言えばありましたね、ES細胞捏造事件って。当時の報道を見て、一教授のインチキ騒ぎでなんでこんなに国中が大揺れになるのか不思議でした、STAP細胞騒動と較べても将に桁違いという感じです。強く記憶に残っているのはインチキ教授が「なぜ韓国でES細胞の開発に成功したのか?」とマスコミに聞かれて「我が国には古来より金属の箸を使う文化があり、それが細胞作製技術に繋がったからです」と答えていたことで、私はてっきりジョークだと思ったらマジで語ってるみたいなので仰天しました。案の定その後に全てウソだったことがばれてしまったのは、皆さんご承知の通りです。 この映画はあのドロドロな事件を、一社だけ疑惑として追及したTVドキュメンタリーのスタッフたちを主役に据えてかなり綺麗ごとにまとめたな、と言うのが感想です。まあこの題材をエンタメとして映像化するなら、まあこれが妥当な手法でしょうね。ディレクターとアシスタントの関係などは、典型的な韓流ラブコメみたいで失笑させられましたけど。じゃあSTAP細胞事件を日本で映像化出来るかと言うとはっきり言って実現性ゼロですから、お隣の国の映画界の根性を少しは関係者は見習えと言っておきます。[CS・衛星(字幕)] 5点(2016-05-04 21:48:55) 1083. がんばれ!ベアーズ 《ネタバレ》 今となってはベタとなってしまってますけど、野球コメディの新境地を切り拓いた画期的な映画だと思います。この後に撮られた野球コメディは、大なり小なり本作の影響を受けていると言っても過言ではないでしょう。コメディとしては小ネタが色々効いているのが愉しいところで、たとえばバターメイカーの愛車のフロント・ウィンドウがずっと割れたままだったり(割ったエンゲルバーグの親に弁償させるはずだったのに)、ベアーズのスポンサーが保釈金融屋だったり(たとえば少年野球のユニフォームに消費者金融のロゴが入っているところを想像してみてください)、面白いです。また大人の世界は汚いけど子供たちは純粋ですと言った邦画で良く観られる偽善はいっさいなく、どう見たってベアーズの連中は躾のなってない悪ガキそのものという感じが私は好きです。もちろん大人同士となるとまた凄くて、ちょっと希望が見えてくるとバターメイカーの采配がどんどん非情になってくるところなんか、名優ウォルター・マッソーの名演も有ってリアルですよ。テータム・オニールは今から思えばこれが彼女のキャリアでの最後の輝きだったんですよね。彼女こそ、史上最強の子役バイ・プレイヤー女優だったんじゃないでしょうか。 バターメイカーが「お前はベンチを温めるために生まれ来たんじゃないだろ?」と声をかけるシーンのルーパスは、もう抱きしめたくなるほど可愛らしいくて切ないんです。でもこの少年俳優の現在の現在のお姿を知ってしまったんですけど、もうビックリ仰天でした。現在は俳優から足は洗ってハリウッド界隈のエージェントをやってるみたいですけど、まさかあの愛らしかった少年がこんなおっさんになってしまうとは、人生とはなんと残酷なんでしょうか。[映画館(字幕)] 8点(2016-05-02 22:12:50)(良:1票) 1084. 長く熱い週末 《ネタバレ》 “さあ、サッチャー政権も誕生していよいよ狂乱の80年代の幕開けだ!ロンドン・ギャングの親玉である俺(ボブ・ホスキンス)にも一世一代の大儲けのチャンスが巡って来た!と言うわけで、アメリカまで行って出資者を見つけてきたし市会議員も抱き込んでるからロンドン再開発を仕切って欧州一のビッグ・ボスに成り上がってやる!ん、でも帰国してみたらなんかシマの様子が変だぞ、これはいったい…” と言う感じでお話しが進む、ロンドン・ギャングのボスの破滅への2日間です。ボブ・ホスキンス、このエネルギッシュな豆タンク親父はギャングのボスにはピッタリのキャラです。ホスキンスの女房がヘレン・ミレンで、社交力があって仏語がペラペラの堂々たるインテリ姐御ぶりにほれぼれとさせられます。お話しの方は少々複雑で、実はホスキンスを狙っているのは泣く子も黙るIRAでしたという展開になってくると、イマイチ訳が判りませんでした。もはや命運が尽きたホスキンスの表情を長回しで見せるのがラストですが、これはこの人の持ち味が全て出ている様な良い演技でした。 