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プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL //www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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121.  リアリズムの宿 山下監督の画に対するこだわりはすごい。とくに海の映像は本当に美しくて、思わず見惚れてしまうほどだ。この鮮烈な映像とくだらない内容のギャップがまた面白い。 出演者インタビューによると主人公らはいちおう成長しているらしいのだが、男二人がちょっと仲良くなっただけにしか見えない。たぶん、普通の青春ものの主人公たちの五十分の一くらいしか成長していないのだろう。 誰もが共感できるのに誰もが忘れてしまうような些細なできごとを記憶しておいて、決してドラマチックではない日常からドラマを紡ぎだす。日常から物語を紡ぐのは小説の世界でいえば女流作家の領域。野暮ったい男の映画ではあるが、その実よっぽど鋭敏な感性を備えていなければできない芸当ではないだろうか。 ひたすらかっこ悪くて汚くて現実的、それなのにときどきはっとするほど美しい光景が広がる。不思議な味わいの作品。[DVD(字幕)] 8点(2006-02-18 22:40:30)《改行有》

122.  浮雲(1955) 《ネタバレ》 最近読んだ小説に、「恋をする女性は現実の男を見つめているとは限らなくて、もっと遠くにあるよくわからないもの、途方もなく美しい極みたいなものに焦がれていることがある」という意味の一節があった。たぶんこの映画のゆき子がそうだったんじゃないかと思う。  敗戦後の何もかもが色を失った苦しい時代に、南国で過ごしたひたすらに幸福な時の記憶を抱きしめて生きる。親類に性的な虐待を受けていたゆき子のなかでは、暗い思い出のある日本を遠く離れて過ごした日々が、本当に美しく輝いていたのだろう。しかしゆき子を待っていたのは、日本の敗戦と貧困、愛した男のみすぼらしい本性。  本当はここで足を踏ん張って、前に進む道を選ばなければいけなかった。甘い時代の残像を追いかけて生きるべきじゃなかったのだ。しかし未来を見なかったがために、ゆき子は地に足の着かないまま、ふわふわと漂流するような人生を送ることになってしまう。  娼婦のまねごとをして、インチキ宗教家の親類に生活を頼ったかと思うと、大金を盗んで逃げる。堅実な職業に就いたり家庭を作って定住したりはしない。だけど人間は本来、安住の地を求める生き物だ。どこか特定の場所にしっかり根を張って、しっかりした人間関係を築くことで、自分が帰ってくる居場所を作りたがる生き物だと思う。放浪生活を送る人間ほど、繋がることへの渇望を抱いている。ゆき子のそれはあまりにも強く、それゆえに却って現実を見失ってしまう。  劇中では殺人事件なども起きており、後になって考えるとかなり劇的な物語なのだが、観賞中はそれほど違和感を覚えないで普通に流していた。それほど自然で説得力のある演出だったのだ。しかもとにかく観る者を引き込むのが上手い! 暗い内容にもかかわらず、前のめりで鑑賞してしまった。これほど強烈かつリアルな人間ドラマはなかなかない。成瀬巳喜男の比類ない才能を思い知った。[DVD(字幕)] 8点(2006-02-09 03:46:59)《改行有》

123.  くりいむレモン 空の美しさが印象的だ。冒頭で妹が一人歩いている上空を、電線が斜めに区切っている。こういう絵作りの上手さは絶妙である。画質がVシネっぽくてチープ残念でならない。  北野作品のように間の長い映画ってちょっと苦手なんだけど、これはかなりリアルだったのですんなり観られた。沈黙の多いタイプの作品としては成功している方だと思う。  たとえば妹が電話を終えた直後に「ユウスケさんがお兄ちゃんのこと変態だって言ってたよ」と報告し、ヒロシ(兄)は軽く動揺し、声が上ずる場面。たぶん、〈え? 何? 俺が妹にちょっと惹かれてるってあいつは気づいてて、妹に言っちゃったわけ? いや、まさかそんなはずはない。でも…〉というようなことを考えていたんだと思う。気づかれていないは思いつつ、後ろめたいことがあるので確信はもてず、発言がどことなく不自然になる。この微妙な心理描写に、目が釘付けだった。主人公の気持が手に取るようにわかるのだ。それどころか、二人とも言葉がカミカミで会話のキャッチボールが微妙に成り立たない、という現実にはありえても映画ではついぞ観たことのない場面もある。  たいていの映画ではこぎれいな台詞を噛んだり被ったりすることなく応酬するものであって、ここまで現実的な間の悪さ、ぎこちなさを再現しようとはしない。このひねくれたリアリズムが非常に斬新に感じた。原作はおそらく典型的な男の願望充足ストーリーなのだろうが、それをここまでリアルで繊細なドラマに仕上げてしまう監督の技量に感動した。地味だが、細やかな心の動きを感じさせる良作だと思う。[DVD(字幕)] 8点(2006-02-03 16:17:19)(良:2票) 《改行有》

