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プロフィール
コメント数 2490
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1561.  スティング この後に撮られた同ジャンルの映画はすべて本作のアイデアをいじりまわしていると言っても過言ではないし、中にはそのまんま同じプロットという様なものまであるぐらいですから。 公開当時この映画を観て騙されなかった人はおそらく皆無でしょう。自分も初めて観た時は唖然呆然、ラストのどんでん返しでは観客から一斉にどよめきと拍手が沸き起こったぐらいでした。それはもう巧妙で完璧な出来の脚本のなせる技で、陽気なラグタイムに乗せてラストまでテンポ良く引っ張ってゆく奇跡のストーリー・テリングです。 たった二作しかないP・ニューマン、R・レッドフォード、G・ロイ・ヒルのゴールデントリオが揃った、“コン・ゲーム”ムーヴィーというジャンルを一作にして作り上げた傑作です。[映画館(字幕)] 9点(2013-05-02 22:10:15)

1562.  キッズ・オールライト 《ネタバレ》 こんなに本格的なレズビアンカップルのお話は初めて観た気がします、もう法的にも結婚しちゃってティーンエイジャーの子供までいる家庭を築いているんですから。ただねー、このカップルにはとうとう最後まで感情移入できなかったというか好感が持てなかったのですよ。二人の性格付けや子供たちの環境もリアルなんだけど、やや類型的過ぎるのもちょっと気に喰わないところかな。面白いもんで、映画って登場人物の存在にリアリティがあり過ぎると却って感情移入が出来ないものなんです。おそらくこの女性監督もレズなんだろうけど、M・ラファロと浮気をしてもA・ベニングと別れられないJ・ムーアを観ていると、ゲイとストレートという枠組みから抜け出せていない脚本だと思いました。 レズはホモビデオが好きだなんて知りませんでしたが、小ネタとしてはイイ笑いです。でも考えてみると、レズが両親だとその子供はセックスに関して意識することが普通の家庭より早くなってしまうんでしょうね。子は親を選べないというわけです。[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-04-29 22:11:12)

1563.  しゃべりすぎた女<TVM> 《ネタバレ》 まず原題の文字数の多いことにはびっくり、『博士の異常な愛情』といい勝負ではないか。毎度のことですけど、現在進行形の事件を題材にしちゃうハリウッド(この映画はHBO製作のTVムーヴィーですが)のえげつなさには恐れ入ります。でも実際にはこの映画の元ネタとなった事件はテキサスの田舎街で起こったショボいお話しなので、あまりに大げさな原題は一種の皮肉なのかもしれません。そのシニカルな目線は存在感が希薄というか登場人物たちの薄っぺらい造形にも顕れているのかもしれません(これは役者の演技や脚本がヘボいという意味ではありません)。その中でも群を抜いているのがH・ハンターの驚異の演技。あまりにバカバカしくえげつないこの事件が、彼女の怪演すれすれの熱演のおかげでなんかとても教訓的な印象すら覚えてしまうぐらいです。でっかい蜘蛛を握りつぶすシーンには背筋がゾッとさせられますし、あんな目つきでガンつけられたら思わずチビってしまいそうです。B・ブリッジスと車の中で延々と殺人謀議を続けるシーンなんか、もうハンターの演技に釘付けでした。 ラストのこれまた皮肉たっぷりのテロップは爆笑必至です。[ビデオ(字幕)] 6点(2013-04-27 20:01:12)

1564.  鏡の中にある如く 《ネタバレ》 ベルイマンの“神の不在”三部作は、トップバッターからしてもう強烈。なんせ神を深く信じるH・アンデルセンは精神異常で、壁を突き抜けて現れた神は蜘蛛の姿をしていたというんですから凄いものです。音楽の劇中での使用は最小限に抑えて、自然の物音を実に効果的に使っているのと、スウェーデンの白夜を美しく撮ったモノクロ映像がとても印象に残ります。重いテーマを扱った重苦しい映画ではありますが、ラストに明るい希望が感じられるところに救いが感じられます。[ビデオ(字幕)] 7点(2013-04-24 22:34:54)