彼自身も本作の次の作品ではイアーゴを演じているんですけど、全体の雰囲気としては『オセロ』の様なシェイクスピア悲劇風のギャング・ストーリーでした。これもお国柄ですかね。[CS・衛星(字幕)] 6点(2016-04-29 23:51:15) 1085. ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー 《ネタバレ》 レーサー崩れとコンビを組んでたメカニックの二人組が強盗をはたらき、そして引っ掛けたビッチな娘を連れてただひたすら車をぶっ飛ばして田舎町を逃げ回る、という実に単純なお話しです。明らかに『イージーライダー』や『バニシング・ポイント』をパクりましたという展開と終わり方なんですが、これはこれで妙に味のある映画かなと思います。『イージーライダー』とは違ってこの三人組に絡む住人たちは彼らに全然敵意を持っていないし、彼ら自身も強盗するにしても銃すら持ってないうえ警察も最後まで発砲しない、という良く考えたらこの手のジャンルにしては珍しい展開なんです。カーチェイスも田舎だからただ直線道路を突っ走るだけみたいな画ですけど、これはアメ車ダッジのエンジン音を愉しむと言うのが正解なのかもしれません。でもヘリコプターとダッジの走りながらのお相撲は、なかなかの迫力でした。 と言うことで、中身が無い割には引き込まれてしまうのは、監督ジョン・ハフの職人技なんでしょうね。でもこの頃のスーザン・ジョージとしては珍しく脱ぎがなかったのはマイナス一点です。[CS・衛星(字幕)] 6点(2016-04-28 20:04:12) 1086. フライト 《ネタバレ》 航空パニックものと思ったらなんとアル中克服ものストーリーでした。主演がデンゼル・ワシントンだからそりゃ納得できる依存症演技です。そして“アル中演技はアカデミー賞ノミネートへの最短コース”というジンクスは今回も通用しました。たぶん実際にその気があるニコラス・ケイジがアル中演じるのはあまり演技っぽくない自然さがありますが、品行方正なイメージが強いデンゼルにここまでグダグダな中毒者を演じさせたことに意義があったということです。名優だけあって、彼も役選びの眼力も優れているのではないでしょうか。「依存症になることは、ウソにまみれた人生を送ることだ」と言う様なセリフがあったと思いますが、これは至言です。 実はわたくしCSで放送している『メーデー・航空機事故の真実と真相』のファンで良く観るのですが、そこから得た知識から考えてもこの脚本には事故の設定やその後の展開に関して首を傾げたくなるところが多々あります。まず、いくらアメリカ深部のローカル航空とは言っても、旅客便の機長が酒のい匂いをプンプンさせて操縦するなんてことはさすがにあり得ないでしょう。また愛人のCAも、デンゼルが登場前に酔っぱらってコカイン吸っても平然としているんですから、いくら乗客を救うために死んでしまってもなんか同情出来ません、これは飲酒運転の共犯みたいなもんです。見せ場の背面飛行についても、なぜこの体勢が急降下からの回復につながるのか理解できません。そして唖然とさせられたのはあのいろんな酒がぎっしり詰まった冷蔵庫で、あまりのご都合主義にシュールさすら感じてしまいました。この悪魔の様な冷蔵庫は、“神が与えた試練”ということなんでしょうか?[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-04-26 22:19:10) 1087. スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい 《ネタバレ》 本作は、ときどき出くわす「途中からテイストが変わって別の映画みたいになっちゃう」迷作のひとつだと思います。だいたいタッチからしてソダーバーグ・スタイルとタランティーノ風味をごった煮にした様な感じで、そこに登場人物たちの複雑怪奇な相関関係がプラスされるので、訳が判らんという感じです。要はこの監督、気持ちばかりが前に出過ぎて腕が追い付いていないということなんです。あのホテルに殺し屋たちが集まって来たらFBIがホテルを完全に封鎖しちゃって、それこそ『ザ・レイド』の雑居ビル状態になってみんなで殺し合う、という展開の方が面白かったんじゃないでしょうか。