みんなのシネマレビュー |
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1261. 悪魔の手毬唄(1977) 《ネタバレ》 市川・石坂コンビの金田一シリーズの二作目は一作目と同じキャストに同じ演出を施すことでこのシリーズ独自の個性と安心感を構築することに成功した。と同時に私的にはこんがらがっちゃったりするんですが。前作『犬神家の一族』と人気を二分するこの作品の評価を上げているのはシリーズすべての悲しい過去を持つ犯人の中で、過去だけではなく自らの愛する娘をも手にかけてしまうという最も悲しい仕打ちを受けてしまうという悲劇性と、その女を一途に想っていた刑事がそもそも金田一を呼び寄せたという悲しい皮肉が他のどの作品よりも感慨深いストーリーとしている点にあると思う。抑えた演技にもかかわらず圧倒的な存在感を示した若山富三郎は完全に主役を食っていたが、金田一耕介のキャラからしてみれば食われてこそ作品の出来は良くなるということなのかもしれない。[DVD(邦画)] 6点(2006-07-11 18:51:29) 1262. 電撃フリントGO!GO作戦 どこまで真面目に作っててどこまでふざけて作ってるのかわからんところが素晴らしい。スパイツールに関しては「007シリーズ」や「M:Iシリーズ」に引けをとっていない。ただものすごくちゃちいだけで。仮死状態でピンチを脱するところなんて馬鹿馬鹿しいんだけどスパイ活動前の精神統一シーンでちゃんと伏線をはってたりして作りそのものはけっこう丁寧だし、敵の理想郷は漫画チックだけど共産主義の理想を彷彿させ、拉致、洗脳、奉仕係なんてまるで某国を彷彿させ、細部はありえないことだらけなんだけど本筋はけっこうリアルでシリアスだったりしてあなどれません。「オースティン・パワーズ」のようなギャグに転化したパロディではなく、まじめにB級路線に転化したパロディ。観たのはずいぶん前だけど大統領直通電話の着信音が忘れられません。[DVD(字幕)] 6点(2006-07-05 16:49:15) 1263. ワンダとダイヤと優しい奴ら モンティ・パイソンのギャグってどうも笑えない。でも嫌いじゃない。必死で笑わせようとしてすべってるってのと違って、また反対にいい加減に作ってるわけでもなくて、実に真剣に喜劇を作り、それでいて安易に笑いをとろうとはせず、かといってわかる人だけわかればいいという高尚な笑いを提供しているわけでもなく、むしろ馬鹿馬鹿しくって下品なギャグが満載で、でも下品なギャグってゆうより大人のギャグって感じで、笑っていいのか困惑するようなブラックが散りばめられていて、やっぱりこれは子供には見せられんなと思ったりもする楽しい映画です。なんのこっちゃ。[ビデオ(字幕)] 6点(2006-06-30 17:42:20) 1264. 泥棒成金 偽者は誰なのか!というストーリーはまぎれもなくサスペンスなのに極力サスペンス演出を排除し、ロマンス色、コメディ色を前面に押し出している。今気づいたのですが『ダイヤルMを廻せ!』『裏窓』そしてこの『泥棒成金』というヒッチコックとグレース・ケリーのコンビで見せる3作品ってすべて同じ年の製作なんですね。凄い!でもなるほど、だからこそ作風をあえて変えてきたのでしょう。ロングショットで見せるカーチェイスシーンは意図的にスリルを排除しているのがわかる。南仏ののどかな景色を眺めながらのちょっとした観光気分を味わえるカーチェイス。そしてやっぱりグレース・ケリー。クールなお嬢様がプンプンと怒る様がなんとも可愛らしい。そして熱烈なキスシーンでは大人の女の顔を見せる。美しいグレース・ケリーを堪能する映画。でもどうせならもっともっと彼女を前面に出し切ってほしかったような気もする。[DVD(字幕)] 6点(2006-06-29 11:50:08) 1265. ピンクの豹 さりげないギャグの連続がナンセンスに消化されればいいのだが、妙にリアルでクルーゾー警部がドジるたびにそのドジぶりが笑いへと転化されずに哀れみすらおこさせる。しかしクルーゾーにだけ頼った作品ではなく、むしろ笑いに関してはクルーゾーのキャラで笑わせるという小賢しいまねよりもちゃんと演出で笑わせようという第1作ならではの誠実さが伺えます。