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プロフィール
コメント数 2490
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1201.  蜘蛛女(1993) 《ネタバレ》 ファミリー・ネームやキリル文字の警察書類からするとロシア人みたいだし、マフィアのドンとは昔は一緒に暮らしてたみたいだし、政治家と不倫してその男に「モナ男」という恥ずかしいあだ名を定着させた日本のタレントとはもちろん関係なさそうだし、モナよお前はいったい何者なんだ。初体験の甘酸っぱい想い出を回想してると思ったらそれは初殺人のことだったり、パンティ丸出しでゲラゲラ笑いながら太ももばさみで男を絞め殺そうとしたり、この女こそ生身のターミネーター、いや“完全なる有機体”と呼ぶに相応しい化け物です。このレナ・オリンの怪演があまりに凄いので目立ちませんけど、ストーリー自体はなんか穴だらけですよね。でもモナの存在感だけでなく救いようのないほどダメな男のゲイリー・オールドマンが上手い演技なので、最後まで観客を引っ張ってゆく勢いだけは認めてあげましょう。ラストで約束の店に現れない妻を待つオールドマンの姿は哀れを誘いますけど、モナは本当に妻を殺したんでしょうか?実はそれはモナのはったりで、妻はオールドマンに愛想を尽かして35万ドルを元手に優雅に暮らしているという解釈はいかがでしょうか。[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-07-05 00:53:00)

1202.  タクシードライバー(1976) 《ネタバレ》 この映画は自分にとっては観たときの精神状態を測定するリトマス試験紙の様なものです。もちろん引き込まれるのは鬱々としているときで、そういう状態ではほんとは観ない方が賢明かもしれません。もういろんなシチュエーションで10回は観てるけど、毎回初めて観たような感覚になるし、感情移入する登場人物も観るたびに違うんです。ちなみに今回は心優しい(?)ポン引きのハーヴェイ・カイテルで、せっかくジョディ・フォスターと仲良くしてたのに可哀想じゃないですか。 トラヴィスという男はけっきょくなんだったんだろうか、これは永久に解けない疑問かもしれません。この映画でのデ・ニーロは前半・中盤・クライマックスと別人のように形相が変わってしまうのがまた凄い。始めはちょっとコミュニケーション障害気味な表情に幼さの残る青年という感じが、目つきがテンパった凄味のある殺し屋風キャラに変貌してしまいます。それは、身なりは良いが不気味さを漂わせたマーティン・スコセッシを客として乗せてからなんです。スコセッシは悪魔だったのでしょうか、そう言えば『エンゼル・ハート』のルシファーの化身であるデ・ニーロは、本作のスコセッシの風貌と瓜二つでしたね。[ビデオ(字幕)] 8点(2015-07-03 00:37:24)

1203.  ダーティハリー4 《ネタバレ》 シリーズ唯一のイーストウッド監督作ですけど、まだ作風がドン・シーゲル風味だったころですので出来としてはB級色の強い刑事アクションという感じです。前作以上に「泣けるぜ」とぼやく回数が多かったようで、ハリー・キャラハンもちょっとくたびれてきたかな、という印象ですね。「ゲームのルールは変わったんだぞ」という上司のお説教のおかげでしょうか、本作ではとうとうオート・マグナムを使う様になってしまいました。ラストのオート・マグナムを構えてシルエットになって悪漢の前に現れるところなぞ、「待ってました!」と掛け声をかけたくなるカッコよさですね。でも殺しのシーンではソンドラ・ロックの“股間撃ち抜き殺法”の方がはるかにエグくて、どっちかと言えば主役は彼女じゃないでしょうか。 シリーズとしての疲弊感はキャスティング面において濃厚で、『ガントレット』組のソンドラ・ロックやパット・ヒングルは我慢するにしても、ハリーの相棒が『3』にも出てたアルバート・ポップウェルというのはさすがにどうかと思います。だってこの人、前作では悪役だったんですから、いくら7年のブランクがあったとしてもちょっとあり得ない配役ですよ。良く観るとこの俳優は第一作から全部に悪役として出演していて、とうとうハリーの相棒にまで登りつめたって訳です(笑)。イーストウッドのお気に入り黒人俳優だったみたいで、彼の後継者がモーガン・フリーマンということになるんでしょうか。[CS・衛星(字幕)] 5点(2015-06-30 00:52:09)(良:1票)

