みんなのシネマレビュー
なんのかんのさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

◆検索ウィンドウ◆

◆ログイン◆
メールアドレス
パスワード

◆ログイン登録関連◆
●ログインID登録画面
●パスワード変更画面

◆ヘルプ◆
●ヘルプ(FAQ)

◆通常ランキング◆
●平均点ベストランキング
●平均点ワーストランキング
●投稿数ランキング
●マニアックランキング

◆各種ページ◆
●TOPページ
●映画大辞典メニュー
●アカデミー賞メニュー
●新作レビュー一覧
●公開予定作品一覧
●新規 作品要望一覧照会
●変更 作品要望一覧照会
●人物要望一覧照会
●同一人物要望一覧照会
●関連作品要望一覧照会
●カスタマイズ画面
●レビュワー名簿
●お気に入り画面
Google

Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 2336
性別

投稿関連 表示切替メニュー
レビュー表示レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示作品用コメント関連表示人物用コメント関連表示あらすじ関連表示
コメントなし】/【コメント有り】
統計メニュー
製作国別レビュー統計年代別レビュー統計
要望関連 表示切替メニュー
作品新規登録 / 変更 要望表示人物新規登録 / 変更 要望表示
要望済関連 表示切替メニュー
作品新規登録 要望済表示人物新規登録 要望済表示
予約関連 表示切替メニュー
予約データ 表示

【製作年 : 1970年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順123456
投稿日付順123456
変更日付順123456

101.  真剣勝負 《ネタバレ》 内田吐夢の遺作、主演中村錦之助の宮本武蔵、しかし間違ってはいけない、これは東宝映画なのだ。東映時代劇の時代が終わったその燃え残りを見つめているような作品。低予算だったのだろう、安っぽさをあえてあげつらう気にはなれない、その中での工夫を味わいたいと言いたいところだけど、それにしても実にチープに武蔵の戦歴が冒頭で描かれ、そこから西部劇的な野中の一軒家にたどり着く。セット費用も安上がり。一幕ものである。見どころは敵が忍び寄ってくるとこで、虫の声がふと途絶え、柱に刺した風車が回り出す(そっと戸が開いたのだ)、そういった緊張感。で、まあ、三国連太郎が鬼となって野火をつけてまわり、ケモノ用の罠がパンパンと弾け、何か武蔵は悟ったらしく「活人剣は殺人剣」とか「剣はひっきょう暴力」とか、赤い活字が立ち上がってくるの。低予算で頑張っている、って褒めたいが、偉大な監督にこういうチープな遺作を撮らせてしまう日本映画界への不満の方が大きいわな。[映画館(邦画)] 5点(2008-12-31 12:14:01)

102.  やくざ絶唱 《ネタバレ》 この監督の世界では、感情過多の人間が狭いところへ押し込められ、そのせいで傷つけあってしまっている。この兄と妹なぞまさにそれで、兄の過剰な愛と、それに対する妹の過剰な反応。雄渾に成りうる神話的構造を、極端に狭い場所に押し込めていく。冒頭の街の雰囲気、四ッ谷署とチラリと出たが、荒木町界隈だろうか、高低差がいい。やくざの“一家”と“家庭”と、どちらも閉じていて、大谷直子が結ばれる田村正和も、つまりは兄弟みたいなもの、さらに閉じて煮詰まっている。主人公の最期も風呂場の隅っこの狭いところだった。太地喜和子とやりあうとこも隅。みんながみんな、狭いところへ、隅っこの方へと追いつめられるように導かれていく。[映画館(邦画)] 6点(2008-12-19 12:10:12)

103.  カサノバ(1976) 《ネタバレ》 おそらくフェリーニで一番ペシミスティックな作品。醜女が次から次へと現われてくる前半はいささかうんざり気味だが、昆虫みたいな衣裳を着けた貴族の屋内オペラあたりからか。思わず「待ってました!」とかけ声を掛けたくなるフェリーに顔の男で、クネクネしたその気味悪さが実に気持ちいい。ローマでの精力競争の馬鹿騒ぎぶり、芝居が終わった後の劇場の空漠、ドイツでのオルガンの狂い演奏(ここはニーノ・ロータの独壇場)と、名場面はいろいろあるが、どこか悲痛な気配が常に漂っている。カサノバは女性の人格を、口では尊重していた。おそらく貴族的に崇拝はしているのだろうが、しかしコトに至ると、女性嫌悪・女性恐怖としか思えない相貌に女は変わって見えてくる。そして精力競争で相手の女が浮かべた哀れな表情は、目にしていない。彼は人格としての理想の女性を求めすぎて遍歴を続け、最後にたどり着いた相手は、心を持たないものだった。乱痴気騒ぎの連続の果てに訪れた孤独の平穏、凍りついたベネチアでのラストダンスで悲痛は極まった。[映画館(字幕)] 8点(2008-10-10 12:13:20)