1565.  アルフレード アルフレード 《ネタバレ》 D・ホフマンがイタリア映画に出てイタリア語を喋ってる(もちろん吹き替えですけど)というだけでも一見の価値ありです。違和感が最初にはありましたが、だんだん彼がイタリア人にしか見えなくなってくるのはやはり名優のなせる技でしょうか。 イタリア映画のお得意ジャンルである離婚騒動ものでありますが、このジャンルでは離婚するために男と女が奇想天外な手を使って笑わせるというのがお決まりなのに、苦労はするけど離婚自体は至極まともに成立しちゃいます。これは70年代になってイタリアでも次第に離婚がしやすくなってきたことが反映しているのかもしれません。劇中アルフレードは愛人と離婚合法化を要求するデモに参加したりしますしね。でも愛人とベッドに入っているところを警察に踏み込まれたりして驚かされますが、これは当時のイタリアでは男にも姦通罪が適用されたからでしょう。 この映画では離婚よりも結婚生活の苦しみのほうがツボで、悪妻S・サンドレッリとその両親の振る舞いはもう笑うに笑えないレベルです。C・グラヴィーナにしたって、ホフマンとの仲が深まるにしたがってやはり両親との関係や性格など、先が思いやられる展開です。そこら辺はコメディとしてカリカチュアしてるけど観る者にとって身につまされることが多いです。彼女らを笑い飛ばせるのはよほど出来た奥さんを持っている人で、羨ましい限りです。[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-04-21 23:29:55)

1566.  恋はデジャ・ブ 《ネタバレ》 久々に唸らせていただいた“アイデア一発勝負”脚本でしたね。なんの説明もなく、ループの世界に落ち込んだ不条理さがいいです。「もし眠らなかったらどうなるんだろうか?」なんてつまらないことつい考えてしまいましたけど、良くできたお話しです。ゲームをしくじったからリセットするのとは違って、今の人間性が変わらない限り一日が進まないというのはけっこう怖いところです。だから『三人のゴースト』や『素晴らしき哉人生』を思い出したという皆さんとは違って、わたしが彷彿させられたのは、古い映画ですがタイムスリップものSFの元祖といえるイブ・メルキオールの『タイム・トラベラーズ』だったりします。 ちょっと微妙な邦題のせいもありますが、俗に言う“隠れた傑作”に数えられてもいいんじゃないでしょうか。しかし、あんだけ保険に加入しちゃったら、支払いが大変だろうな(笑)。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-04-18 23:53:45)

1567.  ドミノ・ターゲット 《ネタバレ》 考えてみるとG・ハックマンとC・バーゲンは、『さらば荒野』『弾丸を噛め』本作と70年代に三本も共演しているんですね。すでに俳優業を引退した名優ハックマンですが、彼の生涯最多の共演女優がバーゲンだったとは実に意外です。まあカップルとしては実に不釣り合いな二人というわけだけじゃなく、三本が揃って凡作では映画ファンの印象も薄くなるのもしょうがないところでしょう。 さてこの映画は名匠と呼ばれたS・クレーマーの晩年の作品ですが、やっぱり力量の衰えは隠しようもありません。もともと彼は製作者としての方が高名で、撮る映画も世間を騒がせるようなネタ・テーマで一発勝負というスタイルで監督としてのテクニックや演出力が突出していたわけではありません。陰謀史観がまる出しの妙なテイストのオープニングからちょっと引いてしまいます。極めつけは終盤で襲われるバーゲンをハックマンが助けに駆けつけるシーン、いきなりストップモーションを使われて思わず「ださっ」って舌打ちしてしまいました。 気になったのは暗殺のターゲットが誰なのかを示さず、観るものにそれは大統領だったのではないかと感じさせる撮り方で、わざとその説明を省く見せかたは不気味な雰囲気を盛り上げていてちょっと良かったです。[CS・衛星(字幕)] 5点(2013-04-17 00:16:19)

1568.  エクスペンダブルズ 《ネタバレ》 うーん、正直言って騙された!という呻きがまず出ちゃいます。だって、ポスター観たらあの面々が手を変え品を変えて大暴れするのかと思うのが普通でしょう。それなのにB・ウィリスやシュワちゃんはほんの一瞬のカメオ出演、D・ラングレンは裏切っちゃうし実際に殴りこみかけるのはスタローンとJ・ステイサムにJ・リーの三人以外は初めて見た様な俳優とは、もういい肩すかしでした。自分にはスタローンのアクション映画に思い入れが全然ないくちなので、この雑であってなきがごときストーリーはきつかったです。アクションシーンがまた暗くてカット割りが多く、何が起きているのかさっぱり判らなくなって、“消耗品”のくせにあれだけの人数相手に誰も死ななかったということに最後まで気が付きませんでした。[CS・衛星(字幕)] 4点(2013-04-14 22:17:17)