1204.  白い家の少女 《ネタバレ》 この年(76年)だけでジョディ・フォスターは5本もの主演・準主演作が公開されていて今で言うとクロエ・グレース・モレッツ状態、いやクロエちゃんをはるかに超える勢いだったんですね。実は彼女がトップにクレジットされるのは本作が初めてで、つまりジョディの初主演映画と言うわけです。『タクシー・ドライバー』の少女娼婦役が強烈過ぎてかすんじゃってますけど、この映画のリン・ジェイコブスはその後の彼女の映画人生に影響を与えたキャラだったんじゃないでしょうか。 面白い事にこの映画は、作家の親娘の話である『別れのこだま』と設定が酷似してるけど、まるで真逆の展開になるんです。『別れのこだま』ではジョディが心臓病を患う少女役ですが、本作では病魔に苦しむのは作家である父親で、しかもその娘は父の死後恐ろしい行動に出る。それまではハート・ウォーミングなキャラが持ち味だった彼女が、普通に見える少女の心の闇をここまで演じ切れば観客には強烈な印象を与えたことでしょうね(少女娼婦という存在はあまり普通じゃないですから)。少女なんだけど常に無表情で何を考えている測り知れない、だけど本質的なもろさはきちんと見せるという演技をこの歳で完璧にものにしているんだから恐ろしいことです。[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-06-28 21:59:00)(良:1票)

1205.  祇園囃子 《ネタバレ》 みんな若尾さまを目当てに観始めるでしょうけど、すぐ判りますけどこの映画は小暮実千代を愛でるのが正解です。もう何と言いますか、彼女をギュッと絞ったら色気の汁が滴り落ちそうな感じなんです。彼女が冒頭でなじみ客にぶつける捨てゼリフが、現代のキャバクラ嬢の言う本音と大して変わらないところはとても面白い、時代に関係なくこの世界は変わらないものなんだなとしみじみ思いました。若尾文子も時代にあった自我を持った舞妓を好演していて、初めてお座敷に上がる時の初々しさは胸キュンものです。 80分余りと尺は短い映画ですが、実に濃厚な80分間の溝口ワールドです。「女を撮らせたら溝口」と言われただけあって、小暮実千代の演技を観てると、どうしてここまで繊細な演出が出来るんだろうと感嘆してしまいました。また出てくる男と言う男が、だらしなく狡猾で卑怯で女優陣を引きたててくれます。状況が変わる場面になると必ず電話が鳴るという作劇術もなかなか興味深かったです。そして忘れてはならないのが置屋の女将の浪花千栄子で、男も女も操る手腕はまるで老練な政治家みたいで怖くなってきます。 こうなると同じ溝口の『祇園の姉妹』もぜひ観たくなってきました。[CS・衛星(邦画)] 9点(2015-06-25 21:54:37)(良:1票)

1206.  マラヴィータ 《ネタバレ》 『マラヴィータ』って飼い犬の名前なんですね、でもなんでこれを映画タイトルにしたのかはさっぱり理解できませんでした。もう一つの原題“The Family”の方がよっぽどしっくりくるんじゃないでしょうか。 リュック・ベッソンが監督なんで正直あまり期待してませんでしたが、そこそこ愉しむことは出来ました。コメディ・パートはいかにもベッソンらしい泥臭さに満ちているんですけど、マフィア・パートになるともうどこから観てもスコセッシ節のシビアさです。問題はこの両パートが上手く融合されていないように感じさせるところでしょう。ラスト・シーンなんかはまるで『ケープ・フィアー』とそっくりなんですが、そこにかぶさるデ・ニーロのコメディ・タッチのモノローグがまるで映像にマッチしてなかったですね。でもあの『グッドフェローズ』ネタには、不覚にも声をあげて笑ってしまいました。 トミー・リー・ジョーンズがこの映画でいちばん可笑しいキャラだったかもしれません、CMの“宇宙人ジョーンズ”とまるで同じ演技なんですから。良く考えると、あの缶コーヒーのCMはトミー・リーにコメディ演技を開眼させた偉大な功績があるのかもしれませんね。[DVD(字幕)] 6点(2015-06-22 21:24:59)