104.  サタデー・ナイト・フィーバー 今見ると、ディスコダンスの陰気さに驚かされる。薄暗いところにみんながぞろぞろ並び、覇気なく緩慢に体を動かしていて、ときどき物憂げにポンと手を打ったりして、こりゃ盆踊りだ。全体として籠もった感じ。ダンスならではの外へ向けたエネルギーがあまり感じられない。といってフラメンコのように、内側へ力を充溢させていくようにも見えない。動く快感より見られることが主体のダンスなのか。これは何なんだろう。60年の外側へ向かった抗議の時代の反動だったのかな。その驚きがかなりショックだったので、物語として映画を見てる余裕があまりなかった。トラボルタの、粗野だけど純真よ、っていう目つきが女性にウケたのはよく分かる。今だったら「誰でもいいからぶっ殺してやる」になっていきかねない、展望の開けぬブルーカラーの若者の鬱屈が、けっこうキチンと描かれていたような。[DVD(字幕)] 6点(2008-08-24 12:13:31)(良:1票)

105.  無常 実は見直したらそれほどでもなかったんだけど、若いころ入れ込んだ一本で悪口言う気になれない。記憶の中でいつのまにかワイド画面になってたのは、横移動の記憶がフレームを横に広げていたのだろう。斜めの移動も好きなんだ。私がかってに“背後霊の構図”と名付けている監督お得意の構図があって、こちらを向いている人が、画面の中央下ぎりぎりのところに顔だけ収まってたり、左を向く人を画面の左端に寄せておいたりする。つまりその人物よりも、その人物の背後に広がる空間をたっぷり取っている。するとなにかその人物を本人に気づかれずに操っているものの気配・あるいはその人物をじっと黙って観察しているものの気配が、背後にあやしくわだかまって感じられてくる。それが日本家屋の暗さとあいまって、独特の味わいを作っていた。主演女優の選択の趣味の悪さっていうのにも、この監督独特のものがあったなあ。[映画館(邦画)] 9点(2008-06-15 12:12:56)

106.  日本沈没(1973) 1973年の日本人はみな濃かった。主人公が藤岡弘でしょ。熱演の小林桂樹。総理大臣があの丹波哲郎。老人島田正吾も枯れてるとは言えず、必要以上に重々しくしゃべる濃さ。ちょっと出るだけだけど、立ってるだけで濃い夏八木勲が、友情で藤岡弘を殴るからもっと濃くなる。いしだあゆみの化粧も濃い。これらの濃さに拮抗するだけ、世の中も濃かったんだなあ。東京地震に空襲の記憶を思い起こすことがかろうじてできた最後の時代だろう。「何もしない」という対策は、どこか玉砕の発想に通じている。戦争という最も濃密な時間の最後の残響をとどめる濃さだったのか。学生運動が急速に下火になっていったのもこのころだなあ。ところで、この映画で指摘された日本の地震対策の貧弱さは、けっきょく阪神でまったく生かされなかった。[映画館(邦画)] 6点(2008-06-11 12:13:55)

107.  (秘)色情めす市場 《ネタバレ》 手持ちカメラで自然光の多用と、ドキュメンタリータッチのザラザラした感触。逆光で捉えた宿など、そのまま監獄を思わせる。全編にたちこめる大阪の匂い。とにかく、あいりん地区にカメラを持ち込んだことだけでも評価されるべきでしょう。この手の映画の需要は、すけべな気分になりたいなあ、ってのが圧倒的多数なのに、あいりん地区のドキュメントタッチでは、それに応えてくれない。こういうわがままが出来るほど、まだこのころの日本映画は作家性が許されていたのだ。せめて女の柔肌の肌色だけでも拝ませてくれ、という客の願いもむなしく、画面は白黒。ラスト近くで突如カラーになるが、それがニワトリのトサカの赤のアップ。これの驚きの効果は絶大だった。鬼才と言われた田中監督だったが、以後の日本映画界はこの異能の発揮場所を十全には与えてくれず、06年に亡くなった。合掌。[映画館(邦画)] 6点(2008-04-15 12:18:42)(良:1票)