ベッド下のリットン卿とバスルームの彼の甥がクルーゾーの部屋から脱出を試みるシーンの抜群のタイミングで絡み合うドタバタぶり、やっと出て行けると思ったらドアノブがとれるという典型的ギャグ、けっこう楽しめました。あと、反則的に笑いをとっていたシマウマ!あの画面の収まり具合は絶妙でしょ。[ビデオ(字幕)] 6点(2006-06-28 11:10:25) 1266. オーシャンズ12 ぜったい面白くないだろうと思いながら観たせいか、『11』よりも楽しめた。思えば『11』はかっこよすぎたんです。こちらはいきなりメンバーが「なぜオーシャンズ11なんだ?」と一匹狼的その筋のプロの集まりがなぜオーシャンのグループのような名前なんだという我々も感じていた疑問をパロディとして『12』は『11』のアラを提示する。その時点でこの作品には「余裕」を感じます。そしてかっこいいの手前でかっこ悪さを見せるクルーニーとピットのリアクションが楽しい。たぶん撮影も楽しかったに違いない。泥棒対決なんて筋はチープこの上ないわけですが、ソダーバーグの仲間内(凄いセレブな仲間)で撮った洗練された和気あいあい映画としてじゅうぶん楽しめました。一人だけ「余裕」を感じさせないデイモンがまたかわいい。[DVD(字幕)] 6点(2006-06-26 15:26:41) 1267. ジーザス・クライスト・スーパースター 《ネタバレ》 レコードのヒットから始まりコンサート、舞台劇、そして映画化という流れで登場した作品。イエスの最後の七日間をロックに乗せて綴ってゆく中で時代考証を無視、というかわざとむちゃくちゃな衣装と設定にしているのは、それ自体がロックということでしょうか。マグダラのマリアがアジアンな顔立ちなのは、またイエスとマリアの愛をとりわけ際立たせたところには、ジョン・レノンとオノ・ヨーコを連想しちゃったのですが、自分で言うのもなんだがあながち的外れではないような気がしてるのですが・・。オープニングで役に入る前の人たちを映し出したようにエンディングで役をおりる人たちを映し出すのですが、そのときのマリア役の人の視線に劇中の物語を凌駕する物語を感じます。ダンスそのものに斬新さも無ければダイナミックさも無いのが不満ですが、それ以外ではけっこう気に入ってます。[CS・衛星(字幕)] 6点(2006-06-23 19:14:27) 1268. キング・オブ・キングス(1961) 聖書というフィクション(大きな声では言えないが、イエスは実在したが特に目立たなかった人物というのがその筋の定説だとか)をほぼ忠実に再現し、聖書に記載された事件の一つ一つをわかりやすく且つ壮大に解説してくれる作品。なんでもイエスの顔を映し出した最初の映画だとか。イエス役のジェフリー・ハンターがかなりのイケメンですが個人的には人をひきつけるイイ顔だと思いました。バラバが民衆を味方につけたゲリラのリーダーでユダとは昔ながらの友人という設定が斬新でしたが、ユダの裏切りをやむをえない行動とし、なおかつドラマチックに見せることには成功していたと思う。物語を追うことに必死になるのは題材ゆえにしかたのないところだろうが監督がニコラス・レイだけに残念。それでもロケシーンはハリウッドに染まらないレイの迫力ある演出を堪能できます。[ビデオ(字幕)] 6点(2006-06-21 13:43:27) 1269. パッション(2004) 《ネタバレ》 イエスを描いた映画は、そのほとんどが聖書に沿ってイエスの生涯が語られる。その中にあって「受難」のみを描き、それ以前のエピソードをフラッシュバックというカタチで見せてはいても「受難」のシーンに絡んでくる事柄以外はばっさりと切り捨ててしまったこの作品はそれだけで異色であり、他とは違うという一面において意義があると思う。私はキリスト教徒でもなんでもないが、これはイエスを描いた映画ではなく、キリスト教の心理を描いたものだと思った。目を覆いたくなるような拷問をひたすら受け続けたイエスが「彼らを許してください」とつぶやく。迫害されれば迫害するものを愛しなさいと言う。この「受難」のエピソードは知っていても「受難」の過酷さはなかなか伝わらないものだ。