1207.  テンタクルズ 《ネタバレ》 テンタクルズと聞くと昔からウルトラQのエピソード『南海の怒り』に登場する大蛸スダールを思い出しちゃうんです。怪獣図鑑ではスダールの解説として「酢ダコにしたら1000人前(1万人分だったかな?)になる」とあり、そもそも酢ダコ一人前とはどれくらいの量なんだろうか、そして果たして美味いんだろうか、と子供心にも疑問を持って今でも引きずっています(笑)。 底抜け超大作としてあまりに有名な本作ですけど、蛸の見せかた自体は水中撮影を使ったりして思ったよりまともです。肝心の大蛸テンタクルズですけど、こいつは怪獣と言うほどの大きさではありません。下手くそな撮り方のせいでどれくらい大きい蛸なのかイマイチ判りづらいのですが、ヨットを襲う海中からの映像を見る限りではせいぜい全長5メートルという感じで、酢ダコにしたらせいぜい100人前でしょうか。そもそも“超大作”という宣伝文句からして日本の映画会社の誇大広告で、どこにもカネをかけた痕跡が観られません。オールスター・キャストと言うのも錯覚で、スターと呼べるのはヘンリー・フォンダぐらいで、シェリー・ウィンタースとジョン・ヒューストンはちょっと違うでしょうって感じで、後はほとんどがイタリア人と観てすぐ判る俳優がアメリカ人を演じています。たぶんこの映画の製作費の3分の1ぐらいはフォンダのギャラだと思いますが、これがまた酷い手抜き演技なんです。出番自体が2シーンだけでひとりで電話してるだけ、絡むのもイタリア人俳優がひとりだけなんです。そして中盤以降は突然すがたをくらましてまるで彼の存在すらなかったかのように映画は進行してしまうんです。ヒューストンとウィンタースも同じ様にフェード・アウトしちゃうし、この監督はちゃんと最後まで映画創りに関わったんだろうかと不思議でなりません。 この映画が“底抜け”の殿堂に鎮座しているのは、蛸の特撮がチャチとかいうわけじゃなく、あまりにお粗末な脚本のおかげなんだということは理解できました。でもほとんど同時期の『オルカ』をしっかりパクっているところなんかは、さすがイタリア映画界と言うほかありませんね。でもさすがにこれを映画館でカネ払って観てしまったら、たぶん暴れたでしょうね。[CS・衛星(字幕)] 1点(2015-06-20 22:55:36)(笑:1票)

1208.  女子ーズ 《ネタバレ》 なんも期待せずに観始めましたけど、実は思わぬ掘り出し物でした。もう最初の30分のチャールズ司令官や怪人たちとのグダグダなガールズ・トークはもう爆笑です。考えてみれば、この映画は日本版『デス・プルーフ』みたいなもんなんですよね。ガールズ・トークと女子アクション(もっとも日本の方は迫力負けですけど)は共通じゃないですか、ちょっとムリありますけど(笑)。それにしてもこの監督の“戦隊もの愛”には頭が下がります。地球制服を企む怪人たちが、埼玉かどっかの砂利採掘場をいつも通って都心を目指していたとは不覚にも今まで気が付きませんでした(笑)。もう一つ伝わってくるのが、監督の強烈な韓流憎悪じゃないでしょうか。レッドの恋愛シークエンスはモロに韓流のパロディで、メチャクチャ韓流ドラマをコケにしてるような気がするんですけど。女子―ズに居酒屋で群がってくるチャラい男たち、もう雰囲気が韓流男優そのものって感じでした。 それにしても桐谷美玲や藤井美菜が「ウ●コ~ウ●コ~」なんて連呼する映像を眼にするとは、世の中何が起こるか判らないもんです。[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-06-19 20:49:02)(良:2票)

