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1641. 生きてこそ 《ネタバレ》 極限状態で迫られる選択。「あなたなら生きるためにヒトの肉を食べられますか?」この問いかけは、冒頭の生存者独白シーンで既に回答されています。「その状況になってみなければ分からない」。実際そのとおりだと思う。凄く葛藤するのかもしれないし、簡単に腹をくくれる気もする。自分なら多分食べますが、本当のところ分からない。本作の登場人物たちは、比較的アッサリこの難問に答えを出します。これがとてもリアルに感じられました。それが「実話」としての強みです。しかしこれは一例。今回の遭難者は最初からグループとしての機能を有しています。主義信条もそんなに変わらない。一つの結論に辿り着き易いと思う。もしこれが一般の旅客機だったらどうでしょう。人種、宗教、置かれている状況が違えば、おのずと選択も違ってくる。餓死を選ぶ人、自殺を選ぶ人、死を覚悟で山を降りようとする人、ただただ神に祈る人。いろんな行動、選択があっていい。どれが正しくて、どれが間違いという問題ではありません。それが人間である証だと思う。いみじくも誰かが言っていました。「人間であるうちに…」と。人間だから悩むのです。そこに踏み込んでいないように感じました。心理描写が淡白でした。関係各位への配慮も当然あるでしょう。実話としての強みもあれば、逆に弱みもあるということ。生きることへの素晴らしさを説くことに、もちろん異論はありません。でも楽な着地点を選んだ(選ばざるを得なかった)ようにも感じます。本作については、“完全フィクション”というアプローチでも良かった気がします。[DVD(字幕)] 6点(2007-12-28 19:09:00)(良:3票) 1642. ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月 《ネタバレ》 マークとブリジットの愛の強さが明確なので、2人を襲うピンチがショボく見えてしまうのが難点。それに、ほとんどブリジットのひとり相撲。また“異国での投獄”というシチュエーションはかなり強引に感じました。観客と等身大のヒロイン像が魅力の作品。身近なエピソードの方が笑い易くていいかも。ところで、ブリジットの体重増について。前作は“ぽっちゃり”レベルでしたが、本作ではしっかりおデブの領域。「ありのままの君が好き」という言葉を鵜呑みにした結果です。ここで問題。マークは彼女の巨大化をどう考えているのか?①ルックスは全く気にならないね。彼女の内面に惚れたんだ。②むしろ大歓迎。デブ専ですから。③ストライクゾーンから少し外れたけど、まあOKでしょう。①か②ならノープロブレムです。本当にイイ人を見つけたと思う。もし③のケースだったら要注意。普通の男が口にする「ありのままの君が好き」とか「飾らない君でいて」系の口触りの良い台詞は、寝言かウソか勘違い。本気にすると痛い目に合う可能性大です。そこは見極めないといけない。親子の愛と男女の愛は別物。無償の愛は尊いけれど、努力を伴う愛には価値がある。彼女がその事を理解していると感じられたら、ハッピーエンドに素直に喜べたと思います。[DVD(字幕)] 5点(2007-12-28 18:59:05)(良:2票) 1643. THE焼肉ムービー プルコギ 《ネタバレ》 (最初の投稿失礼いたします。)焼肉への“こだわり”や“愛”を感じたい。「焼肉が好き!」という魂の叫び、肉を焼く煙と香り、肉汁のしたたりを感じたいと思う。観終わって思わず焼肉屋へ足を運びたくなるような。それが、食を扱う映画に自分が求めるもの。でも残念ながら本作にはありませんでした。焼肉の魅力が伝わって来ませんでした。焼肉をしている画は沢山あります。でもその画に付加価値がない。良く言えば日常の風景に溶け込んでいる。食=人生というテーマにも沿います。でも物足りない。食い足りない。もっと貪欲に“美味そうな画”を入れて欲しかったと思います。