けっこう渋くてなおかつ派手なキャスティングですけど、この中でも知名度の高いベン・アフレックとレイ・リオッタが割とあっさりフェイドアウトしてしまうのはちょっと捻っていて面白かったです。まあレイ・リオッタはこの手の映画に出てくるとたいてい死にますけどね(笑)。[CS・衛星(字幕)] 5点(2016-04-23 23:35:05) 1088. レッド・アフガン 《ネタバレ》 ソ連軍戦車隊がアフガンの部落を襲撃する冒頭から、もう禍々しさに満ちた映像に圧倒されちゃいます。ゲリラに反撃されて一両だけ残った戦車が焼け焦げた地図を頼って撤収する過程は、ボギーが出てた懐かしの『サハラ戦車隊』を彷彿させるところも有ります。でもその五人の戦車兵たちの人間関係は険悪で、中でも狂信的な戦車長のおっさんは職場でも時折出くわす「こいつについて行ったらトンデモない目にあわされる」上司そのものです。まあ会社ではこの戦車長みたいに部下を殺すところまでは滅多にいかないものですけど、軍隊ですから辞表出して逃げることも出来ません。 中盤からはこの戦車から追放されたインテリ風のクルーと拾ってくれたゲリラの交流が描かれるのですが、このロシア兵とアフガン人が最後まで言葉が通じあわないところが両国の政治情勢を象徴している感じがしました。でもハリウッド映画なんで当たり前ですけど、アフガン人がパシュトゥーン語で喋るのにロシア人が英語と言うのは何とかならないもんでしょうか。 アフガンで出来るはずはないのでどこでロケしたのかと思ったら、イスラエルで撮ったみたいですね。でも岩山と砂漠が続く荒涼とした風景は印象的で『眼には眼を』の有名なラストシーンみたいなショットが延々と続くと言った感じです。まあ主役はT-62戦車みたいなもので、この戦車のメカニックが良く判ります。全体的な雰囲気はどこか北野武の映画に通じるところがある気がしました。[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-04-20 23:18:00) 1089. リンカーン 《ネタバレ》 この演技を観たら、アカデミー会員なら誰もがダニエル・デイ=ルイスに一票を投じざるを得なかったんじゃないでしょうか。もちろんデータは公表されるわけないですけど、この三度目のオスカー主演男優賞を獲ったときのデイ=ルイスの得票率はさぞや高かったのでは。彼に歴史上の人物を演じることを禁止するルールを制定することを、今後ハリウッドは真剣に考えないといけないでしょう、そうしないと今後何個オスカーをかっさらわれるか想像もできません(笑)。 彼の演じるエイブラハム・リンカーンは、自分がタイムスリップして生のリンカーンを観ている様な錯覚さえ覚えるほどの説得力があります。そして特に自分が感じたのは、信念を持った政治家というのはこれほどカッコ良いものなのか、ということです。彼も決して聖人君子ではなくて、憲法修正13条を下院で通すためにはほとんど買収すれすれの裏工作まで行うし、国務長官など身内にも平然とウソをつきます。双方の兵士たちに犠牲が増えることも構わず、その為には南北戦争の終結を遅らせようとまで画策します。そう言ったある意味汚い政治家としての一面も含めて、スピルバーグは極めて冷徹なタッチでこの映画を撮っています。ラストの劇場もてっきり有名なリンカーンの暗殺を見せるのかと思いきや、観る方の緊迫感が十分に高まったところで「フォード劇場で大統領が撃たれた!」という叫びがあがりここは違う場所なのだと判らせるくだり、スピルバーグの円熟の技巧が冴えわたっていました。 急進派の共和党重鎮議員を演じたトミー・リーもデイ=ルイスに決して引けを取らない好演だったと思います。ラストで修正案が成立して家に帰りズラを外して黒人メイドとベッドをともにする、「あんたは最高の男だよ!」と思わず声をかけたくなるほどでした。[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-04-16 23:31:28) 1090. ジャンボ・墜落/ザ・サバイバー 《ネタバレ》 マイフェヴァリットの『恐怖の足跡』系のカルトホラーということですが、うーん、ちょっと期待外れでした。いやね、作品自体の雰囲気は良いんですよ、冒頭とラストで女の子たちが“達磨さんが転んだ”みたいな遊戯をしているところなんてストーリーに関係ないんだけどなんか不気味な感じがします。