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1561. デイ・アフター・トゥモロー さすがはハリウッドきっての直球王ローランド・エメリッヒである。小細工なしのど真ん中ストレートを投げさせたら、今の大作娯楽映画界に彼の右に出るものはいないだろう。もちろん、直球しか投げられないと言ってしまえばそれまでだが、娯楽映画に必要なのはまさにその豪快さである。CGによる映像技術が進歩したといっても、これほどまで地球が滅亡していく様をまざまざと見せつけたものはなかった。その映像世界に対する絶大な圧倒感だけで、この映画は存在する。まさに豪快。まさに娯楽。ただ残念なのは、人間描写にエメリッヒ監督ならではのカッコよさがなかったこと。デニス・クエイドが主役という時点でキャスティングの弱さは致し方ないが、「ID4」「ゴジラ」にあったような脇のキャラクターの小気味よさをもう少し見せてほしかったと思う。妙に男前な大統領や犬連れの浮浪者にその期待をしたのだが、不完全燃焼に終わってしまった。まあ、自然の驚異、地球環境の悲鳴に対する人間の無力さというものを考えれば、人間の動きが弱いのも納得できなくはないが。ラストの宇宙飛行士の言葉にあるように、地球には、人間には、「浄化」が必要なのかもしれない。7点(2004-06-07 11:39:54) 1562. トロイ(2004) 《ネタバレ》 エンターテイメント映画としては、おそらくほとんど問題はないと思う。ただそこに史実的な男たちのドラマという要素を入れるとしたら、何だか物足りないというのは正直なところだ。登場人物たちの心情がいまひとつ描ききれていなかったように思う。どこか人物描写が希薄だから、アキレスの己の宿命に対する葛藤が単に優柔不断に見えたり、盲目的に愛を貫き通すパリスが軟弱なアホ王子に見えたりするのだと思う。「歴史に名を残す」という男たちの思いを群像的に描く上でこの人物描写の弱さは、痛いところだ。その影響が、明らかにスゴイはずの映像世界のパワーをも弱めているようで、益々残念である。 しかしながら、やはり圧倒的なビジュアルに裏づけされる娯楽性は大したもので、大スペクタクル映画としての要素は存分に備わった作品であることは確かだ。トロイの木馬、アキレスの唯一の弱点という史話的に非常に有名なエピソードをそつなく抑えたクライマックスは見事だと言える。[映画館(字幕)] 6点(2004-06-03 19:18:45)《改行有》 1563. トレマーズ4 《ネタバレ》 もはやカルト的な人気を誇るトレマーズシリーズ第4弾。パート3の時点で進化しきってしまった感があるクラボイスだったが、設定を西部時代にすることで、まったく未知な生物として再登場させるあたり、くだらないけどなんだか楽しい。シリーズのレギュラーキャラクターとして登場するマイケル・グロス演じるガンマニアの男が、今作では銃を全く扱えない彼の先祖として主役をはる。これまでの彼のキャラとは一転するので最初は違和感があるが、クライマックスにかけて銃に魅せられていく様がこれまた嬉しい。映画の世界観のすべてがチープでありきたりとも言えるが、それでも観客を楽しませてくれるのが、B級映画シリーズの頂点として君臨する今作の不思議な魅力であろう。第一作「トレマーズ」につながる小ネタ的な伏線もファンには嬉しい。7点(2004-06-02 14:23:19) 1564. 切腹 《ネタバレ》 「竹光」というものの存在を、7年前にこの映画を初めて観た時に初めて知った。 この映画における「竹光」の用いられ方は、あまりに哀しみと痛みを秘めており、暫く心に焼き付いて離れなかった。 いわゆる「勧善懲悪」の娯楽時代劇とはまさに対極に位置するこの作品は、武家社会の様式の厳しさと美しさ、そして根本的な無情さを鮮烈に描き出す。 その無情さは、ストーリーが深まるにつれ更に深化し、深い深い“愚かさ”として露になる。 そのほとんどが屋敷の庭先で展開されるストーリーは、極めて予測不可能。時代劇でありながら秀逸なサスペンスの雰囲気さえ感じずにはいられなかった。 何よりも、大胆かつ神妙な語り口で主人公を演じきる仲代達矢の振る舞い、眼光、発せられる声質まで総てが圧倒的だ。