みんなのシネマレビュー |
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1501. 炎上 《ネタバレ》 市川崑監督が三島由紀夫の「金閣寺」を映画化した作品で、主演は市川監督たっての希望でこれが現代劇初出演となる市川雷蔵がつとめている。25年前にはじめて見た時は雷蔵の出演している映画を見るのも初めてだったのだが、本当に時代劇スターなのかと思うほどに主人公である溝口になりきっていてビックリしたのだが、ほかの映画での雷蔵を見慣れた今になって久しぶりに見てもやっぱりうまく、自身の吃音に劣等感を持ちながら、金閣寺(本作では名前は変えられているが。)の美しさを絶対のものと信じる溝口の複雑な内面をスターのオーラを捨てて見事に演じていて、素晴らしく、演技派としての魅力がじゅうぶんに感じられ、間違いなく代表作の一本だ。黛敏郎の音楽が異様にマッチしていて、そのせいか全体的な雰囲気も独特なのだが、それも強烈な印象を残している。溝口の大学の友人である戸苅(仲代達矢)が足に障害を持ちながら、溝口とは逆に俗物的な描かれ方をしているのが印象深く、演じている仲代達矢の憎たらしさやその存在感も圧倒的だった。溝口が立派な人だと慕っていた和尚(中村鴈治郎)が後になって女遊びをするなど変わってしまうのだが、ちゃんとその和尚が自身の行為について苦悩するのを見せていたところも良かった。クライマックスの溝口の放火によって炎上する寺が非常に美しく撮られていて、圧巻で、まさに名シーンと言え、撮影の宮川一夫の手腕もそうだが、会社側からカラーで寺の美しさを描いてほしいという要求を突っぱねてあえて白黒を使ったという市川監督の意図もここにあるのではないかと感じる。(2024年12月30日更新)[DVD(邦画)] 9点(2005-03-02 01:02:58) 1502. 椿三十郎(1962) 《ネタバレ》 黒澤映画では珍しい前作「用心棒」の続編的作品。加山雄三、田中邦衛、小林桂樹、平田昭彦ら当時の東宝の各人気シリーズのレギュラー俳優が脇を固めるどちらかといえばプログラム・ピクチャー色の強いのも黒澤映画では異色な感じ。それでもじゅうぶんに楽しめる。中でも小林演じる見張りの侍が人質なのに敵である若侍たちと一緒に喜んでしまうシーンは笑える。そしてやはりラストの三十郎と室戸の対決シーンの衝撃は初めて見た時から忘れられない。[地上波(邦画)] 10点(2005-03-02 00:03:45) 1503. 仮面ライダー対ショッカー 《ネタバレ》 仮面ライダーシリーズ劇場版第1作。劇場版ということで最初からダブルライダーが協力してショッカーと戦っていたり、大量の再生怪人が登場していたりするなど、ならではの豪華さを出そうとしているが、ショッカーがやっていることは今回の計画に必要な装置を開発した博士(伊豆肇)からその方程式を奪おうというテレビシリーズとあまり変わらない感じ(計画自体はいかにも劇場版という感じのものなのに。)のもので、ここで一気にテレビと同じような印象になってしまい拍子抜け。新怪人であるザンジオーも出番が少なく、再生怪人たちと一緒にいるシーンは少ないものの、新怪人としての個性はあまり見られず、再生怪人の中に埋もれてしまった感じがしてテレビシリーズに出てくる怪人より扱いは良くなかった気がする。一方で、谷に再生怪人たちが集合して名乗りをあげるシーンは見ていてなかなか爽快で、このシーンがいちばんのみどころかも。冒頭の博士の娘の誕生日パーティーのシーンで、ケーキのろうそくを吹き消したらケーキが燃え始めるくだりは今見ても笑ってしまった。(2023年3月20日更新)[インターネット(邦画)] 5点(2005-03-01 14:47:57) 1504. 真田風雲録 《ネタバレ》 昔にも一度見てそのハチャメチャなぶっ飛び感が強烈に印象に残っていた加藤泰監督の映画なのだが、17年ほど経った今久しぶりに見てもやはりそのハチャメチャぶりというか、隕石落下の影響で赤ん坊の時に超能力を身に着けた猿飛佐助(中村錦之助)や、お霧(渡辺美佐子)という女性の設定の霧隠才蔵、時代劇なのにギターをかき鳴らしているミッキー・カーチスなど登場人物をはじめとした荒唐無稽さ(本間千代子演じる千姫などもコミカルに描かれていて好感が持てる。)