124.  シンデレラマン 《ネタバレ》 それこそおとぎ話のように真っ当で感動的なお話で、素直に感動した。涙目で物乞いをしていた男が、自分の力で人生を変えられることを証明する。どんな人生にもそれなりの闘いはあると思うが、ボクシングの場合はその闘いがそのままリングの上に具現化する。殴られても殴られても立ち上がらなければならない――人生ってそういうものだ。たとえ元はたいした格闘技ファンじゃなかったとしても、ジムの姿に自らを重ね、勇気をもらった人々の気持ちがわかる気がする。  ボクシングものでは主人公が追い詰められるほど逆転勝利が確定するわけだが(『はじめの一歩』然り)、結末がわかっていてもはらはらしてしまった。試合場面にリアリティがないとおっしゃっている方が多いけど、ボクシング素人の自分には充分スリリングで迫力があった。  しかし特典映像で実際の試合映像(対ベアー戦)を観たら、当たり前だけど映画より地味ですね。ブラドックがきちんとした戦略を立てて試合に臨んだことがわかって、これはこれで面白かった。ちょっと感動したのは現実のベアーが試合終了直後、敗北を認めてブラドックの顔に祝福のキスをしたこと。劇中では悪役だった彼も、ブラドックの勇姿には敬服せずにはいられなかったのでしょう。[DVD(字幕)] 8点(2006-02-02 03:55:21)(良:1票) 《改行有》

125.  マイノリティ・リポート 普通に面白かった。彼の過去の名作にとくに思い入れもなく、なんの期待もなく鑑賞したという点も功を奏したのでしょう。スタイリッシュな映像は個人的にすごく好みだったし、ストーリーもミステリー的には粗が目立つにせよ、勢いで楽しめた。遊園地のアトラクションに乗ってるような感じで、力ずくで面白がらせてくれる。スピルバーグってたいしたアイディアがなくても、たとえ手抜きをしたとしても、手癖だけでそこそこのものが作れてしまう感じがする。エンターテインメント職人とでもいいましょうか。やっぱり大した才能だと思います。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-01-31 06:21:27)

126.  ハート 脚本担当のジミー・マクガバンはドラマシリーズ『心理探偵フィッツ』を手がけた人で、さすがに異常心理の描写には説得力がある。信心深さの影に息子への奇妙な執着心を潜ませる女性の造型には真実味があり、不気味なことこの上ない。必要以上に派手な描写のない堅実な展開でありながら、幾重にもひねりの効いた秀逸な脚本となっている。脚本以外にも突出した部分があれば佳作以上の作品になりえたと思う。音楽はちょっと失敗しているのでは?(やりたいことはわかるが)。割と好みのタイプの作品だったので、ちょっと甘めの8点。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-01-30 02:46:47)

127.  汚れた血 洒落てはいるが婉曲に過ぎる台詞は理解も共感も及ばないところにあって、最後まで一ミリも心を動かされることはなかった。主人公アレックスの恋する気持ちもまったく伝わってこない。これが現実なら、単に思い込みの強いやつなんじゃないかと疑うくらいだ。でも「愛のないセックスで感染する死病」という魅惑的な設定を用意しておきながら直接物語に関わってくることがなかったのを見る限り、アレックスは純粋そのものだったのだろう。ラストシーンでヒロインが頬についた血を拭わないのは、それが決して汚れた血であるはずがないとわかっていたから。にしても、映像がかっこよすぎる。ゴダールの再来といわれたそうだけど、そんな呼称はカラックスに失礼だろう。おかげで物語はどうでもいいのにこれっぽっちも退屈しなかった。アートという言葉を退屈の言い訳に使う作品は嫌いだ。本来これくらいの吸引力を持っていてこそのアートだろうと思う。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-01-17 13:20:02)(良:1票)