それに食材に対するリスペクトが感じられなかったのも残念。ラーメン屋が試行錯誤の過程でスープを捨てるのは分かる。勿体無いけど仕方ない。でも焼肉屋が修行で焼いた肉を食べずに捨てるのはどうだろう。その他にも肉をモノとして扱っているシーンに首を傾げます。ラストのバトル。最高級カルビをあえて不味く料理。流れ的には、その意図も分からないではない。でも料理人なら耐え難いことだと思う。食材に対する感謝と、食する人への思いやり。食文化を扱う映画に必要不可欠なものだと思います。人情話+焼肉。もっとホットでいいと思いました。淡白で低体温なコメディは別の料理の時にお願いしたい。キャストはやたら豪華でしたが、おなか一杯にはなりませんでした。[DVD(邦画)] 3点(2007-12-26 18:44:07) 1644. オールド・ボーイ(2003) 《ネタバレ》 自身幻の0点作品。鑑賞後すぐに投稿した際は怒りに任せて0点を付けました。(翌日冷静になって点数変更)。後味最悪だったから。韓国映画をほとんど観ていなかったことも災いしたのでしょう。毒気にあてられた感じ。それだけ本気になったということ。感情移入しまくりで、物語に引き込まれました。振返ってみると、パク監督の復讐3部作の中ではダントツに面白かったと思います。まず設定がイかす。何の前触れもなくいきなり拉致。妻は殺害され、主人公は15年間も監禁生活を余儀なくされる。頭にあるのは復讐の2文字。怒りが人を動かします。これは快感だと思う。倫理のタガが外れた自由さは、普段の生活では得られない。武器がまたいい。トンカチ。殺傷能力はナイフや銃器類に劣るものの、相手に痛みを与えた感覚が直に伝わってくる。見た目滑稽なところも含めて、このチョイスに監督のセンスを感じます。一通り実行犯への復讐が済んだところで本丸へ。この展開だからこそ、黒幕をすぐに殺さないという選択が出てくる。とりあえずの怒りは収まった。それに殺すだけならいつでも殺せるという自信もついたでしょう。「何故監禁されたのか?」15年間抱き続けてきた疑問の答えを聞かずに、殺すわけには行きません。でも終始イニシアチブは相手にある。手のひらで踊らされているような漠然とした不安がつきまといます。果たして予感は的中。「“何故監禁されたのか”ではなく“何故開放されたのか”」復讐者の言葉にしびれます。復讐しているつもりが、復讐されていた。100%逆恨みです。直ぐに相手を殺すことも可能でした。しかし主人公は娘のことを思い遣ります。冷静になればいくつもの方策があったでしょう。勿論言い訳もつく。でも娘を傷つけたくない(そして嫌われたくない)という父親の心は理屈ではなく理解できる。ラストもそう。決してハッピーエンドとは言えませんが、この結末を望んだオ・デスの気持ちに涙します。時折挟まれるギャグテイストが隠し味。何とも濃く、深い味わいの作品だと思います。[DVD(字幕)] 8点(2007-12-25 19:33:49)(良:2票) 1645. 長靴をはいた猫(1969) 《ネタバレ》 ストーリーとしては原作の方が洗練されていると思います。でも良かったのは、ピエールが自らの身分を姫に明かした件。最後までウソを突き通して幸せを掴むオリジナルよりも気持ちがいいです。キャラクターデザインの素晴らしさは、言うまでもありません。ペロがその後、東映マンガ祭りのキャラに選ばれたのも頷ける。動きも実に滑らか。あるべき子供向けアニメ映画の魅力が本作には詰まっています。[DVD(邦画)] 7点(2007-12-24 18:09:32)(良:1票) 1646. 光の旅人 K-PAX 《ネタバレ》 プロートは知的でいつも穏やか。怒ったり、悲しんだり、妬んだりしません。こうありたいと思う人間の姿です。彼によって周りの人たちは癒されていく。患者の多くは快方に向かいました。主治医も息子と向き合う勇気をもらえた。頑なな心をほぐすことが出来たのは、違う価値観に出会えたからだと感じました。信念を持つことは大事。でも凝り固まると息がつまってしまう。自分とは違う価値観、感性の人と触れ合うことで、自分の中に余白を作ることができる。大切なことだと思います。プロートは妻子を失った男が産んだもう一人の人格か、はたまた光に乗ってきたK-PAX人か。その結論は明確にされません。つまりどちらでも構わないということ。プルートによって救われた人がいる。その事に意味があるのだと思いました。彼が主治医に残した最後の言葉は、自分自身(元の人格)に対しても向けられていたと思います。今は廃人同様でも、希望の火は消えていません。(以下余談)自分なりの解釈。“紫外線が見える”“星の軌道を知っていた”この2点は宇宙人説の強力な拠所。またタイミングよく監視カメラにノイズが入ったことも見逃せない。プロートが宇宙人でないのなら、特異能力の持ち主でなければ辻褄が合いません。ウルトラシリーズ直撃世代としては、やはり宇宙人説を支持したいです。[DVD(字幕)] 8点(2007-12-23 18:08:04)(良:2票) 1647. スーパーサイズ・ミー 《ネタバレ》 本作で真に訴えたかったのは、“マックの食品は有害だ”ではありません。ファーストフード全般に見られる中毒性、高脂高糖食品を大量摂取するリスクについて。つまるところ、「食育」の重要性を説いているのだと思います。マックがヤリ玉にあがったのは、ファーストフードの代名詞であったこと。そして子供を取り込む販売戦略が問題にされたのでしょう。企業倫理が問われた訳です。この倫理というのがクセ者。企業が営利を求めるのは当たり前。その戦略に乗るほうが悪い。結局は消費者の自己責任ですよ。その理論で随分と企業は擁護されてきたと思う。自己責任を否定する気はありませんし、マックを訴えたアメリカ人などは論外です。しかし、だから企業は何をやってもいいということにはならない。肥満予防はもはや国策です。日本でも真剣に取り組まれるようになってきた。理由はハッキリしています。医療費増は経済に悪影響を及ぼすから。健康な国民が多いことは、国力のひとつ。消費者が不健康になって一番不利益を被るのは企業だったりします。企業倫理とはそういうこと。本作の主張は正しいと思います。ただ、手法が適切だったとは思わない。実験の比較対象は過去の自分。それなら少なくとも今までと同じライフスタイルにしなくては。運動頻度が極端に落ちていたら、その影響も少なからずあるでしょう。食べてからすぐ寝ていない?規則正しく生活した?大切な判断材料が示されていません。それこそ倫理に反します。ただし想像だけで語る評論家もどきや、したり顔で説教するテレビショウの司会者に比べれば随分マシ。当たり前でも確かめてみることに価値はあります。[DVD(字幕)] 7点(2007-12-22 18:06:03)(良:1票) 1648. 翼のない天使 ディス・イズ・シャマラン。[DVD(字幕)] 6点(2007-12-21 12:32:04) 1649. チェケラッチョ!! 《ネタバレ》 キャラクター設定は物語を紡ぐ最初の一歩。彼にはこう動いてもらおう。彼女にはこんな役目を。登場人物に役を担わせる“構想”が必要だと思います。山口紗弥加の荒い性格、ケンカばかりしている親父、恋愛真っ只中の先生、ばあちゃん幽霊。物語に有機的に絡んできません。賑やかしならゴリ一人で十分です。全然童貞に見えない主役も含めて、展望のないキャラクター設定に疑問を感じました。モテたくてラップ。甘い考えが打ち砕かれて挫折。ここまではイイです。でもその後がいけません。ライブ失敗は“ハートの問題”と玉山から指摘されます。でも本当は違う。基本的な演奏技術が未熟だったことが原因。単純に準備不足でした。そこを曖昧にしたらダメ。もっとも、もう一度練習し直して挑戦するほど、彼らは音楽に情熱を抱いていない。汗をかかない解決策としてサンプリングマシンが、手っ取り早い自己表現法としてラップが選ばれたように見えます。出だしは“モテたくて”でもいい。でも音楽への愛が感じられないと悲しいです。ラップに対しても失礼だと思う。リベンジライブの観客は身内主体。今回はホームゲーム。成功のハードルが下がっています。暴風雨は困難な状況に見せかけるための苦肉の策。これではスカッとしない。人の恋愛に割って入って爆発させた、高校生の机上の恋愛理論が通ってしまうのも何だかなあと思う。青春スポーツ感動作の王道プロットを利用しながら、爽快さが足りないのは、大切なポイントを幾つも省いたからだと思います。軽いノリだけで乗り切るのは厳しいです。[DVD(邦画)] 4点(2007-12-20 18:28:19)(良:2票) 1650. バトル・ロワイアル 特別編 「中学生同士が殺しあう」というセンセーショナルな設定ゆえ、良識ある大人から批判を浴びてしまうのも仕方が無い。自分も子供に積極的に見せたいとは思いませんし。ただ自分が観る分には全然OKでした。IFの世界だから。どんな無茶苦茶な設定だってあり得ます。それに本作は、殺し合いを是としていない。主人公たちは、ルールに盲目的に従うことを拒否しています。善悪の判断を他人に委ねていない。これって重要だと思う。ですから本作には肯定のスタンス。また原作ファンという立場で感想を述べます。バトルロイヤルの特徴は、ルールはオモシロイが実際にやるとツマラナイということ。これは本家プロレスのバトルロイヤルを観たことがある人ならよく知っている。戦いの焦点が定まらず散漫になりがち。しかも映画の場合、2時間程で40人近く殺さなくてはいけません。そもそも無理がある。その点を考慮すると、何人かの主要キャラを中心に上手くエピソードを重ねていると感じました。配役も概ね良好。映画オリジナルの教師キタノも、物語に一つの軸を提供しています。エピソードの扱い方や演出に不満が無い訳ではありませんが、よく纏めたなと。オリジナル公開版よりも本作のほうが、より強くそう思います。(感想はこちらに書いたので、オリジナルの書き込み消去。ちなみにオリジナルの点数は6点です。)[DVD(邦画)] 7点(2007-12-19 18:34:58) 1651. やさしい嘘 《ネタバレ》 3世代にわたる母と娘の心情を繊細なタッチで描いています。生きてきた時代が違うから価値観も違う。旧ソビエト時代、社会主義のウソの中に浸かってきたおばあちゃん。その幻想を打ち砕かれた母。そして今、新たな民主主義のウソの中を生きる娘。それぞれの時代背景が心に及ぼす影響は大きいようです。“息子の死はおばあちゃんには辛すぎる”そう母は判断しました。「真実を知って悲しむくらいなら、ずっと嘘に包まれていたほうが幸せだ」それは、現在の生活に対する母の想いとも見て取れます。その嘘に嘘で答えるおばあちゃん。自分の事を気遣ってくれた娘と孫に対するせめてもの思いやりです。誰も傷つけたくない。知らないほうが幸せな事もある。その気持ちの奥にも、おばあちゃんの生きてきた時代が垣間見えます。ラスト娘はウソをついて旅立ちます。それはおばあちゃんや母親の祖国、そして今まで生きてきた時代との別れでもある。笑顔ひとつ無い娘の旅立ちは、今のグルジアが置かれている状況を表しているのでしょうか。やさしい嘘。それは相手を思いやる暖かい心。一概に否定する気はありません。でも結局はみんなが傷ついてしまった。嘘で逃げきるのは至難の業。やはり傷つくことを怖れてはいけないのだと思う。[DVD(字幕)] 7点(2007-12-18 18:29:50)(良:1票) 1652. ショーン・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 ゾンビ映画は数々あれど、本作ほど“ゾンビとは何?”という問いに明確に答えている映画は無いと思う。いや、おバカ映画ですよ。くだらないです。それは胸を張って言える。でも一周すると、いろんなものが見えてくる。それが何とも楽しい。例によって原因不明のまま、いつの間にかゾンビで溢れる世界。圧倒的に人間の能力のほうが上なのに、多数に圧倒されて食われてしまう。これって実生活でも経験している気がする。多数決で負けたり、世論に流されたり。理不尽なことも多い。人間は群れると、集団という別の生き物に変わります。大いなる意思に従い、盲目的に動かされる。まさにゾンビだと思う。それが、人間という生き物の本質だと言われているよう。結末も皮肉が効いています。でも本作では終始一貫、人間とゾンビを並列に扱っています。ゾンビも人間も否定していない。愛すべき存在として受け入れています。エドなんか、生前の生活とちっとも変わっていません。人に対する優しさがある。だから嫌味がない。屈託なく笑えるのだと思う。[DVD(字幕)] 9点(2007-12-18 18:23:17)(良:3票) 1653. M:i:III 《ネタバレ》 前作同様アクション主体ながらも、印象は大分違います。よく練られた丁寧な脚本が心地良い。伏線を張っては回収の繰り返し。「前に同じようなシーンを見たぞ」というヤツです。車の底をスルーとか、脳内爆弾の件とか。クライマックスは妻を教え子に見立てています。ただ少々几帳面過ぎた。主人公が読唇術を使えるという設定。プライベートのパーティでその能力を披露しています。確かに前フリにはなっている。でもそれ以上に、能力をひけらかしているように見えるのはマイナス。ハントはスーパーエージェント。読唇術くらい使えて当たり前。張る必要のない伏線は要りません。ただ気になったのはここくらい。あとは文句無しです。あの驚異の変装術の内幕披露があったりと、シリーズファンには嬉しいオマケもある。お腹いっぱい、サスペンスアクションを楽しみました。シリーズ最高の出来だと思います。[DVD(字幕)] 8点(2007-12-17 18:43:13) 1654. M:I-2 《ネタバレ》 「監督が変わるとこうも違うものか」それが第一印象。アクションに特化し、見た目に派手。監督の色も強く出ています。ただ大味でした。後半の主軸は、制限時間内に彼女にワクチンを注射するということ。そのためにイーサンは腕時計をセットしている。にもかかわらず、その時計を一度も見ないなんて。監督の興味はひたすらアクション。それも格闘アクション。銃があるなら使えよと思ってしまいます。個人的にはもっと頭脳戦も観たかった。ミッション中、プロが安易に色恋沙汰に落ちてしまうのもいただけません。[DVD(字幕)] 6点(2007-12-16 20:12:24)(良:1票) 1655. ミッション:インポッシブル 元ネタ「スパイ大作戦」ありきとはいえ、このエピソードを1作目に持ってくるのはズルイ気が。タイムボカンシリーズ・逆転イッパツマンの名話『シリーズ初悪が勝つ』をいきなり持ってきたような。水戸黄門で言えば、1話目からニセ黄門様が出てきたような。それだけ刺激的だということ。まあ、面白ければノープロブレムです。緊張感のある展開。見ていて飽きません。本作最大の見せ場であり、以降のシリーズでも定番となる“床と平行スレスレ吊り”がたまらない。続編と比べるとアクションは控えめで、クラシカルなスパイ映画の趣を残しているのがイイ。ヒットしたのも頷けます。[DVD(字幕)] 7点(2007-12-15 20:03:15) 1656. 暗いところで待ち合わせ 《ネタバレ》 静かな映画。その設定とストーリーゆえ、派手な展開が無いのは当然ですが、演出もかなり抑えられています。例えばミチルが侵入者の存在を疑う重要な場面。食パンの枚数を確認します。それはもうさりげない。アキヒロの言い分が本当に正しいのか、ミチルはハルミに事件との関わり聞き出そうとします。「彼氏はどんな人だったんですか?」過去形で問うキラークエッション。疑惑の外堀を埋める決定打です。彼女の頭のスマートさがよく分かる。でも際立たせようとする演出はありません。流して観てしまう。一貫して平坦な画を重ねています。それは田中麗奈の撮り方にも表れている。表情が薄く、その美貌と魅力を封じ込めています。冴えない普通の女の子に見える。事件解決後、アキヒロの話を静かに聞く姿なんか仏様のよう。だからほんの少しの変化が劇的に思えます。湯上りの飾りない素の表情。ラスト彼と向かい合った時の横顔。彼女の素顔は、なんて素敵なのでしょう。気の持ち方で表情が変わる。生き方が変わる。抑制の効いた演出だからこそ、小さな変化に価値があることに気付かされます。「土鍋キャッチ」や「ホームに出現するハルミ」など印象的なシーンが心に刻まれるのも同じ理由です。共に暗い世界にいた2人。偶然の出会いを“待ち合わせ”に替えて、これから一緒に歩いて行こう。希望は薄明かり。厳しい人生が待っていることに変わりはありません。でも手を繋ぐ人がいるだけで、どんなに力強いことか。勇気がもらえることか。歩幅を併せてくれる人が隣にいることに感謝しなくては。「目が見えないのだからしょうがない」「外国人なので仕方が無い」もう言い訳は捨てていい。[DVD(邦画)] 8点(2007-12-14 18:43:49)(良:2票) 1657. フリージア 《ネタバレ》 「敵討ち法」に惹かれて鑑賞することに。犯罪被害者が加害者に合法的に復讐することが認められている社会。それも一方的な制裁ではなく反撃(返り討ち)もアリだという。まさに江戸時代の仇討ちが現代に蘇ったという設定。被害者、加害者、助太刀、その仇討ちに関わる全ての人のドロドロ、葛藤などが見られるものと期待しました。ところが本作の焦点はそこにはなかった。冒頭のエピソード“フェンリル計画”の被害者である2人。心を凍てつかせてしまった2人が、感情を取り戻していく物語。フリーズ爆弾でフリーズしてしまった心。だからフリージアなのかな?いずれにしても、敵討ち法はあんまり関係なかった。これにはガックリ。“心が無い殺人者”という設定なら、ただの殺し屋で構わない。実際、メインのVS西島については合法ではありません。せっかく面白い設定なのだから、活かさないと。どのキャストの感情も分かりづらく、感情移入しそびれました。それなりにスタイリッシュ。でも自分の心を捉える「何か」はありませんでした。[DVD(邦画)] 5点(2007-12-13 18:18:10) 1658. バーティカル・リミット 《ネタバレ》 雪山の描写は迫力があり、迫り来る危機を回避していく様はスリル満点。エンターテイメント性バツグン。ただ設定は無茶過ぎた。ニトロなんて、アクシデントを呼ぶためのアイテムでしかない。アホバカ映画の烙印を押されても仕方が無いと思います。ただ「命の重さ」については真剣に考えさせられました。本作で一貫しているのは、命の重さは平等ではないということ。そこが興味深かった。3人の遭難者のうち、助かったのはたった1人。その一人を助けるために、救助隊4人の命が失われている。どうしても計算が合いません。では最初から見殺しにすれば良かったのか?二次遭難を避けるのは鉄則。爺さんが言う「雪山で死にかけているのは、死んだのと同じ」は正論です。常職で考えれば、救助に行くべきではなかったと言えるでしょう。しかし兄にとっては違う。妹が助かる可能性が残されているなら、自分の命を賭ける価値があった。もちろん遭難者の方は何としても助かりたい。雪山を知り尽くしたリーダーでさえ、自分が犠牲になることを拒否しました。ただ生きたい。それだけです。本音だと思う。“自分の命≧家族の命>>>他人の命”という図式が見えます。それはもう嫌らしいくらいに露骨です。生き残った兄妹の能天気ぶり。誰が死のうと、自分と家族が助かればよし。2人にとってのみ、この救助活動は意味があったということです。正直、いい気はしません。でも人間ってそんなものかもしれない。それだけに爺さんの偉大さが際立つ。冷静な判断力で2人の命を救った。雪山を知り尽くした男の決断でした。極限状態でこそ人間の本当の価値が見える。爺さんは誰よりも上等だと思いました。自分はハッピーエンドが好み。でも無謀な救助が成功しても白けてしまう。雪山の恐ろしさを明確にするためにも、この結末でよかったと思う。[DVD(字幕)] 7点(2007-12-12 18:43:42) 1659. ゲド戦記 《ネタバレ》 『宮崎アニメ』と『ジブリのアニメ』は全く別物。ファンはその事を十分認識しています。だけど…混乱してしまう。デザインは、紛れもなく宮崎駿のキャラだから。それに名前も。どこかで『ナウシカ』や『ラピュタ』と比較してしまう自分がいる。酷だと思います。でも仕方が無いとも思います。父と子が同じ土俵で勝負する以上、避けられない宿命です。監督自身が誰よりも承知しているはず。主人公の“父殺し”を、宮崎親子の関係とダブらせずにはいられません。そこで疑問。何故監督は父と同じキャラクターデザインを使ったのか?もし自分が監督と同じ立場だったら、絶対にオリジナルデザインで勝負したと思う。例えば漫☆画太郎氏のキャラだったら。同一次元での比較を避け、容易に自分の色を出すことができたでしょう。(勿論別の猛烈な批判はありましょうが。)でも監督はそれをしませんでした。というより許されなかったのだと思う。さらに原作の問題。『ゲド戦記』はファンタジー界のビックネーム。これが危うい。タイトルの響きだけで先入観を持ってしまう。壮大なスケールの物語を期待すると肩透かしを食らいます。柔らかなタイトルの字体。“スペクタクルではありませんよ”というヒントは出ていました。もっとも、それに気付けというのは無理な話ですが…。監督は、最も厳しい道程を選んだと思います。しがらみも多かったでしょう。その心情は察するに余りあります。ただ、それと評価は分けないといけない。何者とも比べず、予断を入れず、ただ一作品として評価すること。敬意を払って感想を述べます。本作は少年の心の成長物語。ハイタカやテルーとの出会いが、主人公を変えるという図式です。しかし物足りない。それは苦労がないから。ピンチはハイタカが助けてくれる。大切な事はテルーが教えてくれる。主人公は自ら動いていません。与えられて得たモノの高は知れている。悪い魔法使いが死に行くクライマックス。この作画が非常に悪い。醜いです。このシーンだけで作品のクオリティを著しく下げています。終わってみればごく普通のアニメ映画。それ以上でも以下でもないと感じました。“宮崎アニメの本物”は、宮崎駿監督にしか作れない。宮崎吾朗監督には、“宮崎吾朗アニメの本物”を目指してもらいたいです。[DVD(邦画)] 5点(2007-12-11 18:28:42)(良:1票) 1660. キャビン・フィーバー(2002) 《ネタバレ》 奇天烈な展開は、「ナンセンス」の一言で片付けても問題無さそう。でも「意味がある」と考えたほうが面白い。以下自分なりの解釈です。本作を読み解くカギは、エンドロール後のワンカット。雑貨屋の爺さんが言う「やれやれ」という台詞。今回の騒ぎは初めてのことじゃない?そこへ考えが及ぶと、後は芋づる式に事件の真相へ辿り着けました。ズバリ“謎の伝染病の発端(オリジナル保菌者)は雑貨屋の少年”。これで不条理な展開全てが解決します。誰彼構わず噛み付く少年。なら、犬に噛み付いてもオカシクない。(現に雑貨屋の裏にいた犬の口元は赤かった。)父親は少年のことを「破傷風」と言っていましたが、それは違う。でも的外れでもない。破傷風はヒトにも動物にも感染します。謎の伝染病と類似している。最初に死んでいた犬は、少年から感染した。それが惨事の始まりです。しかも今回が初めてじゃない。雑貨屋に助けを求めにきた青年に対して父親が言っていた意味不明のもごもごした言葉も、かつてこの家族に同様の悲劇が起きたとすると頷ける。伝染病の疑いがあるのに、医師や警察がマスクひとつ付けていないのも、感染経路を熟知しているから。今回も町ぐるみで事件を隠蔽した。最も不可解な少年の行動も、「精神に異常をきたす」という特性がこの伝染病にあれば合点がいく。主人公が突如殺人鬼に変貌したこと、犬が好戦的な理由、主人公が病院で見た幻なども、全て説明出来ます。脚本はきちんと練られていると感じました。でも本作で大切なのはストーリーの解釈にあらず。キモはあくまで「パンケーキ」少年の拳法や仔鹿キック等のおバカ要素をどう受け取るか。このへんを楽しめると、結構イケるB級映画ではないかと。[DVD(字幕)] 7点(2007-12-10 18:33:04)
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