108.  ネオ・ファンタジア 《ネタバレ》 面白かったものをいくつか。「スラヴ舞曲」、一人の男がすることを、集団が真似する。男はだんだんうるさく感じてきて、崖から飛び降りるふりをして連中を集団自殺に追い込もうとするが…、ってな話。独裁者と大衆との関係の風刺で、その両者を笑っている。「ボレロ」の前半が圧巻、どこぞの宇宙飛行士が投げ捨てたコーラから、生命が生まれ進化していく。このネトネトした感覚の動きが気持ち悪くも面白い。本家『ファンタジア』の「春の祭典」のパロディなんだろうが、これだけでも充分楽しめる。芸術性では「悲しみのワルツ」、取り壊し寸前の廃屋で過去を懐かしむ猫、という設定。猫の仕種など細やかで、ユーモラスでさえあるのがいじらしい。二次元の絵から三次元の想い出がこちら側に広がってくる。ほかに「牧神の午後への前奏曲」「ヴィヴァルディの協奏曲」「火の鳥」など。「フィナーレ」で、人類が滅亡しハッピーエンドとなる。全体に“素直でなさ”が感じられるところが、イタリアというお国柄。[映画館(字幕)] 7点(2008-03-15 12:13:32)

109.  エロス+虐殺 DVDがロングバージョンで収録されてると知らなかった。すぐに借りて見た。216分。6の3乗! 前半の方に記憶にないシーンが多かった気がするが、公開版より49分(7の2乗!)も増えている感じはなかった。野枝が大杉の家を訪れ妻と会う傘のシーンの陶酔はそのままだし、日蔭茶屋事件の緊張の充実も変わらず味わえる。そして全体としての評価に戸惑うのも、スクリーンで見たときと同じ。大正篇は重厚な悲劇としてほとんど完璧に出来上がっていると思う。自由を望みつつも嫉妬に囚われてしまうというモチーフは、単なる痴話を越えた大きなテーマだ。でも多分そういった悲劇として閉じてしまわないために、現代篇がくっついてるんだろう。この映画今回で3回見ているが、この現代篇をどう見ていいのか分からない。フリーラヴの昔と今の対比とか、持続する革命の困難とか、理屈は浮かぶが、どうにも面白くない。一柳慧の音楽が、流麗なメロディに、バキッとかガガガなんて雑音が混ざる仕掛けになってて、おそらくこの映画の大正と現代との対比にもなってるんだと思うんだけど、この雑音ほどの効果が現代篇にあっただろうか(こういう音楽の使い方は、数年後、篠田正浩の『沈黙』で武満徹もやった、あっちは西洋と東洋のぶつかり合い)。その時代の先鋭的なポーズは、時代が終わるとただの滑稽な気取りにしか見えない。かえって現代篇で一番興味深いのは、新宿副都心開発中の姿が見られる記録としてだろう。もっともそれも、カラー・普通の露出で見られる梶芽衣子の『野良猫ロック』のほうがいいのだが。というわけでこの映画を見ると、大正篇だけだったらなあ、という気持ちにどうしてもなってしまうのだ。閉じた悲劇を完璧に作るのだって、現代的な意味はあったと思う。[DVD(邦画)] 7点(2008-03-10 12:24:29)

110.  約束の土地 主人公が田舎へ帰ったときの朝の場面、ふたつの窓とその間に置かれた椅子に、朝日が射し込んでくるところが美しい。思えばこの監督、「地下水道」の暗さや「灰とダイヤモンド」のポロネーズの場など光に敏感なところがあって、社会派のわりにはちゃんと画面づくりに気を配ってくれるところが嬉しい。ただ本作の場合、お話はかなり図式的。主人公たちだって、なんとか没落を食い止めたい、というあがきがあり、それなりの止むに止まれぬ立場ってのがあったと思うんだけど、それが出てなくてただの金の亡者みたいになってしまっている。ユダヤ人の描き方が悪いせいもあるだろう。いいところとしては、工場主が袋の山に埋もれて死んでいるところをちらっと見る女性労働者の表情、ああいうふうに過不足なく描いたときに、一番効果が上がるんだ。[映画館(字幕)] 6点(2008-02-27 12:26:38)