128.  顔(1999) きれいな映像はほとんど皆無、汚くってみっともなくて、泥臭さの漂ってくるような映画。嘔吐の場面が四回もある(笑)。でもたまにはこんなとことんかっこ悪い映画があっていいと思う。映画に限らず、多くのドラマというものは、苦悩や悲劇ですらかっこいい。主人公たちが辛い思いをしていても、それなりに格好がついている。だけど、現実にはそんなええかっこばかりでは生きていけないもの。辛いことがあれば酒飲んでゲロを吐くこともある。地面を這いずってでも生きていくことにしがみつく、なりふりかまわない強さ。主人公は劣等感の塊ではあっても、ネガティヴになってくよくよ悩むことはない。嫌なことがあれば大声で泣きわめき、とりあえず忘れて全力で逃げる。彼女の常に前に進む姿があるからこそ、この深刻な物語が暗いトーンに支配されることはない。彼女の身体の奧から湧いてくるようなエネルギーには爽快感すら覚えた。「どんなに滑稽でもいい。とにかく生きろ!」――監督の力強い応援の声が聞こえてくるかのようだ。快作。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-01-12 14:53:01)

129.  フード ナイフとフォークのかちゃかちゃ、調味料のぴちゃぴちゃ、噛むときのくちゃくちゃ――まるで感覚が伝わってくるよう。観ていてお腹がすいたり気持ち悪くなったりで大変だった。食という営みに対する人の貪欲さを風刺しているんでしょうか。まあ深く考えなくても楽しめる作品ですが。シュヴァンクマイエル作品は奇妙極まりないけど、はまると癖になる。食べ物でいうと珍味ですね。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-01-11 15:35:44)

130.  肉片の恋 笑った。肉片でも恋の空しさを知っているらしい。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-01-11 15:16:15)(良:1票)

131.  GONIN 山本英夫の漫画『殺し屋1』が好きな人は好きだろう(映画の方じゃなくて原作ね)。ていうか山本英夫はこの映画からインスピレーションを得たとしか思えないほど、主要プロットは酷似している。ヤクザを題材としたハードバイオレンスであり、戦いだけで紡ぐ超シンプルなストーリーがそのまんま。恋人を目の前でレイプされたシーンなんかどこかで見た気がする。でもどちらもそれなりに楽しめる作品となっているので、両作品に触れて損はないだろう(違いを挙げるなら、『GONIN』の方はリアルで銃撃戦主体、同性愛の空気が強く、『殺し屋1』の方はキャラクターの濃さが特化しているといった部分だろうか)。凄まじい暴力描写は受けつけない人の方が多数派なのではないかと思う。ビートたけしの演じるゲイの殺し屋にはしびれた。バイオレンス大好き、格闘技観戦にはわくわくするぜ、という血の気の多い方におすすめします。[DVD(字幕)] 8点(2006-01-06 05:07:35)