でもこの作品は拷問が激しければ激しいほどにそれを受け入れることの尊厳さが際立つ。イエスの「奇跡」だとか「復活」だとかは置いておいて、今世界の、特にアメリカのキリスト教徒たちに向かって「許す」ことの偉大さをあらためて提示しているのだと思った。ただもう一回見ようとは思わない。それほどに痛々しい。[DVD(字幕)] 6点(2006-06-19 16:58:19) 1270. モーターサイクル・ダイアリーズ 個人的にはもうちょっと淡々としたものを期待していました。旅すがらのエピソードをつなぐバイクと景色、こちらのほうこそをメインにしてほしかった。延々と美しい南米の景色をバックに走る、その美しい景色に目を移す主人公、それだけで南米に愛しみを覚える主人公を表現できるしできていた。鉱山の仕事を求めて人々が群がる様を見つめる主人公、それだけで主人公の心の内に芽生えた疑問を表現できるしできていた。旅の距離や時間が伝わりづらいのも、また字幕に頼らざるを得ないのもストーリーを重点的に描いたから。旅の中で何かが生まれ何かが変わるということをうまく見せてはいるけども、感動的なエピソードはなくてもそれは達成されているのだ。そんな感動話よりも、もっともっと疾走する二人の顔、笑っている顔、困っている顔、何かを考える顔をひたすら見たかった。[DVD(字幕)] 6点(2006-06-16 16:10:24)(良:1票) 1271. アンナ・マグダレーナ・バッハの日記 バッハの演奏とアンナのナレーションだけで構成された作品で、なんでも映画作家のための映画とも言われているとかいないとか。映画作家を目指したことも無ければ今後も無いだろう私にとっては、この映画の特徴は見ることができてもそこに魅力を感じるまでは到らなかった。楽曲が演奏される間、カメラは全く動かずに延々と演奏者を捉え続ける。長い1カットの後の短い1カットのハッとさせられる構図の妙技は確かに味わえる。しかしこの映画の本当の凄さはおそらくストローブとユイレの映画そのものの概念にこそあり、その概念を見事に作品に転化させていることにあると思う。映画にはりつく劇という無駄、演技や演出の中にある無駄、無駄という無駄を極限までそぎ落とした究極の映画。そんな究極の映画を楽しめるほど私はまだ熟していないようだ。時を置いてまた観る機会に恵まれたい。[映画館(字幕)] 6点(2006-06-15 11:49:04) 1272. スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする 《ネタバレ》 オチ以外は結構気に入っている。愛する母が酒場の娼婦と重なり、少年は母の人格を二つに分けることでそのことを否定する。妄想は少年にとっての現実ではあってもけして本当の世界ではないという、主人公にとってのみ辻褄の合う世界をうまく見せている。とりわけ本物の娼婦の振る舞いと母の振る舞いに共通点を見出させる様は、主人公の混乱と共に観客をも混乱させる。少年が見るはずのないシーンがあるので比較的歪められた記憶であることがわかりやすい作りになっている。よってオチには驚きも無いし、主人公が記憶の歪みに気づくということ自体に主人公の性質上、不満が残る。[CS・衛星(字幕)] 6点(2006-06-06 14:40:32) 1273. 未来は今 昨日書いた『ディボース・ショウ』もこの『未来は今』も傑作とは思わないけどそこそこ面白かったと思う私にとって、前者の低評価にもびっくりしたが後者の高評価にもびっくりした。この作品の何が世間に受けているのか知らないが、ワーナーの資金提供もあってかコーエン兄弟お得意の毒のある笑いを極力排除したサクセスストーリーとなっている点が受けた原因でしょうか。とはいうもののちょっと皮肉めいたストーリーはやっぱりコーエン流で素直にサクセスストーリーにはしないようです、この人たち。ニューマンは元々悪役俳優なのかと思わせるくらい怖い顔してました。助監督サム・ライミの風味も一役買っているのかもしれません。あと、マンシーの応援歌?を知らないのに知っているように歌うジェニファー・ジェイソン・リーはめちゃくちゃ笑った。