1569.  貞操の嵐 《ネタバレ》 上場企業の跡取り息子が数年フランスで遊んで社長になるため帰国しました。彼には航空エンジニアの弟(高島忠夫)がいまして、兄の外遊中に婚約していました。空港に出迎えに来ていたその婚約者(高倉みゆき)を一目見て兄はその娘に欲情してしまいます。腹に一物ある叔父に相談すると、「順序からいえば長男の君が優先されなきゃおかしい、私が手助けしましょう」とまるで封建時代の様なセリフです。彼女は薬を飲まされて兄に手篭めにされ、それを知った父親は心臓発作を起こして憤死、母親は発狂してしまいます。自殺しようとする彼女に兄がうそぶくセリフがまた凄い、「君が弟と結婚したらいずれ弟は穢れた君のことで苦しむことになる、自分だけ幸福になればよいのか、僕と結婚するのが人として正しい道だ」 原作は大衆小説作家である牧逸馬(林不忘というペンネームもあり、『丹下左膳』の原作者)が書いた昭和初期の新聞連載小説だそうです。時代を昭和30年代として脚色しているので原作がどれだけ改変されているのか不明ですが、それにしても新東宝テイストが濃厚で理不尽なストーリー展開です。まあこういういい加減なところが(もしそういう人がいるならば)新東宝ファンにはたまらない魅力なんです。いい加減と言えば、劇中高島忠夫は違う女性と婚約(この映画のカップルはなぜか婚約するのが好きです)するんですけど、これじゃ高倉みゆきとラストで結ばれるはずなのにどうするんだろうと気になっていました。でもちゃんとハッピー・エンドで終わりますが、まさかあんな手を使うんなんて… もし映画館で観てたら、わたし間違いなく“カネ返せ”と暴れます(笑)。[CS・衛星(邦画)] 2点(2013-04-13 22:46:39)

1570.  博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか 《ネタバレ》 キューブリックは数少ないフィルモグラフィの中で色んなジャンルの映画をとっているが、彼が撮った唯一のコメディはブラックコメディとしては究極の域に達したと思います。なにがすごいと言ったら、P・セラーズ、G・C・スコット、S・ヘイドン、S・ピケンズ、P・ブルといった主要登場人物が全員で映画史に残る強烈な怪演を繰り広げてくれるところでしょう。良くこの映画ではセラーズの三役が話題にされますが、そんな彼を上回る凄まじい怪演でもっと評価されるべきなのはG・C・スコットのタージドソン将軍ですよね。この将軍のキャラは、当時の空軍司令官のC・ルメイ大将(太平洋戦争でB29による無差別爆撃戦略を実行した張本人)がモデルだそうですが、実は狂人なんじゃないかという説まであったルメイを強烈にカリカチュアしていて見事です。 いきなり空中で交尾しているB52爆撃機を見せてくれるオープニングは洒落てます。このB52が飛ぶシーンのチープな特撮がまた曲者で、完璧主義者のキューブリックですから低予算を逆手にとって狙った映像なのは明白です。地上戦闘のシーンも手持ちカメラで撮ったニュースフィルムみたいで、キューブリックの拘りが伝わってくるところです。そして“We'll Meet Again”をとんでもない映像にかぶせるあまりに有名なエンディング、そのセンスは今の眼で観ても鳥肌が立ちます。 こうして観ると、この映画は筒井康隆の初期の疑似イベントSFに通じるところがありますね(と言うより、筒井康隆の方が影響を受けたのかもしれません)。[映画館(字幕)] 9点(2013-04-09 23:37:21)(良:1票)

1571.  16ブロック 《ネタバレ》 別にそれが悪いとは言わないけれど、もうどこから観ても『ガントレット』への現代版オマージュです。『ガントレット』では長距離移送だったのを眼と鼻の先までの護送に置き換え、セクシー美女な証人をちょっとおかしな黒人に変更するなどけっこう捻りを効かせているのは上手な脚本です。くたびれきった刑事のB・ウィリスはなかなか味がありますが、考えてみると彼が演じてきた刑事のキャラはJ・マクレーンをはじめエリートでもキレ者でもない場合が多いので、あまり新鮮味は感じませんでした。『ダイ・ハード』も4まで来ちゃったし、そろそろ刑事役は打ち止めにした方がいいんじゃないでしょうか。 展開はまあスピィーディーでよろしいのですが、なんというか眼と鼻の先なのに目的地にたどり着けないというサスペンス感が乏しいのは残念です。もちろん私にはNYに土地勘などありませんけど、映像を観てる限りではとても遠回りしている様な感じでした。この距離は、東京で言うと新宿警察署から新宿御苑までという感じでしょうか。[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-04-08 20:48:36)(良:1票)