132.  時計じかけのオレンジ 『フルメタル・ジャケット』や『バリー・リンドン』と同じく、前半と後半で明確な対称性を為す構成となっている。前半では悪の化身ともいうべきアレックスが好き勝手に暴れまわり、多くの観客は不愉快になって、アレックスに対する憎しみを募らせる。後半ではアレックスが暴力を封じられて、ここぞとばかりに被害者たちが復讐する。しかしこの復讐がまた陰惨で、勧善懲悪のカタルシスなどとは程遠い。前半であれほど憎んだ邪悪、"アレックス"たる可能性が、実はすべての人間に潜んでいることを見せつけられる。アレックスに対して怒りを燻らせて「こんなやつ、死刑でも足りない」と思っていた人は少なくないはずだ。その欲求を満たそうとしたとき、被害者はあんなにも醜い加害者になる。前半では犯罪者/悪の側にあった暴力性が、後半では一般人/正義の側にそのままシフトする。 洗脳して表面上は悪から遠ざけることができても、アレックスが更生していなかったのはあきらかだ。暴力性はちょっとやそっとの小細工で封じ込められるものではなく、人間に普遍的に存在する性質の一つだからだ。暴力を憎む気持ちそのものが、暴力に転ずるという皮肉な真実。時計じかけにしたとしても、オレンジはオレンジ。いくら法律や倫理で縛ったとしても、人間もまた動物だ。いずれにせよ、完全な統制は不可能であり、腐敗する可能性は消えることがない。ところで、この映画を嫌悪してキューブリックに嫌がらせした者も少なくなかったそうだけど、随分と「暴力的」な連中だ。本当は「正義」を嵩に掛けた連中こそ、自らの暴力性を意識すべきなのだと思う。 【暴力表現について、追記】 たとえば『はだしのゲン』にだって残酷な表現が多いけど、それはもちろん戦争の悲惨さを伝えるのが目的なのであって、間違っても読者の暴力性を満たすためではありませんよね? キューブリックの場合ひねくれてるからわかりにくいんですけど、本作の暴力表現もそれと同じ意味で必要だったと思うのです。暴力性を満たすための表現ではなく、暴力性を告発するための表現として。キューブリック作品には一貫して人間の暴力性に対する批判的な姿勢が見られます。決して「芸術的だから」というあやふやな理由で軽々しく暴力を扱う人物ではありません。[ビデオ(字幕)] 8点(2005-12-21 19:38:17)(良:1票) 《改行有》

133.  フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白 「これだけは強調しておきたい。我々が核戦争を回避できたのは単に運が良かっただけにすぎない」――ぞっとする言葉だ。マクナマラ氏は戦争を前にして人間の理性がいかに無力かを明確に語る。経験に裏打ちされているだけに、シビアな価値観が重い。「戦争がなくなると思うほど私は単純ではない」って、確かにね。マクナマラ氏はすごく理性的だし、思ったよりもずっと平和主義的な人物だが、下手な理想論はまったく掲げない。具体的かつ現実的に、世界平和のために何をすべきかを語る。世界の情勢は複雑怪奇で、一個人の予想や思惑などからは遠く離れた場所にある。それがわかっていてなお、よりよい世界のために努力する姿勢は素直に素晴らしいと思った。おそらく世界から戦争、核の脅威が消えることはなく、平和維持の試みは綱渡りのように危うく、細い道なのかもしれない。完全に平和な世界がありえないことを知りながら、細い綱を一歩一歩進んでいく。優れた指導者とはそうあるべきだと思う。彼もまた多くの間違いを犯してきたのだろうが、政治家を選ぶのだとしたら彼のような人を選びたいと思った。[DVD(字幕)] 8点(2005-12-14 21:16:13)

134.  チーム★アメリカ ワールドポリス 序盤はまあこんなものかと思ったけど、物語が進むに連れてお下劣っぷりが加速、後半は爆笑しっぱなしだった。『パールハーバー』のラブソング、質量保存の法則を無視した嘔吐のシーン、残虐に殺されていく実在の俳優たち……素晴らしい。実は普通の下ネタは好きじゃないのだが、ここまでやってくれるともはや褒めるしかない。下品さにおいては究極の領域に達している。クライマックスの名演説の汚さは『キラー・コンドーム』なんか目じゃないぞ![DVD(字幕)] 8点(2005-12-14 08:20:26)