が強烈な印象に残り、まさにこれぞカルト映画と呼ぶに相応しいと思える映画でやはり今見ても非常に面白かった。それに以前に見たときは加藤監督の映画をそれほど見ていなかったせいか、そこまで意識しなかったのだが、今見ると加藤監督はこの荒唐無稽で風変わりな異色時代劇の中にあってもあくまで真面目な視点で演出していることが分かり、ぐるぐるさんの書かれている通り、当時の学生運動といった社会への風刺を取り入れていて、終盤では戦に敗れた佐助と半蔵の個人的な一騎打ちが描かれているところなどは加藤監督らしいところか。また、佐助や真田幸村(千秋実)の生きざまがしっかりと描かれていて、ここがしっかりしているからこそ、どんなに荒唐無稽でハチャメチャでも全体を通した統一感があり、それが本作をただのキワモノ映画に終わらない青春ドラマとしての魅力も感じられる映画になっている。「やりてえ事をやりてえな。てんでカッコよく死にてえな。」というテーマ曲の歌詞とそれを歌いながら行進するシーンが実に心地良く、本作でいちばん好きなシーンだ。カッコよく死ぬことを望んでいた真田幸村がカッコ悪い無様な死にざまを遂げるのは今見てもブラックで笑えるのだが、今回改めて見たらそれ以上にどこかやるせなさも感じることができた。癖のある映画なので好き嫌いははっきりと分かれるかもしれないが、見ると元気になれる部分もあると思うし、やっぱり好きな映画の一本だ。(2021年12月12日更新)[DVD(邦画)] 9点(2005-02-28 22:27:31) 1505. ゴジラ(1984) 総理大臣役の小林桂樹はじめ、金子信雄、小沢栄太郎、加藤武、佐藤慶・・・。みんな好きな俳優だけど怪獣映画に出てるとすごい違和感を感じる。あとヒロイン役の沢口靖子の芝居はどうにかならんのか。[ビデオ(邦画)] 3点(2005-02-28 21:46:07) 1506. 座頭市果し状 《ネタバレ》 医者とヤクザ者である座頭市とのふれあいを中心に描くシリーズ第18作。医者の役に志村喬を起用しているため、黒澤の初期の傑作「酔いどれ天使」を彷彿とする内容になっている。しかし出来はイマイチだった。[ビデオ(邦画)] 5点(2005-02-28 18:00:53) 1507. 座頭市血煙り街道 サイレント時代からの時代劇スター近衛十四郎との対決が見所のシリーズ第17作。脚本は東宝の「社長シリーズ」で知られる笠原良三。一番の見所はやはり、座頭市と赤塚の対決シーンだろう。まさにすごいとしかいいようの無い迫力である。[ビデオ(邦画)] 9点(2005-02-28 17:43:53) 1508. 八つ墓村(1996) 《ネタバレ》 実は市川崑監督の金田一で初めて見たのが本作だったのだが、その時以来の久々の再見。「八つ墓村」といえば野村芳太郎監督が松竹で手掛けた映画のインパクトがあまりにもすごくて印象も強いのだが、野村監督版が現代を舞台にしていたのに対し、この市川監督版は石坂金田一同様戦後すぐの時期を舞台にしていて、おそらく野村監督版よりもこちらのほうが原作(未読)に沿った内容なのだろうと思うし、市川監督の金田一らしさも少しは感じられる部分があり、そのあたりは見ていてなんとなく安心感がある。しかし、映画的なものはあまり感じることができずに、安っぽい2時間ドラマのような印象が強くなってしまったのははっきり言って残念で、野村監督版にあったスケールの大きさはもちろん、石坂金田一にあった大作感もなく非常に小粒で薄い。トヨエツの飄々とした軽い金田一はこれはこれでありだとは思うものの、市川監督の映画だと思うと、金田一の知的な部分が足りず、やっぱり市川監督の金田一は石坂浩二だよなあという感想を今見ると抱いてしまうのも事実。(監督本人もそういう思いがあったのか、この10年後にリメイクした「犬神家の一族」では金田一役に石坂浩二を譲らなかったという。)