悲鳴を背景効果音みたいに流すところなんて、Jホラー的な感性に通じるところも有りこれも雰囲気が良いです。でも後半の謎解きパートになるとあまりに強引な展開になってしまってダメですね。ここら辺の怖さは『恐怖の足跡』の足元にも及ばずと言うところです。 そう言えば同じく『恐怖の足跡』をパクった『シックス・センス』が有名ですけど、良く考えたらシャマランは“大事故から一人だけ生還”というプロットからすると『アンストッパブル』も本作のパクりと言えるんじゃないでしょうか。まさにこれぞ“パクりのドミノ倒し”、シャマランくんのパクり癖(というかイマジネーション)にはあらためて感心させられます。[DVD(字幕)] 5点(2016-04-13 23:15:26) 1091. ブレードランナー/ファイナル・カット 《ネタバレ》 2016年はロイ・バッティが製造された年です!ヤバい、あと三年でLAに酸性雨が降り注ぎ“強力わかもと”が世界のブランドになっている世界になっちゃうんですよ。昨年は『バック・トゥー・ザ・フューチャーPART2』で盛り上がりましたが、三年後にはどんなお祭り騒ぎが観れるでしょうか?まあ内容がアレですから地味でマニアックなんでしょうね。 またこの映画こそ各種カルチャーにもっとも強い影響を与えたSF映画で、80年代以来サブカルの一翼を担ってきた傑作です。また“○○カット”という映画ビジネスにとって画期的な手法を産み出したのも偉大な(?)功績で、やっぱリドリー・スコットはビジネスの天才です。 その各ヴァージョンの中でもやはりこのファイルカット版がやはりベストですね。工業製品であるレプリカントが自らの死を自覚して苦しむ姿は何度観ても切なくなりますし、またデッカードとレイチェルの悲恋物語でもありSF恋愛映画としてもこのジャンルの最高傑作です。またこの版を観る限りではデッカードがレプリカントであることはかなり明白になっていると感じます。 「ついに」と言うか「止めときゃいいのに」と言うべきか、いよいよ今年から『2』の撮影が始まるそうです。そうなると必然的に“デッカード・レプリカント説”に回答が得られることになるわけですが、果たしてリドリー・スコットの胸中やいかに?[CS・衛星(字幕)] 10点(2016-04-10 23:52:40) 1092. 地平線がぎらぎらっ 《ネタバレ》 同年についに倒産してしまった新東宝が、まるでいたちの最後っ屁みたいに放ったピカレスクムーヴィーの傑作です。それまでカスみたいな映画ばっかり撮ってた土井通芳が、まるで別人みたいにキレのいい映画を撮ったなんて信じられないことです。人間、やれば何でも出来るもんですね。 殺人や詐欺そして婦女暴行などで服役している5人がある刑務所に収監されている。彼らの雑居房に生意気を絵に描いた様な若者が加わる。この男は牢名主にも仁義を通さず挑発して好き勝手、5人は共謀してこの若造を自殺に見せかけて殺そうとするも、直前にこいつがダイヤ強奪の共犯で捕まり、どこにダイヤを隠匿したか喋らないまま懲役4年の刑に服していることが判る。この若造役がジェリー藤尾で、この演技が彼の生涯のベストアクトだと評価する人もいるぐらいです。無鉄砲でぎらぎらした男ですけど、なんか心の奥に隠し事を持った様な陰も有って魅力的なキャラです。主題歌もジェリー藤尾が歌っていまして、♪ぎらぎら、ぎらぎらっ、あの地平線が光ってる、そこにはオイラの夢がある、というパワフルな曲調で印象的です。 ダイヤを山分けする計画でみんなで脱獄してからの展開もけっこう面白いんです。お約束の仲間割れで一人また一人と脱獄犯は消えてゆくのですが、肝心のジェリー藤尾はどこか超然としています。ここで当然のごとく“ダイヤは本当にあるのか?”というサスペンスになるわけで、ここら辺の脚本も上手いなと思いました。 そして脱獄犯の女房の実家に立ち寄るシークエンスは特筆すべきで、いろいろ新東宝の映画は観ましたがこんな秀逸な映像は初めて体験しました。ジェリー藤尾が飛び入りで祭りの太鼓をたたきだし、それと同時に脱獄犯がすでに違う男と出来ている女房を追いかけ回す。この辺りはまるで同時代の増村保造みたいな撮り方で、新東宝映画でこんなモンタージュが観れるとは驚きました。