まさかこの当時30歳とはとてもじゃないが信じられない。彼に対峙する三國連太郎の独特の存在感も素晴らしかった。 初見時は、遷移する時代の“ひずみ”の中において起こった武家の非道な仕打ちに対して、主人公が自らの命を賭してその在り方を問う映画だと思えた。 もちろんそれも、この映画の中でメインで描かれている側面だとは思う。 しかし、数年ぶりに見返してみて、また違う側面も垣間見えた。 それは、この映画の物語の中で描かれるある種の無情さと滑稽さそれに伴う愚かさは、必ずしも非道な仕打ちをした武家に対してのみ描かれていることではないということだ。 むしろ"愚かさ”ということに関しては、主人公自身の悲しみの中にこそ描かれていたと思う。 誰よりも愛する家族に対して非道だったのは、“刀”を捨てきれなかった自分自身だったということに、主人公は気づき、己の愚かさに打ちひしがれたのち、「切腹」を覚悟し武家に赴いたのだろう。 仲代達矢演じる主人公が、三國連太郎演じる家老に放った激情ほとばしる一つ一つの言葉は、実のところ自分自身に向けたものだったように思えてならない。 移りゆく歴史の流れの中でひっそりと蠢いた一瞬の裏側を見事に切り取った大傑作だと思う。[DVD(邦画)] 10点(2004-05-24 01:39:54)(良:3票) 《改行有》 1565. 海底軍艦 東映特撮映画全盛の思い切りのよい娯楽性は流石に良い。ただ今作の場合、娯楽映画だけにはおさまらない戦争の業というものが裏に描かれている。横暴に地上世界を征服しようとするムー帝国は明らかに悪役だが、それをさらに強大な力(海底軍艦)で押さえつける地上人類側も正当な正義とは言えないような気がする。ラストでは燃え盛り滅亡していく帝国に一人泳いで帰っていくムー帝国皇帝がなんとも哀れだ。戦争というものに正義はない。どちらが勝とうとも残るのは喪失感だけである。7点(2004-05-23 12:14:21)(良:1票) 1566. ビッグ・フィッシュ 悲しいわけではない、物語自体が極端に感動的だというわけでもない。ならばどうしてこんなに涙が溢れるのだろう。と、とめどなく流れる涙を拭いながら思った。ただただ主人公の希有で幸福な人生を見ていることに心が揺れるという感じだった。それがつくり話かどうかなどということはもはや関係なく、紛れもない彼自身の幸福感に対して、その幸福な人生を見ることができたことに対して涙が溢れた。ひとりの男が人生を通して繰り広げる現実と空想の境界。その境界線上ですべての人がハッピーになる。感動するなんてことは、理屈ではない。まさにただ「感じる」ものなのだ。そういうことを改めて教えてくれる素晴らしい映画がまたひとつ誕生した。10点(2004-05-22 22:15:46)(良:2票) 1567. 続・座頭市物語 《ネタバレ》 前作「座頭市物語」を引き継ぐ見事な続編であった。勝新太郎の実兄・城健三朗(若山富三郎)との真の兄弟対決、前作では生き残る飯岡の親分をラストのラストでたたっ切るなど、娯楽性と爽快感が増した続編だったと思う。今作の後の何十作にもなるシリーズ化の確固たる自信と方向性を位置づけた価値の高い作品であると思う。[DVD(邦画)] 8点(2004-05-22 12:51:43) 1568. AKIRA(1988) 大友作品自体あまり触れておらず、この手の作品には苦手な感がある僕にとっては、やはりストーリー自体に居心地の悪さと拒絶感を拭いきることはできなかった。正直「だから結局何なの?」と思ってしまう。むしろこれは難解・不理解というよりも趣味の問題であろう。だから物語自体に対するコメントはできないが、その特異なアニメーション世界は、流石に圧倒的なものを感じずにはいられなかった。特に精神世界を表現するビジュアルは、ダイレクトにこちらの脳裏に注ぎ込まれるような錯覚を覚えるほど見事だった。ただし、おそらく英語版に合わせてあると思われる、どうにも一致しないセリフとキャラクターの動きには気持ちの悪い違和感を終始感じた。5点(2004-05-21 01:36:46)(良:1票) 1569. 妖星ゴラス 《ネタバレ》 なんて勇敢なのだろう!と、思う。