思い出して今も笑ってます。[DVD(字幕)] 6点(2006-05-31 13:20:56) 1274. ディボース・ショウ ジョージ・クルーニーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズというハリウッドを代表する二人の共演とコーエン兄弟との組み合わせに違和感を感じたものの、見てみればそこそこに楽しい作品ではないかと思ったので、ここでの低評価にちょっとびっくり。ハリウッドのドル箱ジャンルでのスター俳優起用ですから、おのずと二人がメインに描かれる。で、コーエンだってちゃんと二人を輝かせている。そのうえで脇がポイントポイントでいい味を出してる。ただ、会話が多いわりにはスクリューボール・コメディたるテンポの妙を味わえない。コーエン兄弟のコメディって全部そうなんですけど、テンポよりもキャラの面白さを目指しているところがあって、面白いんだけど少し物足りないと思ってしまう。[DVD(字幕)] 6点(2006-05-30 11:31:33) 1275. 北京の55日 《ネタバレ》 アクションの迫力は59年製作の『ベン・ハー』に遠く及ばず、豪華絢爛を見せつけたパーティのシーンの優雅さはこの作品と同じ年に製作された『山猫』に遠く及ばない。それでもこの作品が異色かつ魅力的なのは、この映画がハリウッドスペクタクルの顔とリアリズム系ヨーロッパ映画の顔を同時に持っているからだと思う。米英の視点から描くストーリーはハリウッド流だが中国側からの視点も無視されていない。チャールトン・ヘストンというスター俳優がスター俳優らしくかっこよく登場しても一人果敢にばったばったと敵を倒してゆくわけでもない。ヒロインの死というドラマチックなプロットが用意されていてもその死を看取るのは医者一人という極めて盛り上がりの欠けるものとなっている。ハリウッドの歴史大作としてソツなく「事件」を描きながら「人間」もしっかりと描かれている。ただ、主人公に偏った物語にせずに多くの人物のドラマを見せようとしているのは好感が持てるが少し散漫に感じた。ラストの連合軍各国行進はTDLの「イッツ・ア・スモールワールド」を思い出した(笑)。[ビデオ(字幕)] 6点(2006-05-26 18:19:35)(良:3票) 1276. さよなら、さよならハリウッド よくまあ毎回毎回同じようなものを作ってくるなあ。もうそれだけで評価しちゃってもいいくらい感心します。相変わらず病的なねちっこさと過敏で多感なキャラが全開で、とくに元妻とのディナーでのお見事な二重人格ショーの長回しが圧巻。そのときのティア・レオーニのおちついた会話の返しも絶妙。映画界を揶揄したコメディの中でさりげなく恋愛ドラマを見せてゆく。この恋愛ドラマの中に、いつもちょっとした展開にちょこっと現れる「せつなさ」が無いのがチト不満。ニューヨークはいつものアレン映画どおり美しかった。[DVD(字幕)] 6点(2006-05-18 12:47:20) 1277. カミュなんて知らない 『黒い罠』のトップシーンが3分、『ションベンライダー』が6分半、『ザ・プレイヤー』が8分だけど実は2カットをうまく編集してる、あるいは『元禄忠臣蔵』のカット数の少なさなんかを学生たちに語らせながら主要登場人物が次から次へと映し出される本作のトップシーンの長回しが面白い。喫茶店に入れば、ゴダールの『男性・女性』のカフェでの長回しが語られ、「殺人の名場面映画」として『サイコ』や『サムライ』のタイトルが語られ、挙句の果てに大学教授のあだ名が「アッシェンバッハ」だったり妄信的に彼氏を愛する女は「アデル」と呼ばれたりと、映画ファンにはたまらない引用やオマージュに溢れている。しかも映画ファンを喜ばすだけに終わらず、いや、どちらかというと映画ファンを困惑させるように現代社会が「映画」に馴染めない環境であることを露呈させてゆく。「アッシェンバッハ」は美を眺めながらの死を許されずに美が妄想であることを思い知らされ、「アデル」も夢に生きることなく現実に戻ってくる。莫大な映画知識は「オタク」と笑われる。若者特有の「軽さ」、そして現代社会と映画との冷めた関係が描かれる。