[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-04-09 01:04:54) 1093. マルサの女2 《ネタバレ》 マルサ板倉亮子が闘いを挑むのは今回は今となっては懐かしい存在の地上げ屋軍団、前作が街のパチンコ屋だったんですから敵キャラもスケールアップしています。ただ伊丹十三自身もかなり力みかえっている感じで、本作あたりからそれまで伊丹映画が持っていた風味が消えてゆくのでした。■まず言及しておかないといけないのは今回の悪役である三國連太郎で、前作の山崎勉を意識しすぎていたのか暴走気味の演技です。板倉亮子たちマルサがもう単なる狂言まわしみたいなストーリーテリングになってしまい、これは失敗だと思います。“巨悪に挑む”という脚本の意図は判りますが、地上げ屋・政治家たちをあまりにグロテスクに描きすぎて、なんか出来の悪いアクション映画を見せられているみたいです。それ以上に鼻白んだのは大して映画を観ていないわたくしでも10箇所ぐらい指摘出来るほどの過去の名画からの引用というかパロディ・カットで、それがまたセンスが悪いんです。笠智衆が登場するシーンなんかは彼のキャラはまるっきり『東京物語』のパロディで、こんなベタなことして誰が面白がると思ったのか不思議です。■前作を凌駕したと唯一言えるのは本田俊之のサントラで、これはほんとに素晴らしい。のっけからサンバのリズムを多用して、バブルの頃の世相を暗喩している秀逸なセンスです。そして後半から使われ始めてラストにフルで流れるグルーミーなメインテーマは、邦画サントラ史上に残る名曲だと思います。■板倉亮子たちマルサは巨悪には手もつけられずに涙をのむ虚無的なラストを迎えます。でも撮影時には神のみぞ知ることだったんですけど、その後のバブル崩壊で地上げ屋・大手都市銀行・総合商社は壊滅的なダメージを受けたことを思うと感慨深いものがあります。このバブルの狂乱を具現化した様な混沌とした映画の中で、ただひとつ伊丹十三が成功したのは、「宗教を忘れた戦後の日本人が唯一信仰していたのはカネであった」という鋭い問題提起だったんじゃないでしょうか。■伊丹没後の現在では詮無いことですが、板倉亮子のその後というか現在の姿をもう一度スクリーンで観てみたいものです。まあ常識的に考えればすでに役所は退官して、税理士でもやっているという感じでしょうか。[CS・衛星(邦画)] 5点(2016-04-04 23:00:45) 1094. 誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 スパイというか対テロ活動がテーマなのに劇中で銃の発砲は一回もない、登場人物が誰も死なないし殺されないというある意味変わった作品です。それでいて緊張感が溢れるストーリーテリングは、監督は無名ながらけっこういい腕してるとお見受けいたします。最近ジョン・ル・カレ原作小説の映画化で秀作が続いていますが、あの超地味なル・カレのスパイ小説が欧米では再評価されてきているのでしょうか、いまやすっかり忘れられた存在となったハッタリ屋フレデリック・フォーサイスとは好対照です。とくに映画の前半はこの先どういう展開になるんだろうとハラハラさせられどおしで、これもフィリップ・シーモア・ホフマンの好演のなせる業でしょう。これが彼の遺作とは、ハリウッド映画界にとっても実に痛い損失です。ラストの彼がタクシーの運ちゃんに化けるシークエンスでは、彼の見せる怒りと憔悴が入り交じった表情は70年代のマーロン・ブランドを思い起こさせてくれました。もし長生きしていたら、きっとマーロン・ブランドを超える名優にまで進化していたんじゃないかと思うと、残念でなりません。 最後まで判らなかったのは、“誰よりも狙われた男”とは誰のことだったのかということで、シーモア・ホフマンが演じるギュンターのことなんでしょうか?なんか違う気がしますけど。[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-04-02 21:29:54) 1095. エージェント・マロリー 《ネタバレ》 はっきり言って凡作の一語につきてしまうんですけど、個人的には好みです。