また、石坂金田一でレギュラー的に出演していた面々が一部を除いて出演していないのも今見るとなんかさびしい。(西村雅彦の役なんてつい三木のり平が演じていそうと思ってしまう。)その中で加藤武が本作でも刑事役で登場して、いつもの決め台詞を言っているのは嬉しいし、結果的に市川監督の金田一全作にこの役で出ていることになるのもすごさを感じるのだが、本作では、金田一役が石坂浩二ではないのに加藤武がいつものように刑事役というのは逆に何かチグハグな気もした。もっとも市川監督の作品で加藤武が刑事役で出ているときは金田一以外でも決まって同じ決め台詞を言うので、実はそんなに気にすることでもないかもしれないのだが。エンドロールにかかる主題歌が全然合っていないのとエンドクレジットが普通のサイズなのも石坂金田一のイメージで見てしまうとこれもけっこう残念に感じる。でも、初めて見た時もそうだったのだが、今見てもやはり岸田今日子が演じる小竹と小梅のインパクトがすごく、これだけは野村監督版を上回っているような気がして、この配役は良かった。(2024年12月26日更新)[CS・衛星(邦画)] 5点(2005-02-28 10:38:37) 1509. クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦 《ネタバレ》 劇場版シリーズ第7作。今回初めてノーカット版を見たが、確かに間延びしていてテンポが悪く、ストーリーだけ見るとちょっとイマイチな感じがするものの、通常子供向け映画で絶対テーマになりそうもない温泉という題材や、マニアックなギャグの応酬など「クレヨンしんちゃん」らしい作品になっていてとても楽しめたし、久しぶりに見たのもあるが懐かしさも感じることができた。YUZAMEの巨大ロボットの進撃シーンは怪獣映画のパロディーになっていて、陸自の戦車隊が「怪獣大戦争」の音楽を鳴らしながら進むシーンと、直後の巨大ロボットがゴジラの音楽をスピーカーから流して陸自を威嚇するシーンは今見てもついすごく笑ってしまう。でも、巨大ロボットの進撃によって避難勧告の出た春日部の住人(いつものクレしんの脇役メンバー)の描写はリアリティがあり、真に迫ったシリアスなものになっているのは良かった。(劇中のテレビで一つだけ報道特番をやっていないチャンネルがあるのもこだわっていて好き。「アイアムアヒーロー」で同様のシーンを見た時、このシーンを思い出した。)そしてゲストである丹波哲郎の使い方も「クレヨンしんちゃん」らしく「ジェームズ・ボンドと一緒に風呂に入ったことがある」というセリフにやはり爆笑。「007は二度死ぬ」からのネタだが、本当に本作や同時上映の「クレしんパラダイス!メイドイン埼玉」を見ると原恵一監督をはじめとしたスタッフに映画好きが多かったことが分かるし、この頃の劇場版シリーズの自由さも感じられる。(野原一家が巨大ロボットにシェーをさせるシーンも「怪獣大戦争」ネタ。原監督は小学生時代に怪獣少年だったと聞いたことがあるが、それも納得できる。)アカマミレが風呂嫌いになった理由もバカバカしいが、それも楽しい。エンディングが本作のために作られたタイアップの新曲ではなく、登場人物ほぼ全員で歌う「いい湯だな」というのもこの映画にすごく合ってる。(2023年12月3日更新)[DVD(邦画)] 8点(2005-02-28 00:01:55) 1510. 四十七人の刺客 《ネタバレ》 昔、「金曜ロードショー」で放送するたびに父親とよく見ていた映画なのだが、「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(当時同日公開だったみたい。)を見たのでこちらも久々に再見。(見るのはもう5回目ぐらいなんだけど。)今見たら市川崑監督の映画で主演が高倉健というのがちょっと異色で珍しい感じがするのだが、忠臣蔵映画としてもけっこう異色で、話の発端となる浅野内匠頭(橋爪淳)が吉良上野介(西村晃)に斬りかかる松の廊下のシーンをクライマックスでの回想に留めていたり、吉良邸に迷路があったり。