1209.  理由(1995) 《ネタバレ》 中盤でもう黒人死刑囚が無罪放免となっては、もうそこでネタばれしたも同然です。同じ様なネタなら、『追いつめられて』の方が面白さでは数段うえです。ラストにかけては別の映画、そう『ケープ・フィアー』みたいな展開に無理矢理持って行ったという感じです。分割する橋を飛び越えるカー・アクションなんて、はたしてこの映画に必要あったんでしょうかね。 と言うわけで大して褒めるところもない凡庸な映画でしたが、驚くべき見どころが二つあります。ひとつは誰もが納得するエド・ハリスの鬼気迫る怪演です。この人は他の映画でも悪役を演じていますが、どちらかと言うと知的な犯罪者が多いのですけど、このサイコ・キラーぶりはもうぶっ飛んでます。ほんと怖い、名優は何を演じても観るものを圧倒させるものですね。そしてもう一つは、ショーン・コネリーの娘役(孫じゃないですよ)の少女はスカーレット・ヨハンソンなんですよ。実はあとからそれを知りあわてて観直してみましたが、たしかに彼女でした(当たり前です)。彼女、これが『ノース/ちいさな旅人』に次ぐ映画出演第二作目だったんですね。どうせなら『ケープ・フィアー』のジュリエット・ルイスみたいに活躍させればよかったのに、でも11歳じゃムリですよね(笑)[CS・衛星(字幕)] 5点(2015-06-16 23:16:14)

1210.  ジャッジ・ドレッド(2012) 《ネタバレ》 スタローン版のせいでどうしてもイメージが悪くて可哀想なんだけど、最近のマーヴェル・コミック映画とは一線を画したダークな世界観が素晴らしい。主演のカール・アーバンはメットを被りっぱなしでとうとう最後まで素顔を見せずじまいでしたけど、これもある意味いい役者根性と言えるでしょう。ルーキー・ジャッジのオリヴィア・サールビーは 反対に被らないで通したけど、“ヘルメットの装着すると超能力が使えない”というのは実に上手い説明です。たしかにアーバンはどうでもいいけど、彼女のルックスを堪能できるのは眼福ですよね(笑)。 それにしても、ここまで顔面破壊に拘った映画には初めて出会った気がします。これはかなりエグくて痛そう。展開が気のせいか『ザ・レイド』にそっくりになっちゃってるのは、まあご愛敬と言うことで。でも8万人が居住している200階建てのビル、そして8億人がうごめくアメリカ東部全体ぐらいの規模を持つメガシティなんて、もうそのセンス・オブ・ワンダーには痺れてしまいますね。バルカン砲で撃ちまくられても無事だったり銃弾が命中してもまるでプレデターみたいに応急処置が出来たり、などご都合主義なところはありますがシンプルながらも見応えは十分でした。 カール・アーバン自身が署名活動しているそうですが、続編製作は難航しているみたいですね。私もドレッドとアンダーソンのコンビをもう一度観てみたいので、署名してみようかな。[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-06-13 23:08:49)《改行有》

