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1301. 着信アリ 《ネタバレ》 大学の講義「虐待が虐待を生む」から虐待癖のある母の怨念と思わせておいて、実は違うのよんと思わせておいて、ラストで虐待され続けた主人公がニコリと笑ってグサリとする様はやっぱり「虐待が虐待を生む」に繋がったオチに思えて、なかなかやるではないかと思ってはみたものの、ラスト以外は単純な定石ホラーのくせしてラストだけあからさまに曖昧にして、いかにも深みのある作品にしようとしているのがミエミエでいやだ。劇中のテレビ番組の関係者や出演者のオーバーな人物描写もなんとかしてほしい。画面も暗すぎる。物語の破綻を防ぐのに必死なのはある意味「丁寧」とも言えるが、その丁寧さを他にまわしてもらいたい。[CS・衛星(邦画)] 3点(2006-03-09 16:14:54)(良:1票) 1302. ダイヤルMを廻せ! 《ネタバレ》 夫とのキスシーンで始まり、次に愛人とのキスシーン。女は二つの顔を使い分けていることをいきなり見せているのに悪者にならない。それは彼女が練りに練られた完全犯罪のターゲットにされているから。では完全犯罪を目論む夫が悪者になるかといえばそうでもない。それは妻に裏切られているから。そして電話のシーンに代表されるような計画通りにコトが運ばないまどろっこしさがあるから。観客は女は殺されずにいてほしいという気持ちと完全犯罪を見たいという気持ちという相反する感情を持ちながら、まんまとヒッチコックの思うつぼにはまっていく。この作品、真相は初めから解かっている。解かっていないのは劇中の人達だけ。しかしどう解決していくのかが最後まで解からない。その見せ方がうまい。オチを犯人よりもほんの少しだけ先に教えてもらえる。あとは全てを知らされる犯人の驚きを犯人以外の全ての人達と共に堪能するのみ。巧いなぁ。[DVD(字幕)] 7点(2006-03-08 18:40:15)(良:1票) 1303. セルラー おもいっきりB級テイストなんだけどクリス・エヴァンス演じる軽くて軟派な男があたふたと奮闘する姿がこのB級テイストに妙に合ってる。電話をとっちゃった男の奮闘はとにかくスピーディでツッコミどころ満載にもかかわらずいちいちつっこんでる余裕を与えない(←誉めてます)。一方電話をかけた方はいまいち緊迫感に欠ける。かけられた方の受話器から聞こえる声とか悲鳴は軟派な兄ちゃんを駆りたてるのに十分な緊張を演出していたので、いっそのこと囚われのキム・ベイシンガーは極力映さずに進めたほうがより面白くなったような気がする。後から考えればいろいろと穴が見えてきますが、観てるとき楽しめればOKです。[DVD(字幕)] 6点(2006-03-07 15:12:13)(良:1票) 1304. フォーン・ブース 電話ボックスとその周りという極めて限られた空間のみで進んでゆく展開でありながら、間延びなど一切無い緊張の持続はお見事というしかない。犯人はもちろん、映し出される限られた空間から離れた場所にいる妻(冒頭部)、あるいは上司の指示で水面下で動く警官たち等、空間外の動向はけして画面に映すことがなく、そのことによって想像力を掻きたてられると同時に電話ボックスの動向からは目を離せないと思わせるだけの緊張感は持続し続ける。ターゲットにされるだけの罪がないことも不条理感があって良い。オチがありきたりだったけどなかなかの面白さ。[DVD(字幕)] 6点(2006-03-06 15:48:41)(良:1票) 1305. 真夜中の弥次さん喜多さん 私たちがいつもテレビで見る時代劇というのは、実は時代考証が滅茶苦茶であり得ないことだらけなのですが、この作品はそんな滅茶苦茶なのに滅茶苦茶に見えない時代劇を笑い飛ばすかのように、とことん破綻している。「映画」を作る気なんてさらさらなかったかのようなカタにはまらない構成も新鮮だ。映画素人ならではの自由な映画。あまりにも薄っぺらいこの世の現実の中で“てめえ”探しの旅に出る二人。その薄っぺらな現実を象徴する様々な出来事があまりにも象徴的すぎるというか、わかりやすすぎるというか、、。映画は観客あってのものなのだが、この象徴的すぎるシーン、強引さを感じるギャグは観客に媚びすぎのような気がする。もっともっと自分本位に作れたんじゃないだろうか。[DVD(字幕)] 5点(2006-03-03 15:46:22) 1306. バッド・エデュケーション(2004) 自らゲイであることを公表しているアルモドバル監督の半自伝映画ということで、かなり気合も入っていたことでしょうが、これまでの彼の映画と比べて明らかに欠けているものがある。