135.  ナポレオン・ダイナマイト いるいる、こんな人(笑)。普通の青春ドラマでは間違ってもスポットライトの当たることがないオタクくん。でもあえてスポットライトを当ててみたら、意外と面白かったというのがこの映画。口を開きっぱなし、分厚いメガネに天パ、いつも変なTシャツを着用し(やはり裾はジーパンに入りっぱなし)、ここぞというときの服をファッションセンターしまむら(みたいな店)で購入する。いちいち言動がずれている感じが、非常にリアルだ。おそらく身の回りを捜してみれば主人公を髣髴とさせる人物が必ずいるはず。ゆるーい話なのに、ナポレオンの挙動不審ぶりが面白くてついつい夢中になってしまう。どうみても冴えないのに、いつのまにか愛すべきキャラクターとしか思えなくなっているのである。例のダンスシーンは超クール!! 文句なしに最高だった(ある意味本気)。オタクの人生にもそれなりのドラマがあり、それなりの喜びがあるということを教えてくれた。秋葉原系の人たちをバカにするような人間こそ、観るべきかもしれない。 【おまけ】本作最大の欠点は、邦題だろう。流行作品に題名を似せるだけで大して売り上げが増加するのかがまず疑問であり、むしろ一部の映画好きによって語り継がれていくような良作を埋もれさせてしまう危険すらある。変な邦題をつけたり、作品の方向性を歪めて宣伝したりするのは、短期的な視点で見ればいくらかは利益があるのだろうが長期的にはけっして得にならない。何より詐欺まがいの方法を使ってでも小金を掠め取ろうとする姿勢が、あまりにもあさましい。客に対しても作品に対しても、敬意がない。いつから配給会社はけちな詐欺師に成り下がったのだろうか? いい加減にして欲しい。[DVD(字幕)] 8点(2005-12-03 03:48:54)(良:2票)

136.  西部戦線異状なし(1930) 75年前の作品なのに、すごい迫力だ。これがあるなら別に『プライベート・ライアン』作んなくてもよかったんじゃないかというくらいリアルで、スケールが大きい。最近PTSD(心的外傷後ストレス障害)についての本を読んだばかりだったのだが、この作品なら兵士の神経がどのように削り取られ、精神が破壊されているのかを等身大の視点で理解できる。食料もなくひたすら塹壕にこもるという極限状況。虱を潰し、ねずみと戦い、砲弾の音で眠ることも出来ない苦しさ。突然叫びだして外に飛び出しては撃たれる兵士の姿が痛ましくてならない。兵士たちを英雄に仕立て上げる銃後と、汚らしい場所で惨めに死んでいく現実の兵士たちのギャップは激しい。戦場の汚さをこれでもかと見せつけられる。とくに戦場でガトリングガンの目線でなぎ倒されていく敵兵たちの様子をスクロールする場面は圧巻で、あらゆる戦争映画の中でも最も恐ろしいシーンの一つだ。  『火垂るの墓』などは嫌いだけど、これはなぜか素直に鑑賞することが出来た。映画の最初に宣言されている通り、この映画は思想を前面に押し出すよりもまず、兵士たちの姿を克明に描くのを目標としている。だから反戦というテーマを上手く消化できなかった作品、左翼の論文のようなごつごつした手触りの駄作にはなっていない。自らの思想を表現するための道具として戦死者を利用しているのではなく、何よりも先に犠牲者たちへの敬意と誠実さがあるのだ。  いかにもベタな悲劇のシーンですら、泣いてしまった。最後の十分間の切なさはとくに忘れがたく、いつまでも記憶に残ることだろう。[DVD(字幕)] 8点(2005-12-01 17:22:42)

137.  シビル・アクション 《ネタバレ》 かなり硬派で、渋いストーリー。つまりは地味なのだが、退屈はしなかったし、個人的にはスリリングだとすら感じた。財政的に追い詰められ、仲間の信頼も失い、老獪な弁護士(この一癖も二癖もあるキャラクターが素晴らしい!)にこてんぱんにやっつけられる主人公。しかし多くの苦難の果てに、巨大な火柱がまるで罪を告発するかのように燃え上がる。公害という立証も難しい隠れた罪の大きさを、目に見えるように効果的に表現したあの場面は、終始鬱屈していたこの映画の空気を吹き飛ばすハイライトである。正義を達成した結果として残ったのは、たった14ドルとラジオのみ。それなのに満足げな笑みを見せるあのラストシーンは、いい。地味だけど、かっこ良すぎる。弁護士を頼むなら彼のような人に頼みたいと思う。一緒に働くのはごめんだが。[CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-26 00:12:29)