1572.  アフターライフ 《ネタバレ》 最近は“演技ができるシュワちゃん”状態になってトップアクションヒーローと化したL・二―ソンが、霊と話が出来る葬儀屋というキャラです。 教師のC・リッチはレストランで恋人と諍いをおこしたあと愛車で帰宅、激しい雨でスリップし眼の前にパイプを積んだトラックが… 気がつく彼女は二―ソンの葬儀屋の作業場に居た。最初は体がマヒしていたがだんだん動けるようになり、そうなると「君はもう死んでいるんだ」と言われても信じるわけはなく、変態サイコ野郎に監禁されたんだと思うわけです。 恋人役はJ・ロングですが、彼はリッチが事故死したと言われても信じられず、なぜか葬儀屋が怪しいことをしているのじゃないかと疑念を持ちます。 土葬の習慣がある国に昔からある“生きたままの埋葬”に対する恐怖心をホラーに仕立てたプロットですが、二―ソンが立派過ぎてどう見ても真面目な牧師にしか見えないというのがまず失敗です。もっと変態性があるキャラの俳優を使うべきでしょう。C・リッチは健闘してます。オール・ヌードで歩き回ったりしますが、彼女が脱いだのはこの映画が初めてじゃないですか。J・ロングは『スペル』で演じたのとほぼ同一のキャラだったのはちょっとびっくりしました。 この脚本は「L・二ーソンは、実は誤って死亡宣告されて蘇生した人を生きたまま埋葬するサイコ・キラーなのじゃないか?」と観客に謎をかける狙いがあります。でもこの女性監督はM・ナイト・シャマランが良くやる様な伏線張りやどんでん返しを全然使ってないのでラストにもキレがなく、またホラー要素とサイコ・キラー要素が分離してどっち付かずの印象です。 C・リッチの衣装や髪の色など赤を凄く強調した映像はちょっと幻想的で、見どころはありました。[CS・衛星(字幕)] 5点(2013-04-05 00:06:22)

1573.  ザ・フライ 《ネタバレ》 自分にとってもそうだし、たぶん世間一般においても最も不快な映画の殿堂入りしていることは間違いなし。これは別に貶しているわけじゃなく、初期クローネンバーグの最高傑作だと思っています。だんだんグチャグチャになってゆくJ・ゴールドブラムの撮り方を観てると、科学観測の記録みたいで奇妙な感覚を覚えたのですが、クローネンバーグは大学では生物学を専攻していたとのことで納得できます。 実はむかし初めて観たとき、確かヴィデオ版だったと思いますが、蠅男になりかけのゴールドブラムが唾液を垂らしながら食事を摂るシーンがあまりに凄くて強烈なトラウマになったんです。ところが最近観直したらそのシーンが無いんです、録画された食事の様子をモニターで観てJ・デイビスが真っ青になるところを映すシーンはありますが。 たしかにあの気持ちの悪いシーンがあったと思うんですけど、私の思い違いでしょうか。どなたかご教授お願いします。[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-04-02 22:16:43)

1574.  日曜日は別れの時 《ネタバレ》 思えばこの当時の英国を代表する映画女優は間違いなくG・ジャクソンだったと思います。一般的な美女とは言い難いけど、知的な演技力に恵まれた非凡な名女優だったことは間違いありません。90年代には女優を廃業して政治家に転身し、なんとブレア政権で運輸大臣を務めていたと言うから大したものです。 この映画ではバイセクシュアルのアーティストとユダヤ人の医師P・フィンチ、そしてジャクソンのスタイリッシュというかちょっと奇妙な三角関係を絶妙に演じています。劇中ではやたらと電話が鳴るのと電話交換のシーンがあるのですが、製作された70年代初頭ではもっとも都会的なコミュニケーション手段だったんでしょうね。 ストーリー自体はとても淡々としていてジャクソンとフィンチの演技を愉しむことに徹するのが正解でしょう。ラストに突然フィンチがカメラ目線になって心境を語りだす演出で、今ではこんな手法を使う監督はいませんが当時はけっこう斬新だったんでしょう。そこでフィンチが失恋の苦しみを「心が風邪をひいただけさ」と表現しますが、これは素晴らしいセリフですね。 それにしても、G・ジャクソンの代表作はほとんどDVD化されていなくて、鑑賞するのに大変苦労させられます。[ビデオ(字幕)] 7点(2013-03-30 21:42:46)