それは「女」です。もちろん確信犯なわけですが、現在活躍している監督の中で数少ない「女を描ける監督」だと思っているので、非常に残念です。思えばガラリとイメージが変わった前作『トーク・トゥ・ハー』は布石だったということか。相変わらずの劇中劇という構成や色使いが、かろうじてアルモドバル的であることを維持していますが、やっぱり物足りない。これまでのアルモドバル作品を観ていなかったらまた違った感想になったかもしれませんが、観てますから、、彼の描く魅力的な女を、、いっぱい。[映画館(字幕)] 5点(2006-03-02 18:27:19) 1307. ブエノスアイレス 《ネタバレ》 別れてはよりを戻すことを繰り返す二人の男が地球の裏側、ブエノスアイレスに何かを求めて旅立つ。コツコツとお金を貯め、生活の基盤をしっかりと持つファイ。対照的に奔放で、だれかれかまわず寄生することでしか生きることが出来ないウィン。ファイは異国の地であっても帰る場所を確保する。一方、どんなに離れようとしてもウィンにとっての帰る場所はファイでしかない。しかしファイにとっての帰るべき場所は、第三の男によって香港であると気づかされる。そして疎遠であった父にウィンのお決りの言葉「やり直そう」が告げられる。この年、香港は中国に返還された。しかしそれ以前もそれ以降も香港は香港でしかなく、愛すべき場所、帰るべき場所として存在し続ける。そのことに気づいた男と気づかない男の破局の物語、、と、とるのは穿ちすぎでしょうか。ラストの「会いたいときにいつでも会える」は帰る場所を見つけた男の幸福感から放たれた言葉のような気がしてならない。[ビデオ(字幕)] 7点(2006-03-01 17:14:28) 1308. アタック・ナンバーハーフ2 全員集合! 《ネタバレ》 ヒットしたから第二弾というベタな展開、その第二弾にニセモノ登場というヒーローものにありがちなベタぶり、1作目のキャラの青春時代の回想というこれまた“あるある、、”なベタぶり。1作目自体が相当なベタぶりだったことを考えるとこのベタベタはかえって気持ちが良い。第二弾を作るという行為そのものに強烈な郷愁を感じる。おバカ映画のノリで観ていたがジュンちゃんの純ぶりにキュンときた。[DVD(字幕)] 5点(2006-02-28 13:37:42) 1309. アタック・ナンバーハーフ タイといえばオカマちゃんの多い国というイメージを持っている。以前テレビで、タイではオカマは男よりも女よりも崇高な存在と崇められているようなことを言ってたんだけど、この映画によると他国と同じように偏見の目で見られてるんですね。あれはタイの一部の地域の話だったんだろうか。とりあえずこの作品は人々の偏見を気持ち良くひっくり返してくれた実話が元になって作られています。だからベタでも古臭い映像でも見終えた後に心地よさが残る。それからどう見ても女にしか見えないオカマが一人いましたが(本物のオカマ!)、私の目はその人ばかり追っていました。タイに旅行して、魅せられ、帰国しない人がいるそうですが、わかるような気がします。[DVD(字幕)] 5点(2006-02-27 16:22:17) 1310. ルシアンの青春 《ネタバレ》 人として成熟していないある時期というのは、深い考えなしで平気で生き物を傷つけたりするものである。そしてその一方で権力というものに人一倍憧れるものであると思う。家では親、学校では先生という権力の下に常に身を置いているわけだから当然だと思う。そんな時期に、レジスタンスもゲシュタポもよく知らない状態で、暗黒の時代に翻弄されるがままに落ちていったルシアンを誰が責めることが出来ようか。少年ルシアンの青春はとてつもなく哀しい。ナチズムだとかファシズムだとかというのは、誰もが経験するある意味残酷性を持った少年期の思想そのものかもしれない。そんなことを思った映画であると同時に『さよなら子供たち』以上のルイ・マル監督の懺悔を感じた。[CS・衛星(字幕)] 7点(2006-02-24 15:33:18) 1311. さよなら子供たち 《ネタバレ》 「さよなら子供たち」という校長先生の言葉と共に、まさに無邪気な子供であることに別れを告げねばならない残酷な現実を目の当たりにし、ずっと引きずってきたであろうルイ・マル渾身の半自伝作品。友人が連行されてゆくのはけして少年のせいではない。密告者を間接的につくった部分はあるが責任を感じるものではない。きっと裕福なフランス人の少年は、どこかでユダヤ人である友人に優越感を抱いていた。そうでなきゃ懺悔の必要は無い。でもこの作品には後悔の念が見え、その懺悔が、言葉は悪いが言い訳のように感じてしまう。