1211.  おとなのけんか 《ネタバレ》 金物屋の店主、いわゆる“意識が高い”系のその妻、シニカルなエリート弁護士、投資コンサルタントをしているその妻、といういかにもニューヨーカーといった風情の登場人物たち、数いる芸達者の中からそれぞれにピッタリの俳優たちをキャスティング出来たのが大成功でしょう。プロットを見ただけでお話しの展開はだいたい読めるわけですけど、劇中の彼らの“人生最悪の時間”と上映時間をピッタリとシンクロさせているのも舞台劇の映像化としてはシンプルですが効果的、もっともこのケンカを見せられる方としてはこの上映時間が正直限界でしょう。ケイト・ウィンスレットのゲロ吐きとスコッチの酒盛りがストーリー展開上のターニング・ポイントになっていますが、四人が夫婦関係を離れてバラバラの口論になってゆくのは良く練られた演出ですね。面白いのは、ジョン・C・ライリー以外の三人が大事にしているもの(スマホ・画集・バッグ)がそれぞれ非常事態に陥るところで、そこで彼女らの人間的本性がむき出しになってしまいます。でもライリーだけにはそんな執着するモノがなく、逆に秘蔵のスコッチやら葉巻を皆に分け与えるところが面白い。まあもっとも、それによってさらに事態が悪化しちゃうんですけどね。ラストでカメラが屋外に出ると、地面では死んだと思われていたハムスターが動き回り、遠景では息子たちが仲直りしているというのは実にシャレてました。 昔の淫行事件のせいで逮捕されちゃうので合衆国に入国できないポランスキーがNYが舞台の映画を撮るとは予想外でいたけど、なるほどこういう小品なら十分可能なわけですね、わずかな屋外シーンだけはカメラマンを派遣して撮影すればよいわけですし。[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-06-11 23:51:46)(良:1票)

1212.  血まみれギャングママ 《ネタバレ》 1930年代に暴れ回ったバーカー母子ギャング団の実話の映画化で、ベイカー・ボーイズならぬ“ファビュラス・バーカー・ファミリー”といったところでしょうか。 鬼より怖いママを演じるのがなんとシェリー・ウィンタース!、ギャング御用達のドラムマガジンつきのトミー・ガンをぶっ放すお姿は、実にさまになっています。それにしても、二度のオスカー受賞した名女優がロジャー・コーマンの映画に主演するなんて、まさに珍事と言えましょう。コーマン映画にオスカー受賞者が出演したのは、たぶんこれだけだったんじゃないでしょうか。70年代の彼女は、2年後に『ポセイドン・アドベンチャー』に出てあの聖女ベル・ローゼンを演じましたが、その後は『テンタクルズ』なんかにも出る様になってすっかりやさぐれちゃった感があります。彼女の四人の息子の中には、まだ無名だったデ・ニーロがいますが、さすがデ・ニーロだけあって存在感ある演技を見せてくれます。 ストーリー自体は史実をかなり脚色してますが、あまり上手い脚本とは言えませんね。ウィンタースの熱演は認めますけどそれが空回り気味で、あまりに無慈悲で冷酷な彼女の行動には感情移入の仕様がありません。近親相姦まで犯すようなな母と息子たちの異常な関係がこの映画の肝であるはずなのですが、そこら辺の突っ込みは表面的で単にエピソードを繋げるだけのストーリー・テリングだったのは残念です。 実は史実ではケイト・バーガーが犯行現場での目撃証言や息子たちと共犯である証拠は皆無なんだそうです。一説によれば、犯行に無関係に近い存在のケイトを一緒に殺してしまったので、FBIのフーヴァー長官が“ケイト・バーカー神話”を隠蔽のためにでっちあげたらしいです。[CS・衛星(字幕)] 4点(2015-06-10 20:57:49)