プロットやストーリー展開なぞは最近ゲップが出るほど量産されているジェイソン・ステイサム主演のアクションとなんら変わりはないけれど、主役が美形の女格闘家というところがいいですね。彼女ちょっと顔が角ばり過ぎているのが難点ですが、ガンとばす表情なんかは殺気が感じられて修羅場をくぐって来ただけあります。そこにソダーバーグが顔で集めたけっこう豪華な男優たちを絡ませて一本撮っちゃうんですから、よっぽどソダーバーグは彼女に惚れこんだのかな。冒頭でチャニング・テイタムがいきなりジーナ・カラーノにコーヒーをぶっかけて乱闘が始まるところや、彼女がマイケル・ファスベンダーをねじ伏せて無言で射殺するとか、ソダーバーグらしいハードボイルドを見せてきくれます。 でも買って一週間の車ごと拉致されて延々と彼女の身の上話を聞かされたスコットくん、はたしてこの映画に必要なキャラだったんでしょうか?[CS・衛星(字幕)] 6点(2016-03-30 21:43:07) 1096. リベンジ・マッチ 《ネタバレ》 ロッキー・バルボアとジェイク・ラモッタが古希を迎えようかというジジイになってからリターンマッチ!これはもうファンにとっては夢(悪夢?)の対決でございます。この妄想ストーリーはおそらく以前からハリウッド業界人の中で画策されていたんじゃないかと思いますが、このタイミングで実現したのはいろいろ大人の事情があったのかもしれません。でも撮影時でスタローン67歳デ・ニーロ70歳ですから、これは年齢的にもギリギリのタイミングだったのかと思います。 ストーリーはもう予想通りの両俳優というかロッキー&ラモッタのセルフパロディが全開ですけど、散りばめられた小ネタが判っていても観て愉しいんです。また大げさな芝居を見せまくる両名優の間で、ちょこまかと二人を完全に喰ってしまうアラン・アーキンはさすがの快演でした。クライマックスの試合はもう“後期高齢者級”と呼ぶしかない壮絶な殴り合いでしたが、デ・ニーロがそれなりに体を作っているところはさすがです。でも冒頭でスタローンとデ・ニーロの過去戦を見せる映像があるんですけど、顔だけ超不自然なCGをくっつけていたのには爆笑でした。 そして忘れちゃいけないのがキム・ベイジンガー、この人撮影時でもう60歳なんですよ!とってもそんな歳には見えない若々しさですけど、まさかこの人現代のラクエル・ウェルチなのかな(笑)。[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-03-28 22:26:35) 1097. シベリア超特急2 《ネタバレ》 正直かなり迷ったんですけど、やめときゃいいのに2も観てしまいました。映画自体は気のせいか前作よりなめらかというかふつうに進行し始めて、演技はともかくマイク水野さんも監督としての腕前は上がったのかなと感じたりしたのですが、それは大誤解だということがすぐ判りました(笑)。女優陣は妙に年増ばかり集めていますが、まあベテランばかりですからそつのない演技でしょう。しかしどんな名女優でもあんな無茶苦茶な台本で謎明かしさせられたら、おバカとしか見えなくなってしまうのがシベ超の持つ恐るべき魔力です。ちなみに寺島しのぶはこれが映画初出演で、さすがに堂々とした演技ですけど彼女にとっては恥ずかしい過去なんでしょうね。びっくりしたのは外交官役の中村福助の演技で、とっても奇妙な調子っぱずれのセリフ回しはいったいなんだったんでしょうか?監督、ちゃんと演技指導して下さい(無理か)。 前作よりはほんのちょっとふつうの映画に近づいたかと思いきや、やはりマイク水野の「やめた!」で逆戻り、いやこれが無かったらもっと殺伐(?)とした駄作になっていたんじゃないかと思います。そう考えると、水野先生はああ見えても盛り上げるツボだけはわきまえているエンターテイナーなのかもしれません(な訳ないか)。[CS・衛星(邦画)] 2点(2016-03-25 23:35:52) 1098. 黒の試走車(テストカー) 《ネタバレ》 モダニスト増村保造の面目躍如といった感じのキレキレのサスペンスです。映像も当時としてはかなりモダンで、増村らしい才気が感じられます。たとえば前半にあるバーのシークエンス、近景というかカメラのまん前でホステスが客を接待しているところを半身で捉えている、そして遠景では奥の席でヤマト自動車の馬渡が密談をしています、これが両者にきっちりピントが合っていて実にシャープです。