少年は悪くはない、時代が悪かったのだ、という。それはそれで正論だからいいんだけど、この作品は最初から少年の素直な思いが画面を被っている素晴らしい作品ゆえに、素直な思いの中の一部をほんの少しオブラートに包んでしまったような気がしてしまった。でもそれこそがルイ・マルの葛藤の証しなのかもしれません。[ビデオ(字幕)] 6点(2006-02-23 15:29:45) 1312. 好奇心 《ネタバレ》 非常にここでの評価が悪いのですが、私は大好きです。さまざまなジャンルの作品を作るルイ・マルですが、彼の作品で描かれる子供たちは皆がそれぞれ悩みや欲望を抱えて生きており、その丁寧な人格描写は「子供」としてではなく「人間」としてちゃんと描いていることの証明でもあり、そのことによって子供たちは皆、色々な作品の中でその作風とは関係無くものすごく人間くさくて魅力的なのです。この作品の主人公の思春期真っ最中の少年の描写もまた、「子供」という枠にとらわれない行動と心理を見事に描ききっている。そしてこの作品の最も衝撃的なところは近親相姦ではなく、近親相姦をこんなにもあっけらかんと描いたことにつきる。その行為はまさに青春の1ページとして家族の笑い声の中に消えてゆく。よく貴族の退廃を描いたものに近親相姦が描かれたりするけど、ルイ・マル自身貴族ではなかったけどけっこうな富裕層であったらしく、近親相姦自体に我々ほどの嫌悪感を持っていないのでしょうね。あっけらかんとした明るさを持った貴族階級の人たちを描いた『五月のミル』を思い出した。[CS・衛星(字幕)] 7点(2006-02-22 15:05:21) 1313. ブラック・ムーン ルイ・マル作品の中で今のところ一番多く観ているのがこの作品。それほど面白いのかと言われると全然面白くなく(笑)、おすすめ作品なのかと言われると絶対おすすめしない作品(笑)なんだけど、なぜか何度も観ている。何度観たって内容はさっぱりで、ただ大人とも子供ともとれる女が不可思議な世界をバタバタと走りまわってるだけな映画。そのバタバタと走る姿や好奇心の旺盛ぶりが子供っぽい反面、胸元の大きく開いたブラウスや足を露わに映し出した描写はエロティック。そんな主人公のフシギちゃんぶりがこの映画の魅力といってもいいかも。それ以外にも惹かれるものがあるかもしれないが、それがなんなのか私自身にもよく解からない。[CS・衛星(字幕)] 6点(2006-02-21 15:29:03) 1314. 恋人たち(1958) 《ネタバレ》 「恋は盲目」現象を見事に映像化した作品と言ってしまおう。裕福でも田舎暮らしには不満を持つブルジョワジー。週末にはパリで遊び、愛人まで作るがそれでも満たされない。そんな様子をジャンヌ・モローのわかりやすい表情が語る。そこに登場するブルジョワ嫌いの男。いきなり恋が芽生えるなんてことはない。しかし月の明りが美しく風が心地よい深夜にそれは突然やってくる。グラスとグラスがぶつかる音、ブラームスの音楽、水の流れる音、そして甘く囁かれるフランス語が静寂の中に溶け込む。アンリ・ドカエの撮った月夜の映像とのコラボレーションが美しい。そして恋する女はもはやブルジョワでも主婦でも母でもなくなる。[CS・衛星(字幕)] 7点(2006-02-20 16:22:02)(良:1票) 1315. 訴訟 《ネタバレ》 実際にあったフォードの欠陥車における訴訟が元になっているようですので社会派が根底にはあるのですが、父と娘の関係修復のドラマがメインのお話となっています。ビジネスライクな弁護士事務所と正義を重んじる弁護士というわかりやすい対比と、企業対個人のありがちな図式は物語をスムースに進行させる反面、法定ものにはあってほしい緊迫感を著しく欠くものとなっている。正義を貫く姿が偽善にすぎないかもしれず必ずしも依頼人を幸せにはしていないという娘の指摘に深いドラマ性を期待したが、それ以上深く入ってゆくことなく父娘のドラマも予定調和から外れることなくハッピーエンド。ハッピ-エンドはオッケーですがそこにいくまでが簡単すぎるんだなぁ。エンディング曲がたしかシンプリーレッドだったと記憶してますがこれもちょっと違うような。[ビデオ(字幕)] 5点(2006-02-17 14:15:27) 1316. レインメーカー 原作グリシャムでそこそこの面白さは確約済み。役者はみんないい味出せる人たちばかりで実際みんないい味出してる。つまらなく作るほうが難しいくらいである。しかしマット・デイモンにしてもジョン・ボイトにしても、あるいはダニ-・デビートにしてもいい味は出しててもあまりに型にはまりすぎて面白くない。