1213.  アンダー・ザ・スキン 種の捕食 《ネタバレ》 あなたたち、“スカ・ヨハのヌード”というキーワードに期待を膨らましてこの映画を観ると、手痛いしっぺ返しを喰らいますよ(かく言う自分がそうでした)。考えてみれば、『スピーシーズ』の○番煎じみたいな映画にスカ・ヨハが主演してヌードを見せるわけありませんよね。 いきなり『2001年』みたいな映像を見せられたうえもう極端にセリフが少ないときたら、「キューブリックの後継者か?」なんて勘違いするあわて者がいても不思議ないですね。全篇通じてもほとんど音楽が使われず、流されるのはほとんどワン・フレーズだけの不安をかき立てる不協和音みたいなやつだけ。その分映像には凝りまくってて、やたら引きで撮るシーンが多く風景の中で良く観るとスカ・ヨハが動いているという感じです。彼女の正体なども説明は一切なく、バンを運転しては男を物色して声をかけることを単調な繰り返しで見せるだけの展開には恐れ入りましたが、でもヘンな中毒性すら感じました。中盤から現れるバイクに乗って走り回る男、これもいっさい説明がないので?ですけど、どうもスカ・ヨハを探し回っているみたいでしたね。そんな彼女も例のエレファントマンくんに声をかけてからは、鏡に映る自分を意識しだしたりして何かが変化したみたいですが、さすがにあの最中にいきなり鏡で自分の股間を観察し始めたのには思わず笑ってしまいました(お前は小野小町か)。レイプされそうになって森の中を逃げ回るところまで退化(?)するとは意外な展開でした。そしてスカ・ヨハのあの最期、エイリアン映画史上に残るあっけなさでした。 まあ正直人に薦められる作品ではないんですが、どこか麻薬性がある不思議な映画であるのは確かです。[DVD(字幕)] 6点(2015-06-07 22:40:25)

1214.  コーマン帝国 《ネタバレ》 ロジャー・コーマンの自伝(これ、傑作です!)を読んだことのある自分としては、まあ波乱万丈の映画人生を表面的になぞっている可も不可もない内容でしょうか。コーマンというお方は、B級映画の帝王のくせして風貌は優雅で語り口もまるで大学教授みたいなのが面白い。そこら辺はトロマのロイド・カウフマンやキャノン・フィルムズのメナヘム・ゴーランとは大違い、ビジネスマンとしての手腕もハイレベルなのもこの人の凄いところ。ドキュメンタリーなので彼の映画人生をかつての門下生たちが回想するわけですが、それがジャック・ニコルソン、マーティン・スコセッシ、ジョー・ダンテ、ロン・ハワードたちでこれまた豪華な面々です。でもなぜかそこにコッポラとキャメロンがいないのがちょっと残念ではあります(きっとややこしい人間関係があるんでしょうね)。ジャック・ニコルソンが「彼の事はみんな大好きなんだ」と感極まって泣き出してしまうところには、こちらまでジーンとさせられました。 コーマンのもとで映画の世界に入って成功した映画人は数え切れないけど、面白い事に彼の元にとどまった人はいないしコーマン自身もひきとめない。コーマンが手掛けるのはとんでもないB級映画だから、「いつまでもこんなことしてられない」と才能ある連中の発奮材料になっているのかもしれないですね(笑)。 ドライブイン・ムーヴィーからビデオ・DVDへとB級映画を取り巻く環境は大きく変わり、コーマンのビジネス手法にも確実に打撃を与えられてきたのは確かでしょう。映画はコーマンがアカデミー特別功労賞を授与されるところで終わります。これは長年ライバルだったハリウッド・メジャーにとって、もはや彼が脅威では無くなったことの証しなのかもしれません。[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-06-05 22:01:32)

1215.  カーツーム 《ネタバレ》 砂漠での壮大な戦いの映画だと思って観てみたら、ロンドンの政府高官たちの駆け引きを描写するシーンも多いし、戦争映画というよりも政治が主役の歴史映画でした。ヴィクトリア朝時代を代表する軍人である“チャイニーズ”・ゴードン将軍ですが、演じるチャールトン・ヘストンがこのキャラにピッタリの演技を見せてくれたのは予想外でした。上層部の命令に反抗する気難しいが気位の高い男なんですが、こういうキャラを演じたらヘストンはほんと上手いです。大規模な騎馬集団のぶつかり合いあり、ナイル河上での海戦もどきの戦いありと、戦闘シーンもヤキマ・カヌットが実質監督してるだけあり迫力ありましたね。これはシネラマの大画面で観たらさぞや凄かったでしょうね。対するマフディー演じるのはローレンス・オリヴィエ、アル・ジョルスンみたいな黒塗りなのでちょっと見には誰だか判りませんが、あの眼力は強烈でこれぞ名優です。けっきょくゴードンとマフディーはコインの裏・表の様な似た者同士だったわけですが、ありふれたドラマツルギーながらもけっこう説得力に満ちた良い脚本だったと思います。 主要キャラには女性はいないし女性が登場している映像自体がほとんどないという、まるで『アラビアのロレンス』の様な英国製らしさに満ちた映画でした。[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-06-03 23:15:24)