そして本作の見どころである吉良側に良くない噂を流すという策略などの謀略合戦といった部分はほかの忠臣蔵映画ではやらないようなことで、一見面白そうなのだが、その設定がじゅうぶんに生かされてはおらず、本筋とあまり関係ないような大石(高倉健)とかる(宮沢りえ)の関係が大きくフィーチャーされているのはけっこう不満が残るし、やっぱりかるが大石に向かって「やや子が・・・」というシーンはツッコミどころ以外の何物でもなく見ていて笑ってしまう。悪役である色部(中井貴一)も策略家のように描かれてはいるが、中井貴一の演技は力みすぎで、悪役としての凄みがなく、役柄としてみてもただのバカにしか見えず、とても頭の切れる人物には見えないのが致命的だった。討ち入り直前の四十七士が吉良邸前に集合した直後に吉田忠左衛門(山本學)の読み上げが「四十七人!」と叫んで終わるのはけっこう好き。「決算!忠臣蔵」のレビューで東映の任侠映画は忠臣蔵に近いものがあるのではと書いたのだが、本作では大石を演じるのが高倉健のためか、この討ち入りシーンは東映の任侠映画のクライマックスシーンのようで、とくに大石が吉良を殺すシーンはなおさらそう感じてしまう。大石の息子を演じるのが菊之助というのは東映ファンを意識してのことだろうけど、「単騎、千里を走る。」での寺島しのぶとの共演を見た後になって見るとこの共演は降旗康男監督の映画で見たかった気がしないでもない。(石橋蓮司は「忠臣蔵外伝 四谷怪談」にもインパクトのある役で出ていたが、本作ではかなり普通に見える。)忠臣蔵映画としてはこの前作が「赤穂城断絶」だったみたいなんだけど、そこで大石を演じていたのが錦之介だったので、内田吐夢監督の「宮本武蔵」シリーズで武蔵と小次郎を演じていた二人がともに忠臣蔵映画で大石内蔵助を演じているのはそれでもなにか感慨深いものがある。(2024年9月22日更新)[DVD(邦画)] 5点(2005-02-27 13:59:51) 1511. 江分利満氏の優雅な生活 岡本喜八監督を偲んで借りて来て見た。履物だけが動いている会話のシーンなど、シュールなシーンも多くて笑える。でも一番印象的だったのは主人公が家族の前でお茶漬けを食べながら泣くシーン。ちょっと感情移入してしまった。出演者では主人公を演じた小林桂樹が異様なハマリぶりを見せ、妻役の新珠三千代など脇役も名優ばかり。中でも戦争成金の父親役の東野英治郎が良かった。笑えて泣ける喜劇映画の傑作。2010年9月18日追記:小林桂樹さんの訃報・・・。東宝の俳優陣の中でも地味で控えめな印象のある人なのだが、演技には味があり、この「江分利満氏の優雅な生活」をはじめ、「黒い画集 あるサラリーマンの証言」、「女の中にいる他人」などはこの人でなければというほど小市民のサラリーマン役がピタリとはまる人で、もちろん「社長シリーズ」の秘書役も彼でなければという思いがある。去年森繁久弥さんが亡くなったときにこの人だけはもう少し長く生きていて欲しいと思っていただけに非常に残念に思う。心よりご冥福をお祈りします。[ビデオ(邦画)] 9点(2005-02-27 13:35:45)(良:2票) 1512. 影武者 6年ほど前にこの映画を初めて見た時は勝新太郎を中村玉緒の旦那だということと、「座頭市」シリーズで有名な時代劇スターということくらいしか知らず、出演作もあまり見たことがない状態だったために主役の俳優が途中で代わったことをあまり意識せずに見れた。しかしその後、勝新の出ている映画を何本か見るうちに、幻に終わったこの映画の勝新主演版を見たくなってしまった。だから今、この映画を見ると、仲代達矢は武田信玄役はよく似合っているように思えるが、影武者役はミスキャストだと感じてしまい、「勝新であればどんな風に演じただろう」とよけいなことを考えてしまうようになってしまった。映画自体は黒澤作品ということもあって、最盛期には及ばないものの面白く見られる。それだけに主役の交代が残念。[CS・衛星(邦画)] 6点(2005-02-27 11:33:53)(良:1票)
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