なにもかもが無難に出来あがっちゃってて魅力を感じない。唯一そそるキャラとしてミッキー・ロークがいましたが出番が少ない。コッポラに、もはや『ゴッドファーザー』のときのような重厚な演出や『地獄の黙示録』のときのような圧倒的な破綻ぶりを期待などしてはいないが、それにしたって無難すぎじゃなかろうか。無難に仕上がっているものに文句を言うのもおかしな話ですが、例えば、原作をいじくりまわしたあげくに失敗作の烙印をおされたとしても愛すべき作品というのがあるとするなら、この作品はまったく真逆の作品で、個人的にはやっぱり物足りません。、、、と思うのはやっぱどこかでコッポラに期待してたのかな。[DVD(字幕)] 5点(2006-02-16 16:15:28) 1317. エリン・ブロコビッチ 《ネタバレ》 実話の映画化、しかも本人が存命中、さらに社会派でありながら史上最高額の賠償金というゴシップ性、となるとどうしたってあれもこれもと詰め込みすぎになりがちなところを、娯楽映画として一人の女性のサクセスストーリーという軸から逸れることなく、極力単純に見せきったところがいい。エリンのキャラが濃いだけに映画にもしやすかったかもしれない。人は誰だって欠点を持っている。その欠点を隠すことよりも欠点も含めた自分自身を自信を持ってさらけ出すという生き方。きっとリスキーな生き方で損をすることの方が多いと思う。それでもその生き方を貫くのってかっこいい。この作品の爽快感は莫大な賠償金やボーナスから得られるのではなく、主人公のストレートすぎる生き様からくるのだと思う。[DVD(字幕)] 7点(2006-02-15 13:48:03) 1318. インサイダー いきなり娘の発作の際の説明台詞にうんざりさせられたものの、一貫して男の美学に拘ったマイケル・マン節はそれだけでぐいぐいと引きつけるものがあった。損得を超えたところにあるジャーナリストとしての信念を最後まで貫き通す男と人々のための研究という信念をタバコ会社の解雇をきっかけに蘇らせる男。実際の話とはかなり違うようだが、二人の男をとことん戦士と化すための脚色であり、ノンフィクションをうまくフィクションに昇華させた好例だと言える。惜しむらくは長いこと。そしてその長さゆえにあっちこっちと点在するアル・パチーノがいったいどこにいるのかが判りづらいこと。やたらと移動させないほうが時間も短縮できてスッキリすると思うのですが。[DVD(字幕)] 5点(2006-02-14 17:14:20) 1319. スタンドアップ 《ネタバレ》 非常に重いテーマを重い空気で見せてゆくのですが、かなりご都合主義な展開が垣間見られる。父親のスピーチは感動したがあまりにも豹変しすぎだ。裁判でのレイプに関する証言の覆し方もあまり現実的とは言えない。しかし言い換えればこれだけのご都合主義的展開を並べてもちゃんとテーマに沿った重い空気を作ることができたとも言える。この重い空気を作ることができたのはセクハラと平行して描かれた母と子の物語の丁寧な描写があってこそだと思う。実際、上辺のストーリーとなるセクハラから裁判に至る物語は単純この上なく、男がいくら悪いといってもその時代の不況下における男の弱さというものが描かれてこそ重厚な話しになるところをあえて男=悪という簡単な図式のみを見せてお手軽に話は進んでゆく。でも様々な問題の片隅に常に子を想う母というサイドストーリーが絡むことで奥の深さを感じさせてくれた。一番印象に残ったシーンは娘がプレゼントを見て悲鳴をあげて喜ぶところ(笑)だったりするのは私自身が娘を持つ親だからでしょうか。でも、戦いに挑む母の強さの源がちゃんと描かれているシーンのひとつだと思いました。[映画館(字幕)] 6点(2006-02-13 17:00:14)(良:1票) 1320. 心の旅路 女優だけは絶対に綺麗に撮らなければならない、というのが当たり前であったある時期のアメリカ映画というのは、もうそれだけで今のアメリカ映画を凌駕してしまっている。男女が同じフレームに映っていてもあきらかに女優の顔が光り輝いている。だからどうしたって目がいくし、見惚れてしまう。美しい女優の顔を眺めているだけでも満足できてしまうのである。もちろんこの作品はそれだけの映画に終わらず、記憶喪失というドラマチックなアイテムを最大限に利用して見事なまでのメロドラマ、そして銀幕の世界を作り上げている。“古き良き”という言葉がぴったりとはまる映画です。[DVD(字幕)] 7点(2006-02-10 14:17:34)(良:1票)
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