1216.  ハングオーバー!!! 最後の反省会 《ネタバレ》 三作目にしてかなりプロットを変えてくるとは、このシリーズの脚本家はなかなかクレバーですね。冒頭からいきなりMr.チャウの脱獄と来ましたか、このシークエンスは『暴走機関車』のオープニングとそっくりに撮られていて監督の茶目っ気が感じられます。 本作のゲスト・スターはジョン・グッドマン、確認すると黒いダグは「マーシャルに殺されちゃうよ」というセリフを一作目でちゃんと言ってましたね。本作ではチャウの悪事に三人がつきあわされて振り回されるという展開ですが、前作とはちょっと毛色は違っているけど、これはこれでそこそこ面白いんじゃないでしょうか。前作までのネタは律義に踏襲されています、これはファンとしては嬉しいところです。まず動物ネタ、トラ、サル、と来て今回はキリンですか、可哀想な結末でしたがこのブラックさはツボですよね。アランのスピーチ、今回のお葬式での弔辞が今までの最高傑作です。そしてビリー・ジョエルのネタも健在でしたが、今回はスチュの替え歌がなくて残念でした。中盤まで微塵もその可能性が感じられない展開だったのに、まさかの強引さでアランの結婚で幕を閉じさせるとは予想外でした。 今回は見送りなのかと思っていたら、最後にちゃんとパーティをしてくれて期待通りでした、でもこれってバチュラー・パーティじゃなくて花嫁も参加してるから披露宴の二次会か三次会ということなんでしょうかね。そして気になって仕方がないのはスチュのオッパイ、どうしてあんなになっちゃったのか気になって夜も眠れません(笑)[DVD(字幕)] 6点(2015-05-31 22:47:31)(良:1票)

1217.  ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える 《ネタバレ》 ネタのヤバさで売っているシリーズですけど、この第二作目はまさに『国境を越える』あらため『一線を超える』じゃないでしょうか(笑)。指ネタはさすがに「おい、ほんとにそれでいいの?」とドン引きさせられました。夜のバンコクで暴れ回るのは観ていて痛快ではありますけど、この映画タイ国内で上映出来たんだろうか?、とさすがに心配になりました。 本作では“スチュいじり”がテーマみたいなもので、刺青から始まって平常は真面目そうな彼が本性に目覚めたというかどんどん変貌してゆくのが実に愉しいところです。船上でスチュが途方に暮れて歌うビリー・ジョエルの替え歌がまた大爆笑で、これアドリブ演技をそのまま使ったんじゃないかと思うほど自然な感じです。 またまた出ました“タイソン・ネタ”そしてMr.チャウ(正直これには驚きました)、とひとつのパターンを作っていてシリーズ化するのかはともかく、さらに続編撮るのは確定していたみたいですね。当然だれしもが予想するのがアランのご結婚でしょうけど、果たしてどうなりますやら…[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-05-30 20:55:45)(良:1票)

1218.  ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 《ネタバレ》 ドタバタ・コメディー+謎解きミステリーというプロットはなかなか斬新だったと思います。きわどい下ネタと人種ネタは拒否反応がある人も多いでしょうが、すいません私“黒いダグ”には心底大笑いしてしまいました。フィル・スチュ・アランのキャラもキレまくってます。いちばん悪そうなフィルが教師と言うのは強烈な皮肉ですよね。マイク・タイソンが出てきたのはびっくりでしたが、このネタでⅡまで引っ張るとは思いもよりませんでした。可笑しかったのはMr.チャウで、だってグラサンを外したら不祥事でバッシングを受けてすっかり干されてしまったあのお笑いタレントにそっくりなんですもの。でもこいつが実はシリーズ最重要のキー・パーソンだったとは、Part.1では想像できませんでしたね。ネタがヤリ過ぎ状態になったりタッチがちょっと変わってくる『国境を越える』や『最後の反省会』と比べると、やはりこの第一作が笑いのバランスが取れていていちばん愉しめるんじゃないでしょうか。[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-05-28 20:53:43)