タイガー自動車の企画課は倉庫みたいなところの二階にあって、そのロケーションを活かして上から下から観せるショットも多用されていて、こういうところもいかにも増村らしい。ストーリーも梶山季之の原作がしっかりしているから、タイガーVSヤマトのスパイ合戦のあの手この手を飽きさずに見せてくれます。まあ確かに、この映画の主役は田宮二郎ではなく高松英郎なんだと納得するしかないわけで、いくら高度成長期のモーレツ社員だと言ってもここまでくれば立派な犯罪者ですよ。当時はこういう生き方が肯定されていたわけなので、脱落してゆく田宮二郎の姿やラストの虚無的なセリフは世相に対する強烈なアンチテーゼだったろうと思いました。[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-03-23 23:21:48) 1099. シベリア超特急 《ネタバレ》 いやーあ、これは聞きしに勝る酷い映画ですねえ。これほど苦痛に満ちた90分というのも滅多に体験できることではありませんよ。マイク水野さん、あんなに延々とセリフの棒読みを続けて、ご自分でなんか変だぞと思わなかったんでしょうか?ど素人を起用した佐伯大尉と車掌の二人が巧者に見えるぐらいですから、相当なもんです。本編の方はいわば大人が会社の余興会かなにかでコメディ芝居をやっていると割り切れば何とか耐えられますが、あの2回のどんでん返しはもう意味が判らないしマイク水野さんの狂気すら感じて戦慄しました。ほんとエド・ウッドが巨匠みたいに感じるほどです。聞くところによると、シベ超シリーズは第5作まであるそうですけど、たぶん通して鑑賞したら発狂してしまうでしょうね(笑)[CS・衛星(邦画)] 1点(2016-03-20 23:31:29) 1100. 第四の核 《ネタバレ》 原作はフレデリック・フォーサイスのポリティカル・ノヴェルです。原題は直訳すると『第四の議定書』という感じですね。冒頭で「米ソ間では核軍縮条約を締結したときに四つの議定書を交わしたが、四番目の議定書は未だに内容は秘密になっている」なんて意味深なテロップが流れます。実はこの議定書のことはその後のストーリーではまったく出てこないので結局なんのことやら判らずじまいなんですが、これは膨大な原作小説を端折ったせいなんでしょう。まあそのことは忘れてしまっても、この映画を観るのにはなんの支障も有りませんけどね。 かいつまんで言うと、英国の米軍基地で事故に見せかけて小型核爆弾を爆発させて英国をNATOから離脱させるという陰謀を強硬派のKGB議長が計画し、その任務のために潜入してきた凄腕エージェントと英国情報部MI5の闘いを描いています。いわば『ジャッカルの日』のリサイクル・ヴァージョンみたいなプロットなんですけど、サスペンスとしてはけっこう面白く撮れています。そのジャッカルとルベル警視に相当する役を演じるのがピアース・ブロスナンとマイケル・ケインというわけです。ブロスナンはまだジェームズ・ボンドに抜擢されるはるか前ですが、とにかくこのKGBエージェントが渋いというか不気味なんです。登場シーンでは1シーンを除いてまったく無表情で押し通し、自分の行動の目撃者はもちろんのこと、核爆弾製造の支援のためにソ連から派遣されてきた女スパイですら役目が終わると表情ひとつ変えずに殺してしまいます。対するマイケル・ケインは、かつての当たり役ハリー・パーマーを彷彿させるカッコよさです。こういう上司には反抗的だけど有能なキャラを演じたら彼はピカイチです。 ケインがブロスナンを追いつめてゆく過程や、土壇場で二人が邂逅し秒殺で勝負がつくところなんかは、『ジャッカルの日』とそっくりなんですが、原作の政治的な要素をばっさり捨ててエンタテイメントに仕立てたのでまあしょうがないというしかないですね。そこそこ面白かったというのが感想ですが、これが日本では未公開だったというのはちょっと不思議ですね。[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-03-17 22:37:23)(良:1票)
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