111.  大理石の男 映画はある程度ナマものだから、この時代のポーランドの熱気と無関係に本作を見ることは出来ない。映画自体、別に映画史の古典になりたいとも思っていないだろう。時代へ向けて発言する熱気とそれを支える決意こそが、この映画の感動の核だ。かつて50年代に犯したポーランド映画人の過ちをもう繰り返したくない、という反省と責任が感じられる。レンガ積みの場面、主人公のみじめさと、個人が個人としての誇りを持つなどと思ってもいない党の残酷な視線を描いていて素晴らしい。見てはいけないものを見てしまうと下を向いてしまったカメラと、ヒロインのしつこく食いついていくカメラとが対比される。反省の映画っていうと、なんか後ろ向きに思われそうだが、でもそれは次代への期待の映画ってことなんだ。[映画館(字幕)] 7点(2008-02-20 12:21:21)

112.  にっぽん戦後史・マダムおんぼろの生活 横須賀のバーのマダムへのインタビューで綴った映画なんだけど、印象に残る二つの証言。60年安保のデモで樺美智子さんも1000円で雇われたんだと信じ込んでいるところ。もう一つはベトナムのソンミ虐殺事件について、アメリカ人は紳士的だからそんなことするわけがない、報道写真は病死した子どもを集めてきて写したんだろう、と思っているところ。想像力が欠如しているのではなく、自分の信念に合わせて想像力をフル回転させている。ここらへん今村さんがカメラのこっち側で、いいぞいいぞと面白がってるのはよく分かるんですが、う~ん、これからの打算的な人生設計の証言といい、今村のフィクション映画に向いたアクの強すぎる人で、もっと別の素材として生かしたほうがよかったのではないか、という気も少々。[映画館(邦画)] 6点(2008-02-17 12:26:23)

113.  女番長 野良猫ロック タイトルでは和田アキ子のほうが梶芽衣子より先だった。和田の演技力によっては女番長シリーズを考えていたのかもしれないが、彼女には歌に専念してもらうことにして、梶芽衣子の野良猫ロックとしてシリーズ化したということか。でも今見ると主人公はどちらでもなく、70年の新宿そのものだ。開発中の西口がたっぷり見られる。ガスタンクまで見通せる広大な空き地、工事中のとこってすぐ子どもの遊び場になっちゃうもので、もう藤竜也はじめみんなで走り回って遊んでる気分。オートバイとクルマの追っかけで、地下道や歩道橋を走り回るの、今じゃOK出ないだろう。いっぽう東口はサイケな気分、モップスにオックス、あとひとつ知らないGSも登場し、そのグループが歌ういかにもあのころのセンチな響きが、恥ずかしくも懐かしい。そうそう、虚無感を漂わせて話を終えるのもこのころの流儀だったっけ。ボクサーのコーチ役が青木富夫、かつての突貫小僧だ。[DVD(邦画)] 5点(2008-01-31 12:19:00)(良:1票)

114.  化石 渋味だなあ。長い長い映画を見ながら、ときに「生きる」を思い起こし(おもに仕事について考えるとき)、ときに「野いちご」を思い起こし(おもに孤独について考えるとき)、ときに「ベニスに死す」を思い起こす(おもに夫人について考えるとき)。佐分利信の芝居は、その芝居くささが重厚さを生むのに、栗原小巻・滝田裕介・神山繁の芝居くささは、ただ芝居くさいだけなのはどういう違いなのだろう。枯れるってことの利点か、新劇俳優の宿命か。フランスでの想念と日本での結末との間にちょっとズレを感じる、日本に帰ってきて少し観念性が強まったような。でもおそらくそういうことを考える映画ではなく、老年の心象風景にひたることが眼目の作品なのだろう。[映画館(邦画)] 6点(2008-01-25 12:22:32)

115.  ピンチクリフ・グランプリ とにかく人形の動きが丁寧で驚かされる。楽団の演奏のところなど、ピアノやベースの指つかいまでが、たぶんかなり正確で、現実の演奏を記録してそれを参考にしたのかもしれない。動きが実になめらか。もっともここまでなめらかだと、着ぐるみの人間が芝居する実写と違わなくなってしまう。アニメは、本来動かないはずのものが動いてる! って驚きが基本だと思うんだけど、動きをリアルにすればするほど、その驚きが薄れてしまうというパラドックスがある。つらいところだ。CGの普及で、毎日のように奇抜なコマーシャル映像に浸かっている我々の目が、刺激に麻痺してしまっているということもあるだろう。その目で見ると、ストーリーの展開もいささか素朴すぎて感じられる。でもだからこそ、この丁寧な仕事は見ていて気持ちいい。すがすがしい。崖の上の自転車修理工という孤高の主人公の栄光を、この作品にも捧げたい。[DVD(吹替)] 6点(2008-01-23 12:20:01)