1219.  最後の審判(1965) 《ネタバレ》 東宝はBプロ用に海外の推理小説を翻案した作品を60年代半ばごろに製作していますが、本作もその中の一本です。海外の推理小説といっても低予算ですからアガサ・クリスティーの様なビッグ・ネームの作品を使えるはずもなく、本作もW・P・マッキ―ヴァーンという聞いたこともない様な作家の小説が原作です。 プロットは人妻と出来ちゃった愛人が旦那に殺人犯の濡れ衣を着せて抹殺しようとするという手垢のついたお話しです。この頃の仲代達矢は、イケメンなんだけど野心でぎらぎらした爬虫類的な男というキャラはもうハマり役です。淡路千景も、ヤクザな仲代にのめり込んでゆくインテリの女医というキャラを好演していて、熟女の色気がムンムンです。でも肝心の夫を陥れる策略がグダグダなんです。淡路が同僚医師を自宅に連れ込んでいるところを夫に見せつけて離婚させるという筋書きだったんですが、どうもこの作戦の意味が判らない、あまりにまどろっこしいんです。また仲代が利用できるとして喫茶店の吉村実子と関係を結ぶんですけど、彼女は仲代の殺人のアリバイ作りに使われます。でもその殺人はあくまで偶発的に起こったことで、これでは仲代が始めから猟銃殺人を計画していたことになってしまい訳が分かりません。仲代もたいがい大バカ者で、硝煙反応を知らないし捨てればよいのに犯行時に着ていたジャケットを硝煙反応が消せると思ってクリーニングに出す体たらくです。極めつけは、夫が犯人だと信じていた淡路に「自分がやった」と愛の告白のつもりでばらしてしまうことでしょう。 これはもう、原作小説じたいが駄作なのか脚本家の腕が悪すぎるのか、まあ両方なんでしょうね。後半には伴淳三郎が刑事として登場しますが、これがもう『飢餓海峡』の弓坂刑事そのまんまのキャラだったのには笑ってしまいました。[CS・衛星(邦画)] 4点(2015-05-27 20:11:17)

1220.  おかしなおかしなおかしな世界 《ネタバレ》 だいたい、タイトルに“おかしな”がついている映画が可笑しかったためしがない、という経験則は見事に的中でした。スタンリー・クレイマーが大真面目にドタバタ・コメディを撮ったら大惨事になったという感じで、黒澤明がスラプスティック・コメディ映画を撮っても多分同じ様に笑えない超大作になったんでしょうね。要はコメディはこの監督の守備範囲じゃないってことです。 しかしこんなドリフのコントのようなベタなドタバタをシネラマで観客に見せるというのは、ある意味もの凄い快挙ですよ。ジョナサン・ウィンタースが大暴れしてガソリン・スタンドを崩壊させちゃうシークエンスなぞ、やってることはまるっきり『全員集合』なんだけどあれだけ大掛かりだとなんか崇高なものを拝めたような錯覚すら覚えてしまいます。出演しているのはスペンサー・トレーシー以外は曲者コメディアン大集合といった趣ですが、撮影当時の基準からでもちょっとロートルばっかりですよね。現代の感覚からするとトレーシーがお宝を横取りしてニンマリという終わり方でしょうけど、“悪は滅びなければいかん”というのがハリウッドの不文律だった時代ですから、ああいうラストは致しかたないんでしょうね。それにしてもバナナの皮でスッテンころりんとはねぇ、劇中あのおばさんのズロース姿を何度見せられたことか…[DVD(字幕)] 4点(2015-05-23 23:36:38)

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