1575.  プレタポルテ 《ネタバレ》 ミラマックスのワインシュタイン兄弟のパリ・ファッション業界を抱き込んだ企画にR・アルトマンが呼び込まれたので、アルトマンはなんか真面目に脚本書いてないような感じさえします。冒頭、J・P・カッセルがサンドイッチを喉に詰まらせるところで「まさか、まさか」とふと不安に襲われたら、その「まさか」通りの展開になったので呆気にとられてしまいました。T・ロビンスとJ・ロバーツは仕事もしないでホテルにこもってあればっかりしてるし、なぜか犬のクソを踏んで靴を汚すシーンが何度も出てくるはで、アルトマンがここまで悪ふざけをするのもちょっと珍しいぐらいです。でも自分としてはけっこう笑わせていただいたのも確かで、三大ファッション誌の編集長たちをカメラマンが手玉に取るエピソードなんか、ベタなギャグだけど可笑しかったです。 と言ってもこの映画の最大の見どころは、映画史に永遠に残るS・ローレンとM・マストロヤンニのゴールデン・カップルの最後の共演が観られることでしょう。観ておわかりの通り、二人の関係はまるっきり『ひまわり』のパロディですし、ローレンがマストロヤンニにランジェリー姿を見せるシーンは『昨日・今日・明日』のまんまの再現となっています。二人ともアルトマンのおふざけにつき合ってとてもリラックスして演技しているなって思いました。 ラストの例のサプライズは公開当時けっこう話題だった気がしますが、製作に協力したパリ・コレ業界の反応はいかがだったんでしょうかね。どう考えてもアルトマンのファッション業界に対する否定的なメッセージのように感じますけど。[ビデオ(字幕)] 7点(2013-03-26 20:23:52)

1576.  日本誕生 《ネタバレ》 “東宝製作1000本記念映画”と言われていますが、当時の映画界の状況からすると記録的な大当たりとなった新東宝の『明治天皇と日露大戦争』を意識して製作されたんだろうと想像できます。“不偏不党”がモットーの東宝だけに、外野からケチをつけられにくい古事記と神話の世界を題材に選んだというところでしょうか。でもそこは天下の大東宝、巨匠稲垣浩を監督に据え他社のスターも呼び込んだ一大オールスター・キャストになっています。そのおかげで三船敏郎と鶴田浩二の滅多に見られないチャンバラ対決や、天照大神に扮した原節子の小津映画では決して見せない凛々しい姿などを観られてなんか得した気分になれます。 『日本誕生』というので天地創造から神武天皇あたりまでの映像化かと思っていましたが、実際には日本武尊を主人公に据えて神話シークエンスは劇中劇で見せるという脚本構成です。三船敏郎が日本武尊と須佐之男命の二役を演じて大活躍ですが、服が違うだけでどっちも同じ演技というのはまあご愛敬でしょう。古事記の記述とは違い日本武尊は大伴一族の軍勢に騙し討ちにされて壮烈な最期を遂げるのですが、それが火山噴火の天変地異が起きて大伴の軍勢を滅ぼす壮絶なラストに繋がるのです。このスペクタクルは円谷特撮の独壇場で、特に地割れのシーンは地面をスライドさせる仕掛けを造って実際に俳優たちが呑みこまれるという凄い映像で、ほんと驚かされました。 二部構成で正直後半はだれ気味なんですけど、やっぱ前半第一部の方に見どころが多かったと思います。とくに“岩戸隠れ”で乙羽信子(天宇受女命)が奇天烈な踊りを見せるシーンには強烈なインパクトがあります。八百万の神々も、エノケンや金語楼といった当時の第一線のコメディアンや横綱朝潮まで揃えていて実に豪華。こうやって見ると、日本の神話もギリシャ神話に劣らず豊潤なんですね。[CS・衛星(邦画)] 6点(2013-03-23 21:50:44)

1577.  インフォーマント! 《ネタバレ》 この主人公は実は双極性障害(今は躁鬱病のことをこう呼ぶらしい)だったということが劇中で判ってくる構成になっていますが、その奇妙で理不尽な行動をM・デイモンが大真面目に演じているのが可笑しい。いわゆるビョーキな人なのだが、常人には理解しがたい部分をじっくり見せるだけで観客の笑いをとろうというのがソダーバーグの狙いでもある。日本でこれをやると、すぐ患者団体やら人権団体からクレームがくる恐れがあり、企画段階でボツになってしまうんだよね。 でも観る方としてもこんな病的なウソつきに共感しようもないし、せいぜい「刑務所暮らしで禿げちゃったのは可哀そうね」というぐらいでしょう。監督ソダーバーグの意図は、『インサイダー』や『フィクサー』の様な大上段から内部告発の正義を語る映画に対する、彼なりの皮肉を込めたパロディなのかもしれませんね。 音楽がノスタルジックでいい雰囲気だと思ったら、担当は懐かしのM・ハムリッシュじゃありませんか。ほんと久しぶりです。[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-03-21 22:29:27)

1578.  スーパー! 《ネタバレ》 期待も予備知識もなしで観たら、実は大当たりだったという感じです。監督は誰じゃ、おお、『スリザー』を撮った才人J・ガンじゃないですか。なるほど、『スリザー』つながりでM・ルーカーとG・ヘンリーが顔を見せているわけですね。冴えない中年マスクヒーローのR・ウィルソンは『JUNO/ジュノ』でE・ペイジに妊娠を告げる薬局の店員だったし、ハリウッドという所は意外と人間関係が狭いんですね(笑) 『キック・アス』と良く似たプロットですが、コメディながら本作の方が人間性の闇に迫っていて奥が深いと言えます。何と言ってもE・ペイジの壮絶な怪演とびっくりさせられる最期、これはもう必見です。そしてまるで『バタフライ・エフェクト』みたいにとっても切ないエンディング、ちょっとホロリとさせられました。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-03-18 23:42:47)(良:1票)

1579.  アメリア/永遠の翼 《ネタバレ》 実はわたくし、H・スワンクを初めて観たとき「この人A・イアハートと瓜二つだ」と言うのが第一印象だったので、まさに満を持しての主演じゃないでしょうか。きっと本人も自分がイアハートに似ていることを自覚していたので、自ら製作総指揮を買って出る大熱演となったのでしょう。 航空映画は空を飛ぶ飛行機をいかに美しく見せるかが命ですけど、その点は航空ファンである私も大満足でした。とくにアフリカの上空を飛ぶロッキード・エレクトラの姿は、『愛と哀しみの果て』の映画史に残る空撮シーンにも負けない素晴らしい画でした。 R・ギアやE・マグレガーといった取り巻く男たちのキャラが薄いのが難点ですが、もっとこの映画の脚本の困ったところは肝心なイアハートの人物像までもが曖昧なままで終わってしまうところでしょうか。純粋なヒコーキ馬鹿なのかなと思えば活動資金を得るために商売っ気もまる出しなところもありで、そこら辺のキャラが中途半端に描かれているのは失敗だったと思います。女流監督が撮った女性映画という見方もありますが、やはりここはスコセッシの『アヴィエイター』みたいにコテコテのドラマにした方が良かったのではないでしょうか。 イアハートの遭難は、アメリカの歴史に刻まれた“世紀の謎”なんですから。[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-03-17 21:31:50)

1580.  カリフォルニア・ドールス 《ネタバレ》 あの蓮實重彦先生に「R・アルドリッジ映画の最高峰」と言わしめた、スポ根ジャンルの隠れた傑作。男同士のどつきあいを撮らせたら天下一品だったアルドリッジの遺作が女子プロレスのどつきあいの映画になったのは何とも不思議な感じですが、本作の女闘美ファイトは『北国の帝王』でのL・マービンとA・ボーグナインが見せた死闘を、ある意味で上回る迫力です。 それにしても誰が考えついたか知らないけど、P・フォークをあのマネージャー役にキャスティングした時点で、この映画がレジェンドになることを決定づけた様なものでしょう。女レスラー二人とマネージャーの不思議な人間関係も良く描けています。敵役のタッグチーム“トレドの虎”を単なる憎まれ役としなかったのも上手いところ。このチームのマネージャーが見た目は怖いけど実はスポーツマン・シップを重んじる男だったというのも、アルドリッジ映画には欠かせないキャラです。ラストで、負けた“トレドの虎”をドールスに握手に行かせるシーンは、ちょっと感涙ものでした。[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-03-13 22:46:59)(良:1票)

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