138.  イージー・ライダー 《ネタバレ》 案外楽しかった。車に揺られて窓に流れる風景を眺めているのは嫌いじゃないので。広い道路と真っ青な空、障害物のない開けた風景がすがすがしく、バイクは乗らないがその快感の一端ぐらいは感じ取ることが出来た。無限に色彩を変える空を眺めていると、自分がゼロになっていくような爽快感がある。その快感に二人のライダーは求めていた自由を見た気がしたのだろう。  しかしワイアットはどんなに走っても満たされない自分に気づく。「大金があって、しかも自由だ」と無邪気にはしゃぐビリーに、「それでも、ダメなんだ」とつぶやくワイアット。保守的な田舎者連中が正しいとは思っていない。かといって、麻薬に溺れて放浪する自分たちが正しいとも思えない。  人が進化して一段上の社会が訪れるという、あまりにもちゃちなヒッピー思想。理想社会に憧れた連中は虚ろな目つきで砂地に種を蒔き、誰もが平等に暮らす「金星人」は地球人の前に姿をあらわそうとしない。現代社会に失望して輝かしい理想を掲げるが、けっしてそこに行き着くことはない。  二人は外見は怖いが、ある意味では純粋すぎるくらい純粋だ。最後に吹き飛ぶバイクの無残な姿は、現実に押し潰される理想と重なって見えた。[DVD(字幕)] 8点(2005-11-18 15:42:21)(良:1票)

139.  天国と地獄 《ネタバレ》 リアルな捜査の過程は、高村薫の『マークスの山』を思わせた。警察という組織が犯罪に対しどう動き、追い詰めていくのかが丹念に描写され、重厚な味わいがある。  とくに、権藤と面会したときの犯人の独白がよかった。犯人は財産を失った権藤をみてあざ笑いたかったのだろうが、権藤は冷静に将来への前向きな展望を語り、犯人を憎むどころか憐れんでいる。犯人はいわば自身の過酷な境遇への憎しみを、たまたま目に付いた人物へと転化していたに過ぎなかった。堂々とした目の前の男に、自分の不幸ばかり嘆いていた己の過ちに気づく。狡猾な犯人の完全な敗北。虚勢が一気に崩れ、叫びだす様子は真に迫り、すさまじい迫力があった。  ただ、私の集中力に問題があるのか、見終えて少し疲れてしまった。こんなに長くしなくても、情報量を減らさずにもっと短くまとめることができたのでは? 丁寧に描いている意味がよくわからない場面がいくつかあった。[CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-14 01:45:13)(良:1票)

140.  ブレーキ・ダウン アクションというより、むしろサスペンス、ホラーとして観たほうがいい。この映画最大の特徴は、不気味すぎる敵役の造型にある。平凡な家庭を営む善良な一般人のような顔をして、地味な、しかし冷酷な犯罪に手を染める。動機は単純にお金。生活費の足しにでもするつもりか、大それた目的はない。なんというか、淡々と仕事をするように、平然と残酷なことをするのだ。普通の人の仮面を被りつつも、まったく良心というものがない。貴志祐介の『黒い家』を思わせる、異様な犯人像だ。  ストーリーは運のない主人公が犯罪に巻き込まれ、孤立無援の窮地に追い込まれるという一見『ダイハード』的な流れ。だが圧倒的不利をどのように挽回するかという娯楽的な面で孤立を描く『ダイハード』に対し、こちらはひたすら恐怖を煽る。助けはどこにもなく、主人公は刑事でもなんでもないごく平凡な男。いつ殺されてもおかしくない状況下で、針の穴を通すようにぎりぎりで危機を乗り越えていく。おまけにとことん地味で、リアルである。  『ジョーズ』公開の翌年には海水浴客が減ったそうだが、この映画を観た後ではアメリカの片田舎を自動車旅行する気にはなれない。荒れ果てた広大な土地に、だだっ広い道路が一本だけ。助けを求めても誰にも届かないのだ。  アクションの棚ではなくサスペンスの棚にあったならもう少し注目されていたであろう、秀作。[CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-08 13:53:45)(良:2票)

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