その中で町を走り抜ける学生たちを上空から捉えたシーンなんかパリを疾走するトリュフォーの画を彷彿させ「若さ」の瑞々しいところが描かれ、映画を通して次第に熱くなってゆく学生たちの描写は、けして「冷め切った」関係ではないことを見せてくれる。いいかげんな自由恋愛が横行するかと思えば、そのことを悔い、涙する女が映される。若者に対する凝り固まった概念を解凍しながらとらえどころのないリアルさを持った青春映画に仕上がっている。ラストの「映画」と「現実」の曖昧な境界線で見せる切りかえしはなかなか圧倒されるものがあった。中盤の中だるみがおしい。[映画館(邦画)] 6点(2006-05-15 17:56:15)(良:1票) 1278. ミステリー・トレイン 《ネタバレ》 同じ場所、同じ時間の3つのショートストーリーを紡ぐ。短編集のようでありながら群像劇としても楽しめるという造りになっています。とくに2つ目と3つ目の関係の濃厚さが群像劇っぽくさせているが、この2つの関係性をもう少し希薄にしてくれたほうがジャームッシュらしくて良かったような。3つの中で唯一カップルを描いた1つ目のエピソードは、ストーリー不在の中で見事に二人の関係を見せきったジャームッシュらしいエピソード。会話のズレも間の悪さも、これぞ日常のズレであり間であることを見せている。3つの中で唯一見知らぬ者同士の出会いのある2つ目のエピソードは、3つ目へのアプローチ的な役割を担いながら幽霊の登場によってちゃんと単独のオチをつけている。3つの中で唯一ドラマチックな3つ目のエピソードは、前2つが最初からメンフィスを出ることが予定されていたのとは違い、出る予定は無かったのに前2つに合わせて出てゆく(出てゆかざるをえない)ストーリーにすることでロードムービーとして成立させている。うまいっちゃーうまいね。[ビデオ(字幕)] 6点(2006-05-11 14:39:07) 1279. コーヒー&シガレッツ うん、たしかに面白くない。でも面白い。どっちやねん!と言われても困る。 この映画に登場する人たちにドラマチックな現象は襲ってこない。ただひたすらに人と人が織り成す日常が流れるだけ。それはいつものジャームッシュなんだけど、この作品の日常は究極に単調。その中で人間のおかしさや愛しさ、心情の些細な変化を露にしてゆくこの作品はジャームッシュの真骨頂といえる。ストーリーは面白くない。だってストーリーは無いんだから当然だ。面白いのはストーリー不在の中から日常的に揺れ動く感情の波がぞくぞくと伝わってくること。さらに画面がやっぱりかっこいい。でも、個人的に11篇は多すぎた。なぜ多いと感じたかは、たぶん私自身の問題だ。心に余裕があればもっと楽しめるはず。[映画館(字幕)] 6点(2006-05-09 18:04:00) 1280. ブロークン・フラワーズ お話の設定といい、ジェシカ・ラングといい、ヴェンダースの新作にあまりにも似ているのは偶然なのだろうか。おまけにラストでくるりと回るカメラって、もろヴェンダースだ。といっても作風はまるっきり違う。こちらはヴェンダースよりもはるかに勝っているコメディセンスを擁したジャームッシュ流、、と言いたいところだが、『コーヒー&シガレッツ』でのビル・マーレーが大いに笑わせてくれたようにこの映画の笑いの大半もまたビル・マーレーその人にあったりする。誰かと遭遇することで、あるいは共に行動することで内面に別の何かが生まれるという展開はまさにジャームッシュの展開でありながら↓のお二人さま同様に「らしさ」を感じないのは、主人公があまりに鮮やかに変貌をとげるからだろうか。それともあまりに変貌をとげるに必然の出来事をわかりやすく並べてしまったからだろうか。どちらにしてもこのことでジャームッシュの「らしさ」の根本である「インディーズ」は喪失し「メジャー」な要素を多分に含んだ作品となっているように思った。それでも楽しめたのはやっぱりセンスがいいのかなぁ。 (すぐさま追記)「らしくない」じゃなくて「物足りない」と書かれておりました。失礼。[映画館(字幕)] 6点(2006-05-08 14:08:01)
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