接近する巨大妖星を前にして、「地球ごと避けてしまえ!」っていう劇中の人類もそうだが、それ以上に、1962年という時代にこれほど大規模で大胆なSF大作を作ってしまう当時の日本映画界の心意気に対して、心の底から勇敢だと思う。そして尚、その映画世界の秀逸さに驚く。特撮は明らかにミニチュアであるが、その精巧さと芸術性にはCG全盛の現在であっても舌を巻くしかない。突如として南極に現れる怪獣、結局のところ意図が不可解な主人公の記憶喪失、ジェット噴射で地球の軌道を変えるという設定自体、本来なら突っ込みたくなる破天荒なアイデアのすべてが、ひとつの完成された映画の中で違和感なく息づいている。「今度は北極の海にジェット噴射を作って軌道を戻さなきゃ!」ああ、素晴らしい。[DVD(邦画)] 9点(2004-05-19 01:48:56) 1570. 緋牡丹博徒 花札勝負 藤純子の魅力爆発の緋牡丹シリーズ第3弾。シリーズに一貫する藤純子演じる緋牡丹のお竜の圧倒的存在感にはますます惚れ惚れする。加えて今作では、お竜に対する男の気概にも目を見張る。高倉健の哀愁に、嵐寛寿郎の老獪かつ濃厚な気合。そして、シリーズ3作目にして初めて見せる熊虎親分こと若山富三郎の迫力の啖呵。濃密な男たちの中で、藤純子の存在がことさらに映える。ルールは分からないが、配られる花札一枚、一枚に溢れる緊張感に息を呑む。8点(2004-05-17 02:58:45) 1571. 子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる 凄い。何といっても若山富三郎の濃厚な存在感と圧倒的な殺陣が物凄い。時代劇きってのエンターテイメントシリーズと言われるだけに、全編に溢れる斬新な娯楽性に惚れ惚れするほどだ。三隅研次による秀麗な映像センスにも目を見張る。実弟・勝新太郎の「座頭市」に並ぶ革新的な娯楽時代劇だと思う。クエンティン・タランティーノが惚れ込むわけだ…まさにケッサク。[ビデオ(邦画)] 9点(2004-05-16 15:28:10) 1572. 宮本武蔵 般若坂の決斗 新免武蔵が宮本武蔵と名を改め流浪の旅を始めるくだりを描く。前作の荒々しさから一新して、剣術の極みを志す武蔵の確固たる眼差しが印象的。人間としては一皮むけつつも、剣の道、命の精神に対し葛藤する様も興味深い。宮本武蔵に着いて行く少年・城太郎を演じた子役の芸達者ぶりも光る。[DVD(邦画)] 7点(2004-05-16 11:31:04) 1573. 点と線 《ネタバレ》 時刻表を利用した計画殺人の妙自体は、今となってはさほど目新しくはないが、事件の核に女の憎愛を据えるドラマ性は、さすがに文学の巨匠松本清張の原作であると言える。卓越した映像美も手伝い非常にスリリングに展開する映画世界が秀逸。心中に始まり心中に終わる様式美も見事。8点(2004-05-14 12:10:09) 1574. 緋牡丹博徒 一宿一飯 「緋牡丹博徒」シリーズ第二弾。前作に続きもう本当に藤純子に尽きる。「親分さんの胸に、血の花が咲くとよ!」って。カッコイイと言われるセリフは数多くあるけど、本当に観客をシビレさすセリフというものはなかなか無い。キッと睨みつけるその眼差しに惚れ惚れする。お竜に惚れ込む四国の組長役で登場する若山富三郎のユニークすぎる存在感、女賭博師の不能になった夫を演じる西村晃も見事。8点(2004-05-11 00:29:18) 1575. 世界の中心で、愛をさけぶ 《ネタバレ》 「ロミオ参上」。劇中、不治の病で入院する最愛の彼女を見舞う主人公の少年の台詞である。250万部を越えた大ベストセラーの原作を映画化した今作の最高のファインプレーは、この台詞だと個人的に思う。原作を読んで号泣してしまった者にとっては、映画化によってどれだけこの世界観を表現できるかということが最大の興味であり、期待であり、不安であっただろう。その思惑を制作スタッフは見事に独立した映画として昇華してみせたと思う。その顕著な結果が「ロミオ参上」という原作にはない一つの台詞に表れている。確実な死に向かう恋人に対する少年の心情は、どうしようもなく混乱しているはずである。その思いを覆い隠すように、少年は、病室にたたずむ恋人に対してこの何気ない台詞でおどけ登場してみせる。