116.  プロビデンス 死ぬ方法を選ぶ権利がある、という文句がキーか。それがひとつは政治的圧殺のイメージに向かい、もうひとつは主人公の病身の苦痛にもぐりこむ。この設定がどういう効果をあげているのかだが、よくわかんない。家族肉親を駒にしてストーリーを組んでいる孤独な老作家、それが「プロビデンス=神の摂理」とダブらせられているらしいんだけど、よくわかんない。狼男のエピソードは面白そうだったんだが、あれとブルジョワ論と関係があるのか、よくわかんない。ダーク・ボガードが車運転してるときの、どんよりとした家々の重さは、ヨーロッパだなあ、としみじみ思った。[映画館(字幕)] 6点(2008-01-18 12:13:08)

117.  いのち・ぼうにふろう 《ネタバレ》 これを見た日の日記には、こんなことが書かれている。『あれだけ、罠かもしれない、と主人公たち風来坊グループが言っていながら、何も対策たてないでノコノコ行くってのはトンマすぎないか。ぼうにふろうったって、自殺しようってんじゃないでしょ。それにまた山本圭(彼らが救おうとしてる若者)が、わざわざ一肌脱いで助けてやろうって気になれそうもない、とんだグズでなあ。なにかと迷惑掛け続けて、それで、逃げろ逃げろって言ってんのに、目ぇ剥いてぐずぐずしてて、ほんとイライラさせる。』なんとなく「用心棒」の土屋嘉男をいま連想した。太っ腹を描くときに、対照的に実直な小者を置くってのが邦画の段取りか。『小林正樹、あきらかにピークを過ぎた71年の作品だが、昨今の邦画のレベルから見れば秀作と呼べるだろう、スタッフの力か。武満徹の音の塊りがロングのカットでドローンと入ると、とたんに画面が締まるから恐ろしい。』[映画館(邦画)] 6点(2008-01-11 12:27:57)

118.  戒厳令(1973) これ私が初めて見た吉田喜重作品だった。とにかくその構図の美しさに見とれた。どうも一番最初に見た本作の印象が強く、今回再見してみたが、やはり喜重映画で一番好きな作品だと思う。凝った画面はときに薄っぺらになったりするものだが、この人の場合、凝視しすぎて構図が美的に固まったような感じで、装飾性は感じられない。本質がみっちり詰まって黒光りしているような重苦しさがあり、それが北一輝の「持ちこたえることによる革命」の重さと釣り合っている。硬い質感の喜重世界と、どちらかというと柔らかい質感の場面で味を見せる別役実の脚本とが、ここ1973年において奇跡的に融合した。「エロス+虐殺」も傑作だとは思うが、現代篇のことさらトンがってみせてるようなところが今見るといささか恥ずかしいのに対し、こちらは時代に集中することで純度の高さを保った。[DVD(邦画)] 8点(2007-12-25 12:20:22)

119.  三里塚 辺田部落 三里塚シリーズでとりわけ好きなのが、成田闘争の最前線にカメラを据えた「第二砦の人々」と、地域の死をじっくり記録していく本作。隣人が消えていく、民俗行事が消えていく、墓もどこかに移さなければならない。村を構成していたものの消滅を一つ一つ数え上げることで、闘争の現場の奥を見せてくれる。雨の音の中での寄り合いのシーンでは、語られる言葉よりも、重苦しい沈黙のほうをより深く記録していた。生活そのものが消えようとしている重苦しさ。これと対照的なのが、野良でのカミサンたちのおしゃべり。岩山の部落は大変だべな、逮捕されてしょんぼりしてっだべな、なんて話をずるずるしてるだけなんだけど、生活が本来持っている生き生きした姿、いま奪われようとしている美しい時間を、完璧に記録してくれていた。記録するというフィルムの機能の基本をあらためて思い出させてくれる名作だと思う。[映画館(邦画)] 9点(2007-11-27 12:18:10)(良:1票)

全部

Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS