みんなのシネマレビュー |
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141. 影なき男(1934) 《ネタバレ》 発明品を作っている?ワイナントの影から始まる冒頭部分からしてサスペンスに富んでいますし、懐中電灯の光が頼りの真っ暗な研究所のシーンもスリリングですし、謎解きシーンの人物の見せ方も上手いです。しかし、そんなミステリー部分よりもちょくちょく見せる仲睦まじい夫婦の描写が素敵です。本編とは何の関係もないのですが、小突き合い戯れるところとか、奥さんがお酒をグラスについで渡そうとすると夫はボトルの方をとって飲んでしまうとか、クリスマスプレゼントを交換し射的しているところとか、そういう何気ない夫婦のシーンが実に魅力的ですし、しかもこんだけじゃれておいといて命の危険がある時は本気で心配し、渾身のキスシーンとくるのですから当てられてしまいます。 また、夫婦の子供代わりである犬のアスタの存在も面白くて、愛らしくも夫婦の言うことを全く聞かないところが良いですし、ラストに目を隠す見事な仕草もお洒落じゃないですか。[DVD(字幕)] 9点(2009-09-28 18:46:58) 142. リクルート 《ネタバレ》 〝これはテストなのか現実なのか〟というのがこの映画の焦点になっていて、最大の見せ場は拷問のところで、幾度となく試された後に観客もコリン・ファレルと一緒に現実か否か疑ってかかることになるのですが…どうもあまり面白くありません。ファレルの動きはなかなか機敏で見栄えがするのですがしっかり見せてくれませんし、バークの怪しいキャラクターはほぼパチーノが演じることによるところが大きく、ファレルの父親の謎やバークとの擬似親子的な部分は途中で放棄してしまったような感じで描写不足です。またラストのファレルとパチーノの対決シーンも〝スパルタカス〟の仕掛けだけで乗り切ってしまい、あの建物の中での攻防シーンはお粗末だと思います。[映画館(字幕)] 5点(2009-09-25 18:19:19) 143. 潜行者 《ネタバレ》 登場人物はそれぞれ個性的で強烈ですし、意外な犯人の意外な落下シーンは巧みで〝アッ〟と言わせてくれます。・・・しかし、ボギーは整形後の顔という設定なので始まってしばらくの間は彼の顔を映せず、多くの場面を彼の主観映像で見せるという試みがなされており、画面に彼の腕がにゅっと出てきたりするのですが…この部分がえらく退屈で早いとこボギーを出せよと思ってしまいます。 そして、最後にボギーが逃げ切ってバコールと再会してしまうのも明かに嘘っぽく見えます(夢オチかと思った)。それは逃走劇をもっとしっかり見せてほしいとか、物語的に不自然に見えるとか様々な問題もありますが、何よりバコールとの別れのシーンが問題なのです。というのもあの別れのシーン自体は胸に迫ってくるように素晴らしいのですが、迫り過ぎていて完全に今生の別れに見えてしまい再会はありえないと思わせるものなのです。[DVD(字幕)] 6点(2009-09-15 18:36:32)《改行有》 144. カサブランカ 《ネタバレ》 最初の方のボギーの酒場の見せ方など、あまり上手い具合にいっていない部分があると思っていたのですが、バーグマンの登場で一変します。彼女は個人的に趣味ではないですし、このキャラクターの心情は男の私には良く分からんのですが、そんな問題を差し引いても多額のお釣りがくるぐらい本作では魅力的に見えます。 例えばボギーと予期せぬ再会を果たし目がウルウルしてくるところとか、夜中に酒場に訪ねて来てドアを開けると光が彼女を照らし出すところとか、こういった綺麗に撮ろうという配慮がなされているからこそ二股状態の曖昧なキャラクターにもかかわらずバーグマンが完全無欠のヒロインになっているのだと思います。 そんな彼女を見送るボギーも格好良くて、キザったらしくて聞いているこっちまで赤面してしまうような台詞をサラリと言ってのけてしまうところがボギーならではでしょう。 それからピアノ弾きが歌う「As Time Goes By」は言わずもがなですが、国家を歌い合うシーンもパワフルです。[DVD(字幕)] 8点(2009-09-11 18:52:01)(良:1票) 《改行有》 145. サブウェイ123 激突 《ネタバレ》 デンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタの対決はアクションを伴うものではなく会話劇で、しかも面と向かわずになされるのですが、その攻防の緊張感が何とも凄く、むしろ二人が顔を会わせて直接対決が開始されるあたりからの方がつまらなくなります。しかもこの会話の内容というのは知的攻防戦と言う程でもないのに、ピリピリの状況にしてしまっているあたりがトニー・スコット監督の手腕でしょう。デンゼルとトラボルタ以外の人物は基本的に呑気で軽口をたたいているのですが、そのイイカゲンなシーンを挿むことによって二人の対決と地下鉄内の緊迫感をより高めていますし、いささか乱暴な見せ方ではあるものの時間を絶えず提示することによって圧迫感を生み出しています。 それから最後に市長の車の申し出を断り地下鉄で帰宅するシーンのデンゼルの晴れやかな表情が素晴らしく、感動的ですらあります。地下鉄の人間模様を巧みにちょこちょこ見せながらも深入りせず、これを106分でまとめあげてしまったスピード感も良い。[映画館(字幕)] 8点(2009-09-07 18:27:50)《改行有》 146. グッド・バッド・ウィアード 《ネタバレ》 かなりイイカゲンなところがありますが、この〝追いかけっこ〟はなかなかどうして楽しいです。主演3人の初登場シーンも工夫されていますし(この列車強盗のシーンが一番良く出来ている)、途中のチョン・ウソンが上空から撃ちまくるガンファイトも見せ場となっていますし、最後の全員集合の追いかけっこなどもスケールがあってパワーがあります(「マッドマックス2」を想起させる)。ただドラマ部分は弱く、地図の場所に何が隠されているかとかソン・ガンホの正体とか謎めいた部分は、むしろ最後までネタバレしない方が良いように思えます。 主演3人についてはイ・ビョンホンもチョン・ウソンも確かにカッコイイですが良い奴も悪い奴も型通りで(特にビョンホンの悪役は見せ場に乏しい)、鈍重そうでありながら実に軽快に動き回り折り畳み式オペラグラスで笑いをとる型破りなガンホが美味しい所をかっさらってエスケープして行くのは、当然と言えば当然です。[映画館(字幕)] 7点(2009-09-04 18:25:23)《改行有》 147. あの夏、いちばん静かな海。 《ネタバレ》 主人公は耳が聞こえないですが、これは耳の聞こえない者の物語ではないようです。つまり言葉なんてのは、さして重要ではなく排除しても差し支えないものであるから、主人公から台詞を奪うために、あえて耳を聞こえなくしたのではないかと思います。実際、ほとんどの台詞が無意味でしょうもないもので、例えば、バスで距離がひらいた恋人二人が歩いて再会するシーンだけで台詞など無くとも充分に物語っているのです。 さらに、ラストの楽しい思い出のようなシーンの数々は作中では省かれてしまっています。強面の河原さぶさんがトロフィーを手にし嬉しそうに酒を飲む姿などは感動的で、普通なら本編に挿し込んで簡単にお涙頂戴モンにしそうなものですが、そんなことはせず、ただただ黙々と歩き移動する姿を映し続けていて、それでも胸に響いてしまうところが凄いです。 ・・・と言っておきながら、私のお気に入りのシーンは思い出の方に近い、彼女がサーフボードの後ろを持ってあげるところだったりします。サーフボードが持ち上がり二人が顔を合わせニッコリと笑うのが微笑ましいですし、それを後で男のコンビで笑いとして使ってしまうのも良いですね。 それから、これは海の映画なんですが海そのものよりもビーチの方が魅力的に見えます。[DVD(邦画)] 9点(2009-08-28 18:36:26)(良:1票) 《改行有》 148. ウィンチェスター銃'73(1950) 《ネタバレ》 父親の敵を討とうと追って行く間に、当人たちのあずかり知らぬ所でウィンチェスター銃が人から人へと渡っていく様が巧みで面白いですし、カードを不器用に扱いながらポーカーで儲ける銃商人や、騎兵隊隊長、スティーブといった僅しか登場しない人物たちまでもが魅力的です(誰もがビビるワイアット・アープは少々温和すぎますが;)。 しかしこれは何と言っても銃撃シーンが素晴らしいです。度々、高・低の構図を使い、相当な距離があるにもかかわらず射撃する者の姿と射撃される者の姿を一つの画面に収めてしまっているところが凄く、何だか妙に気分が高揚してきます。ラストの銃撃戦にしても、私の残念なTV画面で見ると豆粒のように小さいのですが、しっかりと高い所から撃つ姿を映し出しているのです。そんな中でもお気に入りは、リンがダッチにウィンチェスター銃を奪われる場面で、それに気付いた相棒が階下から射撃しガラスがパシャンと割れるのを二階の室内から見せるシーンで、あれはワン・ショットで起こる諸々の出来事をまさにワン・ショットで捉えています。こういうのを見せられますと、距離のある銃撃戦を撮らせたらアンソニー・マン監督の右に出る者はいないだろうと断言したくなります。[DVD(字幕)] 9点(2009-08-26 18:14:17)(良:2票) 《改行有》 149. Kids Return キッズ・リターン 《ネタバレ》 この痛いまでに青春を感じずにはいられない映画は、どうしたって前半の反復部分が好きですね。学校の屋上とか喫茶店とか中華屋とかカツアゲとか…繰り返しというのは青春の一つの要素だと思います。毎日毎日、同じ時刻に同じ仲間と同じ場所で同じことをする。後半、社会に飛び出し、それぞれが挫折していく姿も哀しいのですが、ほとんど反復しなくなっていくことが、より一層に青春の終り告げているようであり寂しさを感じさせます。だからこそラストの校庭がもの凄く効いていて胸にグッサリと突き刺さります。あの自転車に二人乗りなんぞはまさに青春であって、(交通法の問題とか別にして私道にしたって)大の男になってしまったらチャリンコ二人乗りはもう出来ないのです。[DVD(邦画)] 9点(2009-08-14 18:40:20)(良:4票) 150. ヒトラーの贋札 《ネタバレ》 手ぶれ映像でいかにも実録風に淡々とした演出で見せてくれるのですが、やはりこういうのは映画として面白味がないと思ってしまいます。例えば、病気の仲間が射殺されてしまうシーンの緊張感の無さはどうでしょう。主人公にああいう形で目撃させているところを見ると、サスペンスの面を全く放棄している訳でもなさそうなので上手くいってないんじゃないかと。 ただ、ラストにもっと無惨にくたびれた同胞が現われるシーンはアッと言わせてくれます。それまで収容所外の世界をほとんど映していないので、どうしたって己の命が一番大事で、仲間の命を危険に晒す正義の人・ブルガーは身勝手に見えますが、壁が崩されたあの瞬間にまさに狭い世界から解放されブルガーの行動にも納得がいくのです。[DVD(字幕)] 6点(2009-08-07 18:36:01)《改行有》 151. 影武者 《ネタバレ》 長篠の合戦シーンで、討ち死にしていく様を一切映さずに省略するのは良いのですが、他ではあまりお目にかからない、非常に印象的な馬がのた打ち回っている悲惨な光景が、くどいくらいで冗長に感じられます。もちろん無敵の騎馬隊が敗れ、武田家の滅亡を意味し、影武者が単騎突入をかける重要なシーンであるとは思うのですが、あのシーンを長々と見せるのはどうかと思ってしまいます。 それから、細かいところで目に付くところもあります。例えば戦場で砂埃が舞い旗がこれでもかとパタパタとひらめく風の演出はとても良いのですが、そのバックの木々がぜんぜん動いていなかったり、はたまた冒頭のシーンでの燭台の影は本来なら消すべきなんじゃないかとか…なんか揚げ足取りのようですが、このスケール壮大な黒澤映画だからこそ細部が余計に気になってしまいます。 それと、やっぱりどうして役者さんだと思います。仲代さんも凄いのですがこの役には不向きに見えますし、予定では勝新だったらしいですが、それが実現していてもこの3時間にも及ぶ超大作の風向きまでは変えられなかったような気がします。それが可能だったのは三船敏郎だけだったろうと。黒澤監督作品を立て続けに見ることができる今、ミフネ不在の黒澤映画を見る度に黒澤には三船が必須だったのだとすら思えるのです(また三船も最高なのは黒澤映画においてである)。[ビデオ(邦画)] 7点(2009-08-03 18:27:08)《改行有》 152. ピストルオペラ 何だかよく分からないシーンもあるのですが、痛快なまでに単純な物語を見失うほどでもありませんので、それぞれの部分部分でも楽しいですし、何よりこの映画は露出度が低いにもかかわらず、とてもエロティックで官能的です。 D・W・グリフィス監督は「映画とは女と拳銃」と言ったそうですが、まさにこれは〝女と拳銃〟で出来た映画であります。とても気に入りました!・・・「具体的にどこが良いの?」と問われれば上手いこと説明できず「ちゅーちゅーたこかいな」と答えてしまいそうですが、とにもかくにも気に入ったのです。[DVD(邦画)] 9点(2009-07-28 18:26:12) 153. 暗黒街の弾痕(1937) 《ネタバレ》 最初の再会シーンで鉄格子ごしにキスをするのですが、これは如何なる障壁も二人の間を裂けないことを思わせるもので、その後も度々、確認するようにキスするのが逆説的に今後の悲劇的な顛末を予見させ、どこか悲しい心持ちになります。 またサスペンスとしても素晴らしく、運送屋の雇い主を殴った直後に土砂降りの銀行へとカットが変わり、車から不気味な目が覗き、ガスマスクを被る犯人の顔は分からない…。観客をミスリードしていく巧みさがそこにはあります。運命の分かれ道となる刑務所のシーンもモヤモヤとかかる霧が視界不良の退っ引きならぬ状況を見事に表しており不安感を募らせています。 ・・・ただ一つ、二人の逃避行の時間経過の感じさせ方が希薄で、どうしても赤ちゃんの誕生が唐突な感じを受けます(「ベイビーって呼んでるの」というシーンは凄く良いのですが)。例えば、浅はかな考えで物を言えば、輪転機を回すだけで全然違ったと思うのです。まぁそんな安っぽいことしたらあの雰囲気には合わず世界観ブチ壊しかもしれませんが。 [DVD(字幕)] 8点(2009-07-21 18:34:40)(良:1票) 《改行有》 154. スターリングラード(2001) 《ネタバレ》 孤高でストイックなイメージの狙撃手同士の対決というのは個人的にツボですし、それぞれが異国人を英語で演じながらもジュード・ロウの男前っぷりとエド・ハリスの軍服の似合いっぷりが良い味を出していますし(戦時中とはいえレイチェル・ワイズはもっと綺麗にとは思いますが)、列車を降りると戦禍が広がっている導入の仕方や、ジュードが狙撃の腕前を見せるシーンは圧倒的だと思います(あの場面は死体も凄い)。・・・しかし、肝心要のジュードとエドの狙撃対決が全く面白くないのです。それはもう二人の位置関係の見せ方の乏しさに原因があります。凄腕のスナイパー同士ですから思っているよりお互いウ~ンっと距離が離れているのかもしれないですし、一発撃てば居場所がバレてしまうので発砲チャンスが限られているという難しさがあるのかもしれませんが、例えばアンソニー・マン監督の「裸の拍車」における狙撃シーンなどと見比べてしまうと、もっと頑張ってほしいと思ってしまうのです。 ついでに位置関係の話で言えば、両陣営に顔を出す少年の出入りも描写が希薄で、よく分からず不調になっています。[DVD(字幕)] 6点(2009-07-14 18:18:13) 155. 彼奴(きやつ)は顔役だ! 《ネタバレ》 ジェームズ・ギャグニーという役者は悪党を演じていても、最初に煙草を分けてくれたように、どこか気の良い優しい男にも見えるので、無償の愛を与え続けながら落ちぶれてゆく様は同情してしまうくらい不憫です(女も、助けを求めに来るのはともかく幸福な家庭に招き入れるのは可哀相じゃないか!)。もちろんナレーションをかぶせ時代が進んで行く度に、ギャグニーが少しずつ暴力性を増しヤクザな男へと変貌を遂げていくところは、軽快に物語を進めており説得力もあるのですが、ボガートが登場してしまうと、その悪党っぷりから比べれば、やはりどうして好漢に見えるのです(銃に関してもギャグニーの場合は基本、脅しの道具ですがボガートが持つと殺しの道具となる)。だからこそ余計に、あのラストに背中を撃たれ雪の舗道を疾走しながら絶命していくギャグニーの姿は、あまりに哀しく感動的であり涙腺にグッとくるものがあります。 惚れてしまった方が弱いのは仕方ないんですが、涙もんのギャグニーの男っぷりとラストランを見たら、彼女の心もほんの、ほんの少しばかりは動かせただろうか(当然、ギャグニーにはそんな打算もなかったのだけど)。[ビデオ(字幕)] 8点(2009-07-01 18:13:54)《改行有》 156. 運動靴と赤い金魚 《ネタバレ》 デ・シーカ監督は自転車だけで「自転車泥棒」を撮りましたが、本作もたった一つの物〝靴〟だけで物語を成立させたばかりか、サスペンスも喜劇も感動も盛り込んで豊かに物語ってしまったのが凄いところです。 例えば、片方の靴が水路で流されていくシーンなど下手なサスペンス映画など比べものにならないくらいドキドキ感がありますし、3等狙いという喜劇的な制約がかかったマラソン大会ではスローモーションが始まった瞬間、これはどうあがいても3等にはなれないんだなと予感をさせ、すると懸命に走るスローモーション姿が何だか妙に可笑しくなってくるのです(頑張って走ってるんだ笑っちゃイカン)。 しかし、最も素晴らしいのは兄妹による靴のリレーで、お互いを想い、パタパタパタパタ路地裏を全力で走る姿はそれだけで感動的です。お父さんの自転車に靴が積んであった時、どれだけ〝あぁ良かったねぇ〟と思ったことか。それにあの少年の泣きそうな顔は反則だと思います。 [ビデオ(字幕)] 9点(2009-06-23 18:33:32)(良:2票) 《改行有》 157. 太陽は、ぼくの瞳 《ネタバレ》 テロップに声だけで始まるオープニングは、これは視覚の無い者の物語だと思わせるものであり、作中でも音をよくとらえ、風や水などでモハマド少年が体感しているであろう感覚をしっかりと見せてくれます。…しかしながら、目の見えない者の心の目で見た世界を映し出すのは土台無理な話で、少年の頭に描いている世界を描出しているとは言い難いです。ということで、やっぱりこれは少年を見守る視点からの作品であり、例えば少年が気付くはずのない〝物陰から覗く父親〟の登場のさせ方などが非常に巧みで、観客に不吉さを予感させるものであり、物語にズンズンと引き込まれてしまいます。 個人的には、モハマドたちが授業で点字をうつ姿がとってもパワフルで感動的だと思いますが、「運動靴と赤い金魚」とは違った、あのラストのスローモーションの使い方はあまり上手くいってないように思います。ああいう場面は一気に見せてほしいです(それは父親に一瞬たりとも躊躇してほしくなかったと思ったからかもしれませんが)。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-06-15 18:34:01)《改行有》 158. 化石の森(1936) 《ネタバレ》 一言で言ってしまえば、これは饒舌すぎます。立て籠もりというシチュエーションにもかかわらず、人質たちは余裕しゃくしゃくでほぼ痴話喧嘩のような会話をするので緊張感が希薄になっていますし、いつもギャングを演じれば文句無しに悪党に見えるボガートのその寡黙さが、ここでは善に見えてしまいます。さも得意げに詩をそらんじ田舎の純な娘を口説くレスリー・ハワードよりも、早く逃亡すべき所をおそらくやっては来ない情婦を黙々と待ち続けるボガートの方が好感が持て、いくら前屈みの姿勢で腕を振らずに獣じみた歩き方をしてみても、もはやそれすら純朴な男の動きにしか見えず、悪党として機能していないのです。 またラストの銃撃戦も監督はこのシーンに興味が無かったのか、いいかげんです。例えば裏口でボギーの子分が射殺されるのですが、それまで裏口は一度も?登場しておらず全く別の場所での出来事のような印象を受けるのです。[DVD(字幕)] 6点(2009-06-08 18:35:00)《改行有》 159. 追跡(1947) 運命的で因果な物語はギリシャ神話のような悲劇ですので、全編を通して暗い映像が基調であり、孤独感や陰鬱な空気が漂っています(家族がオルゴールで歌う楽しいシーンですらどこか暗い)。自身の出生について悩み続けるロバート・ミッチャムも決して笑顔を見せず精神的な屈折を感じさせますし、例えば出征の際に義兄弟とハグをしないところなどからも、完全に兄弟になりきれず一線が引かれているようで重いものがあります。しかしそんな籠った世界の一方で、ディーン・ジャガー演じるグラント一味(グラントの不気味さも良い)がミッチャムを追って来るシーンの切り立った岩山の高さであるとか、義兄弟の銃撃戦で見せる奥行きの深さであるとかは非常に開けており、ウォルシュ監督のまさに縦横無尽の働きっぷりがうかがえます。[DVD(字幕)] 9点(2009-06-05 18:31:32)(良:1票) 160. お早よう 《ネタバレ》 住宅地の一画の何でもない日常生活風景なのですが奇妙な魅力を秘めており、それぞれの人物の登場させ方も絶妙で押し売りコンビまでもが完璧に出入りしています(押し売りを撃退するおばあちゃんが一番凄い!)。またオナラという下品なギャグも、返事と違えて奥さんが「何だい?」とやって来たり、干したパンツを旗のようにさわやかに見せたりと、品を損なわずにカマしてみせるところなども流石です。 それから「アイラブユー」と軽く言ってのける弟の存在がとっても効いており、本来ならもっと陰惨になる親子喧嘩などのシーンも弟の存在が柔らかい印象を与えてくれて、河原におひつを持って行ってご飯を食べるシーンなど、何とも気分が良いものです。ラストの駅で「良いお天気ですね」などと無意味な会話から恋愛が発展しそうなオチ?もくすりとしてしまいます。[ビデオ(邦画)] 9点(2009-06-02 18:33:02)《改行有》
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