この物語は、眩い青春時代に愛し合った恋人たちの片方が死んでしまうから泣けるのではない。目の前で「生の時間」を終えようとしている恋人を前に、自分は何をすべきか、何ができるかを思い悩み、限りある時間の中で奔走する少年の姿に涙が溢れるのだと思う。劇中、山崎努が言うように「人が死ぬということはえらいことだ」。でもそれがどうやっても避けられないものであるのならば、いつか僕も、誰かのためにさけびたい。[映画館(字幕)] 6点(2004-05-11 00:07:54)(良:2票) 1576. フレディVSジェイソン ホラー映画は苦手で、「エルム街の悪夢」&「13日の金曜日」両シリーズともまともに観たことがない僕だが、「フレディVSジェイソン」というホラー映画史を代表する二大スターの対決には映画好きの好奇心を掻き立てられないわけにはいかなかった。両シリーズを全く観ていないで今作を評するのもおこがましいが、夢と現実、二人のモンスターによる獲物の獲り合いを軸に展開していくストーリーは両作品のファンを裏切らないクオリティを備えたものだったと思う。それぞれのキャラクターの見せ場もバランスよく繰り広げられホラー性というよりは、エンターテイメント性が高かったのではないかと思う。ホラーが苦手な者にとっては「大いにひねくれたヒーローもの」とも言えるテンションが非常に楽しめる塩梅となった。ホラー映画のお約束とも言えるラストシーンには爽快感すら残る。7点(2004-05-10 02:09:38)(良:1票) 1577. バリスティック 完璧なまでのC級アクション映画に唖然としてしまった。自信たっぷりのアクションシーンにとってつけたようなキャラクターととってつけたようなストーリーが羅列する。あまりに内容の無いストーリー性に肝心のアクション映像も淡白に映る。ルーリー・リュー、アントニオ・バンデラスのビジュアルは良いがそれも作品の質に完全に打ち消されている。監督はタイ出身のカオスという人物、名前のままにこの映画自体混沌としている。1点(2004-05-09 18:52:44) 1578. 砂の器 最後の演奏が終わった後に主人公和賀英良が得た心情はいったい何だったろうか。自分の宿命に対する恨めしさか、悔しさか、恩人である元巡査を殺してしまった後悔か、それとも自分の想いを音楽によりまっとうした達成感か…。おそらくは、それ以上に様々な想いがラストの演奏中に渦巻いていたのだろう。そして、最終的に彼の脳裏を支配したものは、やはり唯一無二の存在である父親の姿であったに違いない。その想いの性質は陽であり陰である。しかし、丹波哲郎の台詞にあるように「音楽の中でしか父親に会えない」彼にとって、その瞬間はきっと幸福だったのだと思う。最近放映されたテレビドラマは観ていないが、主演アイドルのチープな演技、そして物語の核であるハンセン氏病をとりあげなかったことで、絶対的な失敗は容易に想像できる。[DVD(字幕)] 7点(2004-05-09 11:36:08) 1579. 修羅雪姫(1973) 修羅、まさに修羅。雪夜に映える美しき梶芽衣子演じる壮絶なヒロインの存在そのものが、「修羅」その一言に尽きる。この生き様を前にすれば、「キル・ビル」のザ・ブライドのそれすらも可愛く見え、タランティーノが圧倒的な感銘を受けたというのが文字通り痛いほど分かる。物語、運命、宿命、殺陣、台詞、そして血飛沫、すべてにおいて「躊躇」という言葉の存在すら忘れてしまいそうな超絶な映画世界に包み込まれる。8点(2004-05-07 01:19:19) 1580. 座頭市物語 満を持して観る事ができた「座頭市」の記念すべき第一作目は、まさに稀代の時代劇ヒーローの真髄に触れる精神に溢れていると思う。心を通じ合った浪人とのラストの死闘は、過酷な運命を背負い歩く座頭市の宿命そのものであろう。後のシリーズ作品等と比べるとややアクションシーンが少ない印象はあるが、三隅研次によるモノクロームの映像美に映える殺陣はやはり圧倒的だ。8点(2004-05-05 19:23:00)
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